2026年8月10日月曜日

愛と執念の週末 兵庫・秋田バレエルート(兵庫編)貞松・浜田バレエ団『ドラゴンクエスト』 8月1日(土)《兵庫県西宮市》




8月1日(土)、兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールにて貞松・浜田バレエ団『ドラゴンクエスト』を観て参りました。
貞松浜田バレエの鑑賞は2013年に新国立劇場で開催された地域招聘事業公演くるみ割り人形やNHKバレエの饗宴2014以来、スタダンとの共同制作公演では2回。
西宮市での鑑賞は2016年の東條裕子バレエシアター発表会以来10年ぶり。芸文ホールの中ホール開催でした。

この度、昨年上演30周年を迎えたスターダンサーズ・バレエ団のオリジナル人気レパートリーを初めてスタダン以外の団にて上演。
コンテンポラリー作品の何度かの共同制作公演交流を経て実現したと思われます。
そしてプログラムによれば、遡ると鈴木稔さんと貞松正一郎さんは若かりし頃からニューヨークで交流を深めていたとか。
スタダンの公演でドラクエは何度か観ておりますが、嘗てはドラゴンボールとトラゴンクエストが同じ作品と思い込んでいた、
またドラクエに登場する姫はピーチ姫と勘違いしスーパーマリオと混在させていたゲーム音痴な私でも楽しめ、貞松・浜田での初演を心待ちにしておりました。
ドラクエのゲーム発売から今年は40周年の節目でございます。
https://sadamatsu-hamada.fem.jp/dragon_quest/


白の勇者:後藤俊星
黒の勇者:小森慶介
王女:宮本萌
賢者:山本隆之
魔王:法村圭緒
戦士:名村空
武器商人:幸村恢麟
伝説の勇者:水城卓哉





白の勇者の後藤さんはやわやわに弱いヘナチョコからの勇者への変貌を色濃く描写。
1幕前半、王女との並びはほんわかお人好しそうな少年で、酒場でのオロオロ右往左往や戦士から強気で迫られると益々しょんぼり弱気になっていったかと思いきや
剣を抜き取ってポーズを取るときには瞬時にして威風堂々たる姿に変身。
そして黒の勇者との対決時に繰り出すテクニックも素早く、しかし型が乱れず爽快感すら残る立ち回りも見事でした。

黒の勇者の小森さんはこれまで関西や四国での客演は観ておりますが悪役は初見。
インタビュー映像等を目にしても朗らかそうなお人柄が前面に出過ぎていて笑
ビジュアルやポスターが解禁されても当初は悪のイメージを持ちづらく感じておりました。
ところが名物であろう2幕幕開け、暗闇にて手下達を率いながらの黒の大三角形な整列での行進からして
不気味なオーラを大発散。一見小森さんと分からなかったほどでございます。
インタビューでも仰っていたようにギラつきが全身から放っている上に、安定した踊りの中から強靭なパワーの押し出しで、
暗がりの中で黒い衣装であっても同化しないどころか枠からはみ出そうな存在感も好印象。
白の勇者とは実は兄弟であると分かったときの言い表しようがない戸惑いもごく自然且つ上階まで伝わる熱も帯びていて目に残っております。
この役はスタダンにて長らく活躍なさっていた池田武志さんの印象がとにかく強烈でしたが小森さんの造形にも拍手を送りたい思いです。

王女の宮本さんは最初から意思表示はっきり打ち出す表現で魅せ、賢者に対してもそう怯えているようには見えず、両親や白の勇者に対しても快活に接する頼もしい姫君でした。
だからこそ、攫われても待つだけの王女ではなくいかにして危機を脱出するべきか考え、
この作品最大の見せ場の1つであろう白黒勇者の対立にて仲介に入って対話で解決するよう訴えたり、自身を攫った黒の勇者をも守ろうと身体を張る行動に出るのも納得。

