2021年5月26日水曜日

【お茶の間観劇】人生最大の幸福日となった奇跡・世紀の共演実現   新国立劇場バレエ団 ローラン・プティ版『コッペリア』5月2日(日)〜5月8日(土)






気づけばブログ未更新最長記録を達成してしまい、だいぶ滞り申し訳ございません。心配している方はいらっしゃらないとは思いますが管理人、生存しております。
先週末も2日間素敵な舞台を満喫して参りましたので追って綴って参りますが、まずは本題。
ゴールデンウィークに新国立劇場バレエ団 ローラン・プティ版『コッペリア』配信を4回視聴いたしました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/21coppelia/


スワニルダ:米沢唯(2日) 木村優里(4日) 池田理沙子(5日) 小野絢子(8日)
フランツ:井澤駿(2日) 福岡雄大(4日) 奥村康祐(5日) 渡邊峻郁(8日)
コッペリウス:中島駿野(2日、5日) 山本隆之(4日、8日)

スワニルダの友人:
益田裕子 朝枝尚子 原田舞子 廣川みくり 廣田奈々 中島春菜(2日、5日)
寺田亜沙子 細田千晶 柴山紗帆 渡辺与布 飯野萌子 広瀬碧(4日、8日)


最終日、カーテンコールの様子です。




※今回の配信は夕方のテレビニュースやウェブ媒体でも大きな話題となり、無料効果もあって普段は新国立劇場にそう多くは通っていらっしゃらない方も含め
実に大勢の方々がキャスト見比べ視聴をなさり、その分ありとあらゆる感想意見が配信終了直後から飛び交う、ニューイヤー・バレエ以上の賑わいでした。
中でもフランスのバレエに造詣の深い方々のご感想や鋭い視点にも直後から触れて一瞬冷水を浴びるがの如き刺激を受けるも
20年程前から私が観てきたプティ作品の殆どが日本のバレエ団、日本のダンサーが挑戦した舞台であると気づいた次第。
また見巧者や精通者のご感想を目にするたび、元からではございますが当方のバレエ無知を反省する毎日で元来の頭の回転の遅さにも拍車がかかり今に至っております。
更には後にも詳しく述べて参ります個人の事情ではございますが、決して大袈裟な表現ではなく
これまでの約32年間に及ぶバレエ鑑賞人生どころかバレエ云々問わず、私と同じ誕生日の岩崎恭子さんの名言を真似るわけではありませんがこれまで生きてきた中で
人生最大の幸福日を迎えた配信最終日についても手厳しいご意見が視界に入り、生公演よりも遥かに鑑賞者が多いからこそ活発に飛び交い
人によって受け止め方や捉え方は違って当然とはいつもなら思うところ鑑賞眼の持ち方の難しさを思い知らされ
気づけば更新も途絶え休止も頭を過ぎりかけたりもいたしました。ただ幼少期から変わらず中身が乏しい脳を駆使し
毎日数行ずつ進めているうちに終わりが見えて参りましたのでここに記します。

現代ではウェブ上にも趣味の方の執筆のみならずプロの批評がすぐさま掲載され、既に優れた記事に多々目を通されている方が大多数かと思います。
明日あたりにはダンスマガジン最新号が発売のはずで、専門家による完璧な評論記事が載るかと存じます。(来月号にて特集組まれるようです)どうぞご覧ください。
遅い、薄い、纏まり無しの欠陥住宅状態な素人感想を読む気力や忍耐力のある方は、以下どうぞ。



米沢さんは可愛らしくもちょっと大人びたスワニルダ。当初はすっきりし過ぎて少女らしさがやや物足りないかと思いましたが
フランツにくっついて甘える仕草が何とも可愛らしくニンマリ。何よりきびきびと軽やか、歯切れ良い踊りで脚先が語り、
楽しそうに歌う身体で友人達を引き連れる様子も爽快でした。 コッペリウスとのやりとりでは騙してひたすら追い詰める風ではなく
程良く隙間を空けてさらりと、中でも扮したコッペリアに生命が宿った振りをする箇所ではコッペリウスの余りの喜びように僅かな後ろめたさを思わせ、
されど気づけば徐々に詰めていくスリルも含みコッペリウスがたじろぐのも納得です。

