2021年6月4日金曜日

深川秀夫さん追悼展示上映会『深川秀夫の世界』ー深川秀夫を想うー





順番前後いたしますが、5月27日(木)に代々木上原のムジカーザで開催された深川秀夫さん追悼展示上映会『深川秀夫の世界』ー深川秀夫を想うーに行って参りました。
深川さんと所縁ある方々、出演されていた方や舞台、衣装スタッフの方々から
作品がお好きな方まで様々な深川さんファンが集い、各々自由に映像を眺めたり展示品に見入ったり、ゆったり心地良い空気が流れる展示上映会でした。
https://www.fukagawa-b-w.com/fbw_news/docs/%E6%B7%B1%E5%B7%9D%E7%A7%80%E5%A4%AB%E3%82%92%E6%83%B3%E3%81%86_20210527.pdf

主催は『深川秀夫の世界』を継承する会-Fukagawa Ballett Welt-(フカガワ バレット ベルト)。深川さんと舞台で関わってこられた方々が
ご遺族代表の深川知巳さんと立ち上げた事務局で、作品管理や著作権関連等、体制を整備されているとのことです。
作品を残し、上演を重ねていくためにもきちんとした事務局立ち上げは誠に喜ばしく、これからまた鑑賞機会に恵まれる日を心待ちにしております。
https://www.fukagawa-b-w.com/

現在は動画サイトでも何本かの作品も視聴できます。宜しければご覧ください。
https://www.fukagawa-b-w.com/archives/index.html#video


今回の企画は予約不要で入場無料。入口を抜けると受付でお花を1輪受け取り、場内奥にて穏やかな笑みを湛える深川さんの写真が飾られ
感謝を込めてお花を贈りました。写真を囲む花々のシックな色合いに暖色を交えた洗練された色彩美にも惹かれ、深川さんの美的感覚を思い起こさせます。

すぐ横では映像上映もされ、『真夏の夜の夢』や『ナルシスト』といった舞台映像や子供時代の写真も公開。
頭が小さく、脚がすらりと伸びていて子供の頃から何処か貴い雰囲気に包まれていた印象です。特に眠りの宝石の踊りであったか、ノーブルな佇まいにびっくり。
30年ぐらい前の映像が殆どでしたが現役時代のお姿も振付共に今観ても古さを感じさせず、色褪せぬ魅力に驚きを覚えました。
美しいものを見た、と心からの満足感が募ってくるのです。そして事務局協力スタッフのある方に教えていただきましたが、そしてカーテンコールがまたお洒落。
カーテンを少しつまんで観客を見渡し一礼する、その姿が何とも粋でございました。
大塚礼子さんが踊られたPARCO劇場でのアリスの写真の先鋭的な姿も強烈で、腰掛けた状態で脚をすっと上に伸ばした体勢が妙に色っぽいアリスです。

場内の周りでは1階と2階にて愛用の品や舞台写真、ポスターを展示。衣装も多数展示され、年季は入っていてもだからこそ滲む
長年の美の蓄積が窺えじっと見入ってしまいました。振付ノートにはフォーメーションが事細かに記され、鉛筆で懸命に書いていらっしゃる姿が浮かびます。

先にも申した通り入場無料の自由観覧な企画でしたが、映像のある箇所によってはこの場に集結なさった当時の錚々たる出演者を拍手で讃えたり、
また閉館前最後の映像が流れた後には場内から一斉に拍手が沸いたりと一体感のある瞬間にも居合わせた喜びに触れた思いでおります。

深川さんの作品をそう多くは鑑賞しておらず好きな作品を1本選んで挙げる資格なんぞ無いのは重々承知しておりますが
京都で全編を、東京にて抜粋を鑑賞し、明日から連日三昧『ライモンダ』以外のグラズノフの繊細な旋律、構造に酔い痴れ
主な使用曲は『四季』であっても音楽と振付の溶け合いが見事過ぎてもはや夜空に瞬く満天の星々しか思い浮かばぬ『ソワレ・ド・バレエ』の公開も嬉しい限り。
高部尚子さんの強靭なテクニックから繰り出される緩急の付け方に目を留めずにいられず、上演とほぼ同時期には
谷桃子バレエ団公演にて赤城圭さんとの『シンデレラ』鑑賞も思い出したり、当時の日本のバレエ界にも浸るひとときでございます。
この頃は小林紀子バレエシアターがアシュトン振付『二羽の鳩』日本初演や、英国ロイヤル・バレエ団来日公演にて
熊川哲也さんが『ラ・バヤデール』ブロンズアイドルを踊られた時代であったかと記憶。どちらも鑑賞しております。
多数の映像や写真、衣装やポスターまでを集めて会を企画してくださった事務局の皆様には感謝が尽きず。
この状況下、対策を講じた上での企画はさぞ労苦もおありであったかと存じます。
誰でもふらりと気軽に立ち寄りやすい雰囲気の展示上映会で、私も肩肘張らずに訪れて深川さんの世界をじっくりと堪能できました。
この度は本当にありがとうございました。

ところで、今回友人も一緒に訪れましたが、大塚さんのアリス、また16歳の頃の森下洋子さんや第1回世界バレエフェスティバル
そしてマルセイユ・バレエ団来日公演にてローラン・プティ本人のコッペリウスもご覧になっている生き字引なお方で
会場の関係者の方々も驚愕の表情。まだまだ私はバレエ勉学、足りのうございます。





住宅街に現れたお洒落な建物



入場時にいただいたカード。闘病中であってもユーモアを忘れぬ心が伝わる色味と筆跡です。3年前の私の誕生日でございます。

2021年6月1日火曜日

踊るサスペンス劇場  DAIFUKU VOL.7 DAIFU”Q” 5月22日(土)《横浜市》





5月22日(土)、横浜にてDAIFUKU VOL.7 DAIFU”Q”昼公演を観て参りました。毎回あっと驚くテーマを打ち出し好評を博してきた公演ですが、今回はサスペンスです。
https://www.angel-r.jp/event_ar/daifuku/daifuku-vol07-daifuku/31239/

昔から十津川警部や浅見光彦シリーズなど2時間、特に旅した気分に浸れる旅情系サスペンスが好きで
以前出向いた地域が登場すると懐かしさも募りしばしば視聴。刑事物のバレエ化をかねてから望んできた者としては実に嬉しい謎解きバレエ誕生です。
振付演出を手がけた大和雅美さん、福田圭吾さん(2人の苗字の頭を合わせてダイフク)の妙案や配役が秀逸で、抜擢されたダンサー達も新境地開拓に成功していました。

大まかなあらすじは、バレエ団を舞台にスポンサー企業の不動産会社社長が何者かに殺害され、団員の指紋が残るが謎は更に深まり
社長を巡って憎悪を抱く人々は複数いるものの闇は潜み、刑事の奔走により徐々に真相が解き明かされていくサスペンスです。
謎解きですから再演の可能性を考えると詳細な展開記述は控えるべきかもしれず、ざっくりと綴って参ります。

不動産会社社長の黒田清はスターダンサーズバレエ団の池田武志さん。徹頭徹尾悪に身を投じた熱演で、目的のためなら手段を選ばぬ強引やり手社長。
股関節の柔らかさを生かした大胆な脚の振り上げも向かうところ敵無しな威圧感に繋がり、バレエ団のトップ安西香織に迫る様子もああ嫌らしい笑。
黒田に恨みを抱かずにいる人物なんぞいないであろう人間性に説得力を持たせていました。

黒田の秘書由良一夫は新国立劇場の小野寺雄さん。冷酷な黒田にこき使われようが無理難題を押し付けられても淡々黙々と業務を進めていて感情が見えにくいものの
周囲からすれば黒田に最も強い不満を持つ人物であるのは明らかで警察が真っ先に容疑をかけたくなるのも納得。
黒田の暴力によって抑圧されても表情変えずに過ごしていましたから、精神の耐震強度は相当であったと思われます。
壁を作り覗きづらい内面を持つ秘書役がぴたりと嵌り適役です。

渡辺恭子さん(スターダンサーズバレエ団)は物静かで心優しい性格のプリマ安西香織を儚い趣きで踊り演じられ、ポスターでの写りからして薄幸な美しさに惹かれた次第。
サスペンスドラマにいかにも登場しそうな訳あり物憂げな表情を見せ、見れば見るほどに
どうにか心を開かせようと後方から片平なぎささんが慰めの声をかける光景がすぐさま浮かばずにいられず(火サスの見過ぎか笑)。
黒田に好かれ、抵抗するも事件に巻き込まれ追い詰められて行く様子が痛々しく哀れに響きました。

大スターオーラを纏っていたのは花形ダンサー城田春彦の渡邊拓朗さん(新国立劇場)。役柄設定の通り飛び抜けたスター性を放ち
古い表現を承知で申せば「銀幕のスター」(今時言わぬか)。香織のダンスパートナーに相応しい貫禄で魅せて
高度なリフトもいとも簡単そうに披露し、トップを張る人物としてのプライドをも滲ませていました。
驚かされたのは芝居も頗る上手く、怪我を負わされた瞬間の苦痛そうな様子は思わず身を乗り出して心配したくなるほどに自然で、
まさに事件勃発な状況を鋭く描写。また負傷によりやさぐれてしまった感も実にリアルでした。
そういえば、まもなく開幕する新国立劇場バレエ団『ライモンダ』におけるリハーサル映像にて
渡邊さんはスペインの手下4人に抜擢されたもよう。バレエ団のSNSで公開中ですので是非ご覧ください。
そして、その映像の主演者の練習姿は映らず記述も無しですが、夢の場コール・ドのワルツ練習にて
端で準備や話し合いをする主役お2人を発見。どうやら金曜日キャストのようです。
そうなると兄上様とは敵対派閥の役となりこれはこれで楽しみであると、スペインの最中に隅っこで恐らくは剣を抜く練習をする
主役姿の僅かな映り込みを一時停止及び拡大しながら確認し(私は監視カメラ映像の分析官か笑)思えた次第でございます。

話を戻します。恨み辛みの感情を募らせ黒いオーラを撒いていた滝川ルミはスターダンサーズバレエ団のフルフォード佳林さん。
黒田に擦り寄るさまもお色気たっぷりで、同時に実力はあれど香織に先を越されて滲む悔しさや嫉妬心も匂わせ、ただの悪女にとどまらぬ人間味ある女性を造形です。
香織と密かに交際中でひたむき地道に走る森田維央さんによる羽場裕一の実直ぶりも目に留まり、仕事の立場上では階級差のある恋ではあっても睦まじい雰囲気を描き
香織からはプリマではなく1人の女性としての魅力を引き出し、内緒の恋である分、見つかりやしないかと観ている側も常に緊張が過りました。
温厚で生真面目そうな青年ながら、香織に目をつけた黒田に対しては腹わたが煮え繰り返りそうな怒りをぶつけ、豹変ぶりに驚嘆。

優しそうなバレエ団のピアニスト真鍋茂にはダイフクでのネタ担当!?お馴染み小柴富久修さん(新国立劇場)。
外見も対応も常に柔らかで、ビジネスバッグや楽譜を持つ姿も違和感なく、団員達にも慕われ談笑する光景はどこかほのぼの。
幸いにもピアノ近くの席であったため、熱心に弾く姿やチャイコフスキーと書かれた楽譜まで観察できました。
ただ暗い過去を背負って人生を歩む様子が中盤以降で描かれ、思わぬ接点が明らかになっていきます。

パンフレットには詳細な相関図が記されてはいるものの、スピーディーに斬り込む展開で開演後はどうしても混乱しかけてしまうのはごく自然なこと。
そこで手助けの効果をもたらしていたのが、容疑者浮上人物と黒田それぞれ関係性を乾刑事の脳内整理も兼ねて刑事のナレーションを流し確認する場面を
中盤少し前あたりに挿入。乾刑事は踊りつつ、手掛かりが掴めずに捜査が進まず苦悩するさまを
八幡さんはナレーションと調和させながら、そして観客と一緒に謎解きを展開させていく流れを構築していました。
そうです、2時間サスペンスでの恒例である開始約30分後、事件に関係する人物の写真を白板に貼って
被害者との絡みや行動を記し、警察署内にておさらいするお馴染みの場面の刑事1人で頑張るバレエ版ともいえます。
暗闇な序盤から物語を引っ張り、捜査を担う重責と奮闘を、時には聞き込みにて観客にも協力を求め全人物と絡むキーパーソンを
八幡顕光さんが実直な刑事として見事に踊り伝えてくださいました。友人の言葉を拝借すると、
織田裕二さんの代表作品の主役であろう青島刑事に似た格好も推理物としての色味をより濃いものに後押し。
会議室ではなく舞台で起きている事件をまさに「踊る」大捜査線な状況として描いていらっしゃいました。

バレエ作品でサスペンスを描く手法は概要を知ったときから気にかかりましたが謎解きばかりに重きを置かず、あくまでバレエ作品として成立していた点も好印象。
暗闇の中で僅かな光を帯びた冒頭で黒い服に身を包んだ主要人物達が怪しく大胆に踊り、全員が容疑者である緊張感が瞬時に突っ切る幕開けです。
また、味わいが全く異なるパ・ド・ドゥが核として配され、香織と春彦の崇高でスター性が輝く踊りや
打って変わって香織と裕一による束の間の穏やかな幸福に浸るもの、そして擦り寄るルミと黒田の妖艶で毒々しさまでもを放つ踊りもあり
バレエ作品として見応えが十二分にありました。加えて要所要所には乾刑事の捜査行き詰まりからなる苦悩や
手がかりを掴み解明の扉をいよいよ開こうと自信漲るソロも用意。 会場がスタジオである生舞台で装置も最小限で
360度から見渡せる粗が隠せぬ空間で制約も多々ある中、バレエとサスペンス双方の魅力が融合ししかも生舞台で形となり、ただただ拍手を送りたいばかりです。
音楽の聴き応えも忘れられず、手がけたのは舞台協力の欄に名を連ねた福田紘也さんでしょうか。
情景と心理に呼応するように時には壮絶な現場が焼き付く圧の強い曲調から、優しさに触れる穏和な空気感まで自在に彩っていました。

