2021年7月30日金曜日

1年延期を経て後輩のサタネラ 清水純子バレエアカデミー第38回発表会 7月25日(日)





7月25日(日)、渋谷の大和田さくらホールにて清水純子バレエアカデミー第38回発表会を観て参りました。
昨年予定していた発表会が1年延期となりようやく開催。配信も合わせての実現となりました。
http://shimizu-sumiko-ballet.jp/

主宰の清水先生は東京シティ・バレエ団で長らく主役を張られていたほか、スターダンサーズ・バレエ団で日本初演した
バランシン振付『コンチェルト・バロッコ』にゲスト出演されるなど、国内におけるバランシン作品経験の先駆者でもいらっしゃいます。
今回は昼間に新国立劇場にて『竜宮』を鑑賞しておりましたため、終演後に渋谷駅へ駆けつけ、第2部から鑑賞でございます。

最大の目当ては登場機会多数な当ブログレギュラーである我が愛する後輩2度目のグラン・パ・ド・ドゥ挑戦、演目は『サタネラ』。(ヴェニスの謝肉祭)
音楽は晴れやかされど単調気味で特別派手な振付もなく、しかし悪魔な女性である面を明示せねばならぬ見せ方が非常に難しいパドドゥであると捉えております。
さぞ緊張しているであろうと楽しみと心配半々な心境で幕開けを待ちましたが、ぶったまげました。
登場時から溢れんばかりの笑みを湛え、舞台にぱっと華を与えるオーラ一杯。
更に驚きに拍車をかけたのは、パートナーを務めていらした東京シティ・バレエ団所属の吉野壱郎さんとの掛け合いや視線の合わせ方もしっかりとこなしていて
心浮き立つ会話が成立していたこと。振付を追うだけで精一杯にならず、問いかけに対して澄ましたかと思えば振り向いてほんのり魔性香る姿で魅せたり
ふとした箇所においても丁寧な作り込みでした。本人は謙虚の塊のような性格で、技術も体力も不安視していましたが
ほぼヴァイオリンのソロが占める曲調の中で勢い任せでは誤魔化せない振付てんこ盛りなヴァリエーションでも
1本の糸の上をそっと辿るような滑らかな踊りを披露。思えば当初は昨年に踊る予定が1年延期で
心身の調整も容易ではなかったはずであり、それでもめげず頑張りました。先輩は大満足です。

そして後輩のパートナーを務めてくださった吉野さん、シティでのウヴェ・ショルツ作品や『白鳥の湖』等公演では度々拝見しておりますが
お若いながらパ・ド・ドゥにおいて相手の緊張を解して気持ちを上向きにさせるコミュニケーション力に長けていらっしゃり信頼感絶大で好印象。
後輩を優しく明るくリードしてくださり、ありがとうございました。 配信をご覧になった方からも、視線の交わし方に至るまで
2人で楽しそうに踊る空気感が良かったとのご感想も寄せられているほどでございます。
華が無いと着こなしが困難であろう黒と白のシックな統一感のある色調でペアごと揃えた衣装もお2人にお似合いでした。
そういえばサタネラ青年の登場振付は踊り手によって様々で、吉野さんは颯爽と鮮やかに舞台中央へと飛び込んでくる登場。
対して先月新宿文化センターでのガラの青年は上手側の幕からにょきっと顔を覗かせてニンマリと笑みを客席に送ってからの登場で
思わず脳裏に浮かんだ『突撃隣の晩御飯』笑。ガラや発表会の定番パドドゥの印象先行が益々薄れ、観れば観るほど面白いと思える今日この頃でございます。

後輩の話に戻します。幼い頃から同じスタジオにブランク無しで長年レッスンに通っている継続力に
しかも習い事とは言えど頭のてっぺんから指先足先まで隈なく見られながら指導を受け、美を追求する
身体を張っての芸術ですから、ストイックの欠片もない私からすれば益々頭が下がる一方です。
そして後輩、先述の通り当ブログ登場回数が多く、つまりそれだけ鑑賞回数も多し。毎週レッスンに通いつつ鑑賞にも度々足を運び、
加えて鑑賞できなかった舞台についても私に感想を尋ねてくれたりと勉強熱心。私の偏りだらけな話を頷きながら聞いてくれたり
また私の周囲の濃い鑑賞オタク集団(該当するお心当たりある皆様すみません笑。しかし鑑賞中心のバレエ愛好者の集まりですから相当オタクでしょう汗)
話にもすっと入り込めていて観る目と踊る身体両方備え、幼少時から長年レッスンに通っていながら鑑賞も熱心。珍しいタイプかもしれません。
先月も、踊るにあたって勉強したいとリハーサルの合間を縫って新宿文化センターでの新国立劇場ペアによる『サタネラ』も鑑賞。
自身が踊る女性パート中心に念入りに観るかと思いきや男性パートもじっくり観ていたようで、そしてたっぷり褒めてくれました。私へ心遣いも申し分ありません笑。
(念のため、私が鑑賞を強要したわけではありません。誤解無きように)

元々華やオーラがあり、最近の出来事としては練習帰りに私の最寄駅まで届け物に来てくれたときのこと。
ワンピースを着て改札前の桜の木の下に立っていた後輩、映画のヒロインかと見紛う花がパッと咲き誇ったかの如き可愛らしさで
先月利用の団体様の鑑賞報告写真に写り込んでしまい新国立劇場玄関先の灰色の柱との同化が証明された存在感埋没な私とは大違い笑。
隣を歩いていると満開の花園と移動している心持ちとなるほどです。また背は私とさほど変わらぬはずが(彼女のほうが3cm高い程度)
実際の身長よりも高く見え、頭が小さく腰の位置が高めで手脚が長いため実に見栄えする容姿。頭でっかちな上に酒樽体型の管理人とはこれまた大違いです。
あれやこれや綴って参りましたがそんなわけで、我が愛する後輩の晴れ姿を1年延期を経て鑑賞でき、幸福な真夏の昼下がりでございました。
江戸時代に旅を重ねていた、人生の節目日が私と同日であるらしい儒学者の林春斎が日本三景として宮島、天橋立、松島を「日本国事跡考」に綴ったように
私の中ではサタネラ三景がこの度決まり、12年前のグランキューブ大阪、今年6月の新宿文化センター、そして今年7月の大和田さくらホールでの鑑賞でございます。

子供の生徒さん達の作品も楽しく、「フォークダンス」ではアメリカ、ドイツ、イタリア、ロシアと次々と披露し、デザインは少しずつ異なる赤系の衣装で揃え
最後マイムマイムを聴くと、子供の頃は当たり前のように参加していた林間学校やキャンプファイヤーを思い出し
昨年今年と中止になってしまった学校多数である現実を踏まえるとしみじみ。
今年は発表会開催が実現し生徒さん達の晴れ舞台披露の場が整って良かったと心底思えた次第です。
シティのプリンシパルキム・セジョンさんがそれぞれお二方と踊られたグラン・パ・クラシックは爽やかで深みある青い衣装がよく映え、安定感も抜群。
金と白が眩しい『ライモンダ』3幕を2人用に再構成したパ・ド・ドゥもヴァリエーションも挿入の見応え構成で
今年8月のバレエ・アステラス2021における『ライモンダ』披露組も同構成で宜しくと申したいところです。
世界バレエフェスティバルAプログラムにおける、アレクサンドロワとラントラートフも同作品3幕よりと明記のため恐らくは似た構成と想像しております。
教師の方がお1人が踊られたヴィヴァルディの曲に振り付けられたややモダンな雰囲気のソロwindは水色のタイトなスカートが靡く衣装も相乗して流れるように涼しげ。
スタジオに長く通っていらっしゃる女性と男性の大人の生徒さんによる『白鳥の湖』のスペインもキレキレで気持ち良く、長期継続の大切さに触れた思いがいたします。

最後は後輩も再び登場、『ライモンダ』より夢の場を中心に組み合わせた『ロマネスク』。
通常はソロで踊る曲も振付の基盤はそのままに複数人数版にしている点も特徴です。
曲構成は1幕で宴を終えたライモンダの友人達がしっとりと踊る曲いわゆるロマネスク、夢の場第2ヴァリエーション、第1ヴァリエーション、
ヴェールのヴァリエーション、ライモンダによる夢の場のヴァリエーション、第1幕グラン・ワルツのコーダ、であったかと記憶。
(お読みになっている関係者の方がいらっしゃいましたら、違っていればご指摘を)
プログラムや看板の絵にも描かれているロマンティックチュチュで妖精のように舞っていく優美な作品でした。

発表会開催においては昨年から現在にかけて何処のバレエ教室も共通かと思いますが、大勢の観客を迎え満席或いはそれに近い状態で行いたい気持ちは山々でも
入場者数に制限をかけての安全確保や検温消毒、楽屋の使い方、そして配信も行うなど従来では考えられぬ対応に頭を悩ませながらの開催であったと察します。
生徒さん達の嬉しそうな表情を眺めながら、日頃の成果を発表する舞台ができた幸せを共有いたしました。
来年は今年よりも心穏やかに本番を迎えられますように。




帰宅後イタリアワインで乾杯。瓶の下に敷いたレースはヴェネツィア産です。



後出し失礼、何度か借りている書籍に再度目を通したが、私の理解力欠如で今ひとつロマネスクの定義分からず。半円アーチが特徴か。
しかし建築の写真はどれも美しく、堅固な作りに曲線や丸みも細部まで観察です。

2021年7月29日木曜日

【WOWOW加入者の方は是非 】連続ドラマW『黒鳥の湖』




7月24日(土)よりWOWOWにて連続ドラマW 『黒鳥の湖』の放送が開始されています。
全5話構成で、同じ回でも数日後には再放送日が設けられているようです。(第1話は7月31日午後0時にも放送予定)
https://www.wowow.co.jp/drama/original/kokucho/

