本日は4月28日、ボリショイ・バレエの名花エカテリーナ・マクシモワの命日です。(1939年-2009年)
逝去された日、ちょうどザハーロワが座長を務めるガラ『ザハーロワのすべて』公演時期であったため
会場の東京文化会館でもマクシモワを悼む声があちこちから聞こえてきた光景が思い起こされます。
2年前に綴った記事とだいぶ重なる内容ではございますが、今一度是非ご覧いただきたい映像であるためご容赦ください。
プロフィールにも掲載しておりますが、マクシモワはとても好きなダンサーの1人です。
書籍を通しては『ロミオとジュリエット』舞踏会で接近するロミオにはっと目を向ける姿が印象深いジュリエットや
『スパルタクス』フリーギア、『くるみ割り人形』マーシャ、『ドン・キホーテ』キトリなど
様々な舞台写真を眺める機会は度々ありながら初めて映像で目にし、心を持っていかれたのが今から23年前。
モスクワの赤の広場に特設された野外舞台で行われたガラ公演を収録したエッセンシャル・バレエで見たウラジーミル・ワシリエフと踊る『アニュータ』でした。
当時は原作も全く知らず勿論設定も把握できずな状態だったにも拘らず、高鳴る鼓動が止まらず
これ見よがしな派手な振付も無い、豪華な衣装を纏っているわけでもないパ・ド・ドゥながら
内面から滲み出る情感、そして目線だけでも語り合うパートナーシップにすっかり惹かれ大きな衝撃を受けたのです。
全幕ではまだ鑑賞しておりませんが、チェーホフの原作で家族のために裕福な家へと嫁ぐヒロインの生き様を描いた
『頸にかけたアンナ』を基にワシリエフがマクシモワに振り付けた作品で
音楽はヴァレリー・ガヴリーリンが手がけ、数々の郷愁感漂う曲で構成されています。
(以前知人に話したところ宇宙飛行士のガガーリンと間違えられてしまった。地球の青さを表現した言葉は名言であるとは思うが)
マクシモワのインタビューによれば最初にバレエ映画として制作されましたが、映画版を観た
ナポリのサンカルロ劇場のバレエ団から上演希望の依頼があり、初演はボリショイ劇場ではなくサンカルロ・バレエだったとのこと。
ボリショイではバレエ団がツアーで出払っている状況下であっても上演可能な作品という理由から上演に繋がったそうです。
ボリショイのレパートリーとして近年も上演されていますが1992年には東京にて上演されマクシモワがご出演。
1998年には現在東京バレエ団芸術監督を務める斎藤友佳理さんがマクシモワの手ほどきを受け
チェラービンスク国立オペラ・バレエ劇場に客演しタイトルロールを踊られました。
2000年には世界バレエフェスティバルでセルゲイ・フィーリンとパ・ド・ドゥを披露。
1992年のマクシモワ本人主演の舞台、そして例え抜粋であっても日本でこの作品を直で観るまたとない機会でありながら
斎藤さんペアによる世界バレエフェスティバルの舞台を見逃してしまい後悔しております。
『グラン・パ・クラシック』や『タランテラ』といった独立した作品や『海賊』や『ダイアナとアクティオン』など抜粋上演がすっかり定着している作品を除いては
ガラではなく極力全幕の中で鑑賞したいと思うものの、『アニュータ』のパ・ド・ドゥに限っては
勿論全幕もそれはそれは心に突き刺さる舞台であると想像できますがエッセンシャル・バレエの映像が格別。
刻々と日が落ちて薄暗くなっていく赤の広場の情景と光が灯された聖ワシリー寺院が映し出され、
荘厳な鐘が鳴り響く余韻に溶け込むようにしてマクシモワが登場。旅愁に一層誘われるのです。
また1992年の収録当時はソ連崩壊から5年も経っていない頃でまだまだロシアのバレエ熱が今以上に凄まじかったのでしょう。
観客の熱狂ぶりも見所、加えてこれぞロシアと唸らせる爆音祭りで盛り立てるモスクワ放送交響楽団の演奏も聴きどころです。
当ブログ、公式配信ではない動画は基本載せない方針ではございますがこれ以上の文字での説明は難しく、この映像は是非ご覧いただきたいため紹介いたします。
2つのパ・ド・ドゥを繋げて踊られていますが、特に前半のワルツが何とも哀切且つ劇的な曲調で
マクシモワとワシリエフが互いに寄り添いながら醸す情感の豊かさに心を揺さぶられます。
このワルツが好きな余り、繰り返し聴きたいと会議録音用の機械を借りてテレビのスピーカー付近に置き
カセットテープに録音する荒業まで行っていた管理人のオタク精神はさておき
パ・ド・ドゥで大事であるのは基本的な技術があるのは大前提として2人が気持ちを通わせ感じ合うこと
身体全体で語りかけることであると話していた約20年前のインタビューがそのまま重なり
好きなパ・ド・ドゥを聞かれ、私と同様この作品を即答なさる方が都内に5人でもいらしたら幸いでございます。
マクシモワの話で思い出すのは、2000年頃に日本の週刊誌にて掲載された記事「過熱するおバレエ」。
(その頃子供の受験を巡る痛ましい事件があり、皮肉ったタイトルを記者か編集者が付けたと思われる)
日本における、一部の教室で行われている早過ぎるトゥ・シューズ許可や余りに難しいテクニックを押し込んでのコンクール出場など
危険な指導方針に警鐘を鳴らしていたこと。「子供に無理のない教育を」と必死に訴えていた内容は今も覚えております。
あれから約20年が経過し、医療も発達して格段に素早い情報収集も可能な時代に移りましたが
コンクール数は町興し状態と見紛うほどに増加傾向にある現在の日本のバレエ事情をご覧になったらどういった指摘をされるのか気になるところです。
※赤の広場野外コンサートでもう1本紹介したい映像があり、来月上旬に綴って参る予定でおります。
バレエについての鑑賞記、発見、情報、考えたことなど更新中
2020年よりこちらに引越し、2019年12月末までの分はhttp://endehors.cocolog-nifty.com/blog/に掲載
2020年4月28日火曜日
2020年4月24日金曜日
【お茶の間観劇】【飛ばし飛ばしで鑑賞】ボリショイ・バレエ団『スパルタクス』/『眠れる森の美女』
ボリショイ劇場が配信した『スパルタクス』、『眠れる森の美女』を飛ばし飛ばしで鑑賞いたしました。
※どうも私は自宅での鑑賞の場合、DVDならば大きめのテレビ画面でじっくり2時間3時間堪能できるようですが
誠に恥ずかしい限りで携帯電話画面での動画鑑賞では30分程度が限界のため
(現在故障中ですが仮にパソコンであっても同様と想像)全幕通しての堪能が困難であり
(劇場という非日常空間に身を置くからこそ集中力も研ぎ澄まされるといった内容を演劇関係の記事で読みましたが、思わず共感してしまった)
このご時世せっかく世界中の劇場が配信してくださっている映像をもっと観るべき満喫するべきであるのは重々承知しておりますが
旬の配信映像詳細鑑賞記には到底至らぬ、何時にも増して大雑把な内容である旨をどうかお許しください。
『スパルタクス』
スパルタクス:ミハイル・ロブーヒン
フリーギア:アンナ・ニクーリナ
クラッスス:ウラディスラフ・ラントラートフ
エギナ:スヴェトラーナ・ザハーロワ
まだ全編通しては生でも映像でも観たことがない作品ながら、ハチャトリアンの魂揺さぶるドッカンな音楽も含め好きでたまらぬこれぞボリショイな作品。
幕開けのローマ軍たちによる舞台を目一杯覆う一斉跳躍付き行進が視界を支配し、開演早々に興奮へ到達です。
ロブーヒンの雄々しく熱い叫びが聞こえてくるスパルタクスに、ニクーリナの美しいラインはそのままに
全身から涙が零れ落ちていそうな情感のこもった踊りが胸を打ち、ガラでも抜粋披露の機会が多いアダージオは
全幕の中で観ると抑圧された思いが画面越しにも広がりを感じさせて止まず、高いリフトもただ持ち上げているのはなく
溢れ出る感情がそのまま昇華したフォルムに思えるばかりでした。
配役で驚かされたのはラントラートフによるクラッスス。善良な役柄の印象が強く、
所謂敵役をどう造形するか興味をそそられましたが、序盤から舞台の支配力に驚嘆。
ギラリとした視線や他を圧するパワー、対角線上にひたすら跳躍を繰り返しながら移動していく身体泣かせな振付も余裕綽綽な姿でした。
ザハーロワのエギナは女王感は歴代随一であろう君臨ぶりで、会った者には有無を言わせぬ艶かしさ、
更に持ち前のプロポーションをこれでもかと生かし脚線美でも観る者を虜にさせるのも説得力あり。
ただこの役はマリーヤ・ブイローワの野心見え見えで渋き美しさも醸す姿のほうが好みでございます。
1984年収録映像にてご覧になれますので是非どうぞ。スパルタクスはムハメドフ、フリーギアはベスメルトノワです。
それから衣装にも着目。全編殆どが茶色系の衣装ばかりで下手すれば唐揚げ薩摩揚げ肉団子で埋まった彩りの宜しくないお弁当状態にもなりかねない条件ながら
そう思わせないのはボリショイで数々の作品の衣装や美術を手掛けたシモン・ヴィルサラーゼのデザインだからこそ。
ローマ軍側には渋めの銀を大胆に合わせて程よい光沢を出し、飽きのくる色彩とは感じさせないのです。
とにかく今年11月末の来日公演で予定通り鑑賞できますように。ボリショイ劇場のオーケストラも帯同ですから
長らく他国の支配に脅かされていた自身の祖国アルメニアに奴隷たちの心情を重ねながら書き上げたとされる
ハチャトリアンの音楽を汗だくな熱い演奏で聴かせてくださるに違いありません。
※守山実花先生による『スパルタクス』に特化した1日講座(主催・ダンサーズサポート)を2017年に受講。
概要や名演ダンサー、振付の特徴、音楽についても学んだ濃くそしてマニアックな講座でした。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/4-86ef.html
『眠れる森の美女』
オーロラ姫:スヴェトラーナ・ザハーロワ
デジレ王子:デヴィッド・ホールバーグ
カラボス:アレクセイ・ロパレヴィチ
リラの精:マリヤ・アラシュ
フロリナ王女:ニーナ・カプツォーワ
青い鳥:アルチョム・オフチャレンコ
2011年ボリショイ劇場新装こけら落とし時のリハーサルやホールバーグへのインタビュー。グリゴロさん、客席から何か指示を飛ばしています
NHKでテレビ放送され、DVD化もされていながら放送を見ず録画も購入もせずなまま気づけば2020年。
主役2人は割愛しますが(無責任にもほどがありますが)、今回観る気になったのは主役以外の配役の充実に惹かれたためであり
フロリナ王女のカプツォーワ、勇気の精のアンドリエンコ、銀の精のティホミロワ、カナリア/赤ずきんのスタシケーヴィチ、
そしてブライドメイドにはスミルノワまでが配役。男性陣も層が厚く、4人の王子にはラントラートフにあの人は今なるドミトリチェンコのお名前も並び
リラの精の小姓にベリャコフにロヂキン、と現在はプリンシパルとして主役を張る方々が
コール・ドや個人名無しの役柄で大活躍で、主役そっちのけで観察に勤しんでしまいました。
ただ携帯電話画面では限界があり、配信へ感謝を込めてDVD購入を検討しております。
1点気がかりであったのはボリショイにしては、またバレエの殿堂である劇場の新たな船出の初日にしては熱量が低く淡白であった点。
綺麗であったのは紛れもない事実ですが、上品にまとまり過ぎていた気がいたします。
あくまで憶測ですが、ボリショイの改装にあたり天井の高さ不足などツィスカリーゼが不満を訴えていた記事を何かで読み
新体制への疑念は上演にも何かしら影響が及んでいたのかもしれません。
美術や衣装も一新され、衣装はフランカ・スクァルチャピーノが担当。これまでのヴィルサラーゼによる
王道路線ながらも華美な装飾は控え、やや陰りのある色彩美で整えられたデザインとは様変わりして明るいトーンへと変更。
ヴィニチオ・シェリによる降り注ぐ陽光彷彿させる照明効果もあり、とにかく全体が煌びやかな装いであった印象です。
実はボリショイの眠りはヴィルサラーゼの衣装の時代も含めて映像でも生でも目にしたことが殆んどなく、好きなバレエ団ながら不思議なもの。
振り返ると、バレエを観始めた頃にボリショイのレーザーディスクが続々発売され、『ライモンダ』や『くるみ割り人形』と同様
眠りの映像も自宅にて目にする機会はありました。しかし主演のニーナ・セミゾロワが
鑑賞歴数ヶ月のド素人が観てもオーロラ姫が似合っていなかったのが明らかで16歳にしては妖艶過ぎる姫に1幕では目を疑ってしまったほど。
(セミゾロワの名誉のために申せば、石の花での銅山の女王は威厳や恐ろしさを秘めた役どころがぴったりで絶品)
結婚式は辛うじて鑑賞できましたが、今度はオーロラ姫のヴァリエーションがボリショイ特有の楽譜なのか
終盤で回転しながら舞台を大きく回りつつ脚を高く上げる箇所にてアウフタクト(音楽用語自信無いが恐らく)が無く、ぶつ切りに響いてしまったのです。
眠り全幕を上演しアナニアシヴィリ、グラチョーワ、ルンキナが日替わりで登場した2002年の来日公演には残念ながら一度も足を運べませんでしたので
(主役の鬘は各々に任せられていたのか当時の書籍での記憶ではアナニアシヴィリは無し、グラチョーワはグレー系、ルンキナは白)
その際の音楽も気になるところですが、そんなこんなでボリショイ眠りにはほぼ触れることなく現在に至っていたのでした。
ソ連時代の映像で1幕をナデジダ・パヴロワ、2幕をリュドミラ・セメニャカ(王子はアンドリス・リエパ)、3幕をセミゾロワ(王子はユーリー・ヴァシュチェンコ)が
分担で登場した映像でもアウフタクトやはり無し。図書館で借りた、ボリショイ劇場管弦楽団による眠りCDでも無し。
理由は未だ分からず約30年来の謎です。ご存じの方がいらっしゃいましたらお知らせいただけますと幸いでございます。
※詳細キャスト
https://www.fairynet.co.jp/SHOP/4560219322660.html
※美術のエツィオ・フリジェリオと衣装のフランカ・スクァルチャピーノはご夫婦だそう。
パリオペラ座のヌレエフ版『ラ・バヤデール』もお2人が組んで手がけているとのこと。
https://www.abc.es/cultura/abci-ezio-frigerio-y-franca-squarciapino-sesenta-anos-juntos-dentro-y-fuera-escena-201805050135_noticia.html
次回のボリショイ劇場配信は『現代の英雄』。ボリショイ・バレエinシネマさんのツイッターにて詳細な鑑賞手引きをご覧いただけます。
2017年にシネマで鑑賞。幕ごとに色合いががらりと変わる展開で青年ペチョーリンの人生を描いた、レールモントフ原作の重厚な作品で
ペチョーリンは幕ごとに異なるダンサーが務め、各々に絡む女性も合わせて主役級が総登場しますので
とっつきにくいとお思いになった方も一度はご鑑賞をお勧めいたします。
当時の感想はこちらでございます。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-0842.html
※どうも私は自宅での鑑賞の場合、DVDならば大きめのテレビ画面でじっくり2時間3時間堪能できるようですが
誠に恥ずかしい限りで携帯電話画面での動画鑑賞では30分程度が限界のため
(現在故障中ですが仮にパソコンであっても同様と想像)全幕通しての堪能が困難であり
(劇場という非日常空間に身を置くからこそ集中力も研ぎ澄まされるといった内容を演劇関係の記事で読みましたが、思わず共感してしまった)
このご時世せっかく世界中の劇場が配信してくださっている映像をもっと観るべき満喫するべきであるのは重々承知しておりますが
旬の配信映像詳細鑑賞記には到底至らぬ、何時にも増して大雑把な内容である旨をどうかお許しください。
『スパルタクス』
スパルタクス:ミハイル・ロブーヒン
フリーギア:アンナ・ニクーリナ
クラッスス:ウラディスラフ・ラントラートフ
エギナ:スヴェトラーナ・ザハーロワ
まだ全編通しては生でも映像でも観たことがない作品ながら、ハチャトリアンの魂揺さぶるドッカンな音楽も含め好きでたまらぬこれぞボリショイな作品。
幕開けのローマ軍たちによる舞台を目一杯覆う一斉跳躍付き行進が視界を支配し、開演早々に興奮へ到達です。
ロブーヒンの雄々しく熱い叫びが聞こえてくるスパルタクスに、ニクーリナの美しいラインはそのままに
全身から涙が零れ落ちていそうな情感のこもった踊りが胸を打ち、ガラでも抜粋披露の機会が多いアダージオは
全幕の中で観ると抑圧された思いが画面越しにも広がりを感じさせて止まず、高いリフトもただ持ち上げているのはなく
溢れ出る感情がそのまま昇華したフォルムに思えるばかりでした。
配役で驚かされたのはラントラートフによるクラッスス。善良な役柄の印象が強く、
所謂敵役をどう造形するか興味をそそられましたが、序盤から舞台の支配力に驚嘆。
ギラリとした視線や他を圧するパワー、対角線上にひたすら跳躍を繰り返しながら移動していく身体泣かせな振付も余裕綽綽な姿でした。
ザハーロワのエギナは女王感は歴代随一であろう君臨ぶりで、会った者には有無を言わせぬ艶かしさ、
更に持ち前のプロポーションをこれでもかと生かし脚線美でも観る者を虜にさせるのも説得力あり。
ただこの役はマリーヤ・ブイローワの野心見え見えで渋き美しさも醸す姿のほうが好みでございます。
1984年収録映像にてご覧になれますので是非どうぞ。スパルタクスはムハメドフ、フリーギアはベスメルトノワです。
それから衣装にも着目。全編殆どが茶色系の衣装ばかりで下手すれば唐揚げ薩摩揚げ肉団子で埋まった彩りの宜しくないお弁当状態にもなりかねない条件ながら
そう思わせないのはボリショイで数々の作品の衣装や美術を手掛けたシモン・ヴィルサラーゼのデザインだからこそ。
ローマ軍側には渋めの銀を大胆に合わせて程よい光沢を出し、飽きのくる色彩とは感じさせないのです。
とにかく今年11月末の来日公演で予定通り鑑賞できますように。ボリショイ劇場のオーケストラも帯同ですから
長らく他国の支配に脅かされていた自身の祖国アルメニアに奴隷たちの心情を重ねながら書き上げたとされる
ハチャトリアンの音楽を汗だくな熱い演奏で聴かせてくださるに違いありません。
※守山実花先生による『スパルタクス』に特化した1日講座(主催・ダンサーズサポート)を2017年に受講。
概要や名演ダンサー、振付の特徴、音楽についても学んだ濃くそしてマニアックな講座でした。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/4-86ef.html
『眠れる森の美女』
オーロラ姫:スヴェトラーナ・ザハーロワ
デジレ王子:デヴィッド・ホールバーグ
カラボス:アレクセイ・ロパレヴィチ
リラの精:マリヤ・アラシュ
フロリナ王女:ニーナ・カプツォーワ
青い鳥:アルチョム・オフチャレンコ
2011年ボリショイ劇場新装こけら落とし時のリハーサルやホールバーグへのインタビュー。グリゴロさん、客席から何か指示を飛ばしています
NHKでテレビ放送され、DVD化もされていながら放送を見ず録画も購入もせずなまま気づけば2020年。
主役2人は割愛しますが(無責任にもほどがありますが)、今回観る気になったのは主役以外の配役の充実に惹かれたためであり
フロリナ王女のカプツォーワ、勇気の精のアンドリエンコ、銀の精のティホミロワ、カナリア/赤ずきんのスタシケーヴィチ、
そしてブライドメイドにはスミルノワまでが配役。男性陣も層が厚く、4人の王子にはラントラートフにあの人は今なるドミトリチェンコのお名前も並び
リラの精の小姓にベリャコフにロヂキン、と現在はプリンシパルとして主役を張る方々が
コール・ドや個人名無しの役柄で大活躍で、主役そっちのけで観察に勤しんでしまいました。
ただ携帯電話画面では限界があり、配信へ感謝を込めてDVD購入を検討しております。
1点気がかりであったのはボリショイにしては、またバレエの殿堂である劇場の新たな船出の初日にしては熱量が低く淡白であった点。
綺麗であったのは紛れもない事実ですが、上品にまとまり過ぎていた気がいたします。
あくまで憶測ですが、ボリショイの改装にあたり天井の高さ不足などツィスカリーゼが不満を訴えていた記事を何かで読み
新体制への疑念は上演にも何かしら影響が及んでいたのかもしれません。
美術や衣装も一新され、衣装はフランカ・スクァルチャピーノが担当。これまでのヴィルサラーゼによる
王道路線ながらも華美な装飾は控え、やや陰りのある色彩美で整えられたデザインとは様変わりして明るいトーンへと変更。
ヴィニチオ・シェリによる降り注ぐ陽光彷彿させる照明効果もあり、とにかく全体が煌びやかな装いであった印象です。
実はボリショイの眠りはヴィルサラーゼの衣装の時代も含めて映像でも生でも目にしたことが殆んどなく、好きなバレエ団ながら不思議なもの。
振り返ると、バレエを観始めた頃にボリショイのレーザーディスクが続々発売され、『ライモンダ』や『くるみ割り人形』と同様
眠りの映像も自宅にて目にする機会はありました。しかし主演のニーナ・セミゾロワが
鑑賞歴数ヶ月のド素人が観てもオーロラ姫が似合っていなかったのが明らかで16歳にしては妖艶過ぎる姫に1幕では目を疑ってしまったほど。
(セミゾロワの名誉のために申せば、石の花での銅山の女王は威厳や恐ろしさを秘めた役どころがぴったりで絶品)
結婚式は辛うじて鑑賞できましたが、今度はオーロラ姫のヴァリエーションがボリショイ特有の楽譜なのか
終盤で回転しながら舞台を大きく回りつつ脚を高く上げる箇所にてアウフタクト(音楽用語自信無いが恐らく)が無く、ぶつ切りに響いてしまったのです。
眠り全幕を上演しアナニアシヴィリ、グラチョーワ、ルンキナが日替わりで登場した2002年の来日公演には残念ながら一度も足を運べませんでしたので
(主役の鬘は各々に任せられていたのか当時の書籍での記憶ではアナニアシヴィリは無し、グラチョーワはグレー系、ルンキナは白)
その際の音楽も気になるところですが、そんなこんなでボリショイ眠りにはほぼ触れることなく現在に至っていたのでした。
ソ連時代の映像で1幕をナデジダ・パヴロワ、2幕をリュドミラ・セメニャカ(王子はアンドリス・リエパ)、3幕をセミゾロワ(王子はユーリー・ヴァシュチェンコ)が
分担で登場した映像でもアウフタクトやはり無し。図書館で借りた、ボリショイ劇場管弦楽団による眠りCDでも無し。
理由は未だ分からず約30年来の謎です。ご存じの方がいらっしゃいましたらお知らせいただけますと幸いでございます。
※詳細キャスト
https://www.fairynet.co.jp/SHOP/4560219322660.html
※美術のエツィオ・フリジェリオと衣装のフランカ・スクァルチャピーノはご夫婦だそう。
パリオペラ座のヌレエフ版『ラ・バヤデール』もお2人が組んで手がけているとのこと。
https://www.abc.es/cultura/abci-ezio-frigerio-y-franca-squarciapino-sesenta-anos-juntos-dentro-y-fuera-escena-201805050135_noticia.html
次回のボリショイ劇場配信は『現代の英雄』。ボリショイ・バレエinシネマさんのツイッターにて詳細な鑑賞手引きをご覧いただけます。
2017年にシネマで鑑賞。幕ごとに色合いががらりと変わる展開で青年ペチョーリンの人生を描いた、レールモントフ原作の重厚な作品で
ペチョーリンは幕ごとに異なるダンサーが務め、各々に絡む女性も合わせて主役級が総登場しますので
とっつきにくいとお思いになった方も一度はご鑑賞をお勧めいたします。
当時の感想はこちらでございます。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-0842.html
2020年4月17日金曜日
新国立劇場バレエ団 牧阿佐美さん版『白鳥の湖』を振り返る

