2022年3月31日木曜日

全身に訴えるトリプル・ビル スターダンサーズ・バレエ団   DANCE SPEAKS  2022  3月26日(土)





3月26日(土)、スターダンサーズ・バレエ団   DANCE SPEAKS 2022を観て参りました。
https://www.sdballet.com/performances/2203_dancespeaks2022/


セレナーデ
振付:ジョージ・バランシン
音楽:P.I・チャイコフスキー   弦楽セレナーデ
演出・振付指導:ベン・ヒューズ

今や国内の様々な団にレパートリー入りしている作品ですがスタダンによる上演の鑑賞は初。
勢いで活気付き、序盤から押し迫るスピードも十二分でバレエ団初演から来年で40年となる国内における長き継承の誇りが伝わる力演でした。
中でも喜入さんの芳醇な色気、軸の強さから繰り出すしなやかな踊りが目に残り全体を香り立たせる空気を纏う姿に魅せられ
渡辺さんの優美で透明感が微風のように靡くステップやパートナーと優しく交わし合う視線にもうっとり。
力みのない瞬発や抜群の軽快感で率いる塩谷さんの技術の高さからも目が離せませんでした。



Malasangre   マラサングレ
日本初演、貞松浜田バレエ団との共同制作作品
振付:カィェターノ・ソト
音楽:ラ・ルーペ
演出・振付指導:新井美紀子

ソト振付の新作上演と知って以来、胸躍らずにいられずにおりましたが期待以上。
ラ・ルーペの奔放な歌声とダンサーの可動域豊かな身体が溶け合ってノンストップで駆け抜け、瞬きも惜しい展開を見せていました。
ノリの良さの中からチラリと覗く皮肉めいた黒い魅力が刺激を誘う作品です。
ベージュと黒を基調にした衣装も粋で、男性がスカート状、女性はベージュの短い丈のパンツに長い黒ソックス。
黒みがかった照明にダンサー達がぽっかりと浮かび上がる演出も実にスタイリッシュでございました。
元々創作公演の回数が豊富で現代作品も意欲的に上演を重ねている貞松浜田バレエ団との共同制作である点も興味を惹く要素で
関西関東それぞれ昔からコンテンポラリーに強いカンパニーの共演により互いにレベルを引き上げていた印象です。
貞松浜田バレエ団の水城さんは関西や四国の公演、発表会において度々拝見しておりますがこんなにもコンテンポラリーで輝くダンサーであるとは知らず
音楽に機敏に反応して体現する身体能力の高さ、大胆に斬り込んではっと唸らせる踊りに驚くばかりでした。
そういえばラ・ルーペの音楽、カルディーコーヒーファームの店内で流れていそうな印象も抱いた次第。



緑のテーブル
台本・振付:クルト・ヨース
作曲:フリッツ・A・コーヘン
美術:ハイン・ヘックロス
マスク・照明:ハーマン・マーカード
舞台指導:ジャネット・ヴォンデルサール
舞台指導助手:クラウディオ・シェリーノ
照明再構成:ベリー・クラーセン
ピアノ:小池ちとせ、山内佑太

戦争に対する批判を描いた作品である点ぐらいしか予備知識無しで鑑賞に臨みましたが、予想を遥かに超える重たい悲しみがのし掛かる作品でした。
まず死の役にて池田さんの覆い尽くす力が突出。風変わりな模様のメイクに黒白の全身タイツ姿で度肝を抜かれたのも束の間で
舞台を重々しい空気に変えていく力演に客席から立ち上がりそうになるほど引っ張られ、死へ向かう恐怖感や胸の内を痛ましく抉られるような心持ちとなりました。
悲痛な叫びがこだまするかの如く、悲しみを全身で表すフルフォードさんの女も目に焼き付いております。
終始ピアノ2台で演奏される音楽からも衝撃を受け、幕開けの洒脱で軽やかな曲調には拍子抜けするほどでしたが
会議に出席する紳士たちの奇妙なステップが滑稽にも見え、生温い環境にて卓上会議を行うだけで
戦地に赴かぬ戦争開始指示者達への痛烈な批判を示しているとすぐさま把握できた次第。
他人事のように進行する会議の様子が続くかと思えば出征のために引き裂かれていく人々の場面へと移り変わり、そして再び会議に戻って
戦争の愚かさを劇中で訴え続け、隙が微塵もない展開に終始集中して観るほかありませんでした。
以前の上演関連記事に目を通してから作品には関心を持ち、観たいと願ってはおりましたが
まさかウクライナ侵攻の報道に連日心が痛む日々に鑑賞するとは思いもよらず。
世界中から戦争がなくなった状態でこの作品を鑑賞できる日が、現実味を感じずに鑑賞できる日がいつかは訪れるのか。ヨースは今も問いかけているに違いありません。

作風はどれも異なっていても音楽を身体で視覚化しスピード感とパワーで突っ切る美しさ、大胆で少し捻くれた魅力、そして戦争への批判と全身に強く訴えかけてくる3作品で
バレエ団の誇りと底力が存分に発揮されたトリプル・ビルでした。
尚、貞松浜田バレエ団との共同制作やこの情勢下での『緑のテーブル』上演の事情もあり、この公演は翌日出向いた関西でも大きな話題となっていました。
実現は困難であるのは承知しておりますが、『緑のテーブル』や今回のようなトリプル・ビルの全国公演実施も願っております。




お昼は劇場横のイタリアンにて食事。天井が高く開放感のある店内です。桜のペーパークラフトを背景に春キャベツのクリームパスタ、気分も春めきます。
同じ日に鑑賞した公演や私が鑑賞叶わなかった公演等お聞かせいただき、また2度に渡る我がズンドコドッスンな出来事も聞いてくださり笑、楽しき昼でございました。
そういえば、このお皿にはファルファッレのパスタが、マラサングレの舞台には黒い蝶が敷き詰められ、前者は春の息吹を思わせ、後者はルーペの最期に寄せた演出とのこと。



小サイズのデザートもあり、迷っていたところお店の方の一押しと伺いカッサータを選択。
チーズ入りの爽やかなアイスで縁にはオレンジが付いていて何とも清涼感のある味わい。気に入りました。



帰りはカウンセラー友人と芸術劇場1階のベルギービール店へ。ビールの種類多数で迷いましたが変わった色味のこちらに。
以前にも訪問し、ベルリオーズの半生を描いた松崎すみ子さん振付『幻覚のメリーゴーランド』では
解説に「幻覚」の文字が記されたアルコール度数強度な種類を、NBAバレエ団『HIBARI』では真っ赤な太陽を彷彿する赤色のビールを呑んだ記憶がございます。
友人は甘口ジンジャエールを選択です。普段は呑気にもほどがある管理人ですが諸事情で神経が張り詰め
身体にまで影響が及んでしまった今月、相談にのっていただき深謝。この日は心和むひとときでございました。
そういえば、近年「チラシ」の呼称が握り、ではなく(当たり前だ)フライヤーらしいのだが
古い人間な私の中ではポテトが入ったこの入れ物に似た揚げ物容器しか思い浮かばず笑。翌日西側で話題となりました。

2022年3月29日火曜日

中止から一転しての無事来日グループ公演   シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち    3月21日(月祝)





3月21日(月祝)、シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたちを観て参りました。(感想短めです。お急ぎの方もご安心ください)
当初はバレエ団としての全幕物2本の上演予定が一旦は公演中止が発表されたのち、
グループ公演としてのガラならば可能であるとして内容を大幅変更。情勢が益々不安になる中でしたが無事来日し実現に至りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2022/stuttgart-gala/index.html


「ホルベアの時代」より
振付:ジョン・クランコ
音楽:エドヴァルド・グリーグ
アグネス・スー   マルティ・フェルナンデス・パイシャ

トップバッターとして登場。青いレオタード系シンプル衣装で、ちょいと長い気はしたが、爽やかな風を吹かす幕開けで宜しうございました。


「椿姫」より
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
ピアノ:菊池洋子
エリサ・バデネス   デヴィッド・ムーア

当日になって開演前の放送で変更案内。当初の予定『オネーギン』の作品や音楽好きとしては残念であったが
儚さ抑えめマルグリットと朴訥感の強いアルマンの白のパ・ド・ドゥまあ良いか。


「ソロ」
振付:ハンス・ファン・マーネン
音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ
ヘンリック・エリクソン   アレッサンドロ・ジャクイント   マッテオ・ミッチーニ
バッハの鋭い音色で駆け抜けるテンポの曲にのせて3人の男性によるソロもあれば揃っての登場もあり。
入れ替わるときにはバトンを手渡すように出迎えてから引っ込むため、滑らかに繋がっている面白さがありました。


「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ロシオ・アレマン  マルティ・フェルナンデス・パイシャ

可愛らしく初々しい2人。クランコ版ならではの赤いラインの入ったジュリエット衣装がよくお似合いでした。
東京バレエ団のよるクランコ版ロミジュリも楽しみです。


「白鳥の湖」より黒鳥のパ・ド・ドゥ
エリサ・バデネス   デヴィッド・ムーア
振付:ジョン・クランコ   (マリウス・プティパに基づく)
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

2018年にクランコ版『白鳥の湖』全幕を観たが、黒鳥のパ・ド・ドゥにてオディールが大概は王子のヴァリエーションでの曲で踊るとは驚き。
喰われそうなバデネスオディールでございました。


「Ssss…」よりソロ
振付:エドワード・クルグ
音楽:フレデリック・ショパン
マルティ・フェルナンデス・パイシャ
ピアノ:菊池洋子

ショパンの叙情性溢れる曲の中で戯れながら希望を見出すように広がりを見せていく展開に引き込まれました。


「コンチェルト」
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィッチ アグネス・スー  クリーメンス・フルーリッヒ

この作品がレパートリーにあったと初めて知った次第。太陽のような背景にオレンジ色の簡素な衣装が見栄えし
静謐さと情熱が入り交じりながら紡いでいくパートナーシップも好印象。


「スペル・オン・ユー」
振付:マルコ・ゲッケ
音楽:ニーナ・シモン
マッケンジー・ブラウン   ヘンリック・エリクソン
アレッサンドロ・ジャクイント  マッテオ・ミッチーニ

