2026年9月8日火曜日

多彩な宝で満たされた信州のお盆 ESSENCE その先へ Ballet Gala in サントミューゼ 8月16日(日)《長野県上田市》








だいぶ遅くなりましたが、8月16日(日)長野県上田市でESSENCE その先へBallet Gala in サントミューゼを観て参りました。
https://www.santomyuze.com/hallevent/20260816_balletgala/

長野県での鑑賞は新国立劇場バレエ団2017年イーグリング版くるみ割り人形(同じサントミューゼ)、2019年こども白鳥の湖岡谷市公演以来3度目です。
プロデュースは八幡顕光さん、上演作品の殆どは宝満直也さん振付。新国立劇場に縁ある方々が集い、どれもカラーが異なる作品構成。
今年の鑑賞上位7本に間違いなく入るであるう面白い公演でした。

オープニングはずっと作品は伏せられていましたが、八幡さんがカルミナ・ブラーナの神学生2ソロを披露され発狂!
忘れもしない2005年の初演時、タイトルは知っておりダンスマガジンのリハーサル記事も読んでいましたが、いざ鑑賞して大衝撃受けた作品で
新国立レパートリー古典以外の三大前向き衝動に駆られた作品のうちの1本です。(あと2本はエイフマンのアンナ・カレーニナ、ドゥアトのポル・ヴォス・ムエロ)
八幡さん、研修所を卒業して入団早々にゲスト降板で抜擢され、スーパー銭湯へ行く前に電話がきたため、お風呂場で先輩達と確認作業をしていたとインタビューで仰っていたかと記憶。
のちの再演でも踊られていますが、しかし初演時から21年が経っていながら体型も身体の切れ味も不変で化け物なパワーで披露されました。

Triptyque-Burning Waterは花形悠月さん、山本涼杏さん、上中佑樹さん、森本晃介さんの4人が出演。
トリプティークといえば宝満さん始め研修所出身者はアステラスでも披露機会が多くあった、
手をぶらぶら下に振りながらの登場や全身を斜めにしながらのウェーブポーズなど、牧阿佐美さんの振付が目に身体に刷り込まれているでしょうに、刀を題材に描き出す手法に驚き。
見得を切るようなポーズから繰り出す火と水、相反する要素が刺激与え合うやり取りも見応えあり。
特に山本さんのシャープで切り込みの深い踊り方や身体を自在に操る技術の高さの注目いたしました。

眠れる森の美女より目覚めのパ・ド・ドゥはこの日唯一の古典作品からの抜粋。共に英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団にてプリンシパルとして活躍していた
佐久間奈緒さんと厚地康雄さん(厚地さんは新国立でもキャリア構築)がご披露、ピーター・ライト版でございます。
基本ファンファーレな目覚めが好みなのだが愛を確かめ合う過程を何ともしっとり描き出しているのでしょう。
録音音源のはずだが、お2人の身体から音楽が優しく響いてきました。

Tarantellaは福田圭吾さん、八幡顕光さん、五月女遥さんのトリオ。出演者もストーリーも聞くだけでお腹が振れそうになりましたが、
いざ観れば技術大職人且つ笑いのセンス、ツボを心た3人だからこその極上大騒動。
キャンプ場に来てテントも張り、椅子に腰掛けてお酒も入った夏休み満喫中の3人を毒蜘蛛が襲う展開で蜘蛛役についてはあえての未掲載だったのか、
宝満さん作品のネタ系ミューズであろう小柴富久修さんがご担当。
黒い全身タイツに毒蜘蛛の脚をリュックのように背負い、音楽開始前に暗闇からすっと表れ、じわりとした笑いがまずは会場を包みました。
とにかくずっと同じテンポの曲であっても毒蜘蛛からの奇襲、恐怖、逃亡、卒倒を正確な音感に裏打ちされたテクニックで会話するように魅せるトリオで
音楽の変化への呼応や間の取り方、それぞれのソロへのバトンタッチ、何もかもが隙なく完璧の域。
例えば五月女さんなんてコメディのイメージはそれほどはなかったが無理に笑いを取るうとせずとも、毒蜘蛛に刺されて脱力して男性陣に項垂れても尚、脚先は鮮やかにステップを踏んでいて、
真の職人だからこそ繰り出せる技でしょう。そのギャップに更にお腹の捩れが止まらずでした。
尚、この作品と球ピン、美女と野獣は上演前に説明アナウンスが入り、どうやら堀之内咲希さんであったもよう。
タランテラでは可愛くも後の大騒動を予期させる不気味さを含んだ声色で楽しませてくださいました。
実は上田駅に向かうバス内で出発早々に飲み物をこぼされてしまった方がいらしてちょいとハプニング発生。
今思えばタランテラの音楽流したら状況にぴたりと嵌ったでしょう。いや、それどころではなかったのだが笑、乗客同士結束して短時間で乗り切りました。
こぼしてしまわれた方、もしお読みになっていたら、誰にでも失敗はありますからどうか気を落とさずに。
到着できるか分からぬ状況での大阪から秋田へのプロペラ機移動を筆頭に、この夏の観劇そのもの以外の遠征強烈出来事の1つとして数えております。