原作は宇佐美まことさんの同名小説。題名からしてバレエが関わる話であろうと想像がつきますが、
18年前の事件を引き摺りながら生きる主人公の娘がバレエを習っている設定で、オディール役が事件の鍵を握っていくようです。

主演は藤木直人さんで、娘の美華役を映画『ミッドナイト・スワン』にて
ある日突然バレエに目覚め、プロを目指していく心を閉ざした孤独な中学生の一果を演じた服部樹咲さんが務めます。
予告映像を見ただけでも長期に及ぶ悲劇が次々と襲う重たい話のようで、バレエにおいては『マノン』や『アンナ・カレーニナ』、『アナスタシア』、
『ザ・インヴィテーション』や『レイクス・プログレス』など重厚で胸を抉る、時には泥沼化した関係をも露骨に描いた重々しい作品も好むほうではございますが
テレビドラマとなれば話は別で、極力幸福な結末が待っている或いは定番なる展開を好むため(だから2時間旅情サスペンスや水戸黄門に走るのか管理人)
継続視聴できるか心配なところです。しかしそれ以前に、我が家はWOWOW未加入のため視聴不可能。
宮尾俊太郎さんや小林美奈さんも出演された『カンパニー』のようなプロのバレエダンサーがわんさか作品ではなく
映画『ミッドナイトスワン』並の宣伝もさほどされていないのか現時点では私の耳には感想が舞い込んではおりませんが、ご覧になれる方はお時間あればご視聴どうぞ。

余談ですが私が長年の人生において連続ドラマで全話視聴した作品はたった2本で、それぞれに主演していたのが今回出演者に名を連ねている藤木さんと三宅さん。
かれこれ19年前と24年前で、お2人の虜だったわけではなく(失礼)作品に惹かれ、高視聴率作品ではなかったものの
双方痛快喜劇な作風で毎週放送を心待ちにし、気づけば最終回を迎えておりました。お2人はその三宅さんのドラマの
ある回で共演され、同じ高校に通う上級生と下級生の役でしたから時代の流れを思わずにいられませんが
今回絡みの具合は未知ではあれど楽しみではあり、図書館で借りてきた原作を読みつつ、映像を思い浮かべ謎解き含めて堪能してみたいと思っております。
そうでした、先週の連休辺りからテレビ市場を網羅状況にあるスポーツ大会を横目に、本日まで再放送中であった
萩尾望都さん原作で四半世紀前に放送された菅野美穂さん主演『イグアナの娘』も翌年あたりの再放送ではほぼ全話視聴した記憶がございます。
久々に見ましたが、母娘の確執を色濃く描いていて少女漫画原作とは想像し難い作品であると当時も驚かされたものです。
(そうは言っても管理人、昔からバレエもの含めて漫画も読まずですが)

それから念のため、楽しみな共演とは申せど今年5月のプティ版『コッペリア』4公演の千秋楽には到底及びません笑。あの日を超える共演はこの先もう無いでしょう。
管理人、既に人生の運を2021年上半期で使い果たした思いでおります。勿論、同作品でも他作品でも再びの顔合わせがあればと願ってやみません。
特にバレエにおいては管理人がいたく好む、理性の歯車が狂う濃厚重厚系統作品での共演お待ち申し上げます。
バレエダンサーが滅多にモデルを務めないであろう格式ある着物雑誌にて時期は異なれど品性と渋みが香る美しい着物姿を披露された(今考えても珍しい共通点)
御二方による『アンナ・カレーニナ』、まだ諦めておりません。

一部バレエから少し話がずれかけましたので次回予告。我が後輩の晴れ舞台鑑賞記をお送りいたします。

2021年7月27日火曜日

副題に相応しい4幕の創意工夫 東京シティ・バレエ団『白鳥の湖』〜大いなる愛の讃歌〜




7月17日(土)東京シティ・バレエ団 石田種生版『白鳥の湖』〜大いなる愛の讃歌〜を観て参りました。
https://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000653.html

https://balletchannel.jp/17322
バレエチャンネルさんのインタビュー

オデット/オディール:清水愛恵
ジークフリード王子:キム・セジョン
ロートバルト:石黒善大
道化:玉浦誠
パ・ド・トロワ:平田沙織 植田穂乃香 土橋冬夢
三羽の白鳥:平田沙織 植田穂乃香 且股治奈
四羽の白鳥:新里茉利絵 竹嶋梨沙 西尾美紅 佐々木葵美



清水さんのオデットは登場時の表情や身体使いともに孤高な翳りのある神秘的な美しさを体現。
近寄り難いクールな風貌で、舞台全体を覆うように長い腕が描く羽ばたきの残像も目に響くスケールの大きさに息を呑みました。
王子からの問いかけにはなかなか心を開かず怯えが続き、されど背中からは覚悟をにじませる強さも感じさせ
オデットのリーダーとしての風格と過酷な運命を突きつけられた瀬戸際にいる危うさが入り交じって伝わるヒロインです。
オディールは優雅さから黒い魅力がチラリと覗き、あからさまな邪悪ぶりではないからこそ
王子はオデットに魅せられた際の知性や守りたい思いに駆られ恋に落ちた前夜のひとときを思わずオディールから感じ取ってしまったと納得。
オデットとオディール、共に凛として気高く感嘆いたしました。

清水さんはウヴェ・ショルツ振付「Octet」での頭一つ飛び抜けた女神の如き存在感が今も忘れられず、全幕主演も観てみたいと願っていただけに
シティが誇る大作にて鑑賞できたのは実に幸運。出産後復帰の舞台とは思えぬ心身の完成度であったと思います。

キムさんのジークフリード王子は鬱々な内面描写がいたく上手く、3幕に至っては花嫁候補が踊り出しても途中までは寝落ち笑。
王妃に起こされてやっとこさ踊り出すわけですが、品を維持しつつも上の空状態な心持ちがはっきりと伝わるひと幕でした。
清水さんが安心して身を任せられる安定感もさることながら、湖畔のアダージオでは一見して濃密とはまた違った、
心の開き具合を丁寧に織り重ねて刻一刻厚みを増して行く様子が徐々に染み入ってくるパートナーシップを構築していた印象です。

圧巻であったのは石黒さんのロートバルトで、羽に覆い尽くされた衣装にも埋没しないゴージャスな姿にこの度も驚かされ
暗めの峻崖の上に立っていても岩場と同一化しないオーラも見事。元々の上背や装飾たっぷりな衣装に加えて跳躍は高く、舞台ごと突き動かしているような重厚な存在感でした。
最後、羽根をもがれる結末が嘘のような豪胆なキャラクター造形でしたが、それだけ白鳥達の讃歌が恐ろしい勢いでのし掛かってくる設定にも頷けます。
全幕の中の個性の強い人物に石黒さんが登板されると妙な安心感と期待感を膨らませ、予想以上のものを見せてくださるダンサーであると私の中では定着しており
まだ綴っておりませんが今年の5月にご出身の教室での全幕公演『シンデレラ』義理のお姉さんを拝見し、舞台を引き締め面白味を存分に与えてくださいました。
何処かの機会で紹介して参ります。(鑑賞前に食したジンギスカンやパフェも美味しうございました)

パ・ド・トロワは高身長の平田さん、植田さんのコントロール力に目を奪われ、土橋さんのバネのある踊り方も宜しく躍動するトロワ構成。
湖畔コーダでの四羽や三羽が順々に突き進む箇所では最後さりげなく回転技が盛り込まれ他の演出より高難度。
しかし自然とさらりとしかも揃えてこなしてしまう全員の職人級な技巧に天晴れでした。
民族舞踊も非常に高水準で、中でも素早い脚の運びや上体の捻りがふんだんに用意されたスペインでの斬れ味やチャルダッシュでの緩急の対比の付け方には痺れるばかり。
これまでに観た、海外を含むバレエ団の白鳥の中でも5本の指に入るであろう見応えでした。

そして前回2018年上演時に初鑑賞し、話題を攫っていた日本初演時の藤田嗣治の美術や大野さん指揮の東京都交響楽団演奏よりも心を持っていかれた石田版白鳥の名演出な4幕終盤。
現在は『チャイコフスキー パ・ド・ドゥ』アダージオとして馴染みとなった曲にのせてオデットと王子がパ・ド・ドゥを踊りつつ白鳥達の力が結集していき
最後は白鳥達が手を繋ぎ、9の反対な配置で2人を囲む決意の場は希望の光が昇華するハイライトと言えます。
順番前後して、4幕幕開けは左右対称とは違った風変わりな配置に引き込まれ、関連記事を読んだところ
石田さんが竜安寺の石庭から着想を得たとのこと。西洋発祥の芸術に日本的な要素が調和した不思議な美しさです。

そういえば、随分前に本だったか新聞であったか、また石田さんの記事であったかも曖昧なのだが四羽の白鳥が手を繋いだまま踊る意味合いについて語っていらっしゃり
ロートバルトの呪縛の象徴であると強調なさっていたように記憶が霞んでおります。
白鳥達が一旦アダージオで力を結集したのち、臆せずにロットバルトに立ち向かい、王子による羽根もぎ取りも不都合な様相を感じさせず
オデットと王子と共に遂に勝利した印象がまさる展開。オデット達が人間の姿に戻るまでが短時間の中に整理し凝縮されて描かれ
仰々しい名に思える或いは越路吹雪を彷彿させる愛の讃歌、にも説得力あり。1幕の背景にて、城が随分と長く高い坂の上に建っており
居城であるとしたら徒歩での帰宅は相当な脚力を要すると思ったところで貴人は皆様馬に乗ってご移動であろうと想像が巡ったのはさておき
繊細且つ色味もしっかりとある美術、衣装も上品でシティが誇る大作です。