作品にびしっと斬り込みを入れる戦士の名村さんは体幹が非常に強く、鞭をブンブン振り回したり回転や跳躍を繰り出してもぶれず。
白の勇者に有無を言わせぬおっかなさといい、元々背が高いだけあって剣士達を待らせての登場も恐ろしや。
もしかしたらゲームがきっかけで初めてバレエをご覧になった観客にとっては最たる興奮であったかもしれぬ ゲームのビジュアルに一番近い役柄であろう
武器商人の幸村さんは、ほんわかした表情と詰め物たっぷり入れたふくよかなお腹からは想像つかぬ機敏さで沸かせ、
酒場にて武器を巡ってのてんやわんやなやり取りもお茶目。そうはいっても白の勇者へ大事な剣を渡すときは
重要局面に相応しい鷹揚とした仕草もあり、壮大な儀式を演出なさっていました。

そしてスペシャルゲスト陣の存在も忘れられず。西宮まで足を運んだ最大のお目当て、
賢者の山本さんは幕開け1人佇んでいらっしゃるお姿からして妖しげで神秘性を帯びた美しさで場を包み、
もうこの時点で上演の成功を確信させるほどの圧巻且つ品位ある存在感で、シェイクスピア演劇の俳優のような重厚感にも感嘆。
役柄上、顔を隠しながら歩く場面もあれど、また白の勇者や王女達との会話の仕草1つにしても
制約を思わせぬ深みある語りかけの連続に舞台の格、ファンタジーな世界観の濃厚さが一気に上がった印象すら持たせました。
それから魔王の法村さんは悪どさだけでないちょっとしたユーモアも効かせた表現も保ちながら黒の勇者と共にし、恐怖感はあっても憎めぬ面白味もあり。
竹中優花さんの聖母はアームスがそれはそれは美しく典雅で、舞台中央に立ち、大らかな音楽と調和しての包み込みは
会場のみならず西宮市全体を白い潤いで満たしてくださったと言っても過言ではない母性溢れる愛情、包容力に心打たれました。
10年ほど前までは関西でのガラにてお姫様や妖精系の役でしばしば拝見しておりましたが、全幕の中での神々しいお姿、拝まずにいられずでした。
水城さんがどっしり構えながら踊りもスパッと自在に繰り出す伝説の勇者も凄味あり。ゴツイ衣装や腕の衣装もしっくり馴染んでいた印象。
王様王妃様には嘗て主役級を務めていらした川村康二さん正木志保さんが配され、全ての役がバランス良く適材適所に配置されていたのも公演全体の成功の起因であったかと思います。

びわ湖の風オーケストラの演奏も耳に幸せに響き、プロローグのあとに少し暗転してからのファンファーレと序曲の演奏は
何度観ても聴いても、ドラクエのゲームをプレイしたことがない私ですら興奮の坩堝。
いよいよ作品名の文字が投映されると客席から割れんばかりの拍手が沸き起こり、来場のきっかけがゲームかバレエかなんて一切関係なし。
白黒の両勇者が跳び交いながらの立ち回り対決映像がまた更に昂ぶりを誘い、会揚の結束が確固たるものとなった瞬間であったでしょう。

一部の酒場の賑わいや天空のコールドはまだ硬めであった感もありましたが、踊り込んでいるスタダンの公演を何度か観ている私の目にはそう映っただけで、
元々モダンな作品にも強い貞松浜田の底力を堪能。モンスター達も動きづらそうな衣装であってもきびきび切れ味抜群に踊り出し、フィナーレにも再び登場して大サービス。
そうでした、戦士に仕える剣士達に佐々木嶺さんがいらして、茶色いふさふさした毛皮な衣装を所々に身につけワイルドに踊っているお姿が所属のバレエ団の代表レパートリーである
懐かしの『バフチサライの泉』タタール人を思い出してしまい、ふと身体を弓なりに反らせた跳び方を観ると
お父様の大当たり役の1つであるヌラリが脳内通過。踊りの質感は遺伝なのでしょう。

精巧なデザインで作られた衣装装置、国や時代は定めずとも中世ヨーロッパの建造物や装束をよく研究してゲームも製作されていたと思われ、
バレエの美術や衣装の細部まで凝った作りも見所であると再確認。
昨年8月末のスタダン上演鑑賞時と同様に、堅固な建築が不気味に聳え立つロンドン塔への昨夏訪問を思わず振り返ってしまいました。