Eclipse一月が消えた夜一は米沢唯さんと渡邊峻郁さん。かぐや姫をモチーフにした作品とのことで音楽はチャイコフスキーの交響曲第5番第2楽章を使用です。
儚いシルエットで登場し、手を翳したかと思えば繋いでステップを紡げば美しくも胸抉られるような残酷さ、
一方で達磨さんが転んだを戯れるような可愛らしいピュアな空気を往来して感情の発露が忙しい秀逸作品でした。
リフトもただ持ち上げるのではない、2人の溶け合う感情のせて語る渡邊さんの匠の技が織りなす変形の連続なサポートに何度心や目を奪われたことでしょう。
それにしても、壮大な交響曲に負けぬどころか音楽と感情の溶け合いをぐっと押し上げながら大会場を満たすお2人の円熟味よ。
音楽のフレーズといいパ・ド・ドゥのフォルムでも訴えかける力といいエイフマン版アンナ・カレーニナを思い出してしまいました。今ならこのお2人ぴったりでしょう。
アンナとカレーニン、アンナとヴロンスキー、どちらも絵に物語になりそうです。

『球とピンと私たち』は小柴さんと宝満さんがコンビとして臨んだ初演の2013年、全日程観て大笑いした記憶がありますが、プログラムによれば初日は一切笑い起こらずであったのか。
新国立劇場での全身タイツ系衣装パフォーマンスはカルミナ・ブラーナの神学生3の下着1枚姿よりも刺激強く壁が厚く高過ぎたのでしょう。
初演時は全身タイツ系は小柴さん、宝満さんはボーリングに取り組む少年な格好でしたが
大人数版は花形さん山本さんと、宝満さん厚地さん以外の男性ダンサー陣で、まさかの全員同じ全身タイツ系+赤色キャップに赤色半ズボン姿な衣装とは。
お尻突き出しも懐かしい。音楽は2Cellos。ボーリングルールのアナウンス後の音楽が始まる前の静けさに包まれた状態の冒頭では、公演の舞台監督であり嘗ては新国立劇場バレエ団にて
宝満さんらと同時期に在籍なさっていた小口さんがご登場。2名のピン?に指示を出していたところ、思いがけず客席から
小口さんのお嬢様による「パパ!パパ!」の声が加わってぶっつけ本番の可愛い演出として成立。
きっと自慢のお父様で、普段は舞台の裏手にいるお父様が今回は舞台上に登場、お嬢様にとってどれだけ誇らしかったことでしょう。
直前演目で踊っていた渡邊さんは宴会に遅れてきた部長風に途中から堂々と登場。大真面目顔で、しかしさっきまで儚いシリアスな作品踊っていたと思えぬくらいに
身体は弾けていらして笑。全身タイツはトゥールーズ時代の死せる女王以来かもしれません。
振付が非常に素早く捻りもたっぷりで、1人が少しでもミスしたら大崩れになる崖っぷちを歩くようなぎりぎりを行く作品ながら
誰もが水を得た魚のように音楽と戯れるようにメリハリ出しながら踊っていて、至高のおふざけパフォーマンスでごさいました。
最後、放射状に倒れ込んだピン達の中からおやゆび姫の如く現れてボーリング放って歓喜する女性が!小野さんだったようです笑。