テレビドラマではこれまでもバレエを題材にしたミステリーは何本もあり、東野圭吾さん原作でKバレエカンパニーが全面協力した『眠りの森』や
名取裕子さん主演の『法医学教室の事件ファイル』でも再放送にて視聴したある回にてバレエ教室を舞台にした推理を展開していました。
しかしバレエ公演でミステリー、サスペンス物が上演される日が訪れるとは、ローラン・プティ振付『こうもり』や『コッペリア』を観たときから
いくつかのポーズが何処か似通っている『サザエさん』のバレエ化を夢見て、そして推理刑事物のバレエ化も頻繁に想像を巡らせていたところ
両方がDAIFUKUにて実現。バレエに秘められた大きな可能性を毎回示してくださっています。
大和さんと福田さんの脳内構造を覗きたくなる、刑事の心理描写や登場人物の各々が抱える闇部分まで、あっと驚く推理展開の面白さが詰まった作品でした。
尚今回は出演者欄にお名前の掲載が無く、振付演出に専念されていたかと思いきや、お2人とも物語の急展開にてチラリと重要な役どころでご出演。
スリルや悲しみの迸りに拍車をかける役目を果たしていらっしゃいました。

ところでDaifu"Q"は喜劇の要素は削ぎ落とし、背筋に戦慄が走るようなシリアスな展開や複雑に絡む人間模様、1人の刑事の奮闘ぶりから
『踊る大捜査線』と火曜サスペンス劇場を合わせた風味のミステリーと見受けておりました。また後日前者の劇中音楽を聴いていると明快で耳に入りやすく
個性豊かな警察官達や一斉に乗り出す捜査員達のコール・ドなど思い浮かび、あのメインテーマ曲が幕開けに流れたら
盛況間違いないなど勝手にバレエ化の想像を膨らませていたわけでございます。
暫くして役名を眺めていると森田さんが踊られた羽場裕一の名前が以前観ていたテレビドラマに出演していた俳優でいたはずと思い出し
管理人がこれまでの人生で全話視聴したたった2本の連続ドラマのうちの1本、学園ミステリー物に出演されていた方であったのは記憶通りでした。
しかし更に検索結果を見てみると、ある推理物ドラマの中の役名でもあったもよう。もしやと思いDAIFU"Q"の他の登場人物名も調べてみると揃って
公演開幕数日前に訃報を知った、田村正和さん主演の名作ドラマの中の役名に由来するようです。管理人が通っていた大学でも撮影があり
賛助出演者募集も行っていたため懐かしさも込み上げます。まさか後に、下地が重なるバレエにお目にかかれるとは。
ただ独特の語り口を含めこの名作のバレエ化は難しいか。





人物相関図がやや複雑でキャラクター設定紹介も細かく、開演前は観客誰もが入念にパンフレットを読み込んでいたほど。
会話控えの効果にも繋がっていました。



中華街入ってすぐに出現。色艶やかです。



会場近くで1人黙々蟹チャーハン。BGMで胡弓版と思われる『白鳥の湖』情景曲が流れていたのは嬉しい演出です。



終演後に利用した交通機関にて鹿の衝突による電車の少々の遅延もあり、ようやく落ち着いたところで大福を食し1日の締め括り。

2021年5月26日水曜日

【お茶の間観劇】人生最大の幸福日となった奇跡・世紀の共演実現   新国立劇場バレエ団 ローラン・プティ版『コッペリア』5月2日(日)〜5月8日(土)






気づけばブログ未更新最長記録を達成してしまい、だいぶ滞り申し訳ございません。心配している方はいらっしゃらないとは思いますが管理人、生存しております。
先週末も2日間素敵な舞台を満喫して参りましたので追って綴って参りますが、まずは本題。
ゴールデンウィークに新国立劇場バレエ団 ローラン・プティ版『コッペリア』配信を4回視聴いたしました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/21coppelia/


スワニルダ:米沢唯(2日) 木村優里(4日) 池田理沙子(5日) 小野絢子(8日)
フランツ:井澤駿(2日) 福岡雄大(4日) 奥村康祐(5日) 渡邊峻郁(8日)
コッペリウス:中島駿野(2日、5日) 山本隆之(4日、8日)

スワニルダの友人:
益田裕子 朝枝尚子 原田舞子 廣川みくり 廣田奈々 中島春菜(2日、5日)
寺田亜沙子 細田千晶 柴山紗帆 渡辺与布 飯野萌子 広瀬碧(4日、8日)


最終日、カーテンコールの様子です。




※今回の配信は夕方のテレビニュースやウェブ媒体でも大きな話題となり、無料効果もあって普段は新国立劇場にそう多くは通っていらっしゃらない方も含め
実に大勢の方々がキャスト見比べ視聴をなさり、その分ありとあらゆる感想意見が配信終了直後から飛び交う、ニューイヤー・バレエ以上の賑わいでした。
中でもフランスのバレエに造詣の深い方々のご感想や鋭い視点にも直後から触れて一瞬冷水を浴びるがの如き刺激を受けるも
20年程前から私が観てきたプティ作品の殆どが日本のバレエ団、日本のダンサーが挑戦した舞台であると気づいた次第。
また見巧者や精通者のご感想を目にするたび、元からではございますが当方のバレエ無知を反省する毎日で元来の頭の回転の遅さにも拍車がかかり今に至っております。
更には後にも詳しく述べて参ります個人の事情ではございますが、決して大袈裟な表現ではなく
これまでの約32年間に及ぶバレエ鑑賞人生どころかバレエ云々問わず、私と同じ誕生日の岩崎恭子さんの名言を真似るわけではありませんがこれまで生きてきた中で
人生最大の幸福日を迎えた配信最終日についても手厳しいご意見が視界に入り、生公演よりも遥かに鑑賞者が多いからこそ活発に飛び交い
人によって受け止め方や捉え方は違って当然とはいつもなら思うところ鑑賞眼の持ち方の難しさを思い知らされ
気づけば更新も途絶え休止も頭を過ぎりかけたりもいたしました。ただ幼少期から変わらず中身が乏しい脳を駆使し
毎日数行ずつ進めているうちに終わりが見えて参りましたのでここに記します。

現代ではウェブ上にも趣味の方の執筆のみならずプロの批評がすぐさま掲載され、既に優れた記事に多々目を通されている方が大多数かと思います。
明日あたりにはダンスマガジン最新号が発売のはずで、専門家による完璧な評論記事が載るかと存じます。(来月号にて特集組まれるようです)どうぞご覧ください。
遅い、薄い、纏まり無しの欠陥住宅状態な素人感想を読む気力や忍耐力のある方は、以下どうぞ。



米沢さんは可愛らしくもちょっと大人びたスワニルダ。当初はすっきりし過ぎて少女らしさがやや物足りないかと思いましたが
フランツにくっついて甘える仕草が何とも可愛らしくニンマリ。何よりきびきびと軽やか、歯切れ良い踊りで脚先が語り、
楽しそうに歌う身体で友人達を引き連れる様子も爽快でした。 コッペリウスとのやりとりでは騙してひたすら追い詰める風ではなく
程良く隙間を空けてさらりと、中でも扮したコッペリアに生命が宿った振りをする箇所ではコッペリウスの余りの喜びように僅かな後ろめたさを思わせ、
されど気づけば徐々に詰めていくスリルも含みコッペリウスがたじろぐのも納得です。

目に心に鮮やかに飛び込んできたのは初挑戦の木村さん。前回友人役の中でも抜きん出たスタイルの良さから間違いなく似合うであろうと
期待は高めておりましたが予想を遥かに上回り、天真爛漫なヒロインを好演。恵まれたラインが物語り、愛くるしい表情の変化に蕩けてしまったほどです。
2幕ボレロにて扇子が飛んでしまうハプニングでも動じず、山本さんのフォローでむしろスワニルダとコッペリウスの心の距離が
ほんの少し近づきかけたかとも思わせる嬉しさまでもが生じるひと幕でした。フランツとコッペリウス、大先輩との共演でも全く物怖じのない堂々たる初役です。

池田さんは登場の瞬間はメイクが濃過ぎたのかせっかくのお顔立ちの愛らしさが今一つ伝わらず、その点は心残りでしたが2幕での無機質な人形姿が妙にリアル。
カクカクとした動きやから徐々に滑らかなステップへと移りコッペリウスのご機嫌も上々となる流れがいたく自然に映りました。
前回は赤いリボンを頭上に装着した黒い衣装姿が一見『魔女の宅急便』キキを彷彿させましたが今回は前髪作っての挑戦。今回の方が似合っていた印象です。

小野さんは登場時の壁にもたれる姿からして黒を醸す危うさと紙一重な魔性を秘めた少女の魅力に感嘆。
フランツにしがみつき目線を上げる表情から匂い立つ小悪魔な魅力には仰け反りそうになったほどです。
そうかと思えば盤石な技術もさることながら素早いステップ1つ1つからもお茶目な台詞を響かせ、生で観たらさぞかし圧巻であったことでしょう。
決して手脚が恐ろしく長いタイプではないながら2009年、2017年、そして今年とプティ版スワニルダ役を観る度にぴたりと嵌る役であると感じさせ
友人達との戯れでの愛らしさ全開な一方、コッペリウスに対しての抑え込むが如き容赦無い切り返しの対比がひときわ強く
顔と身体の表情両方の変化を巧みに見せる喜劇センスがずば抜けているダンサーであると捉えております。

井澤さんのフランツは山形公演の『白鳥の湖』に続き表情も更に出た印象があり、さほどアピールせずとも女子達にモテる姿も納得な華々しい青年。
ただ、すれ違う恋の描写に重きを置き過ぎてしまった印象も否めず、スワニルダと相思相愛な関係性が見え辛かったのが正直なところです。
昨秋のバジルがお調子者且つキトリとの熱々ぶりも良かっただけに、スワニルダを愛するが
しかし軽妙な浮気者であるフランツの性格の表現や踊る難しさに触れた思いでおります。

福岡さんはとにかく明るい、ここ最近の中ではめっきり若返った感のあるフランツで、全身から朗らかで楽しいオーラを発散。
全幕で木村さんと組んでの主演は初でしたがスワニルダの可憐な猛攻撃を受け止め溌剌と切り返し続けるフランツなる楽しいペアの誕生です。
2幕フィナーレの早過ぎてしまった登場はご愛嬌。狼狽せず、まだフェッテ真っ最中のスワニルダを見守る新郎と即座に造形なさったのか
上手く収め、安堵でしたが出演者や指揮の冨田さんはびっくり仰天であったに違いありません笑。
山本さんコッペリウスとの掛け合いでは大阪のKバレエスタジオ出身者同士、阿吽の呼吸が益々増幅。
1つ打つとぱっと弾ける可笑しさが凝縮した面白コンビを満喫し、関西や四国ではここ数年も度々共演舞台を鑑賞しておりますがやはりオペラパレスとなれば格別でした。

奥村さんは能天気な軽さが実にナチュラル。後先一切考えてなさそうで笑、スワニルダにもコッペリアにも
気まぐれと全力投球を右往左往しながら恋している掴みどころのない様子に思わず大笑いです。衛兵達を率いてコッペリウスを囲みからかう箇所も
両腕を左右に開閉させる動かし方が機敏で、4人のフランツの中で悪戯を心底楽しむ表情が一番表れていた気がいたします。
コッペリウスの招きの罠にて椅子に腰掛けたシャンパンを呑んだ後、燭台の炎を前にして溶けそうに朦朧と浮かべた表情もツボでした。
この箇所、各々表現は任されていたのか福岡さんは手を翳して熱がり、渡邊さんは机上の書物に視線を落として興味津々。(井澤さんは失念、すみません)

渡邊さんは澄ました姿が伊達男な見た目ながらボタン1個欠如感な人間味ある様子が憎めず。
そんな不完全なところも含め尻に敷いている笑、肝っ玉スワニルダには愛おしく映り許容しているのでしょう。
スワニルダのことは好きだが、他の女子にも興味がありでもあからさまには見せたくなさそうなフランツでした。
ただすれ違うだけでなく、澄ましているようでいて目線を合わせるべき箇所や愛情を交わす場では磁石の如きぴたりと合わせたり心を注いだりと会話が生まれ
相思相愛と浮気性の双方をメリハリをつけて見せることに成功し、フランツの二面性をはっきりと表していました。

心配していた冒頭の煙草は咽せるなんぞ全くなく、ただ1人一瞬妖しい笑みを浮かべ、背景の想像を掻き立てる幕開け。
意外にも煙草がしっくりしていて、またプティ版フランツの洒脱さと浮気性を品位ある伊達男な形で作っていた点も含め
一括りにするのは正解ではないかもしれませんがフランスで長年踊られてきたキャリアが生きていると感じさせました。
結婚式前、スワニルダ友人達との握手か占いか、設定は分かりかねますが手相を凝視しては1人1人に語りかけ喜び弾ける反応を引き出していたため
生命線やら運命線やら用語が聞こえてきそうなやり取りで、占い師フランツとして生計を立てていくのかもしれません。