スタダンでの公演と同様にゲームファンの方々も多数来場していて、Tシャツ着用してグッズを身につけていたりと気合いの入り方はバレエファン以上!?
しかし熱心な鑑賞ぶりはバレエファンもゲームファンも境界線なき姿勢でしょう。
長年愛され続ける作品のスタダン以外では初の上演、スタッフ一覧には貞松浜田とスタダン、
関西の舞台設営関係者欄でよく目にする方々のお名前がミックスして掲載されていて喜ばしい限りです。

私の席の近くにいた小さな男の子、恐らくはゲームきかっけで来場した様子でしたがゲームの世界でしか見たことがなかったお馴染みのキャラクター達が
生身の人間として出現しては踊り出す光景を猛集中して鑑賞していて、特に好きな音楽が演奏されたり、
キャラクターが登場すると静かに横の親御さんの顔を見てちょこっと頷いていました。
ゲームキャラのみならず、大人数で一斉に踊り出す光景に驚いたのか天空のコール・ドにも目をパチクリして観続けていたようで、
夏休みの楽しいバレ工鑑賞になったなら大変に幸いでございます。
エンディングの演奏と出演者紹介映像、出演者スタッフロール映像も最後までじっと観ていて、皆と一緒に拍手して終演。
今頃は絵日記に、跳び上がる武器商人の絵を描いているかもしれません。




西宮北口駅。ミルタを脅かす⁈鐘がたくさん。来年1月は新国立劇場バレエ団が芸文にてジゼルを上演します!どうぞご来場ください!



通路を歩いていくと、段々思い出してきました10年前のゴールデンウィーク。阪急電車を望む風景です。しかし午前中で既に蒸し風呂!



大きな階段。しらかわん、初めての西宮です。



芸文名物の薄井憲二さんコレクション バレエ・リュスの展示



ペトルウシュカのハガキ購入。可愛らしいタッチの絵です。来年1月、西宮市での新国ジゼル公演すぐ後に、国際バレエアカデミア公演を東京にて鑑賞予定でおります。



お昼は劇場内のレストランへ。前菜、アーモンドとガーリック効いたガスパッチョが少しスパイス感あるクリーミーな味で好みでした。サラダにはビーツ!フォカッチャも香りよし。



メインはラグートマトパスタ。一見少量ですが、ショートパスタがもっちりしていて、ボリュームしっかりございます。



オプションでデザートブッフェ追加。コーヒーや紅茶のドリンクバーも付いています。綺麗にゴージャスに盛り付けました。
私にしてはなかなかの見栄えです。我が身には似合いませんが笑。



フローズンクレームブリュレ。サクッとひんやりした食感、プーさんの蜂蜜壺な入れ物も可愛らしい。
この頃のタイミングだったか、終演後の夜の移動手段の雲行きが怪しいと連絡が。
天候調査に入る、結果は18:20頃発表予定と。無事当日中に700キロ北上できるだろうか不安がー。


そうは言ってもまずはドラクエ。さあ入場!しらかわん、初のドラクエ。
東京の同居住人が携帯電話含めて全くゲームやらず、しらかわんはゲームの世界は初めて。あのテーマ曲は知っているようです。



パネル、スタダンから出張でしょうか。



映像も、スタダンから出張です。



アンケート、最強キャラクター達!



ホワイエ2階あたりだったか。落ち着いた明るい内装。来年1月は新国ジゼル、ここでワイン⁈特に2日目は、
ドラクエキャラ達も驚くであろう謎めいた魔力凝縮なアルブレヒトが登場するさかい〜。



終演!夜には北上できるのか知らんけど(それも困るが)大阪空港へ移動、モノレール乗車です。西宮北口駅、
乗り換えの蛍池の降車ホームやモノレール乗車ホーム、何処も蒸し風呂!気温37度はあったはず。



大阪伊丹空港到着!一度だけ羽田から大阪まで飛行機で来たことはあったか、搭乗での利用は初。
保安検査通過後も飲食店豊富にあり、しらかわん、5日前の地元の王子様による深海の女王様を思い出してたこ焼きに興味津々。しかも3Dでタコ踊り。