紅一点のブラウンの颯爽とした踊りっぷりが爽快で黒パンツもお洒落な着こなし。


「うたかたの恋」より第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:フランツ・リスト
編曲:ジョン・ランチベリー
エリサ・バデネス   フリーデマン・フォーゲル

目当てでもあった演目だが、本日の白眉。歪みへの極致へ達する駆け引きに益々全幕が観たくなり
服を脱がしかけるきわどい表現や突如の銃声も狂おしさの嵐の延長に思える怒涛の展開。フォーゲルが描き出す陰険なルドルフのその後も気になり
最初の予定にあった通りいつかバレエ団来日公演にて全幕実現を願います。


「ボレロ」
フリーデマン・フォーゲル
樋口祐輝   玉川貴大  大塚卓  岡﨑司
東京バレエ団

シュツットガルトの来日でベジャール作品を目にする日が来るとは思いもいたしませんでしたが特別許可を得ての上演。
フォーゲルのメロディは派手な発散型ではなく丁寧に美しく刻んで行く印象で、背中の1ミリも脂肪が無いであろう締まった体型にも年齢を考えると恐ろしや。


何の予習もせず出向いてしまい、『うたかたの恋』、『ボレロ』、『オネーギン』(変更になってしまったが)以外は
会場に到着してから構成を知るシュツット入門者な姿勢で鑑賞に臨みましたが、クランコ作品から現代物までバランスの取れた内容を堪能。
バレエ団としての来日は叶わずであっても、現況でも可能な上演を模索しての実現に敬意を表さずにいられません。
カーテンコールでのメッセージ投影の通り、次はバレエ団の来日公演願わくは『うたかたの恋』が上演できますように。




約33年前、ホルベアの時代を踊る芸術監督タマシュ・デートリッヒの現役時代。



帰りはドイツビールを飲みにこちらへ、黒ビールで乾杯。ラベルの色味がボレロです。



お通しの燻製チーズ。煙が上がっております。



冷製ソーセージ。ブルーベリージャムと合わせると、しょっぱさと甘さの往来となって面白い相性でございました。

2022年3月27日日曜日

吉田早織さんの主役デビュー   Kバレエカンパニー『ロミオとジュリエット』3月20日(日)昼






3月20日(日)、Kバレエカンパニー『ロミオとジュリエット』昼公演を観て参りました。
https://www.k-ballet.co.jp/contents/2022romeoandjuliet

ロミオ:堀内將平
ジュリエット:吉田早織
マキューシオ:金瑛揮
ティボルト:石橋奨也
ベンヴォーリオ:奥田祥智
ロザライン:浦邉玖莉夢
パリス:田中大智
キャピュレット卿:グレゴワール・ランシエ
キャピュレット夫人:山田蘭
乳母:辻久美子
僧ロレンス:ニコライ・ヴィユウジャーニン

吉田さんは意思強く闊達なジュリエットで堂々の主役デビュー。少し粗削りな箇所もあったにせよ、ひたむきで恋に恋する少女を造形され
無邪気に隠れながら乳母を驚かす剽軽な少女が一気に階段を上がって別人のように大人びていく様子を線の強い、しっかりとした踊りで魅了。
当初プロフィール等の写真からボーイッシュな印象があり、貴族令嬢のジュリエット役の想像がなかなか沸かずにおりましたが大変な失礼な思い込みで
舞踏会を暫し上の階から眺める気位の高い顔付きやロミオに引き寄せられ今にも吸い込まれそうになっていても
凛然とした立ち姿が目に残り、それはそれは美しい貴族の娘でございました。

関野さんの代役として登場された堀内さんのロミオに柔らかく包まれたバルコニーでは沸き立つ愛を描き
まだ躊躇していたジュリエットがみるみると殻を突っ切り喜びを露わにしていく昂りが生じた場面と化。
ロミオが心を許したくなる存在であると確信するジュリエットの心が見えたひと幕でした。
吉田さんは新国立劇場バレエ研修所、バレエ団の出身でその後は東京バレエ団を経てKバレエカンパニーへ移籍。
紆余曲折ありながら念願の主役デビューが実現し、誠に喜ばしい記念日となりました。
ジュリエットデビューについては新国立バレエ研修所ホームページにも吉報として掲載されています。
 https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/training/news/detail/27_022286.html

特に目を惹いた1人がロザラインの浦邉さん。輪郭のくっきりした踊りで魅せ、貴族の娘が庶民との争いに走る経緯が今ひとつ分かりにくいのだが
描写背景はともかく、上品化したロマ風な衣装も横に置き、小林美奈さん率いる強面なヴェローナの娘たちとの舞踊と体当たり対決もお手の物。
大概はキャピュレット夫人が絶命したばかりのティボルトに居合わせる場も熊川さん版はロザラインが登場し、剣を手に目が据わった表情で暴れ狂い
それまでの華やぐ美女から一変。そこへ上の階からキャピュレット夫妻が眼下の凄惨な光景を嘆く様子が覆い、何重にも悲嘆が畳み掛ける幕切れでした。

山田さんのキャピュレット夫人も忘れ難く、ルネサンス貴婦人画の如き美貌と静かな迫力で場を支配。一見冷徹そうで時に氷のような微笑も恐ろしや。
しかし愛娘ジュリエットの死に直面した途端、大袈裟に絶叫せず徐々に崩れ落ちる姿からは人間の体温が伝わり、
本来は心優しさを持ちながらも日頃から神経を張り詰め名家の夫人としての威厳を維持していたかと推察いたします。

恐らくは他版ではこれといった大きなソロが見当たらぬベンヴォーリオにも見せ場が与えられ、マンドリンの場面にてリード役を担当。
作品中の貴重な穏やかな平和場面に似つかわしく、奥田さんが弾むように軽快な踊りで場を引っ張っていらっしゃいました。
線が細そうかと思ってしまった金さんマキューシオは踊り出すと細かなステップもするする滑らかで驚かされ、
見るからに暴れん坊貴族ではなさそうでおとなしそうな石橋さんティボルトの
静けさから徐々に嵐を巻き起こして行くような怒りの滲ませっぷりがかえって恐ろしく映りました。

全2幕に纏め上げ凝縮したスピードで展開していく点や、冒頭にマンドリンの音楽を取り入れてロミオに光を当て
ロミオの何処か寂しがりやで初心な面を目にして引き込まれる効果もある演出や
ロミオとジュリエットが至近距離ではなく階上と階下で、舞台全体を大きく使って見つめ合う出会う場面も気に入っており
2018年の浅川紫織さん宮尾俊太郎さん主演公演に続き、今年は吉田さんの主役デビュー公演にて目にでき嬉しい熊川さん版『ロミオとジュリエット』でした。




帰りは渋谷駅のヒカリエすぐそばにて、赤を基調としたイタリアンにて赤ワインで乾杯。
16時半頃は空いていましたが17時以降はお客様の数も増え、以前利用して料理も居心地も好印象を持っていたため一安心。



前菜盛り合わせ。大きめの生ハムに、オリーブがごろごろ入っていて嬉しい。



名物のスペアリブ。ほろほろと裂けるお肉と下に敷かれたマッシュポテトとの相性も宜しうございます。

2022年3月24日木曜日

【人生初】【2週連続は12歳以来】アーキタンツにてレッスン受講

珍しく今回も有酸素運動記事です。
3月19日(土)、初めてスタジオアーキタンツに行き渡邊峻郁さんが講師を務められたレベルフリークラスのレッスンを受講して参りました。
2週連続でのレッスンは太古の昔、12歳の頃以来でございます。JR田町駅下車も人生初。これで下車経験のない山手線の駅は高輪ゲートウェイ1駅となりました。
http://a-tanz.com/

http://a-tanz.com/ballet/2022/03/19105334










アーキタンツのホームページ閲覧も初で、レベルフリークラスとは何ぞやと最初は思ったわけですが
その名の通り初級から上級者まで基本誰でも受講可、初級よりは難易度は高めであるもよう。
上級者も受講対象ですから初級の中でも底辺住民である私なんぞ行っても問題ないのか、
それ以前にアーキタンツはプロも多数受講と耳にしており敷居が非常に高いスタジオのイメージがありましたから
お問い合わせはお気軽にとの文言に甘えて電話で問い合わせをし、疑問を聞いていただきスタッフの方が親身に対応してくださいました。
レベルフリークラスの実態を知りたいと突如の電話にも拘らず、その節はありがとうございました。
そして友人にも聞き込みを行い(まるで刑事)、不安はあっても滅多にない機会でせっかく1週間しか空かずに
レッスンに行くタイミングが12歳以来何十年ぶりに訪れる、しかも同じ先生が担当なさるクラス受講と思えば運の巡り合わせと捉え
またアーキさんに電話をしている時点で興味はある証であろうと、受講決意に至りました。

実際に受けてみますと、まずバーから複雑で管理人のただでさえ薄く小さな脳みそは前半から燃え尽き状態汗。
序盤は前週と似ている部分もありと記憶が自然と掘り起こされたものの軸足どっちや、2回?3回?もう分からへん、と
中盤以降は頭は悲鳴を上げ身体は決壊しておりました。(レッスン時の心の呟きは諸事情により西の言葉が多めに飛び出しますが悪しからず)
これまでに度々お世話になっている先生もこの姿をご覧になったら肩を落とされるのは想像に難くなく
万葉の都から法隆寺の鐘が何度も虚しく悲哀を帯びて重々しく鳴り響いていた気がいたします。

四苦八苦したとは言え、見る限りでは組み合わせ次第で精巧なパズルを嵌めていくような光景を眺める気分となり
何より渡邊さんがなさればそれはそれは美の連なる芸術品に見えてくるわけですから不思議なものです。
それからスタジオが大変広く(声を大にして申したいがこれ大事!!)、センターにて壁追突の心配や飛距離計算は無用で
ひとまず面積不足事故は今回発生せず一安心。受講者数は約20人だったかと思いますが、踊るときも待つ時間もスペースに余裕がありました。