※以前福岡市にて田中千賀子バレエ団公演で拝見した中牟田百香さんが入団されたようで、東京でのプロとしての舞台姿が嬉しい限り。
ドン・キホーテのグラン・パ・ド・ドゥが印象深く、華やぐ雰囲気あるダンサーで注目して参ります。終演後福岡市民会館から徒歩で中洲へ行き屋台を巡った時間も懐かしい涙。
櫻井美咲さんに続き外部の舞台で目にした方がしばしば足を運ぶシティに在籍されていること、鑑賞の楽しみがまた増えそうです。




鑑賞前にノンアルコールビールとローストビーフで乾杯。
こちらの店舗でも、お洒落なノンアルコールカクテルを多種用意していました。
東京在住者が管理する当ブログ、暫く外ではノンアルコールシリーズが続きます。(少なくとも8月22日迄は。延長の可能性もあり)



夏限定生ハムメロンやウニのパスタも美味しい。



ティアラこうとうの換気状況紹介

2021年7月23日金曜日

節目2021

いつも以上にぐうたら日記でございますので、猛暑の最中そんなもん読んでいられぬとのお考えの方は恐れ入ります、次回更新予定記事まで今暫くお待ちください。

管理人、一昨日人生の節目を迎えました。
毎年恒例と化しております、同時期の世相と合わせて以下あれやこれや綴っております世の中で最たる不要不急の内容でございますがご了承ください。
今年2021年の7月21日朝、ふとテレビを眺めていて気づいたのは開会式に先駆けた東京五輪の競技開始日であるため五輪関連の特番の放送も開始されていたこと。
自宅出発まで時計代わりにかけているNHKの番組曲が流れずおや?と思い確認してみて気づいた次第です。
更に携帯電話の表示の五輪仕様もこの日からと思われます。白昼にはブルーインパルス予行練習があり、青空にを駆ける雲をご覧になった方も大勢いらっしゃるかと存じます。
昨年の当ブログでも触れておりますが、私はある五輪の年生まれで妹も4歳違いであるため同様。
ともに開催期間と重なる夏場の生まれでもあり、親は育児の合間にテレビで応援しつつ楽しんでいたようです。
親族の中には1964年の東京五輪を間近で目にした者もおり、通っていた学校すぐ近くの青梅街道にてアベベ選手の走りを見たとのこと。
当時のマラソン観戦話も度々耳にしており、また私自身幼少期からバレエと同じくスポーツも自身で取り組むよりも観る派であったため
各競技の規定には詳しくなくても毎回満喫しているほうではあったと思います。
しかし、自国開催でネットの普及もあり粗が見透かされやすい事情があるとはいえ今回のトラブル続きには口あんぐり状態で
誰のための何のための開催であるのかそもそも夏開催にした点も疑問符が消えず。
57年前は10月であったため爽やかな気候の中で観戦できたようですが、主要スタッフ直前降板者続出の今夜の開会式はどうなることやら。

話を変えまして、ここ最近バレエの舞台には変わらず足繁く通っておりますがバレエ鑑賞以外でも今月は我が大きな出来事がございました。第1回目のワクチン接種です。
接種券未着ならば(のちに誕生日を祝うかのように今月半ば過ぎに到着)後出しで良いとのことで今月最初の月曜に打ち
腕が上がらなくなった程度でやや身体が重たくなったものの発熱も腫れも無く、副反応は殆ど無いほうであったと思います。
発熱、寝込み、出勤できず等あらゆる反応が世に溢れていますが1回目でも年齢や性別体質問わず、出る人は出るが出ない人は出ない、周囲を見ても様々でございます。
職域接種でしたが幸いにも日程を自由に選択できる体制でしたので、在庫切れになる前にと心配性も後押しして持病や基礎疾患の無い従業員の中では開始初日に摂取へ。
仮に自治体で申し込みの場合、送付されてきた手順記載書類を広げてスマートフォンやパソコンで順を追いながら
長いコード番号をも入力していくなかなか時間を要しそうな作業であると同居の家族が黙々と申し込み作業を行う様子を見て
歌に限らず機械も音痴な私には無謀であろうと不安が過っており、高齢者の方々の分を子供や孫たちが代理申し込みしている報道に
他人事ではなく私も人任せ状態になるであろうとかねてから感じておりましたので、希望日だけ伝えれば調整してくれる
しかも鑑賞に影響の無い日程を選べましたので職域接種は大助かりでした。接種3日後、無事にロックバレエ鑑賞です。
ちなみに妹は既に2回目を終えておりますが副反応ほぼ皆無であったそうで、対する同僚しかも先輩達は皆発熱なり何かしらある中で不安もあったもよう。
管理人はどうなることやら。間隔は空けておりますが2回目接種後最初の鑑賞も予定通りできますように。

そもそも人にもよりますが若年層ほど反応が出やすいとは言われていますから、第1回にてほぼ無しであったのは
もしも当ブログにAIを搭載して記事内容から年齢判断を行えば「70代以上」と感知されるであろう中身の年齢不詳ぶりが経過年齢を封じてむしろ良い方向に動いたか。
何しろ10代の頃に隣町に偉大なバレリーナがやって来たがどなたでしょうと質問形式で話をある方にしたところ、「アンナ・パヴロワ」と想像され
仮にそうであるならば著書にパヴロワの衝撃を記していらっしゃる淀川長治さんと管理人、同世代です。
そして報道でチラリと小耳に挟んだ、モデルナワクチンの3回目接種もあり得るとか何とか。第2回第3回、、、大企業の採用試験或いは十字軍かい。
いずれにしてもまずは2回目の接種後、無事帰還できますように。職場到着ないし帰宅後は脳内でジャンのテーマを流すことといたします。

十字軍と言えば、新国立劇場バレエ団『ライモンダ』開催された初夏、新国立劇場を利用したある団体が報告レポートとして劇場玄関付近の光景や感想を掲載。
鑑賞者の感想も純粋且つ隅々まできちんと観ている鋭い気づきもあり、私も大変学びとなる記事でした。
そして劇場玄関の写真に目を留めると、柱と一体化した管理人を発見。心から好きな劇場での鑑賞レポートの掲載は嬉しい限りですし
団体の関係者以外は画質を落としてぼかす配慮はしてくださっていますから何ら問題なく、むしろ第三者から見た我が容姿がよく分かったのはこれ幸い。
小学生の頃から度々指摘されてきた存在感の無さや壁紙と同化人間ぶりは相変わらずで太古の昔ながら指摘者は実に的を射る発言であったと再確認です。
まあ良いのです、人生こんなモンダ。

纏まり欠如な不要不急内容で失礼をいたしました。せっかくの4連休、満喫いたします。
こんな変わり者ではございますが、皆様また1年宜しくお願い申し上げます。

さて1歳年齢を重ねてからの最初の鑑賞は今年も新国立劇場バレエ団『竜宮」。第3公演目にまずは登板、25日昼のサムライ太郎の回でございます。
ああ、髷が似合うを超越して違和感皆無むしろ原作の時代を生き、桶に魚を入れて街中で運搬等々当時の生活感すら漂うお姿を愛でて参ります。




今年も作っていただきました、我が節目及び『竜宮』再演記念として浦島太郎円形菓子。今回は終盤の鶴への変身場面で、モデルは第三太郎でございます。
額の赤と凛とした目元を特徴として捉えて昨年と同じパティシエさんが作ってくださいました。
なぜかタニシとサザエもしぶとく居座っております。
そして鳥繋がりで移籍直前の2016年6月に踊られた『火の鳥』も観たいと欲や願望が止まらず。
カードは画伯な妹が描いてくれた、玉手箱にラッコの絵。


昨年の初演開幕前のインタビューリレーでは確か7月22日に登場され「侘び寂び」や「艶やか」等
美しい日本語が次々と飛び出す語りに耳も研ぎ澄まされ襟を正したい思いがいたしましたが
今年再演前のバレエ団公式インスタグラム(カーテンコールに撮影タイム有りの告知)投稿では海辺に登場場面でのサムライ太郎。
ふわっとした跳び方、温厚そうな眼差しに時代劇そのままな風貌もああ眼福です。しかも投稿日が「2021年7月21日」。記念として胸奥におさめました。

2021年7月21日水曜日

厳選動画

本日は文字数少なめ、短うございます。ご安心ください。
昨年の同日7月21日も似たテーマを綴っておりましたが2021年も記念にやります、心を揺さぶる胸に沁み入る動画選。
世代は違えど、ふう、男前でございます。王子貴公子以外の役ももっと観たいお二方です。
5月の『コッペリア』奇跡の共演実現は生涯忘れられぬ出来事でした。











2021年7月18日日曜日

フレディ崇拝者も満悦  ROCK BALLET WITH  QUEEN    7月8日(木)




7月8日(木)、新宿文化センターにてROCK BALLET WITH QUEENを観て参りました。
振付は新国立劇場バレエ団の福田圭吾さん、そして出演者にはバレエ団の枠を越えた実力あるダンサー達が集結です。
https://www.dancersweb.net/rock-ballet-2021

振付・出演:福田圭吾
出演:
秋元康臣
池本祥真
井澤駿
菊地研
長瀬直義
米沢唯
ピアノ:壷阪健登


とあるバーを舞台に、人生に疲弊した人々が集い衝突もしながらもクイーンの名曲に乗せて次々と踊りを繰り広げ
壷阪さんのピアノ演奏も加わって絡みエネルギーが一気に湧き上がっていきました。
紅一点の米沢さんは音楽の女神な役どころで、Killer Queenが流れる中を鋭いポワントワークで登場。カラフルなワンピースな衣装にボブのヘアが似合い色気たっぷり。
黒いトーンのバー内にて男一色の中に花がぱっと咲くように現れた印象で 三角関係における奪い合いの対象になったかと思えば
セクシーでアクロバティックなパ・ド・ドゥを披露したりとまさに女神な存在で舞台を彩っていました。
特に秋元さんとのパ・ド・ドゥはあっと驚かせるすり抜けるようなスリル感も満点。