目に心に鮮やかに飛び込んできたのは初挑戦の木村さん。前回友人役の中でも抜きん出たスタイルの良さから間違いなく似合うであろうと
期待は高めておりましたが予想を遥かに上回り、天真爛漫なヒロインを好演。恵まれたラインが物語り、愛くるしい表情の変化に蕩けてしまったほどです。
2幕ボレロにて扇子が飛んでしまうハプニングでも動じず、山本さんのフォローでむしろスワニルダとコッペリウスの心の距離が
ほんの少し近づきかけたかとも思わせる嬉しさまでもが生じるひと幕でした。フランツとコッペリウス、大先輩との共演でも全く物怖じのない堂々たる初役です。

池田さんは登場の瞬間はメイクが濃過ぎたのかせっかくのお顔立ちの愛らしさが今一つ伝わらず、その点は心残りでしたが2幕での無機質な人形姿が妙にリアル。
カクカクとした動きやから徐々に滑らかなステップへと移りコッペリウスのご機嫌も上々となる流れがいたく自然に映りました。
前回は赤いリボンを頭上に装着した黒い衣装姿が一見『魔女の宅急便』キキを彷彿させましたが今回は前髪作っての挑戦。今回の方が似合っていた印象です。

小野さんは登場時の壁にもたれる姿からして黒を醸す危うさと紙一重な魔性を秘めた少女の魅力に感嘆。
フランツにしがみつき目線を上げる表情から匂い立つ小悪魔な魅力には仰け反りそうになったほどです。
そうかと思えば盤石な技術もさることながら素早いステップ1つ1つからもお茶目な台詞を響かせ、生で観たらさぞかし圧巻であったことでしょう。
決して手脚が恐ろしく長いタイプではないながら2009年、2017年、そして今年とプティ版スワニルダ役を観る度にぴたりと嵌る役であると感じさせ
友人達との戯れでの愛らしさ全開な一方、コッペリウスに対しての抑え込むが如き容赦無い切り返しの対比がひときわ強く
顔と身体の表情両方の変化を巧みに見せる喜劇センスがずば抜けているダンサーであると捉えております。

井澤さんのフランツは山形公演の『白鳥の湖』に続き表情も更に出た印象があり、さほどアピールせずとも女子達にモテる姿も納得な華々しい青年。
ただ、すれ違う恋の描写に重きを置き過ぎてしまった印象も否めず、スワニルダと相思相愛な関係性が見え辛かったのが正直なところです。
昨秋のバジルがお調子者且つキトリとの熱々ぶりも良かっただけに、スワニルダを愛するが
しかし軽妙な浮気者であるフランツの性格の表現や踊る難しさに触れた思いでおります。

福岡さんはとにかく明るい、ここ最近の中ではめっきり若返った感のあるフランツで、全身から朗らかで楽しいオーラを発散。
全幕で木村さんと組んでの主演は初でしたがスワニルダの可憐な猛攻撃を受け止め溌剌と切り返し続けるフランツなる楽しいペアの誕生です。
2幕フィナーレの早過ぎてしまった登場はご愛嬌。狼狽せず、まだフェッテ真っ最中のスワニルダを見守る新郎と即座に造形なさったのか
上手く収め、安堵でしたが出演者や指揮の冨田さんはびっくり仰天であったに違いありません笑。
山本さんコッペリウスとの掛け合いでは大阪のKバレエスタジオ出身者同士、阿吽の呼吸が益々増幅。
1つ打つとぱっと弾ける可笑しさが凝縮した面白コンビを満喫し、関西や四国ではここ数年も度々共演舞台を鑑賞しておりますがやはりオペラパレスとなれば格別でした。

奥村さんは能天気な軽さが実にナチュラル。後先一切考えてなさそうで笑、スワニルダにもコッペリアにも
気まぐれと全力投球を右往左往しながら恋している掴みどころのない様子に思わず大笑いです。衛兵達を率いてコッペリウスを囲みからかう箇所も
両腕を左右に開閉させる動かし方が機敏で、4人のフランツの中で悪戯を心底楽しむ表情が一番表れていた気がいたします。
コッペリウスの招きの罠にて椅子に腰掛けたシャンパンを呑んだ後、燭台の炎を前にして溶けそうに朦朧と浮かべた表情もツボでした。
この箇所、各々表現は任されていたのか福岡さんは手を翳して熱がり、渡邊さんは机上の書物に視線を落として興味津々。(井澤さんは失念、すみません)

