2021年1月31日日曜日

バレエカレッジ講座 マエストロ・井田勝大氏「バレエ音楽の魅力と秘密」『眠れる森の美女』前編

1月30日(土)、バレエカレッジの講座 マエストロ・井田勝大氏「バレエ音楽の魅力と秘密」『眠れる森の美女』前編をオンライン受講いたしました。
https://balletcollage-maestro14.peatix.com/
https://balletchannel.jp/event/13404

1890年に初演を迎え、昨年がちょうど130年の節目。状況の事情で誰もやっていないか陰では行っていたか分かりかねますが、
130年を意識していたためか昨年は生でもオンラインでも眠りを観る機会が多かったと記憶。
生では東京シティ・バレエ団、東京バレエ団(子ども版)、牧阿佐美バレエ団、新国立劇場バレエ団(札幌公演)、
配信ではボリショイ、シュツットガルト、英国ロイヤル、他にもその昔にレーザーディスクで観ていた映像がなぜだか動画サイトにまるごと載っており
公演中止が相次いだ昨年ばかりは時代の電子技術進化に甘え、キーロフのイリーナ・コルパコワ主演やボリショイのニーナ・セミゾロワ主演も鑑賞。
1人ひっそり、でもないが眠り130周年ツアーを行っておりました。スミルノワとチュージン主演のボリショイシネマが
丸々載っている経緯は謎でございます。(観たが鑑賞に正式カウントして良いものか笑)
今年は2月に新国立劇場バレエ団が、3月には日本バレエ協会にてコンテンポラリーと古典の眠り2本立て公演を控えていて、タイムリーな嬉しい講座開催です。

実のところ、延々長々と絢爛豪華な流れが続いてそこまで好きではない作品ながら、プロローグの妖精パ・ド・シスの音楽、
中でも妖精達が登場するワルツの繊細さがじわりと重なり合いながら展開する曲調は妙に愛おしく感じており
今回はプロローグと1幕中心との告知に胸を躍らせて受講。井田さんは序曲から楽譜を用いてそれはそれは事細かに分析解剖してくださいました。
パ・ド・シス部分にも詳しく触れてくださり、パン屑やリラの花などロシアの風習にちなんだものを取り入れていることを知り、興味が尽きぬお話満載です。
妖精達の呼び名は優しさ、元気、と一言で簡潔な版もあれば、結構長い(版によるが、黄金のつる草の精を始め英国系長いか)ものもあり。
パン屑の謎が解けて金田一少年並みに気分もすっきりいたしました。
激しさ、勇敢などの名で呼ばれている5人目の妖精の振付も好きで潔い曲調を聴くたび背筋が伸びる思いがいたし
この踊りで今も印象に残っているのはキエフバレエの監督に就任したエレーナ・フィリピエワ。
『シンデレラ』での愛くるしさからは想像つかぬ、濃い橙色の衣装が似合い、強い脚力から繰り出される火花を散らすような踊りに驚倒した覚えがございます。
30年以上前の映像で、オーロラ姫は誠に優美なアンナ・クシネリョーワでございました。

一応全2回の前編後編構成の予定でしたが井田さんが話し足りなさそうで 笑、3回になる予報もチラリ。
もっと聴きたい気持ち満々でおりますので3回でも4回でも大歓迎です。
そういえば、1点だけ疑問。妖精達の登場ワルツで一呼吸置いて曲調が変わり、一気に壮大となる通常リラの精の登場場面。
井田さんも楽譜を差しながらリラの精が登場する、と説明なさっていて確かに大概どの版においてもリラが堂々と登場なる場面です。
しかしセルゲイエフ版では呑気の精だったか、リラの子分が駆けて出てくる音楽に当てられ、リラは序盤のゆったりした調べに
コール・ドと紛れて何時の間にか登場して既に中央に。セルゲイエフ版で唯一どうも納得が行かず長年生きてきております。
世界初演をしたバレエ団の長きに渡る上演版ですから何か意図はあるのでしょうが、福田一雄さんの『ライモンダ』講座によれば
セルゲイエフはグラズノフが他の作品用に書いた曲をライモンダ夢の場ヴァリエーションとして取り入れ定着させてしまった身勝手な人物だそうですから
(公演で発表会でコンクールで、ライモンダよりヴァリエーションとの明記や認識にグラズノフは心境複雑であろう)
眠りの振付も標準版として上手いこと定着させてはいるが『ライモンダ』と同様に不思議なこだわり点を入れて推し進めてしまったのだろうかと妄想。
2000年のキーロフ来日公演での復刻版眠りを見逃してしまったため、初演時の振付が今になって知りたいと関心を寄せずにいられません。


話が二転三転いたしましたがバレエカレッジさんの講座のオンライン受講は初。例えば楽譜を用いての説明の際には楽譜を大きく、
そして斜め上には井田さんのお顔も映し出され、オンライン受講者にも行き届いた講座であったと見受けました。
休憩に入るときには受講者と談笑なさる光景が一瞬映され、きっと眠り音楽談義で盛り上がっていたことと想像。
次回以降再び現地受講できる日を心待ちにしたいと思っております。




昭和に出版された、我が眠り手引き書。求婚者たちにリフトされているのはコルパコワさん。
順を追っての音楽解説も詳しく、何度も読み返しております。

2021年1月26日火曜日

日独交流160周年記念 何度でも観たいシティのショルツ作品 東京シティ・バレエ団 ウヴェ・ショルツ・セレクションⅡ 1月23日(土)





1月23日(土)、東京シティ・バレエ団 ウヴェ・ショルツ・セレクションⅡを観て参りました。
https://tokyocityballet.com/uwescholz2/

カンフェティに、安達悦子芸術監督、佐合萌香さん、中森理恵さん、清水愛恵さんへのインタビューが掲載されています。
安達監督がショルツ作品をレパートリー入りさせた経緯や音楽との向き合い方の変化など、興味をそそられる内容です。
ダンスマガジン1996年12月号に掲載された安達監督のカラー記事にて、優れた音楽性について賛辞の評が綴られ、ピンク色の目が覚めるような衣装は恐らくスワニルダかと思いますが
現役時代のご様子からもシティを音楽的なバレエ団にしようと率いていらっしゃることに納得。
ウラジーミル・デレビヤンコ、一時期はしばしば来日してノエラ・ポントワやエリック・ヴ=ヴァン達とのガラも日本で開催された記憶があるが、
チューリッヒにも在籍し活躍していたとは今更ながら初耳です。
https://s.confetti-web.com/sp/feature/article.php?aid=820&


『Air! 』エアー!
音楽:J.S.バッハ「管弦楽組曲第3番」ニ長調 bwv1068
初演:シュツットガルト・バレエ団(1982年)

<第1楽章>
松本佳織 馬場彩 新里茉利絵 石井日奈子 三好梨生 西尾美紅
玉浦誠 濱本泰然 土橋冬夢 杉浦恭太 渡部一人 西澤一透

<第2楽章>
佐合萌香 土橋冬夢
中森理恵 濱本泰然

<第3楽章>
松本佳織 石井日奈子 三好梨生 西尾美紅
玉浦誠 杉浦恭太 渡部一人 西澤一透

<第4楽章>
土橋冬夢
松本佳織 馬場彩 石井日奈子

<第5楽章>
松本佳織 馬場彩 新里茉利絵 石井日奈子 三好梨生 西尾美紅
玉浦誠 濱本泰然 土橋冬夢 杉浦恭太 渡部一人 西澤一透

バッハの品位と重厚さのある曲調を立体的に浮かび上がらせるように序盤からダンサー達が快活に躍動。手先脚先からも瑞々しさを放ち
フォーメーションの変動が多いにも拘らず忙しさを感じさせないのは 風変わりなポーズからの移り変わりも機敏にこなせるほどの
卓越した技術集団であるからこそでしょう。 途中G線上のアリアの呼び名で知られる楽章に入ると、身体が描くラインはくっきりと保ちつつも
途端に柔らかくそよぐ風のような靡きを全身から表し、浄化された気分。
衣装は全員レオタードで体型を誤魔化せぬ手強いデザインですが、シュッと締まった体型のダンサー揃いであることや、
茶色や白っぽい一見地味な色合いで整えていながら不足感皆無であるのは
踊りこなす技術は勿論のこと、振付と音楽がしっかりと落とし込まれた身体から終始鮮烈さと歓喜が繰り出されている証です。
地味どころか全ダンサーの身体から音楽と共鳴して祝砲を放っているかのようで、加えてショルツ23歳のときの振付デビュー作品と知って
更に驚くばかり。脳内構造を覗いてみたいと思わずにはいられません。


『天地創造』よりパ・ド・ドゥ
音楽:J.ハイドン オラトリオ「天地創造」Hob.XXI-2
初演:チューリッヒ・バレエ団(1985年)

佐合萌香 キム・セジョン

一昨年新国立劇場で開催されたバレエ・アステラスにてハンガリー国立バレエの石崎双葉さんペアが披露されたものと同じかと記憶。
再度鑑賞したいと願っていたため大変嬉しい上演です。
歌声と溶け合う荘厳な包み込みに癒され、佐合さんとキムさんが舞台全体を使ってダイナミックに、
ときに絡みながらしっとりと織り成す体温を感じる穏やかな触れ合いが優しく映りました。


『Octet』オクテット
音楽:F.メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲」変ホ長調 Op.20
初演:チューリッヒ・バレエ団(1987年)
日本初演:東京シティ・バレエ団(2017年)


<第1楽章> 中森理恵 キム・セジョン
平田沙織 飯塚絵莉 渡邉優 植田穂乃香 斎藤ジュン
内村和真 土橋冬夢 吉野壱郎 吉岡真輝人
福田建太

<第2楽章>
清水愛恵 濱本泰然

<第3楽章>
吉留諒
岡田晃明 渡部一人 栄木耀瑠

<第4楽章> 中森理恵 キム・セジョン
吉留諒
平田沙織 飯塚絵莉 渡邉優 植田穂乃香 斎藤ジュン 山本彩未
内村和真 土橋冬夢 吉野壱郎 吉岡真輝人 杉浦恭太
福田建太

