2020年4月17日金曜日

新国立劇場バレエ団 牧阿佐美さん版『白鳥の湖』を振り返る




※今秋2020/2021シーズン開幕演目はピーター・ライト版『白鳥の湖』から『ドン・キホーテ』へ変更。
それに伴い、来春に延期となった山形公演では牧さん版『白鳥の湖』の上演決定と発表がありました。
今回振り返りを行ってしまいましたが、再度牧さん版白鳥総仕上げ編として来春行う予定でおります。


今年4月4日(土)新国立劇場バレエ団初の東北公演を予定していた山形での牧阿佐美さん版『白鳥の湖』公演鑑賞後に綴ろうと思っておりましたが
公演は来年に延期。上演可能か否か先が見えぬ中で練習を重ねてきたダンサー
そして新国立劇場バレエ団との初共演にも注目が集まっていた山形交響楽団を始め
公演に向けて準備に携わってこられた方々の心境を察すると胸が詰まり、世界規模での緊急事態であるとは分かっていてもやるせなさばかりが込み上げてきます。
また延期となった公演においてはバレエ団が今秋より採用するピーター・ライト版上演予定と発表されましたため
初演から鑑賞している牧阿佐美さん版『白鳥の湖』振り返りを中途半端な機会ではございますが書いて参りたいと思います。

初演は2006年11月。この年のシーズン開幕や演目の並びは今思えば特異で、バレエ団の開幕が10月上旬。
しかもガラではなく『ライモンダ』全幕で開幕でしたので、10月11月12月と
全幕物を3ヶ月連続で本拠地にて上演した珍しいシーズンでした。単発ではなく各々の演目につき5回以上は公演があり
『ライモンダ』は大阪公演(梅田芸術劇場にて1回、バレエ団にとって初の大阪公演)も行われ
開幕から3ヶ月はいつにも増して大変多忙な日程であったと想像いたします。

牧さん版『白鳥の湖』は初演以降も多くの再演を重ね、ひょっとしたら『シンデレラ』に次ぐ再演回数多数の作品かもしれません。
プログラムや会報誌のジアトレなど牧阿佐美さんへのインタビュー読み進めると牧さんのこだわりや美意識が思い起こされ
悲劇ではなく幸せな結末にして観客に劇場をあとにして欲しいと確かアトレのインタビューで語っていらっしゃり
愛の力でロットバルト打倒とはいえ王子がオデットを担いでの前進姿を観る度「最終兵器オデットマン」に思えてしまった終幕も今は懐かしさが募ります。
振付の基盤はセルゲイエフ版とさほど変わりないものでしたが、一番の変更点はプロローグ挿入とルースカヤの追加でしょう。
プロローグは刺繍をするオデットと侍女の3人いたはずが、いつの頃からかオデット1人に(確か)。
ルースカヤは侍女を従えるわけでもなく本当にソロでしかも短いとは言い難い曲で踊るため魅せることが容易ではない役ながら
ベテラン重鎮から中堅、時には将来を期待される若手が務め、歴代のダンサーを並べるとまさに百花繚乱です。
それから現代の観客の時間感覚に合わせようと休憩は1回のみに変更。舞踏会と終幕の湖畔の場が休憩無しでの上演となりました。
女性陣の着替えの多忙さに更に拍車がかかり舞台袖にあるであろう着替え小屋の猛烈な慌ただしさは想像に難くありません。

そして湖畔前の不安や憂鬱さを募らせるソロと舞踏会のあとにオデットを追いかける王子の嘆きと懺悔なるソロが追加。
後者は閉まった幕の前で披露され、下手すれば場繋ぎ及び時間稼ぎ役或いはオデットたちの前座な役にもなりかねないわけですが
そこは新国立男性陣。ただの間抜け王子にはならず、内側から迸る心情を届けてくださっていました。

最終幕は、オデットが許し王子との愛を再確認するこれまたいつの頃からか悲しみを鬱々と引き摺るゆったりしたワルツがカットされ
すぐさま愛の攻撃作戦へ。スピーディーな展開を更に追求したが故でしょうが、心残りな1点です。