さて今春の配信でもやります髪型観察、丸でございます。色が少し明るくなり、私個人としては黒髪のほうが好みではございますが(勝手な言い分でございます)
やや茶を帯びた自然な色合いで、前髪の纏め方も固め過ぎずふわり。『ライモンダ』でもこの路線か、継続観察して参ります。

それにしても、スワニルダ友人と同様に黄色い歓声をあげたくなったプティ版フランツにお目にかかったのは2009年公演の山本さん以来12年、干支1回りぶりです。
しかも事細かには後述いたしますがその山本さんと今回共演ですから、ゴールデンウィークに加え盆と正月、誕生日等各種記念日同時到来状態でございます。

小野さんと渡邊さんは昨秋初演予定であったライト版『白鳥の湖』延期により全幕では待望初ペア。昨年11月のシェイクスピア・ソネットでは約1時間10分
舞台に2人きりで各々何役もこなし緊迫感から繰り出す美の連なりに驚愕したわけですが、騒動喜劇物でも目線呼吸で語り合いが聞こえ、揃ってお洒落な色気ムンムン。
1コマの中で繰り広げられる表現が細かく詰められ、しかもやみくもに慌ただしいのではなく整理整頓されていて、上質な流れに繋がっていました。
賢く勝気な、黒い魅力もちらつかせる姐さんスワニルダと、おっとり気味でほんのり隙のある点が人間味を思わせ
憎めない伊達男フランツなカップルで見目麗しうございました。

コッペリウスはお2人とも初挑戦で両キャストゲスト無しであったのは初です。中島さんは初日は緊張もあったのか
特に小道具使用場面が慎重な余り段取り風味に見えかけた点もありましたが、(アルコールに加えマッチ使用ですから一歩間違えれば大火事。危険な振付ではある)
2幕のバトルをしつつも嬉々とした会話が聞こえてくるスワニルダとのやりとりに思わず目を留めて注視。
フランツ救出使命が第一であれどスワニルダもついコッペリウスの興味を惹く行為を受け入れ互いに意地悪しても楽しむような光景が広がっていました。
2回目は肩の力が抜け小道具使いは滑らかに、品良く紳士然としたスマートな趣に加え不気味さも宿り大前進。
恐らくはプティ版コッペリウスとしては最年少であると思いますが、人形と同時にコッペリウス自身の心も壊れてしまう哀しみが
最後はひたひたと伝う幕切れに至るまで、実年齢の若さを掻き消す好演でした。

そして今回最大の話題でしょう。長年新国立劇場バレエ団で主役を務めてこられ、2014年12月公演『シンデレラ』以来待望の復帰
山本さんのコッペリウスは品位ある紳士な趣きや 奇怪、深い悲哀で舞台の格をを何倍にも上げてくださいました。バレエ界の至宝です。
昔マルセイユ・バレエ来日公演でプティ本人のコッペリウスをご覧になっていた方々も絶賛していました。
扉を開けての登場からしてダンディな魅力と滑らかな中にもユーモアが光る所作で瞬時に洒落た世界へと誘ってくださり
また小道具、特に鍵の落とし方がいたく自然で準備しました感が皆無。そしてコッペリア人形とのダンスでの同じリズムであっても
緩急の付け方見せ方がそれはそれはうっとりする流れを描いていらっしゃり
憧れ愛おしそうに抱くかと思えば狂おしい目に豹変して畳み掛けたり、されどダンスはあくまで優雅な身のこなしで人形の持ち方抱き方も妙に色っぽく映りました。
コッペリア人形の首の辺りもぶらぶら揺れずに保たれていた点にも驚きです。
だからこそ、最後の悲哀がとことん深く、老いらくの恋の嘆きが胸を掻き毟るように刺さり伝わる幕切れでした。

それからこちらは誠に個人の事情ではございますが、私の中で歴史が動いた、山本さん渡邊さん奇跡の、世紀の共演実現!
現在バレエ鑑賞歴約32年ですが、この間において心から虜になったのは2人のみである男性ダンサーが遂に揃って同じ舞台に並ぶ瞬間が近付き
こんなにも楽しみな男性主要役の共演今迄あったか⁈ 遂に14時40分、その時歴史が動きました。
大股歩きコッペリウスと追いかける小走りフランツで共演の一歩実現です!!バレエの舞台にしてはいたく軽妙な第一歩ではございましたが、
例えば共演は共演でも王子と国王、といった役どころではなく見せ場が互角な主役級配役でいきなり初共演ですから、
2週間以上が経過した今も余韻に浸り、加えて喪失感に駆られております。元祖王子と新鋭王子、年齢や役柄は異なれどとにもかくにもお2人とも美しく品性があり
とりわけ椅子に腰掛け燭台の灯りに照らされながら書物に目を向けるフランツと、フランツに薬入りシャンパンを飲ませようと
更に忍び寄るコッペリウスの並びは昔のフランス文芸映画を彷彿とさせる古風で神秘的な絵になるお2人でございました。
ああ、コッペリウスとはシャンパンパーティーに花を咲かせ、しかし結局は頬ツンツンをしてくれていたフランツの元へいき
お姫様抱っこまでされる世界一幸せな小野さんスワニルダよ笑。
お3方が並んだ写真を目にするたびにスワニルダ顔嵌めパネルがあればと我が容姿を顧みず1度でも妄想した管理人をお許しください。

プティ版『コッペリア』でのフランツとコッペリウスのような軽妙洒脱な喜劇共演も勿論嬉しいのですが、
いつかは重厚濃密で理性の歯車が狂い道を踏み外す系の作品での共演も心よりお待ち申し上げます。
共演決定発表時の記事でも綴りましたが役への入り込みや表現の厚み、深さ、インタビューではパ・ド・ドゥがお好きであると仰る等お2人とも共通項がいくつもあると捉えております。
管理人はまだ諦めておりません、『アンナ・カレーニナ』での共演を。誰しも不可能と思っていた山本さんカレーニンに対抗できる
ヴロンスキーがようやく現れたと驚き喜ばしくも不思議な心持ちになり、
同作品でも使用されたチャイコフスキーの「悲愴」が延々と脳内再生であった
鑑賞体制が再び変わりゆく初期の状況は約4年半が経った今もよく覚えております。

スワニルダ友人は2キャスト組まれ、米沢さん池田さんスワニルダチームは若手中心で初々しくキュート。
その中で良い意味で少し異質な輝きを放っていたのは朝枝さんで、色気をふわりと滲ませた艶やか美女でした。引き締めリーダー役は益田さんと見受けます。
対する小野さん木村さんチームはベテラン及び個性派揃い。押しが強くフランツには渾身の肩ぐるぐる回しで猛アピールしていた飯野さんや、
負けじと対抗する意外と気の強そうな広瀬さん、細田さん寺田さんのお姉様ペアも良い味を出し
(このお2人が入っているのは長年のバレエ団ファンとしてやはり嬉しい)、
唯一!?協調性を大事にしていそうな柴山さんに、皆の妹分で最後まで住居侵入を拒む姿も頬が緩む可愛らしさであった渡辺さん、と個性くっきりなチームでした。
両チームとも共通していたのは腰振りやお尻の突き出し、スカート摘み上げも品を保って行っていたことで
音楽と一体となっての可愛らしい戯れが気持ち良く目に入ってきました。終盤、結婚式前のスカート摘み上げしながらの一斉横切り袖捌けは
いつ見てもサザエさんのエンディング場面に見えしかも引っ込んだかと思えば今度はフランツを先頭に逆戻り。毎度笑いが止まらずです。

幕開けのストリートオルガンが奏でるワルツからフランスへと導かれ、娘たちと衛兵さんの朝のマズルカにも幸せ募るばかりでした。
行進も訓練調ではなくおもちゃの兵隊さんのような小気味良い調子で、娘たちのおちょぼ口や腰振りも思い切りが良く、且つ品もあって
小粋な空気感が自宅お茶の間に広がっていたのは明らかです。目が追いつかず大忙しな鑑賞でした。
ピンクや抑えたブルー、凝ったレースを何層にも重ねた娘たちの衣装は何度観てもセンス抜群で、フリルやリボンも可愛らしく
衛兵さん達の抑えたブルーの軍服、アクセントになる赤い羽根も色合いが絶妙です。
装置は一見簡素でも柔らかなグレーで無機質ではなく、彫り込みの線も見え、また衣装とのバランスが宜しく物寂しさは無しです。

演出について、新国立にプティ版『コッペリア』がレパートリー入りを知った際には登場人物が少なく、結婚式のディヴェルティスマンも無く
お祭り大団円な曲調に反してコッペリウスが項垂れ遂には人形が全壊する残酷さな幕切れを好ましく思えず
古い絵本を捲るように色彩も演出もほっこりとしたピーター・ライト版を始めとするスタンダードな版を希望していたため決して賛成歓迎ではありませんでした。
しかし新国立初演の2007年にいざ観てみると生き生きとした娘たちや衛兵の群舞の効果にも救われ想像よりは痛ましい展開には思えず
3キャスト中ただ1人自前フランツであった山本さんのゲスト以上に色男な青年も作品に好感を持つ後押しとなりました。山本隆之さんは偉大だ!

劇場で観て、中でも山本さんの久々復帰に大きな拍手を送りたかった思いは残りますが、配信してくださったことには感謝が尽きず
そして今回がきっかけでバレエ鑑賞に興味を持ち劇場に行ってみたいお気持ちになった方の声多数と耳にし次回以降の公演集客に繋がればと願います。

尚配信最終日につきましては、ようやく共演祈願成就を祝して都内及び大阪からもご連絡を多数いただきありがとうございました。
当初は5月1日と5月8日の本来のファーストキャスト日に関西からも山本さんの舞台鑑賞を通して親しくなった知人が何名も来場予定でおり(勿論山本さん福岡さんの同門共演日も)
ファーストキャストのフランツ&コッペリウスの並びが観たいからと初日または最終日鑑賞を決めた、
またこの機会ほど新国立本拠地鑑賞デビューに相応しい日はないからと初日にオペラパレス初体験を検討していると
関西在住の友人から聞いた際には、喜ぶ余り意識が飛びかけたほどです。
ある大阪の方は隣にいた同業者の方に、この日に絶対観たほうがええと初日を勧めていらして
その光景を眼前にしたときの感激を思い起こすと、ううやはり無観客であったのは悔しさも残ります。
配信には感謝するばかりですが、劇場で歓喜を大勢の方々と共有したかった気持ちは拭えず、いつの日かの有観客再演を心より願っております。

『コッペリア』の次公演は2021年6月『ライモンダ』。中世十字軍時代を舞台にした、歴史絵巻と恋物語が融合した大変美しい作品で、
新国立劇場での上演作品の中で3本指に入る好きな作品であり、2004年初めての新国立バレエ鑑賞時の作品です。
あらすじは王道の少女漫画なものですが史実をもとにした東西異文化の交差も描かれ、ひたすら舞踊が続く飽きぬ展開で写本のように繊細な衣装美術も見所。スケールに圧倒されます。
バレエ鑑賞初心者精通者問わず楽しめますので、皆様どうぞ足をお運びください。
因みに管理人はバレエ作品の中で最も聴き惚れる音楽は『ライモンダ』で渋味ある格調高さがいたく好みでございます。
またバレエのあらゆる作品の中で一番好きな女性ヴァリエーションは、全幕上演は別として発表会やコンクールでも披露される機会はまずないであろう
(華と哀愁が隣り合わせな実に優雅な振付なのですが、先生方もご存知の方は少なく定着していないのだろうか)
2幕でのホルンで始まるライモンダのヴァリエーションです。東京都内に1人いるか否かの少数派でしょう。
お饅頭の騎士かと見紛うジャンのふくよかな肖像画は描き直して欲しいと常々思ってはおりますがもう我儘は申しません。
予定通り有観客上演してくだされば万歳でございます。ああ金曜日のジャン、十字軍遠征からの帰還時のマント姿がさぞ凛然として美しいことでしょう(妄想だけでも心臓印)。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/raymonda/

※【重要】緊急事態宣言期間と重なる『ライモンダ』チケット販売についてのお知らせが発表されています。
買いそびれのないよう、ご注意ください。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_020310.htm




舐める程度に抑えていた、フランス仕込みの千秋楽フランツ(南仏のバレエ団で約6年活躍され、ヌレエフの孫弟子にあたる)に敬意を表して、と
申したいところでしたが欲に勝てず、夕刻以降シャンパンが進み過ぎました。そして薬混入が原因ではなく朝も早よから目覚めてしまったため就寝も早し。



今年はローラン・プティ没後10年。逝去された2011年7月の朝日新聞記事には、山本さんのコメントが掲載されています。切り方が乱雑で失礼。
今回約7年ぶりに待望の新国立復帰及び2002年の『こうもり』新国立初演時プティから直接指導を受けられた経験をお持ちの山本さんが
コッペリウスを踊られたこと、プティも心から喜んでいるに違いありません。