美女と野獣は2020年に大和シティー・バレエで小野絢子さん福岡雄大さんを主演に迎えて初演。
翌々年の配信にて視聴し、衣装のキュートな色遣いといい選曲の妙といい生で全幕観るべきであったと大後悔時代まっしぐら状態になった記憶がございます。
今回は晩餐会の場面を抜粋上演。ベル、野獣、お猿の支配人、求婚者達、小鳥達も集い、可愛らしくもちょこっと危険も、されどユーモアと愛情いっぱいな晩餐会の始まりです。
プログラム解説によれば、野獣が住むお城の動物達も総出でベルをもてなし、小野さんがそれはそれは美しい愛らしいベルで、
きらりとした水色ドレスな衣装着ての軽やかな登場にほおが緩みっぱなしに。
見かけは強面だが高貴な品は持ち合わせているもののつい険しい顔で接しては戸惑う野獣を厚地さんが細やかに変化をつけながら体現。
臆することなく会話しては愛情を受け止める、ただ綺麗なだけでなく勇気や肝が据わったベルと、
優しく接しようと努めるも失敗続きな部分がかえってチャーミングに映る野獣とのやりとりにすぐさま引き込まれました。
力持ちである上に長身の野獣さん、ベルをひょいっと持ち上げると大木のてっぺんに到達したかのような高さといい、
高所でひっくり返すポーズも高度が恐るべし。ベルは困り顔であっても怯える様子はなく、頼もしや。
おサルの近衛兵隊長の福田さんが実質取り仕切り役で、続々と入ってくる個性豊かなキャラクター達を出迎えては
場の移り変わりを伝えては次へと繋げて行く橋渡し役として存在。また野獣へのアドバイザーも兼ねていて、ベルへの優しい接し方を伝授するも野獣さんがとことん失敗、
思い通りにいかぬもどかしさも愛嬌たっぷりに表現されて、そうかと思えば次のキャラクター達を迎え入れたりと
やること山積みながら全体の交通整理な役割も果たされ安心感を与えていらっしゃいました。
おサルの近衛兵コンビの上中さん、森本さんも身体の可動域をフル活用しての忠実なお仕えぶりが楽しく映ります。
チュチュに羽根の質感が盛り込まれたオオルリ、カナリア、ローズフィンチもカラフルで愛くるしくも細やかなパがぎっしり。
しかしベテラン職人五月女さんと若きテクニシャンの花形さん山本さんの組み合わせな面々ですから、皆歌うように軽やかでございます。
大島沙彩さん、鬼頭楓さん、下川佳鈴さん、堀之内咲希 さん、松本鈴香さん、松本柚香さんによる黄色い衣装のメイドの小鳥達も
脚をパタパタさせながら舞う振付も嘴っぽい表情作りも全員お手の物。

そして配信時も驚かされた求婚者達の暴れっぷりも見事で、公演前々日に金曜ロードショーで風の谷のナウシカの放送を観ていたためか
トルメキア兵士をも少々彷彿。戦士風デザインの黒い衣装もカチッと締まりがあって皆様お似合いです。
匍匐前進しながらだったか笑、忍び込んで顔はサルに扮して、舞踏会を掻き乱していくものの
高難度な技術がゴリゴリと刻み込まれた振付をいとも易々と踊られ、大きな空間使いといい瞬発力といい驚嘆するばかり。
全幕初演時とは3名とも出演者総入れ替えで八幡さん、渡邊さん、小柴さんで臨んだわけですが、渡邊さんの悪さをギラつかせつつもダイナミックに突っ切っては
細部の部位にまで振付を染み込ませた身体で縦横無尽に踊り抜く高度な技術表現にはぶったまげました。
多くの出演者が複数本掛け持ちで臨まれている今回のガラですが、この日約2時間で全く違う色合い且つ運動量多し作品3本目です。
渡邊さんの新国立入団3年目の頃のインタビューだったか、留学時代に目撃した、プロになってからもレッスンに来ていたフリーデマン・フォーゲルについての印象を表したお言葉を
そのまま拝借しまして、今回の渡邊さんこそ「人間じゃない」と唸らせた次第です笑。

晩餐会の場面のみ観ても選曲が秀逸で、ショスタコーヴィチのバレエ組曲等を使用しており、少し風変わりで時に偏屈で、
しかし花が咲くような愛らしさも隠れ、宝満さん版美女と野獣のために作曲されたかと錯覚するほどにキャラクター達の感情を物語る旋律でございます。
そこへ宝満さん特有の、音楽の隅々まで身体が触れるような細かい高難度の振付が入るも、見せ方を計算し尽くしているのか
観ていて疲労感はなく寧ろ色や形もきちんと整えられた中でダンサーが躍動する、そして食品栄養成分表が綺麗なグラフを形作るかのように、
似たり寄ったりがなくありとあらゆる味わいの作品を続々と生み出していく手腕にも舌を巻いた信州でございました。