※今秋2020/2021シーズン開幕演目はピーター・ライト版『白鳥の湖』から『ドン・キホーテ』へ変更。
それに伴い、来春に延期となった山形公演では牧さん版『白鳥の湖』の上演決定と発表がありました。
今回振り返りを行ってしまいましたが、再度牧さん版白鳥総仕上げ編として来春行う予定でおります。
今年4月4日(土)新国立劇場バレエ団初の東北公演を予定していた山形での牧阿佐美さん版『白鳥の湖』公演鑑賞後に綴ろうと思っておりましたが
公演は来年に延期。上演可能か否か先が見えぬ中で練習を重ねてきたダンサー
そして新国立劇場バレエ団との初共演にも注目が集まっていた山形交響楽団を始め
公演に向けて準備に携わってこられた方々の心境を察すると胸が詰まり、世界規模での緊急事態であるとは分かっていてもやるせなさばかりが込み上げてきます。
また延期となった公演においてはバレエ団が今秋より採用するピーター・ライト版上演予定と発表されましたため
初演から鑑賞している牧阿佐美さん版『白鳥の湖』振り返りを中途半端な機会ではございますが書いて参りたいと思います。
初演は2006年11月。この年のシーズン開幕や演目の並びは今思えば特異で、バレエ団の開幕が10月上旬。
しかもガラではなく『ライモンダ』全幕で開幕でしたので、10月11月12月と
全幕物を3ヶ月連続で本拠地にて上演した珍しいシーズンでした。単発ではなく各々の演目につき5回以上は公演があり
『ライモンダ』は大阪公演(梅田芸術劇場にて1回、バレエ団にとって初の大阪公演)も行われ
開幕から3ヶ月はいつにも増して大変多忙な日程であったと想像いたします。
牧さん版『白鳥の湖』は初演以降も多くの再演を重ね、ひょっとしたら『シンデレラ』に次ぐ再演回数多数の作品かもしれません。
プログラムや会報誌のジアトレなど牧阿佐美さんへのインタビュー読み進めると牧さんのこだわりや美意識が思い起こされ
悲劇ではなく幸せな結末にして観客に劇場をあとにして欲しいと確かアトレのインタビューで語っていらっしゃり
愛の力でロットバルト打倒とはいえ王子がオデットを担いでの前進姿を観る度「最終兵器オデットマン」に思えてしまった終幕も今は懐かしさが募ります。
振付の基盤はセルゲイエフ版とさほど変わりないものでしたが、一番の変更点はプロローグ挿入とルースカヤの追加でしょう。
プロローグは刺繍をするオデットと侍女の3人いたはずが、いつの頃からかオデット1人に(確か)。
ルースカヤは侍女を従えるわけでもなく本当にソロでしかも短いとは言い難い曲で踊るため魅せることが容易ではない役ながら
ベテラン重鎮から中堅、時には将来を期待される若手が務め、歴代のダンサーを並べるとまさに百花繚乱です。
それから現代の観客の時間感覚に合わせようと休憩は1回のみに変更。舞踏会と終幕の湖畔の場が休憩無しでの上演となりました。
女性陣の着替えの多忙さに更に拍車がかかり舞台袖にあるであろう着替え小屋の猛烈な慌ただしさは想像に難くありません。
そして湖畔前の不安や憂鬱さを募らせるソロと舞踏会のあとにオデットを追いかける王子の嘆きと懺悔なるソロが追加。
後者は閉まった幕の前で披露され、下手すれば場繋ぎ及び時間稼ぎ役或いはオデットたちの前座な役にもなりかねないわけですが
そこは新国立男性陣。ただの間抜け王子にはならず、内側から迸る心情を届けてくださっていました。
最終幕は、オデットが許し王子との愛を再確認するこれまたいつの頃からか悲しみを鬱々と引き摺るゆったりしたワルツがカットされ
すぐさま愛の攻撃作戦へ。スピーディーな展開を更に追求したが故でしょうが、心残りな1点です。
衣装は随分と大胆に一新。重厚ではっきりとした色彩、濃いめのベルベットを多用していたセルゲイエフ版に対して
牧さん版は全体が繊細ですっきり洗練路線を展開し、特に1幕ワルツのソリスト男女の淡い緑を配した色彩は
ドイツ周辺地域の初夏の低湿な陽気を思わせる清涼感が漂い、幕開けから爽やかな心持ちにさせるデザインでした。
王子の前半の衣装が光沢を含んだ青いベルベット地に金糸で彩った見事なまでに品良く華やぐ色味であった点も忘れられず、
ウヴァーロフやマトヴィエンコ、リー・チュン、ムンタさんらゲストで招聘されたダンサーの方々も
持ち込みではなく皆さん着用なさっていたと記憶しております。
そして花嫁候補は喜んだであろう、お揃いのソフトクリーム帽子からめでたく脱却し
白を基調にしつつも頭飾り衣装ともにお国柄が表れたデザインへと変更。
加えて王子は提灯袖から、ロットバルトはチリチリラーメンヘアーなビジュアル系ロックバンドから脱却。
一方セルゲイエフ版のほうが私個人としては好みだった衣装も何点かあり、例えばオデットとオディールの衣装。
牧さん版は良く言えば身体の線がくっきりと見える、ラインストーン以外は極力装飾を控えたすっきりしたデザインですがやや物寂しい気もしており
セルゲイエフ版における両役とも羽をこんもりと盛ったチュチュ、オディールに至っては頭飾りも含め赤いストーンを散りばめていたくゴージャス。
提灯袖、チリチリラーメンロットバルト、ソフトクリーム帽子も合わせて
セルゲイエフ版踏襲のこどもバレエ『白鳥の湖』でお目にかかれる機会がまたあれば幸いでございます。
美術がぼんやり淡めのタッチで描かれていた点も設定国を明確にせずお伽話の世界に入り込んで欲しいとの意向だったようで
中でも抑えた暗めの色で整えられた湖がシンプルに描かれた背景美術はダム湖にも錯覚させましたが、プログラムに目を通すと納得したものです。
美術とはまた違いますがハリボテ白鳥廃止になった点も寂しく笑、王冠被った白鳥を目にした王子が大袈裟に驚いて弓矢を持ったまま袖へと走る
往年の古き良きロシアバレエと日本昔ばなしが融合したあの不自然さこそおとぎ話な『白鳥の湖』を観に来た気分を高めてくれる効果大だっただけに
白鳥さん、子どもバレエでの遊泳を心待ちにしております。
さて前置きが長くなるのは毎度の定番であるのはさておき、公演年ごとに印象深く刻まれている内容を綴って参ります。
万一抜けがありましたらご容赦ください。
◆2006年11月公演
初日を飾ったのはゲストの常連であったザハロワとマトヴィエンコペア。
歓喜したのは酒井はなさん山本隆之さんペアの公演日がのちにDVD化されて新国立バレエ初の映像ソフトとして2009年に発売。
勿論大事に手元に持っております。(同時発売は2009年ザハロワ主演日のライモンダ)
当時研修生であった小野絢子さん、井倉真未さんがナポリでの出演も話題になりました。
この後何年も続いておりますが、何と言っても山本さんの青いベルベット衣装のお姿がまあ眼福。
花嫁候補トップバッター寺島まゆみさんが煌めくオーラ発散、初日は寺島さんが現れた瞬間
遂に遂にソフトクリーム帽子からの脱却と観客から祝砲が飛んでいた気がいたします笑。
花嫁候補が恐ろしく豪華で寺島さん始め本島美和さんに真忠久美子さん、寺田亜沙子さんの並びなんぞ
華麗なる火花を散らす対決でございました。
◆2008年大阪フェスティバルホール公演
ボリショイよりルンキナ、ウヴァーロフを迎えて上演。大阪公演ならばなぜ山本さん主演でなかったのか
干支一回りした今も疑問を投げかけたくなるわけですが、海外ゲスト希望など諸々事情があったのでしょう。
フェスティバルホールは初訪問。当時は改装前でしたので古めかしい雰囲気漂う内観だったはず。
客席での出来事も印象深く、隣にいらした50代位の女性2人組が話しかけてくださり
主演のルンキナさん良かったですね、といった内容でしたが言葉が徐々に熱を帯びていく展開に。
「大阪言うたら山本隆之君の出身やなあ。何で今日主演やなかったんやろう?(私も心底同感)
あんたはバレエ習ってへんの?習ったらええのに。私たち今やってるねん。楽しいでー。青春や、青春!あはははは!!ほなまたな!!」
劇場や待合室など人が集まるところで偶然席が近くになった方と会話することは時々ありますが
初対面であってもこんなにも賑やかに言葉を発してしまう関西のパワーにはまだ大阪通いを始めてから3年目の新米東京人な管理人はたいそう驚き
そして大阪の方のオープンな人柄に触れることができて幸せに感じたのでした。
◆2008年6月公演
川村真樹さんがオデット/オディール初挑戦。平日昼公演でしたが鑑賞に出向きました。
5月公演の『ラ・バヤデール』を脚の治療のため降板なさっていた山本さんが千秋楽に復帰。
今思えば、最後に観た酒井さん山本さんペアによる初台での白鳥全幕でした。
当時はまだ正団員ではなかった?古川和則さんが新国立初登場、1幕ワルツの場で目に留まった際には
東京バレエ団での活躍が記憶に新しかっただけに大変衝撃でしたが新国立に新風を吹かせ
その後は『シンデレラ』陽気な義理のお姉さんや『ペンギン・カフェ』でのシマウマさんなど
思い返せば独特の個性で大活躍。近年も『シンデレラ』や『ロミオとジュリエット』モンタギュー公で出演され舞台を引き締めてくださっています。
◆2009年5月公演
新型インフルエンザが流行して若年層の間でも広がり、中学生のためのバレエ鑑賞日(ほぼ全席中学校団体が貸切)には来場者全員にマスク配布。
この日も足を運びましたが、当時は異様な光景に映っていたと今も覚えております。
確か男子校の中学生たちで幕間はたいそう賑やか笑、王子の騙しに成功したオディールが
高笑いして花を投げ走り去って行く箇所で中学生たちは終幕と思ったのか、喝采に嵐となった事態も微笑ましかったのでした。
同時に中学生諸君、君たちが観た王子様は世界トップクラスであることをよく覚えておくようにと後方席から無言で言い聞かせていた管理人笑。
◆2010年1月公演
小野さんがオデット/オディールデビュー。水曜日夜の公演でしたが、注目度が非常に高まっていた日程であったかもしれません。
ゲストのザハロワが直前降板し、他日主演の厚木三杏さんが急遽初日登場。初日開演前には牧さんが幕前に立ち挨拶。
ザハロワが出演を予定していたもう2回は厚木さんと川村さんが分担し
来日してから組むことが決まったお2人に寄り添うウヴァーロフの心のこもった鉄壁サポートも忘れられず。
福田圭吾さんの新国立での道化初挑戦もこの年であったはず。
前年秋に入団の福岡雄大さんによるフレッシュなトロワとキレキレスペインも話題になりました。
この年のダンツァでの山本さん、福岡さん、福田圭吾さんの対談によれば、福岡さんはトロワの衣装を実に気に入っていらしたご様子。
伊東真央(まちか)さんのナポリが反則級の可愛らしさで、両手を上に掲げてのお日様きらきら振付に頬が蕩けっぱなし。
ちなみに管理人の妹、前年に初演されたばかりの牧さん版くるみでの現代東京の演出には肩透かしだったようでしたが笑
全然知らずに観たクララの伊東さんの弾ける可愛らしさ軽やかさのすっかり虜になり、伊東さんのナポリ目当てに白鳥の湖も鑑賞。
1幕の村人でも伊東さんはすぐ発見できた、ウヴァーロフの頭身バランスが良い意味で驚異過ぎる、など満足度は高かったようで安堵。
◆2012年6月公演
米沢唯さんがオデット/オディールデビュー。中国国立バレエから初ゲストとしてワン・チーミンとリー・チュンが登場。
◆クラシックバレエハイライト(湖畔の場面のみ) 厚木・姫路・和歌山
厚木公演のみ鑑賞。平日夜でやや遠方とは言っても新宿から1本で行ける距離に位置する厚木で来客見込めるのか不安であったが的中。
しかしプログラムの質は良く、堀口純さんのオデットがしっとり感情を奏でる美しさがあり全幕が一段と楽しみになったのでした。
◆2014年2月公演
大雪に見舞われた翌日あたりに開幕。ちょうど冬季五輪開催中であったロシアのソチよりも東京の方が遥かに寒く積雪量も多き天候でした。
厚木でのクラシックバレエハイライトで観た堀口さんの全幕オデットに感激。
英国バーミンガムロイヤルバレエ団での『パゴダの王子』客演を控えていた小野さん福岡さんペアは初日の1回のみ登場。
16日の米沢さん、菅野英男さんペア日は皇太子殿下(現天皇陛下)が来場なさっての上演でした。
長田佳世さん、奥村康祐さんが共に初役?だったと思うが奥村さんの勢いと爽快感が止まらぬ鮮烈なジークフリート王子デビュー。
お2人とも翌月の新潟県柏崎市公演でも主演。