締めはシティお得意作品。2017年の初演は見逃してしまいましたが、2018年の『ベートーヴェン交響曲第7番』とのダブル・ビル
2019年のNHKバレエの饗宴にて鑑賞し、長身ダンサー達が次々と晴れやかに繰り出すポーズの美しさに最初の3分で虜となりました。
今回は饗宴時より格段にパワーも盤石さも上回り、一音一音を幸福感一杯に身体で彩っていた印象です。
高音から更に高らかな音色を響かせる箇所もふんだんにあり、女性ダンサー達による、両腕を天へ掲げる作品象徴なるポーズを
更に上へ上へと引き上げて一斉に最高潮へと導く身体能力にも天晴れです。
高身長且つ身体がきびきびと動くダンサーばかりを揃えた精鋭集団で、特に平田さんの長い手脚を持て余さず巧みに制御しながらの踊りは眼福でした。

第2楽章は以前は岡博美さんと石黒善大さんペアで鑑賞しておりますが今回は清水さんと濱本さん。
侘しさを妖しくも細やかに紡いでいた岡さん石黒さんに対し、清水さん濱本さんはより大胆でゴージャスで、
清水さんの四肢から昂ぶる感情が露となって受け止める濱本さんとの呼応もドラマティックに感じさせる場面でした。

音楽の視覚化と聞いて思い浮かべる振付家にバランシンも挙げられるかと思いますが、
ショルツの振付はバランシンとはまた大きな異なる特徴を備えていると捉えており時々不可思議なポーズからの駆け出しも度々あり。
男性が屈指運動のような状態が続いたところへ女性を迎え入れてサポート再開といった振付も用意され
下手にやれば怪しいラジオ体操と化すわけですが、相当な訓練が積まれているのでしょう。
クラシックを少し捻ったユーモアに富んだ振付と見て取れます。
そして男性のみの見せ場も入れ替わり立ち替わり披露され、一気に横移動したかと思えば捻りあげるような回転をしたのちすぐさま静止に至るなど
めまぐるしい展開満載。男性ダンサーの技術の高さ層の厚さが伝わり、中でも第3楽章の真ん中を務めた吉留さんの軸の強さに驚きを覚えました。

急速転換能力不可欠なサポートもたっぷりあり、女性を斜めに傾けた奇形リフトをし、下ろしてから走って袖へ向かうのではなく
持ち上げたまま捌ける振付には思わず驚嘆。しかも2組ずつ足並みを揃えながら捌ける必要も生じたりと危険度難度高し。
しかしいとも簡単そうに、音楽と戯れながら明朗にこなしていく光景の広がりに目を丸くするしかありません。
出演者全員の身体の隅々にまで染み渡った振付語彙を自在に操る切れ味やコントロール力に見入り、シティの看板演目と唸らせる舞台でした。
女性の黄色いドレス形衣装やオレンジ色の背景幕も眩しく、翌日の積雪予報を控えた極寒な夜ながら、
サーモグラフィに引っ掛からない程度に急上昇した体感温度で帰途についた次第です。

バレエ団の発信によれば、今回の公演はドイツ大使館後援のもと開催し公演2日目のちょうど160年前にあたる1861年1月24日こそが日普修好通商条約が締結し、
日本とドイツの交流が始まった日であったとのこと。締結実現に奔走した当時のプロイセン外交官オイレンブルク伯爵も
記念交流事業にさぞ喜んでいるに違いありません。ドイツが生んだ偉大な振付家ショルツの作品で構成し、上演作品の使用曲もドイツ色濃厚。
シティでのショルツ作品初演時からの指導者でいらっしゃる、ショルツが監督を務めたライプツィヒ・バレエ団にて活躍なさっていた木村規予香さん、
今回は待機期間でのリモートも合わせての指導にあたったジョバンニ・ディ・パルマさんお2人の熱意と
応えようとするダンサーの気概も伝わり、日独交流160周年記念に相応しい公演でした。




レモネードカクテルの色合いがオクテットの衣装と似ている気がした当日の昼下がり。



2021年1月22日金曜日

全員でめでたし大団円 谷桃子バレエ団『海賊』1月16日(土)




1月16日(土)、谷桃子バレエ団『海賊』を観て参りました。エルダー・アリエフ版は初鑑賞です。
https://www.tanimomoko-ballet.or.jp/img/ticket/kaizoku.pdf?v=201120

脚本・演出・振付:エルダー・アリエフ
メドーラ:佐藤麻利香
コンラッド:福岡雄大(新国立劇場バレエ団)
ギュリナーラ:齊藤耀
ランケデム:牧村直紀
パシャ:齊藤拓
オダリスク:山口緋奈子 山田沙織 永井裕美




紹介動画



新国立からのゲスト福岡さんのコンラッドは登場するやいなやリーダー格をこれでもかと見せ、鋭い超絶技巧の繰り出しが圧巻。
頑張って見せています感はなく、切れ味たっぷりな上にあくまで劇中の、仲間たちに慕われ迎え入れられる場面にすっと溶け込んでいた点も好印象。
加えてこの状況下の不吉成分もぶっ飛ばす勢いも好ましく(これ大事)
序盤から物語をぐいっと引っ張って観客を引き込んでいく見事なリーダーでした。
ゲストらしい格を持ちつつも谷バレエによく馴染み、仲間たちと変装してメドーラ達を眺める様子は向かうところ敵無しな荒くれ海賊の風味は消えて
女子校の文化祭に来た男子生徒のような落ち着かぬ興奮ぶりが微笑ましく映り、アリ不在の設定であっても違和感ない展開に思えたのは
福岡さんによるコンラッドの多面性造形によるところが大きいと捉えております。
ご出身スタジオや客演先の発表会でグラン・パ・ド・ドゥは度々鑑賞しておりますが、所謂全幕公演『海賊』では初鑑賞です。
(2010年に愛媛県で上演された全幕とほぼ変わりない篠原聖一さん版1幕仕立てハイライト海賊では佐々木大さんコンラッドに従順なアリを好演
日本における海賊こと村上水軍ゆかりの地に近い瀬戸内海まで近距離地域でした)

佐藤さんを主要な役で鑑賞するのは初かもしれませんが、想像以上に安定した技術と高い表現力の持ち主であると分かり驚嘆。
メドーラ登場のソロでの全身から迸る嘆きは強くしなやかで胸に訴えかけ、コンラッドとの出会いでの一変する見つめ合いは
立ち尽くしている状態であっても恋に落ちた様子が明らかな動揺を醸し、眺めているだけでも心臓が高鳴る出会いでした。
花園での盤石でくっきりとした踊りも観ていて爽快で、コンラッドを導く大らかで優美な雰囲気も二重丸。
更に驚かされたのは佐藤さんと福岡さんの相性の良さで、パとパの繋ぎ過程や表情も含めて、全てにおいてぴたりと噛み合い、
パッションを出す佐藤さんに対する福岡さんの受け止め反応も熱く、鮮烈なパ・ド・ドゥと化していた印象です。

一見おっとりしていながらテクニック達者でそのギャップに蕩けかけたのは齊藤さんのギュリナーラ。
悲嘆に暮れる陰鬱さはなく、むしろにこやかに踊っていた点も健気な性格が伝わり良い方向へ動いたのか、牧村さんランゲデムがギラギラ嬉々としていたのも納得です。
衣装が古き良きキーロフ踏襲デザインのようで、クリーム色のチュチュに赤と濃いめのターコイズブルーや渋めの金模様を組み合わせた色合いが
アスイルムラートワやメゼンツェワ時代のキーロフ好きの心を擽らずにいられず。

上演時間は休憩含め全2幕で約2時間15分。仮に休憩が短ければ2時間以内で終演する誠にスピーディーな展開です。
まず最大の特徴は先述の通りアリが不在である点。仲間率いての冒険な譚海賊にて非常に物寂しい舞台になるかと予想いたしました的中せず
コンラッドに焦点が当てられた分すっきり明解な話となり、むしろこれはこれでいたく面白い人物描写へと繋がっていたと受け止めました。
メドーラとコンラッドの出会いは2人だけに光が当たり、時間が止まったような光景を生み出しまるでロミオとジュリエットと同じ演出にも見て取れたものの
恋に落ちた様子がはっきりと伝わりますからその後において感情移入しやすい筋運びとなっています。
ただ主要人物が減った分コンラッド役のダンサーや彼に絡むキャラクター達もしっかりとした表現者でないと大コケする事態に至るでしょうが
そこは心配皆無で、福岡さんの造形力及び谷のダンサー達の弾けるパワーによって良い方向へと作用していたのは確かです。

そして見せ場を省略せずとも従来の版とは異なる箇所に取り入れ、花園は前半に持ってきてしかもコンラッドの夢の中として設定。
出会って間もないメドーラに対して一段と恋い焦がれる展開としては説得力がありました。
但し、失礼ながら笑ってしまったのはメドーラが登場するまで大人数の花々達が優雅に舞っていても
コンラッドは下手側前方にてうつ伏せで倒れ込んだままで、両手両脚も無造作に置いた形。
つまりは2時間サスペンスドラマにおける開始5分後頃の場面にて倒れ人を白い線で囲み、警察達がシャッター音を響かせながら現場撮影に勤しむ風景を彷彿させ
20分後には警察署内にて写真付き人物相関図の説明場面が入るのはお決まりの展開ですがそれはさておき、突っ込み度上昇場面でもありました。

後半に入ったオダリスクは館を麗しさで満たし、美女に囲まれて寛ぐご満悦なパシャの心も分からんでもないかと辻褄は問題無し。
中でも山口さんの華やぐオーラが目を惹きました。衣装がまたギュリナーラに似たピンク地に濃い赤とターコイズブルーの組み合わせでキーロフの趣き十二分。
着用者によっては洗顔のヘアバンドと化すであろう頭飾りも、このお三方なら難なく絵になり見惚れてしまいました。