衣装は随分と大胆に一新。重厚ではっきりとした色彩、濃いめのベルベットを多用していたセルゲイエフ版に対して
牧さん版は全体が繊細ですっきり洗練路線を展開し、特に1幕ワルツのソリスト男女の淡い緑を配した色彩は
ドイツ周辺地域の初夏の低湿な陽気を思わせる清涼感が漂い、幕開けから爽やかな心持ちにさせるデザインでした。
王子の前半の衣装が光沢を含んだ青いベルベット地に金糸で彩った見事なまでに品良く華やぐ色味であった点も忘れられず、
ウヴァーロフやマトヴィエンコ、リー・チュン、ムンタさんらゲストで招聘されたダンサーの方々も
持ち込みではなく皆さん着用なさっていたと記憶しております。
そして花嫁候補は喜んだであろう、お揃いのソフトクリーム帽子からめでたく脱却し
白を基調にしつつも頭飾り衣装ともにお国柄が表れたデザインへと変更。
加えて王子は提灯袖から、ロットバルトはチリチリラーメンヘアーなビジュアル系ロックバンドから脱却。

一方セルゲイエフ版のほうが私個人としては好みだった衣装も何点かあり、例えばオデットとオディールの衣装。
牧さん版は良く言えば身体の線がくっきりと見える、ラインストーン以外は極力装飾を控えたすっきりしたデザインですがやや物寂しい気もしており
セルゲイエフ版における両役とも羽をこんもりと盛ったチュチュ、オディールに至っては頭飾りも含め赤いストーンを散りばめていたくゴージャス。
提灯袖、チリチリラーメンロットバルト、ソフトクリーム帽子も合わせて
セルゲイエフ版踏襲のこどもバレエ『白鳥の湖』でお目にかかれる機会がまたあれば幸いでございます。

美術がぼんやり淡めのタッチで描かれていた点も設定国を明確にせずお伽話の世界に入り込んで欲しいとの意向だったようで
中でも抑えた暗めの色で整えられた湖がシンプルに描かれた背景美術はダム湖にも錯覚させましたが、プログラムに目を通すと納得したものです。
美術とはまた違いますがハリボテ白鳥廃止になった点も寂しく笑、王冠被った白鳥を目にした王子が大袈裟に驚いて弓矢を持ったまま袖へと走る
往年の古き良きロシアバレエと日本昔ばなしが融合したあの不自然さこそおとぎ話な『白鳥の湖』を観に来た気分を高めてくれる効果大だっただけに
白鳥さん、子どもバレエでの遊泳を心待ちにしております。

さて前置きが長くなるのは毎度の定番であるのはさておき、公演年ごとに印象深く刻まれている内容を綴って参ります。
万一抜けがありましたらご容赦ください。


2006年11月公演
初日を飾ったのはゲストの常連であったザハロワとマトヴィエンコペア。
歓喜したのは酒井はなさん山本隆之さんペアの公演日がのちにDVD化されて新国立バレエ初の映像ソフトとして2009年に発売。
勿論大事に手元に持っております。(同時発売は2009年ザハロワ主演日のライモンダ)
当時研修生であった小野絢子さん、井倉真未さんがナポリでの出演も話題になりました。
この後何年も続いておりますが、何と言っても山本さんの青いベルベット衣装のお姿がまあ眼福。
花嫁候補トップバッター寺島まゆみさんが煌めくオーラ発散、初日は寺島さんが現れた瞬間
遂に遂にソフトクリーム帽子からの脱却と観客から祝砲が飛んでいた気がいたします笑。
花嫁候補が恐ろしく豪華で寺島さん始め本島美和さんに真忠久美子さん、寺田亜沙子さんの並びなんぞ
華麗なる火花を散らす対決でございました。