前回に引き続き一通りきちんと覚えられたのは最後のジャンプのみで、我が妹が嘗て愛読していた
週刊漫画雑誌名であるから、ではなく全編通して一番シンプルであったためですが(渡邊さんに対しシンプル祈願の念力を送っていた私をお許しください)
何と音楽が『ダイアナとアクティオン』コーダ音楽。管理人、今月の自転車走行時に脳内旋回する音楽第1位曲で、晴れやかな心境で締め括りジャンプでございました。
気持ちだけでも風を突っ切るアクティオンで跳ぶでーと思ったのも束の間、右はまだしも左は着地の足を間違え、空中分解で終了。人生はほろ苦しです。
されど渡邊さんのアクティオンジャンプを間近で拝見できたこと、勿論レッスンでの教え方やお手本全て含め
1週間も経たぬうちに再び宝物が増えた、いたく尊い2022年3月でございます。

そして今回もピアノ伴奏付きで(グランドピアノです)榎本真弓さんによる伴奏も嬉しく、バーにてエフゲニー・オネーギンのポロネーズだったかと思いますが
帝政ロシアの栄華なる舞踏会或いはバレエアステラスのオープニング特に昨夏公演が過ぎりそうになったもののそんな暇はなく
しかしバレエ音楽ではないながら 心から好きな曲でレッスンでき一瞬歓喜に浸りました。(そして順番が覚えられぬ現実よ)
前回のレッスン記事でも書き連ねましたが大人になって再開したお世話になっているスタジオが(2年以上ご無沙汰でそれまでも年1、2回程度の受講頻度)
毎回ピアノ伴奏付きで 舞台の照明合わせや留学オーディションワークショップ等の開催会場としても使用されるほど
広々とした面積で天井も高い作りであるため、アーキさんの1スタジオは思い起こされる部分もあった印象です。

恐らくはレベルフリークラス開設以来の上級者と初級者の落差が激しい構成であったのは明らかですが(原因は初級最下層民の私でございます)
大変広いスタジオで上級者とも一緒に受け、バーにしてもセンターにしても繋ぎ部分に至るまで
隅々までしなやかで美しい渡邊さんのお手本をたくさん目にでき学びが詰まった時間でした。
初級クラスではないため進行は前週より早めでしたが、要所要所で注意点をじっくりと説明する時間を設けて
大変丁寧な進め方をしてくださり、聞き逃し見逃しのないよう耳も目も大稼働。
センターにおいても説明しながらダイナミックに動いてのご指導はマスク装着状態ではお辛いときもあるでしょうに、終始全力ご指導。頭が上がりません。

敷居が高い印象を持っていた初訪問スタジオで、また前回もそれ以前も初級しか受講経験がない者からすると想像がつかぬクラスで緊張度は前回を遥かに上回り
おまけに新宿駅から田町駅まで長い笑。1人山手線路線図観察をしつつ渋谷を過ぎた辺りからお腹の締め付けが強まり、
五反田駅では私の両隣にお連れ同士が腰掛けたため席を交換するやりとりで少し解れたものの
本日は下車して清泉女子大学での生涯学習講座にてバレエ作品の歴史背景を学びに行くのではないと言い聞かせ
高輪ゲートウェイ駅で緊張のメーターが欽ちゃんの仮装大賞の得点パネル点滅の如く満点に到達。
そして田町駅から移動し、最初は入口が分からずセミナー開催の部屋の前を右往左往で開始前から不安が山積みでしたが
更衣室の使い方を説明してくださるスタッフの方も優しくご親切。
終了後は前回以上に反省点ばかりが延々と脳裏を過ぎるばかりで、難しさは承知の上で受講いたしましたが
緊張していたとはいえ受講態度等に問題なかったか云々と帰宅後入浴中に気づけば1時間半反省会継続。
心のみならず身体までもが沈みかけ鼻の下あたりまでお湯に浸かってしまい危ういところでございましたが
12歳以来まさかの2週連続しかも渡邊さんが指導されるクラスを受講。日頃鑑賞中心生活者としては珍しいそして幸運なレッスンでした。

尚、今回も1時間半動いても疲弊した頭に対して身体は全く疲労感はなく、この2年間それ以前もこれと言った運動習慣が無いのだが、
子供の頃や若い頃に比較しても現在のほうが疲れにくく、直近何年間かの年間平均80回に及ぶ
鑑賞や旅や、そして憧れの渡邊さんを間近で拝む幸福も好影響なのでしょう。中高年のいずれかに属する年齢であっても至って丈夫らしい。
丈夫な点、及び12歳の頃より現在の身体の重量数値は低いため動きやすいのは喜ばしくても見た目も踊りもズンドコドッスンで要痩身。
鑑賞と異なりレッスンでは全身晒して容姿のみならず頭の中身も問われ現実を突きつけられ、人生どうしたものか。
全身を駆使して知力も問われて美を追求する、本来であれば自身で取り組むには私に最も不似合いな芸術分野であるバレエ。
発表会の我が醜き姿に絶句して以来幼き頃から観る方向に走りがちであった経緯をそのまま引き摺り、課題は尽きずどこまでも続きそうです。ああ。


アーキタンツ代表でいらした福田友一さんの鳴門のご実家の味噌蔵で作られたお味噌を販売と事前に知り、
購入を検討し出発前に冷蔵庫に昆布と鰹節の在庫まで確認していたにも拘らず神経の張り詰めですっかり飛び、購入できず。次回こそ購入です。
味噌蔵福田商店の位置を地図で見ると、過去4回訪れた鳴門市文化会館から遠くはない場所のようで
鳴門駅から撫養川沿いを歩いていくと気持ち良いデッキのような広場もあり、散歩にも適した道でした。
鳴門税務署近くのBuboのカレープレートやピーベリーの生クリーム山盛りなロシアンコーヒーも思い起こされます。
鳴門と聞くと渦潮や鯛、ワカメがすぐさま思い浮かびますが、お味噌も味わいたくなります。
生まれも育ちも東京で都外在住経験無しのはずが、ここ数日東大阪や鳴門の回し者の疑念を持たれても仕方ない内容が続いておりますこと、お許しください。
http://a-tanz.com/staff-blog/2022/03/14205103




自宅にあった東京ブルースビール。妙に親しみ深さを感じる西田佐知子さんの名曲が浮かびますが
コーヒールンバのほうが好みでございます。 お若い方はどうぞ自力でお調べください。
それはさておき音楽を感じながら踊れる日は、加えて脱ビール樽体型の日も到来するのでしょうか。

2022年3月20日日曜日

【注目】【公演間近】Etsuko Yamamotoアトリエ公演








3月27日(日)、Etsuko Yamamotoアトリエ公演が大阪国際交流センター大ホールにて行われます。構成演出振付はEtsuko.BALLET School主宰の山本悦子さんです。
http://etsuko-ballet.jp/instructor/index.html


ブログに詳細が紹介されています。
http://etsukoballet.jugem.jp/?eid=19&pagenum=1#gsc.tab=0


エツコバレエさんのブログ。アトリエ公演の写真付きリハーサルレポートもたっぷりです!
http://etsukoballet.jugem.jp/#gsc.tab=0


3月15日記事、豪華な皆様集合!!
http://etsukoballet.jugem.jp/?eid=64#gsc.tab=0


当方があれこれ説明するまでもない、豪華な実力者が集結する大変魅力的な企画で、間近に迫っていますがお時間の許す方は是非足をお運びください。
生ピアノ付きで踊られる作品が豊富で、ピアニスト山本規子さんが奏でるピアノとダンサー達の化学反応が楽しみでなりません。
山本隆之さんに佐々木大さん、青木崇さんに末原雅広さん、とスターの集いなる方々に
古典もコンテンポラリーハイパーテクニシャンな石川さん(特に石川さんのコンテンポラリーは凄腕級で、矢上恵子さん作品を踊る姿を関西で度々拝見)、
そして昨春の山本さん版白鳥の湖にて、山本さん独自の解釈で生まれたプロローグや湖畔にも登場するオディールを妖しくもパワフルな
説得力に富んだ美しさで魅せた伊東葉奈さんのご登場も嬉しい限りです。

ゲストとしては、新国立劇場より米沢唯さん速水渉悟さんが招かれ、山本悦子さん版じゃじゃ馬ならしを披露なさるとのこと。どんな作品がお目見えするのか、わくわくいたします。
http://etsukoballet.jugem.jp/?eid=35#gsc.tab=0

チラシを眺めるだけで興奮そのままに書き連ねてしまいましたが、管理人にとって最大の楽しみは山本隆之さん規子さんの共演。
恐らくはお初で、目撃者となっただけでも本日3月20日の如く、祝杯をあげてしまいそうです。

尚照明合わせ他、リハーサル記事でも何度か登場している新国立劇場バレエ団のポスターが貼られたスタジオ は東大阪に位置するガレージアートスペースさん。
とにかく広く(これ大事です)、天井も高くグランドピアノの響きが隅々まで広がる開放感あるスタジオで、こちらで山本隆之さんのレッスン(現在は平日の初中級中心)が
定期的に開催されています。勿論規子さんのピアノ伴奏付きで、心地良さをオアシスに例える方もいらっしゃり、納得でございました。
付け加えますと、スタジオと最寄り駅の間にある海鮮レストラン魚輝水産高井田店もおすすめでございます。鮮度良く値段は手頃で、お近くにお越しの際はお立ち寄りください。
生まれも育ちも住まいも東京ながらチャコット本店移転先として話題の代官山より東大阪の高井田駅周辺の方が遥かに詳しい管理人による
謎な東大阪回し者疑惑が浮上しそうな紹介はさておき、関西そして新国立から豪華な方々が集結し
山本悦子さんが構成なさる世界をどう作り出すか、誠に楽しみなEtsuko Yamamotoアトリエ公演です。

2022年3月18日金曜日

【実現願う】今夏にキエフ・バレエガラ開催

一昨日夜に大きな地震に見舞われ、東京も長い揺れが続きました。皆様ご無事でしょうか。
私の家は幸い物も落下せず停電にもならずでしたが震度4でも恐ろしく、5や6強を観測した福島や宮城の方々の不穏な心境をお察しいたします。
またつい先ほど岩手でも大きな揺れが発生し、不安な日々をお過ごしの方は多くいらっしゃることと思います。
国内外問わずただでさえ心配が尽きぬ状況ですが、どうか1日でも早く平穏な生活に戻れますよう願っております。