ガラでの人気場面のグラン・パ・ド・ドゥはメドーラとコンラッドの祝宴として2人で踊られ、福岡さんが新国立入団前から披露姿を目にしているヴァリエーションを
全幕の中の主役として踊るお姿は何とも感慨深く思えた次第です。
通常ビルバントが踊るピストンパンパン(恐らく正式名称あると思うが)は終盤にて祝砲の如く踊られ、めでたい結末を後押しに効果をもたらしていました。

序盤は久々の公演のためか舞台全体に緊張が走っていましたが打ち消すように後半の大団円へと向かう流れは全員の身体の底からパワーを発し渦巻いていた印象。
珍しく殺人や裏切りや仲間割れ、憎悪といった負の要素排除版でありながら物足りなさを感じさせず
平和な結末に向かって猛スピードで突っ走る物語は感染症の終わりが見えぬ状態で迎えた2021年、微かではあっても縁起良い予感を持たせる胸躍るアリエフ版でした。

カーテンコールにはショートカットの颯爽とした芸術監督の高部尚子さんも登場。30年前初めて拝見した赤城圭さんとの『シンデレラ』、
のちのダンスマガジンでのインタビューをまとめた書籍『バレリーナのアルバム』に綴られていたお好きな言葉として
「鋼鉄に一輪のすみれの花を添えて」だったと思いますが、 強く美しい響きは今も覚えており脳裏を過っていきました。

全幕上演機会が少ないと言われる『海賊』、振り返ると上演があれば足繁く通い全幕映像があれば何本かは鑑賞していると思い出し
初めて観たのは映像でのキーロフ。アスイルムラートワのエキゾチックな美しさが忘れられぬ、
最初に映像ソフト化され以降スタンダード版として広まった演出かもしれません。
ただその後も何本かの全幕公演、映像を眺めていくともはや誰がどこの部分を作曲したか複数の作曲家による音楽混在状態で
把握なさっている方がいらっしゃればお目にかかりたいほど。(生き字引な福田一雄さん、井田勝大さんならよくご存知かと思います)
更にはバレエ音楽屋大集合(大雑把な括りで失礼)による作曲のためか多少入れ替えがあっても違和感無く、余所から取り入れてもさほど不自然さも無い。
加えてあらすじがあるようで実質無いに近い物語ですから、だからこそ振付家演出家にとっては自由度が高い作品で、
重きを置くキャラクターも様々。あたかも違う作品鑑賞に臨む気分でおります。

古式ゆかしくも能天気なキーロフ(マリインスキー)の版は幸いにも2006年の来日公演にてロパートキナ主演で鑑賞し、
数日前の一夜にして『パキータ』『ライモンダ』結婚式、『ジュエルズ』ダイヤモンド3本一挙主演を果たした座長ガラにおける神々しさは微塵もなく笑
喜劇の芝居心が無いのかパシャやビルバントとの慌ただしいやりとりがちょいとわざとらしいご様子でそれがかえって大娯楽路線を増幅。
アンナ・マリー・ホームズ版は概ねスタンダードな基盤を踏襲していながらも、もう少し人物設定や振付も整理整頓された趣きな印象。
2008年にABT、2017年にENB、2019年に東京バレエ団公演にて鑑賞し、バレエ団によって衣装も随分と異なり見比べも興味津々でした。
好きなバレエ団ながら原典復刻版の長さには後半パシャと一緒に居眠りするほか無かったボリショイシネマもございましたが
新たに書き下ろした音楽の溶け込ませに成功していたのはNBAバレエ団で、新垣さんが手がけた曲がさざ波のように調和し、違和感無し。
またメドーラとギュリナーラの関係性が修羅場と化す、さりげなく重たい要素も含まれていました。
嘗ては熊川さんがアリを踊られたKバレエカンパニーは悲劇の英雄アリ物語でしたし、花園やトロワにオダリスクと見所を押さえつつ2時間にまとめ
プロローグとエピローグに原作者バイロンも登場して洒落た雰囲気も合わせた日本バレエ協会が昨年上演のヤレメンコ版もまた観たい演出です。
焦点を4人の人間関係に絞ってシリアスな展開に仕立て、 装置や美術も最小限且つ洗練された色彩にも目を奪われる
数ある海賊の中でも最たる大胆改訂とも思えるキャピトル・バレエ団のベラルビ版は「それゆけ若き暴君スルタン」な副題を付けてもおかしくないほどに
スルタンの怪演が舞台を左右する秀作。理由を綴り始めると原稿用紙10枚分には及びそうですので割愛しますが
管理人がバレエDVDの中でも一番再生回数が多いお気に入りでございます。

そして今回、海賊鑑賞歴に谷バレエによるアリエフ版が加わり、とにかく全員がハッピーエンドへと向かう流れが爽快。
昨年中止になったNHKバレエの饗宴にて抜粋上演を予定していた理由にも納得いたしました。
谷バレエの大事なレパートリーとして上演を重ねて欲しいと願い、今から再演が楽しみです。




ロビーに花園



インドカレー店ですが、店名からして『海賊』鑑賞時にも来店したくなる上野駅東側のお店。
2017年の日本バレエ協会『ラ・バヤデール』、2018年のNBAバレエ団『海賊』に続き3度目の訪問です。
毎度1人で来ており、サグチキンカレーが気に入っております。
(上野での海賊鑑賞時においては、2019年の東京バレエ団公演では有楽町のトルコ料理屋さんに、
2020年の日本バレエ協会公演では上野駅近くの西洋海産物料理店へ。
いずれもムンタ先輩と行き、美味しく海の冒険の余韻に浸っておりました)



振り返ると毎回同じセットメニューを注文しておりますが、前回は最後の方でお腹が一杯になり苦しくなりかけながら完食だったはずが
今回は難なく、しかも瓶ビールも含めて完飲完食。
昨秋の札幌訪問以降胃袋の膨張が止まらないのか或いは老化により満腹中枢が壊れてきたのか笑、真相は不明でございます。

2021年1月18日月曜日

【お茶の間観劇】中止から一転オンラインで福袋開封 新国立劇場バレエ団 ニューイヤー・バレエ 1月11日(月祝)




1月11日(月祝)、新国立劇場バレエ団ニューイヤー・バレエオンライン配信を視聴いたしました。
全日程中止決定から一転しての無観客無料ライブ配信決断、しかも全幕ものではなくプティパからビントレーまで多彩な構成プログラム全編配信に感激。
初台より届いたオンライン福袋を開封した気分を味わえ、まずは急ピッチ準備で配信を実現された劇場関係者の方々に心よりお礼申し上げます。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/newyearballet/

スパイスイープラスの記事、一部作品の舞台写真が掲載されています。
https://spice.eplus.jp/articles/281484



※冒頭にてオーケストラピット前から吉田都監督が挨拶と作品解説。『ペンギン・カフェ』の声出し部分は舞台上では行わず、
客席でマスクをしたダンサーたちによって行う演出に変更する旨の説明もありました。



パキータ
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクスほか

パキータ:米沢唯
リュシアン:渡邊峻郁
※劇場公式サイト配役表には主役2人の役名明記はありませんが、ここでは書かせていただきます。

パ・ド・トロワ:池田理沙子 柴山紗帆 速水渉悟

ヴァリエーション:
寺田亜沙子
細田千晶
益田裕子
奥田花純

北村香菜恵 木村優子 多田そのか 徳永比奈子 中島春菜
原田舞子 土方萌花 廣川みくり 廣田奈々 山田歌子 横山柊子

研修所では頻繁に上演をしていますがバレエ団としては18年ぶりの再演、2003年の初演時のNHKのテレビ放送をご覧になっていた方もいらっしゃるかと思います。
翌年から新国立に行き出した私も、パキータ/ラ・シルフィードの2本立て公演はテレビで視聴しておりました。
放送時の公演は『パキータ』がゲストのディアナ・ヴィシニョーワとイーゴリ・コルプ、『ラ・シルフィード』は志賀三佐枝さんとマトヴィエンコです。

2003年時のキャスト等。ワジーエフとクナコワが指導に来ていたそうです。
https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_005015.html

米沢さんのパキータは完成形の宝石を更に研磨材で磨き抜いたような滑らかな美しさ。
お手本のような踊り、ポーズの上に粋な趣、艶も合わさり登場時からまさに大輪の花と呼ぶに相応しいヒロインでした。
ゆったりとした、下手をすれば冗長になりがちなヴァリエーションでのちょっとしたアクセントの付け所も絶妙な具合。
一瞬たりとも隙のない美の境地を魅せられた思いがいたします。

全幕における役柄設定までもがしっかりと伝わってきたのは渡邊さんのリュシアン。衣装こそ白いシンプルなデザインとはいえ実直な青年将校そのもので
視線の向け方、立ち振る舞いが凛然と格調高い姿から管理人の心は新春打ち上げ花火大会状態でございました。
いとも簡単そうにふわっと舞う跳躍にもこれまた見入り、コーダでの空気を裂く鋭い雄々しい斬り込みも眼福です。

米沢さん渡邊さんが作り出す気持ち良いパートナーシップも印象深く、息が合っているのはさることながら、更に美しく昇華していくようで
米沢さんの伸びやかな肢体や身の委ね方、サポートする身をも綺麗に見せる渡邊さんの姿や視線の交わし方、手の差し出しや乗せるタイミングと言い
真っ赤なコール・ドを従えていても広い舞台に一層映え、パ・ド・ドゥの醍醐味を味わえた気分でおります。