渡邊さんは澄ました姿が伊達男な見た目ながらボタン1個欠如感な人間味ある様子が憎めず。
そんな不完全なところも含め尻に敷いている笑、肝っ玉スワニルダには愛おしく映り許容しているのでしょう。
スワニルダのことは好きだが、他の女子にも興味がありでもあからさまには見せたくなさそうなフランツでした。
ただすれ違うだけでなく、澄ましているようでいて目線を合わせるべき箇所や愛情を交わす場では磁石の如きぴたりと合わせたり心を注いだりと会話が生まれ
相思相愛と浮気性の双方をメリハリをつけて見せることに成功し、フランツの二面性をはっきりと表していました。

心配していた冒頭の煙草は咽せるなんぞ全くなく、ただ1人一瞬妖しい笑みを浮かべ、背景の想像を掻き立てる幕開け。
意外にも煙草がしっくりしていて、またプティ版フランツの洒脱さと浮気性を品位ある伊達男な形で作っていた点も含め
一括りにするのは正解ではないかもしれませんがフランスで長年踊られてきたキャリアが生きていると感じさせました。
結婚式前、スワニルダ友人達との握手か占いか、設定は分かりかねますが手相を凝視しては1人1人に語りかけ喜び弾ける反応を引き出していたため
生命線やら運命線やら用語が聞こえてきそうなやり取りで、占い師フランツとして生計を立てていくのかもしれません。

さて今春の配信でもやります髪型観察、丸でございます。色が少し明るくなり、私個人としては黒髪のほうが好みではございますが(勝手な言い分でございます)
やや茶を帯びた自然な色合いで、前髪の纏め方も固め過ぎずふわり。『ライモンダ』でもこの路線か、継続観察して参ります。

それにしても、スワニルダ友人と同様に黄色い歓声をあげたくなったプティ版フランツにお目にかかったのは2009年公演の山本さん以来12年、干支1回りぶりです。
しかも事細かには後述いたしますがその山本さんと今回共演ですから、ゴールデンウィークに加え盆と正月、誕生日等各種記念日同時到来状態でございます。

小野さんと渡邊さんは昨秋初演予定であったライト版『白鳥の湖』延期により全幕では待望初ペア。昨年11月のシェイクスピア・ソネットでは約1時間10分
舞台に2人きりで各々何役もこなし緊迫感から繰り出す美の連なりに驚愕したわけですが、騒動喜劇物でも目線呼吸で語り合いが聞こえ、揃ってお洒落な色気ムンムン。
1コマの中で繰り広げられる表現が細かく詰められ、しかもやみくもに慌ただしいのではなく整理整頓されていて、上質な流れに繋がっていました。
賢く勝気な、黒い魅力もちらつかせる姐さんスワニルダと、おっとり気味でほんのり隙のある点が人間味を思わせ
憎めない伊達男フランツなカップルで見目麗しうございました。

コッペリウスはお2人とも初挑戦で両キャストゲスト無しであったのは初です。中島さんは初日は緊張もあったのか
特に小道具使用場面が慎重な余り段取り風味に見えかけた点もありましたが、(アルコールに加えマッチ使用ですから一歩間違えれば大火事。危険な振付ではある)
2幕のバトルをしつつも嬉々とした会話が聞こえてくるスワニルダとのやりとりに思わず目を留めて注視。
フランツ救出使命が第一であれどスワニルダもついコッペリウスの興味を惹く行為を受け入れ互いに意地悪しても楽しむような光景が広がっていました。
2回目は肩の力が抜け小道具使いは滑らかに、品良く紳士然としたスマートな趣に加え不気味さも宿り大前進。
恐らくはプティ版コッペリウスとしては最年少であると思いますが、人形と同時にコッペリウス自身の心も壊れてしまう哀しみが
最後はひたひたと伝う幕切れに至るまで、実年齢の若さを掻き消す好演でした。