大阪ですからたこ焼きもいただきたいところですが、今回は神戸のお菓子、灘五郷の酒粕ベイクドチーズケーキ。



チーズケーキ拡大!升と金文字がまた美しい。お酒かなり効いています、ベリーも入っています。そして飛行機は飛ぶのか⁈
18:30過ぎ、条件付き運航が決定とお知らせが。到着予定地が視界不良の場合は関西空港に戻る、と。関空ですと⁈



ひとまずは搭乗できそう⁈バスで搭乗口まで移動です。これからもあきたこまち購入継続しますので私を秋田に連れてって〜笑。
こんな題名の映画、あった気がいたします。



人生初のプロペラ機!ラピュタの世界だ!天空の城ラピュタ公開日から40周年前夜祭に相応しい飛行機です。しかもタラップから搭乗!ラピュタとドラクエ、同い年でございます。



しらかわん、パズーやシータの気分なのかワクワクしています。さらば西宮また来年1月、大阪多分11月、また会う日まで!
(そうは言ってもまだこのときは関空戻りの可能性あり、、、)



かなり小さめな機体で飲み物サービス無いと思っていたらありました!そして秋田犬に会いたがっているしらかわん。東北の犬仲間です。
そしてこの時点ではまだ秋田に到着できるか分からず、果たして⁈



飲み物サービス後だったか、パイロットの方の機内アナウンスで秋田空港到着できますとご案内が。良かったー!
勿論安全第一ですから万一の場合は素直に従いますが、大阪と秋田の距離を考えると、無事到着一安心。

帰りは空港利用しないため、できれば空港内散策もしたかったがまずはバス乗り場へ急ぎます。まあ、この時間なら殆どのお店は閉店していたかと思います。



秋田駅方面のバス乗ります。21:00出発に間に合うよう早歩きしたが、羽田や福岡、新千歳と違って次々と違う便が到着するわけではないためか
伊丹からの利用者を待ってから出発するもよう。車内は7名くらい、関空戻りの危機を乗り越えた者同士、妙に打ち解けた和やかな空気流れる中でいよいよ出発です。
翌日は無事に東の貴公子さまの舞台を鑑賞できました。西宮の会場や空港向かう電車にて、気をつけて楽しんできてやーと言葉かけてくださった方、ありがとうございました。
秋田編に続く。

2026年8月7日金曜日

新・深海の女王様!! 新国立劇場バレエ団『人魚姫』 7月24日(金)~27日(月)計5回





7月24日(金)~27日(月)、新国立劇場バレエ団子どものためのバレエ劇場貝川鐵夫さん振付『人魚姫』を計5回観て参りました。
2024年の初演以来1回目の再演で、暑い夏に嬉しい涼しげな深海の場面から始まります。(観た回数のキャストに偏りがございます)
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/littlemermaid/


※上の写真は7/26カーテンコールにて。耳をすませば、なる佇まいをなさる渡邊さんの深海の女王様。この日は記念の日、ご年齢の節目を心よりお祝い申し上げます。
お隣に写る弟君の拓朗さんの目眉がまた良い味を出しています笑。




2026年7月24日(金)13:00 26日(日)13:00 27日(月)13:00
【人魚姫】木村優里
【王子】井澤 駿
【深海の女王】渡邊峻郁

2026年7月25日(土) 13:00
【人魚姫】柴山紗帆
【王子】李明賢
【深海の女王】仲村 啓

2026年7月27日(月) 16:30
【人魚姫】米沢唯
【王子】速水渉悟
【深海の女王】奥村康祐



米沢さんは前回初演時は体調不良のため降板され、今回はようやくの初役です。
オレンジとレモン両手に軽快に舞う場を始め踊りの精度の高さは言わずもがな、最後の苦しみを吐き出す哀れさが深い悲しみの底へと先導。
胸が締め付けられる幕切れを演出し、最も悲劇性を残す人魚姫であった印象です。

柴山さんは健気で愛らしい姫で、海水と戯れるようにしっとりと四肢を差し出して踊る姿がひときわ美しく、
王子との出会いは可愛く恋する少女にすぐさま変身。そしてどんな人であろうかと探るように見つめる不思議な眼差しも目に残っております。