時間軸が前後いたしますが、私が『ジゼル』墓場のアルブレヒトと並んで数あるバレエ作品の中でも
どうしても目を光らせて観てしまう場面の1つがリュシアンの登場シーンで、斜めに整然と立つ女性陣に沿って歩み出てくる箇所。
この場面ほど時間をたっぷり使って花道を歩くが如き登場シーンは無いと思っており、華々しい登場の割にはその後は出番はこれといって多いわけではない。
それ故にグラン・パ全体のリュシアンに対しても著しく高い理想の壁を設置してしまう捻くれ者な管理人でございます。
これまでに観た中で心底うっとりしたのは、2011年に京都で(このあとに紹介するソワレ・ド・バレエの全編版と同じリサイタルで鑑賞)
鑑賞した風格の極みな山本隆之さん、そして映像で観た37年前のABTミックス・プログラムでの
端正且つ陽のオーラ発散フェルナンド・ブフォネスのお2人でしたが
今回めでたく3人目として渡邊さんが加わり祝杯。2021年はパキータ記念年です。
1点欲を申すならば、これは勝手なイメージ先行とらわれているだけであるのだが
ヴァリエーションの曲がフランツの姿が思い浮かぶ曲で、出来ればパキータで通常披露される勇ましい曲調のほうで観たかったとの思いは断ち切れず。
いつの日か鑑賞を願っております。ところでフランツな曲も、元はロマンティック・バレエである『コッペリア』のために作曲されたものではないと思うが
作曲者が気になるものの把握に至らず。機会があれば福田一雄さんに尋ねてみたいと思います。

意外と申しては失礼だが、上出来と思えたのはパ・ド・トロワ。呼吸がとても合い、しかも3人とも楽しそうであった点も二重丸。
速水さんは複数で踊ると1人だけ合わぬ傾向があるイメージが先行してしまっていたが(失礼)、
池田さん柴山さんともに歩調が上手く噛み合い、観ていて心弾むトロワでした。

ヴァリエーションで特に惹かれたのは細田さんの哀愁感や腕使いもひときわ優雅な踊りと、溌剌と軽やかで繰り返し大跳躍も粗が無く音楽にぴたりと合った奥田さん。
コール・ドも歯切れ良く統制が取れ、2003年のテレビ放送時には赤一色で地味で古色蒼然と一刀両断した衣装もよく見ると細かな模様で彩られ
印象一変したのは映像技術の進歩だけではないでしょう。紅白はっきりな色彩は新年らしい祝祭感に満ちていました。
二重のシャンデリアや縦の細い柱を多めに用意した装置もなかなか重厚で、結婚式らしい空間を演出です。

それにしても管理人、15年前にパリオペラ座来日公演にてクレールマリ・オスタとバンジャマン・ペッシュ主演『パキータ』を全幕鑑賞しているが
結婚式場面以外記憶から遠ざかっており、復刻振付したピエール・ラコット作品との相性が良くないわけでなく、『ラ・シルフィード』や『ファラオの娘』は好んで観ており、
しかしボリショイのファラオやパリオペラ座パキータ全幕と同年秋上演の東京バレエ団『ドナウの娘』は更に記憶の彼方。
とにもかくにも、『パキータ』が結婚式場面のみ抜粋で頻繁上演の理由を再度考えを巡らし納得でございます。


Contact
振付:木下嘉人
音楽:オーラヴル・アルナルズ

小野絢子 木下嘉人

昨年3月のDance to the Futureにて披露予定が中止となり、同年夏の大和シティ・バレエ公演にて米沢さんと木下さんが組んでの披露は鑑賞。
すっきりとした清らかさが強まっていた大和とは全く異なり、小野さんが醸す憂いを含む神秘的な情感が木下さんと交わって
沸々と妖しい光が灯されていった印象です。特に腕の表情が作り出す空間がユニークであると同時に
「接触」が後ろ向きな用語として浸透し禁じ手にもなりつつある現在、触れ合う行為の愛おしさ、難しさをお2人が内側から訴えているとも捉えております。
尚、大和では米沢さんは白い衣装、今回小野さんは淡いピンク色の衣装。もう1組予定されていたキャスト、米沢さん渡邊さんペアもいつか鑑賞を願っております。

そして今回のニューイヤーで一番の驚きであったのが、アルナルズの音楽の生演奏。録音音源とばかり思っていたため、
オペラパレス開催のニューイヤー仕様版は木下さんにとっては格別な思いであったのは想像に難くありません。
滅多に聴ける機会は無いであろう演奏にも耳を傾け、一音一音が放つ響きや呼応する小野さん木下さんの踊りを堪能できました。


ソワレ・ド・バレエ
振付:深川秀夫
音楽:アレクサンドル・グラズノフ

池田理沙子 中家正博

新国立劇場バレエ団での初演は2017年のヴァレンタイン・バレエ。同年バレエ・アステラスでも披露され、池田さんは双方に出演。中家さんは初挑戦です。
ヴァレンタインやアステラスのときとは池田さんが別人のように変化し、全身を大きく使い
隅々まで神経が届いたエレガントな踊りやラインの見せ方にまたもや驚きを覚えた次第。
音楽と連動して内面から溢れ出る表現も届き、昨年逝去された深川さんはにっこりとしながらこの日の舞台を見守っていらしたに違いありません。
中家さんが深川さん作品を踊る姿や池田さんとのペアも初めて鑑賞。つい豪快な印象を持ちがちですが
振付1つ1つを丁寧に示し、そうかと思えばはっとさせる雄々しいテクニックも繰り出しメリハリも良い塩梅。
ペアとしては、中家さんが上背があるがっちり体型のためか池田さんが随分と初々しく見えてしまったものの、
新鮮なパートナーリングを鑑賞できたのは嬉しいこと。

さて、再三の紹介で申し訳ございません。『ソワレ・ド・バレエ』は元々は大人数構成で
星空の下で色とりどりの煌びやかな衣装を着けたダンサー達が踊り、 プリンシパルに男女ペアのソリスト、女性によるコール・ドも付きます。
『四季』のみならず『ライモンダ』からも使用されているグラズノフの曲が壮大で時には真珠が散りばめられられたかの如く繊細に響き振付と調和した作品です。
初めて観たのは東日本大震災から間もない頃、東京都内も計画停電や物流もまだ元には戻っていない状況で公演キャンセルも相次いでいた時期。
胸に一段と沁み入った思い入れの強い作品であり、 京都にて星屑のヴェールに包まれた心持ちで鑑賞に浸っていた当時を今も鮮やかに覚えております。
日本人の振付家で1980年代前半にこうも華麗で洒落た作品を手掛けた深川さんの存在に感銘を受けました。
こちらから全編版の写真がご覧いただけます。
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/osaka/detail006590.html


カンパネラ
振付:貝川鐵夫
音楽:フランツ・リスト
福岡雄大
ピアノ演奏:山中惇史

貝川さんが振り付け、福岡さんを始め再演を重ねている男性ソロ作品で今回は生演奏と共演が実現。
当初は正面からぶつかり合う衝撃度のある共演になるかと思いきや、互いに尊重し呼び掛け合いながら緻密に作り上げている感が強し。
序盤の小さな音色から一音一音丹念に触れ、中間部における強弱の畳み掛けも時に襞を捲るようであったり突如爆発したりと全身が起伏に富み
終盤にかけて急速に迫力を増していく箇所も福岡さんの身体がみるみると熱を帯びて共鳴する姿に、生で、オペラパレスの空間で観たいと思わずにいられませんでした。



ペンギン・カフェ
振付:デヴィッド・ビントレー
音楽:サイモン・ジェフス

ペンギン:広瀬碧
ユタのオオツノヒツジ:米沢唯 井澤駿
テキサスのカンガルーネズミ:福田圭吾
豚鼻スカンクにつくノミ:五月女遥
原健太 小柴富久修 清水裕三郎 浜崎慶二朗 福田紘也
ケープヤマシマウマ:奥村康祐
米沢唯 寺田亜沙子 細田千晶 渡辺与布 川口藍 益田裕子 今村美由起 関晶帆
熱帯雨林の家族:本島美和 貝川鐵夫 岩井夏凛
ブラジルのウーリーモンキー:福岡雄大
飯野萌子 加藤朋子


新国立劇場での初演は2010年で1度目の再演2013年以来の上演です。2013年は静岡市、御殿場市にてバランシンの『シンフォニー・イン・C』とのダブルビルとして
上演を行い、静岡2公演にも足を運んでおります。

広瀬さんのペンギン(絶滅したオオウミガラス)は序盤は愛らしく、トレーを手に踊る姿も軽快。先代さいとう美帆さんのお澄ましがチャーミングなペンギンとも、
井倉真未さんの前半はとことん明るく、その分後半は絶望感に浸るように悲しさをダイナミックに募らせていたペンギンとも一味も二味も違う、
身のこなしやちょこんと客人の顔を覗き込む仕草もきびきびキュートなペンギンさんでした。代々三者三様の魅力があったと回想いたします。
2羽のペンギンウェイター達とも呼吸が合い、これといった名前が無いのが心残り。(水戸黄門で言う、助さん格さんのような立場かもしれません)
後半、雨に打たれながら皆が逃げ惑う場面は少し羽をパタパタさせたり頭を傾げているだけでも寂しさが漂い、
一羽箱舟に乗れず佇む姿は静かであっても人間の乱獲によって絶滅し、ずっしり重たい悲しみを訴えかける幕切れです。

広瀬さんはビントレーが芸術監督就任の2010年に準コール・ド・バレエの一員として入団。ビントレー就任最初の公演にてバレエ団が初演した作品の1本が
『ペンギン・カフェ』で当時は客席からご覧になっていたと綴っていらっしゃり、
また現在ファースト・アーティストの階級で決して主役経験豊富ではなく、牧版『くるみ割り人形』クララがこれまでで最も大きな役であったはず。
嬉しいの一言では言い尽くせぬ思いでペンギン役に臨まれたことと察します。カーテンコールにてペンギンの頭を外し顔を見せて中央に立ち
仲間に促されて前に進み深々と頭を下げていらっしゃる姿に、無観客配信ではあってもどうにか舞台上で披露する機会の実現に胸が一杯になりました。
米沢さんの羊は格段と色っぽくなり、すっぽり羊の頭を被っていても明らかでしたから、身体の魅せ方に長けていると再確認。
燕尾姿の井澤さんとのダンスも大人な薫りを振り撒いていらっしゃいました。
ランナーズハイに等しい消耗でも福田さんのカンガルーネズミも縦横無尽に軽やかに駆け回り、五月女さんのノミは戦隊系衣装ながら
滑らかで無駄の無いジャンプも気持ち良く映り、ヘルメットのような被り物であっても顔は満面の笑みであっただろうと弾む姿から見て取れました。
長身男性チームの間をすり抜けてはくっついたりと掛け合いも楽しい限り。