余談ですが、私が初めて観た吉田都監督の舞台は干支2回り前の『コッペリア』。地域密着なローカル公演として実現し
しかし英国からいらしたスターペアに(フランツは現英国ロイヤル・バレエ団芸術監督ケヴィン・オヘアさん)
当時は若かりし、でもないが(テレビ開発前の時代生まれとの疑惑が当時からあり)私も興奮した記憶があります。
この公演をご覧になった方を探せどまだ1名にしかお目にかかっておりません。
当方も発表会や合同洋舞祭にて立った経験のある調布市の市民ホールに英国ロイヤルのプリンシパルペアが出現した光景は
今も不思議で仕方なく、チケットも信じ難い価格。チラシの裏を見ると、出演者の中には小池ミモザさんや島添亮子さん、
そして今回もスワニルダ友人を務めた細田千晶さんの名もあります。
それにしても、この公演でスワニルダを踊られた吉田都さんが24年後の現在、調布ローカル公演同年1997年開場の新国立劇場舞踊部門芸術監督として率いていらしていて
しかも日本史で言うなら『大化の改新』、世界史で言えば『フランス革命』に相当する我がバレエ鑑賞人生を揺るがす歴史的共演が
振付演出こそ異なれど演目が『コッペリア』で実現するとは。管理人における干支周期の奇妙な法則の多さ、今回も恐ろしや。

2021年5月6日木曜日

上野の森バレエホリデイ2021




ゴールデンウィークが終わりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。暦通りのご出勤の方は
本日は頭ぼんやり状態でのご勤務であったと察し(私です)休暇中は配信三昧であった方も多くいらっしゃることかと存じます。
私も上野の森バレエホリデイや初台へ出向く予定が急転直下の宣言により中止となり、上野の森は昨年と同様オンラインプログラムのみに変更。
昨年は3週間ぐらい前?に宣言発出により急遽オールオンラインに切り替え、今年こそは東京バレエ団公演や観客を入れてのクロストーク、出店を始め久々の現地企画と
オンライン両方のプログラムを企画されていましたがたった数日前の宣言決定により今年もオールオンラインに。
チケットも売り出しており、間もなくの本番で既に機材搬入も始まっていた頃かもしれず、実行委員の方々や関係者の方々の労苦を思うとやるせません。
それでも昨年に続いての急遽変更にも拘らず自宅で楽しめるプログラム配信には感謝するばかりです。

大盤振る舞いの初台全キャスト配信は現時点で3回全て観ており、(当初は劇場で5回鑑賞予定でしたので)、明後日が大本命の回。
世紀の共演だの奇跡の共演だのあれやこれや3月半ばから1人騒いでおりますが、後者の表現は何処かで聞いた覚えが。
そうでした、シルヴィ・ギエムの『ボレロ』でバレンボイム指揮のシカゴ交響楽団が演奏、東京バレエ団も共演する公演が20年ほど前にあり
公演名称が「奇跡の響演」でございました。そんなわけで、話は繋がりませんがNBS系の話題から。
上野の森バレエホリデイの配信動画をいくつか視聴いたしましたので、手短かな感想を。5月9日まで公開されている予定です。

特に面白かったのはニコライ・フョードロフさんの解説付きの東京バレエ団『ジゼル』今年2月公演の本番やリハーサル約30分編集映像で
振付や役柄を掘り下げての解説で大変分かりやすく、嬉しい学びとなりました。
中でもヒラリオンに潜む身勝手さ(私の表現が良いか否か、捉え違いをしておりましたらすみません)については納得で
ジゼルのことが本当に好きならば、アルブレヒトの正体暴露もジゼルの心臓に支障がない方法で伝えようとしなかった点に疑問を持っておりました。
度を超えた遊び人坊ちゃんなら話は別ですが、ジゼルとの距離感や接し方を考えれば、アルブレヒトのほうがずっと思慮深い方法をとっていたと思うわけです。

またジゼルのヴァリエーションが元々は無く、新たに挿入されたアダンではない曲である点にも触れ、フョードロフさんが仰る通り
別のところから持ってきたとは思えぬほど調和している踊りと見受けます。コンクールでも大人気な『ライモンダ』夢の場と言い
『白鳥の湖』黒鳥(悪戯っ子のほう)と言いあまりにも定着してしまい、 本来原曲には存在していないと思わせないヴァリエーションは諸々あり
『ドン・キホーテ』や『パキータ』『海賊』などはもはや誰が何処を作曲したか把握すら困難ですが改訂者のセンスや観客の慣れの恐ろしさを感じざるを得ません。

https://youtu.be/4g-6g96VWpk


それから神戸に本拠地を置く貞松浜田バレエ団の約3分にまとめられたレパートリー映像も見どころが詰まり、
コンテンポラリーの作品群や実力も高水準と今更ながら驚きを覚えます。
バレエ団のダンサーが出演する外部公演や発表会は幾度と観ているものの、バレエ団としての公演を観たのは『くるみ割り人形』東京公演と
NHKバレエの饗宴『ドン・キホーテ』1幕と森優貴さん振付の『死の島』。レパートリーにあるキリアンやナハリンの作品ももっと観てみたいと興味を持たせる映像です。

https://vimeo.com/537594789


東京シティ・バレエ団の『白鳥の湖』2016年ダイジェストも公演映像、今年7月に公演が予定されています。
オーソドックスながら、チュチュの羽が長めでふわっと靡く光景や オデットが王子に裏切られた悲しみを切々と訴える場にてコール・ドも共に躍動。
終盤には今では『チャイコフスキー パ・ド・ドゥ』のアダージオ曲として定着した音楽に乗せてオデット、王子、白鳥達が決意を新たにし
2人を9の反対の形で取り囲むユニーク且つ壮大な場面も思い出しながら視聴いたしました。
藤田嗣治の美術や東京都交響楽団演奏も話題を呼んだ、2018年の公演を鑑賞しております。

https://vimeo.com/538520420


まだ全ては網羅しておりませんが、クロストークや様々なバレエ映像など充実していますので(Youtubeとvimeoに分けて公開しているもよう)
公開終了までにもういくつか視聴してみようと思っております。

2021年4月30日金曜日

踊れ、その身体がドラマになるまで~振付家・矢上恵子 作品上映会&メモリアルトーク~





神保町のブックハウスカフェ2階ひふみ座で開催されたバレエチャンネル主催の矢上恵子先生作品上映会トーク
「踊れ、その身体がドラマになるまで〜振付家・矢上恵子 作品上映会&メモリアルトーク〜 」に行って参りました。
https://balletchannel.jp/14798

※バレエチャンネルさんのサイト内のイベント紹介映像や、作品映像、佐々木大さんへのインタビュー編集全て福田紘也さんが手掛けてくださっています。センス抜群です。
※内容が実に濃く、何処から纏めるべきか分からずいつも以上に纏まり欠如な記事ですがお許しください。

ゲスト登壇者として愛弟子の山本隆之さん、福岡雄大さん、福田圭吾さん、紘也さん、と全員同じスタジオで育ち
新国立劇場で活躍なさる4名が集結し解説は恵子先生とも長年所縁が深かった桜井多佳子さん。
恵子先生のお姉様でいらっしゃる矢上久留美先生のご挨拶や佐々木大さんインタビュー映像もあり、
山本さん達は愛弟子且つ踊り手側から見た恵子先生、作品の魅力など真摯にたくさん語ってくださいました。 多数の作品上映もあり、著作権が厳しく動画サイトにもまず載らなかった為東京で、また配信でもこんなに一気に鑑賞できるとは誠に喜ばしい限り。
関西、四国、山陰でも鑑賞しておりますがもっと東京での披露機会もあればと願ってきた為歓喜。大変嬉しく中身ずっしりな企画でした。

上映作品は全7本。初見作品もあれば鑑賞当時を懐かしく思い起こす作品まで、集中して見入った次第です。
まずは1999年2月の世界バレエ&モダンダンスコンクールで田中ルリさん、佐々木大さんが踊られ
田中さんが金賞、恵子先生が振付賞を受賞されたaccordanceから。(佐々木さんは田中さんのパートナーとして出場)
司会進行のバレエチャンネル編集長阿部さんも仰っていましたが、本当に20年以上前とは思えぬ洗練度に驚嘆。
特別派手なテクニックが繰り出されていく展開ではないながら、近未来を突き抜けていくような徐々に詰めて行く踊りの連なりを凝視せずにいられず。
桜井さんによる詳細なコンクールレポートが掲載された書籍が手元にあり読み返し思い出したところ
恵子先生のお名前や作品についてはまだ意識をせずにおり、田中さんの金賞受賞や田中さん佐々木さんによるグラン・パ・クラシックの伸びやかな写真、
エレーナ・フィリピエワ、デニス・マトヴィエンコ、サラ・ラム、アリーナ・コジョカル、遅沢佑介さん、そしてモダンダンス部門では平山素子さん、と
このままガラ公演開催が可能であろう強者揃いの出場者ばかりに気を取られてはおりましたが、恐らくは初めて目にした恵子先生作品であったかもしれません。

順序や過程が異なるかもしれませんが、accordanceは大人数構成でも上演され、翌年2000年あたりの開催であろうKバレエスタジオの公演での写真が
ダンスマガジンに掲載。上から銀色の渦巻きのような装飾が吊るされ、リフトされて天を仰ぐ恵子先生?や囲うダンサー達のスケール感ある場面が写っています。
また私の記憶違いでなければ、Kチェンバーカンパニーのダンサーが改訂し子供の生徒さんのみによるaccordance Ⅱも数年前に披露されていたかもしれません。
近年では振付は全く違う趣向で福田圭吾さんも同名の作品を発表されているかと思います。

2本目は『舞踏への勧誘』に振り付られたFrozen Eyesー凍りついた目ー。初演は田中さん佐々木さんが名古屋のコンクールで
もう1本の恵子先生振付コンテンポラリー作品として踊られたときですが 今回の映像は紘也さん。
恐らく昨年10月の恵子先生によるコンクール作品上演集にて披露されたKバレエスタジオの舞台映像でしょう。
既に恵子先生がお亡くなりになっていたため圭吾さんが教えていらしたそうで、心が壊れた少女に寄り添うストーリーや
注意すべき視線など、踊る上でのポイントを語ってくださいました。あらすじを頭に入れた上で観ると、少女の冷淡な壊れ具合が一層怖ろしいと感じさせます。

3本目はWitz long。圭吾さんが出場された2003年のローザンヌのコンクール映像によって最も知られている作品とのことですが
実は私はその映像はちらりとしか観ておらず、昨年のDAIFUKUにて福岡さんで初鑑賞。
今回の上映も福岡さんで、身体がバラバラになってもおかしくはなかろう激しい展開や随所に盛り込まれたギリギリのバランスもするすると踊りこなす姿に天晴れ。
漫画に疎い管理人、つい数日前に知りましたが近年は漫画でも取り上げられた作品だそうです。
4本目のSalutは初鑑賞で、2002年のジャクソン国際バレエコンクールにて初演。サンサーンスの『死の舞踏』で
椅子と長めのシャツを巧みに使いながら圭吾さんがおどろおどろしい空気を醸して踊り、圧巻でした。
福岡さん、圭吾さんによればシャツ問題椅子問題が生じたそうで、汗でシャツ貼りつき呼吸困難に陥ったときや
椅子を持ってそのまま床で回転して起き上がるなど無謀な要求もあったとか。(やるしかないそうです涙)

次がBourbier。福岡さんが2008年に出場されたヴァルナ国際バレエコンクールにて踊られ3位入賞、そして恵子先生は振付賞を受賞されました。
初演は恵子先生も出演された大編成上演で2007年と思われます。(改訂や構成変更などこの辺りの事情知らず失礼。
2009年にはバレエ協会公演における東京上演もそれはそれは嬉しいもので、ようやく東京の観客にもご覧いただく機会に嬉しうございました)
福岡さんにとってはとりわけ思い入れの強い作品とのことで、 作品のコンセプトやいつもとはピリピリとは少々違った雰囲気の中
先生と一緒に作り上げた、 魂を磨き天へ返す、と先生の教えをじっくり振り返りながら語ってくださいました。
カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲ソロ部分はKバレエスタジオの舞台では節目に踊られる機会が多い作品なのか、山本さんも何度か踊られていて
(2014年の恵子先生舞踊生活50周年小品集、2015年東京にて佐藤勇次さんスタジオ公演、2016年香織先生追悼公演)
福岡さん山本さんお2人が最後の魂天に返す振付をその場で順々に再現してくださいました。
福岡さんは舞台のときとほぼ同様に全身を大きく使って再現され、対する山本さんはだいぶ遠慮がちで笑
両手で包んで掲げる箇所では後輩達から「おむすびみたい」と笑われてしまったほど。
しかし、舞台を観た者から言わせてもらいますと、「神降臨」な心を震わせ浄化させる踊りでございました。うう、また拝見したい。

続いては出ました!大作『ノートルダム・ド・パリ』より圭吾さんのカジモドと山本さんのフロロ。
とにもかくにも山本さんの美しくも苦悩を押し殺すように熱を帯びていく姿が胸に迫り、一部分だけでも映像を通して再度鑑賞でき感激。
フロロ、このあとみるみると冷酷な面を露わにしていきますが、全編もう一度観たいものです。
2011年に大阪で1回上演したきりで、特に多くの方にご覧いただきたい作品でフェビュスは福岡さんでした。
桜井さんが演出の特徴として、バレエのノートルダムには珍しく山羊が登場する点をご説明。
登場するバレエ映画は1本あるくらいとのことでそういえば、他の版では観たことがなく
矢上版では恵谷彰さんが俊敏に踊っていらっしゃいました。そして佐々木大さんも群舞の中に入り、
太い線で描かれた巨大な鐘や骨組みの大掛かりな装置、と重厚且つスタイリッシュな作品です。
一方笑うに笑えぬ、山本さんが明かしてくださった布団逸話には恵子先生の無茶ぶりに再度触れた思いでございます。