手塚プロダクションとのコラボレーションでピノコ登場。
そういえば、一時期存在したホワイエのガチャガチャはいずこへ。お目当てのダンサーが出るまで粘っていた友人もいました。
◆2015年6月公演
ムンタさんがゲスト出演。ゲネプロも鑑賞し、ペッタリ斜め分けだったためか一昔前のサラリーマンを彷彿笑。
そして入団前の木村優里さんがファーストキャストのルースカヤで登場。期待のかかり方が窺え、その後も目を見張る活躍を見せています。
米沢さん、ムンタさん日はNHKで放送されました。(録画したが、放送時にちらっと見た1幕冒頭以降はまだ見ておらず)


賛助会会員の方よりお声かけいただきゲネプロ鑑賞。サービスドリンク、アルコールも対象でした。
◆2018年5月公演
2公演のみの鑑賞であった前回2015年とはまるで別人となった管理人、心境及び鑑賞体制大違いで全日程鑑賞。
渡邊峻郁さんが牧さん版全幕では初のジークフリート王子役。
2016年の子ども白鳥を見逃しておりましたが、新国立では2015年以降この先全公演Z席(4階末端の最安値席)鑑賞で十分と宣言していた私が
2017年のヴァレンタインバレエでの黒鳥パドドゥ目当てにC席を購入する行動に走り、その後については省きますが
感情が深くこもっていて全幕観ているかのような出来に感激。(髪型はもう一歩だったが笑)
外部でも特殊なスタジオ空間にて1m程度の至近距離で鑑賞した湖畔のパドドゥのみや
全幕の中の1幕から湖畔までといった抜粋では何度か鑑賞していただけに待ちに待ったご登場でした。
ただ渡邊さんの白鳥の湖においては牧さん版よりも2019年の子どもバレエのほうが心に刻まれおり、
東京以外でも急遽の大阪公演含めて2回観たりと回数が多かった、だけではないと思うのだが。
演出が好みだった点も一因か、そうだ牧さん版のときより髪型が自然だったのだ。(そこかい)
主役日だけでなくソリストな役以外でも連日何処かしらにご登場、トロワは分かるが
プログラムにもキャスト表にも未掲載ルースカヤの付き人には大仰天。踊る箇所は一切無く、冒頭で登場するルースカヤ嬢に付き添い
背後を歩いてエスコート。王子がオディールに愛を誓い雷鳴が轟くと再び一緒に退散する、これだけの役で注目なんぞしたことはありませんでしたが
毛皮の帽子始め衣装、ブーツも渋めの茶色ですっきり整えたロシアな格好がまあ似合い
役の存在すら忘れかけていた身としては白鳥の楽しみ方がまた1つ増えたのでございます。
付き人も演者によって様々で渡邊さんは厳格な護衛官、中島駿野さんはおっとり優しい執事、小野寺雄さんはおとなしいお小姓、
木下嘉人さんは神経質そうなマネージャー、と個性も多様。2006年の初演から観ている牧版白鳥にて
まさか付き人観察する日が到来するとは人生分からぬものです。プリンシパル昇格前のダンサーに注目するとこうも連日面白いのかと
『シンデレラ』御者事件に続き『白鳥の湖』においても感じた公演でした。
付き人で締め括りそうになりましたが日によってはトロワが最も印象に刻まれた日もあり、
そう口にするのは人生初のバレエ鑑賞であった1989年ABT来日公演バリシニコフ版『白鳥の湖』以来。
柴山紗帆さんの美しい型を崩さぬオデット/オディールも予想以上に心に響き、他日も我が心はゴールデンウィークお祭りわっしょい。
今思えばこの年の公演が牧さん版白鳥最後の鑑賞となりました。

限定デザートカリッと香ばしいスワンシュー。子ども白鳥では湖を模したゼリーが敷かれ、小ぶりの三羽。
更なる進化型で販売していました。マエストロ自信作!?

柴山さん奥村さん主演日鑑賞後はお世話になっている友人とスワンレイクカフェへ。レジ前に描かれた白鳥さんたち、おめかしして乾杯。

スワンレイクビール。グラスも白鳥です。

たっぷり注いでくださったワイン。コースターがまた細やかで美しい柄。1997ですから新国立劇場と同い年のようです。
◆2018年11月札幌公演
札幌文化芸術劇場こけら落としシリーズの一環でチケット入手できず残念ながら鑑賞は叶いませんでしたが、小野さん福岡さんが2日連続で主演。
貴族が全国公演ならではの配役だったようで、興味津々。
長くなりましたが、初演からほぼ全公演鑑賞しており振り返れば様々な出来事が脳内を駆け抜けていきます。
多少は突っ込みどころもあったにせよ、綺麗なバレエを魅せる古典作品としては衣装や美術も合わせて良作であったと思いますし
奇を衒っていないためバレエ初心者にも案内しやすかった点も強みだったかもしれません。
最後の上演と強調されていた山形公演を見届けることができずに終わってしまったのは悔やまれます。
今秋からはピーター・ライト版『白鳥の湖』。国王の葬儀から始まり、幕開けから黒を基調とした舞台美術や衣装に彩られ
爽やかな祝宴であった牧さん版とは全く異なる趣きです。
スウェーデン王立バレエの映像を講座で少し鑑賞し、1幕は特に王子の細かい芝居が至るところにあり
技術は勿論、相当な演技力がなければ場を持たすことが不可能な演出と見受けました。
新鮮なペアも組まれていますので、開幕を楽しみに待ちたいと思っております。
2020年4月8日水曜日
【今更ですが】【バレエオタクが突然歌舞伎を観に行ったら】歌舞伎版『風の谷のナウシカ』12月6日(金)

珍しくバレエではない投稿且つ昨年の出来事で恐縮ございますが、
昨年の師走はくるみ三昧であったため翌年に綴ろうと考えておりましたため、
またお子さん方の春休みに合わせて(ただ今年ばかりは新学期も開始できぬ学校が多いと思われますが)
金曜ロードショー・スタジオジブリ映画2週連続放送もありましたのでこの機会に失礼。
昨年12月6日(金)、新橋演舞場にて歌舞伎版『風の谷のナウシカ』初日夜の部を観て参りました。
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/604/
歌舞伎鑑賞は12年ぶり2回目。前回は言い訳を並べますと新国立劇場バレエ団『シンデレラ』新潟公演翌日だったため、
かの坂東玉三郎さんの舞が披露されながらあろうことかリラの精の魔法にかかってしまった管理人。
以来歌舞伎からは遠ざかっておりました。歌舞伎俳優さんの知識ほぼ皆無ながら
(バレエで例えるなら草刈民代さんと熊川哲也さんしか知らぬレベル)
『風の谷のナウシカ』の映画は上位五本に入るほど魅せられているため
また三鷹の森ジブリ美術館にも度々出向いており、歌舞伎化にも自ずと興味を持ち足を運ぶ決意に至りました。
さて以下は昨年1月上野での藤原歌劇団『椿姫』鑑賞時と同様、ここ数年は年間約80回舞台鑑賞のうち9割以上をバレエが占めている
バレエオタクが突如別分野の舞台を目にした珍感想が続きます。歌舞伎精通者からはお叱りを受けるかもしれぬ
素人にもほどがある或いは分野問わずバレエにとらわれている感のある且つ大雑把な支離滅裂内容でございますが悪しからず。
一言で申せば、よくぞあの壮大な物語を歌舞伎化したと唸らせる舞台でした。
原作は大変な長編ながら登場人物は一通り出てきますし、心配していた飛行物もメーヴェはワイヤーを使って
スキー場のリフトのように再現。映画でも原作でも実際にはもっと多数の飛行物が登場しますが
(映画のみでもバカガラス、コルベット、ブリック、ガンシップ、バージ等々風の谷にしてもトルメキアやペジテにしても各々装備は様々)
とても全ての再現は困難であるのは想定の範囲でしたから、ナウシカの相棒こと
メーヴェの大掛かりな登場のみでもまことに嬉しい演出でした。
またポスターからも分かるとおり、風の谷の王女ナウシカとトルメキアの王女クシャナを同等の主役として描いている点も魅力。
映画化にて原作ファンが最も不満を募らせたのが映画でのクシャナがまるで悪女のような描き方であった点と耳にしており
確かに映画だけを観ると、小さな国を脅かす傲慢で手段を選ばぬ悪党の女としか思えなかったのは事実です。
しかし歌舞伎では2人の心の交流を細やかに描き、葛藤や不安を打ち明けあったりとナウシカとクシャナ2人きりの場面も多し。
原作ファンの方も満足できる演出と見て取れました。
そういえば、敵役と思われがちなキャラクターも原作に即して主役同等と捉えた舞台といえば時節柄すぐさま浮かんだのが
新国立劇場バレエ団が2017年よりレパートリーに加えたウエイン・イーグリング版『くるみ割り人形』。
ネズミの王様を他日王子を務めるダンサーまでもが兼任し、英題にはMouse Kingの記載もあり
全体の演出が好みであるか否かはひとまず差し引き、ネズミ王の位置付けは納得いくものでした。
更には、ナウシカの原作者で映画史に残る数々の名作ジブリ作品を生み出してきた宮崎駿さんもくるみ割り人形の物語に魅せられた1人で
ジブリ美術館にて企画展まで開催。しかも展覧会名を「クルミわり人形とネズミの王さま展」と題するほど
ネズミの王様も主役級として描いていらっしゃいました。この企画展には勿論足を運びましたが
(ジブリ美術館まで頑張れば自転車で行けます笑。駐輪場もまた木や落ち葉に包まれ素敵なのです)
当然バレエについても触れていらっしゃり、宮崎さんが描いたプティパが余りに似ていなかった点はさておき
宮崎さん監修の実際にくるみが割れるくるみ割り人形が飾られていたり
手回しで動く絵を展示して戦闘シーンを臨場感たっぷりに伝えたりと相当凝った企画展でございました。
話が二転三転いたしましたので戻します。幕開けから驚かされたのは、メーヴェと並ぶナウシカの相棒のキツネリスのテトが
ぬいぐるみであった点。動物をいかにして描くか気にはなっておりましたがまさかぬいぐるみが登場するとは、
良い意味でほのぼの感が増して頬が緩んでしまうひと幕でした。しかも歌舞伎らしく、黒子さんが持つ棒の先端にテトが装着し
ナウシカの肩の動きに合わせて寄り添うように黒子が操作。何処かに行っているようナウシカに促されると
テトが舞台をサッサカ歩くように床上にて犬の散歩の如く動かして退散。
実のところ、黒子が登場した途端真っ先に脳裏を過ったのは同年1月に上演された新国立劇場バレエ団ニューイヤー・バレエでの
中村恩恵さん版『火の鳥』における黒子さん。火の鳥を裏で支える謎めいた役柄として3名登場し
役名や衣装の色彩は同じでも和風、中華風、ハリウッドアクション映画風と各々衣装が異なっていたわけですが
浮かんだのは勿論和風の黒子さん。ああ、テトを大事そうにナウシカになつかせていると思うと愛おしさも妄想も倍増せずにいられず
新橋演舞場においても、人間とはかくも身勝手な生き物であると猛省していた管理人でした。
さてバレエの話からは切り離しまして、衣装は主要な役柄は原作に近い、或いは原作の味わいに着物を合わせたデザイン。
中でもユパ様の大きな帽子に髭と着物の組み合わせは和洋折衷な装いでなかなかユニークでした。
ただ気にかかったのは、民衆の衣装が完全和物で戦国時代のドラマを彷彿。(大河ドラマ平清盛に近かった気がいたします)
ナウシカの舞台はこれといってはっきりとした設定国はないものの風の谷のモデルはパキスタンのフンザとされていて
映画や漫画で服装を見る限り少なくとも日本ではない。また和装の民衆の光景を眺めると
宮崎駿さんの名作の1本である、日本を舞台にした『もののけ姫』を脳内再生。
ナウシカの世界への入り込みにやや時間を要した一因にも繋がり、伝統芸能に漫画を当てる難しさを明示していたともいえます。
アスベルも着物に髷でしたが、工房都市ペジテの出身らしくもう気持ち飛行機乗りな装いであると尚良かったと思っております。
台詞回しや声についてはいかんせん歌舞伎ド初心者であるためバレエ鑑賞時の如く重箱の隅をつつくことは致しかねますが
セルム役の中村歌昇さんも声が映画のナウシカにてアスベルの声を務めていらした(もののけ姫のアシタカ担当)
松田洋治さんの声に似ている印象で、引っかかりながらの鑑賞となってしまいました。これは中途半端なジブリオタクな管理人の脳内設定がいかん笑。
動物系の演出にてテトと並び興味津々であった、ナウシカやユパが映画中で乗用していた鳥のトリウマは人間が組み合わさった形。
私の席から花道が見えず、夜の部にも登場したかは定かではなく尾上菊之助さんが跨る姿は目にできずでしたが
まさか本物のラクダを連れてくるわけにはいかないでしょうから人間合体型と後から知って納得でございました。
ただ人間合体型である都合上、映画で目にしたような疾走場面は無かったもよう。
終盤では歌舞伎といえば大勢の方の脳裏に浮かぶであろう頭をブンブン振り回す連獅子と思われる場面もあり
歌舞伎を観に来た気分を一層高めたと同時に記憶が正しければ主要な2人がブンブン回していて
後方で多めの人数がぐるぐると回っていたため(頭ごと振り回していたかは記憶曖昧)
上階から眺めるとバランシン振付『シンフォニー・イン・C』でのフィナーレにおける第3楽章を彷彿。
目が回るよりもビゼーの交響曲が先立って流れた観客は恐らく私1人かと思います。
干支一回りぶりの歌舞伎鑑賞でバレエからは簡単には離れられず、諸々疑問も投げかけてしまいましたが
『風の谷のナウシカ』映画公開は36年前の1984年、つまりバレエ界では吉田都さんがプロデビューされ
ボリショイバレエ団がグリゴローヴィヂ版『ライモンダ』を初演し、日本でダンスマガジン創刊号が発行された年。
監視体制に疑念を抱き始めた役人を主人公に描いたジョージ・オーウェルの代表作も『1984年』です。
(あらすじには記録の改竄作業に打ち込むと記され、現代の日本を風刺しているとも受け取れる内容だが)
私にとっても縁ある年で、ザ・ベストテンを欠かさず視聴しロサンゼルス五輪をテレビ観戦しながら
体操の森末慎二さんや陸上のカール・ルイスの偉業に拍手を送っていた日々を懐かしく思い出すと綴っているのは
当ブログには遅くに到来した4月1日の行事か否かは想像にお任せしつつ
年月を経ても色褪せぬ、現代社会にも突き付けるテーマが宿る作品であると歌舞伎においても再度感じさせました。
他にも王蟲や巨神兵など申したいキャラクターや演出は多々ありますが、長くなりましたのでこの辺りでお開き。
夜の部のみでも4時間超えの長丁場ながら、疲弊は多少あれども笑
ナウシカの世界の要素を取り入れた、初心者も堪能できる歌舞伎であった印象です。
もし再演が決定し、ご覧になろうとしている方は映画ではなく原作の知識があれば尚のこと楽しめるかと思います。
登場人物も多岐に渡り名前も独特の響きですので、原作本読破おすすめでございます。
映画の内容は今回鑑賞した夜の部ではなく昼の部つまりは前半に含まれているため、
再演の際には昼の部鑑賞を決意。腐海の底の澄み切った世界や王蟲の触手の描き方が特に気になっております。
ところで先述の通り宮崎駿さんはジブリ美術館でくるみ割り人形展を開催し、想像でお描きになった
似てはいないプティパの絵を公開なさっていたほどでジブリ作品のバレエ化もそれ以前から勝手に夢見て妄想しております。
ビントレー版『アラジン』を観た際には新国立の舞台機構を生かしてタイガーモスやフラップター、ゴリアテといった
飛行物の空中演出も可能であろうとラピュタが良さそうに思えましたが、日本を題材にしたもののけ姫も推しております。
本島美和さんのエボシ御前や寺田亜沙子さんのタタラ場リーダー、ぴったりかと想像。
アシタカを乗せて旅を共にするヤックルをどうするか、これは難題だ。

歌舞伎通且つバレエもご覧になっている方と木挽町広場で待ち合わせ。初めて訪れ、お土産の種類の多さにびっくり。
お土産といえば演舞場内にも充実。舞台写真も販売されていましたが、ブロマイドの呼称で親しまれているらしく
近年耳にしないためか不思議な響きに感じた次第。新国立劇場の場合は舞台写真、と記して販売されています。
ブロマイドと聞くと、フォーリーブスや更に遡って宝田明さんや岡田眞澄さんといった
往年のアイドルや映画スターが写っているものを想像してしまうのは私ぐらいか。