そして今回最たる驚きであったのは奥村さんのシマウマで、前回も似合っていらっしゃいましたが、
華奢でひょろっとしたやや頼りなかった(笑)シマウマとは打って変わり草原を背景に草食動物の王者の貫禄が見事。
ずしずしと押し迫ってくる踊りや崇高な立ち姿にも目を見張りました。
無機質で変速的なカウントを取りながらモデルのように歩くゼブラガール達とは殆ど絡むこともなく、最後は孤独に倒れ込む様子も悲哀感を滲ませます。

静かな調べの中でも愛情溢れる家族像を示していた貝川さん本島さん熱帯雨林の家族にも心を持っていかれ、子を抱く本島さんの慈愛に満ちた表情や見守る貝川さんの穏やかな安心感も、住処を追われる哀れさだけではない強固な家族愛が伝わるひと幕でした。

場面は一変していきなり跳び上がって登場する福岡さんのウーリーモンキーもインパクト大。以前はひたすら高い跳躍であった福岡さんですが
年月を経て踊り方も変わってきたのか、弾けつつも品良くまとめ上げ粗っぽさは見えずであったのは好印象。
左右を彩る、近年役が次々と付いている飯野さんの勢いある存在感は勿論のこと、ビントレーによって入団早々から『ガラントゥリーズ』に抜擢され
その後も『テイク・ファイヴ』、『イン・ジ・アッパー・ルーム』等ビントレー作品やビントレー監督任期中にレパートリー入りした作品に
度々選ばれてきた加藤さんが再びこの位置に配されたことも嬉々たる思いで眺めました。
カーテンコールは無観客のため特別仕様でカーニバル部分が再び演奏される中で行われ、最後は明るく締め括りです。

さて、新国立での初演は2010年ですが国内初披露であったのは1992年の英国ロイヤル・バレエ団の公演と思われ、
1988年の世界初演からもさほど年月が経っていない段階での日本における観客の反応が気になるところ。ノミの男性陣にアダム・クーパーが入っていたようだが
私はこのときの来日公演ではダーシー・バッセルとゾルタン・ソリモジー主演の『ラ・バヤデール』しか観ておらず、
29年前当時は語り合えるバレエ鑑賞仲間も周囲には見当たらずであったためペンギンに限らず、キャスト明記によればダウエル、ムハメドフ、
クーパー、バッセル、デュランテが共演した『三人姉妹』やウィールドンが村人その12辺りを務めていた『真夏の夜の夢』、
『エリート・シンコペーション』『バレエの情景』といった別プログラムをご覧になった方のご感想を知らずに今に至っており、
今さらではありますがこれから少しずつ、バレエ鑑賞の先輩方に伺っていきたいと考えております。

『ペンギン・カフェ』の風刺はこの状況下もあってより胸を突くものがあり、生演奏版にした木下さん貝川さんの2作品や
関東ではなかなか観る機会がない深川秀夫さんの『ソワレ・ド・バレエ』再演も加わり上質な舞台でした。
一度は全日中止決定からの一転、急ピッチ準備での無観客配信となりながら映像も安定しカメラワークの良さにも脱帽。
遠方在住の方々や職業やご家庭の事情で劇場になかなか足を運べずにいる方々が楽しまれたご様子も伝わる喜ばしい企画で
Google Chromeを活用しテレビの大画面で堪能いたしました。

ただ公演中止はやはり残念であり、年末年始返上で準備していながら一度も本番を迎えぬままとなってしまったダンサーがいることも忘れてはならず、
心境を思うと手放しに万歳とはいかず。また今回陽性反応が出た方が変に責任を背負って思い詰めてしまっていないか、心配です。
これだけ感染者が増加する一方な状況下ある程度の規模の団体にて検査をすれば無症状であっても1名に止まらず
複数名誰かしら反応が出てしまう可能性は十分にあり得ることで、 1人だけであったのは常日頃から公演関係者の方々が
想像以上に神経をすり減らして予防対策に努めていらっしゃることが窺えます。
専門家ではないため踏み込んだ発言はできかねますが、もうこれ以上にないほど予防努力をなさっている関係者の安全を確保しつつ
中止は極力避け、公演開催が可能となるよう願っております。

また元来劇場の楽しみは生での体感が醍醐味ですがこの状況下、遠方在住で上京できずにいる方や
ご家庭や職業の事情で劇場へ足を運びたくても運べない方が大勢いらっしゃいます。
ご自宅で手元で、バレエ公演を堪能できるようこれからも配信(有料でも喜んで購入されると思う)も続けていただきたいと思っております。


*重要物件配信を自宅で堪能するにあたり気をつけたいと思ったこと、日光や家の灯りによっては出演者の顔が白く、
『パキータ』では一時リュシアンの眉毛ばかりが浮き立ってしまう事態に。
自宅の環境整備にも気を配る必要性を感じ、反省材料にして次回に生かします。



※上の写真、赤ワインを隣に並べて撮影。まずはパキータ年に乾杯。



我が家の海遊館ペンギンさん(数年前、妹からの大阪土産)もカクテルを運んできてくれました。しかしお酒よりもお魚が好きだそうです笑。



今宵の締めは白河ラーメン。都内のお店や福島物産展では食したことはありましたが自宅では初。
あっさり上品なお醤油味が美味しく、好みでございます。

2021年1月13日水曜日

NHKBSプレミアムドラマ『カンパニー〜逆転のスワン〜』初回視聴

1月10日(日)より放送開始のNHKBSドラマ『カンパニー』の初回を視聴いたしました。
https://www.nhk.jp/p/ts/NYXK5QNJVW/




ドラマの監修協力を務めている熊川哲也さん率いるKバレエカンパニーの昨秋公演『海賊』キャンセル待ち中に
チケット売り場前にて二宮金次郎の如く立ったまま、時々数歩移動しつつ原作を読んでおりましたが
協賛企業社員ならではの悩みや一部の日本のバレエ団特有のしきたり、プロとアマの曖昧な境界線、
主人公の青柳がバレエのバの字も分からぬまま飛び込むもお姫様王子様の話のイメージ先行を覆したのであろう『ラ・バヤデール』の物語に惹かれる様子や
またスターダンサー高野悠が王子よりもロットバルトに憧れを抱くエピソードなど
思わず頷いてしまう要素が満載。非常に期待を高めて視聴に臨みました。
結果ややコメディ路線に走り過ぎたのか、大袈裟な反応や過剰な騒がしさを感じてしまった感がございます。
原作は淡々とした中にも熱さ、慌ただしさを潜め、どの場面も笑いの要素は抑えめ。
丁寧に場面展開を描いていた印象でしたので、映像化となるとあれもこれもと詰め込み編集しての放送且つ視覚部分も加わってきますから
原作を気に入っている読者に響くのはなかなか難しいのかもしれません。

しかし、バレエをよく知らぬまま交渉に来た青柳達の核心を高野が突く発言は横柄な態度ながらも説得力を与え、思わず聞き入ってしまう場面もあり。
ひょっとしたら、これまでゲスト出演依頼にて時に頭を悩ませてきた熊川さんのご経験も反映されているのかもしれないと思いつつ視聴しておりました。
著書『メイド・イン・ロンドン』にて招聘元とのやりとりだったか、近い内容の記述があったような気もいたしますが記憶曖昧で失礼。

バレエ以外にも、マスメディアに作り上げられた虚像に悩み続けていたスポーツトレーナーや、青柳の家族像から考えさせられることも多々。
井ノ原快彦さんはサラリーマン青柳役にぴったりと嵌っていますし、まだ台詞数は少ない段階ですが
小林美奈さんらKバレエカンパニーから出演のダンサー達による声出し演技も楽しみであり、次回以降も視聴して参りたいと思っております。

管理人にとっては、人生3本目となる全話視聴の連続ドラマとなりそうでその点も楽しみでございます。
昭和より長年生きておりますが、所謂歴代で高視聴率を叩き出した作品『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』、
もう少し現代寄りでは『ひとつ屋根の下』『ロング・バケーション』、2000年代以降は『ビューティフル・ライフ』や『やまとなでしこ』等
一度も視聴していない或いは数話程度の視聴で、テレビ好きな時期もあったとは言え、世間の潮流に左右されなさ過ぎる視聴人生を歩んでいるかもしれません。
歴代最高視聴率を記録しているであろう『おしん』は朝の連続テレビ小説ですから当時全話視聴なさった方は果たしていらっしゃるか気になるところですが
では全話見逃さずであった作品の2本とは何ぞやかと申しますと1997年放送の高校を舞台にした痛快な『名探偵保健室のオバさん』と
2002年放送の真面目一徹な女性獣医と幼馴染のフリー写真家の男性が主人公のほっこり喜劇『初体験』。
著名な俳優陣が出演するもいずれもさほど注目度は高くなく映像ソフト化もされず視聴率そのものは振るわなかったようですが、初回から面白く夢中になり、
周囲とは話が合いづらくも毎週を心待ちにしていた思い入れのある作品です。
当ブログをお読みの方の中には恐らくいらっしゃらないとは思いますが、我こそは観ていたとの珍人種の方、ご一報お待ちしております笑。
そういえば、昨年師走のくるみ割り人形週間に入る前に鑑賞した映画も周囲に鑑賞者無しと思われましたが(完全に鬼滅の刃に押されていた)
昨日地元のスーパーマーケットにて主題歌が流れ、思わず最後の星空の場面を思い起こしながら
珍しくバレエではない芸術分野に足を踏み入れた日の新鮮さは忘れ難いのであろうと考えた次第です。