一段と目を見張ったのは池本さんで、音楽がすっかり馴染んでいてちょっとした身体の傾け方と言い、力の掛かった曲調への反応と言い
フレディ・マーキュリーの声質、息継ぎの箇所とも調和した踊りを全身から放ち、クイーン偏愛者な身内も賛辞を送っておりました。
バーの雰囲気にひときわ自然と溶け込んでいたのは井澤さんと菊地さん。グラスを片手にやさぐれ気味な姿で感傷的に嗜む様子も違和感なく、
ジャックダニエルあたりを飲んでいたであろうと勝手に想像。少なくとも今夏8月末までは外では一杯ひっかける行為が不可能な東京都において
気分だけでも私もバーの客として、ウォッカ或いはウイスキーでも味わいつつ身を置いた心持ちで鑑賞です。飲み方は勿論「ロック」でございます。
長瀬さんの舞台姿は久々に観ましたが、どこか中性的で妖しいオーラを撒きつつ柔らかな踊りも健在。

福田さんは幕開けから暫くして、バーの主人として登場。後方のカウンター越しでシェイカーを扱ったり、注文を聞いたりと丁寧に接客。
そうこうするうちに壷阪さんも到着し、ピアノ演奏も披露しながらも時にはダンサーと絡んだり、展開から目が離せずにおりました。
終盤に差し掛かる頃の舞台転換にも工夫が光り、それまで後方にて見守って接客していたバーテンダーの独壇場と化し
Bicycle Raceが流れる中スタッフに手際良く指示して装置を袖に入れてもらい、ユーモアに富んだソロを披露。
そして袖に一旦入ったかと思ったら自転車に乗って舞台を走り、大喝采。しかも職場の業務用或いはママチャリな形の自転車で
それまで出現していたお洒落なバーとの落差も笑いを誘い、やがて大量のスモークが焚かれ晴れ間が差し込んでいよいよクライマックスへと突入したのでした。

私自身はクイーンの楽曲に詳しくは全くなくコンサートにも行っておらず映画『ボヘミアン・ラプソディー』も観ておらず
2006年にはベジャール振付の『バレエ・フォー・ライフ』を鑑賞しているにも拘らず未だに題名と中身が不一致状態な曲が多々あるものの、福田圭吾さん版は人間の燻った内面をも引き出しながらも
お洒落に格好良く刻んでいく振付演出で、クイーンの楽曲とバレエとの相性を再確認。
カーテンコールでのI Was Born To Love Youでは客電がついた客席から手拍子が鳴り止まぬ光景がいつまでも続く、肩肘張らずに楽しめた一夜で是非とも再演を願っております。

ところで、クイーン入門者な私はテレビ等で頻繁に流れる曲ぐらいか知らず。
しかし良作ばかり生み出していると思ったきっかけは、邪道かもしれませんが四半世紀ほど前に民放の歌番組で目にした
クイーンの曲の数々を直訳してメドレー仕立てで披露していた歌手?の「女王様」。繋げ方が上手いのか曲ごとの境界線が今一つ聴き取れず、思えばその数年後まで
Bicycle RaceとKiller Queenは曲調ががらりと変化するだけで同じ曲であると勘違いしていたほどの初級者以前のレベルでございました。
現在もBicycle Raceはじーてんしゃ、ボヘミアン・ラプソディー冒頭部分を聴くと母さんー、の文字が脳裏に浮かぶ管理人でございます。

またクイーンは時代を超えて愛されているとあちこちの記事や書物で目にいたしますが、確かに時代を問わないと感じ入ったのは
こちらも鑑賞者は多くないかもしれませんが映画『ロック・ユー!』。中世を舞台に騎士のトーナメントを描いた痛快作品で
要所でWe Will Rock Youが使用され、時には試合場の観客達が鼓舞のために一斉に歌い始めても中世時代の物語ながら違和感皆無で驚きを覚えた次第です。

余談ですが親族の約3名は誠にクイーン愛好家でございまして、レコードの所有や映画『ボヘミアン・ラプソディ』鑑賞は勿論のこと、
1名は2016年のアダム・ランバートを迎えた武道館公演、もう2名は1975年の武道館公演に足を運んでおります。
更に武道館公演に行ったうちの1名はロジャー・テイラー見たさで翌日羽田空港まで見送りに行ったらしく
周囲も半ば呆れる追っかけであったようです。報道カメラがいたか否かは分かりかねますが
あの昭和時代なる特集にてもしも当時の空港にて黄色い歓声を上げている熱狂者達の映像が流れましたら
その中に管理人の親族が映っていると思ってください笑。親族間でこの空港見送り話が出るたび笑いが起こってはいるものの
管理人も似た道を歩んでおり詳細は未だ内密を貫いておりますので黙るしかありません笑。

また我が家の事情ではございますが、公演当日は父の命日しかもちょうど10年。開演前ふと10年前の同時刻つまりは夜7時頃の出来事を思い起こすと
家族3人警察署に呼ばれて死因不明の父と対面し、数日後葬儀を終えてもまだ分からず、病死か事件性関連か判明まで時間をだいぶ要したものです。(結果前者でしたが)
思えばここ数年母と妹と私の3人が揃って同じ場所に出かけることなんぞ墓参りぐらいで他には滅多になく、このご時世なら尚更のこと。
しかし偶然が重なったのか、母と妹はクイーンとバレエの掛け合わせに、特に2008年のバレエ・フォー・ライフ東京公演を見逃し
急ぎでチケットを取って出向いたベジャール・バレエ団大阪フェスティバルホール公演が唯一の舞台鑑賞遠征経験であるフレディ・マーキュリー崇拝者な妹は
ロックバレエはどうしても行きたいと発売日にチケットを購入したほどで、私は振付家や出演者陣に引き寄せられて同じ公演に集い顔を合わせた日が
奇しくも父の命日10年の日であった巡り合わせに、きっと本人も喜んでいることでしょう。
いったいどなたにお礼を申せば良いのか。クイーンの音楽でバレエ公演を企画発案された主催のダンサーズサポート石渡さん、
洗練された舞台を振付演出しリハーサルから楽しさや幸せな空気を作りダンサーを配して魅力を引き出してくださった福田圭吾さんそして出演者スタッフの皆様、心より感謝申し上げます。
10年前を振り返りつつ、そしてこの舞台を天国のフレディにも見せたいと、クイーン熱烈オタクな母と妹が嬉々として口にしていた雨が降りしきる帰り道の光景を
未だ4人全員のメンバー名すら言えず使用楽曲の細かな話について行けぬクイーン入門者な管理人、忘れることは決してございません。




飄々と漕いでいらした福田さんを思い出す、Bicycle。ピリリと刺激が強い白ワインを自宅で乾杯です。作品の空気感にもぴったりな味わいでございます。
帰宅後プログラムを熟読していたところリハーサル写真、随分と良い撮り方をしているがプロを雇っているのかと家族が気になったようで
5月の配信プティ版『コッペリア』で初日と3日目にコッペリウスを踊られた中島駿野さんであると伝えたところ、多才な人であると感心しておりました。
加えて音源編集は福田さんの弟の紘也さんであると教えたところ、新国立の方々は皆本業以外にも得意分野があるのかと更に感心していたようです。

2021年7月16日金曜日

希望を灯すベジャールプログラム 東京バレエ団  HOPE JAPAN 2021 7月4日(日)




7月4日(日)、東京バレエ団HOPE JAPAN 2021を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2021/hope/index.html


※キャストはホームページより

「ギリシャの踊り」
音楽:ミキス・テオドラキス
振付:モーリス・ベジャール

2人の若者:池本祥真、昂師吏功 
パ・ド・ドゥ:秋山瑛、大塚卓 
ハサピコ:上野水香、ブラウリオ・アルバレス 
ソロ:樋口祐輝

恐らくは2009年以来の鑑賞、そのときは中島周さんがソロであったかと記憶しております。
ギターの音楽も気に入り、女性のみであったか裸足とシューズ有り両方を駆使した、クラシックを基盤にしつつも
自由な爽快感が適度に交わり、もう一度観たいと願っていた作品です。
幕開けのブルーを背景にしたダンサー達のシルエットが神秘的で波打つ爽やかな音楽が気持ち良く
外は高湿度な大雨でもこの40分だけはカラッとした晴天のエーゲ海を眼前にした気分。
樋口さんが晴れやかで伸びやかなソロで舞台を引っ張ってポーズのメリハリや音楽への反応の良さも目を惹き
秋山さんと大塚さんの空間を大きく描き出す上手さも舌を巻きました。海を愛おしむように全員がひたすら踊り続けるフィナーレも壮観で、定期的に上演して欲しい作品です。



「舞楽」(1988年初演版)
音楽:黛敏郎
振付:モーリス・ベジャール

宮川新大 
伝田陽美、三雲友里加、鳥海創、後藤健太朗

若手時代の斎藤監督の写真がきっかけで知った作品で、共演者の中には勝又まゆみさんや森田雅順さんらが名を連ねていた時代。当時から早32年!?ようやく鑑賞です。
黛敏郎さんの重々しくも歯切れ良い音楽が粋に響き、伝田さんのシャープな力を放つ踊り、視線の運び方の強さにも驚嘆。
尚今回は1988年版上演のため、管理人が32年前の書物で目にしたアメリカンフットボール選手と巫女達の出演は無し。
当時のベジャールのインタビューを読むと中国の古い踊りである舞楽から巫女をイメージし、
アメフトを並べることで過去と未来、東洋と西洋の表現として取り入れた、また巫女とアメフトの形が似ているとも捉えているようですが
巨匠に物申すのは失礼とは承知の上で、似ているとは思えず。素人のぼやきは横に置き、次は全編上演希望です。
ところでベジャールはそのインタビューにて、あらゆるバレエ団がレパートリー入りしていくがゆえに作品の新鮮味を失わないため
前の10年間に『火の鳥』を上演禁止にしたり、(10年ぶりの復活の1本が1989年の東京バレエ団公演での公演となったもよう。
同時上演が舞楽とノイマイヤーの月に寄せる七つの俳句)
過去を引き摺りたくないと『ボレロ』と『春の祭典』も上演をやめていくつもりとも宣言。(私も解釈違いであったら失礼)
しかし現実には今も人気演目として上演され続けており、時代を問わず支持される作品であるのでしょう。そろそろ『火の鳥』も再演を切望いたします。