最後はToi Toi。スピード感とユニークな魅力も光る、観ていて気持ちが前向きになってくる大人数構成作品で2003年に大阪で初演されました。
複数のグループに分かれて組まれ展開していくフォーメーションと言い、後方に設置された壁を用いて飛び出してきたり引っ込んだりと
面白い変化をもたらす振付と言い、一時も休む間もなくエネルギーが上昇していく振付に痺れるばかりです。
冒頭の男女のデュエットは恵子先生と福岡さん。実は恵子先生ご自身の作品でたくさん踊っていらっしゃるお姿は多くは拝見しておらず、5本の指で数えられる回数。
記憶のある限り初ケイスタ鑑賞での2007年Bourbier、青少年に贈る舞台鑑賞会でのâme、2008年MRBスーパーガラでの
眠れる森の美女パ・ド・シス音楽に振り付けられたFee×6、2009年のADOです。
Toi Toiでのしなやかさ、強靭なバランス感覚と挙げたらキリが無く、恐れ入りながら見入ってしまいました。
今回の映像は冒頭のデュエットは2003年、大人数で繰り広げる後半は出演者の顔ぶれからして恐らくは2014年公演かもしれません。2016年には出雲でも上演されています。

佐々木大さんのインタビューも大変面白く、恵子先生との出会いや踊った作品について。
そして恵子先生の名を広めたいと密かに地道に営業活動を1人でなさっていた逸話まで、それだけ恵子先生という人物、作品に惚れ込んでしまっていらしたと見受けます。
また同じ作品でもデュエットからソロに変えたものや、恵子先生の愛弟子達の追い込みを目にしたときの衝撃など、
温か且つ尊敬の眼差しで語ってくださっていました。お話の内容や言い回しも分かりやすく、インタビュアー紘也さんの質問も的確で素敵コンビな対談です。

それから桜井さんの解説も細かな箇所まで知り尽くした内容ばかりで、恵子先生作品を初めてご覧になる方にも何度も鑑賞している方にも分かりやすく
あっと驚かせるお話満載でした。20年以上も前から取材を重ねられ、恵子先生と愛弟子達双方との親交が
余程深くなければ知り得ないお話を溢れんばかりに伝えてくださり、感激でございます。

身内として同僚としてずっと過ごしてこられた久留美先生のお話もじっと聞き入り、不安になるほど生徒に対する厳しい教え方や
仕事をたくさん入れて猛烈な忙しさで過ごす恵子先生をずっと心配なさっていたようです。
また今は恵子先生の作品をいかにして残し踊り継いでいくか、日々模索し著作権などの知識をもっと得ていきたいともお話しになっていました。
最後福岡さんが、恵子先生作品はまだまだたくさんあり、踊りたい方はKバレエスタジオに連絡くださいと宣伝営業し呼び掛けていらしたこと、
久留美先生も嬉しがっていたことでしょう。昨年の舞台のプログラムには確か今年の9月中旬にKバレエスタジオの舞台開催予定で、私も観に参りたいと思っております。

最後に(まだ続きますが汗)、愛弟子の皆様。この方々が人前に一堂に会して話をしてくださる機会はこの先無いであろう貴重な時間で感謝してもしきれず。
バレエに真剣に誠実に向き合い、恵子先生の愛情と指導を一身に受けてこられたお話や
今も変わらぬ先生に対する尊敬の念など、数々のお話を真摯に丁寧に語ってくださいました。
山本さんは何処までも控えめな語り口でいらっしゃいましたが、恵子先生の最初の弟子として重圧もあり?
そして厚い信頼も得ていらしたと窺え、トークイベントにおいてもやはり別格なオーラが漂いました。そしてふと飛び出す一言が面白いのです笑。
恵子先生の格言や教えを最も詳しく話してくださったのが福岡さんで、背骨の歪みや贈り物のスニーカーの意味、魂を磨き続けることの大切さなど
1つ1つじっくりと回想するように伝えてくださいました。

濃い関係性のエピソードについて触れていらしたのは圭吾さんで、恵子先生作品を踊る他の教室の生徒さん達で苦手そうな子や時間がかかっている子がいると
すかさずアシスタントの圭吾さんに恵子先生の目の合図が走り、フォローに回っていらしたとのこと。
目での会話が可能になるほど濃い間柄であり、また絶対出来るようになると出演者のレベルを結果として引っ張り上げる指導であったとのこと。
そういえば、徳島や愛媛の教室の舞台で恵子先生作品も何度か観ておりますが、皆しっかりと踊りこなしていて練習方法が気になっておりました。

3人の愛弟子達とは少し異なる関係性を築いていらしたと打ち明けていらしたのは紘也さんで、弟子史上初!?正直に「無理です」と言ってしまったところ吹っ切れて
創作の話など正直に色々話せるようになったとのこと。追悼公演プログラムでの恵子先生へのメッセージ欄においても、
寂しいや悲しいといった言葉はなく中華をご馳走したときの先生の素っ気ない!?反応を記されたりと
何処までもユニークな感性は恵子先生からも大そう愛されていらしたと想像いたします。

それから恵子先生に、恵子先生作品に着目し東京にてイベントを企画され、更にはオンライン配信も実現に漕ぎ着けてくださった
バレエチャンネル編集長の阿部さんには感謝するばかりです。素晴らしい作品を多数生み出しながらも恵子先生は大阪を拠点とされていた為
公演の新聞記事は大阪や関西圏止まりであり、また著作権も厳しく世間に映像が出回ることはまずありませんでした。
立て続けに複数作品の上映を東京にて実現させオンラインで全国発信されるとは、アーカイブを通して自宅の大画面にて
Toi Toiを何度も眺める日が訪れるとは1週間が経った今も夢のようです。
佐々木さん、桜井さんも仰っていたように、恵子先生の作品を初めて観たときからすぐ募ったのは多くの方に知ってもらいたい衝動であったそうで
それだけ瞬時に観る者や踊り手も惹きつける恵子先生、作品の魅力を全国規模で発信してくださり、感激の一言では言い尽くせません。
バレエチャンネルさん、本当にありがとうございました。
恵子先生の作品を初めてご覧になった方も、もっとたくさん観てみたいと興味を持たれた方は大勢いらっしゃるに違いありません。

それにしても、バレエ音楽や作品史関連の講座で何度も足を運んでいる神保町ひふみ座に
山本さんがお越しになり登壇される日が到来するとは。ひたすら拝みながらお話に聞き入りました。




帰り、地元で1人静かにビールで乾杯。恵子先生、ビールが大好物でいらしたと聞いております。


※以下、今回のイベントに関連しているであろうKバレエスタジオのプログラムや記事掲載の書籍などを紹介しております。



恵子先生作品を初鑑賞した2007年Kバレエスタジオ舞台プログラム。チケット申し込み時、大阪に電話をかける行為も慣れずでまだまだ小心者であった私は
送付先住所を聞かれ郵便番号を申しかけたところで「東京から来はるんですか!?」と強烈な大阪弁にたじろぎかけましたが
恐らくは香織先生がとても優しく案内をしてくださったことは今も覚えております。その後も関西、四国、九州の団体の公演申し込みにて
遠方在住に電話口でびっくりされる事件は度々ありましたが笑、(追っかけあるある)
回数を重ねて行くうちに慣れてきたものです。そして年を重ねるごとに私の神経も図太くなったかもしれません。
2007年以降Kスタさんの舞台は、昨年2020年まではスタジオ移転のため舞台開催が無かった2017年を除いては毎年1、2回は大阪なり、山陰なりで鑑賞しております。



2007年夏、初めて恵子先生の作品鑑賞が叶い感激と興奮の坩堝であった管理人でしたが、振付の意図や中身に至るまで考えが及ばず余裕もなく
これといってじっと深く観てはおりませんでした。スタイリッシュでパワフルな大作をこんな単純な見方をして果たして良いのか
もっと緊張感を持って鑑賞するべきかと不安になっていたところ助けられたのが桜井さんの解説でした。
同年12月に大阪にて開催された大阪市主催の青少年のためのバレエ鑑賞公演にて『コッペリア』(山本さんが夜の部にフランツ役でご出演)
そして恵子先生振付のコンテンポラリーâmeの2本立て上演に、大阪市民でもなく青少年な年齢でもない身ながら足を運び鑑賞。プログラム解説を執筆なさっていたのが桜井さんでした。
恵子先生作品の鑑賞法についてはごくシンプルで、理屈ではなく、こころで受けとめてくださいとの文字。
心をぐっと持っていかれる、パワーを貰えた、これで良いのだ!と肩の力がだいぶ抜けた気がいたしました。
後年恵子先生と話をした際にも、先生の作品は宇宙まで導かれそうな力に溢れていて拝見すればするほど好きになりますと素人の訳の分からぬ感想に対して
「楽しんで観てくれるのが一番嬉しいねん!ありがとなー」と豪快に笑いながら語りかけてくださり、難しく考えずに観て欲しいと強調なさっていました。




抜粋上映された2011年の大作『ノートルダム・ド・パリ』プログラム。毎回プログラムデザインもスタイリッシュです。
ノートルダムも痺れる作品でしたが、2009年に鑑賞したカルメンも好きで、少女時代のカルメンから描き、人間の心の闇にも迫る大作でした。
山本さんのエスカミーリオ、色男過ぎました。



2016年出雲公演プログラム。Toi Toiの最後、全員で両手を掲げる場面、星空へと導かれそうな写真です。



今回のお話で、あからさまに仲良しな面は見せないながら、福田兄弟は実はとっても仲が良いとよく分かりました笑。
新国立劇場バレエ団には複数兄弟ダンサーがいて、福田兄弟と後輩兄弟との対談記事が2017年7月に発売されたダンススクエアVol.20に掲載されています。
発売日が我が節目であったことと諸々目的の事情があり、発売早々に購入し読みました。
福田兄弟、ちゃっかりお互いの良いところを褒めつつもここではそう仲の良さをアピールなさっていませんが
いかんせんおしどり夫婦の如く!?仲が良すぎる後輩兄弟の微笑ましい関係に衝撃を受けたり優しく話を引き出したり
立ててあげたりと気遣いと思いやりに溢れた先輩兄弟です。



音楽之友社1999年5月号に田中ルリさんが金賞受賞、恵子先生が振付賞を受賞された世界バレエ&モダンダンスコンクール取材記事と田中さんへの単独インタビューも
掲載されています。執筆者は勿論桜井さん。私服姿の出場者フィリピエワに圧倒されたり、心の持ち方を佐々木さんから学んだり
恵子先生を佐々木さんに紹介いただき『アコーダンス』と『凍りついた目』の2本を振り付けてくださったが両方とも難しく、
ファイナルにまで残れるかの不安や本番中のひやりとしたことも話してくださっています。



20年前に大特集された関西バレエ事情。Kバレエスタジオの紹介では前半でも少し触れたaccordanceの大人数構成版のカラー写真が掲載。
関西エリアのカンパニーの一挙紹介バレエガイドはこちらも桜井さんが案内なさっていて、
法村友井、貞松浜田、佐々木美智子バレエからKバレエスタジオ、地主、野間、ワクイバレエ団など数々の団体や特徴を紹介してくださっています。
山本さんへのインタビューもあり、恵子先生の指導については厳しいが愛情がこもっているから受け止められる、とのこと。
来シーズンより新国立劇場契約ソリストと紹介され、時の経過は早い。王子貴公子系の役以外も挑戦したいとも仰っていて、のちには古典、コンテンポラリー問わず主役の百貨店です。

そして時が流れ20年、ダンスマガジン2021年4月27日発売の最新号にてこのゴールデンウィークに無観客上演され4キャスト無料配信される
新国立劇場バレエ団ローラン・プティ版『コッペリア』最終日の8日に山本さんコッペリウスと共演するフランツ役ダンサーのリハーサルレポートでは
執筆者は「バレエ団のレジェンド」と山本さんを表現しています。4キャスト全て楽しみですが、中でも8日、楽しみでございます。



バレリーナへの道57号、表紙は新国立劇場バレエ団初演時の『ライモンダ』主演は現新国立バレエ監督の吉田都さん。
間もなく配信が始まる『コッペリア』の次公演演目であり、次こそは観客入れての上演が出来ますように。
また今年と同様コッペリア当たり年だったのか偶々なのかコッペリア公演記事が3本続き、スターダンサーズバレエ団(延期に次ぐ延期で6月開催予定。スエズ運河事故影響とは)、
貞松浜田バレエ(5月末開催)、塚本洋子バレエ団(間もなく始まる新国立コッペリア配信トップバッターの米沢さんらしき姿が友人?役で写っています)
話を戻します。Kバレエスタジオの設立について詳細に紹介されていて、取材は勿論桜井さん。矢上三姉妹の子供の頃の写真や貝谷バレエ時代の舞台写真もあり。
幼い頃から仲良しであったことや3人揃っての留学までの道程、恵子先生が遊園地の着ぐるみの仕事で自らも踊りショーの振付もなさり引っ張りだこであった時代や
恵子先生は当初指導の仕事が嫌で厳しくすれば生徒は辞めると思ったものの生徒達が必死についてきたため何時の間にか教えることに夢中になった、
「生徒は自分の鏡」とインタビューで答えていらっしゃいます。福岡さんも今指導もする立場になって恵子先生の格言としてご自身に言い聞かせていらっしゃるようです。