連日報道されているウクライナ侵攻について、本来ならば現地で起きていることを事細かく知るべきとは重々承知していながら
悲しみのあまり報道を直視できずにいる自身も歯痒く感じております。 出口が一向に見えぬ情勢ですが、1つ希望の光とも思えるお知らせが発表されました。
今夏光藍社主催で、キエフ・バレエによるガラが国内各地で開催されるもようです。
https://www.koransha.com/ballet/kyivgala/?fbclid=IwAR3TGznAJYhlT5BmyHjTHnpywUdeCNeYI7XbRwqe9L35OpuwgNyUH-IO8-w

光藍社さんによるこの公演開催についてのメッセージが胸に響き、現在は国全体が混乱真っ只中で劇場運営どころでは無いと思いますがどうか今夏、実現を願います。
キエフ・バレエはバレエに興味を持ち始めた頃からボリショイ、マリインスキー(その頃はレニングラードだったか)、ABTと並んで同時に触れていたバレエ団であり
中でも、当時新人ながら『シンデレラ』主演で脚光を浴びた10代後半のエレーナ・フィリピエワさんに惹かれ
初々しく愛らしい容貌や優美な踊りを何度も録画で眺めておりました。可愛らしい印象が先行しておりましたが
『眠れる森の美女』勇気の精や『白鳥の湖』パ・ド・トロワといった手堅く締める役目も堂々たるもの。
『くるみ割り人形』『ライモンダ』来日公演ではキャスト変更に見舞われた関係で実際鑑賞が叶ったのは随分と時が経過して2017年のキエフ150周年ガラ。
そしてのちに芸術監督としてキエフ・バレエを率いる立場となられ、就任発表を知ったときにはそれはそれは嬉しく、舵取りが楽しみとなりました。

残念ながら昨年冬の来日公演は中止となってしまい、そのときは翌年2か月も経たぬうちにまさか戦乱状態となるとは想像すらしておりませんでしたが
どうか関係者の皆様が無事でいらっしゃること、そして来日が叶うことを願うばかりです。東京公演、足を運びたいと思っております。





再掲、再紹介ですが、バレエに興味を持ち始めた頃から愛読しているキエフ・バレエ『くるみ割り人形』書籍。昭和末期の出版物です。
スモルガチョワやヤレメンコなど、テレビ放送された公演時と同じキャストの現地レポートもあり、照らし合わせながら何度も読み返しておりました。
写真と解説ともに豊富でシェフチェンコ劇場の内部やバレエ団のリハーサル密着の記事もあり、
今や振付家として活躍中であるラトマンスキーが将来を嘱望された新鋭として紹介されています。
アンナ・クシネリョーワのレッスン写真が載っているのも嬉しく
姫がよく似合う典雅な雰囲気に惹かれておりました。

2022年3月15日火曜日

【2年2ヶ月ぶりのレッスン】チャコット代官山スタジオオープニング特別レッスン




本日の内容は、鑑賞ではなく座学の講座でも書籍紹介でも旅日記でもございません。管理人、2年2ヶ月ぶりの有酸素運動の話でございます。
渋谷から移転したチャコット代官山スタジオオープニング特別レッスンを受講して参りました。講師は新国立劇場バレエ団の渡邊峻郁さんです。
https://www.chacott-jp.com/lesson/studio/daikanyama/schedule/detail025222.html


この2年2か月、レッスンは0回に対し鑑賞は約140回に達する基本鑑賞中心生活の私が有酸素運動に行くのは余程の事態でないと実行に移さず笑
また当ブログをここ2年くらいの間からお読みになっている方にとっては
日々鑑賞感想、飲食、旅路の話しか出てこない当ブログ管理人が踊る姿はまず想像がつかないと思います。
また私に会われたことが一度でもおありの方は容姿からして益々想像がつかず、跳んできちんと宙に浮くのかすら疑念を抱かれることと存じますが
第三者を送り込んだのではなく、当方本人がこの日の15時からズンドコドッスンな姿を晒して参りました汗。
いつも(ここ2年はご無沙汰でそれ以前も年1、2回の頻度の受講ですが)とは異なり、代官山スタジオへ向かうときは
始発に乗らず昼過ぎの電車を利用し、自宅最寄り駅から私鉄のみでの交通で、スタジオに近い駅もエスカレーターの立ち位置が右側ではなく左側。
私以外にも標準語を話している方が大多数で不思議と新鮮な気分でございました。

渡邊さんの教え方はゆっくり丁寧で説明も優しく分かりやすく、緊張しないよう度々リラックスさせる言葉を全体にかけられ
定員満員の28名でしたがバーのときの巡回もこまめ。センターにて順番を不安に感じ全体がそわそわしていると
分からなくなったら一緒にやりますからと安心させてくださったりと全員が楽しく臨めるよう
心を砕いてくださってのレッスンで勉強になること盛りだくさんでした。
時折(でもなく毎度か)複雑なパに私の脳内がひいひいと呻いておりましたが、お手本を何度も目に刻めたのは至福な時間。
間近で拝見できたグラン・ジャンプも目に焼き付け感激し、新国立劇場オペラパレスの最前列席よりもずっと近く
フラットなスタジオ床上で眺められたわけですからそれはそれは大迫力でした。
しかも音楽がソロルのヴァリエーションで、3年前にオペラパレス1階最前列で目にしたソロルがすぐ眼前にいらっしゃると思うと幸福もひとしお。
後に詳細は記しますが私が唯一思い切りできたのがこのセンターにおける最後のジャンプで(振りが一番シンプルであったためかと思います)
無我夢中で気づかずであったのが惜しまれますが、後ろ向きに回りながら跳ぶとき渡邊さんと同じタイミングで一緒に跳んでいたと後から友人から聞き
ほんまかいなと未だ疑わしいのですが笑、2名から目撃談を聞いたため嬉しうございました。

そして今回のレッスンの大きな魅力の1つが馬場美和さんによるピアノ伴奏付きであったこと。
我が後輩の友人が馬場さんに大変詳しくレッスンを勧めてくれた理由の1つでもあり、実際に聴けたのは幸運で
バレエ音楽もあれば他のクラシックもあり、伴奏もまた気持ち良く踊ることに繋がったのは明らか。
前からお世話になっているスタジオも必ず生伴奏付きで贅沢なことにその環境に慣れてしまっておりましたが、
今回馬場さんのピアノ伴奏に包まれながら受講する機会に恵まれ、嬉しきひとときでした。

以下大半は反省文でございますが。全て綴ると要小休止な新国立劇場バレエ団の鑑賞感想と同量にもなりかねませんので掻い摘んで参ります。
久々2年2ヶ月ぶりのレッスンであり、大手バレエ用品ブランドの東京都内屈指のお洒落な街移転の記念企画で花園の如きスタジオの雰囲気にも呑まれ
非会員の身分である私ですので長年チャコットを支えていらっしゃる会員の皆様のお邪魔にならぬよう
また移転記念企画で今後チャコットの経営にも大きく関わってくる行事かと思うと鼓動を落ち着けるほうが困難でございました。
何より、80日間世界一周のような規模の旅の経験は無けれど現時点において地球上で最も素敵であると思っている
心から虜になっております2名のダンサーのうちのお1人が講師を務めてくださるレッスン初受講ですから大緊張。
また渡邊さんによる大手のスタジオでのご指導のお話はこれまで耳に入っておらず、どんな指導方法で進行されるか予測不可能であり
耳が妙に赤くなっていると、開始前から隣の初対面の穏やかで優しいお方に指摘されるほどで私はどれだけ緊張していたんだ笑。
3月1日に予約が取れてからのこの2週間程度、ヘマをしないように恥ずかしい姿を晒さぬよう留意せねばと思いつつも
バレエ版スピードラーニングなんてございませんから2週間では覚えの苦手改善も到底間に合わず(そりゃそうだ。ついでに申せば洗濯用ではなく人体用の柔軟剤もない)
そして容貌や頭身バランスは変えられなくてもせめて体型や重量は整えておこうとしたものの
(但し仕事に支障がないよう、特にこのご時世健康を害することのないよう、病院のお世話にならぬよう
飲食は通常通りにして制限は設けず、現状維持を目標に、膨れたら予約取り消しと言い聞かせておりました)
鏡に映った膨張する我が姿にああ要痩身。ピンクタイツは恐るべしです。フットワークが軽いとはこれまで50回は言われているものの身体の重量については(以下略)。
前回のレッスンがコロナ禍以前であったためマスク着用レッスンも初。意外にも苦しさは感じずに済みましたが
長時間動きながらの装着はさぞお辛いかと察し、プロの方々の鍛錬には頭が下がります。

そして覚えの悪さは相変わらずで、バレエの振付にしても学業にしても思えば子供の頃から不変。
結局間違えずに順序を覚えられたのは先述したセンターの最後のジャンプのみで、人生どうしたものかと途方に暮れるのは毎度でございます。
しかもジャンプのとき面積が足りず気づけばすぐ横に壁が現れ手を追突させてしまい、新築スタジオにてチャコットの皆様申し訳ございません。
因数分解や微分積分、平方根よりは遥かに簡単であろう、踊るときの飛距離ですら計算できず最後の最後まで反省の連続でした。

ただ順番を唯一覚えられただけが理由ではなくこの箇所だけは思い切り できたのは子供時代の経験も影響しており
当時通っていた教室が放課後の幼稚園の空き教室であったため、天井が頗る低く面積も小さく、今でこそ高くも低くもない背丈の私ですが身長の伸びが子供の頃は早く
跳べば天井の突き出た部分に手がぶつかり、5月には時節柄手を掲げると天井から吊るされた鯉のぼりに激突寸前。
縦のみならず横移動も慎重さが求められ、壁には園児達が丹精込めて描いた絵や壁側の棚には工作品やぬいぐるみ、絵本や積み木が置かれているときが大半で
私が卒園した幼稚園でもあったため、万一壊してしまったら一生懸命作った園児本人や備品管理に余念がない園の先生達を思うと合わせる顔もありません。
ですから思い切り跳ぶな飛距離や移動も要注意、と毎回気をつけるしか無かったのです。
しかし大人になってから再開しお世話になっているスタジオや今回のチャコットのスタジオも天井が大変高く、男性がどれだけ跳んでも問題なし。嬉しうございます。