「ロミオとジュリエット」(パ・ド・ドゥ)
音楽:エクトル・ベルリオーズ
振付:モーリス・ベジャール

ジュリエット:足立真里亜
ロミオ:秋元康臣

東京バレエ団では38年ぶりの上演とのこと。パ・ド・ドゥのみならず若者たちの抗争に巻き込まれ翻弄される場面もあり、
綺麗な幸せだけにとどまらず短時間で喜怒哀楽の体現を求められる難作です。特に可愛らしい印象が先行していた足立さんの表現が胸打つ描写で
幸福から急降下して怒りや悲哀に包まれる流れを、衣装もお顔立ちもピュアな天使のような外見からは想像がつかぬパワーで舞台を支配。
秋元さんとのペアは初見で、滑らかなパートナーリングの中から恋する喜びと苦しみ、渇望を清らかに放出していた印象です。
なぜ38年も上演されずにいたのか不思議でございます。



「ボレロ」
音楽:モーリス・ラヴェル 
振付:モーリス・ベジャール
主演:柄本弾

東京バレエ団でのボレロはギエムと上野さんでずっと観てきており、男性ダンサーによるメロディは初鑑賞。
いたく丁寧に踊っていた印象でしたが、こればかりは個人の好みでまた私の鑑賞眼の乏しさが原因且つギエムと上野さんが刷り込まれているためでしょうが
もう少し身体が柔らかにしなるようなポーズを造形していくほうが目に迫るものがあったかもしれません。
群舞特にリードの4人の呼吸の間合いや刻々と押し寄せては沸き立つ音楽との一体感が宜しく、最後まで集中力切らさぬ緊迫感や鬩ぎ合いも高い満足度でした。

考えてみればオールベジャールプログラムながら爽快な作風から和の要素たっぷりなものまで作品の趣は実に様々。
久々の発掘作品もあり、これからも大事に上演を重ねて欲しいと願っております。
また今回は公演をHOPE JAPAN 2021として、バレエ団自体も度重なる公演中止や変更を余儀なくされながらも、観客の心に希望を灯す舞台を全国に展開。
また諸事情で舞台芸術に触れることが難しい状況にある人々を招待し、幅広い層にバレエを楽しむ機会を設けている姿勢にも敬意を表したい思いです。




帰り、単独でもふらりと入りやすくワインを呑めるお店を上野駅近くで探し入店。1人黙々と外で一杯呑めた時期がもはや懐かしい涙。
お通しのパンも塩気が効いていて(一切れはフォカッチャであると思う)美味しく、ワインが進みました。



メニューを見ると気になる名称、ギリシャのスパゲッティ。
一番小さいサイズを注文したが、どんぶりにびっくり。こりゃギリシャのラーメン笑。
魚介とガーリックが沁み込んでいて、これまたワインが進みました。



上野動物園では、双子のパンダの赤ちゃん誕生。すくすく育っているようです。シャンシャンはお姉さんに。

2021年7月15日木曜日

小道具てんこ盛り農園での楽しい騒動  牧阿佐美バレヱ団『リーズの結婚』 6月26日(土)昼




6月26日(土)昼、牧阿佐美バレヱ団『リーズの結婚』を観て参りました。2019年に続いての嬉しい再演です。
https://www.ambt.jp/pf-lafille2021/


リーズ:阿部裕恵
コーラス:清瀧千晴
シモーヌ:保坂アントン慶
トーマス:京當侑一籠
アラン:細野生
若いおんどり:中島哲也
めんどりたち:竹村しほり  上中穂香  村川梢子  加藤瑚子
リーズの友人たち:
【木靴の踊り】日髙有梨  佐藤かんな  三宅里奈  高橋万由梨
織山万梨子  米澤真弓  光永百花  今村のぞみ




前日のゲネプロ映像(中川郁さん組)



初役阿部さんのリーズはまろやかな可愛らしさが香る少女で、きびきびとした振付も品良く柔らか。
緊張からか、序盤の素早い脚捌きや上体の雄弁な捻りはあと一歩でしたが、持ち前の確かな技術で音楽と共に歌うような達者な踊りに終始目が離せず。
マイムも丁寧に語り、1人でコーラスとの結婚と子育て計画妄想の場における夢見がちな表情と子供を懸命に躾ける現実味双方を
往来しながらの表現は蕩けそうな愛らしさでした。
清瀧さんのコーラスは豊富な経験が土台にあって安定感抜群。農業従事の活気ある堂々とした登場やソロの軽やかさ、力強さもさることながら
初役の阿部さんをさりげなくされど頼もしいリードが好印象。後にも述べますが小道具を用いた仕掛けがてんこ盛りな作品で
失敗は許されまいと顔が強張ってもおかしくないほど高難度な扱いを求められるわけですが
1幕での2人きりでの全身を使い踊りながらのリボンあやとりや、同じく長いリボンを駆使してのコーラスが馬でリーズが御者?に扮するお馬さんごっこもお手の物。
阿部さんの表情が一瞬硬くなりがちな箇所でもささっと手を差し伸べて安心させ、楽しい戯れの作り上げに貢献です。
1幕の見せ場であるパ・ド・ドゥも、阿部さんが立ちやすい位置を察知し僅かに先回りして笑みを引き出しそれはそれは微笑ましい場面に。
また妄想姿が見つかり恥ずかしがるリーズに優しく近寄り、子供は10人!と両手で訴えていた箇所や、その後シモーヌに発見されぬよう隠れ場所を探す際の
棚の引き出しに身体を入れようと(ドラえもんか笑)奮闘する姿もツボでした。

保坂さんのシモーヌはさすがのベテランな芸達者ぶりで、愛娘を裕福なアランと結婚をさせようと走り回るお母さんを嫌味なく表現。
序盤、憎きコーラスに向かってのキャベツ投げから笑いが止まらずです。芝居も仰々しくなく
至って自然でやり過ぎずしかしぱっと明るく面白くなる舞台に繋げていらした印象です。
よく見ると、シモーヌはリーズとコーラス、アランとトーマスは勿論のこと、リーズの友人や農夫たち
後半では公証人など作品の殆どの人物と何かしら関わりがあり、皆の中枢な立ち位置。更には飛び込んでくるアランのトーマスと息を合わせての受け止めや
バター捏ねの指示に鍵隠しまで、次々に到来する忙しく細かな仕掛けを順調にこなさねばならず
ただ面白おかしい母親ではない大変な難役。作品を熟知しているからこその見事なまでの盤石且つ厚みある姿でした。木靴の踊りでは実にリズミカルな職人芸を披露。

リーズたちを見守り、作品をぐっと締めていたのはリーズの友人たちで皆で行うリボンでの図形作りもメリーゴーランドな広げ方も職人気質が光り、ベテラン勢が活躍。
中でも日髙さん三宅さんがリーダー格として率いていて、何処ぞの大会とは違って安心と安全と確約する気迫と示す行動が見るからに伝わる友人たちでした。
木靴の踊りでの靴音までもがぴたりと合う整い方にも見入った次第です。
2幕での、コーラスまさかの藁束から登場には把握している演出ながら毎度驚かされ
各自短い棒を手に輪になって農夫たちが踊る前であったか、仕事で持ち帰ったまとめて1箇所に置いたところにコーラスが隠れていて
下手な置き方をすれば藁束が倒れ、しかもすぐそばで集団で踊るとなれば尚のことリスクも大。
しかし皆置き方が上手いのでしょう、全く倒れずコーラスは潜んでリーズの結婚生活妄想姿をこっそり観察です笑。

細野さんはリーズへの恋に夢中なアランをほろ苦い風味も交えたタッチで踊り、描き方が難しい役ながら魅力を振り撒き惹きつけるキャラクターとして存在。
特にリーズとコーラスの結婚式が執り行われ皆が解散し静まり返ったリーズの家に傘の忘れ物を取りに来たときの
笑みを浮かべつつも残して行くほんのり悲しい余韻は忘れられません。時代を経て表現も変化しているのか
アランに対して人々が嘲笑しているようには決して見えず配慮した描写になっていたと捉えております。
幕開けからニワトリさんたちの朝の舞いにも目が更に覚めた思いで、パタパタとした羽ばたきや歩き方もダイナミック。
最後は皆が幸せな幕切れで、相思相愛の2人の結婚を認めるようシモーヌに優しく促す公証人塚田さんの仕切り具合も味わいがあり、
大団円の中でシモーヌにも花を持たせようと再度木靴の踊り披露の場をすぐさま設ける周囲の気配りにも安堵。
また全編通して感情の起伏をコミカルに時にしんみりと心擽る音楽にも聴き入り、また観たいと思わせる作品です。
初鑑賞の2006年はゆうぽうと、2度目の2019年は文京シビックが会場でしたが、今回の新国立劇場中劇場が2階席でも舞台に近く
群舞も堪能しつつ装置や小道具も見易い、箱のサイズも程よいと思わせました。