ところでKバレエスタジオ紹介の次ページには2005年1月開催のNBAバレエコンクールレポートがあり、
コンテンポラリーの部の入賞者1位から3位までの6名のうち、2名がKバレエスタジオ、
2名が恵子先生が指導に出向きスクール公演でもほぼ毎年恵子先生作品を上演していた徳島の清水洋子バレエスクールの生徒さん。
作品名のみで振付家名の明記はないもののケイスタの方は当然恵子先生の作品でしょうし
清水バレエの生徒さん達の2作品も恵子先生に特訓された作品であった旨を耳にした覚えのある作品で、
つまりは少なくとも入賞者4名分の指導を同時進行で先生は行っていらして多忙極まるスケジュールをこなしていらしたと思えます。
イベントにて久留美先生も挨拶にて、恵子先生が仕事をどんどん入れてストイックに邁進していく為心配で仕方なかった、
香織先生と2人して案じていたと話され、コンクール以外にも多岐に渡ってこなしていらしたと窺え、猛スピードで生き急いでしまったのかもしれません。



大阪、及び関西でのバレエ鑑賞が増え始め、関西と関東のバレエ文化の違いについての記事は時々見かけその度に熟読はしておりましたが
最も面白く何度も首を縦に振りながら読み進めてしまったのが、7年前に紹介した、上方芸能の書籍。執筆者は桜井さん。
大阪のバレエ記事は大阪版にしか載らず全国区にはなかなか伝わらないなど、頷いてしまう箇所多数。
フェッテにてほぼ100%の確率で発生する手拍子文化にも言及され、私の記憶の限り大阪での舞台でフェッテのときに拍手が起きなかったのは
2019年9月新国立劇場バレエ団こどものための『白鳥の湖』フェスティバルホール公演ぐらい。
当初の主演予定ペアが直前降板し、代役ペアを知ったのは前日。大急ぎでチケットを申し込み、知った24時間後には大阪に来ておりましたので
行きの新幹線車内ではどう過ごしていたか記憶は彼方ですが、ただ今回ばかりは手拍子無しを願っていたのは覚えあり。
主演がお2人も急遽の代役でご出身地やキャリアからしても関西では踊り慣れてなさそうでいらっしゃいましたから手拍子が起きず誠に安堵したものです。
話を戻します。上方芸能別ページの一般アンケートとして大阪に対するイメージランキングもお馴染みな要素ばかりで笑、
私が大阪を初訪問した太古の昔である高校の修学旅行時とたいして変わっていないようです。






そんなわけでせっかく掲載されたKバレエスタジオの大きな記事も東京では入手できず、取り寄せても良かったのですが幸い大阪には年10回程度通っていた頃は掲載を知った翌訪問時に
梅田近辺の販売所へ。午前中に突如やってきた、標準語をまくし立てて新聞購入希望を伝えてくる変わり者にも販売所の方、親切に対応してくださいました。
どちらも2013年の記事で、スタジオ設立30周年記念の夏公演恵子先生新作Logosリハーサルレポート(矢上三姉妹が並んでいらっしゃる)と夏公演の山本さんの写真付き記事です。
リハーサルレポートの方は公演当日に購入、夏公演記事は佐々木美智子バレエ団バフチサライの泉鑑賞で西宮に行く前に購入。
佐々木さんがヌラリ、山本さんがワズラフ、福岡さん圭吾さんが剣の踊り、紘也さんが貴族、
そして福岡さん圭吾さん紘也さんはダッタン兵士も兼任。今回のゲスト陣総出演でした。
今回のイベント、恵子先生と香織先生は愛情かけて育てた弟子たちを揃って近くから笑いつつ目を細め、時として心配そうにご覧になっていたに違いありません。
そして、最前列に座っていたところ数列後ろから馴染みある大阪弁が聞こえ、振り向くとにっこり微笑む久留美先生そして、
となりのトトロの如くニイーッと笑い「やっぱりな、一番前におるな〜!」と楽しそうに声をあげていらした
恵子先生の表情にに思わず肩の力がふっと和らいだ 2016年11月の国立劇場にて山本さんが日本舞踊家と共演され在原業平を踊られた公演のときと同様
今回も腰掛けた我が席位置を面白がっていてくださっていたら、喜ばしうございます。

大変長く、そして私情も多々含む記事で申し訳ございません。お読みいただきありがとうございました。

2人のコッペリウス

更新が長期間滞り申し訳ございません。皆様いかがお過ごしでしょうか。緊急事態宣言の発令や対象告知が心臓に刺さりそうで
先週末にかけてはニュースから目を逸らし、水戸黄門に走った日もあった管理人でございます。
ゴールデンウィーク予定が飛びました、との方も大勢いらっしゃることかと存じます。

宣言前ぎりぎりで間に合った素敵なイベントもあり、明日辺りにはアップできるかと思っておりますが暫く滞っておりましたためひとまず更新。
新国立劇場バレエ団 ローラン・プティ版『コッペリア』が4キャスト全て無料配信されます。
2人のコッペリウスのリハーサル動画がバレエチャンネルさんより発信されていますのでどうぞご覧ください。
山本さんと中島さん、年齢やキャリア、アプローチも全く異なるお2人の見比べも面白さの要素の1つかと思います。






配信の詳細はこちらから。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/coppelia/

2021年4月18日日曜日

1年延期を経ての初の山形で牧版白鳥見納め 新国立劇場バレエ団 牧阿佐美版『白鳥の湖』山形公演  4月10日(土)《山形市》




新国立劇場バレエ団山形公演『白鳥の湖』を観て参りました。バレエ団にとっては1年延期の初の東北公演、
そして2006年秋に初演以来上演を重ねてきた牧阿佐美さん版『白鳥の湖』は最後の上演です。
https://yamagata-bunka.jp/event/2021/04/10038469.html


※今回最後の牧版白鳥ですので、役名や出演者名が明記されていない方の中で特に印象深かった役は勝手に解釈するなりして()して綴っておりますがお許しを。
その他、前回の速報でもない速報と重複する部分もございます。

オデット:米沢唯
ジークフリート王子:井澤駿
ロートバルト:小柴富久修
王妃:本島美和
道化:井澤諒
(熱血)家庭教師:中家正博
王子の友人パ・ド・トロワ:池田理沙子 柴山紗帆 渡邊峻郁
(ワルツ陣を移動させてまで湖の景色を堪能する)貴族:福田圭吾

小さい4羽の白鳥:池田理沙子 奥田花純 五月女遥 広瀬碧
大きい4羽の白鳥:寺田亜沙子 柴山紗帆 細田千晶 渡辺与布
儀典長:太田寛仁 (妙に目を惹く)ラッパ手:渡邊拓朗 花嫁候補:加藤朋子 徳永比奈子 中島春菜 原田舞子 土方萌花 山田歌子
スペインの踊り:川口藍 益田裕子 速水渉悟 中島駿野
ナポリの踊り:奥田花純 五月女遥 原健太
ルースカヤ:木村優里
(野心メラメラ)ルースカヤ付き人:中家正博
ハンガリーの踊り:
細田千晶 宇賀大将
赤井綾乃 菊地飛和 北村香菜恵 廣川みくり 守屋朋子 横山柊子
髙橋一輝 中島瑞生 西一義 西川慶 樋口響 渡部義紀
マズルカ:
今村美由起 木村優子 関晶帆 廣田奈々
趙 載範 浜崎恵二朗 福田紘也 佐野和輝

2羽の白鳥:寺田亜沙子 細田千晶
大きい4羽の白鳥:渡辺与布 川口藍 玉井るい 益田裕子



米沢さんは最後の牧版白鳥の主役を背負う身としてか序盤こそ少し肩に力が入っていたようにも見受けられましたが、残像に至るまでもが美しいオデット。
プロローグでの人間の姫としてただ一人佇む場面においても何かが起こる予感を募らせる孤独感が宿り、
以前は侍女がいたもののいつからか1人となったこの場面も最後と思うと寂しい限りです。
漣のような細かな腕さばきやくっきりと描き出すフォルムは勿論のこと、全身が訴える悲哀が深く、
前回公演以上に前へ前へと出る姿勢が強かった点も印象に刻まれました。
オディールでは品を持ちつつも邪悪な光線を送り、誘惑が楽しくて仕方ない様子につい呑まれそうなほど。いつのまにか乗せられ罠に嵌っていく王子に同情です。

井澤さんは見るからにおっとり優しそうな王子で、穏やかであったであろう人生がこのあと波乱な試練続きに一変するとは知る由も無かったことでしょう。
王妃から結婚を命じられても、あからさまに嫌そうな表情は抑えたり舞踏会でもきちんと礼を尽くして
花嫁候補達と踊るなど育ちや人当たりの良さ窺わせる造形です。

米沢さんと井澤さんは先月中旬の大阪に続いての白鳥全幕。版は異なれど踊り込みの成果が一層表れたのか
決してドラマ性が深いとは言い難い、再会し許しを得てからは愛を丹念に確かめ合うこともなく(いつの頃からか悲哀と重々しさが融和したワルツがカット)
王子が担いでの最終兵器オデットマン攻撃展開なる牧版名物急ピッチ終幕も、心がぐっと入っていたのでしょう。気力を振り絞ってのロートバルト追い詰めは
後にも述べますが気迫のあるコール・ドや演奏の厚みも総動員して劇的な幕切れを焼き付けました。

小柴さんのロートバルトは目線が一段と鋭くなり、善良な人物や生き物の役柄が脳に刷り込まれていながら魔力にはっとさせられる箇所が増えた次第。
先にも述べた、誠に呆気ない終盤もみるみると弱って倒れていくさまをじっくり演出しオデットと王子の愛の勝利に貢献です。

パ・ド・トロワは全員経験者ながらこの3名の組み合わせは初で妙に新鮮味あり。池田さんは柔らかで無駄なくすっきりとした腕使いも良く、
柴山さんはきっちり且つメリハリに富んだ踊りで魅せ、 渡邊さんはジークフリートと親交のある他国から祝福に駆け付けた貴公子と見紛う高貴な姿で薄いブルー衣装が鳴呼爽やか。
女性2人を優しく見守りつつもサポート盤石で会話が聞こえそうな様子にも癒され、
明暗が今一つはっきりしないヴァリエーションの音楽においても曲調のちょっとした変化を自在に体現。
滞空時間の長い跳躍からのぴたりとした着地も爽快でございます。のちに王子の横へ行きワインを注ぐ所作も丁寧で品が宿り、眼福です。
さて山形でもやります髪型観察、今回は丸印。珍しくやや長めでしたが纏め方は自然でふわっとなびく様子も宜しく、
フランツもこのままの路線か、待ち侘びているところでございます。

前回の速報でもない速報を含めて何度か申しておりますが私が初めて劇場で観たバレエがABTの来日公演『白鳥の湖』で、
帰りの電車内でも同行者にはっきりと伝えていたほど最も印象深かった役がトロワでした。以来当時から30年以上の年月が経過し
その間国内団体及び来日公演合わせてもこれぞと唸らせる方になかなかお目にかかれず、
ようやくのトロワこそ2018年に牧版白鳥初挑戦で王子と兼任で踊られた渡邊さんでした。
最後の牧版白鳥となる2021年山形公演にて嬉々たる配役であったこと、幸せでございます。格式高く納得の牧版トロワ締めができました。
トロワの衣装は牧版白鳥の中でも特に好きなデザインで、女性はグリーンのレース地のような布で彩られ、男性は薄いブルー。
気品香る上品な色彩で、記憶が正しければ2006年初演少し前にオペラパレスホワイエにて開催された2006/2007シーズン演目説明会でも展示されていた気がいたします。

全国公演名物の珍配役もあり、主役そっちのけで観察してしまったのは中家さんの家庭教師。のんびりとした坊ちゃんをどうにか勉学に目覚めさせようと
とにかく熱血指導。そのまま叫び声が文字化して響き渡っていてもおかしくない雄弁さについ引き込まれ、目が離せず。
勉学の大切さを熱く説いているかと思えば囲んできた美女にはデレデレ、そしてお酒にもめっぽう弱く堂々熟睡笑。
それゆけ家庭教師なる物語が成立しそうで見てみたいと思わせる家庭教師は初めてでした。
また気位高く美貌の本島さん王妃が登場した際に一緒に入ってきた福田圭吾さんの貴族も双眼鏡握って集中鑑賞してしまった役柄で、
近くにいたワルツの2人を(1人は五月女さんだったか)移動させて湖の景色に感心しながら満喫。舞台の額縁が充実し過ぎると主役を見逃す事態に至り困ったものです笑。

それから白鳥群舞のレベルの高さは言うまでもありませんが、揃っているのは大前提で更に毎回違った印象を与えてくださるのも魅力。
今回は特に4幕冒頭のワルツにて、しっとりと物哀しく美を繋げて行く流れから一転してオデットと王子と共にロートバルトへの立ち向かいが
気迫のある展開で切り替えが見事。全身から1人1人の覚悟が覗き見え、群舞も主役と同等と再確認させるひと幕でした。
改めて思います、急ピッチで呆気ない終盤も劇的幕切れになったのは倒し勝利する側のオデット陣営と倒れ敗北するロートバルトの結集力があってこそです。