楽しんだ気持ちよりも反省猛省のほうが色濃く残る久々のレッスンで翌日の昼休み、
あれもこれもそれも結果どれも出来なかった自身を思い起こしては約30分間項垂れてしまいましたが
約1時間半、馬場さんのピアノ伴奏付きでのクラスにて渡邊さんにご指導いただけたことは生涯の宝でございます。
チャコット関係者の皆様、魅力たっぷりな企画をありがとうございました。

8年半前、16年ぶりに再開する際には関西や四国の方々も巻き込み笑、今回は関東圏内とはいえレッスン1本予約するだけでも大騒ぎで
憧れの存在なお方の前で受講なんてとても無理や!と口走る私を励まして背中を押してくださった方々にもお礼申し上げます。
終了後なかなか言葉も出ず脳みそはぼうっとのぼせる状態になってしまいましたが、身体は疲れず。
中高年のいずれかに属する年代に差し掛かった現在のほうが小中高大生の頃よりも格段と身体が動きやすく疲れにくいのは
不思議でございますが(鑑賞と遠征が心身に好影響か)、反省は多々あれど嬉々とした感情で一杯になったレッスンであったからこそでしょう。

4年前の『眠れる森の美女』初日終演後にて、同年に渡邊さんが着物モデルをなさった雑誌も企画に参加したアウェイな雰囲気での着物トークショーゲストで
会場に登場されお話しされたとき、バレエをそう多くはご覧になったことがない方にも分かりやすい話運びを展開された
言葉の選び方や内容の伝え方がたいそうお上手であったのは今もよく覚えておりますが
今回のレッスンにおいても、全体の見渡し方やお手本をじっくりと見せる進行や気持ちが上向きになるような言葉の掛け方をなさって
楽しく濃いレッスンを組み立ててくださった渡邊さんには感謝しかございません。

この日を振り返って思い出すのは、新国立劇場バレエ団2017/2018シーズンエンディングパーティーにて出会った親子のお2人。
ちょうど渡邊さんの歓談の列にて私の前に並んでいらして、ちらりと会話を小耳に挟むとどうやら発表会のゲストに来てくださったような内容が聞こえ
驚かれるのは承知で話しかけ、時期を聞いてバレエ教室名を口にすると案の定仰天された次第。勿論私も足を運んでいた発表会でしたので意気投合し
印象を伺ってみると、ジャンプの滞空について感嘆の溜息をこぼしながら思い出して語ってくれた姿は今も記憶に残っております。
スタジオパフォーマンスに行く観客としてではなく、レッスン等で同じスタジオ内にて目にする機会なんぞまず無いであろうとそのときは思っておりましたから
お嬢様のお話を一瞬たりとも聞き逃すまいと耳を傾けていたものです。歓談の順番を待つ間3人で暫し黄色い歓声風味に会話を満喫するうち親子の番になっため送り出し、
それはそれは優しい表情の渡邊さんと嬉しそうに話す親子を後方から微笑ましく眺めていたのでした。
あれから約4年。まさか実現するとは夢にも思わず人生とは不思議な巡りで、もしその親子と再会を果たせたならば
私も遂に間近で同じスタジオ内でのジャンプのご披露を目にできたことを伝えたいと思っております。
そのときは再度3人で、世代は皆バラバラながら女学生のように弾む会話で喜び合うに違いありません。




チャコット外観。ユニークな建造物です。



レッスン後、ポワントを受け取りに来ていた我が後輩や、レッスン受講者の方々とスムージー。私は緑色でございます。
チャコット内にはスタイリッシュなカフェやレストランもあり、次回買い物等で来る機会があれば、ケーキや生ハム、ワインも味わってみたいと思います。



ここ2年間はご無沙汰中ですが約8年半前からレッスンで年1、2回程度通っているスタジオとその最寄駅間に位置し
毎度レッスン帰りのお決まりの立ち寄り処である海産物が美味しく手頃な魚輝水産が代官山には当然ながら無いため笑
地元に近い場所にて似た店舗にてビールで乾杯。踊ったあとはビールで決まりです。



蟹と鮪のお寿司でございます。
そうでした、概要発表から1本のレッスン予約完了までもが大騒動状態となったその辺りの話はまた後日。
管理人の騒動なんぞ年度末に近い現在読んでいる暇はないとのお方は恐れ入ります、連休に予定しております鑑賞感想まで今暫くお待ちください。

2022年3月11日金曜日

3度目の正直でようやく開催   東京シティ・バレエ団トリプル・ビル2022 3月10日(木)




3月10日(木)、東京シティ・バレエ団トリプル・ビル2022を観て参りました。2度の延期を経ての上演に漕ぎ着け
日程も場所も変更が生じ当初は休日2日間の予定が平日1日開催となりましたが、ようやく披露の日が訪れ、胸を撫で下ろしております。
https://tokyocityballet.com/triplebill2022/


『火の鳥』
音楽:ストラヴィンスキー
振付:山本康介
映像デザイン:笹口悦民

火の鳥:中森理恵
イワン:濱本泰然
カッチェイ:内村和真

振付はクラシックが基盤ですが演出が予想以上に斬新。冒頭から背景にて映像が流れ、鬱蒼とした森の中を旅する心持ちとなりました。
工場のような建物が気にかかり、だいぶ近代寄りの設定と捉えております。

中森さんの火の鳥は硬質できりっとした踊りでストラヴィンスキーの難解に絡む音楽を巧みに表現され、羽ばたく腕使いは指先に至るまで細やかに躍動。
技術達者な踊り手の印象があるだけに出番数の少なさが惜しまれ、欲を言えばカッチェイ達の急展開な曲調に合わせて混沌とした中での周囲を引っ張り上げるような踊りの披露や
フィナーレでもご登場願いたかったものの、朱色に金色や黄色の羽が大きく彩られて煌々とした、まさに燃え盛る炎の如き衣装の着こなしも違和感なし。
出番は短時間であっても、孤高に輝く火の鳥の飛翔をくっきりとした線で描き出していらっしゃいました。

イワンの濱本さんは、薄い青に銀色の装飾の付いたアイドル風の衣装に度肝を抜かれながらも(一瞬、東京文化会館ではなく横浜アリーナに身を置いていた気分に)
火の鳥におっかなびっくりしつつも興味を惹かれて行くイワンを悠然と踊られ、王女の清田さんは可愛らしさの中に女王然とした貫禄もあり
カッチェイの奇襲からイワンと逃れるときの、怯えるだけでなく正義のヒロインな強気の表情も魅力に映りました。

先述の通り斬新な要素が色濃く、中でも衣装はユニークなデザイン大集合。イワンの薄い青のスーツに始まり、
王女や侍女は南国リゾート風な白いワンピースで、これまでに観てきた『火の鳥』の印象を覆されました。
それから和の趣も取り入れられ、カッチェイの魔法が解けると皆で羽織のようなものを上から着用して行進し、再生の象徴なのかもしれません。
イワンがカッチェイ退治のときには日本刀らしき刀を振るっていましたが、意味付けの理解には至らず申し訳ございません。
また前半の照明が明るめで白っぽい光が照らされ、りんごの木はあれど赤ではなく青りんごと思われる色味で
民話の絵本でもフォーキン版やそれを踏襲した演出における全体が赤系で埋め尽くされた舞台とは大違いで、珍しい演出を目にした思いでおります。

『火の鳥』の音楽はたいそう好きでこの曲聴きたさに私にしては珍しく 演奏会にもプロアマ問わず複数回通っておりました。
ストラヴィンスキーの子孫マリウス・ストラヴィスンキーが指揮するロシア国立交響楽団も聴きに行きましたが
最も印象深かったのは2018年3月半ばに来日し、季節外れな降雪の中で足を運んだトゥールーズキャピトル国立管弦楽団による演奏で、指揮者はソヒエフさん。
指揮者に注目することは少ないのですが、強弱や抑揚の出し方に品がありつつもパワーがぐっと舞い上がるような演奏に聴き惚れ
また来日して指揮していただけたらと願っておりました。しかしウクライナ侵攻の影響が及んで
ボリショイとトゥールーズ両方のポストを退くとの報道を読み、残念でなりません。
来日公演時はまさか4年後、パンデミックのみならずこんな事態になっているとは想像もしておりませんでした。今後の活動が気がかりです。



『Octet』
音楽:メンデルスゾーン  弦楽八重奏曲  変ホ長調  Op.20
振付:ウヴェ・ショルツ

清水愛恵
濱本泰然
斎藤ジュン
福田建太

シティお得意演目の1本で、かれこれ鑑賞4回目。これまで主軸を務めてこられた中森さんや平田さん、佐合さんらが不在で新しい顔ぶれが揃っていた気がいたします。
美しく且つ限界まで伸ばすポーズの連鎖であっても盤石な展開であったこれまでに比較すると僅かにひやっとする箇所や粗もあったかもしれませんが
ショルツ作品を踊りこなすシティは特にこれからも観て行きたいと思わせる、音楽に身体を乗せて自在に操る踊りの数々は観ていて爽快。
アダージオ部分はすっかり板に付いている清水さんで曲の哀楽を益々艶めかしく体現され、濱本さんとの物哀しくも流れるようなパートナーシップにもうっとりです。
また初挑戦?の斎藤さんの元々の柔らかほんわかした持ち味にピシッと締まりある魅力も加わり、黄色集団を頼もしく率いていた点も好印象でした。



『WIND GAMES』
音楽:チャイコフスキー   ヴァイオリン協奏曲   ニ長調  Op.35
振付:パトリック・ド・バナ

植田穂乃香
キム・セジョン
吉留諒
   
平田沙織  名越真夕  馬場彩  朴智善  折原由奈  石塚あずさ
石井悠和  岡田晃明  土橋冬夢  渡部一人

大変困難であろうこの状況下において海外振付家による新作初演がやっと実現。バナ作品を生で観るのは初でございます。
チャイコフスキーの有名曲であるヴァイオリン協奏曲と舞踊がどう融合する か楽しみにしておりましたが
振付も衣装もクラシックとコンテンポラリーが混ざり合う面白い溶け合い方。黒ベースのタンクトップと長いパンツでカチッと決めた女性もいれば
ロマンティックチュチュを着けた女性が衣装からは想像がつかぬ激しい動きで次々と風を吹かせて疾走するように踊る場面もあり。
主役を張られた植田さんが1人濃いピンクのロマンティックチュチュで狂いなくスピード感たっぷりに
時にはヴァイオリンソロでの伸びのある演奏と身体を絡ませながら機敏に反応して踊る姿が鮮烈でした。

