2026年9月3日木曜日

伝田さんのメドーラデビュー 東京バレエ団『海賊』 8月26日(水)




順番前後いたしますが(いつまで続くか??)8月26日(水)、東京バレエ団海賊を観て参りました。
これまで2019年、2021年に東京文化会館で観ておりますが今回は新国立劇場での開催です。
https://thetokyoballet.com/performance/lecorsaire2026/


音楽:アドルフ・アダン、チェーザレ・プーニ、レオ・ドリーブ、リッカルド・ドリゴ、ペーター・フォン・オルデンブルク
振付:アンナ=マリー・ホームズ(マリウス・プティパ、コンスタンチン・セルゲイエフに基づく)
台本:ジョージ・ゴードン・バイロンの叙事詩「海賊」(1814)に基づく
編曲:ケヴィン・ガリエ
装置・衣裳:ルイザ・スピナテッリ
装置・衣裳協力:ミラノ・スカラ座

メドーラ:伝田陽美
コンラッド:柄本 弾
アリ:池本祥真
ギュルナーラ:三雲友里加
ランケデム:樋口祐輝
ビルバント:鳥海 創
アメイ(ビルバントの恋人):政本絵美
パシャ:山田眞央
パシャの従者:小泉陽大

第1幕 賑やかな市場
海賊たち:大塚 卓、井福俊太郎、安村圭太、二山治雄、山下湧吾、南江祐生、岡﨑 司、後藤健太朗
海賊の女性たち:足立真里亜、加藤くるみ、中沢恵理子、工 桃子、長谷川琴音、安西くるみ、長岡佑奈、橋谷美香
オダリスク:涌田美紀、平木菜子、中島映理子

第2幕 海賊が潜む洞窟
海賊たち:大塚 卓、南江祐生、岡﨑 司、後藤健太朗 海賊の女性たち:加藤くるみ、中沢恵理子、工 桃子、安西くるみ

第3幕 パシャの宮殿
薔薇:金子仁美、足立真里亜、中沢恵理子、工 桃子、長谷川琴音、安西くるみ
花のソリスト:二瓶加奈子、加藤くるみ、長岡佑奈、橋谷美香、富田紗永、五十嵐玲奈

指揮:ギャヴィン・サザーランド
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
協力:東京バレエ学校



ロールデビューとなった伝田さんのメドーラは卓越した技術が光り、ただテクニック披露ではなく場面毎の色付けもお見事。
パシャの前での堂々と可愛く振舞う愛らしさからコンラッドに出会うロマンティックな恋心の昂りまで、鮮やかに描画しながら物語を牽引です。
とにかくメドーラってこんなに踊る役であっただろうかとほぼ舞台上にいて、衣装もクラシックチュチュもあればふんわりスカートもあり、
ハーレムパンツもありで衣装種類も全て異なるデザインながら、どの場面も海を泳ぐようにスイスイと滑らか軽やかな踊りで魅せる活躍。
ガラでは定番の洞窟のトロワ(ガラでは大概パ・ド・ドゥだが)もステップ1つ1つが潔さと優雅さを備えていて、明快に語る踊りに感嘆するばかりでした。

そしてメドーラの出番に拍車をかける花園も、音楽を吸っては高らかに放つような緻密で美しい踊りの連鎖。
失礼ながら当初ピンクの衣装はどうかと思っていたのだがとんだ失礼で、艶やかに舞う大輪の花でございました。
コンラッドへの恋や、彼がピンチのときのビルバントに傷害与える大胆な行動も健気。
あらすじがあるようでないと言われがちなこの作品にて、それゆけメドーラの大冒険なるステージを見せてくださり、全幕で観る面白味を再発見いたしました。

コンラッドの柄本さんは、踊りのキレ等はやや控えめになってきたものの、我らがリーダーな存在感はピカイチ。
優しく慕われているが抜けた部分もあるのがまた人間味を感じさせて、作品の温度をしっかり上げていた印象です。
そして鳥海さんのビルバントの迫力やギュッと辛味を凝縮したようなオーラも忘れ難く、
身体はかなりがっしりとなさっていながら踊りは軽快でびっくり。特に政本さんのアメイと共に群舞率いる場は
何処を切り取っても張りと締まりがあり、序盤からはち切れんばかりのエネルギーが大充満していきました。初日だからまだ全体が硬い、なんて事態は一切なしです。
コンラッドに対して、常日頃から不満を募らせていたのであろうと想像がつく秘めた野心も仕草やちょっとした表情からつらつらと伝わり、
展開は把握していても手に汗を握らせる行動で緊迫した裏切りを演出なさっていました。
奴隷商人ランケデムの樋口さんは、ふわっと浮くジャンプで沸かせたかと思えば悪どさよりもギュルナーラ始め娘たちの美貌を見て欲しいと
市場の商人そして客席にも猛アピールしていてなんだか憎めずチャーミング。
そして静けさの中から厳かな熱さを見せていたのは池本さんアリ。出番こそ少なくても修行僧の如くストイックな立ち居振る舞いでコンラッドに仕え
大定番のヴァリエーションも厳粛な空気を纏いながらの超絶技巧の繰り出しで、物語を大事にしたテクニック炸裂で好印象でした。

人身売買に奴隷と、現代の人権感覚では許し難い行為や描写の連続で、東洋に対する偏見イメージもあちこちで描かれており、ライモンダと同様欧州では上演しづらい作品でしょう。
しかし人攫いも救出も現実ではあり得ぬほどにスピーディーに対処して笑、大勢で畳み掛けるパワフルなキャラクターダンスや
お盆の高速道路も仰天であろう舞台がピンクの大渋滞となる花園の壮麗でシンメトリーな美しさなど、踊りの見せ場を前面に出しているためか鑑賞後は不思議と爽快な気分。
精鋭揃いで勝気な魅力も突き出したオダリスクのトリオに、花園は明るく弾ける優美さが連なって目にも麗しい。
女性の立場の弱さを露呈したあらすじではあっても、観ていて決して後ろ向きな気持ちにはならず、描き方も工夫されていると捉えております。
仕事帰りのぎりぎり到着で鑑賞しても展開が進む度に活力が沸いてしまい、東京バレエ団の全幕レパートリーの中では一番好きな作品です。

衣装の曲線や抑えたある色味で彩られたデザインに、もしやと思ったら手掛けたのはルイザ・スピナテッリさん。
メドーラのトロワでのチュチュはもう少しキラリとした装飾があるほうが好みとは思えたものの、新国立のライモンダと同様、
色の組み合わせや繊細な模様をあしらった衣装の数々はいくらでも眺めていたくなります。
初日開幕以降も連日大盛況だったもようで、これからも人気作品として再演を重ねて欲しいと願います。




船をイメージしたフラワーアレンジメント。


垂れ幕。東京バレエ団新国立劇場シリーズとは、こんな名称を冠したシリーズが誕生するなんて。以前の理事長は空の上でどう感じていらっしゃるでしょうか。



オネーギンポスター登場。


タイムスケジュール



キャスト



ピンクチュチュ



紫チュチュ


オネーギンについての説明パネル。14年ぶりの再演です。



11月、楽しみにいたします。しかし会場となる初台を本拠地としている団に、
オネーギンぴったりなお方がいらっしゃると思います。冷淡でツンと澄ましたお顔なんて、心射抜かれそうです。



海らしい色彩な翠で乾杯!

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