木村さんは積極的に地上への憧れを全身と表情を豊かに表して描き出し、人間の王子に恋に落ちた、だから脚が欲しいと求める様子もくっきり。
声にならぬ語りかけを胸を押さえながら懸命に放っては王子の優しさに満たされていく描写も滑らかナチュラル。
女王様を全く怖がらず寧ろお母さんのように慕っているのも愛嬌があり、やり取りがいたく朗らかに映りました。

速水さんの王子は結婚式も苦しい胸の内がよく表れて婚約者と別次元にいる状況を前回より遥かに丁寧に描写。
最後、人魚姫の幻想の中のパ・ド・ドゥも、苦しみに押し潰されそうな人魚姫を優しく受け止め、静かであってもダイナミックなテクニックの対話も見応えあり。

李さんは柑橘シャーベットな爽やかフレッシュ連発で、すぐさま夏の扉を開けてくださる王子。スッと伸びる手脚にやや長めのバランスを取りつつも
身体のうねりにはコントロールが効いていて、人魚姫への一目惚れもわかりやすい。
井澤さんは王子にしては貫禄風格がどっしりと備わっていて、結婚式が即位式に近かった気もするが笑
人魚姫からの声なき恋の問いかけにそれはそれはおおらかに接して包み込んでいた印象。
結婚式で人魚姫と離れ離れになる辛さは自業自得とはいえ、短時間の中であっても後ろを振り向きながらの去り際をはじめ、後悔の念がぐっと醸されていました。

男性がタコのドレスな格好してポワント履いて踊る深海の女王は、奥村さんはラスボス感すらあるはっちゃけとママっぷりが楽しい女王。
終始豪快な演出で、深海の中も明るそうに照らすオーラも魅力でしょう。
仲村さんはラブリーなゴージャス感アップ、考えごとするときも可愛らしい表情が消えず、3キャストの最たる高い身長ながら町の人々に追いかけられるときは
黄色い声を発するように逃げ惑う姿もキュートに見えました。身体が非常に柔らかく、クニャッと強靭な脚を高々と上げる線はタコそのもの。
カーテンコールのグラン・パ・クラシック女性ヴァリエーション彷彿なパッセもお手のものでした。


※以外、長くなります。暑苦しさに備えて水分塩分補給をどうぞ。

この度は何と言っても、前回王子だった渡邊さんが深海の女王に初挑戦。初演時に作品を鑑賞して、正直王子より観てみたい役でしたから少数派でしょうが歓喜いたしました。
イソギンチャクな美術に囲まれてのオデットポーズのシルエット登場からして海を大支配。
物語大転換場面を示唆し、爪先から奏でるグリンカのワルツの妖しさよ。
結果、美しさと麗しさと、針を優しく刺すような爪先の運び方を始め職人な技術と品、
お節介な心配性など様々な要素がミルフィーユのように何層にも折り重なった、何とも魅惑的な女王様が現れました。
人魚姫に歩行訓練教官も務めるほど歩き方が綺麗に出来上がっていないとならぬ設定も難なくクリア!
脚が初めて生えた劇中の人魚姫状態になってもおかしくないでしょうに。アラベスクやパンシェもお手のものでした。
音楽と溶け合い、ふわっと後方へ行くときのアラベスクは背中の反り方や脚の伸び方、残像含めてフォルムが余りに綺麗で
マクミラン版ロミジュリバルコニーパドドゥの一節を思い出したほど。
ポワントワークも繊細エレガントで爪先と脚が蛸脚と同化してしなって伸びる形にも驚嘆。一方で性格は熱く口煩いお節介お母さん風笑。しかし顔は美女!
美声が欲しいと求める首を摩る仕草や脚の管理の動き、そしてマイムからは会話が明朝体で文字化されて伝わり、大きくも大味には一切ならずに細分化されて艶めかしや。
立ち位置に付くまでの過程や後ろ向きになったときも気を抜かず徹底して脚先指先の細部まで優雅さを染み渡らせていらっしゃるからこそ
表現もテクニックも華麗なるエレガンスの極み、摩訶不思議で美しい、と唸らす海の世界が初台に現れたのでしょう。