そして今回最大の話題でしょう。長年新国立劇場バレエ団で主役を務めてこられ、2014年12月公演『シンデレラ』以来待望の復帰
山本さんのコッペリウスは品位ある紳士な趣きや 奇怪、深い悲哀で舞台の格をを何倍にも上げてくださいました。バレエ界の至宝です。
昔マルセイユ・バレエ来日公演でプティ本人のコッペリウスをご覧になっていた方々も絶賛していました。
扉を開けての登場からしてダンディな魅力と滑らかな中にもユーモアが光る所作で瞬時に洒落た世界へと誘ってくださり
また小道具、特に鍵の落とし方がいたく自然で準備しました感が皆無。そしてコッペリア人形とのダンスでの同じリズムであっても
緩急の付け方見せ方がそれはそれはうっとりする流れを描いていらっしゃり
憧れ愛おしそうに抱くかと思えば狂おしい目に豹変して畳み掛けたり、されどダンスはあくまで優雅な身のこなしで人形の持ち方抱き方も妙に色っぽく映りました。
コッペリア人形の首の辺りもぶらぶら揺れずに保たれていた点にも驚きです。
だからこそ、最後の悲哀がとことん深く、老いらくの恋の嘆きが胸を掻き毟るように刺さり伝わる幕切れでした。

それからこちらは誠に個人の事情ではございますが、私の中で歴史が動いた、山本さん渡邊さん奇跡の、世紀の共演実現!
現在バレエ鑑賞歴約32年ですが、この間において心から虜になったのは2人のみである男性ダンサーが遂に揃って同じ舞台に並ぶ瞬間が近付き
こんなにも楽しみな男性主要役の共演今迄あったか⁈ 遂に14時40分、その時歴史が動きました。
大股歩きコッペリウスと追いかける小走りフランツで共演の一歩実現です!!バレエの舞台にしてはいたく軽妙な第一歩ではございましたが、
例えば共演は共演でも王子と国王、といった役どころではなく見せ場が互角な主役級配役でいきなり初共演ですから、
2週間以上が経過した今も余韻に浸り、加えて喪失感に駆られております。元祖王子と新鋭王子、年齢や役柄は異なれどとにもかくにもお2人とも美しく品性があり
とりわけ椅子に腰掛け燭台の灯りに照らされながら書物に目を向けるフランツと、フランツに薬入りシャンパンを飲ませようと
更に忍び寄るコッペリウスの並びは昔のフランス文芸映画を彷彿とさせる古風で神秘的な絵になるお2人でございました。
ああ、コッペリウスとはシャンパンパーティーに花を咲かせ、しかし結局は頬ツンツンをしてくれていたフランツの元へいき
お姫様抱っこまでされる世界一幸せな小野さんスワニルダよ笑。
お3方が並んだ写真を目にするたびにスワニルダ顔嵌めパネルがあればと我が容姿を顧みず1度でも妄想した管理人をお許しください。

プティ版『コッペリア』でのフランツとコッペリウスのような軽妙洒脱な喜劇共演も勿論嬉しいのですが、
いつかは重厚濃密で理性の歯車が狂い道を踏み外す系の作品での共演も心よりお待ち申し上げます。
共演決定発表時の記事でも綴りましたが役への入り込みや表現の厚み、深さ、インタビューではパ・ド・ドゥがお好きであると仰る等お2人とも共通項がいくつもあると捉えております。
管理人はまだ諦めておりません、『アンナ・カレーニナ』での共演を。誰しも不可能と思っていた山本さんカレーニンに対抗できる
ヴロンスキーがようやく現れたと驚き喜ばしくも不思議な心持ちになり、
同作品でも使用されたチャイコフスキーの「悲愴」が延々と脳内再生であった
鑑賞体制が再び変わりゆく初期の状況は約4年半が経った今もよく覚えております。