ところで辿ればこの作品の初演は全幕バレエの中ではp古いようですが、(1789年7月1日と書かれていて、そうなるとフランス革命の頃!?)
ロシアでの呼ばれ方『無益な用心』由来や、しばしば発表会で目にするグラン・パ・ド・ドゥ(リーズが手を叩くヴァリエーションがある構成)との関係等
知らぬことが多々あり。ロシアではクラシックチュチュで踊る場面もあったか。
『無益な用心』ならば題名を目にしたのはアシュトン版よりも先で、寺田宜弘さんがキエフ・バレエ学校留中かバレエ団入団間もない頃だったか
木靴の踊りの写真で見た記憶あり。用心の文字に時代劇のような題名にも思え、いったい何の話であろうかと疑問を抱いたのはよく覚えております。
それはともかくこの度も登場『バレエ101物語』での薄井憲二さんの解説が最も詳細に感じますが
公演の無料プログラムにも記載があったかもしれず、初演からの音楽や改訂の変遷について整理をして参りたいと思っております。




鑑賞前に和食、自家農園のお野菜たっぷりです。この後はフランスの農園へ。



牧バレエの無料配布パンフレットはオールカラーで作品解説やばバレエ 団初演時の様子も詳しく案内。無料とは思えぬ充実した内容です。
帰宅後はニワトリさんのワインで乾杯。名前は勝手にコッコちゃん。ニワトリはコッコ、
アシュトン繋がりで『二羽の鳩』初鑑賞時の1993年小林紀子バレエシアター公演では
白い鳩たちを勝手に鳩ポッポと呼び、28年経っても我が名付けセンスの無さは不変でございます。

2021年7月13日火曜日

映画『シンプルな情熱』




Bunkamuraル・シネマにて、『シンプルな情熱』を観て参りました。セルゲイ・ポルーニンがロシア大使館の要人警護を務めるアレクサンドルを演じています。
http://www.cetera.co.jp/passion/


只今公開中作品のためこれからご覧になる方も多いと思われ、詳細内容は控えめにいたしますが
R指定がなされているだけあって序盤から露骨な性描写が続き、ポルーニンのタトゥーの種類の豊富さに目が点になりかけたものの(失礼)
大学の教壇に立って文学を教え研究する仕事や友人関係も充実なシングルマザーのエレーヌが
恋に溺れ、手堅い生活を律することができず壊れていくさまや苦悩を静か且つ大胆に描いています。1人息子ポールが母親に対して疑念を抱いていく様子も
感性の鋭さが描写され、親が思う以上に子は親の背中を見ていてエレーヌの異変に気づくのも早し。
親子間に確執も生じますが何時の間にか丸く収まっていて、その辺りはもう少し丁寧に綴って欲しかった気もいたします。

バレエ映画ではない作品に出演するポルーニンは初見で、エレーヌが没入していく気まぐれで危うい、どこか陰のある男性をまずまず好演。
尚ポルーニンの責任ではありませんが、アレクサンドルの心情にそこまで焦点が当てられておらず、ポルーニンの裸体崇拝映画にも見て取れる演出に思えてしまいました。
私の感受性や鑑賞眼の乏しさが一因ではありますがチラシなどに記された史上最高に美しく官能的、とは私個人としては思えずでございます。

ポルーニンが出演した映画では2018年の東京国際映画祭で観たヌレエフの伝記映画『ホワイト・クロウ』でのソロヴィヨフの鬱屈した雰囲気の体現が上手く、少ない出番ながら印象に残り
同年12月に公開されたディズニー版『くるみ割り人形』にも出演していたもののこちらは本当に出番が少なくそして印象に残らず(失礼)、
どんな役であったかすら思い出せずにおります。ミスティ・コープランドに比較すると僅かな出演時間でございました。
ディズニー映画は決して私の好みな分野ではないながら、作品よりも試写をご覧になった某ダンサーによる解説文におけるあらゆる要素を網羅した余りの詳しさや
1回しか観ただけとは到底思えぬ記憶力の良さのほうが印象先行となり、結果として鑑賞の手助けとなったのは今もよく覚えております。
今回の公開記念として2017年に話題となった『セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』も再上映されていますがこちらもまだ観ておらず。
4年前はメディアでも取り上げられる機会が多くあったのか、バレエ好きでない方からも作品について尋ねられたり、
「優雅な野獣」とは意味が矛盾する気もするが美を備えた野獣なんぞ存在するのかとのご質問もあり。
存在しますが但し南仏のバレエ団制作のDVDに限るとまた話が蛇行しそうになって喉元で引っ込めた4年前の公開期間中でございましたがそれはさておき
今回ポルーニンは一切踊ってはいませんが、パリのみならずフィレンツェ、モスクワにも跨る物語で海外周遊の気分も味わえるかもしれません。
尚、管理人はモスクワのトヴェルスカヤ通りの映像に胸躍り、赤の広場すくそばの大通りの賑わいの懐かしさが沸き立った次第です。





ちょうどBunkamuraにてパリ祭開催中。



終映後、気分はパリの人間。管理人が似合わぬカフェにてタルトタタンと白ワインで乾杯。シャンパンにも合うとメニューに書かれていましたが
ちょいとお値段が張り、またシャンパンは5月から先月半ばにかけて自宅にてボトルで飲む機会が多く、白ワインを選択。
りんごをたっぷり使ったタルトに芳しく爽やかな喉越しのブルゴーニュ産白ワイン、よく合いました。
パリ祭の一環で、幸運にもアコーディオンとヴァイオリンの生演奏時間帯に居合わせ
ここはパリかと錯覚。海外渡航がまだ困難なご時世、嬉しいひとときでした。

2021年7月9日金曜日

オリジナル大作で挑んだ井脇幸江舞踊生活35周年記念公演『トスカ』 同時上演『Mozartiana』『サタネラ』  6月19日(土)20日(日)




6月19日(土)と20日(日)、新宿文化センターにて井脇幸江舞踊生活35周年記念公演『トスカ』同時上演『Mozartiana』『サタネラ』を観て参りました。
https://ibc.yukie.net/schedule.html#more

スパイスイープラスでのインタビュー。『トスカ』制作経緯や『サタネラ』奥田さんへの注目ぶりについても語ってくださっている濃い内容です。
https://spice.eplus.jp/articles/287099


※キャスト等はホームページより抜粋

バレエコンサート
『Mozartiana』
振付:石井竜一
<音楽>チャイコフスキー
プリンシパル…梅澤絋貴・髙橋ナナ(19日)/戸塚彩雪(20日)
セミ・プリンシパル…工藤加奈子
男性ソリスト…愛澤佑樹、森田維央、藤島光太、井上良太
第1ソリスト…立山澄/真鍋歩、藤田瑠美、戸塚彩雪/髙橋ナナ
第2ソリスト…真鍋歩/立山澄、山田琴音、長野ななみ
コールド…松島愛、山田萌奈美、小林汀、矢内七重


役柄ごとに異なる色彩の衣装を纏ったダンサー達が次々と登場し、端正に幕開け。
モーツァルトの音楽への敬意を込めた作風らしく、チャイコフスキーにしては劇的抑揚が抑え目です。
一部女性コール・ドの頭飾りや配色が『ラ・バヤデール』を少し彷彿とさせつつも、きびきびと呼吸の合う踊りで歯切れ良さがあり、
特に2日目のプリンシパル戸塚さんの優雅な軽やかさは目を惹きました。 実は何週間も経過した現在も後半部分の音楽が頻繁に脳内旋回中です。
この曲を用いたバレエはこれまで2度観ており、直近では2017年3月のアナニアシヴィリのガラにて、
座長と同郷出身であるバランシンの振付。女性は長い裾のチュチュで、振付に面白味があったか否かはさておき、故郷のダンサー達が踊る光景を観られたのは幸運。
もう1回は28年前の小林紀子バレエシアターにて、英国人振付家マイケル・コーダーによるもので、クラシカルな作風であったのは覚えているのだが
いかんせん同時上演作品で、前年が日本のバレエ団としては初演であった『二羽の鳩』の衝撃たるや、本物の鳩と共に記憶も飛翔していった次第。
モーツァルティアーナをご覧になった方、いらっしゃいましたらお教え願います。若かりし頃の森田健太郎さんもご出演でした。



『サタネラ』よりグラン・パ・ド・ドゥ
奥田 花純・渡邊 峻郁


本拠地では組んでいない初組み合わせの新国立劇場バレエ団のお2人。奥田さんの華やぐ職人芸と渡邊さんのにこやかで時折覗く純朴な魅力が作品に合い、
晴れやかされど単調系音楽(プーニよ、すまぬ)でも愉しい会話のように響いてニンマリ、終始口角下がらずでした。
2日目は更にこなれて花開き、芯は盤石ながら音楽の余韻に至る迄四肢を柔らかに操る奥田さん、
サポート時も屈託ない笑み零れる渡邊さんが悪魔な娘に首っ丈な物語(解釈違っていたら失礼)を構築です。
とにもかくにも渡邊さんが前週金曜日の、婚約者を連れ去ろうとした恋敵に対して鬼の如き形相で立ち向かい手袋を叩きつけて決闘に挑んでいた
全身から怒りの炎充満なジャン・ド・ブリエンヌと同一人物にはとても思えず。目上の男性に対して失礼な表現と重々承知の上で申すならば実に可愛らしいのです。
登場時の上手側の幕からちょこんと顔を覗かせる箇所から恋い焦がれる女性を浮き浮きした心持ちで探す気満々な表情に笑ってしまうほどで
アントレ直後で奥田さんから仮面を外すところでのドキドキと胸の鼓動が伝わり、外したあとの逸る気持ちを必死に抑えながらの興奮ぶりや
最後脚をむぎゅっと両手で抱き掴む決めポーズも、青年どころかもはや朴訥とした少年でございました。