◆2008年大阪フェスティバルホール公演
ボリショイよりルンキナ、ウヴァーロフを迎えて上演。大阪公演ならばなぜ山本さん主演でなかったのか
干支一回りした今も疑問を投げかけたくなるわけですが、海外ゲスト希望など諸々事情があったのでしょう。
フェスティバルホールは初訪問。当時は改装前でしたので古めかしい雰囲気漂う内観だったはず。
客席での出来事も印象深く、隣にいらした50代位の女性2人組が話しかけてくださり
主演のルンキナさん良かったですね、といった内容でしたが言葉が徐々に熱を帯びていく展開に。
「大阪言うたら山本隆之君の出身やなあ。何で今日主演やなかったんやろう?(私も心底同感)
あんたはバレエ習ってへんの?習ったらええのに。私たち今やってるねん。楽しいでー。青春や、青春!あはははは!!ほなまたな!!」
劇場や待合室など人が集まるところで偶然席が近くになった方と会話することは時々ありますが
初対面であってもこんなにも賑やかに言葉を発してしまう関西のパワーにはまだ大阪通いを始めてから3年目の新米東京人な管理人はたいそう驚き
そして大阪の方のオープンな人柄に触れることができて幸せに感じたのでした。


2008年6月公演
川村真樹さんがオデット/オディール初挑戦。平日昼公演でしたが鑑賞に出向きました。
5月公演の『ラ・バヤデール』を脚の治療のため降板なさっていた山本さんが千秋楽に復帰。
今思えば、最後に観た酒井さん山本さんペアによる初台での白鳥全幕でした。
当時はまだ正団員ではなかった?古川和則さんが新国立初登場、1幕ワルツの場で目に留まった際には
東京バレエ団での活躍が記憶に新しかっただけに大変衝撃でしたが新国立に新風を吹かせ
その後は『シンデレラ』陽気な義理のお姉さんや『ペンギン・カフェ』でのシマウマさんなど
思い返せば独特の個性で大活躍。近年も『シンデレラ』や『ロミオとジュリエット』モンタギュー公で出演され舞台を引き締めてくださっています。


2009年5月公演
新型インフルエンザが流行して若年層の間でも広がり、中学生のためのバレエ鑑賞日(ほぼ全席中学校団体が貸切)には来場者全員にマスク配布。
この日も足を運びましたが、当時は異様な光景に映っていたと今も覚えております。
確か男子校の中学生たちで幕間はたいそう賑やか笑、王子の騙しに成功したオディールが
高笑いして花を投げ走り去って行く箇所で中学生たちは終幕と思ったのか、喝采に嵐となった事態も微笑ましかったのでした。
同時に中学生諸君、君たちが観た王子様は世界トップクラスであることをよく覚えておくようにと後方席から無言で言い聞かせていた管理人笑。


2010年1月公演
小野さんがオデット/オディールデビュー。水曜日夜の公演でしたが、注目度が非常に高まっていた日程であったかもしれません。
ゲストのザハロワが直前降板し、他日主演の厚木三杏さんが急遽初日登場。初日開演前には牧さんが幕前に立ち挨拶。
ザハロワが出演を予定していたもう2回は厚木さんと川村さんが分担し
来日してから組むことが決まったお2人に寄り添うウヴァーロフの心のこもった鉄壁サポートも忘れられず。
福田圭吾さんの新国立での道化初挑戦もこの年であったはず。
前年秋に入団の福岡雄大さんによるフレッシュなトロワとキレキレスペインも話題になりました。
この年のダンツァでの山本さん、福岡さん、福田圭吾さんの対談によれば、福岡さんはトロワの衣装を実に気に入っていらしたご様子。
伊東真央(まちか)さんのナポリが反則級の可愛らしさで、両手を上に掲げてのお日様きらきら振付に頬が蕩けっぱなし。
ちなみに管理人の妹、前年に初演されたばかりの牧さん版くるみでの現代東京の演出には肩透かしだったようでしたが笑
全然知らずに観たクララの伊東さんの弾ける可愛らしさ軽やかさのすっかり虜になり、伊東さんのナポリ目当てに白鳥の湖も鑑賞。
1幕の村人でも伊東さんはすぐ発見できた、ウヴァーロフの頭身バランスが良い意味で驚異過ぎる、など満足度は高かったようで安堵。