民族舞踊の力量にもたまげ、スペインは鋭い斬り込みと濃厚さでびしっと空気を引き締め、身体の切れ味が幾分も増した印象。
ナポリの軽やかさとほのぼの感の比率も絶妙で息もよく合い、ハンガリーの前半のゆったりした箇所でも間延びせず
ポーズ1つ1つのくっきりとした繰り出しも目を見張りました。一番驚かされたのはマズルカでしっかりとした軸を保ちつつ上体が実に豊かに音楽と溶け合ってうねり、
止まるべき箇所では型がいたく美しく出来上がって惚れ惚れしながら鑑賞。
ルースカヤ木村さんの瞬時に舞台の空気を変えるオーラも眩しく、冗長になりがちな音楽であっても優雅に麗しく魅せる術や
付き人として野心燃え盛る視線が3階後方席にまで届き慄いた中家さん(多分)にも驚嘆です笑。

そして忘れてはなりません、山形交響楽団の演奏。非常に高いレベルを誇るオーケストラと噂には聞いておりましたが想像を遥かに超え
序盤からゴージャスで厚みと張りのある演奏を届けてくださいました。 初の山形、最後の牧版白鳥に相応しい音楽で彩る舞台に居合わせ、感激です。
地元で根強い人気があり山響ファンも大勢いらしていた様子で、バレエファンと山響ファン双方が互いに分かち合い喜び合うような喝采に包まれていました。
山形で咄嗟に思い浮かべるのはさくらんぼ、ドラマ『おしん』、1999年に『孫』が流行した歌手大泉逸郎さんでしたが今回より山響さんも仲間入りでございます。

1年延期を経ての無事上演で出演者、オーケストラ、スタッフ、観客の喜びがぎゅっと凝縮した、大盛況な公演でした。主役から群舞に至るまで実に気持ちが入った披露で、
公演頻度も高かった牧版最後の上演を悔いなく終えようと力を尽くした舞台であったと見受けます。
東京での見納めではないと知ったときには寂しい気もいたしましたが山響さんの演奏に彩られ、新しいやまぎんホールを祝福する舞台となったのは幸運でした。
観やすく綺麗で床や椅子の模様も山形の伝統工芸が覗くやまぎんホールの作りも気に入り、是非ともまた山響さんとの共演による山形公演を継続していただきたいと願っております。

さて、次回の白鳥(2021年秋)からは一新してピーター・ライト版。色鮮やかで清々しい祝福感に満ちた牧版とは正反対な演出です。
昨年1月半ばの清泉女子大学でのラファエラ・アカデミア講座にてスウェーデン王立バレエ映像を少し鑑賞したときの印象を以下重複箇所多き点は悪しからず。
一見純古典な衣装装置であっても国王の葬儀から描き、王室礼賛な雰囲気がほぼ無く、黒を基調とした衣装装置美術に彩られ何処か陰鬱。
吉田都監督も主演を務めた1989年のサドラーズウェルズ来日記事は繰り返し眺めておりましたが
2015年のバーミンガム来日公演でも鑑賞しておらず実は映像で目にしたのも初でした。
『白鳥の湖』といえばお祭りわっしょいな祝祭感や終盤には王子による羽根捥ぎ取りと必殺連続回転跳躍でロートバルトを追い詰めて倒す
勧善懲悪明確なセルゲイエフ版を好んでいるため、いくら王子の感情を事細かに描いているとはいえ葬儀から始まる版なんぞ好きになれそうにないと
新国立劇場バレエ団の来期2020/2021シーズン上演作品一覧を眺めながら思っておりましたが(但し2020年秋上演の予定がドン・キホーテに変更し、2021年秋へ延期) 映像で観てみると、王妃を避けたがったりベンノに駆け寄ったりと兎にも角にも王子の感情表現が想像以上にまあ細かい。
踊るテクニックのみならず心の機微の表現に相当卓越した人でないと場を持たせるのが非常に困難な役柄であると分かり
そう考えると当時2020年1月の時点で10月24日(土)夜公演のジークフリード王子に決定していた渡邊さんはぴったりであろうと捉え、
更に同年11月に鑑賞したシェイクスピア・ソネットでも暗鬱な感情を静かに紡ぎ出していく表現が抜群に上手く、
そう考えて行くと案外好きになるプロダクションかもしれないと1年4ヶ月前に観たスウェーデンバレエの映像を思い出して姿を重ねた次第です。


本来ならば牧版白鳥総括を今回行うべきでしたが、延期後の山形公演はピーター・ライト版を上演と一時告知が出ていたため
牧版白鳥初演から勝手気ままに振り返る記録をうっかり昨春に行ってしまいました。初演以来ほぼ全公演観ており長い記事ですが宜しければどうぞ。
ザハロワ直前降板で厚木三杏さん、川村真樹さんとウヴァーロフペアが誕生した2010年など懐かしく思い出します。
https://endehors2.blogspot.com/2020/04/blog-post.html

※ここまでお読みいただきありがとうございました。 日帰りながら以下写真が何枚もございます。昨秋の札幌公演ほどの量ではありませんが、
気力と忍耐力に自信のある方はどうぞ続けてご覧ください。大型連休前の慌ただしい最中にそんな暇はないと叫びたい方は恐れ入ります、次回をお待ちください。



東京駅にて初乗車、山形新幹線つばさ。朝6時過ぎのため、まだ半分眠っている状態の管理人。飛びはしませんが翼をはためかせて白鳥達のもとへと山形へいざ出発。



窓が大きく景色が観やすく、朝の晴れ間が気持ち良く視界に入ります。戸田ボート場あたりです。



那須牧場を過ぎて東北入り、新白河駅を通過。



ニトリ白河店が見えます。白河自動車学校も線路近くに位置しています。景色に向かって手を合わせた次第。



東北のほっこりなキャラクター達。福島物産館でもキビたんは目立ちます。山形のきてけろはさくらんぼの飾りがお洒落な旅人です。



チケットの公演日程表記は2020年4月4日。延期前の日程チケットでもそのまま入場可能と告知が昨年の段階であり、
購入した2019年12月中旬以降1年4ヶ月の期間を経てようやく出動。部屋の目に付き易いところに洗濯バサミで留め、
出演者やスタッフ、オーケストラの皆様と同様チケットも出番を待っておりました。
学校一斉休校、ソーシャルディスタンス、テレワーク推進、1世帯に2枚のマスク配布、PCR検査、緊急事態宣言、ワクチン接種開始、と
この1年数ヶ月を眺めてきたチケットと思うと重みがずしり。



山形駅到着。



駅から徒歩10分程度の霞城公園、桜が満開でした。朝早いためかまだ人もまばら、ゆったり散策です。



霞城公園内に建つ、桜に覆われた旧済生館本館。詳細はこちらをどうぞ。
https://www.pref.yamagata.jp/110001/sangyo/sangyoushinkou/him_top/him_maincat1/him_15.html



回廊のような作り、不思議な空間に思わず息を呑みます。



アルブレヒト、の名前にどきりとしますが、金沢医学校から招かれたオーストリア人医師。
各部屋は診察室、待合室が復元され、医療器具も展示。当時に時間旅行した心持ちになります。



一部階段から頭上までが低く、身長163㎝の私でも頭が衝突しそうな空間。歩く際にはお気をつけください。



お昼は駅すぐそばのビル2階、クラシック音楽が優雅に流れるお店米沢牛の案山子にて1人静かに焼いた、柔らかな肉質の米沢牛。
じゅわりと響く音と、クラシック音楽が調和します。朝日町の赤ワインで乾杯です。
野菜の焼き加減がなかなか難しく、気づけばピーマンが焦げかけた笑。
ただ、札幌での2年連続同じジンギスカン店訪問時の玉ねぎ焦がした事件の経験が生きたのか、丸焦げにはならず。



やまぎんホール外観。和の家屋を思わせる渋い作りです。ロビーには昔使われていた椅子も残され、
座ることも可能。かなり低い作りで、歴史を感じます。



無事終演、1年越しの上演に1人で乾杯。帰りは地酒米鶴で。鶴の目がつぶらで可愛らしい絵です。



キャスト表を眺めながら。脇が誰であれ初の山形最後の牧版白鳥を観ようと行く気満々ではあったが、トロワの名前が視界に入って思わずニンマリ。



豪勢なお刺身、これで1人分。心は浦島太郎です。今夏の竜宮再演も楽しみで、昨夏に続き髷の違和感が無さすぎるサムライ太郎にお目にかかれますように笑。
お通しの県産野菜のシャキッとした瑞々しさも美味しく、お店の方の素朴で優しい語り口も好印象なお店でした。
帰りの新幹線内でお土産の写真でも撮る予定でしたが、発車早々の18時過ぎから
コートを布団代わりに掛けてすっかり熟睡。朝も早かったため、仕方ないか。
1年越しの山形、短時間でしたが満喫いたしました。次回はレトロな洋風建築が並ぶ鶴岡や
おしんの舞台にもなった、木造旅館が立ち並ぶノスタルジックな銀山温泉にも足を運びたいと思っております。
そして芋煮、季節が合えばさくらんぼも味わいたい。
さらば山形、また会う日まで!!

2021年4月12日月曜日

【速報でもないが】新国立劇場バレエ団山形公演『白鳥の湖』




4月10日(土)、新国立劇場バレエ団山形公演『白鳥の湖』を観て参りました。バレエ団初の東北公演であり、私自身人生初の山形上陸です。
https://yamagata-bunka.jp/event/2021/04/10038469.html

詳細内容はまた週末あたりに書いて参る予定でおりますので簡単に。まず、1年延期を経ての無事上演で出演者、オーケストラ、スタッフ、
観客の喜びがぎゅっと凝縮した、大盛況な公演でした。主役から群舞に至るまで実に気持ちが入った披露で、
公演頻度も高かった牧版最後の上演を悔いなく終えようと力を尽くした舞台であったと見受けます。

それから山形交響楽団の演奏が見事なもので、非常に高いレベルを誇るオーケストラと噂には聞いておりましたが想像を遥かに超え
序盤からゴージャスで厚みと張りのある演奏を届けてくださいました。 地元で根強い人気で定期演奏会もチケットの売れ行きが良いらしく、山響ファンも大勢いらしていた様子です。
お目当ては異なっても結果としてバレエ好きと山響ファンが互いの愛着ある分野、団体を讃え合っているような喝采に包まれたカーテンコールでした。
昨秋の札幌公演と少し似ていて、拍手が鳴り止まず客電がついてもなかなか観客が帰りたがらず。1年待ち侘び、依然として緊迫な状況が続く最中に
無事上演できた喜びがそのまま表れていたのでしょう。全国公演名物の珍配役もいくつかあり、その辺はまた後日。

それと1点だけどうしても。主演以外は当日発表で入場しプログラムを開くと、牧版締めのトロワに歓喜。
何度か申しておりますが私が初めて劇場で観たバレエがABTの来日公演『白鳥の湖』で、帰りの電車内でも同行者にはっきりと伝えていたほど
最も印象深かった役がトロワでした。昭和であった(では無かった、平成元年)当時から30年以上の年月が経過いたしましたが、
最後の牧版白鳥となる節目公演にて嬉々たる配役であったこと、幸せでございます




ひとまず山形で味わったものを紹介。クラシック音楽が優雅に流れるお店米沢牛の案山子にて、1人静かに焼いた柔らかな肉質の米沢牛。朝日町の赤ワインで乾杯。



帰りは地酒を。魚いち分店で米鶴で乾杯。



豪勢なお刺身、これで1人分。心は浦島太郎です。今夏の竜宮再演も楽しみで、昨夏に続き髷の違和感が無さすぎるサムライ太郎にお目にかかれますように笑。
お通しの県産野菜のシャキッとした瑞々しさも美味しく、お店の方の素朴で優しい語り口も好印象なお店でした。

2021年4月7日水曜日

【バレエカレッジ】バレエ音楽の魅力と秘密《第16回》 「眠れる森の美女」後編(全3回)第2幕~第3幕




遅ればせながら、オン・ポワント主催の井田勝大さんが講師を務めるバレエ音楽の魅力と秘密《第16回》 「眠れる森の美女」後編
(全3回)第2幕途中~第3幕をオンラインアーカイブで視聴いたしました。2回の予定が3回となり、今回で寂しくも無事終了です。
https://balletcollege-maestro16.peatix.com/?lang=ja

眠りが決していたく好きな作品ではないと言いつつも3幕にも好きな曲がいくつもあり、特に宝石。ピアノの音色が上手く生かされた曲であると感じておりましたが
オーロラ姫とデジレ王子のグラン・パ・ド・ドゥでも同様に使用されているとされる理由を含め今回納得。
また私は好んで観て聴くものの近年の上演時間短縮化事業仕分けで真っ先に対象となるであろう『シンデレラ』場面が挿入上演された事情や
ポロネーズを取り入れたのは当時の潮流を汲んでいたため等、初めて知る事柄が多々あり。また『白鳥の湖』と比較してのチェロの使い方にも言及され
先日逝去された脚本家橋田壽賀子さんの代表作の舞台となった県にて今週末全幕鑑賞するため、
現地のオーケストラ演奏にもじっくり耳を傾けて参りたいと思っております。

井田さんのこだわり逸話について思わず同意してしまったのが、グラン・パ・ド・ドゥのアントレを省略したくないお考えである点。
セルゲイエフ版では長々と演奏され、新郎新婦の再びの登場(3幕幕開けに登場し、赤頭巾ちゃんや青い鳥ら招待客をお出迎えしたのち
一旦引っ込んでお色直し?して登場する)にお小姓や妖精達も再び集結して場を盛り立てたりと絢爛豪華な祝宴がいよいよ極致に達する期待感を
溜めに溜めさせる効果があるため私としては好みなのですが、英国系の場合数秒で終了する簡潔な登場であると記憶。
昨年9月にバレエ部門で井田さんが指揮をなさった新国立劇場のオペラとバレエ研修所主催で上演されたヤングアーティストガラでは、
観客間に賛否両論はありましたがガラであっても時間をかけて演奏されていました。今思えば井田さんのこだわりが出ていたのでしょう。嬉しく鑑賞いたしました。