カーテンコールは美女と野獣の音楽で、衣装はそのままで1部の作品を辿る構成もまた楽しい。
タランテラトリオは鳥さんとおサルの支配人と求婚者が再び倒れ込み笑、Eclipse〜月が消えた夜一は求婚者の格好のままの渡邊さんが
白い透け感ある衣装を纏った米沢さんをリフトしながら駆け込んできては更に高所へと持ち上げ、米沢さんの体重を感じさせぬ走りっぷりに驚愕。
王がお姫様を連れ去ってきた新たなお話をも思い浮かんだと、友人が素敵な例えを挙げていて、当方もときめいてしまったものです。
米沢さんが天女のよう!!と反応を寄せてくださった方もいらして、観る者に格段と訴えかけてくるカーテンコールでございました。
カルミナジャンプも再び披露なさってから観客の声援に応える八幡さん、そして割れんばかりの拍手で宝満さんが迎えられ、喝采に溢れたお盆の上田市でございました。
八幡さんのプロデュース力に、実行委員代表で上田市ご出身の若林佳代さんの行動力にも再度感謝が湧いてきます。
多彩な宝なる作品で会場を満たしてくださるほぼ宝満さんガラ、大成功でございました。




カーテンコールは撮影可でした。米沢さん渡邊さん、高々リフト〜



更に高く!



目を合わせてにこやか。この衣装、渡邊さんの目眉キリッとした顔立ちにもしっくりで、中央アジアあたりの貴公子或いは戦士な雰囲気も。



トリプティークチーム!衣装はサルと鳥達です。



眠れる森の美女と野獣です。繋がっている?ややこしい笑。



タランテラ。おサルと求婚者と鳥がパタン笑。



カルミナジャンプな八幡さん!



呼んできます〜



宝満さん登場!



横一列



月組拡大です。



あとは時系列に。東京発上田駅行きバスの車窓から。しらかわん、ふるさとの景色に似ていて郷愁感漂わせています。里帰りはこの約2週間後です。



車内の騒動にて少しだけ助け舟を出しただけですが、隣席の方がお礼にとくださった、抹茶タルト。おやつ何も持ってきていなくて、と歓喜していただきました。濃厚で美味しい!



上田城近くにて。



絵本に出てきそうな教会。



信号から山々。



信州へ来たからにはお蕎麦を。塩田屋にて、月を食べた昼。お通しも凝っていて、カレー味のジャガイモ煮付け等、佐久のお酒に合います!
お蕎麦は噛み締めるほど香ばしい。おすすめです!



塩田屋近く。



みすず飴本店!



しらかわんもみすず飴に関心。



更に北へ進み、上田城方面へ。昔ながらの家屋並ぶ風情ある街並み。そよ風が爽やか。



りんごどら焼き、シャキシャキりんごたっぷり。



会場に向かう途中、エトワール!この日朝に一報いただき、4日後にエスプリガラを鑑賞できる運びとなりました。リスクッキーも購入。



天神は全国各地にある地名?この翌週末は南方の天神へ。



駅の椅子。



次の上田訪問時には立ち寄ってみたい駅前の武士をテーマにしたラーメン店。武士ブリュレもあるらしい。フランス仕込みの武士⁈しらかわん、心当たりあるそうです笑!!!



アルクマくん。インタビューにて小野さんが上田でグッズを買いたいと語っていらっしゃいました。球とピンにも出演できそうな被り物も!



新幹線乗ります!



私も晩餐会!宝満さんの面白閃き振付を濃縮したガラでした!渡邊さんの全身タイツ物をようやく拝見できて、しらかわんも喜びに満ちています笑笑。
それにしても、しっとり切ない系から至高のおふざけ、そして悪さ企む人物、とガラであってもトリプル・ビルを丸々観た満足充実度でございました。
1公演の中でお1人でトリプル・ビルなんて、私の中では2017年の新国に眠れる森の美女における、
日によっては1公演でプロローグカバリエ、ロシア王子、ゴールドの三役登板以来でしょう。
懐かしくも、身体は益々多分野対応型になりつつある渡邊さんの万能ぶりに手を合わせたい思いに浸りました。
さらば長野県、上田、また逢う日まで!!