2012年6月公演
米沢唯さんがオデット/オディールデビュー。中国国立バレエから初ゲストとしてワン・チーミンとリー・チュンが登場。


クラシックバレエハイライト(湖畔の場面のみ) 厚木・姫路・和歌山
厚木公演のみ鑑賞。平日夜でやや遠方とは言っても新宿から1本で行ける距離に位置する厚木で来客見込めるのか不安であったが的中。
しかしプログラムの質は良く、堀口純さんのオデットがしっとり感情を奏でる美しさがあり全幕が一段と楽しみになったのでした。


2014年2月公演
大雪に見舞われた翌日あたりに開幕。ちょうど冬季五輪開催中であったロシアのソチよりも東京の方が遥かに寒く積雪量も多き天候でした。
厚木でのクラシックバレエハイライトで観た堀口さんの全幕オデットに感激。
英国バーミンガムロイヤルバレエ団での『パゴダの王子』客演を控えていた小野さん福岡さんペアは初日の1回のみ登場。
16日の米沢さん、菅野英男さんペア日は皇太子殿下(現天皇陛下)が来場なさっての上演でした。
長田佳世さん、奥村康祐さんが共に初役?だったと思うが奥村さんの勢いと爽快感が止まらぬ鮮烈なジークフリート王子デビュー。
お2人とも翌月の新潟県柏崎市公演でも主演。




手塚プロダクションとのコラボレーションでピノコ登場。
そういえば、一時期存在したホワイエのガチャガチャはいずこへ。お目当てのダンサーが出るまで粘っていた友人もいました。


2015年6月公演
ムンタさんがゲスト出演。ゲネプロも鑑賞し、ペッタリ斜め分けだったためか一昔前のサラリーマンを彷彿笑。
そして入団前の木村優里さんがファーストキャストのルースカヤで登場。期待のかかり方が窺え、その後も目を見張る活躍を見せています。
米沢さん、ムンタさん日はNHKで放送されました。(録画したが、放送時にちらっと見た1幕冒頭以降はまだ見ておらず)





賛助会会員の方よりお声かけいただきゲネプロ鑑賞。サービスドリンク、アルコールも対象でした。


2018年5月公演
2公演のみの鑑賞であった前回2015年とはまるで別人となった管理人、心境及び鑑賞体制大違いで全日程鑑賞。
渡邊峻郁さんが牧さん版全幕では初のジークフリート王子役。
2016年の子ども白鳥を見逃しておりましたが、新国立では2015年以降この先全公演Z席(4階末端の最安値席)鑑賞で十分と宣言していた私が
2017年のヴァレンタインバレエでの黒鳥パドドゥ目当てにC席を購入する行動に走り、その後については省きますが
感情が深くこもっていて全幕観ているかのような出来に感激。(髪型はもう一歩だったが笑)
外部でも特殊なスタジオ空間にて1m程度の至近距離で鑑賞した湖畔のパドドゥのみや
全幕の中の1幕から湖畔までといった抜粋では何度か鑑賞していただけに待ちに待ったご登場でした。
ただ渡邊さんの白鳥の湖においては牧さん版よりも2019年の子どもバレエのほうが心に刻まれおり、
東京以外でも急遽の大阪公演含めて2回観たりと回数が多かった、だけではないと思うのだが。
演出が好みだった点も一因か、そうだ牧さん版のときより髪型が自然だったのだ。(そこかい)