スワニルダ友人は2キャスト組まれ、米沢さん池田さんスワニルダチームは若手中心で初々しくキュート。
その中で良い意味で少し異質な輝きを放っていたのは朝枝さんで、色気をふわりと滲ませた艶やか美女でした。引き締めリーダー役は益田さんと見受けます。
対する小野さん木村さんチームはベテラン及び個性派揃い。押しが強くフランツには渾身の肩ぐるぐる回しで猛アピールしていた飯野さんや、
負けじと対抗する意外と気の強そうな広瀬さん、細田さん寺田さんのお姉様ペアも良い味を出し
(このお2人が入っているのは長年のバレエ団ファンとしてやはり嬉しい)、
唯一!?協調性を大事にしていそうな柴山さんに、皆の妹分で最後まで住居侵入を拒む姿も頬が緩む可愛らしさであった渡辺さん、と個性くっきりなチームでした。
両チームとも共通していたのは腰振りやお尻の突き出し、スカート摘み上げも品を保って行っていたことで
音楽と一体となっての可愛らしい戯れが気持ち良く目に入ってきました。終盤、結婚式前のスカート摘み上げしながらの一斉横切り袖捌けは
いつ見てもサザエさんのエンディング場面に見えしかも引っ込んだかと思えば今度はフランツを先頭に逆戻り。毎度笑いが止まらずです。

幕開けのストリートオルガンが奏でるワルツからフランスへと導かれ、娘たちと衛兵さんの朝のマズルカにも幸せ募るばかりでした。
行進も訓練調ではなくおもちゃの兵隊さんのような小気味良い調子で、娘たちのおちょぼ口や腰振りも思い切りが良く、且つ品もあって
小粋な空気感が自宅お茶の間に広がっていたのは明らかです。目が追いつかず大忙しな鑑賞でした。
ピンクや抑えたブルー、凝ったレースを何層にも重ねた娘たちの衣装は何度観てもセンス抜群で、フリルやリボンも可愛らしく
衛兵さん達の抑えたブルーの軍服、アクセントになる赤い羽根も色合いが絶妙です。
装置は一見簡素でも柔らかなグレーで無機質ではなく、彫り込みの線も見え、また衣装とのバランスが宜しく物寂しさは無しです。

演出について、新国立にプティ版『コッペリア』がレパートリー入りを知った際には登場人物が少なく、結婚式のディヴェルティスマンも無く
お祭り大団円な曲調に反してコッペリウスが項垂れ遂には人形が全壊する残酷さな幕切れを好ましく思えず
古い絵本を捲るように色彩も演出もほっこりとしたピーター・ライト版を始めとするスタンダードな版を希望していたため決して賛成歓迎ではありませんでした。
しかし新国立初演の2007年にいざ観てみると生き生きとした娘たちや衛兵の群舞の効果にも救われ想像よりは痛ましい展開には思えず
3キャスト中ただ1人自前フランツであった山本さんのゲスト以上に色男な青年も作品に好感を持つ後押しとなりました。山本隆之さんは偉大だ!

劇場で観て、中でも山本さんの久々復帰に大きな拍手を送りたかった思いは残りますが、配信してくださったことには感謝が尽きず
そして今回がきっかけでバレエ鑑賞に興味を持ち劇場に行ってみたいお気持ちになった方の声多数と耳にし次回以降の公演集客に繋がればと願います。

尚配信最終日につきましては、ようやく共演祈願成就を祝して都内及び大阪からもご連絡を多数いただきありがとうございました。
当初は5月1日と5月8日の本来のファーストキャスト日に関西からも山本さんの舞台鑑賞を通して親しくなった知人が何名も来場予定でおり(勿論山本さん福岡さんの同門共演日も)
ファーストキャストのフランツ&コッペリウスの並びが観たいからと初日または最終日鑑賞を決めた、
またこの機会ほど新国立本拠地鑑賞デビューに相応しい日はないからと初日にオペラパレス初体験を検討していると
関西在住の友人から聞いた際には、喜ぶ余り意識が飛びかけたほどです。
ある大阪の方は隣にいた同業者の方に、この日に絶対観たほうがええと初日を勧めていらして
その光景を眼前にしたときの感激を思い起こすと、ううやはり無観客であったのは悔しさも残ります。
配信には感謝するばかりですが、劇場で歓喜を大勢の方々と共有したかった気持ちは拭えず、いつの日かの有観客再演を心より願っております。