歌舞伎といえばお弁当。食いしん坊の管理人、木挽町広場で購入。

帰り道、大都会の銀座。石原裕次郎さんと牧村旬子さんの『銀座の恋の物語』を再生しながら闊歩。

闊歩するうちに有楽町ガード下へ。今度はフランク永井さんの『有楽町で逢いましょう』の気分。

日本酒熱燗と鰆の炙り焼きで乾杯。

ナウシカの漫画。壮大な世界観に圧倒されますが、正直申し上げると繰り返し読みたくなるような内容ではございません。
とにかく重たくそして虫の描き方が写実的でなかなかのインパクト。

CDも集めて大事にしておりました。

2003年に東京都現代美術館にて開催されたジブリ立体模造展で購入した書籍。
他にも池袋のアニメショップで見つけた映画公開当時のアニメ雑誌もございますが、表紙が強烈な絵柄であるため
バレエブログでの掲載は遠慮いたします笑。

DVD特典フィギュアセット。自宅に届いた際、家族が仰天しておりましたが無理もないか。

英語学習用のテキスト。テスト問題もあり、これなら親族の間で学業成績の話題は現在も禁物状態にある管理人も勉強が捗りそうです。
さてバレエではない分野の鑑賞記事ながら長くなり申し訳ございません。
当ブログ、先月末で開設から7年を迎えました。開設時は新国立劇場Dance to the Future2013上演の時期で
ここまで継続できているのは読者の方々の存在があってこそであり
繰り返しにはなりますが、知名度の低い且つ素人が綴っているしかもタイトルはアで始まるからと30秒程度で思い付いた
適当にもほどがある性格の管理人が運営する当ブログに1秒でもお越しくださった方は貴重な貴重な読者様です。
本当にありがとうございます。
まさか開設から7年後、舞台芸術の開催鑑賞がここまで厳しい状況になるとは思ってもおらず
感染拡大や医療崩壊等世界各地で気が滅入る状態が続く情勢に胸が痛まずにはいられません。
収束を願いつつ、他人事ではなく明日は我が身と意識を持ちできる対策は念入りに行っていきたいと思っております。
バレエは劇場で生で鑑賞する鮮烈な感激を大事にしたい一心で特例もあるものの長時間の動画検索や再生は極力控え
記事のテーマも劇場に足を運んでの鑑賞記が大半でしたが現在は困難であり
公演を中止にしても生活に潤いを届けたいと映像配信をしてくださっている劇場及び舞踊関係者の方々に感謝し
関連書籍や映像、雑感の範囲を広げる等趣向を転換させつつ継続して参りたいと考えております。
筆が遅く、更新は週1回程度のこまめとは言い難いブログではございますが今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
※次回は4月4日に東北地域にて鑑賞予定であった公演に関する内容を検討中でございます。
2020年4月2日木曜日
【お茶の間観劇】食卓の椅子に着席してライブストリーミング開演 新国立劇場バレエ団DANCE to the Future2020コンポジション・プロジェクト 3月28日(土)
3月28日(土)、新国立劇場バレエ団DANCE to the Future2020
コンポジション・プロジェクトライブストリーミング配信を鑑賞いたしました。
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/dtf/
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/upload_files/DtF2020-livestreaming-program.pdf
https://spice.eplus.jp/articles/264453
音楽を手掛けられた平本正宏さんのツイッター。音楽の聴きどころや
リハーサルで振付作業に打ち込むダンサーたちと接しながらの作曲過程を丁寧に綴ってくださっています。
https://mobile.twitter.com/HiroHiramoto?p=i
ライブストリーミング配信映像、明日4月3日15時まで視聴可能です。
コンポジション・プロジェクトによる作品
音楽:平本正宏
アドヴァイザー:遠藤康行
Works from The Composition Project
「〇 〜wa〜」
グループ『DO/ 動』 衣裳:朝長康子
渡邊峻郁 木村優里 益田裕子 稲村志穂里 太田寛仁 関 優奈 徳永比奈子
中島春菜 中島瑞生 原田舞子 廣川みくり 渡部義紀 伊東真梨乃
「A to THE」 グループ『ZA/ 座』
柴山紗帆 飯野萌子 広瀬 碧 福田紘也 益田裕子 赤井綾乃 太田寛仁
関 晶帆 仲村 啓 西川 慶 原田舞子 樋口 響 廣川みくり 横山柊子
DO/動は小宇宙に鋭く斬り込んでくる連鎖を思わせ、テクノ系の音楽と融合してのせめぎ合いが迫りくる感覚。
暗闇の中で自在に変容していくすっきり時には混沌とした不思議なSF世界が現れた印象で
中でも渡部義紀さんのダイナミックに駆使する身体能力に驚かされました。衣装は全員淡いブルー系。
ZA/座は重力を引き摺るような趣で、西川さんのしっとり且つ訴えかけてくるソロを軸に展開。
女性ダンサーたちの黒いダボっとしたシャツと黒い短パンが眩しく映えるデザインでした。
どちらのチームもダンサーの案とアドバイザー遠藤康行さんの助言が上手く合体していたと見受け
目で追うのが面白い作品に仕上がっていた印象です。全員が振付家として挑んだ共同作品である以上
所々ばらつきや無理やり繋いだ感のある箇所もあったのは否めませんでしたが
本公演ではなかなか実現しないであろう斬新な人員構成やダンサーの新たな一面の発見も多々あり。
横山さんと赤井さんによる実はコンテンポラリーもお手の物な女性コンビ披露もこのプロジェクトならではでしょう。
振付家発掘はDTFの醍醐味ではあり、始動は2012年ですから年々ダンサーによる作品のレベルは上がりつつも
ここ数年常連のダンサーの名前ばかりが並んでいる状況は気になっていた点でもありました。
(そのため概要を掲載したチラシを初めて手にした際、振付者の欄に渡邊さんのお名前を見つけ
更には振付は初めてであるとアトレのインタビューでも仰っていたため二重に驚いた次第)
遠藤さんの助言を得ながら自身の構想を伝えて取り入れたり、
階級や契約登録関係なく意見を交わしながら新しい作品を仕上げていく作業は大きな収穫であったに違いありません。
公演中止は残念でしたが先行き不安なこの状況において一部だけでも配信してくださり
配信の環境を整えてくださった劇場に感謝するばかりです。
一方入念な準備を重ねながら公演中止を余儀なくされ、無観客の場での披露は
出演者やスタッフの方々の心情を察するに余りあるもので事態の早期収束を願うしかありません。
惜しまれるは我がパソコンは長年故障しておりタブレット端末は古いモデルのため動画鑑賞が不可能。
渡邊さんのベジャール版火の鳥主演リハーサル映像を連日再生していた頃はタブレット端末での鑑賞でしたから
約2年半前は再生可能であったのか。そんなわけで今回は携帯電話画面での鑑賞であったため
目に飛び込む範囲が格段に狭まり、新国立の鑑賞ながら珍しく短文であった点はお許しください。(むしろ良かったか)
尚映像配信であろうが携帯電話鑑賞であろうが新国立鑑賞には変わりなく
毎度の開演前アナウンスや幕間の一杯妄想はしかと行った管理人でございます。
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※残念ながら観客前でのお披露目は持ち越しになってしまいましたが上演予定であった団員振付作品。
毎回全作品胸躍らせて鑑賞に臨んでおり、次こそは上演を心待ちにしております。
6年前に映画『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』を鑑賞していた経緯もあり(加えて云々笑)「Seul et unique」は勿論のこと
バレエ団本公演では同じ役や曲で共演する機会がまずなさそうな個性豊か過ぎるメンバー構成の
「コロンバイン」も特に気になる作品の1本。髙橋さんがいかに取りまとめたか、披露を待ち侘びております。
「Seul et unique」
【振付】渡邊峻郁
【音楽】ニコロ・パガニーニ
【出演】中島瑞生、渡邊拓朗
「Contact」
【振付】木下嘉人
【音楽】オーラヴル・アルナルズ
【出演】米沢 唯、木下嘉人
「福田紘也2020」
【振付】福田紘也
【出演】速水渉悟、宇賀大将、川口 藍、原田舞子、福田紘也
「アトモスフィア」
【振付】木下嘉人
【音楽】ルドヴィコ・エイナウディ
【出演】福岡雄大
【ピアノ演奏】蛭崎あゆみ
「神秘的な障壁」
【振付】貝川鐵夫
【音楽】フランソワ・クープラン
【出演】米沢 唯
「コロンバイン」
【振付】髙橋一輝
【音楽】ソルケット・セグルビョルンソン
【出演】池田理沙子、渡辺与布、玉井るい、趙 載範、佐野和輝、髙橋一輝
「accordance」
【振付】福田圭吾
【音楽】峯モトタカオ、アルヴァ・ノト
【出演】小野絢子、米沢 唯、福岡雄大、木下嘉人、五月女 遥、福田圭吾
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帰り、ではなく視聴後は冷蔵庫に手を伸ばして家呑み。
寝床はすぐそこ。日本酒にウイスキー、白ワインを並べ鑑賞後はちゃんぽんだ笑。
金水晶さんは今週から放送開始された、朝の連続テレビ小説『エール』主人公のモデルである
福島県出身の作曲家古関裕而さんに因む限定ラベルも製造。次回呑んでみたいと思っております。

明後日鑑賞予定であった新国立劇場バレエ団山形公演『白鳥の湖』は来年に延期。
新国立にとって初の東北公演、来年こそはお目にかかれますように。
舞台のみならず現地で温泉や銘酒、米沢牛も堪能する気も満々でございます。
気になるのは当初の予定通り牧版か、それとも10月11月のピーター・ライト版上演後の白鳥となれば山形もライト版か
新たな概要の発表を待つのみでございます。
⇒ピーター・ライト版での上演予定と本日発表。
https://yamagata-bunka.jp/news/2020/04/02038323.html
→ライト版上演延期に伴い、当初の予定通り牧版上演。
コンポジション・プロジェクトライブストリーミング配信を鑑賞いたしました。
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/dtf/
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/upload_files/DtF2020-livestreaming-program.pdf
https://spice.eplus.jp/articles/264453
音楽を手掛けられた平本正宏さんのツイッター。音楽の聴きどころや
リハーサルで振付作業に打ち込むダンサーたちと接しながらの作曲過程を丁寧に綴ってくださっています。
https://mobile.twitter.com/HiroHiramoto?p=i
ライブストリーミング配信映像、明日4月3日15時まで視聴可能です。
コンポジション・プロジェクトによる作品
音楽:平本正宏
アドヴァイザー:遠藤康行
Works from The Composition Project
「〇 〜wa〜」
グループ『DO/ 動』 衣裳:朝長康子
渡邊峻郁 木村優里 益田裕子 稲村志穂里 太田寛仁 関 優奈 徳永比奈子
中島春菜 中島瑞生 原田舞子 廣川みくり 渡部義紀 伊東真梨乃
「A to THE」 グループ『ZA/ 座』
柴山紗帆 飯野萌子 広瀬 碧 福田紘也 益田裕子 赤井綾乃 太田寛仁
関 晶帆 仲村 啓 西川 慶 原田舞子 樋口 響 廣川みくり 横山柊子
DO/動は小宇宙に鋭く斬り込んでくる連鎖を思わせ、テクノ系の音楽と融合してのせめぎ合いが迫りくる感覚。
暗闇の中で自在に変容していくすっきり時には混沌とした不思議なSF世界が現れた印象で
中でも渡部義紀さんのダイナミックに駆使する身体能力に驚かされました。衣装は全員淡いブルー系。
ZA/座は重力を引き摺るような趣で、西川さんのしっとり且つ訴えかけてくるソロを軸に展開。
女性ダンサーたちの黒いダボっとしたシャツと黒い短パンが眩しく映えるデザインでした。
どちらのチームもダンサーの案とアドバイザー遠藤康行さんの助言が上手く合体していたと見受け
目で追うのが面白い作品に仕上がっていた印象です。全員が振付家として挑んだ共同作品である以上
所々ばらつきや無理やり繋いだ感のある箇所もあったのは否めませんでしたが
本公演ではなかなか実現しないであろう斬新な人員構成やダンサーの新たな一面の発見も多々あり。
横山さんと赤井さんによる実はコンテンポラリーもお手の物な女性コンビ披露もこのプロジェクトならではでしょう。
振付家発掘はDTFの醍醐味ではあり、始動は2012年ですから年々ダンサーによる作品のレベルは上がりつつも
ここ数年常連のダンサーの名前ばかりが並んでいる状況は気になっていた点でもありました。
(そのため概要を掲載したチラシを初めて手にした際、振付者の欄に渡邊さんのお名前を見つけ
更には振付は初めてであるとアトレのインタビューでも仰っていたため二重に驚いた次第)
遠藤さんの助言を得ながら自身の構想を伝えて取り入れたり、
階級や契約登録関係なく意見を交わしながら新しい作品を仕上げていく作業は大きな収穫であったに違いありません。
公演中止は残念でしたが先行き不安なこの状況において一部だけでも配信してくださり
配信の環境を整えてくださった劇場に感謝するばかりです。
一方入念な準備を重ねながら公演中止を余儀なくされ、無観客の場での披露は
出演者やスタッフの方々の心情を察するに余りあるもので事態の早期収束を願うしかありません。
惜しまれるは我がパソコンは長年故障しておりタブレット端末は古いモデルのため動画鑑賞が不可能。
渡邊さんのベジャール版火の鳥主演リハーサル映像を連日再生していた頃はタブレット端末での鑑賞でしたから
約2年半前は再生可能であったのか。そんなわけで今回は携帯電話画面での鑑賞であったため
目に飛び込む範囲が格段に狭まり、新国立の鑑賞ながら珍しく短文であった点はお許しください。(むしろ良かったか)
尚映像配信であろうが携帯電話鑑賞であろうが新国立鑑賞には変わりなく
毎度の開演前アナウンスや幕間の一杯妄想はしかと行った管理人でございます。
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※残念ながら観客前でのお披露目は持ち越しになってしまいましたが上演予定であった団員振付作品。
毎回全作品胸躍らせて鑑賞に臨んでおり、次こそは上演を心待ちにしております。
6年前に映画『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』を鑑賞していた経緯もあり(加えて云々笑)「Seul et unique」は勿論のこと
バレエ団本公演では同じ役や曲で共演する機会がまずなさそうな個性豊か過ぎるメンバー構成の
「コロンバイン」も特に気になる作品の1本。髙橋さんがいかに取りまとめたか、披露を待ち侘びております。
「Seul et unique」
【振付】渡邊峻郁
【音楽】ニコロ・パガニーニ
【出演】中島瑞生、渡邊拓朗
「Contact」
【振付】木下嘉人
【音楽】オーラヴル・アルナルズ
【出演】米沢 唯、木下嘉人
「福田紘也2020」
【振付】福田紘也
【出演】速水渉悟、宇賀大将、川口 藍、原田舞子、福田紘也
「アトモスフィア」
【振付】木下嘉人
【音楽】ルドヴィコ・エイナウディ
【出演】福岡雄大
【ピアノ演奏】蛭崎あゆみ
「神秘的な障壁」
【振付】貝川鐵夫
【音楽】フランソワ・クープラン
【出演】米沢 唯
「コロンバイン」
【振付】髙橋一輝
【音楽】ソルケット・セグルビョルンソン
【出演】池田理沙子、渡辺与布、玉井るい、趙 載範、佐野和輝、髙橋一輝
「accordance」
【振付】福田圭吾
【音楽】峯モトタカオ、アルヴァ・ノト
【出演】小野絢子、米沢 唯、福岡雄大、木下嘉人、五月女 遥、福田圭吾
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帰り、ではなく視聴後は冷蔵庫に手を伸ばして家呑み。
寝床はすぐそこ。日本酒にウイスキー、白ワインを並べ鑑賞後はちゃんぽんだ笑。
金水晶さんは今週から放送開始された、朝の連続テレビ小説『エール』主人公のモデルである
福島県出身の作曲家古関裕而さんに因む限定ラベルも製造。次回呑んでみたいと思っております。

明後日鑑賞予定であった新国立劇場バレエ団山形公演『白鳥の湖』は来年に延期。
新国立にとって初の東北公演、来年こそはお目にかかれますように。
舞台のみならず現地で温泉や銘酒、米沢牛も堪能する気も満々でございます。
気になるのは当初の予定通り牧版か、それとも10月11月のピーター・ライト版上演後の白鳥となれば山形もライト版か
新たな概要の発表を待つのみでございます。
⇒ピーター・ライト版での上演予定と本日発表。
https://yamagata-bunka.jp/news/2020/04/02038323.html
→ライト版上演延期に伴い、当初の予定通り牧版上演。
2020年3月26日木曜日
パリ・オペラ座ダンスの饗宴