さて、話を本拠地バレエに戻します。2021年の鑑賞はじめは思わぬ形でオンライン配信を堪能。福袋を開封した心持ちでおり、次回綴って参ります。

2021年1月8日金曜日

【お茶の間観劇】キャピトル・バレエ団(トゥールーズ) ヌレエフ・プログラム

久々のお茶の間観劇記事でございます。遅ればせばがら、大晦日と元日に
フランス、トゥールーズのキャピトル・バレエ団によるヌレエフ・プログラムを鑑賞いたしました。
バレエ団名を聞いて、一昨年に放送されていたNHKフランス語会話にて東京バレエ団の柄本弾さんが訪ねた街でのレッスンにも登場したバレエ団
或いは新国立劇場の渡邊峻郁さんが2016年夏まで在籍されていたバレエ団と思い浮かべる方も多くいらっしゃることと存じます。
配信期限がいつまでかは分かりかねますが(仏語で何かしら記されているかもしれません)現在も視聴可能で
文字通り全てヌレエフが改訂振付した古典からの構成です。
キャピトル・バレエでは随分前からヌレエフの作品を取り入れていますが、どの演目においてもきちんと、粗無く、流さずに踊り
その中から華や品が薫る大変上質な舞台でございます。是非ご覧ください。





中でも『ライモンダ』第3幕グラン・パ・クラシックの完成度は見事なまでに高く、序盤から驚き止まらず。
男性2人によって踊られる元は子供の踊りとして作曲された(確か)アレグロ曲にややこしい足技満載な振付も伸びやか鮮やかなこなしぶりで
身体の角度を変えながらの移動もお手の物。2人の呼吸の合い方、全身を使っての楽しい掛け合いにも注目をです。
グランパ名物とも言える男性カトルにおいてもしばしばお目にかかる斜めロケット発射及び着陸失敗もなく
エレガントな纏まりで、音楽を大事に端正に踊っている印象。男性舞踊手陣の充実が窺えました。
尚、連続ザンレールに入る前の箇所は 横並びで相手に順々と譲り促していく優雅版ダチョウ倶楽部のような振付ではなく
両腕を上に掲げたポーズから徐々に広げていきながら前進して立ち止まり。これはこれで美しいが、どうぞどうぞと言わんばかりの
譲りリレー振付が毎度我がツボを刺激される身としては少々寂しい気もしております。
三角形フォーメーション維持が難しい女性パ・ド・トロワの調和も宜しく、少しずつ脚を差し出しながら
身体の向きを変化させる箇所における指先や脚先から零れる余韻に至るまで優美さが凝縮。
特に真ん中を務めていらした恐らくは中里佳代さんのすらりとした四肢、淑やかでコントロールの効いた踊りに魅せられました。

この後もヌレエフ名作選が続き、『ロミオとジュリエット』バルコニーパ・ド・ドゥは集中して終始観たのはひょっとしたら初かもしれず
(エトワールガラのテレビ放送で視聴した気もするが覚えておらず失礼) 初めの部分からアラベスクで追いかけっこするようにときめきを胸に駆け抜けたり
口あんぐりして驚倒したのはロミオの長いソロ。マクミラン版にもあるものの
ヌレエフ版では途中の要所要所でジュリエットをサポートしたりと大忙し。しかも脚を出して伸ばしては素早く畳み込む振付も多くこれはロミオ大難役ですが
全身から恋の喜びを一杯に表して踊っているのですから恐れ入りました。

『眠れる森の美女』第3幕グラン・パ・ド・ドゥもこれまたコーダ冒頭にて王子の軸足変えずに次々と回転技を繰り出す振付に驚愕し、
これまでパリ・オペラ座含むフランスのバレエ団映像をしっかり観ていない我が知識不足を猛省。ルグリとデュポンの全幕眠りは
近年にDVDで観ているのだが、記憶が彼方。こればかりは好み先行で、ソビエト時代のボリショイやキーロフ映像の方が脳裏に残っている点、お許しください。
そういえば、パリでのヌレエフ版眠り衣装の転換期が気になっており、ムハメドフがゲスト出演してゲランと踊ったときや
ポントワとイレールが日本バレエ協会公演に客演した時代は足利義満も仰天であろうキンキラキン色彩でしたが
いつの頃からか姫の3幕衣装は白地に赤い模様の可愛らしいものへ変わり全体も一新。著しくフランスバレエ知らずな管理人、学習も兼ねて調べたいと思います。

『シンデレラ』は初演から数年経った頃に森英恵さんによるデザインでも話題沸騰と知ったのは覚えておりましたが、集中して凝視したのは初かもしれません。
日本、オランダ、英国、ポーランドと今や『くるみ割り人形』で世界を席巻中の某振付家と異なり(失礼)リフトが程よく盛り込まれたアダージオで
夜空な照明を背景にリフトされたシンデレラが王子に芽生えた恋心を益々露わにするかの如く空中自転車漕ぎのように脚で浮遊する姿も印象深くユニーク。
(夜空で自転車の組み合わせにスピルバーグ監督のE.T.を思い浮かべた方がいらしたら嬉しいが笑)
派手な技巧が入っていないながら、音楽を全身でたっぷり、空間を大きく使った踊り方も気持ち良く、このパ・ド・ドゥがこうにも魅力が詰まっているとは
目を見開いて食い入るように鑑賞してしまったほど。6年前の世界バレエフェスティバルにてジルベールとガニオによる花形ペアで観ているはずなのだが
またもや記憶が薄らいでおり、パリ・オペラ座愛好家に両手と額を床に付けて詫びとうございます。

大トリは『白鳥の湖』より黒鳥パ・ド・トロワ。ここまで予想以上に上質な会席料理を堪能した気分になってしまい堅実過ぎてやや地味にも見て取れましたが
よく見ると音楽がゆったりめながら持て余すことなく、コーダでのオディールと王子の連続回転も単なる競争にならず滑らかに繋いでいく様子も好印象。
ロットバルトもヴァリエーションでたっぷりと見せ場があり、パリ・オペラ座バレエ団来日公演でにパケットの名演が即座に浮かびましたが
パケットは兜無く、その辺りはバレエ団に任されているのかと推察です。

一見して華やぎや麗しさが迫ってくるパリ・オペラ座とは一味も二味も異なり、多国籍集団から成りルーツも様々なカンパニーですが
全ダンサーがヌレエフの振付の意図を汲み取り身体の隅々まで神経を行き渡らせながら踊ると極上の統一感や
振付を一切流さず忠実に踊る職人気質から華が咲き、広がって行くように生まれる醍醐味を満喫した心持ちでおります。

冒頭はライモンダ3幕の壮大な前奏曲に合わせ、準備中ダンサー達の姿が幻影のようにも映し出され
配信映像への期待感を膨らませる効果も大きいセンス抜群な作りにも感心いたしました。
指導は芸術監督のベラルビに加え、ルディエール、ジュドといった往年のエトワール達も担当。
着実に継承されていくキャピトル・バレエ団によるヌレエフ作品もより多く観たいと思わせます。



※2015年の中里さんへのインタビュー。ルディエールから受けた感銘についても触れていらっしゃる内容で、写真も豊富です。
舞台上で集合した写真はベラルビ監督版『海賊』、渡邊さんがスルタンではなく海賊役として中央に写っていらっしゃるため、中国公演終了後かもしれません。
https://odoritai.exblog.jp/24345455/



『パキータ』2016年6月公演予告映像で、中里さん(恐らく)がヴァリエーションを踊る姿が開始56秒から1分辺りまで映っていらっしゃいます。
回転が軽やかポーズも晴れやかで、初めて見たときからはっとさせられる魅力がありました。
パキータはマリア・グティエレス、リュシアンは配信の『ライモンダ』3幕にてジャンを務めたダヴィット・ガルスティアン。
音楽は後半の演目『火の鳥』中間部分ですが、パキータの振付にも驚くほどに違和感なく溶け込んでいる映像です。
勿論、渡邊さんがタイトルロールを務め、革命軍の青年が敢然と火の鳥へと変身する後半のベジャール版『火の鳥』もご覧ください。
大変雄々しく、射るような視線もご堪能ください。
ガルスティアンは数多くのレパートリーで主演を務めていてDVD化されたベラルビ版『海賊』では主役の海賊を踊っています。
しかしいかんせんこのソフトでは渡邊さんによる、当時20代前半とは思えぬおっかな過ぎる豪胆な暴君スルタンの怪演ばかりが刷り込まれてしまっておりますが
シンプル且つ美しい照明や装置に加え、海賊、奴隷の女、スルタン、愛人に焦点を絞った関係性と言い秀逸な作品です。
ラロ作曲『ナムーナ』よりモロッコ舞曲がエキゾチックな味わいを漂わせているダイジェスト映像だけでもどうぞご覧になってみてください。




トゥールーズのパキータ、こちらもどうぞ。『レ・シルフィード』華麗なる大円舞曲に合わせた映像です。
2016年の火の鳥ほどは曲と調和しているとは言い難いものの、映像編集の名手がいるのでしょう。



ついでに、『パキータ』はプロの公演や発表会問わずあちこちで観ておりますが
衣装が頗る絶品と思えたのが国内では幕開けにどよめきまで聞こえてきたゴージャスな小林紀子バレエシアター、
海外のカンパニーでは写真のみですがキャピトル・バレエ団のデザインでした。
誠にお洒落で装飾も細やか、華美になり過ぎず上品で美しい色彩です。 振付はオレグ・ヴィノグラードフ版のようで、
フランスではなくロシアよりマリインスキーのプロダクションを取り入れているもよう。


2016年の予告
http://www.forum-dansomanie.net/forum/viewtopic.php?p=106640&sid=cdc95ab9f5254bdf86dca9ee2e52b2d0

2016年舞台写真
https://www.dansesaveclaplume.com/en-scene/45200-grand-pas-de-paquita-loiseau-de-feu-ballet-du-capitole/>


ちなみに衣装において一番地味に感じたのはNHKの放送や情報センター、雑誌記事で目にした新国立劇場バレエ団。(大きい声で言えないがもう遅い笑)
主役2人は白で整えられて気品もあり良いのですが、ソリスト、コール・ド陣が真っ赤一色で発表会以上に華やぎ感欠如と思ったものです。
→私は18年前テレビ放送にて何を見ていたのか、今回配信を視聴したところ見違えるほどに華やぐ舞台でした。失礼な物言いをお許しください。