2026年9月3日木曜日

伝田さんのメドーラデビュー 東京バレエ団『海賊』 8月26日(水)




順番前後いたしますが(いつまで続くか??)8月26日(水)、東京バレエ団海賊を観て参りました。
これまで2019年、2021年に東京文化会館で観ておりますが今回は新国立劇場での開催です。
https://thetokyoballet.com/performance/lecorsaire2026/


音楽:アドルフ・アダン、チェーザレ・プーニ、レオ・ドリーブ、リッカルド・ドリゴ、ペーター・フォン・オルデンブルク
振付:アンナ=マリー・ホームズ(マリウス・プティパ、コンスタンチン・セルゲイエフに基づく)
台本:ジョージ・ゴードン・バイロンの叙事詩「海賊」(1814)に基づく
編曲:ケヴィン・ガリエ
装置・衣裳:ルイザ・スピナテッリ
装置・衣裳協力:ミラノ・スカラ座

メドーラ:伝田陽美
コンラッド:柄本 弾
アリ:池本祥真
ギュルナーラ:三雲友里加
ランケデム:樋口祐輝
ビルバント:鳥海 創
アメイ(ビルバントの恋人):政本絵美
パシャ:山田眞央
パシャの従者:小泉陽大

第1幕 賑やかな市場
海賊たち:大塚 卓、井福俊太郎、安村圭太、二山治雄、山下湧吾、南江祐生、岡﨑 司、後藤健太朗
海賊の女性たち:足立真里亜、加藤くるみ、中沢恵理子、工 桃子、長谷川琴音、安西くるみ、長岡佑奈、橋谷美香
オダリスク:涌田美紀、平木菜子、中島映理子

第2幕 海賊が潜む洞窟
海賊たち:大塚 卓、南江祐生、岡﨑 司、後藤健太朗 海賊の女性たち:加藤くるみ、中沢恵理子、工 桃子、安西くるみ

第3幕 パシャの宮殿
薔薇:金子仁美、足立真里亜、中沢恵理子、工 桃子、長谷川琴音、安西くるみ
花のソリスト:二瓶加奈子、加藤くるみ、長岡佑奈、橋谷美香、富田紗永、五十嵐玲奈

指揮:ギャヴィン・サザーランド
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
協力:東京バレエ学校



ロールデビューとなった伝田さんのメドーラは卓越した技術が光り、ただテクニック披露ではなく場面毎の色付けもお見事。
パシャの前での堂々と可愛く振舞う愛らしさからコンラッドに出会うロマンティックな恋心の昂りまで、鮮やかに描画しながら物語を牽引です。
とにかくメドーラってこんなに踊る役であっただろうかとほぼ舞台上にいて、衣装もクラシックチュチュもあればふんわりスカートもあり、
ハーレムパンツもありで衣装種類も全て異なるデザインながら、どの場面も海を泳ぐようにスイスイと滑らか軽やかな踊りで魅せる活躍。
ガラでは定番の洞窟のトロワ(ガラでは大概パ・ド・ドゥだが)もステップ1つ1つが潔さと優雅さを備えていて、明快に語る踊りに感嘆するばかりでした。

そしてメドーラの出番に拍車をかける花園も、音楽を吸っては高らかに放つような緻密で美しい踊りの連鎖。
失礼ながら当初ピンクの衣装はどうかと思っていたのだがとんだ失礼で、艶やかに舞う大輪の花でございました。
コンラッドへの恋や、彼がピンチのときのビルバントに傷害与える大胆な行動も健気。
あらすじがあるようでないと言われがちなこの作品にて、それゆけメドーラの大冒険なるステージを見せてくださり、全幕で観る面白味を再発見いたしました。

コンラッドの柄本さんは、踊りのキレ等はやや控えめになってきたものの、我らがリーダーな存在感はピカイチ。
優しく慕われているが抜けた部分もあるのがまた人間味を感じさせて、作品の温度をしっかり上げていた印象です。
そして鳥海さんのビルバントの迫力やギュッと辛味を凝縮したようなオーラも忘れ難く、
身体はかなりがっしりとなさっていながら踊りは軽快でびっくり。特に政本さんのアメイと共に群舞率いる場は
何処を切り取っても張りと締まりがあり、序盤からはち切れんばかりのエネルギーが大充満していきました。初日だからまだ全体が硬い、なんて事態は一切なしです。
コンラッドに対して、常日頃から不満を募らせていたのであろうと想像がつく秘めた野心も仕草やちょっとした表情からつらつらと伝わり、
展開は把握していても手に汗を握らせる行動で緊迫した裏切りを演出なさっていました。
奴隷商人ランケデムの樋口さんは、ふわっと浮くジャンプで沸かせたかと思えば悪どさよりもギュルナーラ始め娘たちの美貌を見て欲しいと
市場の商人そして客席にも猛アピールしていてなんだか憎めずチャーミング。
そして静けさの中から厳かな熱さを見せていたのは池本さんアリ。出番こそ少なくても修行僧の如くストイックな立ち居振る舞いでコンラッドに仕え
大定番のヴァリエーションも厳粛な空気を纏いながらの超絶技巧の繰り出しで、物語を大事にしたテクニック炸裂で好印象でした。