主役日だけでなくソリストな役以外でも連日何処かしらにご登場、トロワは分かるが
プログラムにもキャスト表にも未掲載ルースカヤの付き人には大仰天。踊る箇所は一切無く、冒頭で登場するルースカヤ嬢に付き添い
背後を歩いてエスコート。王子がオディールに愛を誓い雷鳴が轟くと再び一緒に退散する、これだけの役で注目なんぞしたことはありませんでしたが
毛皮の帽子始め衣装、ブーツも渋めの茶色ですっきり整えたロシアな格好がまあ似合い
役の存在すら忘れかけていた身としては白鳥の楽しみ方がまた1つ増えたのでございます。
付き人も演者によって様々で渡邊さんは厳格な護衛官、中島駿野さんはおっとり優しい執事、小野寺雄さんはおとなしいお小姓、
木下嘉人さんは神経質そうなマネージャー、と個性も多様。2006年の初演から観ている牧版白鳥にて
まさか付き人観察する日が到来するとは人生分からぬものです。プリンシパル昇格前のダンサーに注目するとこうも連日面白いのかと
『シンデレラ』御者事件に続き『白鳥の湖』においても感じた公演でした。

付き人で締め括りそうになりましたが日によってはトロワが最も印象に刻まれた日もあり、
そう口にするのは人生初のバレエ鑑賞であった1989年ABT来日公演バリシニコフ版『白鳥の湖』以来。
柴山紗帆さんの美しい型を崩さぬオデット/オディールも予想以上に心に響き、他日も我が心はゴールデンウィークお祭りわっしょい。
今思えばこの年の公演が牧さん版白鳥最後の鑑賞となりました。



限定デザートカリッと香ばしいスワンシュー。子ども白鳥では湖を模したゼリーが敷かれ、小ぶりの三羽。
更なる進化型で販売していました。マエストロ自信作!?



柴山さん奥村さん主演日鑑賞後はお世話になっている友人とスワンレイクカフェへ。レジ前に描かれた白鳥さんたち、おめかしして乾杯。



スワンレイクビール。グラスも白鳥です。



たっぷり注いでくださったワイン。コースターがまた細やかで美しい柄。1997ですから新国立劇場と同い年のようです。


2018年11月札幌公演
札幌文化芸術劇場こけら落としシリーズの一環でチケット入手できず残念ながら鑑賞は叶いませんでしたが、小野さん福岡さんが2日連続で主演。
貴族が全国公演ならではの配役だったようで、興味津々。


長くなりましたが、初演からほぼ全公演鑑賞しており振り返れば様々な出来事が脳内を駆け抜けていきます。
多少は突っ込みどころもあったにせよ、綺麗なバレエを魅せる古典作品としては衣装や美術も合わせて良作であったと思いますし
奇を衒っていないためバレエ初心者にも案内しやすかった点も強みだったかもしれません。
最後の上演と強調されていた山形公演を見届けることができずに終わってしまったのは悔やまれます。

今秋からはピーター・ライト版『白鳥の湖』。国王の葬儀から始まり、幕開けから黒を基調とした舞台美術や衣装に彩られ
爽やかな祝宴であった牧さん版とは全く異なる趣きです。
スウェーデン王立バレエの映像を講座で少し鑑賞し、1幕は特に王子の細かい芝居が至るところにあり
技術は勿論、相当な演技力がなければ場を持たすことが不可能な演出と見受けました。
新鮮なペアも組まれていますので、開幕を楽しみに待ちたいと思っております。

4 件のコメント:

さくらもち さんのコメント...

新国白鳥の詳しいヒストリー、あらためてありがとうございます。
ライトなファンでしたので細かいところはわかっていませんで、オデットと王子の変遷も興味深いです。
牧阿佐美版、セルゲイエフ版の中途半端なアレンジと言えなくもないですが、初台のスタンダードとしてはふさわしかったと思います。
私はあの最終幕の、ピアノ曲からアレンジして付け足された踊り、とくにバガテルが好きでしたので見られなくなるのは残念です。
ショパン風に、のほうも渡邊さん木村さんコンビは似合うでしょうね、見てみたいです。

しばらく不安な日々ですが、秋は新しい白鳥が見られますように。渡邊さんの暗い王子ははまるはずですわ。

ひふみ さんのコメント...