『コッペリア』の次公演は2021年6月『ライモンダ』。中世十字軍時代を舞台にした、歴史絵巻と恋物語が融合した大変美しい作品で、
新国立劇場での上演作品の中で3本指に入る好きな作品であり、2004年初めての新国立バレエ鑑賞時の作品です。
あらすじは王道の少女漫画なものですが史実をもとにした東西異文化の交差も描かれ、ひたすら舞踊が続く飽きぬ展開で写本のように繊細な衣装美術も見所。スケールに圧倒されます。
バレエ鑑賞初心者精通者問わず楽しめますので、皆様どうぞ足をお運びください。
因みに管理人はバレエ作品の中で最も聴き惚れる音楽は『ライモンダ』で渋味ある格調高さがいたく好みでございます。
またバレエのあらゆる作品の中で一番好きな女性ヴァリエーションは、全幕上演は別として発表会やコンクールでも披露される機会はまずないであろう
(華と哀愁が隣り合わせな実に優雅な振付なのですが、先生方もご存知の方は少なく定着していないのだろうか)
2幕でのホルンで始まるライモンダのヴァリエーションです。東京都内に1人いるか否かの少数派でしょう。
お饅頭の騎士かと見紛うジャンのふくよかな肖像画は描き直して欲しいと常々思ってはおりますがもう我儘は申しません。
予定通り有観客上演してくだされば万歳でございます。ああ金曜日のジャン、十字軍遠征からの帰還時のマント姿がさぞ凛然として美しいことでしょう(妄想だけでも心臓印)。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/raymonda/

※【重要】緊急事態宣言期間と重なる『ライモンダ』チケット販売についてのお知らせが発表されています。
買いそびれのないよう、ご注意ください。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_020310.htm




舐める程度に抑えていた、フランス仕込みの千秋楽フランツ(南仏のバレエ団で約6年活躍され、ヌレエフの孫弟子にあたる)に敬意を表して、と
申したいところでしたが欲に勝てず、夕刻以降シャンパンが進み過ぎました。そして薬混入が原因ではなく朝も早よから目覚めてしまったため就寝も早し。



今年はローラン・プティ没後10年。逝去された2011年7月の朝日新聞記事には、山本さんのコメントが掲載されています。切り方が乱雑で失礼。
今回約7年ぶりに待望の新国立復帰及び2002年の『こうもり』新国立初演時プティから直接指導を受けられた経験をお持ちの山本さんが
コッペリウスを踊られたこと、プティも心から喜んでいるに違いありません。



余談ですが、私が初めて観た吉田都監督の舞台は干支2回り前の『コッペリア』。地域密着なローカル公演として実現し
しかし英国からいらしたスターペアに(フランツは現英国ロイヤル・バレエ団芸術監督ケヴィン・オヘアさん)
当時は若かりし、でもないが(テレビ開発前の時代生まれとの疑惑が当時からあり)私も興奮した記憶があります。
この公演をご覧になった方を探せどまだ1名にしかお目にかかっておりません。
当方も発表会や合同洋舞祭にて立った経験のある調布市の市民ホールに英国ロイヤルのプリンシパルペアが出現した光景は
今も不思議で仕方なく、チケットも信じ難い価格。チラシの裏を見ると、出演者の中には小池ミモザさんや島添亮子さん、
そして今回もスワニルダ友人を務めた細田千晶さんの名もあります。
それにしても、この公演でスワニルダを踊られた吉田都さんが24年後の現在、調布ローカル公演同年1997年開場の新国立劇場舞踊部門芸術監督として率いていらしていて
しかも日本史で言うなら『大化の改新』、世界史で言えば『フランス革命』に相当する我がバレエ鑑賞人生を揺るがす歴史的共演が
振付演出こそ異なれど演目が『コッペリア』で実現するとは。管理人における干支周期の奇妙な法則の多さ、今回も恐ろしや。

2021年5月6日木曜日

上野の森バレエホリデイ2021




ゴールデンウィークが終わりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。暦通りのご出勤の方は
本日は頭ぼんやり状態でのご勤務であったと察し(私です)休暇中は配信三昧であった方も多くいらっしゃることかと存じます。
私も上野の森バレエホリデイや初台へ出向く予定が急転直下の宣言により中止となり、上野の森は昨年と同様オンラインプログラムのみに変更。
昨年は3週間ぐらい前?に宣言発出により急遽オールオンラインに切り替え、今年こそは東京バレエ団公演や観客を入れてのクロストーク、出店を始め久々の現地企画と
オンライン両方のプログラムを企画されていましたがたった数日前の宣言決定により今年もオールオンラインに。
チケットも売り出しており、間もなくの本番で既に機材搬入も始まっていた頃かもしれず、実行委員の方々や関係者の方々の労苦を思うとやるせません。
それでも昨年に続いての急遽変更にも拘らず自宅で楽しめるプログラム配信には感謝するばかりです。