人身売買に奴隷と、現代の人権感覚では許し難い行為や描写の連続で、東洋に対する偏見イメージもあちこちで描かれており、ライモンダと同様欧州では上演しづらい作品でしょう。
しかし人攫いも救出も現実ではあり得ぬほどにスピーディーに対処して笑、大勢で畳み掛けるパワフルなキャラクターダンスや
お盆の高速道路も仰天であろう舞台がピンクの大渋滞となる花園の壮麗でシンメトリーな美しさなど、踊りの見せ場を前面に出しているためか鑑賞後は不思議と爽快な気分。
精鋭揃いで勝気な魅力も突き出したオダリスクのトリオに、花園は明るく弾ける優美さが連なって目にも麗しい。
女性の立場の弱さを露呈したあらすじではあっても、観ていて決して後ろ向きな気持ちにはならず、描き方も工夫されていると捉えております。
仕事帰りのぎりぎり到着で鑑賞しても展開が進む度に活力が沸いてしまい、東京バレエ団の全幕レパートリーの中では一番好きな作品です。

衣装の曲線や抑えたある色味で彩られたデザインに、もしやと思ったら手掛けたのはルイザ・スピナテッリさん。
メドーラのトロワでのチュチュはもう少しキラリとした装飾があるほうが好みとは思えたものの、新国立のライモンダと同様、
色の組み合わせや繊細な模様をあしらった衣装の数々はいくらでも眺めていたくなります。
初日開幕以降も連日大盛況だったもようで、これからも人気作品として再演を重ねて欲しいと願います。




船をイメージしたフラワーアレンジメント。


垂れ幕。東京バレエ団新国立劇場シリーズとは、こんな名称を冠したシリーズが誕生するなんて。以前の理事長は空の上でどう感じていらっしゃるでしょうか。



オネーギンポスター登場。


タイムスケジュール



キャスト



ピンクチュチュ



紫チュチュ


オネーギンについての説明パネル。14年ぶりの再演です。



11月、楽しみにいたします。しかし会場となる初台を本拠地としている団に、
オネーギンぴったりなお方がいらっしゃると思います。冷淡でツンと澄ましたお顔なんて、心射抜かれそうです。



海らしい色彩な翠で乾杯!

2026年9月1日火曜日

夏恒例 京王線癒し行事今年はバルセロナ行き BALLET NOW 第19回発表会 8月18日(火)《東京都府中市》




またもや順番前後いたしますが8月18日(火)、東京都府中市にてBALLET NOW第19回発表会を観て参りました。
https://www.ballet-now-2007.com/p/4/

川崎浩美さん貝川鐡夫さん主宰のお教室で、2019年以降は感染症対策における内輪のみ公開であった2020年以外毎年拝見しているスタジオです。
ゲストはお馴染み、新国立から渡邊峻郁さんと速水渉悟さん。バレエコンサートからジャズ、タップ、
ドン・キホーテハイライトにヴァリエーションを踊るチャレンジセクションまで、溌溂と楽しいプログラムでした。

幕開けはお子様達のラ・ファボリータ。以前にも子供中心に披露された作品かもしれませんが、皆さん背筋がスッと伸びていて立ち方も綺麗。
難しい複雑派手なテクニックよりもまずは立ち方や背筋の伸ばし方、顔の付け方がきちんとできるよう指導されているのでしょう。
この後にもう少し年上の生徒さん3人で踊られた『くるみ割り人形』より葦笛の踊りも(男子2名女子1名の構成)優雅に折り目正しいトリオでした。

続いて『白鳥の湖』よりパ・ド・トロワ。中1の生徒さん2人と渡邊さんが踊られ、渡邊さんの白鳥トロワを再び目にする機会があるとは思ってもみなかったため発表時はびっくり。
しかも中学1年生の生徒さん達ともなれば保護者に見えてしまうかもと要らぬ心配も勝手にしておりましたが
可愛らしい生徒さん達に挟まれても不思議と違和感ない上に、安心安全美しさの保証は無限大でこまめにお顔覗き込んだりと優しさ炸裂サポート。
更には3人で穏やか楽しそうに踊っていて、心清められるトロワでございました。