初日は2階、翌日は1階前方で鑑賞しておりましたが、金曜日のジャンと同一人物とは何度も考えても一致せず。それだけ役への入り込みが深かったからこそでしょう。
ひたすらズンチャッチャ曲調で跳躍続きである音楽と振付双方メリハリにも欠けるヴァリエーションにおいても
恋する青年の高揚する様子を表出され、ほんの僅かな音楽の変化にも機敏な反応を魅せてくださいました。
そして初ペアとは思えぬそして作品の世界観にもぴったり。ふと思ったが、発表会で目にする頻度が高く
そうなると中高生くらいの生徒さんとプロの男性ダンサーによる舞台が圧倒的多数。勿論微笑ましい晴れ姿に感激しておりましたが
しかし今回年上、先輩女性ダンサーと若き後輩男性ダンサーの組み合わせで観て膝を打ち
艶やかな美女と恋に盲目状態にある初心な青年なる絵に、後者のほうがしっくり。奥田さんの紺地に細かな刺繍や装飾がなされたお洒落なチュチュと
渡邊さんのサタネラ男性には珍しい上下白に紫色ベストの調和も宜しく、もう第1部終了時点でチケット代の元が取れてしまった気分。
特に男性はヴァリエーションも含めて音楽も振付も単調で物語として魅せることが難しい『サタネラ』への意識が覆されたのでした。
実は似た図式の同作品を今月末に鑑賞予定のため、俄然楽しみが増しております。

さて、新宿文化センターでもやります髪型考察。今回も丸、ですが疑問符もあり。やや明るさを帯びた色合いでしたが
照明の具合なのかより茶色が増していた印象。分け目や整え方は自然で前週に続き好印象でございます。

前述の通りガラや発表会での上演は大変多く、これまで何度も観ているパ・ド・ドゥですが心底浮き立ったのは約12年ぶり。
12年前とは何ぞやかと申せば、数週間前まで報道映像で見ない日はなかった、現在大阪府の大規模接種会場である大阪国際展示場内のグランキューブ大阪で開催された
夏の風物詩MRBスーパーガラ2009にて、法村珠里さんと山本隆之さんが踊られた舞台で、
ゴージャス美女といつもとは打って変わって能天気青年なお2人の美の連なりでございました。またもや干支一回りの法則が当て嵌まり、恐ろしや。
初日の帰宅後、届いていた新国立劇場会報誌が視界に入った途端巡り合わせに再度驚かされた次第です。(詳細は6月22日記事参照)
尚MRBスーパーガラは大阪国際展示場が接種会場となった関係で急遽会場変更を余儀なくされ、メルパルク新大阪にて今年は開催。
昨年中止からの延期、会場変更と困難を経ての開催で、成功を祈願いたします。

ところでこの作品、あらゆる中で何年も前から調べても内容や振付経緯が未だ整理がつかず分からず。
悪魔、ヴェニスの謝肉祭、プーニ、辺りが鍵のようだが綺麗に繋がらず、ヴァイオリニストのパガニーニがヴェニスの謝肉祭を弾く光景も入った映画も7年前に観たが
つい先日自宅に所有していると思い出したCDの解説書が最も簡潔な説明であるかもしれません。



『トスカ』 全2幕
振付・演出:高橋竜太 音楽監修:井田勝大
<音楽>プッチーニ
トスカ…井脇幸江
カヴァラドッシ…安村圭太
スカルピア…高岸直樹
アンジェロッティ…梅澤絋貴
堂守…江本拓



今回のために書き下ろされたオリジナル新作。オペラ素人入門者にも分かりやすい筋運び、演出でした。
新国立劇場オペラ公演『トスカ』のあらすじを読むと、1800年6月17日の物語だそうで、ちょうど221年が経っての同時期にあたる公演日程であったようです。
来年再演が決定しているためあまり詳しく明かし過ぎないほうが良いかもしれず、ざっくりと綴って参ります。
井脇さんのトスカは情熱を秘めた歌姫で、ワインレッド色のドレス衣装を纏った姿も美しく気高い女性。
カヴァラドッシに会えたときめきからスカルピアとの緊迫した攻防、覚悟を決めた最期に至るまで壮絶な生き様を描いていらっしゃいました。
安村さんのカヴァラドッシ純粋でひたむき、心優しい画家で、トスカとに戯れもほんわか優しい調べが彩り
だからこそ中盤にて拷問を受ける姿がそれはそれは痛々しく目を背けたくなる哀れぶり。
クラシックよりもむしろ野暮ったい(失礼)訳ありな役の方が似合い命からがら脱獄してきた悲壮感と再会の幸福の入り混じりバランスも
丁度良い塩梅であった梅澤さんにも驚かされ、そして高岸さんのスカルピア毒々しさは実に壮烈で
トスカに迫る姿の嫌らしいこと。(褒め言葉です)登場した瞬間から空気をがらっと染め上げるオーラや
相変わらずのすらっとした体躯、そして技術に衰えどころか若返り傾向すら感じさせる機敏な踊り方も見事なもの。
単なる悪役にとどまらず、厚みを加えてくださっていました。尚、強い眼力や濃く雄々しいお顔立ちから
管理人の脳内では『風と共に去りぬ』レッド・バトラーが時折過っていきました。
目を見張ったのは江本さんの堂守。物語の展開の急所で鍵を握る人物として場面と場面の橋渡しな役割を
時にシリアスに、時に滑稽に俊敏なソロでも魅せながらいざなってくださり
身のこなしが軽やかで引き締まった体型も不変、これからも長く踊って欲しいダンサーの1人です。

現代の美術館からタイムスリップする導入部はなかなか良く、現代と言っても某団のお蔵入り『くるみ割り人形』と違って東京都庁が出てくるわけでもなく
あくまで美術館の館内や鑑賞する客、警備員、と芸術空間に身を置いた気分になり、ここからいかにして1800年のローマへと移るのか想像を掻き立てる演出でした。
IBCダンサー達が踊る美術館にやってきた人々の弾むような踊りには青春を謳歌する若人達の心が解放されたような爽快感があり
1800年のローマへ移ってからももっと活躍の場面、振付があれば尚舞踊としての全体の見応えに繋がったかと思われます。

初日と2日目と全く異なる席で鑑賞し、2階席で観た初日は普段オペラは殆んど観ていない私が初『トスカ』であったこともあり
正直なところ少人数の芝居中心部分において分かりづらかった箇所もありましたが2日目に上手側前方で鑑賞すると見え方伝わり方が当たり前ですが大違いで
中でもトスカの願望とスカルピアの野望がぶつかりやがてトスカが刺殺に手をかける場面は、背筋までもが震えを覚える緊迫最高潮場面。
激情に駆られた曲調と合わさって目と耳を突く展開で、同時に小道具の凝り方も思わず観察し、スカルピアのつまみまで気づけば覗き込んでおりました。
芝居の割合が多めでしたので、更にパ・ド・ドゥによる膨らみがあれば一段と引き込まれた気もいたします。
サンタンジェロ城の堅固な装置やトスカ達の愛憎劇を見守る、Nao Morigoさん製作の艶めかしくも美しい大きなマグダラのマリアの絵もオリジナル大作に相応しい迫力でした。

オペラド素人からしても、プッチーニの音楽は甘美で劇的抑揚に富んだ印象が強く聴き応えもありながら
Kバレエカンパニーが2019年に初演した『マダム・バタフライ』を思い出し、オペラ音楽のバレエ用アレンジは難しいと再度考えた次第。
音楽監修は『マダム・バタフライ』と同じく指揮者の井田さんで、2019年5月バレエカレッジでのオペラとバレエ音楽についての講座にて、
音楽の骨格がしっかりとしている『カルメン』と比べてプッチーニは歌ありきなため編曲作業は楽しくも難しいと
Kバレエ『マダム・バタフライ』開幕に向けたエピソードとして紹介なさっていて、そうなると歌無しでも自然と音楽が耳に入ってくる『カルメン』と違って
『トスカ』での重要局面では歌声付きアリアを挿入しての工夫にも納得。ただやや唐突な印象も否めず、演出の難度の高さを考えさせられました。
あれやこれや綴ってしまいましたが、『トスカ』の音楽に興味を持ったのは確かで、ほぼ全編聴くのは初であっても2日間鑑賞すれば所々耳に残り
後日オペラでの描き方を確認しようとメトロポリタン劇場での映像を観てしまったほど。
これまで『トスカ』の音楽は思えばソルトレイク五輪フィギュアスケートでのイリーナ・スルツカヤの滑りで聴いたぐらいであったと記憶
オペラではNHKで放送のガラコンサートでしか耳にしていないかもしれません。
数ある舞台ジャンルの中でもオペラは苦手分野の1つで、決して食わず嫌いではなく、今までに『コジ・ファン・トゥッテ』、『イドメネオ』、『運命の力』、
『蝶々夫人』、『道化師』、『アイーダ』など主に新国立劇場公演にて5回は鑑賞。
『アイーダ』は一度は観てみたいと思っていた凱旋行進曲での有無を言わせぬ黄金色に覆われた絢爛豪華な人海戦術に圧倒され楽しみましたが、
以降は「余程」の理由が無ければ観に行かず、足を運んだのは1回のみ。 2019年3月の藤原歌劇団『椿姫』で(当時の感想はこちら)
約10分のバレエ場面のために2日間通いましたが、明解な話の展開や美術衣装が品良く華麗でバレエ以外の場面も満喫でき
せっかくオペラの音楽に関心が再び高まった今回の『トスカ』を機に、また何かしらは観てみようと思っております。

プログラムは今回も中身大充実で、井脇さんの舞踊人生振り返りやイタリア旅行した際の写真も掲載した『トスカ』構想の経緯、リハーサル写真や
出演者へのインタビューまで盛りだくさんな内容。お城の前での井脇さんの立ち姿が颯爽として惚れ惚れし
現地のワインや美味しそうなお料理の写真には思わずお腹が鳴りそうになりました。(食いしん坊の管理人笑)