今となっては懐かしい牧阿佐美版「白鳥の湖」、私はとても好きでした。
初演の2006年は何故か鑑賞しなかったのですが、それ以降は17公演を観ております。
実はそれまで白鳥は特に好きな作品ではありませんでした。
でも、あの衝撃的なプロローグがとても気に入り、毎回楽しみになりました。
管理人さま、最後の牧版白鳥になるはずだった山形公演が延期になり、残念でしたね。
私も、山形へは行ったことがないので、行きたいと思っておりましたが・・・・
法学部の学生が、よく“総論賛成”“各論反対”という言葉を使いますが、
管理人さまのリポートを拝読しますと、時々その言葉を思い出すことがあります(笑)。
いずれにしましても、いつもながらの詳細な白鳥回顧録をありがとうございました! 
秋から始まるライト版も楽しみにいたします。ひふみ

管理人 さんのコメント...

さくらもち様

こんばんは。昨夜はコメントお寄せいただきありがとうございました。
無駄に長いヒストリーを辛抱強くお読みいただき、この度も感謝申し上げます。
そうですよね、ドラマ性が非常に詰まった流れではなかったものの変なアレンジはせず(これ大事ですよね!)
古典を美しく型を綺麗に、そしてコール・ドの完成度もここぞとばかりに魅せる振付演出でしたから
新国立の古典の定番として長らく上演を重ねてきたのは良かったと思っております。
分かります、バガテルの曲調は聴き惚れますよね。
哀しみを帯びた静けさと軽やかさが共存した調べに乗せてコール・ドと二羽の白鳥が絡んで
フォーメーションを描いていく振付がぴたりと合っていたことを思い出します。
ショパン風のほうが途中からカットされてしまい、オデットの深い傷が癒えていく様を
密に描写していたと感じておりましたため、古典でもドラマティックに感情を通わせるお2人によく似合いそうです!

ライト版、1幕は美術も装置も衣装も黒づくめですから、余程の演者でなければ埋没しかねないでしょうし
存在感を示すことが実に難しいと思われますが、渡邊さんの陰鬱さを滲ませた王子は嵌りそうな予感がいたします。(にやり)
生の舞台芸術から遠ざかる日々が続いておりますが想像のキャンバスを一層膨らませ、
新制作白鳥が鑑賞できるよう願いを込めながら待ちたいと思います。

管理人 さんのコメント...

ひふみ様

こんばんは。読みたがる方は少ないであろうオタク回顧録にご感想を綴ってくださりありがとうございました。
最後まで目を通していただき、深謝するばかりです。
ひふみさんもかなりの回数をご覧になっていますね。
きっと様々な舞台が脳裏で再生されていることでしょう!
さらりと美しい『白鳥の湖』であった印象で、幕開けの明るく爽やかな祝祭感は他のどの版にも負けぬ魅力があったかと思っております。
賑やかだけでなく、ワルツソリストも村人も全ペア男女同人数で迫力もしっかり備わっていましたよね。
パドトロワ女性の、細やかなレースに彩られた深藍色衣装もとても好きでした。

プロローグも分かりやすいですよね。近年の新演出にて目にした謎と残酷さを忍ばせたプロローグも何本かありましたから
ロットバルトがオデットを隠す振付が初演時には紅白歌合戦での小林幸子さんの衣装トリックなんぞ申していた私も
牧さん版は誰が観ても理解できる明快さのあるプロローグと捉えるようになりました笑。

はい、私も山形は未着陸の地ですので最後の牧さん版白鳥の上演であり
山形交響楽団の演奏も合わせて尚のこと楽しみにしておりましたが
ライト版の予定であっても中止ではなく延期であるのは幸運と思い、来春を待ちたいと思います。

>総論賛成”“各論反対…

本当ですか笑?毎回どっちつかずな内容を連ねておりますため、漢字8文字でそう表現していただけて嬉しくなります。
新国立によるライト版白鳥、打って変わって重厚感のある舞台が繰り広げられると思うと楽しみが増してきますね!