しかし、まもなく到来する1月11日(月祝)成人の日は、その『パキータ』を18年ぶりに上演する
新国立劇場バレエ団ニューイヤー・バレエが無観客ライブ無料配信されます。(アーカイブ無しとのこと)
衣装が当時と変わっているか否かは分かりかねますが、新年を飾るに相応しい祝祭感溢れる舞台になるのは確実でしょう。
パキータは米沢さん、そしてリュシアンは渡邊さんです。観客動員の公演中止は残念ですが、全国の方にも、しかもビントレーに深川秀夫さん、
貝川さん木下さん作品含む多彩なプログラムを全編配信を楽しんでいただけると思うと嬉しさも更に募ってきます。背筋を伸ばして鑑賞する予定でおります。

2021年1月5日火曜日

【忖度なし】【言いたい放題】管理人母による新国立劇場バレエ団 イーグリング版『くるみ割り人形』2020年12月19日(土夜)感想




※ご訪問ありがとうございます。新国立劇場バレエ団くるみ割り人形2021年末から2022年年始にかけての総括感想はこちらです。
https://endehors2.blogspot.com/2022/01/20211218202213-7.html




昨日仕事始めの方も大勢いらしたことと思います。年末年始の休暇が4日間で他企業に比較すると短めであったため
正月ボケは最小限に止まったと考えたいところですが、元旦のどうしようもないぐうたら生活、思い返すとお恥ずかしい限りです。

年始早々緊急事態宣言発令報道による劇場稼働の有無結果に心臓が止まりそうなお気持ちとなっていた方もいらっしゃると存じます。
ひとまず劇場関係は閉めずの方向のようですが先は読めず、今年も緊張を強いられる日々はまだまだ続きそうです。

さて昨年書き切れなかった内容を1本。新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』を鑑賞した母の感想でございます。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/nutcracker/

NHKバレエの饗宴2018でのテレビ放送でねずみ王の描き方は気に入ってチュウチュウ!!とアイドルコンサートの如くテレビに向かって声を発し、
オレンジ色が広がる花のワルツには衝撃を受けており好みか否か今一つ分からずのまま終了。
しかし昨年くるみの公演が始まり、連日通う私の姿から興味はあるけれど特別行きたいとは云々と言い走っておりましたため
「無料」ならば行くであろうと予想。見事的中し、勿論日程は某ダンサー出演日をこちらで勝手に調整。
ねずみ王の日も候補にいたしましたが用事(自宅にて趣味仲間とのオンライン会議だったらしい。娘はズームはオンライン飲みも会議も経験なく、
今時の機械の使用法もよう分からん笑)がありそうであったため後半日程の土曜日夜公演へ招待という名の誘い出しをしたのでした。

鑑賞後の感想でまず一言、とっても楽しかったそうです。気に入ったところも多々あり、一部好みに合わなかったところもあったようですが
総合力においては心から満喫した様子です。
私と異なり回りくどい言い回し皆無、自宅にて留守番する子供時代の長女次女に対する電話口の話っぷりが余りに簡潔ぶっきらぼうで、
職場の周囲の人々がおっかなびっくりしていたとか笑。そんなわけで、当ブログでは滅多にない至極シンプル箇条書きで時系列で綴って参ります。
※→部分は私の追記解説でございます。


・幕開けのスケート、光GENJIかと思った。 →私と異なり、長谷川一夫や原節子、笠置シヅ子といった著名人、
銀幕のスター等の古き表現はまず出てこない母ですので比較的現代寄りの例えを示しておりました。
光源氏ゆかりの地域であるびわ湖公演(2017年)は我が脳裏をも過ぎりましたが、東京でも想像するとは。

・1幕のパーティーは爺さんが多い →老人、クララの祖父、聖ニコラス、3名含んで爺さん扱いだそうです。 ただ若い方達がやっていても皆上手い、
よぼよぼの福田圭吾爺さんを特に称えておりました。

・1幕、道化の男女の踊りがないのは寂しい →ルイーズや詩人、老人が踊っていた人形劇の箇所のこと。
ボリショイやキエフといった旧ソ連の映像で親しみ過ぎたようで、可愛らしい振付だから取り入れて欲しかったらしい。
ルイーズや詩人の設定はよく分からんの一言で終了、すみません。


•客人やメイド、執事のような人まで大勢投入されていて見応えあった。子役は気にならず、とにかく衣装や装置が上品で華やかで好印象だった。

・ねずみ王が出演し過ぎでクララ達を追いかけてばかりで笑えたが、好きなキャラクターだから面白く観た。
→井澤駿さんが入っていると知って仰天しておりました。

ねずみ達、目が真っ赤に光っていてナウシカの王蟲ばかりが浮かんでしまった。
→今年のお正月に歌舞伎版『風の谷のナウシカ』前編(後編は管理人、舞台で鑑賞。つくづく一昨年公演で良かったと思う
)テレビ視聴していた際も、腐海に落ちていくアスベルを追い詰める虫たちの頭の点滅具合や囲い込む振付にも似ていると意見一致。

・戦闘場面、大迫力で装置が転換していくところもワクワクした。クリスマスツリーも大きさ、装飾共に豪華で、装置は全般良かった。
・雪は大感激。3階からの鑑賞でむしろ良かった、寝てても皆さん踊れそう。大人数でびっくりするぐらい揃ってもいて、圧巻だった。

・ねずみ王が気球の下に乗っかって宙に上がる場面、「光ちゃん」と表現。
→どうやら堂本光一さん主演ミュージカル『SHOCK』ワイヤーアクションを
彷彿させたらしい。ちなみに後日視聴したイングリッシュナショナルバレエ団のほうが傾斜しながらの宙吊りであったため、
より光ちゃんアクションに近いと感じたそうです。母の周囲に堂本光一さんの大ファンがいるそうでよく話を聞いているとのこと。
とにかく例えが私よりも近代でございます。

・1幕から2幕にかけて、クララと出会った後にも王子がお面ばっかりでおかしい。
→装着している意味あるのか尋ねられたため魔法が解けたり戻ったりを繰り返しているらしいと回答したが、
舞台観ているだけでは伝わらんと即答。まあ、30回以上観ている私も設定を知ってはいても違和感は大いにある。

・アラビアはNHKの影響で本島さんが登場するとばかり思い込んでしまっていたが、渡辺与布さんが綺麗で見惚れ、双眼鏡でたくさん眺めた。

中国は京劇観ている気分だったが、人差し指立てがなくなっていたのは良かった。
→人差し指立てについては、現代には相応しくない表現なのかもしれないと帰宅後ふと思い浮かんだらしい。予想は的中。

・ロシアはやはり女子の大きなカチューシャ(ウクライナの伝統装飾?)があると安心する。
しかし男性の服がジョージアっぽいのでアンバランスだが音楽も振付も楽しいから気にはかからなかった

・葦笛は何で蝶々?振付がかなり難しそうであった。
→NHKの放送で観たときも、これを踊りこなしている池田さんにたいそう感心しておりました。

・花のワルツ、衣装は事前に知識を入れていたため心の準備はできていたがそれでもあの温暖な色彩はちょいとギョッとした。
しかし、全員男女ペアだからかパワフルで、しかも恐ろしく難しそうなことも易々とこなしていて、感動してしまった。
新国立の大人数コール・ドはやはり安心するし毎回感激する。

・主役2人のシャンパンゴールド衣装の色も煌めいていて宜しい。

・ところで、主役2人は身長どれくらい?
→主役についての話題はこれだけでした…。ファンの皆様、申し訳ございませんが、それだけ総合力としての新国立くるみに没頭していたとご理解ください。
ただ一昨年3月に鑑賞した渡邊さんのソロルは良かったと当時申しており、木村さんについてはNHK饗宴の放送やストイック女子でも好感を持っておりました。


あれこれ綴って参りましたが、実は私の身内友人において今回初イーグリングくるみ鑑賞をした人が2名。
母、そして大学の後輩で共通するのはNHKの放送では暗くて衣装も振付も風変わりで首を傾げた演出と受け取っていた点。
しかし今回2人とも、1幕終わった時点で大満喫していたもようで金曜日夜に鑑賞していた後輩に至っては、
ねずみ王でもう元が取れましたと幕間中に繰り返し語っていたほど。(先輩の立場を利用して強制礼賛させていたわけでありません。誤解無きように笑)
恐らくは、4年連続の上演によりダンサーの咀嚼も十二分に達した状態での舞台を鑑賞し、また客席もだいぶこのユニークにもほどがある演出に
慣れてきた空気感を醸していた点も一理あるかもしれません。同じ初鑑賞でも2017年の初演時の私とは
まるで正反対な反応であったのは大きな喜びと救いでございました。

珍しく男性アイドルの話題が飛び交った記事となりましたため、ふと過ったこと。
かれこれ3年前だったか、母から嵐の中で誰が好きかと聞かれ、返答に困りそれっきりでございました。皆さん個性がありますし
それぞれ魅力を備えている方々であるとは捉えておりますが胸がときめく対象ではないため回答を濁していたところ昨年2020年末を以て活動休止に。
顔や歌唱力ではなくアスリートの素顔に迫る番組『グッとスポーツ』の司会進行の良さから母は相葉雅紀さんが好きであると話しており、
少人数の5人構成でしたから1人ぐらいぱっと浮かばんかいと思ったらしい笑。
そうだ、5人の男性が並んだ写真と言えば新国立劇場バレエ団2019/2020シーズンガイドブックの巻頭であったか
主役が決まっていたダンサーが見開きで5人整列したページを開いて持ってきてくれたなら秒速どころか光速級の速さで回答できるのだが
そう上手くは歩めないのが人生でございます。





イーグリング版くるみ新国立初演の2017年に記念購入した宮崎駿さんが絵を手掛けた表紙の『クルミわりとネズミの王さま』。
ねずみのグロテスク感や目の光っぷり、イーグリング版と重なる描きかたです。
宮崎さんがホフマンの原作やバレエをモチーフに企画なさった三鷹の森ジブリ美術館でのくるみ割り人形展へはハイライト版も含むと会期中3回行きましたが
本の表紙にねずみ王を載せているなど、ねずみ王も主役と同等と捉えていらっしゃるのはイーグリングさんと似ていると再度思えた次第です。
表紙のアーチ部分にトトロやねこバスも登場しているのはご愛嬌。