後日に井脇さんと高橋さんの対談を視聴し、(井脇さんのインスタグラムにまだ残っているかと思います)
高橋さんの振付ノートには人間のイラストではなく台詞が記されていた振付作業の裏話や
東京バレエ団時代にお2人が経験された、新作を振り付ける際のノイマイヤーとベジャールの違い
また後輩の高橋さんが先輩の井脇さんとどう打ち解けたか、『ザ・カブキ』南米公演話まで面白いお話たっぷり。
そういえば15年か20年ほど前のダンスマガジンにて、私達のバレエ団の紹介なる記事にて井脇さん、高岸さん、木村和夫さんが登場したインタビューで
井脇さん曰く、入団した頃は先輩と気軽に話せるような雰囲気ではなかったため(別書籍での前田香絵さんの記事によれば
前田さんが入団された1960年代後半頃は非常に厳格な団員教育の環境だったようで
井脇さんの入団時は既に約20年経っていたとはいえ当時の名残がまだ少なからずあったかと想像)
今は自分から積極的に後輩達に話しかけることを心がけていると仰っていました。
当時からの周囲への分け隔てない気遣い、優しさもまた現在に繋がって自身のカンパニー設立後も精力的な活動の実現に至っていると感じられる記事です。

群舞付きのクラシック、グラン・パ・ド・ドゥ、そしてオリジナル大作と珍しい構成且つ井脇さんの舞踊生活35周年を飾るに相応しい公演でした。
団員の指導から公演企画、ご自身の鍛錬、と総監督としての仕事は毎日がめまぐるしいことと察し
長年踊り続けて更にはコロナ禍においての公演の継続も井脇さんに並々ならぬ力が備わっているからこそでしょう。
来年の『トスカ』の再演、改訂含め心待ちにしております。




小林紀子バレエシアターで1993年に上演された『モーツァルティアーナ』公演チラシ。ううむ、観たはずだが思い出せぬ。
脳を過るのは1992年に日本のバレエ団として初演を果たし、2年連続上演となった『二羽の鳩』における
極悪人な(褒め言葉)塩月さんのジプシー頭領と、鳩を肩にのせて改心しながら帰宅した志村さんの爽やか少年。
https://ballet-archive.tosei-showa-music.ac.jp/stages/view/7872



新宿駅と会場最寄駅の新宿三丁目駅間の地下通路を歩いて移動する途中にある、ヴェネツィア料理店にて1人静かにノンアルコール赤ワインで乾杯。
6月20日までは緊急事態宣言のため酒類提供ができない中、どこのお店も工夫を凝らして対応。呑んだ気分になれました。(そしてまた発出)
ふと思ったがこのお店、前回2019年9月のIBCガラ帰りに友人と立ち寄り、スタンディングバーのエリアを利用したのでした。
いかにもバルらしい賑やかさでワインや料理のメニューも手頃且つ美味しかったのだが、当分は難しい営業形態なのかもしれません。



あらゆる作品の中で何年も前から調べても調べても内容や振付経緯が未だ分からずであるサタネラ。
悪魔、ヴェニスの謝肉祭、プーニ、辺りがキーワードだが結局何やねんと思いつつ魚介のパスタでヴェネツィア気分。
イタリアを1人旅した身内によれば、12月末のヴェネツィアは凍るような寒さでゴンドラどころではなかったそうですが、予約済であったため乗船はしたとのこと。
八代亜紀の舟唄、ではなく(ぬる燗もあぶったイカも管理人の好物)
オッフェンバック作曲のホフマンの舟歌
(少数派だがダレル振付のバレエ版ホフマン物語、曲も振付も好きでございます)を
口ずさんだか念のため尋ねたがそんな余裕あるわけないと即答。
空港への移動で立ち寄った温暖なローマとは気候が大違いだったそうです。



『サタネラ』も収録されたCD。作品の成り立ちについて、結局この解説書が一番簡潔。ガラや発表会で様々なグラン・パ・ド・ドゥを観るようになって音楽にも興味を持ち
しかし図書館にはまず無いため、また生で観る鮮烈な感激を失わないためにも動画サイトは極力視聴しない派であったためこの手のCDは4枚購入し所有しております。
勿論踊れませんが、何度も観ておりますので振付や衣装はぱっと目に浮かび、ある方とも数ヶ月前に話題になった「妄想バレエ」ならば金賞獲る自信満々です笑。
ただこのCDの表紙にもなっている『タリスマン』、女性ヴァリエーションの後半部分は
仮に真似事であっても私がやるとクルクルパーにしか見えぬ、一段と知性無きソロと化すのは目に見えております。



初めて井脇さんを拝見したのは、恐らくは2001年の東京バレエ団シルヴィ・ギエムとの全国ツアーでの『春の祭典』。
とにかく音楽の難解さにたまげましたが、写真では度々目にしていた一斉に身体を反らしたり、
両手を掲げた儀礼ポーズに圧倒された覚えは今も残っております。 そして男性コール・ド写真の高橋竜太さんがまだあどけない印象。
まさか大先輩である井脇さんに振付作品を手掛ける方になられるとは、将来は分からないものです。
改訂前の、レトロな衣装特にロットバルトのアップリケが名物(迷物⁉)であった『白鳥の湖』でも
井脇さんのスペインが登場すると空気が突如締まって洗練された香りが漂っていたと記憶。



初台駅の新国立劇場方面通路に貼られていたポスター。通るたびに渡邊さんの鋭くも力ある眼差しの磁力に引き寄せられ通過しようとするも
数歩戻って凝視、をのべ5回は行っておりました。つまり『ライモンダ』に向かう5回公演全ての往路、素通りなんぞさせぬ見返り美男でございます。

2021年7月4日日曜日

【短文記事】【何だかんだ役に立つ】バレエ101物語





今回は大変短い記事です。ご安心ください。
調べたい事柄が発生すれば機械音痴で人生の諸先輩方よりもスマートフォンの操作が時々危うい私もインターネットでまずは検索する時代となりましたが
今でも書籍で調べる機会は多々あり。また購入せずに借りて済ませる習慣である私にとって図書館は大助かりな場所です。
つい最近も重宝すると再確認した書籍があり、こちらでございます。

https://www.shinshokan.co.jp/book/b567817.html


上記の『白鳥の湖』湖畔写真表紙のほうは初版で、現在新書館で取り扱いは既に終了したと思われ1998年の新装版のみかもしれません。


在住地域の図書館で取り扱いのある初版しか読んでおらずですが発売が1992年。かれこれ30年近く前で近年初演作品は載ってはいないものの
作品で知りたいことがあればすぐさま頼りにし、今も尚活用しております。
図書館入荷は1994年頃だったか、以降は30回近くは借りており、ひょっとしたら地域で貸出回数最多利用者かもしれません。

特に重宝した時期はABT来日公演記事をきっかけに知り『マノン』に関心を寄せた1996年。
バレエに興味を持ち鑑賞するようになって早7年近く経った頃で、『マノン』を知ったのは非常に遅かったのです。
来日公演では『白鳥の湖』も上演されましたが、ジャフィ、マッケロー、アナニアシヴィリらのインタビューの大半はマノンの話題であったため一段と関心を抱いたのでした。
ところが、記事を読んでからすぐに図書館へ向かい101物語を開いたものの、何の話だかさっぱり頭に入らず。
四半世紀が経った今も覚えております、解説文の中に記されていた「高級女郎」とは「いかさま」とは何ぞやなどと
閲覧席にて首を左右交互に傾げ続け、国語辞典も取りに行った25年前当時の管理人でございます。
執筆者はケイコ・キーンさんで、吉田都現新国立劇場舞踊部門芸術監督が英国ロイヤル・バレエ学校卒業公演でのフロリナ王女写真が掲載された書籍にて
生徒時代の吉田さんについて詳細に書いていらした方であるとすぐ思い出し、『マノン』についても
キーンさんが分かりやすく解説してくださっているのであろうと感じつつも我が理解力及び知識教養の乏しさに肩を落としたものです。
そして当時から思考回路の速度が遅い上に蛇行しやすかったのか、五十音順に記載された目次にふと目を向けると『マノン』はあるにも拘らず
吉田監督がマチルダ・クシェシンスカヤ役を踊られ、なかなか厳しい批評が並んでいた記事に驚き『マノン』と同時期に知った
同じくマクミラン振付作品『アナスタシア』が載っていない点に疑問も生じ、結局何を調べに来たのか目的未達成のままであった、初『バレエ101物語』活用ございました。

話を戻します。この後にもバレエガイド関連本は多数出版されていますが3桁台に及ぶ作品を一挙掲載した書籍はそうそう無いと思われ、今後も重宝しそうです。
何しろ『青汽車』や『巨匠とマルガリータ』、フォーキン版の『クレオパトラ』も掲載しています。

つい昨日も、2週間前に舞踊生活35周年記念公演『トスカ』を踊られた、東京バレエ団で長らく活躍され
現在はご自身のカンパニーの芸術監督を務めていらっしゃる井脇幸江さんと、井脇さんの後輩で『トスカ』振付演出を手がけられた高橋竜太さんの対談を視聴する中で
ベジャール作品やノイマイヤー作品で東京バレエ団に振り付けられた作品が話題に上った際にも、再演は鑑賞していながらうろ覚えな箇所もあり
もう貸出何度目か分からぬちょうど借りてきたばかりのこの書籍を開きながら聞き入っておりました。

ところで初活用から早25年、今回借りてきた目的であった『ヴェニスの謝肉祭』は載っておらず。
インターネットで調べて色々出ては勿論くるもののどうにもこうにも綺麗に繋がらず、書籍にしっかりと纏められたページがあればと思い借りましたがございませんでした。
※恋する悪魔、で載っていたか⁈後ほど確認だ。
全く踊れぬにも拘らず4枚も所有しているグラン・パ・ド・ドゥ集のCDにも収録されておらず。
そうかと思っていたら一番奥にしまい込んでいたロシアものパ・ド・ドゥ集CDに発見!
その話を含む井脇さん舞踊生活35周年記念公演『トスカ』公演についてはまた後日。