1週間以上前ですが、東銀座の東劇にて映画『パリ・オペラ座ダンスの饗宴』を観て参りました。
https://www.culture-ville.jp/celebratedance
https://spice.eplus.jp/articles/266660
https://spice.eplus.jp/articles/266753
デフィレ
アマンディーヌ・アルビッソン/エミリー・コゼット/オーレリ・デュポン/ドロテ・ジルベール/
マリ・アニエス・ジロ/レティシア・プジョル/アリス・ルナヴァン/
ジェレミー・ベランガール/ステファン・ビュリョン/マチュー・ガニオ/ジョシュア・オファルト/
エルヴェ・モロー/カール・パケット/バンジャマン・ペッシュほか
<バレエ学校の生徒と100人と団員154人が一堂に会し>の解説やポスター写真を眺める以上に壮観。
白或いは白と黒を組み合わせた至ってシンプル且つクラシカルな衣装で全員登場し、行進しているだけでも
ゴージャスな眩さに拍手をしたくなったほどです。
ところで、衣装からして多少は踊るのかと思いきや本当に行進とレヴェランスのみであった点も驚きを覚えましたが
跳躍や回転ではなく歩く姿でいかにエレガンスを表現し世界最古のカンパニーのプライドを示すか
パリ・オペラ座の意地を見せられた気もいたします。基本左右対称で幾何学模様を描くように進行し
気づけばガルニエの舞台全体が覆い尽くされ圧巻。
エチュード
振付:ハラルド・ランダー、クヌドーゲ・リーサゲル
音楽:カール・チェルニー
出演:ドロテ・ジルベール/カール・パケット/ジョシュア・オファルト
生粋のクラシック・バレエ技術てんこ盛りでレッスン風景から始まり、中盤にもバーは無くても
レッスンを彷彿させる大勢で整列してのタンデュも取り入れたりと誤魔化しが一切許されぬ
更には終盤にかけて煽るように勢いや熱が一気に帯びていく体力消耗過酷作品。
初鑑賞は2006年のマリインスキー来日公演オールスターガラで、ソーモワ/サラファーノフ/シクリャローフの若手(当時)トリオ。
次が2009年春の東京バレエ団公演で吉岡さん/フォーゲル/サラファーノフ、
映画ではボリショイシネマにてスミルノワ/チュージン/オフチャレンコ、で回数こそ少ないものの何度か観る機会に恵まれております。
ジルベールが安定感と歯切れ良さで全編を締め、女王然とした貫禄。
ロマンチックチュチュでの優雅さよりもクラシック・チュチュでの正確なコントロールの効いた踊りで
空気を斬るかのようにパワフルに全体を率いていた印象のほうがより強く残っております。
パケットの目を惹く華は文句無しだったが他のカンパニー鑑賞時は連続ザンレールであった箇所を
1回こなして次は跳躍のみ、の1回おきであった点が気にかかるところ。
音楽はこれといって華麗でもなくされど様々なピースを組み合わせ次々と見せ場が現れ、
重々しくも弾ける何とも不思議な旋律から一気に最後へと突き進む流れに
随所に跳躍を盛り込んで終盤へと駆け抜ける振付が合わさり、いよいよフィナーレかと思ってもまだ続く
対角線上の舞台を斜め横切りには何度か観ている作品であっても踊り手泣かせなランダーによる技巧の嵐に目が追いつかず。
過酷且つクラシック・バレエの基礎をシンプルに魅せる振付を存分に堪能できました。
くるみ割り人形
振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:チャイコフスキー
出演
クララ:ミリアム・ウルド=ブラーム
ドロッセルマイヤー/王子:ジェレミー・ベランガール
ルイーザ:ノルウェン・ダニエル
フリッツ:エマニュエル・ティボー
雪の精:イザベル・シアラヴォラ、ステファニー・ロンベール
ヌレエフ版くるみを映像で観るのは初。生では一昨年のウィーン国立バレエ団ガラにて橋本清香さんのグラン・パ・ド・ドゥのみ鑑賞し
橋本さんはいたくスタイル宜しく品格もあり踊りも安定していたもののアダージオ最後のリフトとバランスが冷や汗もので
加えて仰々しい頭飾りばかりが目についてしまったと記憶。そしてオペラ座ダンサーの写真では
2014年末にレオノール・ボラックとジェルマン・ルーヴェ、更に遡れば80年代後半の雑誌で
モニク・ルディエールやエリザベット・モーランを目にしたぐらいで実質初鑑賞者として開幕を迎えた次第です。
不気味さや醜さを前面に出した箇所が多くいわゆる王道のくるみからは離れた路線であると耳にしており
恐る恐る蓋を開けるように眺めておりましたが、序盤からパーティーへ行く中上流階級な人々ではなく
労働者らしい人々が至るところで跳びはねたりと弾けていて、不思議な幕開けにびっくり。
2幕では仮面のような被り物をした怪しい侵入者たちがクララを囲い込み、これまた仰天の連続でした。
しかし全編通してあくまで少女の夢物語の軸が緩まずであったのは、クララ役のブラームの好演が大きかったと推察。
1幕でのパーティー場面では清楚な雰囲気である上にあどけなさもあり、子供らしさはそのままながら
複雑なステップや足捌きも涼しい顔で難なく踊り、目を見張る軽やかさに天晴れです。
グラン・パ・ド・ドゥはすっかり大人の顔で艶っぽさが漂い、1音1音に何かしら嵌め込まれたややこしい振付も
1つ1つのポーズの優雅さも保ちつつ滑らかな軌跡を描くように舞台を彩る好演でした。
ブラームを以前鑑賞したのは友人の代わりに足を運んだ2017年の来日公演『ラ・シルフィード』で
儚いたおやかさに魅せられ、近年は希少であろう古しきゆかしきロマンチック・バレエの真髄を体現していて大変好印象を持ちましたが
クラシックしかもヌレエフ版をも余裕で、脚で雄弁に語る技術の高さに感激するばかりでした。
ガルニエの舞台を覆い尽くす圧巻のデフィレから研ぎ澄まされたクラシックの技術が不可欠な『エチュード』、
そして独特の不気味な世界観も含ませたヌレエフ版『くるみ割り人形』ハイライトまで見応えのあるプログラムを満喫。
6年前にシネマで鑑賞した『水晶宮』での全体が重たい印象が拭えずであったため(失礼)
近年のパリ・オペラ座バレエ団が踊るクラシック作品の舞台に対しプラス方向ではない考えを勝手に抱いてしまっておりましたが
今回はどれもしっかり響き、大きなスクリーンで鑑賞できて良かったと感じております。
2020年3月25日水曜日
ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2019 - 2020『ライモンダ』
3月18日(水)、ボリショイシネマ『ライモンダ』を観て参りました。
https://spice.eplus.jp/articles/265958
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
振付:ユーリー・グリゴローヴィチ(原版:マリウス・プティパ)
台本:ユーリー・グリゴローヴィチ(原作:リディア・パシコワ)
出演:オルガ・スミルノワ(ライモンダ)
アルテミー・ベリャコフ(ジャン・ド・ブリエン)
イーゴリ・ツヴィルコ(アブデラーマン)
スミルノワは内面からの感情や顔の表情よりも空間を大きく使って繰り出される1つ1つのポーズの厳格なラインで魅せる崇高な姫。
1幕では若さ初々しさが大事と嘗てあらゆる作品にて主演を務めてきたマリーヤ・アラシュだったか
インタビューで話してはいたものの1幕から貫禄あり過ぎる姫君で
アブデラーマンの迫りにも怯えたり戸惑う様子もなく涼しい顔一辺倒な印象で、ライモンダの心境の揺れ動きや
幕ごとに成熟度を増していくさまは見えづらかった気もいたします。
しかし決闘に敗れた瀕死のアブデラーマンから目を逸らそうと恐怖感を募らせた後のアダージオは
敵国の男性とはいえ自らのせいで命を落とした姿を眼前にして心身が硬直していた姿からジャンの包容力によって
徐々に解れ落ち着きを取り戻す過程を優美で希望が見えるかのような旋律に乗せて丁寧に描写。
このアダージオが入っているのは誠に説得力があると毎回思え、1人の人間しかも自身を求愛した男性が目の前で亡くなった状況から
すぐさま心を切り替えてファンファーレでめでたしめでたしとはし難いと思うのです。(牧阿佐美さん版はファンファーレ賛美だが)
しっとりと愛を確かめ合い肩にもたれかかるような体勢のリフトのままによる幕切れはいたくロマンティックな風情を残し
3幕へと繋がっていました。いずれにしても近寄り難いほどに孤高で凛然とした風格に惚れ惚れし
今夏の東京シティ・バレエ団客演も今から楽しみです。
ベリャコフはなかなかの渋い男前で王子ではなくきちんと騎士に見えたジャン。(これ大事)
眼差し鋭く、マント捌きも颯爽としていてグリゴローヴィヂ版名物の1つである出征前の部下騎士らしき2人分従えての
勇壮なファンファーレに乗せたマントのトロワなる見せ場も絵になっていて宜しうございました。
但し、ベリャコフの責任ではないが真上から羽根らしき鋼が直立に装着されている兜の形状が
どうしてもラディッシュに見えてしまうのはどうしたものか。
それはともかく、人を寄せ付けないほどに気高いライモンダを振り向かせ心を開かせたのも納得な
高貴さと強さを兼備した騎士でございました。どちらかといえば純白な王子貴公子よりも
一癖ある役柄のほうが似合いそうな印象で、来日公演での『スパルタクス』クラッススは誠に期待が高まります。
ジャパンアーツのサイトから辿りご本人の投稿舞台写真一覧を眺めていってみたところ
20年以上前に観た衝撃が今も忘れられぬ、赤の広場特設舞台で踊る
マクシモワとワシリエフの映像で哀愁がしっとりと流れる振付と音楽にすっかり魅せられた
『アニュータ』のパ・ド・ドゥや(パートナーはオブラスツォーワ)や『明るい小川』のバレエダンサー
(シルフィードの衣装着けて自転車に乗る場面でのフィーリンが忘れられないが笑)も経験済みのようで
既に役柄の幅はかなり広いようです。
燃え盛る表現で観客の拍手を攫ったのはアブデラーマンのツヴィルコ。
後にも述べますが何しろグリゴローヴィヂ版でのこの役は名演者タランダで一度観てしまうと
誰が踊っても薄く見えてしまう懸念すら持っておりましたが、ギラリとした視線や粘り気と熱さが共存した踊りで嵐を起こし
うつ伏せ体勢で脚を交互に蹴り上げるようにして横へ横へと移動しながらの跳躍を始めテクニックも炸裂。
他の版と異なりアブデラーマンにも比重が置かれ、スペインや2幕のコーダでも自ら中央に入り率いて
興奮の最高潮へと導く力演でした。ただ単なる悪者ではない人物と映ったのは
ライモンダや伯爵夫人への礼を尽くす所作が深々と美しく、格も持ち合わせていたからこそ。
思えば城に怪しい人物、しかも姪っ子の婚約者の十字軍遠征先の地域からやって来た人物なんぞ
本来ならばドリ伯爵夫人は邪険に扱ってもおかしくはなくすぐさま引き取り願うところなのでしょうが
(そしてこの作品を観るたびに思う、城の警備体制は機能しているのか疑問。そうか働き盛りは十字軍に行ってしまったと結論)
あくまで丁重にもてなすのは一見強面で敵対国の人物であっても
アブさんの人間力(加えて財力やサラセン地域の発達した文化への憧憬も含むかもしれぬが)に惹かれるものが夫人自身もあったものと推察。
また場面は戻ってアブさん初登場は1幕後半の夢の終わり、幻のジャンとの再会後ライモンダが魘される場で
夢から覚めるまでが他版よりも非常に長くつまりはそれだけアブさんがしつこく付き纏う展開のため
余程のダンサーでなければ冗長になってしまいがちなところ。しかしツヴィルコの舞台全体を覆い尽くす勢いと怪しいオーラで席巻し
更にこのときばかりは怯えや不安を募らせていたライモンダとの呼応もあって
終わりかけた夢の最後の最後までを重たく引き摺り、その後ライモンダの目覚めをより鮮やかに感じさせる流れに繋がっていました。
元々バレエ作品の中では最も好きであり、しかもボリショイシネマでは初登場で概ね満足いたしましたが
従来と比較すると、音楽の順序変更や何箇所もの端折りの生じがあり疑問が残った部分も少なからず。
最たる衝撃の1つは1幕の幕開けの壮大なテーマ曲が流れた直後に入っていた吟遊詩人たちの踊りの曲がカットされていた点で
リュートを想起させる(実際の演奏はヴァイオリンであろうが)軽やかな調べで始まり、この部分があるからこそ
中世の宮廷の世界にすっと入り込めると捉えていただけに、テーマ曲の直後に
突如ライモンダの登場曲が響いてきた際には唐突な展開に思えてなりませんでした。
もう1箇所、順番前後して序曲も様変わりしており従来は3幕の前奏曲として演奏されていた
仰々しい曲が(今年の新国立劇場ニューイヤー・バレエでの海賊の前座の如き扱いな短か過ぎるパ・ド・ドゥ使用曲として記憶に新しい)
1幕の前奏曲として演奏。ソ連時代の収録映像の刷り込みはこちらの勝手な事情であるものの
首を長くして待ちわびていた開演のはずが1、2幕は飛ばして3幕のみ上演と錯覚。心がなかなかついていけなかった点は否めませんでした。
そういえば白の貴婦人も登場しなかったがいつから無しになったのか、また3幕ではチャルダッシュとマズルカの順序が入れ替えで
マズルカから開始し、チャルダッシュの後にはすぐフィナーレのギャロップ。
まさかグラン・パ・クラシックの前に披露とは想定外の順序でしたので遡って要調査です。
『ライモンダ』と『スパルタクス』を上演した2012年の来日公演に一度も足を運ばず終いであったのは一生の後悔でございます。
『ライモンダ』の市販映像として日本で最初に出回ったのが恐らくはベスメルトノワとヴァシュチェンコ主演の
1989年収録のグリゴローヴィヂ版と思われ、その後も全幕映像の販売は三大バレエに比較すると到底少なく
動画サイトが普及したとは言えこの映像が刷り込まれている方は多くいらっしゃるかと思います。
私もその1人で、以後2005年ABT来日公演でのアンナ・マリー=ホームズ版における十字軍無しでチャルダッシュが1幕披露の設定や
新国立劇場での牧阿佐美さん版初演時にはプロローグでジャンが出征してしまい1幕のワルツ不在、
日本における全幕初演のカンパニーである牧阿佐美バレエ団のウエストモーランド版での
結婚式でもライモンダが豪華なティアラや装飾を頭に付けていない点(花冠な形)や騎士たちの絵が十字軍の時代よりも近代寄りと思えた点や
日本バレエ協会アリエフ版のお洒落すぎる甲冑やキエフバレエ全幕でのピンクがかった
メルヘンな世界など(現新国立の菅野さんがライモンダのお友達役でご出演)
基準がグリゴローヴィヂ版であるがゆえに気にかかる点がいくつも浮上してしまい、刷り込みの恐ろしさを思い知るばかりです。
ただ情報を容易に入手できる時代になっても強烈な印象が刻まれているのは、キャラクター設定や振付の骨格がしっかりしているからこそ。
これといってドラマ性がない、往年の少女漫画な三角関係、なんぞ言われる作品ですが
(少女漫画といえば帰還後の鉢合わせでアブさんに抱き上げられての連れ去り寸前も、
直後にジャンのもとへと戻るときもライモンダはお姫様抱っこをされている状態。
くるみ割り人形でも最後マーシャは結婚式でマントした王子に飛び込んでお姫様抱っこされる演出で
勇壮な作風の印象があるグリゴロさんは案外乙女心をくすぐる要素もお好きで入れたがるのか、考えが巡ります)
主要男性キャラクターであるジャンとアブさんの両方に重きが置かれているのは重要ポイントであり
例えば2幕ジャンの帰還とライモンダ連れ去り失敗されどめげぬアブさんの対決では決闘まで暫くの時間
両軍の集団戦やら間に入りつつ跳躍対決まであり、大河ドラマや歴史映画での
戦闘シーンに近いものがある印象。男性が豊富且つ雄々しい演出に対応可能な人材が揃うボリショイらしい振付です。
そういえば、『ラ・バヤデール』でもグリゴローヴィヂはニキヤとガムザッティの1幕修羅場にて
跳躍対決の振付を取り入れ、極力舞踊で見せる振付を好むと再確認。
ジャンも最初から勇壮な歩みによる登場で印象付け、1幕の後半まではワルツもライモンダと踊ってしかも
そっと寄り添い別れを惜しむ情感を含ませる見せ場を持たせたのち通常3幕で踊られるヴァリエーションを挿入したり
(グリゴローヴィヂ版3幕でのヴァリエーションは、先月受講した福田一雄さんの講座によれば本来は子供の踊りとして作られた曲らしい)
単なる舞踊の洪水にはとどまらぬ構成となっています。そしてアブさんに焦点を当てて男子の憧れの役として確立させた功績も大きく
先述の通り夢の場の引き際をずっしり怪しい場面とさせてライモンダの怯えをより募らせ
2幕後半では殆ど独壇場。3幕開演前のインタビューでツヴィルコは、生徒時代からタランダが踊るアブデラーマンに憧れていたことや
悪人ではなく愛に生きる人物として捉えていることを饒舌に語る姿から役への愛着が窺え
ひょっとしたら作品中で最たる存在感を示す役柄といっても過言ではないでしょう。
更に2幕では他のバレエ団の追随を許さぬであろうボリショイ自慢のキャラクターダンスがこれでもかと地鳴りの如き力を発揮。
ソ連時代の刷り込みによって改訂版を観た今回唐突に感じた場面もありながら、重厚な歴史舞踊絵巻な
グリゴローヴィヂ版『ライモンダ』待望の映画登場に感激は尽きず。いつの日か現地ボリショイ劇場での鑑賞を再度決意です。
美術は茶色を基調にしつつ写実的で立体感があり、特に回りををカーテンのような波で模した美術は圧巻。
衣装は渋みを効かせ、貴族女性の平たい胸元のカッティングやシンプルであっても
抑えた青や金といった色彩もセンスの良さを感じさせるデザインそして頭飾りも含め
歴史書から飛び出した人々のようです。シモン・ヴィルサラーゼの名前を目にすると
色彩の魔術師の如く派手さはない色味から不思議な光を放つ衣装の数々に、30年以上前から安心感を覚えております管理人でございます。
ボリショイシネマ名物カテリーナ・ノヴィコワさんの複数言語による案内も快調。
客席や準備中の舞台上にて舌が休む間もなく語っていらっしゃいました。
通訳文字起こしもついていけなかったのか、過去にボリショイでライモンダを踊ったダンサー紹介で
グラチョーワやステパネンコだったか、口にしていながら字幕では表示されぬ事態に笑。
ところで両腕を交互に下に向かって振り回すサラセンたちのコーダ冒頭の振付、
1993年のサッカーJリーグ開幕直後からスター選手として活躍し現在も現役選手である
三浦知良さんによるゴール後のパフォーマンスことカズダンスにそっくりであると思った方は5人程度はいらっしゃるであろうと切願。
開幕の頃テレビでヴェルディ川崎(当時)の試合を視聴するたび
舞台を劇場からスタジアムに移してのサラセンダンスに見えて仕方ない、そんな風変わり観戦をしていた管理人でございます。
さて、繰り返しになりますが全幕上演の機会が少ない作品で、もし今春のパリ・オペラ座来日公演にて
来日決定時の発表通りヌレエフ版『ライモンダ』上演であったらならば連日通い詰めていたであろうと想像。
しかし演目が変更となったため見合わせましたが、来年2021年6月には
新国立劇場バレエ団が12年ぶりつまりは干支一回りぶりに全幕再演。
ボリショイとは大分趣異なる繊細で緻密な衣装美術で中世の写本をめくるような色彩美も見どころ、どうぞご来場ください。
少しずつ主役は決まって参りましたが、残りの枠そしてアブさんの発表も心待ちにしております。
初演の2004年に比較すれば格段に男性ダンサーの層が厚くなりましたから
アブさんの見せ場増加の改訂も願います。そしてあのお饅頭の騎士なるジャンの肖像画も描き直しを笑。