女性役であってもやり過ぎずあくまで品よく優雅さを、コメディタッチな部分も単にお笑いに走らず、あくまで品ある美しさを追求していらっしゃる姿勢を貫いていらした印象で
むむ?!山本隆之さんと同系統か。(関西の監督やスタッフの方々も仰います、悪人や喜劇な役柄もホンマに品と色気を大事に務めていらっしゃると)
タコ脚は上から下へ撫で撫でしてとても大事そうにされて、どさくさ紛れに脚を入手した柑橘隊員男性の込み上げる喜びも確認済みです。
タコ脚がはみ出ないよう、羽織ったストールで隠す仕草の恥じらいはなんだかいじらしい。全身タイツな手下達もストール羽織っているため、水泳授業の休憩中に見えなくもないのだが笑。
人魚姫にはいよいよ母親気質が充満して、王子を刺せば助かると何度もマイムも交えて叫ぶように伝えるも聞き入れない人魚姫とのすれ違い混乱も、整理整頓して表現なさっていました。

カーテンコールでは日によっては新聞記者達も巻き込みシンデレラ舞踏会登場なる繊細なポワント歩きで魅了。
サポートする側のみならずサポートされる側もお得意なのか、オクトパス・アダージョも切望いたします笑。
4人の男性貴族或いは新聞記者トリオが結束して仕えてくれることでしょう。
登場での深海魚達との真剣なやり取りを見る限り、定期面談も行う良い上司とも想像笑。面談記録もきちんとファイリングして保管しているに違いありません。
実は王子よりも観たかった役、3回も拝見でき、幸運な真夏の海の夢2026でございました。

ところで女王様の行動でいくつか疑問浮上。女王様と手下達、地上に来て、燦々と太陽照りつける場所に滞在していて干物にならぬか心配でございます。
女王様、そういえば2幕は街中で手下達に1人で遅れて登場なさる箇所があり、何をなさっていたのでしょう?
街中建築探訪!?人魚姫に負けじと案外好奇心旺盛なのかもしれません笑。
今は水中カメラも発達しているため、海に戻ったらカメラに収めた写真を印刷して地上の街写真集を編集なさるお姿も目に浮かびます。
或いは魚屋さん巡り?!私のそばからいなくなった仲間たちはこういう運命が待ち受けているのね、としんみりしていらっしゃるか。
それからあの外出用ストールは女王様、どうやって作ったのでしょう。ご自分のお手製か、見た目からすると漁師網にも見えるが。調達方法気になります。

2幕は幕開けからオレンジ派閥とレモン派閥の対決が踊りで繰り広げられ、愛媛対広島・瀬戸内海の決戦にも見て取れる構図に再演時もやや首を傾げるも笑、
(両県に別々に足を運んだこともあれば、自転車と船でしまなみ海道渡って愛媛から広島入りした経験がある者からすると
オレンジとレモンと聞くとどうしても瀬戸内海の地図が浮かぶのです)
踊りは盛りだくさんで町の人々の群舞は見応えあり。更には王子婚約の号外を配る3人の新聞記者達が現れると、 記者達の踊りはハイテンポである上に前後左右に移動もふんだんにあり、高度なテクニックと身体のコントロール力も要求される場面。
そこへ、号外を持った町の人々も加わって一斉に賑やかに踊り出す流れは大変なエネルギー沸き立つ展開です。
新聞記者はダブルキャストでしたが、Aキャスト東さん飯野さん五月女さんは可愛く優等生な雰囲気、
Bキャスト直塚さん赤井さん堀之内さんはとんでもスクープを取ってきそうなはっちゃけ軍団。
中でもこれまで小柄系ダンサーが務めてきた役を長身な堀之内さんが初挑戦でいきなり記者クラブ長な位置であろうセンターを務められ、
全身をたっぷり動かしながらスピーディーに駆け抜ける振付を高身長ながら身体の制御力が抜群で、一切落ちぬスタミナといい化け物かと驚かされるレベルに天晴れでした。