2021年1月2日土曜日

謹賀新年2021




あけましておめでとうございます。昨年も訪問いただいた皆様、誠にありがとうございました。
世界全体が未だ光が見えず不安な状況にありますが、健康に気をつけ過ごして参りたいと思っております。
劇場での鑑賞が半減してオンライン配信や一昔前の映像鑑賞感想記に切り換えながらの更新となり
また昨年年始に現在の場所に移行しての再スタートとなった点が原因か否か、そうではなくもっと根本にあると自覚しておりますが
益々存在感埋没を突っ走る当ブログを訪問してくださった方は以前にも増して大変貴重な読者様です。本当にありがとうございます。
週1回程度の遅々たる更新になるかとは存じますが、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

ブログで最も重要であり強みであるのは「更新の速さ」であると思っており、発表会はそうあちこちの媒体には載りませんが
公演ならば終了から1週間もすれば新聞に、1ヶ月もすればダンスマガジン等にプロの批評家による完璧な公演評が掲載され、信頼度も強いのですから
それらの評を楽しみに目を走らせにいくのが当然な流れです。また早期の段階であっても現代は電子媒体も発達していますから
プロによる批評も一層素早いタイミングでの掲載も珍しい現象ではありません。
ですから素人のブログで大事であり読者の方や舞台をご覧になり気になった方々にとって重宝するのは
公演から日数が何日も経過しないうちに纏められアップされる「スピード万全」なブログであると思っております。
ところが当ブログ、国内の公演回数が少なかった昨年ですら鑑賞から1ヶ月経ち、
もはや誰も読みたがる人がいなくなった段階でのアップも1度や2度ではなく、続けている意義を自問自答する日もございました。
ただ待ち望んでいらっしゃる方が国内に3、4人ぐらいになるまでは継続し、また親族身内には7年前に一度予期せぬ形で
ブログが見つかったことがありましたが以降は関心を示していないようで未だ継続している旨も知らぬようですので
万一私が誰よりも先立ってしまったときのための忘備録としておくためにも変わらず続けていこうと思っております。

私の中で特に敬意を表すブログが2つありまして、スピード良し、中身濃く細かく、文章も見事な、言うなればファストフードと高級レストラン
各々の魅力を掛け合わせた内容であるため、我が脳内構造における元来の劣りと老いに伴なう衰えは致し方ないとしても、参考にして学んで参ります。

さて序文が長くなりました。年内最初の記事、誰も読みたがぬ路線増幅まっしぐらですが当ブログ年初め恒例、管理人の年末年始のぐうたら日記でございます。
お正月三が日にそんなもん読む気にならぬとのお方は恐れ入ります、2020年の締めと2021年の冒頭を彩った【お茶の間観劇】
或いは管理人の母によるイーグリング版『くるみ割り人形』鑑賞・忖度なし言いたい放題感想記まで今暫くお待ちください。

前年分にて触れた通り管理人は12月30日まで出勤のため朝は毎度のNHK報道番組を視聴しようとするも北野武さんドラマの再放送が始まり
他局の珍百景番組を視聴して駅へ向かうと休日ダイヤとなっている時刻表にヒヤリとしつつ無事仕事納めをして帰宅。
レコード大賞を途中から視聴いたしました。レコ大はここ数年は新国立劇場中劇場からの中継のため、舞台機構や客席の使い方が気になって観ておりますが
コロナ渦による観覧者入れずの開催であっても元々大勢は入れてはいませんし
スタッフの方々が細心の注意を払い神経を擦り減らしながら感染防止対策を図っていたであろう対応は重々承知しておりますが
出演者が着席時に間隔を取っていた点以外、目に見える大変化はなかった気がいたします。

無観客である条件をむしろ良い方向へと持って行っていた印象が強かったのが紅白歌合戦。
開始の19時半からゆく年くる年冒頭までチャンネル変えず見ておりましたが、毎度のオープニングでの客席ペンライトに代わり
客席上の特設舞台に内村さん、後方の本舞台上の左右に広がる湾曲した装置の上に間隔を空けて二階堂さん大泉さんが立ち、
立体感ある見え方。更には他のスタジオをも駆使し、余興排除のテンポ良い進行でこれはこれでシンプル明快で随分と好印象を持ったのでした。
曲目については、映画の影響でGENERATIONSはStar Travelingのほうが聴きたかったがヒットの具合など選定基準があるのでしょう。
五木ひろしさんの名曲と言えば『山河』よりも『千曲川』或いは『横浜たそがれ』
Mr.Childrenの曲ではTomorrow never knowsが傑作であると思っており、 こんなことばかりを言い走っているため年齢不詳と呼ばれるわけです。

ゆく年くる年を見ようとしていたものの、ジルべスターに変えて年越しはベートーヴェン。
ベートーヴェン生誕250周年記念行事が多数用意されていながら多くが中止となった2020年からの年越しに聴けたのはひときわ喜ばしいことでした。
そして2021年、順番失念いたしましたがシュトラウスのポルカ『雷鳴と 電光』『火の鳥』終盤部分2曲続けて鑑賞。
前者では元祖王子による欧州のダンサー以上に色男であった『こうもり』(プティ版)での名演ヨハンを、そして将来挑戦していただきたい新鋭王子による
役所或いは銀行勤務であり新聞がいたく似合いそうな 三面記事の隅々まで熟読しているであろうお父さんも想像。新国立での再演を待ち望んでおります。
そして火の鳥、そうであった諸々検索していてベジャール版のリハーサル映像に辿り着いた日こそ、
及び自身の中での公式なる虜の開始きっかけであったのはちょうど4年前の2017年元日であったと回想。
4年前のお正月後半仕事が入り、休憩時間中に動画鑑賞なんぞした経験がなかった私が衝撃が強過ぎた発見動画を繰り返し再生していた
それまでは考えられなかった行動は今も覚えております。
2016年の6月のトゥールーズに渡って観たいと渇望しており、タイムスリップできるなら鑑賞叶わせたい舞台上位3本に入っております。

さて話が鳥の如く飛びました。家飲みの習慣がなく、時々ちょこっと嗜む程度である管理人も元日のみ特別で、寝床へ3秒で着く狭き家の造りを良いことに
昼頃以降はテーブル上に置きっぱなしとなるワインや日本酒の瓶からお茶代わりに注いでは飲酒。
食堂のお茶状態と身内にも指摘されておりますが、気分転換且つ身体が温まるため洗い物を率先して行うも、
サッカー天皇杯決勝中のどこかの時間帯の約1時間は必ず昼寝に走る、どうしようもないぐうたら元旦です。

さて夜が訪れ、昔から元旦夜の楽しみといえば新春かくし芸大会、ではなくウィーンフィルニューイヤーコンサート。
こちらも無観客でしたが事前登録すれば第1部と第2部であったか拍手が演奏者達に聴こえるような仕組みを取り入れたり、
また恒例のバレエ場面は事前収録ができたようで華麗さに触れたひとときでございました。
今年は例年以上に賑やか晴れやかな曲が多かった印象です。
『春の声』などバレエ場面はさらっとしか観ておらず(出しっ放しの赤ワインを相変わらず味わっておりました…)
ラクロワによるデザインの衣装がお洒落やなあぐらいにしか鑑賞しておりませんでしたが
『春の声』を聴くと思い出すのはアシュトン版の振付における花咲か爺さんもびっくりな花撒きと
1987年のウィーンフィルニューイヤーでの指揮カラヤンと歌手キャスリーン・バトルによる共演。真っ赤なドレス姿のバトルの声量にたまげた記憶がございます。

話があちこちに飛びましたが、今年の干支「牛」は太古の昔私がバレエの発表会でも踊ったことがある役で、
半分黒歴史でありつつも半分はネタ扱いされて笑えた思い出深い役でございますが
その話は12年に1度の丑年である2021年の何処かの機会に綴って参りたいと思っております。
今年もぶっ飛んだ内容満載になる予感大でございますが、当ブログをどうぞ宜しくお願い申し上げます。


写真について、購入が遅れましたが既に3本は愛飲している福島の金水晶さん製造、
古関裕而さんをモデルに昨年NHK朝の連続テレビ小説にて放送された『エール』にちなんだお酒と
以前に展示会の仕事でお世話になった会津若松や会津坂下町の物産産業の出展者の方よりいただいた赤べこストラップで新春祝い。
赤べこさんは記念にずっと部屋のドアノブに掛けております。福島の飲食に興味があり、
ご自由にお取りくださいの文字近くに山積みになっていたグルメマップを1部いただければ幸いと話したはずが
赤べこストラップから喜多方ラーメン、起き上がり小法師まで手渡してくださり、恐縮しながらも感激でございました。
ここには写っておりませんが、我が家に2体あるうちの赤い白河だるまさんは、同じ展示会にて白河の産業機構関係の方からいただき大事にしております。

それから卒業した高校の校歌は古関さんが師と仰いだ山田耕筰さん作曲で、校歌では珍しい3拍子。
創立時は旧制府立女学校であったため優雅なワルツにしたとの噂ですが真相は分からず
ちなみに管理人は東京が府から都になった時代の卒業生ですので誤解無きように笑。
野球部の予選試合の応援演奏で出向いた球場にて耳にした勇壮な曲を見習い、校歌ももっと迫力のある歌のほうが
相応しかっただろうにと感じておりましたが、『栄冠は君に輝く』作曲者古関さんが山田耕筰を慕っていたと知ったのは『エール』放送にてでした。
山田さんがドラマでどう描かれるか気になっておりましたので、志村けんさんによる気難しい人物熱演が脳裏に残っております。

鏡餅は家族が近所で購入がしてきましたが、鶴の結び紐が嬉しく、『竜宮』第3浦島太郎を思い出してはニンマリしております。