新宿TOHOシネマの1階、映画のチケットを見せると特典を受けられます。
管理人はスパークリングワインを無料でいただき、そして焼き牡蠣セット。
※ベスメルトノワとヴァシュチェンコ主演映像はDVD化されており現在も入手可能です。
アップになったときのベスメルトノワのお顔が気合いの入り過ぎた舞台化粧のせいかなかなかの迫力ですが(失礼)色褪せぬ演出です。
そしてツヴィルコ少年も憧れたタランダのアブさんは必見。
さて昨今では当ブログでもしばしば行っている男性ダンサーの髪型観察。
実は私がバレエを観始めて最初に髪型ど突っ込みをしたのが平成突入まもない頃、ジャンを踊るヴァシュチェンコでした。
前髪が盛ったようなボリュームがあり、全体がやや長めの三角形シルエットに
パーマか天然か、映像をまじまじと眺めてしまった記憶は今もございます。
ヴァシュチェンコの映像はその後立て続けにベスメルトノワとの『ジゼル』、
アッラ・ミハリチェンコとの『白鳥の湖』、ボリショイ・バレエ・イン・ロンドンでの
『ショピニアーナ』やリュドミラ・セメニャカとの『ドン・キホーテ』グラン・パ・ド・ドゥなどで観ていながら
ノーブルであるのは分かるのだがさほど印象に残らず(失礼)。
その頃から早30年、昨今における数年に渡っての特定ダンサー猛集中の髪型観察継続は
無尽蔵の魅力が備わりが心から虜になっているからこそとお受け止めください。
https://spice.eplus.jp/articles/265958
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
振付:ユーリー・グリゴローヴィチ(原版:マリウス・プティパ)
台本:ユーリー・グリゴローヴィチ(原作:リディア・パシコワ)
出演:オルガ・スミルノワ(ライモンダ)
アルテミー・ベリャコフ(ジャン・ド・ブリエン)
イーゴリ・ツヴィルコ(アブデラーマン)
スミルノワは内面からの感情や顔の表情よりも空間を大きく使って繰り出される1つ1つのポーズの厳格なラインで魅せる崇高な姫。
1幕では若さ初々しさが大事と嘗てあらゆる作品にて主演を務めてきたマリーヤ・アラシュだったか
インタビューで話してはいたものの1幕から貫禄あり過ぎる姫君で
アブデラーマンの迫りにも怯えたり戸惑う様子もなく涼しい顔一辺倒な印象で、ライモンダの心境の揺れ動きや
幕ごとに成熟度を増していくさまは見えづらかった気もいたします。
しかし決闘に敗れた瀕死のアブデラーマンから目を逸らそうと恐怖感を募らせた後のアダージオは
敵国の男性とはいえ自らのせいで命を落とした姿を眼前にして心身が硬直していた姿からジャンの包容力によって
徐々に解れ落ち着きを取り戻す過程を優美で希望が見えるかのような旋律に乗せて丁寧に描写。
このアダージオが入っているのは誠に説得力があると毎回思え、1人の人間しかも自身を求愛した男性が目の前で亡くなった状況から
すぐさま心を切り替えてファンファーレでめでたしめでたしとはし難いと思うのです。(牧阿佐美さん版はファンファーレ賛美だが)
しっとりと愛を確かめ合い肩にもたれかかるような体勢のリフトのままによる幕切れはいたくロマンティックな風情を残し
3幕へと繋がっていました。いずれにしても近寄り難いほどに孤高で凛然とした風格に惚れ惚れし
今夏の東京シティ・バレエ団客演も今から楽しみです。
ベリャコフはなかなかの渋い男前で王子ではなくきちんと騎士に見えたジャン。(これ大事)
眼差し鋭く、マント捌きも颯爽としていてグリゴローヴィヂ版名物の1つである出征前の部下騎士らしき2人分従えての
勇壮なファンファーレに乗せたマントのトロワなる見せ場も絵になっていて宜しうございました。
但し、ベリャコフの責任ではないが真上から羽根らしき鋼が直立に装着されている兜の形状が
どうしてもラディッシュに見えてしまうのはどうしたものか。
それはともかく、人を寄せ付けないほどに気高いライモンダを振り向かせ心を開かせたのも納得な
高貴さと強さを兼備した騎士でございました。どちらかといえば純白な王子貴公子よりも
一癖ある役柄のほうが似合いそうな印象で、来日公演での『スパルタクス』クラッススは誠に期待が高まります。
ジャパンアーツのサイトから辿りご本人の投稿舞台写真一覧を眺めていってみたところ
20年以上前に観た衝撃が今も忘れられぬ、赤の広場特設舞台で踊る
マクシモワとワシリエフの映像で哀愁がしっとりと流れる振付と音楽にすっかり魅せられた
『アニュータ』のパ・ド・ドゥや(パートナーはオブラスツォーワ)や『明るい小川』のバレエダンサー
(シルフィードの衣装着けて自転車に乗る場面でのフィーリンが忘れられないが笑)も経験済みのようで
既に役柄の幅はかなり広いようです。
燃え盛る表現で観客の拍手を攫ったのはアブデラーマンのツヴィルコ。
後にも述べますが何しろグリゴローヴィヂ版でのこの役は名演者タランダで一度観てしまうと
誰が踊っても薄く見えてしまう懸念すら持っておりましたが、ギラリとした視線や粘り気と熱さが共存した踊りで嵐を起こし
うつ伏せ体勢で脚を交互に蹴り上げるようにして横へ横へと移動しながらの跳躍を始めテクニックも炸裂。
他の版と異なりアブデラーマンにも比重が置かれ、スペインや2幕のコーダでも自ら中央に入り率いて
興奮の最高潮へと導く力演でした。ただ単なる悪者ではない人物と映ったのは
ライモンダや伯爵夫人への礼を尽くす所作が深々と美しく、格も持ち合わせていたからこそ。
思えば城に怪しい人物、しかも姪っ子の婚約者の十字軍遠征先の地域からやって来た人物なんぞ
本来ならばドリ伯爵夫人は邪険に扱ってもおかしくはなくすぐさま引き取り願うところなのでしょうが
(そしてこの作品を観るたびに思う、城の警備体制は機能しているのか疑問。そうか働き盛りは十字軍に行ってしまったと結論)
あくまで丁重にもてなすのは一見強面で敵対国の人物であっても
アブさんの人間力(加えて財力やサラセン地域の発達した文化への憧憬も含むかもしれぬが)に惹かれるものが夫人自身もあったものと推察。
また場面は戻ってアブさん初登場は1幕後半の夢の終わり、幻のジャンとの再会後ライモンダが魘される場で
夢から覚めるまでが他版よりも非常に長くつまりはそれだけアブさんがしつこく付き纏う展開のため
余程のダンサーでなければ冗長になってしまいがちなところ。しかしツヴィルコの舞台全体を覆い尽くす勢いと怪しいオーラで席巻し
更にこのときばかりは怯えや不安を募らせていたライモンダとの呼応もあって
終わりかけた夢の最後の最後までを重たく引き摺り、その後ライモンダの目覚めをより鮮やかに感じさせる流れに繋がっていました。
元々バレエ作品の中では最も好きであり、しかもボリショイシネマでは初登場で概ね満足いたしましたが
従来と比較すると、音楽の順序変更や何箇所もの端折りの生じがあり疑問が残った部分も少なからず。
最たる衝撃の1つは1幕の幕開けの壮大なテーマ曲が流れた直後に入っていた吟遊詩人たちの踊りの曲がカットされていた点で
リュートを想起させる(実際の演奏はヴァイオリンであろうが)軽やかな調べで始まり、この部分があるからこそ
中世の宮廷の世界にすっと入り込めると捉えていただけに、テーマ曲の直後に
突如ライモンダの登場曲が響いてきた際には唐突な展開に思えてなりませんでした。
もう1箇所、順番前後して序曲も様変わりしており従来は3幕の前奏曲として演奏されていた
仰々しい曲が(今年の新国立劇場ニューイヤー・バレエでの海賊の前座の如き扱いな短か過ぎるパ・ド・ドゥ使用曲として記憶に新しい)
1幕の前奏曲として演奏。ソ連時代の収録映像の刷り込みはこちらの勝手な事情であるものの
首を長くして待ちわびていた開演のはずが1、2幕は飛ばして3幕のみ上演と錯覚。心がなかなかついていけなかった点は否めませんでした。
そういえば白の貴婦人も登場しなかったがいつから無しになったのか、また3幕ではチャルダッシュとマズルカの順序が入れ替えで
マズルカから開始し、チャルダッシュの後にはすぐフィナーレのギャロップ。
まさかグラン・パ・クラシックの前に披露とは想定外の順序でしたので遡って要調査です。
『ライモンダ』と『スパルタクス』を上演した2012年の来日公演に一度も足を運ばず終いであったのは一生の後悔でございます。
『ライモンダ』の市販映像として日本で最初に出回ったのが恐らくはベスメルトノワとヴァシュチェンコ主演の
1989年収録のグリゴローヴィヂ版と思われ、その後も全幕映像の販売は三大バレエに比較すると到底少なく
動画サイトが普及したとは言えこの映像が刷り込まれている方は多くいらっしゃるかと思います。
私もその1人で、以後2005年ABT来日公演でのアンナ・マリー=ホームズ版における十字軍無しでチャルダッシュが1幕披露の設定や
新国立劇場での牧阿佐美さん版初演時にはプロローグでジャンが出征してしまい1幕のワルツ不在、
日本における全幕初演のカンパニーである牧阿佐美バレエ団のウエストモーランド版での
結婚式でもライモンダが豪華なティアラや装飾を頭に付けていない点(花冠な形)や騎士たちの絵が十字軍の時代よりも近代寄りと思えた点や
日本バレエ協会アリエフ版のお洒落すぎる甲冑やキエフバレエ全幕でのピンクがかった
メルヘンな世界など(現新国立の菅野さんがライモンダのお友達役でご出演)
基準がグリゴローヴィヂ版であるがゆえに気にかかる点がいくつも浮上してしまい、刷り込みの恐ろしさを思い知るばかりです。
ただ情報を容易に入手できる時代になっても強烈な印象が刻まれているのは、キャラクター設定や振付の骨格がしっかりしているからこそ。
これといってドラマ性がない、往年の少女漫画な三角関係、なんぞ言われる作品ですが
(少女漫画といえば帰還後の鉢合わせでアブさんに抱き上げられての連れ去り寸前も、
直後にジャンのもとへと戻るときもライモンダはお姫様抱っこをされている状態。
くるみ割り人形でも最後マーシャは結婚式でマントした王子に飛び込んでお姫様抱っこされる演出で
勇壮な作風の印象があるグリゴロさんは案外乙女心をくすぐる要素もお好きで入れたがるのか、考えが巡ります)
主要男性キャラクターであるジャンとアブさんの両方に重きが置かれているのは重要ポイントであり
例えば2幕ジャンの帰還とライモンダ連れ去り失敗されどめげぬアブさんの対決では決闘まで暫くの時間
両軍の集団戦やら間に入りつつ跳躍対決まであり、大河ドラマや歴史映画での
戦闘シーンに近いものがある印象。男性が豊富且つ雄々しい演出に対応可能な人材が揃うボリショイらしい振付です。
そういえば、『ラ・バヤデール』でもグリゴローヴィヂはニキヤとガムザッティの1幕修羅場にて
跳躍対決の振付を取り入れ、極力舞踊で見せる振付を好むと再確認。
ジャンも最初から勇壮な歩みによる登場で印象付け、1幕の後半まではワルツもライモンダと踊ってしかも
そっと寄り添い別れを惜しむ情感を含ませる見せ場を持たせたのち通常3幕で踊られるヴァリエーションを挿入したり
(グリゴローヴィヂ版3幕でのヴァリエーションは、先月受講した福田一雄さんの講座によれば本来は子供の踊りとして作られた曲らしい)
単なる舞踊の洪水にはとどまらぬ構成となっています。そしてアブさんに焦点を当てて男子の憧れの役として確立させた功績も大きく
先述の通り夢の場の引き際をずっしり怪しい場面とさせてライモンダの怯えをより募らせ
2幕後半では殆ど独壇場。3幕開演前のインタビューでツヴィルコは、生徒時代からタランダが踊るアブデラーマンに憧れていたことや
悪人ではなく愛に生きる人物として捉えていることを饒舌に語る姿から役への愛着が窺え
ひょっとしたら作品中で最たる存在感を示す役柄といっても過言ではないでしょう。
更に2幕では他のバレエ団の追随を許さぬであろうボリショイ自慢のキャラクターダンスがこれでもかと地鳴りの如き力を発揮。
ソ連時代の刷り込みによって改訂版を観た今回唐突に感じた場面もありながら、重厚な歴史舞踊絵巻な
グリゴローヴィヂ版『ライモンダ』待望の映画登場に感激は尽きず。いつの日か現地ボリショイ劇場での鑑賞を再度決意です。
美術は茶色を基調にしつつ写実的で立体感があり、特に回りををカーテンのような波で模した美術は圧巻。
衣装は渋みを効かせ、貴族女性の平たい胸元のカッティングやシンプルであっても
抑えた青や金といった色彩もセンスの良さを感じさせるデザインそして頭飾りも含め
歴史書から飛び出した人々のようです。シモン・ヴィルサラーゼの名前を目にすると
色彩の魔術師の如く派手さはない色味から不思議な光を放つ衣装の数々に、30年以上前から安心感を覚えております管理人でございます。
ボリショイシネマ名物カテリーナ・ノヴィコワさんの複数言語による案内も快調。
客席や準備中の舞台上にて舌が休む間もなく語っていらっしゃいました。
通訳文字起こしもついていけなかったのか、過去にボリショイでライモンダを踊ったダンサー紹介で
グラチョーワやステパネンコだったか、口にしていながら字幕では表示されぬ事態に笑。
ところで両腕を交互に下に向かって振り回すサラセンたちのコーダ冒頭の振付、
1993年のサッカーJリーグ開幕直後からスター選手として活躍し現在も現役選手である
三浦知良さんによるゴール後のパフォーマンスことカズダンスにそっくりであると思った方は5人程度はいらっしゃるであろうと切願。
開幕の頃テレビでヴェルディ川崎(当時)の試合を視聴するたび
舞台を劇場からスタジアムに移してのサラセンダンスに見えて仕方ない、そんな風変わり観戦をしていた管理人でございます。
さて、繰り返しになりますが全幕上演の機会が少ない作品で、もし今春のパリ・オペラ座来日公演にて
来日決定時の発表通りヌレエフ版『ライモンダ』上演であったらならば連日通い詰めていたであろうと想像。
しかし演目が変更となったため見合わせましたが、来年2021年6月には
新国立劇場バレエ団が12年ぶりつまりは干支一回りぶりに全幕再演。
ボリショイとは大分趣異なる繊細で緻密な衣装美術で中世の写本をめくるような色彩美も見どころ、どうぞご来場ください。
少しずつ主役は決まって参りましたが、残りの枠そしてアブさんの発表も心待ちにしております。
初演の2004年に比較すれば格段に男性ダンサーの層が厚くなりましたから
アブさんの見せ場増加の改訂も願います。そしてあのお饅頭の騎士なるジャンの肖像画も描き直しを笑。

新宿TOHOシネマの1階、映画のチケットを見せると特典を受けられます。
管理人はスパークリングワインを無料でいただき、そして焼き牡蠣セット。
※ベスメルトノワとヴァシュチェンコ主演映像はDVD化されており現在も入手可能です。
アップになったときのベスメルトノワのお顔が気合いの入り過ぎた舞台化粧のせいかなかなかの迫力ですが(失礼)色褪せぬ演出です。
そしてツヴィルコ少年も憧れたタランダのアブさんは必見。
さて昨今では当ブログでもしばしば行っている男性ダンサーの髪型観察。
実は私がバレエを観始めて最初に髪型ど突っ込みをしたのが平成突入まもない頃、ジャンを踊るヴァシュチェンコでした。
前髪が盛ったようなボリュームがあり、全体がやや長めの三角形シルエットに
パーマか天然か、映像をまじまじと眺めてしまった記憶は今もございます。
ヴァシュチェンコの映像はその後立て続けにベスメルトノワとの『ジゼル』、
アッラ・ミハリチェンコとの『白鳥の湖』、ボリショイ・バレエ・イン・ロンドンでの
『ショピニアーナ』やリュドミラ・セメニャカとの『ドン・キホーテ』グラン・パ・ド・ドゥなどで観ていながら
ノーブルであるのは分かるのだがさほど印象に残らず(失礼)。
その頃から早30年、昨今における数年に渡っての特定ダンサー猛集中の髪型観察継続は
無尽蔵の魅力が備わりが心から虜になっているからこそとお受け止めください。
2020年3月19日木曜日
英国ロイヤル・バレエ団 映画『ロミオとジュリエット』