使用曲は名曲アルバムな構成で、時代も作曲家も様々。一部繋ぎ目にバラツキな印象はあれど曲それぞれは場面にピタリと嵌まっていたと捉えております。
冒頭における、ドビュッシーの神聖な舞曲世俗的な舞曲にのせた深海から始まる展開、音楽を聴くとナチョ・ドゥアト振付のドゥエンデ思い出さずにいられず。
篠原聖一さんによる、オスカー・ワイルド原作漁夫とその魂を題材にした人魚と漁師のバレエの始まりもこの曲で、
陸海問わず自然の謎深き神秘性を彷彿させ、使用したくなるのは共通なのかもしれません。
それから深海の女王の登場の妖しい艶やかな見せ場と、怯える深海魚達が無機質に後方で女王様と同じ動きを後方でシャキシャキ繰り返すおかしみ、
後半には美声と引き換えに脚を送られて歩行訓練を行いやがては地上へと旅立つ人魚姫の希望に満ちた感情と、
人魚姫が心配でならずあれこれ口を酸っぱくして忠告し遂には女王も手下連れて地上へと追いかけていくやり取りが披露される場面にて流れるグリンカの幻想的ワルツは
1曲の中でキャラクター達のテンポ良い会話の移り変わりを事細かに豊かに描画していて、歯切れ良くも何処か哀愁ある旋律が、幸せな結末を遠ざける予兆にも思えた次第です。
この曲は今年3月にスターダンサーズバレエ団が団としては初演を遂げたバランシン振付作品にて丸々使用され、
人魚姫のタコクイーンが思い浮かんでしまった旨を幕間に新国常連客の方々に申し上げ、帰りは池袋駅東口のタコのマークのバルに向かったわけですが
約20日後の人魚姫配役発表にてまさか渡邊さんが選ばれるとは、今思えば予言でもあったのか、不思議な出来事でございました。
人魚姫が王子に愛を打ち明けるソロはメンデルスゾーンの春の歌。溢れて零れ落ちる恋心とまだ前に出ずにいる恥ずかしさがうららかに伝い、甘酸っぱさが香り立つ曲です。

王子に婚約者がいると知り結婚式の横で葛藤、絶望する人魚姫と、人魚姫に未練ある王子の慌てぶり、王子を刺せばあなたは助かると人魚姫に訴える女王の願いが交差し
一方で何も知らずにお祝い真っ只中な婚約者や町の人々の喜びが同時進行に高まっていく場の曲は、
曲の中の僅かな変化がそのまま会話になっていて、描写によく合っている印象を今回も持ちました。

そしてもしかしたら、深海の女王登場のワルツと同じくらいに耳に目に残るのが1幕終盤、貴族達そして人魚姫と王子も舞う星空の舞踏会。
洒落たパワー行き交い、サティのジュ・トゥ・ヴのアレンジにも毎回聴き惚れ、星々がきらきらと優しく見守りつつ途中からは星も舞踏会に参加し始めて、
そんな想像が巡る場面。貴族ペア達もお洒落でチャーミングな表現も素敵。更にはかなりの運動量で、女性達のしっかりした素材のロングドレスが度々舞い上がるほど。
ドレスの翻り光景も計算された振付なのか、音楽とよく合っていて、全体がきらりとした躍動感に満ちていた印象です。
不穏な曲調に変わると、王子を探しに来た婚約者の心配そうな姿がまた切ない。まさか人魚姫と踊っているなんて知る由もないわけです。
最後は星屑が舞い降り、全員で両手を広げながら受け止めるように力強く踊る光景の高揚感は何度観ても幸福に溢れます。

子どもバレエにしては暗やみから始まり、そのあともジムノペディにのせて王子様が沈んできたりと美しい始まりとはいえややアダルトな冒頭で、
楽しいショーのような企画を想定されていたお子様達には衝撃もあったかもしれません。
実際客電が落ちた途端、暗転続きにびっくりして大泣きしてしまったお子様もいて、無理もないでしょう。
こういう作品こそエデュケーショナル式で、最初の5分だけでも良いので暗転する旨の告知など幕前での案内や紹介の追加が望まれるかと思います。

そうでした、選曲が某書店チェーンで流れる曲と似ていて、ジムノペディの他、タイスの瞑想曲とジュ・トゥ・ヴは大概はセットで流れており
私はまだまだ人魚姫な曲の中を泳ぐ日常が続きます笑。しかし人魚姫や王子ではなく、貴族でもなく、目に浮かぶのは初役の深海の女王様2026のお姿でございます。
次の再演あるならば、渡邊さんには再度女王様としてのご出現をお待ち申し上げます笑。



※カーテンコールは撮影可能でしたが渡邊さん深海の女王様関連ばかりで、綺麗に撮れた他の写真は各自お探しください笑。渡邊クイーン、カーテンコール3回全て違う振付でお披露目でした!