そして今回1番の話題でしょう、三浦文彰さんのヴァイオリン演奏との共演。生での演奏は初鑑賞ですが、何かのテレビ番組にて
ストラディバリウスとそれに近づけた楽器の音の聴き比べクイズに出演されたお姿を目にしており私でも存じているほどですから
プロフィールに目を通し、世界規模でのご活躍に仰け反りそうになってしまいました。
我が身体と違ってまだまだ耳は肥えておりませんため演奏の感想まではあれこれ申せませんが、三浦さんの演奏でシティのダンサー達が喜び溢れる反応を見せながら踊る舞台に胸躍り
今回の音楽の宴な3本構成を締め括るに相応しい共演でございました。そして来日が叶ったバナさんがいたく嬉しそうで
リモート指導を経てようやく本番に辿り着けた歓喜をずっと表していらっしゃいました。

この協奏曲も以前から好んでおりましたが、きっかけは映画『オーケストラ!』。(周囲でご覧になった方がいないため、あまり流行らなかったのかもしれません)
仕事を失った嘗てのボリショイ交響楽団の名指揮者がメンバーを集めて演奏会を再び開くまでをモスクワとパリを舞台に描いた笑いもたっぷりな痛快映画で
いつかモスクワでこの曲を聴いてみたいと夢見たものですが、12年後こうにも混乱真っ只中な情勢になるとは思いもいたしませんでした。

公演概要を知ったときから好みな音楽構成に期待を膨らませ、3度目の正直でやっと実現でき安堵。
残念ながら今回は上演できなかったバランシン振付『アレグロ・ブリランテ』もいつの日かの披露を心待ちにしております。




終演後は食事処も閉店してしまうため、また開演まで余裕ある時間を取れず、近場最優先で検討したところ
駅は何度も利用していながら人生初、上野駅構内の店舗にて食事。たいめいけんに参りました。
600円以上のメニューを注文すると50円でボルシチが追加できるお得感なメニューがあり、注文。
50円とは思えず、具もよく入っていて満足。好物の1つです。これまでならば好物を美味しく味わう喜びばかりが募っておりましたが
ルーツである国の現在の悲惨な状況を思うと、また今回のストラヴィンスキー、チャイコフスキーの使用曲を始め元々ロシア音楽やバレエ、
絵画や文学、建築そして料理といったロシア文化全般は昔から好み関心を抱き続けてはいても
一部の政治主導者達の暴挙には理解に苦しみ、悲しみや疑問ばかりが沸いてきます。



お店の名物オムライス。粗のない綺麗な卵がしっかりと包んでいます。 エビスさんが描かれたビールで乾杯。
次回から、上野にて平日18時半開演のときはエキュートで食事処探しをする予定でございます。



2022年3月9日水曜日

両家の和解がもたらす救いと重み   NBAバレエ団『ロミオとジュリエット』3月6日(日)





3月6日(日)、NBAバレエ団『ロミオとジュリエット』を観て参りました。マーティン・フリードマン版は5年ぶりの鑑賞で
プロコフィエフ音楽の全幕作品が揃う今春の関東のバレエ界。春のプロコフィエフ祭り第一弾です。
https://www.nbaballet.org/official/romeo_and_juliet/


ジュリエット:小野絢子
ロミオ:刑部星矢
マキューシオ:大森康正
ベンヴォーリオ:新井悠汰
ティボルト:三船元維
キャピュレット公:高岸直樹
キャピュレット夫人:関口祐美
モンタギュー公:佐藤崇有貴
モンタギュー夫人:吉川風音
ジュリエットの乳母:宗遼香
パリス:本岡直也


急遽の代役登板、新国立劇場より招かれた小野さんのジュリエットはスター性は頭一つ飛び抜けていながら
NBAダンサー達とのやりとりがとても自然で作品、そしてカンパニーにも溶け込んでいらした印象。
登場時は活発でドレスも思い切り放り投げてしまう、慣例に縛られてなさそうな意思の強い少女っぷりを体現し
きっと静かな読書よりも森を駆け回るほうが好きだったのであろうと想像ができ、乳母はこのお転婆な令嬢に長いこと手を焼いていたに違いありません笑。
マイムがテンポ良く進む箇所も無駄なく且つ生き生きとリードされ、舞踏会でロミオとの別れのときに
からかうマキューシオ達から乳母が素早く名前?を聞き取り、ジュリエットに伝えたときの
名前を反芻するように噛み締めたかと思えばはっとする様子を恋の熱が一気に上昇する乙女心を表現。上階席から観ていてもときめきの1粒1粒が伝わるひと幕でした。

驚きを覚えたのはロミオの刑部さんとの相性の良さで初顔合わせとは思えず、若いカップルの甘酸っぱさや純粋な恋を
花々が咲く庭を眺めるバルコニーにてお互いを優しく吸い寄せるようなパートナーシップで描画。
序盤にてロミオが直立の格好でジュリエットをリフトさせた状態における両腕を大らかに広げていくジュリエットが、まさに恋の蕾を開花させるような喜びに溢れ
派手でもなければ疾走感がまだあるわけでもない、この直立リフトのポーズだけでも心にじわっと響き昇華していったのでした。
舞踏会での、シニヨン全体を覆う黄金色の髪飾りやピンク色を帯びた衣装もそれはそれはお似合いで、絵本から出てきたようなヒロインでございました。

3幕で繰り広げる父親であるキャピュレット公との火花の散らし合い対立も緊迫感が充満し、上背に加え威厳と熱さの迫力に身も縮みそうな
高岸さんキャピュレット公にも刃向かう、伝統や慣習に背こうとするジュリエットの勇ましいことよ。
2人が目を目を交わす行為1つで、静かに怒りを燃やすジュリエットと、閻魔大王もたじろぐであろう
ギロリとしたキャピュレット公の視線に生じる化学反応には誰も寄せ付けぬ境界線を張っていたかと思えたほどです。
小野さんは驚きの客演でしたが、あどけない少女から禁断の恋をして死へと進むジュリエットを鮮やかな凄みを宿して踊られ
何より、NBAの皆さんとの共演を心から楽しんでいらっしゃる印象でした。

静かな怖さといえば、本岡さんのパリス。一見おっとり穏やかそうなお坊っちゃまな風貌でキャピュレット公とは舞踏会の最中に
後方でにこやかにお酒を酌み交わす仲であるほど既に良き関係性を築き、決して傲慢そうな人物ではなさそうな印象。
しかしジュリエットとの婚約が破棄に向かいつつある3幕では平静を装いながらも冷たい怒りや戸惑いを募らせ、触れると指先に冷静が走りそうな怖さを表出。
よくよく考えてみれば、騒動に巻き込まれ婚約は取り消しになり婚約者は亡くなり、そして最後は墓場で刺殺されてしまうパリスの運命にも悲しみを寄せるしかありません。
関口さんのキャピュレット夫人の艶やかな立ち居振る舞いや狂おしい嘆きっぷり、
宗さんの愛情深くも終盤には両親の言うとおりにするよう苦し紛れにジュリエットに促す乳母も心を持っていかれ
からかってくるロミオ達に団扇のような物を手に追いかけお仕置きする箇所は思わず笑いが毀れてしまいました。
ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオの仲良しトリオもバランスが取れていて二重丸。
純情で誰からも愛されていそうな刑部さんロミオ、頭も身体もキレが俊敏そうな大森さんマキューシオに、
中和剤な存在されど要所でのさりげないフォローや橋渡しが毎度楽しい新井さんベンヴォーリオの冴え渡る踊りも
怖いもの知らずな若者達らしいスピード感のある流れを作り出し、堪能いたしました。

街の賑わいも忘れられず、ジプシーの浅井さん岩田さんコンビはいつも何かしら笑わせてくださる安心感とワクワク感を与えてくださり、集団を力強く牽引。
色が濃いめのカラフルな衣装で整えられた全体の配色にも負けぬ賑やかなお祭りらしい空気感が全員から放出され
だからこそ舞踏会の厳粛やバルコニーでの澄み切った恋の美しさが引き立ち、場面ごとの色味の大変化もどっぷり満喫できました。

1幕の争いの場で、男性陣の剣術の力強さや斬り込むスピードは申し分ありませんでしたが、それよりも今回いたく目に焼き付いたのは
私の見間違いでなければ犠牲者の中に女性も含まれていたこと。気づいたときには倒れ込んでいたため争いに参加していたか否か
詳細が把握できずであったのは心残りですが、争いの中での街の女性の死は他の版では目にしたことがない演出と記憶。
直接は関わっていなくても巻き込まれて命を落としたと思うと、現在のウクライナ情勢の報道が脳裏を過ぎり、胸に詰まるものがありました。
最後はロミオとジュリエットが身体を重ねて倒れて息を引き取った墓場にキャピュレット家、モンダギュー家の両家が訪れ、
キャピュレット公とモンタギュー公が握手を交わして和解。これまでの諍い、過ちを2人とも心から悔いるように手を握り締め、ほんの少し救われる幕切れでした。
ドネツク生まれのプロコフィエフの目には現在の故郷がどう映るか、8年前以上に悲惨な状況に胸を痛めているのは想像に難くありません。
8年前に読んだ書籍『プロコフィエフその作品と生涯』によれば、生まれはドネツクのソンツォフカ村で新しい農業技術が導入された拓けた村であり
果樹園や畑に恵まれた豊かな地域だったとのこと。故郷の風景を記した文中には
夜半には、きらきら瞬く星くずをちりばめられた黒いビロードの天空が、とあり
ロミジュリバルコニーやシンデレラの星の精達が導く場を彷彿させる美しい景色が目に浮かぶ村です。