英国ロイヤル・バレエ団の映画『ロミオとジュリエットを観て参りました。
約400名収容の大スクリーン劇場で観客はおよそ20名。随分とゆったり寛ぎながら鑑賞いたしました。
https://romeo-juliet.jp/
ジュリエット:フランチェスカ・ヘイワード
ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル
ティボルト:マシュー・ボール
マキューシオ:マルセリ-ノ・サンベ
ベンヴォーリオ:ジェームズ・ヘイ
パリス:トーマス・ムック
キャピュレット卿:クリストファー・サウンダース
キャピュレット夫人:クリステン・マクナリ-
乳母:ロマニー・パイダク
ローレンス神父:ベネット・ガートサイド
ロザライン:金子扶生
STAFF
監督:マイケル・ナン
撮影監督:ウィリアム・トレヴィット
振付:ケネス・マクミラン
セルゲイ・プロコフィエフ
美術:ニコラス・ジョージアディス
※前回の記事新国立劇場バレエ団『マノン』総括よりは短いため、お急ぎの方もご安心ください。
ヘイワードはナチュラルで意志をはっきりと示す愛らしいジュリエット。
乳母に対しては笑いながらからかうようにして露わにするあどけなさや
ロミオとの出会いでは迷いなくこの人こそ運命と言わんばかりの瞳でじっと見つめる眼差しからも見て取れました。
身体をコントロールしつつとにかく全身が歌うように自在に動き
中でも木や花がそよぐバルコニーでのパ・ド・ドゥにおける指先から脚先にかけて情熱を帯びて
喜びを体現する姿に会場の温度が数度は上昇した感覚になったほどです。
ブレイスウェルまだ色に染まっていない、前半は喜怒哀楽に明確さがさほどない(褒め言葉)朴訥としたロミオで
マキューシオとベンヴォーリオのペースに合わせていそうなお人好し青年。
だからこそ、後半でのティボルトへの目の色を変えた体当たりな怒りに周囲はなす術もなく騒然するしかなかったのでしょう。
活発そうなジュリエットとおっとり気味なロミオ、たいそう宜しいバランスでした。
世間では絶賛の嵐ティボルトのボールは容姿端麗でロミオたちを見据える企みを含んだ視線すら美しい青年。
しかしこればかりは個人の好み及び我が鑑賞眼の欠如が要因でございますが、昨年のロイヤルシネマでロミオと同様
ドラマ性の強い作品の役柄であっても心を揺さぶられるに至らず。
昨夏話題沸騰であったマシュー・ボーン版『白鳥の湖』主役で観れば鷲掴みにされるであろうか気になるところです。
技術の安定性、軽やかさで目を惹いたのはサンベのマキューシオ。
昨年には友人の代理で足を運んだ来日公演『ドン・キホーテ』にてスティーブン・マックレーの代役バジルを観ており
好演ではあったのは確かだが、突如のギター演奏や叫び声が不自然さに拍車をかけた
いかんせん古典バレエ改訂史上に残るであろう大コケ演出であったため(アコスタには申し訳ないが)
ダンサー各々の特性までとても把握できず。今回落ち着いた状態で鑑賞すると
狂いなき脚捌きや感情をごく自然に乗せながらの回転で一瞬で人々を惹きつける力を備え好印象でした。
砂埃が舞い生活感息付く空間での進行に興味は尽きず。例えば幕開け最初にスクリーンに登場し目に留まるのは
人間ではなく鶏さんたちで、向かって左側にて何かを啄んでいる姿が日常生活の前面押し出し効果大です。
ただマキューシオだったか、瀕死状態の緊迫感ある場面においても傍でコッココッコとお食事に勤しんでいたのはご愛嬌。
2幕冒頭では噴水らしき建造物に止まった鳩がロミオたちに先立って観客をお出迎え。しかも色味が白く2羽でしたから
もしやアシュトン振付『二羽の鳩』へのオマージュか。いくら英国バレエ映画とはいえ
わざわざ英国が生んだ二大巨匠無理矢理融合そんなわけはない。それはさておき舞踏会の立食テーブル近くに佇む犬を始め
鶏さんや鳩さんたちも重要な演者として位置付けられています。
いわゆる舞台袖に入る行動もないため、移動しながらの舞台展開も面白さの1つ。
舞踏会の前半、騎士の踊りの音楽あたりでは夕暮れ時の野外で厳粛に踊られ一段落すると一斉に隣の階段を下りて移動。
後方には立食テーブルが置かれ、柑橘類の果物の盛り皿が良き彩りとなっていて同じ野外であっても明快な舞台転換を思わせます。
決闘での階段駆け上がりやぐるぐると路地を縫うように追い詰め合い、街の人々もなだれ込んでくる展開にも手に汗を握り
籠に詰められたじゃがいもらしき野菜も騒ぎに呑み込まれてひっくり返り大崩壊。
絶命まっしぐらなティボルトを天候も共に嘆くかのように豪雨が降り始め、泥臭い修羅場と化したのも映画ならではの演出でしょう。
身なりの汚れなんぞ目に入らぬキャピュレット夫人の打ちひしがれた悲しみが焼き付く幕切れでした。
それから長年立っての願いが叶ったと唸らせたのは舞台上では描かれていないときのキャラクターたちの行動。
当ブログでもしばしば妄想を綴っておりますが、そこかしこに散りばめられていたのは喜ばしい構成でした。
中でも印象に残ったのは2幕にて街のお祭り騒ぎが最高潮に達しつつある段階でのティボルトの様子。
既に家で自棄酒か、その勢いのまま割り込んで和を乱す流れに納得です。命を落としたティボルトの遺体が運ばれる場面もあり。
また時間は戻りますが、舞踏会でジュリエットが隙を見てロミオと2人きりになろうと仮病演技をする箇所での
茂みに隠れたロミオの行動も映されていた点も嬉しく、ジュリエットのわざとらしい仮病がキャピュレット家に通じ
一部始終を眺めていた張り込み中の仮面ロミオ刑事、思わず口角上がってニヤリ。
(勿論全編通してではあるが、特にこの場面は2019年10月20日昼と27日の新国立劇場に登場したロメオで観てみたいと欲が募ります笑)
手にしたのはあんパン、ではなくジュリエットの揺るぎない愛であったのですから
危険と隣り合わせな状況もなんのその、幸福も絶頂であったに違いありません。
映画であるためより無防備に、自然な描写も特徴で3幕の寝室場面はなかなかの露わな格好で布団に潜る2人が映されながらの展開。
オリビア・ハッセーとレナード・ホワイティング主演の1968年の同名映画を想起させ懐かしさが沸き上がりました。
ジュリエットが特段バレエらしいがっちり固めた髪型ではなかったため
ほつれ髪もまた激動の短期間を生き抜くヒロインを色濃くしていたのでした。
先に触れた内容と重複いたしますが、映画の『ロミオとジュリエット』と言えば、
フランコ・ゼフィレッリ監督が手がけオリビア・ハッセーが主演を務める
1968年制作同名映画に昔から魅了されており、今もなお好きな映画上位6本に入っているほど色褪せぬ名画。
※ちなみに他の5本は『サウンド・オブ・ミュージック』、『トリスタンとイゾルデ』(フランコ/マイルズ主演)、
『天空の城ラピュタ』、『風の谷のナウシカ』、『Shall we ダンス?』。
まさに人々の息遣いが飛び交い、砂や泥、石畳が敷かれた路地や重厚な建造物に囲まれたあの世界の中でバレエが踊られたらと
しばしば想像を巡らしていた為、いたく喜ばしい企画でした。
ハッセーの映画『ロミオとジュリエット』で今も忘れ難いのは、図書館で見つけた映画音楽大全集CDにて
ニノ・ロータによるテーマ曲を繰り返し聴いたり音楽やヨーロッパ全般の衣装デザインや
建築に興味があった経緯もあり、全編をきちんと見ようと会員カード更新手続き特典である
1本無料レンタルサービスを利用して近所のレンタルビデオ店から借りてきたときのこと。
ちょうど寝室場面に差し掛かり、今回のバレエ映画『ロミオとジュリエット』とは比較にならぬほど
喘ぎ声といい肌の晒し方といい大胆に描写された場面に思春期の管理人が仰天していると、
気づけば帰宅した妹がランドセルを背負ったまま、あたかも学校教材の映像でも見るかのように
真面目に見ていたものですから二重に驚愕。しかし見終えると作品そのもの、
とりわけ衣装のデザインに興味津々な様子であった妹が他の場面も見たいとせがみ
ならば早送りしつつ最初からもう一度姉妹で鑑賞。ベルベットを多用した緻密で重厚な衣装の数々を何度も凝視していた妹でごさいました。
思えば幼い頃から絵を描くことが大好きであった妹はバレエを観に行ってもダンサーや音楽よりもまず衣装や美術装置観察に集中していたため
(現在もこれといって好きなバレエ団はないそうだが、興味を示すか否かは衣装デザインが判断基準らしい)
衣装の観点から作品に入るのも頷けた次第。小さな子供向きの場面ではないからと即座に停止操作をして
見せないようにしようと考えが過った自身が恥ずかしくなり、作品との向き合い方を学んだ義務教育終了間近の管理人でした。
今も、例えば『マノン』や『アンナ・カレーニナ』のような大人向きと紹介されがちな作品上演の会場に子供がいてもさほど驚かず、
仮にあらすじがよく理解できなくても振付、音楽、衣装、美術といった様々な要素のどれか1点でも気に入り心に残ってもらえたらと
子供の頃に通っていた、鑑賞を懸命に奨励していたバレエ教室の先生の言葉を思い出します。

後日訪れた北海道イタリアンで当ブログレギュラー大学の後輩と乾杯。
英国ロイヤルバレエ版映画『ロミオとジュリエット』を観たかったようで、内容や感想を語って参りました。
可愛らしい店名もポイントです。

中札内鶏の”白雪”シーザーサラダとズッキーニと帆立、サーモンのクリームパスタ。
パスタの見かけは少なめですがしっかりクリームが絡んでおり具もふんだんに入っていてボリューム満点。
サラダの名称からは3年前に実質初めて観た子どもバレエ『しらゆき姫』を思い出し
いくら子どもバレエと言ってもナレーションや台詞が多過ぎると賛否両論ありましたが私は少数派であったがかなり気に入った。ケホ!

マルゲリータピザ。2人分であっても想像以上に大きめでしたが生地は薄く、ソースはトマトの味がしっかり効いていて難なく完食。

ふわふわ蕩けるティラミスとがっしりと固められたカタラーナ。
苦味強く濃いめに淹れたダブルエスプレッソと相性抜群です。
昨年の新国立劇場での鑑賞時にティラミス発祥はヴェローナ説とビュッフェの解説に記されていた気がいたします。
カタラーナを目にするとバレエについてもっと語らーな、と毎回心の中で呟く管理人。
今後とも皆様、どうか懲りずにご訪問お待ち申し上げます。
2020年3月10日火曜日
当日に決定が下された突如の千秋楽 新国立劇場バレエ団『マノン』2月22日(土)〜2月26日(水)