蛸体アスタリスク女王様!!



佇む女王様7/24



7/24バーイと弾ける女王様



堀之内記者に満面の笑みで迎えられる後ろ姿女王様7/24



離れた場所ながら直塚記者の頭を撫でる構図になった、6月に共演した白鳥の湖労っているような女王様。7/24



今回もパンナコッタ、再登場。ひんやりトロッと。夏にぴったり。



柴山さん李さん



仲村さん。グラン・パ・オクトパスよりヴァリエーション⁈



夏の日差しを浴びる初台ワゴン、出店。



私も深海へ。



海色で奏でる深海ゼリー、涼やか!女王様のおやつ思わす幻想的なゼリーを味わいました。銭湯に併設喫茶店です。
女王様、海の政治も肩凝るお役目でしょうから銭湯も楽しまれたいでしょうが、茹蛸になっちゃうか笑!



7/26キャスト。しらかわん、地元の王子様のお祝いとタコ姿を楽しみに参りました!



スパークリング、人魚姫ですから泡で乾杯。



大木さん拓朗さん、スラリと見栄えするお2人です。ホフマン物語では魔窟にて妖しいペアを 、
福田圭吾さん振付The Theory of Realityでは共に主演され宇宙な空間にてミステリアスな関係を構築なさっていましたが今回は気品、品格ある貴族!



手招きする女王様。



シンデレラの舞踏会登場を意識か⁈記者達に支えられて立つ女王様。



記者達に支えられて歩み出す女王様7/26



赤井記者を驚かせてばかりの女王様7/26



マノン2幕ソロのポーズを彷彿の女王様。7/26



堀之内記者に蛸脚激突、仰け反らせた女王様7/26。



エレガントに見守る女王様7/26



娘同然な人魚姫を気にかける女王様。



タコパッチョ。女王様、いただきます。



爪先を差し出しながら金平糖ヴァリエーション踊れそうなほど繊細なポワントワークをご披露の女王様。7/27昼



かめはめ波で人魚姫と王子を熱く出迎える女王様7/27。



町の人々7/27夜



米沢さん速水さん。



奥村さん、シンデレラ道化思わす蛸ジャンプ!7/27夜



蛸の舟盛、吸盤くっきり!女王様、いただきます!8月第一土曜日にはタコの名産地近郊に行くが、もはや安易には味わってはならないと思えてきました。



深海の余韻に更に浸る今宵です。海底への光の当たり方、似ています。収録されている『名もなき詩』が主題歌になっていたドラマ、地元で撮影されていて興奮した記憶。



先月福岡のスーパープレミアムバレエガラ鑑賞翌日に訪れた糸島の海辺写真、斜めにすると人魚姫の舞台美術に色彩がそっくり。人魚姫と竜宮双方が浮かんだ場所でした。



7/26は私の新国初体験日。今年ちょうど四半世紀を迎えました。2001年に牧阿佐美バレヱ公演デューク・エリントン・バレエにて初めて新国の敷居を跨ぎました。
まさかのちに、15年半後に、我が新国初体験日がお誕生日であるしかも新国を本拠地として活躍なさる舞踊家の虜になるなんて、誰が想像したことでしょう。
世間は土用の丑の日の話題真っ盛りな中、鰻苦手な私にときめきで覆い被せるほどに幸せな2026.7/26となりました。



渡邊タコクイーン最終日7/27のちょうど1年前。2025年はこの日のために生きてきた、新国ジゼルロンドン公演千秋楽でした。
新国ワシントンD.C.公演・モスクワ公演とはまた違った思い入れある生涯忘れられぬ宝物な1日となりましたが
まさか1年後はタコクイーンとして初台の海を支配者になられるとは、役柄の幅がまことに広うございます。