現地参加者、オンライン受講者双方が聞き易く見易いよう配慮の行き届いた講座で、機材の準備から楽譜の映し方や話す表情を見せるタイミング等
今やごく当たり前のように行われているとつい思ってしまうオンラインの対応は実に労力の要る作業のはずで、主催者の方々には感謝が尽きません。
本当にありがとうございました。全3回、今回は自宅にて楽しませていただきました。

次回は現段階では未定ですが『ドン・キホーテ』を解剖し、あとから加わった曲をも掘り下げていきたいとのこと。
来月下旬はKバレエカンパニーにて上演されますので、合わせて楽しむのも良さそうです。



※バレエチャンネルさん主催の企画として4月24日(土)13時より、神保町ブックハウスカフェにて誠に素敵なイベントがあります。振付家・ダンサーとして活躍された
矢上恵子さんの作品について取り上げ、豪華過ぎる愛弟子達も大集合です。 現地参加は現在売り切れのようですが(キャンセルが出る可能性もあり?詳細はホームページをご確認ください)オンラインはまだまだ受付中です。
作品も何本か上演される予定で、関西圏以外ではなかなか上演機会がなかった恵子先生の作品に触れ、更には愛弟子達のお話も聴けるまたとない機会です。
https://bch-yagamikeiko.peatix.com/view



※上の写真、『眠れる森の美女』初演から100年目であった1990年の日本バレエ協会にて全幕上演にて
客演に迎えたパリ・オペラ座バレエ団のノエラ・ポントワとローラン・イレールのグラン・パ・ド・ドゥ舞台写真が掲載されたダンスマガジン。
日程が3月6日〜8日(日)であったそうで、今年2021年のコンテンポラリーと古典の眠り2本立て協会公演と同時期であったと思い起こされ
残念ながら32年前の公演を鑑賞しておらず、悔やまれます。中身を開くと、赤頭巾に井上バレエ団の藤井直子さんらしき方がいらっしゃいます。
表紙の項目に目を向けると、パリ・オペラ座の芸術監督がルドルフ・ヌレエフからパトリック・デュポン体制へ移行した時期っであったもよう。
古典の大作の改訂に度々踏み切り次々を若手を見出して黄金期を築いたヌレエフの後を継ぐのはどれだけ重圧があったことか。
タイミングが重なり考えさせられる表紙です。

2021年4月4日日曜日

コンテンポラリー界の重鎮とDTFの結合 舞姫と牧神たちの午後2021 3月26日(金)〜3月28日(日)




3月26日(金)〜3月28日(日)、新国立劇場小劇場にて舞姫と牧神たちの午後2021を4回鑑賞して参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/fauns-and-nymphs/

舞台写真も一部掲載されています。フェイスブック等SNSにこの他何枚かの写真もございます。
https://www.facebook.com/150537605092987/posts/2406232659523459/?d=n


※所謂コンテンポラリーダンス大集結な公演に殆んど足を運んでいない且つ教養に乏しい者が書いており、
作品によって長短まちまちな上に随所に頓珍漢感想があるかと思いますが悪しからず。


Danae
【出演】木村優里&渡邊峻郁
【振付】貝川鐵夫
【音楽】ヨハン・セバスティアン・バッハ

2019年のDTF初演時より更に官能性が濃く身体の交わる場の滑らかさや情感の深みが電流走る感覚を呼び起こし、舞台近くの席での鑑賞時は序盤から卒倒寸前。
音楽が舞台用に演奏録音された点も喜ばしく、全体の展開がスムーズになり、ダナエとゼウスの情事に恍惚と魅せられ沼に浸かった4回でございました。

木村さんが色気を醸す女性が似合うダンサーとなり、身体の使い方も奥底へ潜るようにより雄弁となってゼウスに愛されてしまったが惑いつつも
幽閉された孤独感から救ってくれるかもしれぬ淡い期待をもそっと募らせ、やがて身を委ねていく流れを艶かしく体現。同性でも胸の高鳴りが止まらずでした。

渡邊さんは音楽無しの空間を歩いての登場から神ではあっても魔物のようなおどろおどろしさを纏い、静けさの中から危うさを放出。
引田天功のイリュージョン(でも出来ないか)ではありませんからどうしたってご自身が本物の黄金の雨滴と化して舞台に出現は不可能ながら
冒頭の片手を翳して掌から黄金の雨を降らせていく仕草が、禁じ手と分かっていながら欲に背けぬゼウスの覚悟を彷彿させました。
ダナエに絡んでいくさまがいたく生々しく、理性の螺子がすっかり外れダナエにのめり込んでいきながらも
単に柔軟云々ではなく身体の表現の可動域が実に広く、ほんの一瞬に生じる間の取り方や音楽との溶け合いながらダナエと一体化していくよう
いかにして美の結晶にして観客の目に刻むか熟考されているのでしょう。見せ方にも長けていて、単調な激しい抱擁に止まらぬ
美しい官能画を描写していたと捉えております。空間や音楽とのバランスの掴み方も目を奪われました。
前回は作品を観るだけで手一杯だったが(4回公演全て観たはずが)最後、ダナエのスカートを脱がせて鷲掴みにして胸に抱いたまま床で蹲っているのは
身篭らせた後悔の念も何処かに残ってるのか、他者を寄せ付けぬ威厳ある登場から最後は悶絶哀れな状態に一変。ゼウスの心理に迫りたくなるも胸を突く幕切れです。

それにしても、黒タイツのみで上半身裸体なる至極シンプルな衣装でも1ミリも余分な脂肪が無い且つ肩や腕が逞しく肉体美に口あんぐり笑。
ミケランジェロが生きていたら肉体は勿論、斬られそうに鋭く狂おしい視線にも惚れ込み
間違いなくすぐさま彫刻刀を手にして作品のモデルにしたい欲求に駆られたでしょう。

さてダンス公演でもやります髪型観察、この度も二重丸。先月のバレエ協会『いばら姫』銀髪以降、今後の客演予定先のリハーサルにて
青に近い不可思議に変色してしまった?写真を拝見し、ゼウスこのまま決行かそれとも黒戻しか先行きが気がかりでしたが
元の黒髪に戻り、自然な纏め方で一安心。やや切れ長で瞳が深く眼力の鋭い古風な容貌が一段と整って見えうっとりです。

※貝川さんの作品は禁じられた情事から子供達大勢出演作品まで実に幅広く、2019年にBALLET NOW (バレエナウ)さん発表会で上演された、
オリジナル作『長靴を履いたネコ』は会場一体となって幸せ溢れた秀逸作でした。保育士にも見えた、 悪役ながら子猫やぬいぐるみにも興味津々な魔王も忘れられません。


かそけし
出演酒井はな&森山未來
演出・振付:島地保武
音楽・演奏:藤元高輝(gt.)

大伴家持の歌から構想を練った作品とのことで、擦り付けるような音を手と声でも響かせていくユニークで仕掛け多々な振付や
膨らみのある群青色衣装も印象深く残ります。酒井さんの細身な肢体から繰り出す角度の素早い切り返しや小刻みな躍動は年齢を考えると驚異的。
中盤にて回転しながら舞台袖に入っていった後に壁に激突して声出ししながら再登場する箇所があり、バレエでもコンテンポラリーでも
基本舞踊公演にて声による表現は決して好みではありませんが(中村恩恵さん振付シェイクスピア・ソネットを除く)
再登場すると、打って変わって折り目正しくクラシック・バレエの歩き方で進み出て『テーマとヴァリエーション』のパロディのような振付を踊られ
舞踊年譜を遡る流れにも見せる効果あり。森山さんの手を取りながら横並びで踊るもわざとサポートを崩され
ずっこける展開もさまになっていたのはクラシックの基盤があるからこそでしょう。

劇場で鑑賞した『世界の中心で、愛をさけぶ』やドラマ『ウォーターボーイズ』など映像作品の印象が強い森山さんが踊る姿を初めて観られたのも嬉しく
想像以上にしなやかで自由自在な踊りこなしに驚きを覚えた次第です。(挙げた映像作品も目新しくはなく、遅いタイミングでの舞台鑑賞で失礼)
2日目夜、酒井さんが捌けるときに後方に設置された藤元さんの譜面台に衣装を引っ掛けてしまうハプニングがありましたが、すかさず森山さんがフォロー。
再度登場して挨拶した後の捌けるときは森山さんが率先して両腕でガードレールを作って引っ掛け防止を演出。最後まで予期せぬ出来事と笑いに包まれました。


Butterfly
【出演】
池田理沙子&奥村康祐(3月26日(金)・27日(土)18:00)
/五月女遥&渡邊拓朗 (3月27日(土)13:00・28日(日))
【構成・演出】平山素子
【振付】平山素子&中川 賢
【音楽】マイケル・ナイマン、落合敏行

池田さんは初日こそ硬さや段取り通りな様子が目立ちましたが2日目は正面からのぶつかりや藻掻きっぷりが全身から響いて変化が表れ
奥村さんは本島美和さんと組まれた2012年上演時も観ており、とにかく若く初々しかった頃に比較すると年齢を重ねて達観すら感じさせ
飛び込んでくる池田さんを危な気なく包み込むように導いていらした印象です。

初組み合わせの五月女さん渡邊拓朗さんは強弱や静動の付け方も巧く、ギリギリの所から繰り出す緊張感あるポーズ一瞬一瞬の間から閃光が差し込み
古典で組むならば狼と赤頭巾ぐらいかと思われる身長差をむしろ生かしたフォルムで語る鮮烈ペア誕生に居合わせた思いです。
Facebookでも紹介されていた写真での、2人の脚のラインが平行四辺形を描いた瞬間の切り取りも見事。
五月女さんはコンテンポラリー経験も豊富で初挑戦とは言え披露前から安心感すら持っておりましたが、
拓朗さんの高身長を持て余さずに操る身体能力にもびっくり。体格もがっちりとして貫禄も十二分ですが、
ちらりと覗く初心な青年感もまた作品によく合っていたと説得力がありました。
先述の通り2012年に初見した作品ですが、蝶の生命力をこうも儚く激しく描くのかと今回も驚嘆です。2組それぞれ全然違った魅力が開花していました。


極地の空
出演・振付:加賀谷 香&吉﨑裕哉
音楽・演奏:坂出雅海

天守物語を題材にした振付で、とうりゃんせの童謡も挿入の不思議な和の趣。舞台後方の台座に腰掛けた演奏者坂出さんが、世を司る仙人にも見えました。
道しるべが出来上がったりぽっかりと浮かび上がったりと1階後ろの席から鑑賞すると光の当て方が実に効果的。


Let's Do It!
出演・振付山田うん&川合ロン
音楽:ルイ・アームストロング ほか

長い髪のプロフィール写真とは印象ががらりと異なるおかっぱ髪型が可愛らしい山田さんと川合さんがお洒落な曲で戯れるように踊り、肩肘張らずに楽しめた作品。
肩車から急降下しての股の潜り抜けなどあっと驚かせる無邪気な要素も散りばめられ、夏に上演の山田さん振付『オバケッタ』も気になっております。


「A Picture of You Falling」より
【出演】湯浅永麻&小㞍健太
【振付】クリスタル・パイト
【音楽】オーウェン・ベルトン

世界各地のカンパニーに作品を提供している振付家と耳にしながらも遅ればせながら本公演にて初鑑賞。
流れる中に自然な所作が混ざった振付に目が行き、タンクトップやゆったりしたシャツといった一見家での寛ぎ時間に着用していそうな衣装が
座ったり隣に並ぶなど生活の一端であろう行為から徐々にダンスの動きとなっていく過程には実に好ましいものであったと観終わってから気づいたのでした。
小尻さんは22年前のローザンヌ映像は今も覚えており、ラ・シルフィードのジェームズを軽快に踊っていらして、当時新設されたプロフェッショナル賞を受賞と記憶。

初日(ダブルキャストの翌日バタフライも)出演者と振付家が異なる場合は振付家は舞台には登壇せず
各演目後に出演者からの合図にて客席で起立し拍手に応える形でしたが、NHKのど自慢での司会者が歌い終えた出場者の親族友人を探す光景にちょいと似ていて
面白く観察笑。初日は2階席でしたので出演者と振付家の客席を挟んだやりとりキャッチボールがよく見え、貝川さんはきちっとお辞儀。
島地さんは両手を掲げてアピール、平山さんも手を突き上げて出演者を大いに讃え、平山さんが最も親族応援団な雰囲気があり意外な一面を目にした気分です。

難解な作品もありましたが、知人曰く紅白並みに豪華なコンテンポラリー界の重鎮が揃った公演を4回も鑑賞できたのは幸運。
そうは言っても結局はトップバッターの裸体ゼウスを崇めての集中に終わった感のある年度末の金土日でした。
いつかビントレー版『カルミナ・ブラーナ』における性欲に負け遂には服を脱ぎ捨て、道を踏み外し罠ヘと陥っていく生真面目な神学生3役にて鑑賞できる日を待ち侘びております。





余韻に浸ってゼウス降臨ハイボール。黄金色の超炭酸製造サーバーゼウスタワーで作る、強炭酸の刺激です。
名称もサーバーの色も嬉しいこった。レモンも入って爽やかさもあり。