前回に引き続きタップダンスとジャズダンスもあり。タップはミーアンドマイガールよりメドレーでヴィヴィッドな色違い衣装も華やかです。
上へ上へと引き上げて靴の音は極力響かせないバレエと違って重心は下に、音を鳴らせてナンボであろうタップは使う筋肉の切り替えも容易ではないでしょうに
弾けながら踊っているため観ていてワクワク。肩の力抜いて楽しませてもらいました。
ジャズダンスはアラジンよりメドレーで、エキゾチックなキンキラお衣装に変わってゴージャス気分。
宝塚歌劇団を観に行ったことがなく(女性が男性の役を演じる文化がどうも私には受け入れ難く、こればかりは好みの問題ですが)
ミュージカルも普段観ていない私からするとタップとジャズ両方の鑑賞はともに新鮮に映り、アシスタントの方が毎回皆が楽しんで踊れるよう両方に出演してリードなさっていて
生徒さん達にとって心強い存在でしょう。ドンキハイライトでも要として皆を率いて活躍され、眩しうございました。

『ドン・キホーテ』よりハイライト版として振り付けられたバルセロナの広場は1幕の闘牛士達の部分も皆で分担して踊りわけ、
寧ろ次々と変化が起きてどんなアレンジがなさるのかと楽しみ倍増。速水さんも闘牛士パートを男子3名率いて踊られ、優しい見守り隊も兼任される上に客席も盛り上がってしまいます。
最後はキトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥで、キトリはミュンヘンへ留学中の生徒さんが益々美しく大人びた踊りで魅了し
こちらの生徒さんの初パ・ド・ドゥの2022年以降毎年組んでいらっしゃり、今回で5回目となるバジルの渡邊さんも
生徒さんの成長に合わせて表現の方向性を少し変えてこられたのか流し目やら澄ませキザ顔やらアダルト路線で臨まれ、テクニックは端正であれど益々情熱的。
終盤はちょいと気力で回転しているようにも見えかけたものの笑、浦和に続く熱血バジル、堪能いたしました。

第4部ヴァリエーションに挑むチャレンジセクションは、小さな生徒さんもシンプルめにアレンジされた振付にチャレンジしていて
誤魔化しが効かず大人が踊るのはかえって難しそうな振付をきちんと踊っていて、またポワントデビューも慌てずの方針は好印象。
貝川さん浩美先生のご子息の1人がバジルのヴァリエーションにチャレンジした後の一言で、渡邊先生に負けないように頑張ったとの大胆心臓強な発言には場内も沸いてしまう事態に笑。
すると、突撃!舞台袖のバジルさんなる急なインタビューに私服に着替えて見守っていた渡邊さんが隅っこにそっと、首をヒコヒコさせながら登場され笑
お褒めと激励のお言葉を届けていらっしゃいました。非の打ち所が無いゲスト業務でございます。

子供から大人の生徒さんまで、楽しそうに溌溂と踊るプログラム盛りだくさんな発表会でした。
半休取って昼に退勤後、平日昼下がりの京王線下り方面への電車移動からして私の大事な癒し時間、今夏も満喫いたしました。
来年は20回記念!心待ちにしております!!




会場前の噴水



駅前で炙りチーズケーキ。バーナーで焼き色入れて表面を溶かしてくださいます。バジルも燃ゆる熱さと想像しながらいただきます。



美味しそうなケーキ。トロッとした部分とひんやり部分、両方を滑らかに味わいました。



会場近くにて通り道に、からあげ元気亭。店名がちょいのみも含むのか分からずですが元気が出そうな外観。たこ焼きもあるそうです。
貝川さん振付人魚姫における渡邊さんのタコクイーン思い出してしまいます。タコさん、ソロルに憧れている風の鉢巻装着です。



帰宅後、スペイン産のワインで乾杯。渡邊さんと速水さん、お2人の並びを見ると、2021年新国立ライモンダ平日真昼の巌流島の決闘を思い出してしまいます笑。
がむしゃらな若さのぶつかり合い、あのときだからこその対決で、敵はサラセンでもアブさんでもなく速水さんと言わんばかりに立ち向かっていました笑。
今回の発表会も、速水さんがいらっしゃる=絶対に負けられない戦いでいらしたのか
テクニック燃ゆる情熱プラス大人なバジルでございました。4日後に巌流島近くを訪れる機会があり、船乗り場前までは行きましたため、再び懐かしさ込み上げた次第です。

2026年8月30日日曜日

バティストーニ! エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス 8月20日(木)




順番前後いたしますが8月20日(木)、世田谷区の昭和女子大学 人見記念講堂にてエスプリ・ドゥ・ラ・ダンスAプログラムを観て参りました。
ジル・イゾアールと教え子達からなる企画で、お世話になっている方の代理鑑賞のため、困ったときのル・パルク以外は
正式公演名称やプログラムも直前まで把握しておりませんでしたが、現在のパリ・オペラ座のベテランから若手まで
間近席で鑑賞する機会は貴重。一部演目選定を考えさせられる部分はあれど堪能いたしました。