大盤振る舞いの初台全キャスト配信は現時点で3回全て観ており、(当初は劇場で5回鑑賞予定でしたので)、明後日が大本命の回。
世紀の共演だの奇跡の共演だのあれやこれや3月半ばから1人騒いでおりますが、後者の表現は何処かで聞いた覚えが。
そうでした、シルヴィ・ギエムの『ボレロ』でバレンボイム指揮のシカゴ交響楽団が演奏、東京バレエ団も共演する公演が20年ほど前にあり
公演名称が「奇跡の響演」でございました。そんなわけで、話は繋がりませんがNBS系の話題から。
上野の森バレエホリデイの配信動画をいくつか視聴いたしましたので、手短かな感想を。5月9日まで公開されている予定です。

特に面白かったのはニコライ・フョードロフさんの解説付きの東京バレエ団『ジゼル』今年2月公演の本番やリハーサル約30分編集映像で
振付や役柄を掘り下げての解説で大変分かりやすく、嬉しい学びとなりました。
中でもヒラリオンに潜む身勝手さ(私の表現が良いか否か、捉え違いをしておりましたらすみません)については納得で
ジゼルのことが本当に好きならば、アルブレヒトの正体暴露もジゼルの心臓に支障がない方法で伝えようとしなかった点に疑問を持っておりました。
度を超えた遊び人坊ちゃんなら話は別ですが、ジゼルとの距離感や接し方を考えれば、アルブレヒトのほうがずっと思慮深い方法をとっていたと思うわけです。

またジゼルのヴァリエーションが元々は無く、新たに挿入されたアダンではない曲である点にも触れ、フョードロフさんが仰る通り
別のところから持ってきたとは思えぬほど調和している踊りと見受けます。コンクールでも大人気な『ライモンダ』夢の場と言い
『白鳥の湖』黒鳥(悪戯っ子のほう)と言いあまりにも定着してしまい、 本来原曲には存在していないと思わせないヴァリエーションは諸々あり
『ドン・キホーテ』や『パキータ』『海賊』などはもはや誰が何処を作曲したか把握すら困難ですが改訂者のセンスや観客の慣れの恐ろしさを感じざるを得ません。

https://youtu.be/4g-6g96VWpk


それから神戸に本拠地を置く貞松浜田バレエ団の約3分にまとめられたレパートリー映像も見どころが詰まり、
コンテンポラリーの作品群や実力も高水準と今更ながら驚きを覚えます。
バレエ団のダンサーが出演する外部公演や発表会は幾度と観ているものの、バレエ団としての公演を観たのは『くるみ割り人形』東京公演と
NHKバレエの饗宴『ドン・キホーテ』1幕と森優貴さん振付の『死の島』。レパートリーにあるキリアンやナハリンの作品ももっと観てみたいと興味を持たせる映像です。

https://vimeo.com/537594789


東京シティ・バレエ団の『白鳥の湖』2016年ダイジェストも公演映像、今年7月に公演が予定されています。
オーソドックスながら、チュチュの羽が長めでふわっと靡く光景や オデットが王子に裏切られた悲しみを切々と訴える場にてコール・ドも共に躍動。
終盤には今では『チャイコフスキー パ・ド・ドゥ』のアダージオ曲として定着した音楽に乗せてオデット、王子、白鳥達が決意を新たにし
2人を9の反対の形で取り囲むユニーク且つ壮大な場面も思い出しながら視聴いたしました。
藤田嗣治の美術や東京都交響楽団演奏も話題を呼んだ、2018年の公演を鑑賞しております。

https://vimeo.com/538520420


まだ全ては網羅しておりませんが、クロストークや様々なバレエ映像など充実していますので(Youtubeとvimeoに分けて公開しているもよう)
公開終了までにもういくつか視聴してみようと思っております。