舞踏会での古典交響曲の部分や大概は2幕冒頭で流れる、変更がなければ大阪の長堀鶴見緑地線の発車メロディーに似た歯切れ良い曲のカットは
少々物寂しい気もしておりますが(記憶違いならば失礼)、ジプシーや街の人々のパワフルな持ち味の発揮はNBAならではでしょう。
大掛かりな装置は控えめではあれど、下から覗き上げるような視覚効果をもたらす広場の背景や
深みのある赤茶色を基調としたキャピュレット家の舞踏会の美術も気に入っております。フリードマン版、また観たい演出です。
開演前の名物⁈久保監督の挨拶は今回は地元談義。池袋愛が伝わる楽しいプレトークで気持ちを解してくださいました。
次回池袋でのNBA公演鑑賞時には、公演事務局からのメールにも掲載されていた
ブリリアすぐ斜め向かいの「そば うどん ならや」も訪れたいと思っております。




帰りは池袋駅すぐそばの池袋ワイン倶楽部へ。まずは甘めなランブルスコのロゼワインで乾杯。



炭火焼のお肉、ぎゅっと味が詰まり美味しうございます。



おつまみサイズも用意されたピザ、たっぷりチーズにアンチョビの塩気、薄くもふわりとした生地で2杯目の赤ワインが進みます。並々注いでくださいます。
土日とも1人赤ワイン宴を行った週末でございました。

2022年3月6日日曜日

緩やか悲劇な復刻版 日本バレエ協会『ラ・エスメラルダ』3月5日(土)





3月5日(土)、日本バレエ協会『ラ・エスメラルダ』を観て参りました。
http://www.j-b-a.or.jp/stages/2022tomingeijyutufestivalla-esmeralda/

振付指導:ユーリ・ブルラーカ
振付助手:フョードル・ムラショフ

エスメラルダ:米沢 唯

フェブ・デ・シャトペール:中家 正博

ピエール・グリンゴワール:木下 嘉人

クロード・フロロ:遅沢佑介

カジモド:奥田慎也

クロパン・スリフトゥ:荒井英之

フルール・ド・リス:玉井るい

メゲーラ:金田あゆ子

アロイサ・デ・ゴンデロリエ:テーラー麻衣

ダイアナ:清水あゆみ

ベランジェ:岩根日向子

アルベール:荒井成也

フローラン:貫渡竹暁

ディアナ:飯塚絵莉

アクテオン:藤島光太

エスメラルダの友人:橋元結花/細井佑季/森田真帆/渡辺幸


米沢さんは無邪気な愛らしさ残るヒロインで、妖艶な味よりも無垢な奔放さが強く出る登場。
にこやかな中に僅かな色っぽい瞳を宿らせて時折くらりとさせ、切れ味のある踊りで街の賑わいを盛り立てていました。
心情の変化も明快に示し、危機を救ってくれたフェブに恋に落ちるときの頬を赤らめるような蕩け具合や
文字盤を取り出しフェブの名前を並べるときの初心な少女っぷりも可愛らしくいじらしい。
自由度が高い性格なのか、愛を訴えてくるグリンゴワールに対しては都合による婚約である旨をあっさり表してしまう様子も憎めずでした。
真骨頂であったのは2幕、抜粋でもよく披露されるグリンゴワール達とのパ・ド・シス。フェブに婚約者がいた事実を知って抜け殻のような打ちひしがれようが舞台を覆い、
心も身体も折れそうな状態で余興を披露する痛切な内面が胸に迫りました。アラベスク1つにしてもポーズはビシっと決まれど、頭はガクッと項垂れていたり
悲しみを帯びていくかと思えば微かな光が射すような曲調と呼応するように悲嘆を滲ませ
時にはどん底と未だ捨て切れぬ希望の双方を抱くように身体から発したりと踊りそのもので表現していく技量に再度拍手です。
実は全幕の中でこの場面を観たのは初で、ブルメイステル版やその他これまでに観たいくつかの版では挿入されておらず。
前段階にはエスメラルダとフルールがお互いの順調な恋を自慢し喜び合う、身分を超えた女子会談義が暫し行われたものの
さあこれからエスメラルダが余興を披露しようと登場すると事態は急転直下。
フルールの横に婚約者として腰掛ける男性はまさかのフェブであった事実にここで初めて突きつけられる急ピッチな展開に驚愕。
登場してから底に突き落とされる思いに駆られ、そしてグリンゴワールがすぐさま支えパ・ド・シスが始まるどんでん返しな流れから目が離せずでございました。

木下さんは献身的なグリンゴワールで全体を引き締め大活躍。ロマ達に怯えながらオロオロとした登場からして物語の展開にしっかりと味付けがなされ
あちこち振り回されながら婚約してくれる人を探す健気な行動も空間を大きく使い、雄弁なマイムで
上階席から観ていてもスカスカ感を全く感じさせず、グリンゴワールを中心に物語が動き出している場面に繋がっていた印象です。
エスメラルダが仮とはいえど婚約者となったときの歓喜する様子や、今後の見世物の為の
エスメラルダの指導の下で行う舞踊レッスンでのずっこけ音頭な踊り方もピュアで一生懸命なところが微笑ましく一途な人物を造形。
先にも触れた2幕パ・ド・シ・スではエスメラルダの心身を支える鉄壁のサポートに加え
短期猛特訓の成果か突如踊りが上達した設定に多少は無理もあれど笑、無駄のない端正で張りのあるソロも目を惹きました。
下手な人がこのパ・ド・シスのグリンゴワールを務めるとただ右往左往しているタンバリン叩き隊員になりかねませんが
悲嘆に暮れるエスメラルダにとって、縋る思いで頼りにする存在であることを明示。見つめる視線や心を寄せながらの支えっぷり、立ち位置に至るまでお見事でした。

この版において最も突っ込みどころ満載であり且つ他版に比較するとより焦点が当てられているフェブは中家さんが好演。
『ライモンダ』でのマントでジャン!ほどではないがファンファーレに乗せて堂々と歩み出てくる登場とエスメラルダ救出までは正義のヒーローなお姿。
どっしりと厚みある存在感で危機に瀕していたときの救出者であり、 エスメラルダが恋に落ちるのもごく自然です。
婚約者がいる身で異なる人に恋心を抱いてしまうのはいただけないものの、それだけエスメラルダの魅力に取り憑かれ後戻りできなくなってしまったと解釈。
フルールとの婚約の宴で腰掛けているときの、エスメラルダ達の余興を前にした様子の観察が面白く
目が泳いでいるときもあれば、腕組みして下を向き目を瞑る、国会中継で時々目にする居眠り中の議員さんのような格好でその場を逃れようとしていたりと
自業自得とはいえ窮地に立たされた人間の落ち着かぬ心境を静かに晒していました。
しかもこのときはまだフルールは婚約者の二股に気づいておらず、ばれるのも時間の問題であろうと冷や汗ものであったに違いありません。
フルールもいつまでもお花畑ではなく、エスメラルダが手にしていたスカーフが自身がフェブに贈ったものであると気づくとそれまでの優雅さからは一変。
婚約解消を潔く宣言し、ただの夢見る令嬢ではないフルールを玉井さんは品良く決然と務めていました。
またフェブの友人アルベールとフローランも、宴に向かうフェブにスカーフが装着されていない格好に疑念を持ち
問いただす場もありながらフェブはその場を逃れ、友人達をも裏切る結果を招いたことに。
裕福なフルールと結婚できたならフェブの生活は生涯安泰であったでしょうに、恐らくは追放処分を受け、失業もしたのか
質素な格好に加えてベレー帽のような帽子を被って3幕冒頭エスメラルダのもとへやってきた展開には口あんぐり。改心した設定なのかもしれませんが
無理矢理な展開は現在独立したグラン・パ・ド・ドゥのアダージョ部分として馴染み深い音楽でほぼ振付も同じまま短いパ・ド・ドゥで収納でごさいました。

フロロに刺される場面は他の版と変わりないものの、最たる驚きはエスメラルダの処刑寸前。命を落としたと思っていたフェブが嘆願書を手に 止めに入ってきたことでしょう。
浮気者でも2回もヒロイックに現れる人物であったとは、そして証言は聞き入れられエスメラルダは無罪放免。
献身的であったはずが使い勝手が良いだけの人物であったのか、グリンゴワールは手を振りながら
エスメラルダ友人達と共に晴れ晴れと去って行く結末はご都合主義も良いところでございますが、このご時世幸せな終わり方もまあ良いか。
エスメラルダ、グリンゴワール、フェブの重点が置かれているがゆえに他版ではもっと出番が多いフロロやカジモドが置いてけぼりな印象も拭えませんでしたが
遅沢さんフロロのドスの効く、黒味を帯びた不気味な表現やさらりと刃物を奪って罪を犯しながらも
何食わぬ顔で罪をエスメラルダになすり付ける静かに悪事を働く姿には冷徹な心の内側を見て取れる思いがした次第。
フェブ以上に要所要所でエスメラルダやフロロのピンチを救い、主への忠誠とエスメラルダへの恋心の双方を
純粋ひたむきに訴えていた奥田さんのカジモドも心に吸い付くキャラクターでした。

街の人々やロマ達の賑やかな息遣いは序盤から盛り上がりを見せ、次々となだれ込んでは急速なステップを刻んでいて冗長な印象を持たせず。
2幕の前半のフルール、フルール友人2名、フェブ、フェブ友人2名と花籠を持った女性群舞との場面は華やぐ見所ではあったのでしょうが
『海賊』花園或いは『眠れる森の美女』幻影の場を足して2で割ったところに男性3名投入した感のある構成でヴァリエーションまで用意され
だいぶ長かった印象。プティパ版のブルラーカ復刻版ですので、時間の感覚も現在とは違いゆったり延々と味わう風潮が強かったと考えることといたします。
思えばブルラーカ復刻の『海賊』をボリショイシネマで鑑賞時、3時間半超の上演時間に加え、チュチュの雲海かと見紛う
大所帯な似たり寄ったりの群舞場面がいくつも続いて後半は何度か夢の世界へと飛んでいた管理人でございます。