オープニングは皆白っぽい衣装を纏って登場し、ピアノの調べにのせて舞うステージ。
ややぼんやりしてパッとしない印象がありましたが、普段私が触れない、パリの先端を行くシックなエスプリ文化であろうと捉えた次第です。
(捉えるしかなかったのだが)

今回の大収穫はブルーエン・バティストーニ。ドリーブ組曲と黒鳥ともに、理知的で上品、スッと語る爪先、
美しい型を重んじた硬質でエレガントな踊りに感激しきりでございました。
ドリーブ組曲は振付者本人と衣装デザイン者によるペアで20年前に観ており、その後何組も観てはいるものの今ひとつパッとせず辛口評価が続いておりましたが
今回は大満足。シルエットの登場からして顔つき、身体のフォルムが奏でる品の良さに、
そして踊り出すと音楽と慈しみ合うようにパを重ねていき、これ見よがしなくても洗練された世界観を描き出していました。ドレープ状のブルーチュチュも優雅でとてもお似合い。

あからさまに悪女っぷりを出さず、クールで近寄り難い、品格あるオディールも空間を大きく且つコントロールを効かせた踊り方で魅せ、
脚もむやみやたらに振り上げず、あくまで優雅さと抑制、規律正しさを重視。
ほんのり香らせるような微笑みにもすっかり落ちた私でございます。全幕主演や、或いはいつかグラン・パ・クラシックも観てみたいダンサーです。
両演目で組んだポール・マルクは何か事情があるのか単に酷暑対策なのかゴルゴ13な短髪に驚かされるも、踊りやサポートは大らかで安定。
黒鳥パドトロワにて若くも奇怪な眼差しや仕草で魅せたソガールのロットバルトも目に残りました。20年前の来日全幕思い出し、カール・パケットが過ぎったのはお許しを。
イネス・マッキントッシュとフランチェスコ・ムーラはジャン・ギョーム・バール振付のベルガマスクにて、淡いブルーを基調とした作風に似つかわしい爽やかさ。
ドンキは結局何版なのか半端な印象でしたが、首筋キスなど粋な要素も自然にこなし、テクニックもまずまず。

期待の勢いある若手として登場のリュシアナ・サジオロ シェール・ワグマンは勢いよりもかなり粗削りな印象受けてしまい、
ワグマンは枠からはみ出すぎた1人暴れん坊将軍なテクニックを繰り出し笑、経験積むうちに徐々にスマートになっていくでしょう。サポートも要精進!
サジオロは怪我しているわけではないならば、パリの炎は最初から16回転しかしないつもりなら別演目の方が望ましかった気もするが、
パリ・オペラ座ダンサーによるパリの炎は初めてかもしれません。いずれにしても、日本の観客ほどガラ王道パドドゥを見慣れた観客はいないでしょうから、
安易に披露せず他の作品の方が、公演名のエスプリに相応しい好印象与えたかと思います。

ドロテ・ジルベールとギョーム・ディオップはランデ・ヴーでは禁断な妖しさを、ル・パルクはお腹一杯な方も多いでしょうが
何度か観ていながらも間近で観るのは初の私は、これがフライングキッスかと案外楽しみ笑、遠心力の音までもが聞こえてきそうなパワーも感じつつ堪能。
それにしても、ジルベールが今年アデュー公演を控えているとは、時の流れは早い。
2006年、私にとって初のパリ・オペラ座鑑賞であったときには既に期待の新鋭と言われていたのですから当然か。

カン・ホヒョンとロレンツオ・レッリはパピヨンのパドドゥにて、ヴァリエーションが多めで時間も長かったものの汗、ホヒョンの軽やか脚捌きは見事。
イゾアール振付のヴィヴァルディ・パ・ド・ドゥはイエローゴールドな衣装は洒落ていたが、振付は可もなく不可もなく。

フィナーレはダイヤモンドより最終場面の曲にて全員登場。そんなわけで、突如舞い込んだ鑑賞でしたがベテランから期待の若手まで
エスプリかどうか疑問な部分は一部あれど一挙に何名ものパリ・オペラ座ダンサーを目にできて珍し新鮮な鑑賞となりました。




入口



チラシより



隣の特設カフェ外観



白鳥黒鳥



カフェ内部



リュミエールブランシェ。



パネルも豊富に。大学にて舞台を学ぶ授業もあるようで面白そうです。