話をエスメラルダに戻します。想像以上にご都合主義展開でしたが、全幕上演の機会が少ない大作の協会初演実現に拍手。
抜粋では何度鑑賞したか数え切れぬディアナとアクティオンを群舞付きで中央後方に設置された左右に上がるカーテン幕装置の向こうから宴の最中の余興としての登場
更には周りをフルールやフェブ、貴族達が囲む様子も含め視界に入るとフルール達と同じ目線で観るためか新鮮な心持ちで鑑賞。
またエスメラルダの嘆きのパ・ド・シスも、その前段階を目で把握した状態で観ると、一瞬にして急降下するエスメラルダの心情が
一段と手に取るように伝わり、全幕の中で観る大切さに触れた思いでおります。

そういえば、当初の発表では今回の協会公演はブルラーカ版『パキータ』全幕を予定していたはずで、こちらもボリショイで上演されていますが
頻繁に抜粋上演されている結婚式のグラン・パ以外の緩やか度はいかに。ラコット版はパリ・オペラ座来日公演で鑑賞していながら
結婚式とパキータが実は高身分であった一件落着騒動以外記憶に無く、もし今回ブルラーカ版上演がされたならどんな印象を抱いたか興味は沸いてきます。

アップの経緯は不明ですのでリンク先は貼らずにおりますが、フロロやフェブと同様誘惑に負け、予習を兼ねてつい覗いてしまいました。
ボリショイ・シネマのブルラーカ版『エスメラルダ』が丸々視聴可能状態になっております。
キャストからして恐らくは復刻上演からそう年月が経過していない12年ほど前と思われ
エスメラルダをアレクサンドロワ、グリンゴワールをサーヴィン、とこの時点で管理人鼻血が出そうに。
カジモドをツヴィルコ、フルールをクリサノワ、フェブをスクヴォルツォフ、フェブ友人をラントラートフとオフチャレンコ、
ディアナをスタシュケヴィチ、アクティオンをロパーティン、と主要役に豪華な布陣投入。
スタシュケヴィチの突き出すようなテクニックの強さがフルール達や貴族陣に囲まれても一切埋もれず。
全体を通して、何処を切り取っても最早演出が気にならぬほどのスケールに圧倒されます。




夜公演であったため鑑賞前に上野界隈にて一杯。エノキ入りの辛口、チーズたっぷりのまろやか香ばしいミニキッシュ2種。昔のパレットのような穴のある丸い板のお皿です。
昨秋に再演され足を運んだ、グリンゴワールを画家に設定した篠原聖一さん版も好きでございます。



コンビーフとポテトのタルタル。ワインが進みます。しかし鑑賞はこれから、1杯に抑えておきましょう。
目の前には鉄格子のワインタワーのような高さのある置き場にボトルがずらり。

2022年3月3日木曜日

新国立劇場 舞台美術展で巡るオペラ・バレエの世界2022 ~Opera&Ballet Stage Set&Design Exhibition 2022~

遅ればせながらの内容ですが悪しからず。2月半ばの日曜日、東京スカイツリータウンソラマチにて開催された
新国立劇場 舞台美術展で巡るオペラ・バレエの世界2022  ~Opera&Ballet Stage Set&Design Exhibition 2022~を昨年に続いて観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_022015.html










かれこれ3年連続開催と思われ、昨年のバレエ部門では『竜宮』における太郎やタコ八、森山開次さんお手製の亀さんも展示され、ふらりと立ち寄ったご家族連れの皆様が
浦島太郎のバレエの存在やタコの巨大な衣装を始め、楽しそうな声を上げながらご覧になっていた光景を思い出します。
入口のペンギン・カフェブースは撮影可能で、ペンギンさんの隣で記念撮影するお子さん達の
嬉しそうな表情が微笑ましく映りました。お盆持った愛くるしさにも驚いていたようです。

今年のバレエ衣装はピーター・ライト版『白鳥の湖』。展示点数はさほど多くはなかったものの黒味を帯びた重厚な衣装を間近で観察できたのは貴重な体験でした。
吉田都セレクション公演と同日開催で行けず終いと思っておりましたが公演が中止となってしまったため、友人が提案。
何かしらバレエに触れる機会ができ、友人には今も感謝が尽きません。

展示衣装はオデット、3幕4幕の王子、王妃(3幕?)、スペイン、ハンガリー王女で、衣装の写真撮影は禁止でしたのでその分じっくりと、裏側に至るまで鑑賞。
中でも、ハンガリー王女の黒とゴールドを細かく重ね合わせたチュチュの部分の複雑な作りや赤い宝石を彩った頭飾りの美しさには感嘆の声が零れそうになりました。
同時にこの役を踊られた3名のダンサーそれぞれの魅力も思い起こし、クールではっとさせる強さが目を惹いた廣田さん、
骨の髄まで高貴な美が宿り音楽との調和も見事であった細田さん、晴れやかゴージャスであった中島さん、と麗しいお3方が脳裏を過った次第です。
私は細田さんが好みでしたが、全く異なるタイプの廣田さん中島さんの 同役を鑑賞でき、キャスト違いの醍醐味を心から堪能いたしました。
そして王妃の衣装の重量感にはたまげ、衣装負けしない存在感や着用して颯爽と歩く筋力、更には威厳を示す精神力、と
本島さん盤若さんの実力に再度平伏したい心持ちとなりました。あるお世話になっている方が仰っていた、貴族達の衣装に対して「小林幸子」 の例えも納得でございます。

先日行われた2022/2023シーズンラインアップ発表ではこのライト版『白鳥の湖』の早い再演が2023年6月公演にて組まれ
本公演前には、今年は2月末にシンデレラ編を上演予定が中止になってしまったエデュケーショナルプログラムでも取り入れられるとのこと。
ダークな趣きの濃い作品をいかにして分かりやすく紐解き展開させていくか、構成も楽しみにしたい企画です。




ソラマチにて、期間限定メニュービールパンナコッタ。上にのったビール泡がふわり。そして器も中身もルビー色が美しうございます。

2022年3月1日火曜日

新国立劇場2022/2023シーズン バレエ&ダンス ラインアップ発表




新国立劇場の2022/2023シーズン バレエ&ダンス ラインアップが発表されました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet-dance/news/detail/77_022126.html

https://www.nntt.jac.go.jp/release/press/lineup-ballet-dance-2022-2023.pdf

※ホームページよりざっと抜粋
◆バレエ
新国立劇場 開場25周年記念公演
ジゼル <新制作>

くるみ割り人形

ニューイヤー・バレエ
A Million Kisses to my Skin <新制作> / シンフォニー・イン・C / 未定

コッペリア

シェイクスピア・ダブルビル
夏の夜の夢 <新制作> / マクベス <新制作・世界初演> 

白鳥の湖


ダンス◆
新国立劇場バレエ団
春の祭典

新国立劇場バレエ団
DANCE to the Future 2023

日本の洋舞100年・第4弾
ダンス・アーカイヴ in JAPAN 2023


唸り声を上げてしまいそうな、面白さが光る作品が揃った印象です。まず開場から四半世紀を記念してのシーズンオープニングは吉田都監督も演出に加わる『ジゼル』。
私の想像力欠如により、解説を読んでも全く様相が見えてこないところでございますが、現代の味付けもあるのか、幕開けを楽しみに待ちたいと思います。
新国立劇場開場以来全幕『ジゼル』の新制作は初。少数派かもしれませんが、お祭りらしいカラフルに華やぐ1幕と
冷たく整然とした美が連なる2幕の対比がはっきりとしており名前が彫られたお墓も立派で
1幕ジゼルの青い村娘衣装も好みなデザインでセルゲイエフ版がとても気に入っていた管理人はちょいと寂しうございます。
しかし、相変わらず凝り固まった思考回路を壊してくださる方が日によってはきっと舞台に現れることでしょう。

そして2022年から2023年にかけても年末年始無休営業再びとなる『くるみ割り人形』。今度こそは新しいペア誕生を望みます。
加えて大晦日は昨年飛ぶように売れていた鴨ネギ蕎麦をまた味わえますように。もう演出や振付に関しては諦めの境地に達しておりますのでとやかく申しません笑。
ニューイヤー・バレエはもう1作品の発表も待たれます。インCは楽章ごとの色分け衣装への変更してくださるとめでたさも倍増しそうに思うのだが。

そして来ましたプティ版コッペリア!配信で終わらせず、改めて客席から鑑賞して欲しいとの願いからでしょう。
どうか、あの奇跡の世紀の共演なる組み合わせ再実現を!!!!!!次こそは客席から拝見したい!!!!

最も意表を突かれたのはファミリー向け或いは全幕物が主流であったゴールデンウィーク公演。ダブル・ビルとしてシェイクスピア作品2本立てです。
『真夏の夜の夢』は今度こそ、でございますし犯罪や亡霊、狂死、と悍ましくも人間の弱さも浮き彫りにして描いて行く
『マクベス』の物語が、決して詳しくはないもののたいそう好きな者としては大歓迎。90年代初頭にムハメドフ主演の映像は見ましたが
何が何だか分からず終いでしたので(我が理解力不足)初台ではどっぷり浸かりたい。
威厳がありそうでもちょっと抜けた点も魅力に映る浮遊感も容姿も美しい妖精王も、苦悩しながら狂おしい悲劇へと進むマクベスも、
もう主語は省略いたしますがああ観てみたい。妄想が尽きずですので次行きます。

6月はピーター・ライト版『白鳥の湖』再演。昨秋のバレエ団初演、勝手に抱いていた暗い、憂鬱なイメージを「日によっては」覆された版でしたので楽しみでございます。

2022年夏の子供バレエには『ペンギン・カフェ』が登場。何度も観ている作品ですが、子供向けとしての企画だからこその新たな切り口から堪能させていただきます。
来年6月の白鳥の湖前にはエデュケーショナル・プログラムの第二弾として『白鳥の湖』が登場。
先月末に予定していた第一弾の『シンデレラ』中止になってしまいましたので是非とも実現を。

ダンス公演では平山素子さん版『春の祭典』『半獣神の午後』とこれまた面白みがありそうな(前者もまだ観ておらず)作品が並び、来年3月にはDTFもあるもよう。
2020年春に披露予定であった幻となってしまった作品もこの機会にお披露目を!

そんなこんなで2022年の3月1発目から言いたい放題な内容で失礼いたしました。
まだ先でございますが、来シーズンは全ての公演を中止なく、客席から鑑賞できますように。