2月22日(土)から26日(水)、新国立劇場バレエ団『マノン』を計3回観て参りました。
当初は5回公演の予定でしたが新型コロナウィルス感染拡大を懸念し26日(水)当日に残り2回公演の中止が決定。
突如26日(水)が千秋楽となりました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/manon/
【2/22(土)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの愛人 木村優里
娼家のマダム 本島美和
物乞いのリーダー 福田圭吾
看守 貝川鐵夫
高級娼婦 寺田亜沙子 奥田花純 柴山紗帆 細田千晶 川口藍
踊る紳士 速水渉悟 原健太 小柴富久修
客 宇賀大将 清水裕三郎 趙載範 浜崎恵二朗 福田紘也
【2/23(日)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの愛人 木村優里
娼家のマダム:本島美和
物乞いのリーダー 福田圭吾
看守:貝川鐵夫
高級娼婦 奥田花純 柴山紗帆 細田千晶 渡辺与布 川口藍
踊る紳士 速水渉悟 原健太 小柴富久修
客 宇賀大将 清水裕三郎 趙載範 浜崎恵二朗 福田紘也
【2/26(水)19:00】
マノン 小野絢子
デ・グリュー 福岡雄大
レスコー 渡邊峻郁
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの愛人 木村優里
娼婦家のマダム 本島美和
物乞いのリーダー 速水渉悟
看守 貝川鐵夫
高級娼婦 池田理沙子 渡辺与布 玉井るい 益田裕子 廣田奈々
踊る紳士 速水渉悟 原健太 中島駿野
客 宇賀大将 清水裕三郎 趙載範 浜崎恵二朗 福田紘也
嬉しいことに、公演の様子が一部フェイスブックにて映像公開されています。是非ご覧ください。
米沢さん&ムンタさん 寝室
https://www.facebook.com/150537605092987/posts/2006985912781471/
米沢さん マノン2幕ソロ
https://www.facebook.com/150537605092987/posts/2006987192781343/
米沢さん&ムンタさん 沼地
https://www.facebook.com/150537605092987/posts/2006987686114627/
2月26日(水)カーテンコール
https://www.facebook.com/150537605092987/posts/1999056310241098/
※3回公演でしたが、大変長い感想でございます。まとまり、ございません。
鑑賞予定の舞台が中止となったなど、お時間のある方はどうぞお読みください。
世相が大変な最中に読む気になれぬとお思いの方は恐れ入ります、
予定が次々と飛んでおり内容未定ではございますが次回まで今しばらくお待ちください。
ひとまずは罰としてレスコーによる背後からの締め上げに遭わぬよう気をつけて過ごして参ります。
(26日のレスコーならむしろ歓天喜地か、或いは泥酔の介抱なら喜んで。いやそういう問題ではない)
米沢さんは純愛路線なマノン。2幕でのデ・グリューとGMの狭間で揺れる場では
デ・グリューからの求愛に泣き出しそうな表情で拒絶したりと
豪奢な生活に憧れ、心の内は揺れているとはいえデ・グリューへの愛の方が強かったであろうと想像いたします。
マノン像でしばしば挙がる「魔性」要素はやや控えめな、だからこそ少しでもGMに心が傾きかけると
デ・グリューではなくても慌てふためいてしまいそうな、掴みどころのない部分も含め魅惑的な少女でした。
目にしたものに心惹かれるとすぐさま走ってしまう流木の如く右へ左へ流されてしまうマノンで、
例えば首飾りをかけられた際にははしゃぐ行為を抑えるように喜びを表してうっとり目線。
異質な程に優等生なムンタギロフデ・グリューと共に危険行為に少し手を染めるだけで悲劇を予期させ
だからこそ終盤の沼地が一層ドラマティックに爆発していた印象です。
ムンタさんはこれまで新国立では『ジゼル』、『眠れる森の美女』、『白鳥の湖』、『くるみ割り人形』など
度々客演していながらいわゆるきらきら貴公子の印象ばかりが先行しておりましたが
(バレエ団ファンとして如何なものかとご指摘を受けそうだが、NHKでテレビ放送された
2015年の米沢さんとの白鳥の湖は未だ冒頭しか観ていない)今回は全く異なり、内側から迸る熱さに仰天。
1人異質なほど光り輝き小綺麗であったため紐で十字に縛った古びた書籍を持つ姿は違和感が残ったものの笑
寝室での喜びに満ち溢れた伸びやかな脚のラインや沼地での身体の奥底から突き出す感情など
容姿の麗しさのみにとどまらぬ魅力全開。作品を踊り込み、役も似合い、更には世界中で引っ張りだこな旬のスターダンサーで
その上、娼婦や物乞いといったあらゆる役柄を務めるダンサーとの細かなやりとりも手を抜かず
初台に溶け込みつつ舞台全体をしっかり見渡しながら臨む姿勢に脱帽。
この状況下に予定通り来日を遂げたムンタさんには感謝の念が尽きません。
基本バレエ団のダンサーのみで賄って欲しい派ではございますが、今回ばかりはムンタさんのデ・グリューと
米沢さんのマノンの共演、新国立バレエとの化学反応に居合わせたのは誠に幸運でした。
2幕でGMのもとへ行きそうになるマノンを求める場面での見上げるところにて
子犬のような目で見つめる眼差しに、ああ世の女性陣はこの目に蕩けるのかとロイヤルシネマのときと同様納得。
私も20年後くらいにはムンタさんのような往年の少女漫画系貴公子の虜となるのかもしれないと
未来予想図を描画いたしましたが、ある知人曰くそう簡単には私の好みは変わりそうにないらしく
20年だろうが30年だろうが年月を経ても着物が似合う人しか好みそうにないと武士の如くバッサリ斬られた管理人でございます。
米沢さんムンタさんの讃え合うパートナーシップ構築にも感激し、恐らくは本能のままに物事を判断して流木の如く
右へ左へと流されやすくデ・グリューと戯れる際には金銭なんぞ一切忘れて無邪気にすら感じさせるマノンと
そんな後先や損得を考えず飛び込んでくるマノンを全身で受け止め一身に捧ぐデ・グリューが交わす愛のドロッとした濃密度は低く
ふわっとしたマノンとドラマ性もありつつもきらきら貴公子な趣あるデ・グリューであるためか
この作品にしては澄み切った爽やかさを思わせ、絵でいえば水彩画。
例えばじっと見つめ合う場面においては互いに交わす視線がぐっと強まっても
揺らめく水面のような透明感に包まれ、周囲からは一線を画した純愛少女漫画な2人と化していた気がいたします。
マノンの肢体がバラバラに壊れ崩れそうな脆さが前面に出て、最後の最後までマノンを呼び起こそうと
デ・グリューの叫びが響き渡っていた沼地も圧巻。
木下さんのレスコーはムンタさんと身長差があるとはいえ無遠慮に迫る熱演。
1幕終盤の金銭での解決を提案する箇所でのデ・グリューの今にも締め上げられそうな苦しい表情からも
レスコーの追い詰めのおっかなさを物語っていた印象で
愛人との酔っ払いパ・ド・ドゥも、急斜なリフトを始め滑らかなサポート職人芸はあっと唸らせました。
ただ全体を通してみるとやや忙しない印象が前面に出てしてしまい、昨年の『ロメオとジュリエット』マキューシオや
今年のニューイヤー・バレエDGVでの完全に役を自身のものにした鉄壁ぶりであったため
期待値を高く掲げ過ぎてしまったためかもしれません。
小野さんは白い帽子に淡い水色の清楚な装いであっても登場時から危うさを孕んだ視線にどきりとするマノン。
流されやすさとは無縁そうな、物事を目の前にするとまず一呼吸置いて損得を巡らせてから決断しているであろうしたたかなヒロインでした。
初挑戦の2012年はゲネプロ写真での2幕にてGMを見据える姿からして仰け反りそうなほどの魔性に同性であっても震え上がりましたが
8年前よりも更に色気も増していた印象。脚先指先から魔力を振り撒き、一寸の隙も与えぬ強さに
デ・グリューではなくても抗えないと説得力を持たせていました。
全編通して視線と踊りが一体化した姿に目を見張りましたが、特にGMとレスコーとのトロワでの
艶かしく揺れる肢体と磁力で吸い付くような視線が同時に浮遊したときの蠱惑的な姿が強烈に刻まれております。
GMから首飾りを装着させられたときの子供のような純粋な憧れを露わにした米沢さんに対して
小野さんは私にこそ似合う宝石であると冷静さを保っていた様子であるなど
お2人ともマノンの捉え方が全く違うからこそ見比べが何倍も面白く、複数キャスト鑑賞の醍醐味を堪能。
どちらが良いか否かではなく甲乙付け難いヒロインであったのは間違いありません。
思わず目を覆いたくなる場面ながらこの作品を観る上で必ず注目する、看守からの迫りにおいても
お2人ともわざとらしさが無かった点も高評価。余りに残酷さのある行為をされた後では何もかもが体内から抜け落ちた状態となり
もはや泣く気力もないと思うのです。仮に未遂であったとしても恐怖感に苛まれて身体の制御も思うようにいかないでしょうし
ましてや未遂ではないのは振付からも見て取れますし密閉された空間ですから尚更でしょう。
大泣きすることもなく、横たわったまま目が虚ろになっていた表情が
自然な流れに映ったのでした。途中、一瞬看守の身体が離れたときには
ようやく訪れた束の間の安息の時間にほんの微かな笑みが覗いていた点も実に真実味ある表現でした。
福岡さんは朴訥とした神学生デ・グリューで紐で縛った古書を手にする姿がいたく自然な苦学生。(これ大事)
娼婦たちにからかわれても戸惑っておろおろしたり喜怒哀楽がはっきりしない反応がまた
社交的でなく勉強一筋であったであろう生真面目学生であると窺える登場でした。
驚くほどに若くあどけなさがあり、昨年の『ロメオとジュリエット』ティボルトと同じダンサーにはとても見えず。
ロメジュリのときはロメオの渡邊さんと並べば福岡さんティボルトのほうが力も年齢も上回っていたのは明らかでしたが
今回は力関係が見事なまでに逆転。デ・グリューとしていかに振る舞うか魅せるか、しっかり心得ての表現であったと見受けます。
2幕でのマノンの心を取り戻そうと訴えるソロは嘆きにも感じさせる悲痛さがあり
見るからに計算高く魔性な少女を再度目を向けさせるのは容易でないと思わず感情移入。
沼地でのふらつくマノンを支えようと全てをぶつける熱さも凄まじく、壮絶な幕切れへと繋がっていました。
福岡さんといえば、デ・グリュー初挑戦直後の2012年秋に開催された朝日カルチャーセンターにおける
バレエ評論家守山実花先生との対談にて、1幕の寝室のパ・ド・ドゥ映像をご覧になりながら
佳境に差し掛かったあたりにて「彼はまだ知らないんです。この後の修羅場を…」と語って場内大笑い。
続けて「(GMたちが)もうドアの前に到着する頃です」とご自身の役を俯瞰的に実況解説されていた通り
まさかの展開にあれよあれよと呑み込まれていくデ・グリューを一段と精度を上げて踊られていた再演でした。
※まだまだ続きます。小休止をどうぞ。
渡邊さんのレスコーは見た目は癖者ではなさそうな人物ながら金銭が絡むと途端に成り上がりな面を見せ、
GMとの取引確定後は一層ギラギラ。酔いどれソロ、愛人とのパ・ド・ドゥともに体当たりで笑いも起こり
酒癖女癖が悪くても憎めず助けたくなる人物で、昨夏八王子市でのバレエナウさん発表会における
貝川鐵夫さん振付『長靴を履いたネコ』での魔王を除けば(何体ものぬいぐるみを奪い、子猫たちを連れ去るほのぼの系悪役)
本拠地では初披露の色悪な役に心酔いたしました。
実のところ、リハーサル映像を見た際にはさらっとしていた印象を持ってしまっておりましたが
本番では大化け。色気や怖さもありつつ物乞いとつるむときはやんちゃであったり
GMにはわざとらしく礼儀正しく接したかと思えばお金が入る筋道ができそうと確信するとニヤリと笑みが零れたりと
全身からレスコーが持つ様々な表情が伝わる人物でした。レスコーがこうにも頭の回転が早く行動力もあり
GMと物乞いの間を行ったり来たりと咄嗟の判断力も兼備しているとは初めて知った次第。
しかもあらゆる素早い行動の畳み掛けも忙しそうに感じさせず、空間の使い方が大きく余裕ある行動に見せていた点も惚れ惚れ。
GMの時計を盗んだ物乞いリーダーをGM本人の前に犯人として突き出した際にはリーダーに感情移入して思わず裏切り者かと
訴えそうになりましたが、瞬時の交渉で時計は返却させて代わりにリーダーは金銭入手。やり手過ぎるレスコーに今更ながら驚倒です。
スパイスイープラスでのインタビューで楽しみが一層増していた、1幕終盤でのデ・グリュー締め上げは
単なる脅迫や威嚇ではなく、お金があれば全ては上手く回るのだから受け入れて欲しいと
懸命に語りかけるように迫っていた点も好印象。
役柄の設定が近衛兵であると考えると元は協調性も少なからずあるであろう真面目な青年でしょうから
ただ品悪く拷問のような幕切れにしなかったのは非常に説得力があると感じました。
他の場面も含め一生懸命演じようとせず、ぶっ飛ぶところは存分に飛び上がり
即座に転換して千鳥足気味の箇所に至るまでメリハリある踊りと酔っ払って高揚した感情が
自然と融合して解き放つ見せ場となっていた酔いどれソロや
振付上では危なっかしいリフト満載で、酔った設定であるためふらつきながらも実際は盤石且つ大胆に魅せていた、
バタンと絶妙なタイミングで倒れ込んでは笑いも誘っていた愛人との酔いどれパ・ド・ドゥにも心より喝采。
木村さんとはぶっつけ本番に近い状態であったであろう事情も一切感じさせず、パ・ド・ドゥのみならず
隅っこでの熱々ほろ酔いな細かなお芝居からも片時も目を離せず魅了されました。
レスコーと言えば遡ること昨年の夏、パリ・オペラ座バレエ団精通の方より教えていただいて
1990年の『マノン』映像を鑑賞し(のちにバレエチャンネルさんのインタビューで渡邊さんも語っていらした映像)
マノンがモニク・ルディエール、デ・グリューがマニュエル・ルグリ、そしてレスコーがカデル・ベラルビで
愛人がマリ=クロード・ピエトラガラという黄金キャスト集結公演でした。画質は上等とは言い難いながら
基本マクミラン作品は本拠地英国ロイヤルバレエの舞台が好ましいと考えがちな
私の思い込みを打ち飛ばされる文句の付けようがないゴージャスな舞台に驚嘆。
とりわけトゥールーズのキャピトル・バレエ時代の渡邊さんを自身のオリジナル作品に次々と抜擢して鍛え上げた
現在も同カンパニーの監督を務めるベラルビさんレスコーの整い過ぎた翳りのある色男ぶりには
悲鳴に近い歓声を上げそうになり、少数派であるのは承知で申しますとこれはヘナチョコなデ・グリューよりも(失礼)
俄然色悪レスコーをベラルビの教え継承者の渡邊さんで観たいと願い始めたのでした。
ひたすら色男或いは冷酷無比といった両極端な印象が先行していた従来のレスコーとは一味も二味も異なった造形で渡邊さんは挑まれ
物乞いからも慕われる人気ぶりや酔っ払ってだらし無い(失礼)体勢で
愛人の手を掴みながら居眠りしていても、立ったまま顔に手を当て酔いを醒まそうと試みていても
(立ったままの項垂れは現代の職場の宴会においても開始から1時間半程度過ぎると1人はいるであろう、幹事泣かせな参加者。
ちなみに私はとある集まりの食事会で毎回幹事を務めており、日時や会場などの事前通知の際には
酔っ払いの介助介抱はしない、飲酒は自力で帰宅可能な程度の量で願うと必ず文書で通達する
優しさ欠如の幹事であるが、このレスコーなら特例措置決行間違いない)
憎めぬ愛嬌など多彩な魅力を場面ごとにまこと鮮やかに体現。悪人だけにとどまらぬ
豪胆で容赦無く怖いもの知らずで逞しく男らしい面もあれば、取引に利用しているだけかもしれないが
物乞いとも交われる親しみ易い面もあり、こうにも人間味豊かで深みもあるレスコーには初めてお目にかかりました。
妹を金銭闇取引に利用する上に多少酒癖や女癖が悪くても憎めず助けたい心持ちにさせられたのは不思議なもので
(現代ならば警察通報級の荒くれダメ男ですが笑)最期GMに向けた、瀕死の状態でも尚のし上がりたい野望を募らせた
憎悪の視線にも慄き、悲願であった新国立初披露の色悪な役に酔い痴れました。
人脈作りも上手く頭のキレも良く、金銭の回り方の仕組みを把握し経営能力も備えていそうですから
現代ならば一代で年商数十億単位の会社を築き行き着く先は若きやり手の社長としてカンブリア宮殿にも出演となるのでしょうが
まだまだ身分差の壁を越えられぬ時代であった点が惜しいところ。
それはさておき、26日の公演は上演できるか否かぎりぎりまで判断を迫られたかと察しますが
渡邊さんのレスコーを1回だけでも鑑賞できて安堵。目当ての役柄が同じ者同士、半泣き状態で喜び合った幕間でございます。
それから今回もやります、髪型考察。仮にぺったり七三分けであったとしても、付け毛とリボン効果で
洗練されたフランス人と化すのは2011年のバーミンガムロイヤル来日公演眠りでのツァオ・チーさんが証明してくださっていますが
(勝手に付け毛マジックと呼称)即座に二重丸。前髪も整え過ぎず自然なままで、
リハーサル動画にて装着可能であるのか不安も些かあったこざっぱりとした短髪であっても
付け毛も外れず。毎度思いますが、洋装(但しフリルやレースものは除く)と和装両方が容姿と調和して絵になる方は稀少でしょう。
手を合わせて愛でるしかない古風で端正、今回は野心や狡猾さを含んだ横顔も美しや。
驚きに拍車をかけたのは小野さんマノンと渡邊さんレスコーの兄妹ぶり。
顔は似ていない、実際には親族でもないながら兄妹の関係がはっきりと見て取れたのです。
計算高く物事をまずは損得の観点で捉えるのであろうしたたかさの方向性が同じで
恋愛関係ではなく兄弟姉妹の役においてぴたりと嵌る例はそうそうありません。
恐らくは両親を早くに亡くしたか事情で孤児院に預けられていたのか、或いは親族に預けられたとしても冷たい扱いを受けていたか
貧困に耐えながら兄妹身を寄せ合い知恵を絞り合い裕福になる決意を固め、そのためなら手段を選ばず金銭を稼ごうと
手を取り合っていた子供時代が自ずと浮かんできます。兄ちゃん手堅くまずは近衛兵に就職、の人生計画にも納得。
バレエで兄妹の役といえば日本その他アジア諸々を舞台にした『パゴダの王子』が新国立にて眠るレパートリーとしてありますが
大衆演劇風なテカリ和装とはいえ王子の衣装は間違いなく似合うでしょうが
裸体坊主頭でアヘン吸引の中国や銃所持の米国、といった東西南北の王の設定の受け止めがどうにもこうにも困難であり
妹のさくらで共通するならば映画『男はつらいよ』バレエ化の方が望ましい、マドンナは本島さんで決まりとは綴っても
客入りは見込めても容易には叶わぬのは目に見えておりますので次行きます。
身体の奥底から黒々とした嫌らしさを放出する中家さんのムッシューGMも舞台に厚みを加え、
マノンの脚を舐めるように摩る仕草が耐え難いぐらいに気色悪く(褒め言葉です)
取引成立間近なレスコーから静止されかけるのも無理はない、徹底した好色ぶり。
しかしバレエチャンネルさんでの中家さんへのインタビューのお話が今回大変参考になり
成金であるため正式なパーティーには出席できず娼館や街中では偉ぶっていることや
お金さえ払えば物事を解決できると信じている点を踏まえた上で鑑賞すると
ただの嫌らしい親父とは思えず。羽振りが良いときの金銭ばら撒きなんぞ憎めないご満悦な表情でした。
代わりに導火線が点火するとああおっかない。賭博でのイカサマを見抜くと
星一徹も萎縮するであろう卓袱台ではなくテーブルひっくり返しで、レスコーの酔いがすっかり醒めるのも
後にも述べるが間抜けとは分かっていてもテーブルを盾にして隠れたくなるレスコーの行動も当然の流れと思わせる雷落としです。
レスコーの愛人の木村さんはソロにおいては色気はあれど初日と2日目はやや初々しさや可愛らしさがまさってしまい、
娼婦たちを率いている光景も弱く感じてしまったときもありましたが
レスコーとのパ・ド・ドゥでは木下さんの好サポートもあり、宙ぶらりんになった状態で不安がる表情で笑いを起こしたりと健闘。
唸らせたのは26日で、開演直前に当初の愛人役寺田亜沙子さんが降板し急遽木村さんが登板。
キャスト変更の事情で開演が20分ほど遅れる旨が緞帳前に立ったスタッフによる説明があり、
リハーサル動画を見る限り小野さんマノンの日は女優役つまりは腰掛けて広場を眺めていたりと踊る箇所が無いに等しい役柄を予定していて
大急ぎで着替え鬘も装着、格好のみならず身体の準備も数分で行っての出演はさぞ緊張を強いられたのは容易に想像がつきます。
しかし急遽登板とは微塵も感じさせず、むしろ初日と2日目よりも吹っ切れていた印象すら抱かせ
1幕での重厚感のあるソロでは魔物が潜んでいそうな視線の送り方や身体を捻りながら手を差し伸べて気を惹く仕草に至るまで
2幕ではまた娼婦たちを従えてショールを両手に回転するだけでも色香がふわっと舞い上がり
貫禄までもを備え、いたく驚き嬉しい役への入り込みでした。
人気を博す華やかな娼婦とはいってもレスコーへの愛が一途な面はいじらしく、
少し他の男性と話していただけでレスコーの嫉妬を買い、腕を無理やり引っ張られた挙句に顔を叩かれてもついていく姿に
現代であれば荒くれ駄目男に分類される対象であっても、金持ちではないながら金銭を稼ぐ術に長けていたレスコーは
心身の拠り所であったのでしょう。しかも娼家を訪れる客よりは遥かに貌も宜しい男性ですから
一見華やかで豪奢な装いで振る舞ってはいても内心は縋る思いで尽くしていたに違いありません。
加えて腕っ節も強そうとなれば、治安も良好ではない物騒な社会においては用心棒として傍らにいて欲しかったのかもしれません。
1幕序盤での、嫉妬に燃えるレスコーによって強引に囚人たちの前に放り出されたのは
下手な真似をするとどんな運命が待ち受けるのかを明示するレスコーからの戒めとも見て取れます。
娼家のマダムは本島さん。まだ娼婦としても務まるであろう美貌なマダムで、踊る箇所が殆ど無い点が惜しまれるものの
腕を一振りしただけでも舞台をぱっと引き締める支配力や娼婦に耳打ちするときの表情ですら妖艶で
舞台の何処にいても目を惹く人物。2幕ワルツでのレスコーとの世にも華麗なるおしくら饅頭には笑い転げてしまいそうでした。
ところで、隙なく完璧な構成展開である作品と捉えていながら意外にも突っ込みどころや疑問もいくつか目に留まり
例えば金銭が入っていると思われる第1幕でのマノンの鞄で、小ぶりであるのは分かるのだがどう見ても大家さんの集金用の鞄。
視界に入るたびに笑いが込み上げて困ったものです。貴重品ほど見かけは拍子抜けする物に保管するのであろうかと
アトランタとシドニー五輪で2連覇(のちアテネで3連覇)を果たした柔道の野村忠宏さんが
2大会で獲得した金メダルを入れていた鞄を大家さんの集金袋と司会者に突っ込まれていたテレビ放送を思い出します。
思えばGMやレスコーが金銭入れに使用している巾着袋も妙に可愛らしい気がするが。(お財布の歴史を辿ると面白いかもしれぬ)
それから2幕でのデ・グリューとレスコーの関係性と衣装。1幕終盤で恐怖の目に遭わされた相手であるレスコーを
妙に小綺麗な服装で決めたデ・グリューが介抱していた点も飲み会で悪酔いした上司を支える部下のような絵で謎であり、
レスコーが娼館に入る前から泥酔していた点も疑問が残る設定の1つ。
直前にGMから受け取った金銭の使い道をデ・グリューはよそ行き服購入、
レスコーは酒代に注ぎ込むと話し合いは成立したのか想像が巡る場面です。
そしてレスコーは娼館到着前の何処かのお店でワインをボトルで注文し、連れのデ・グリューの心配も声にも耳を傾けず
呑みの歯止めが効かずに遂にはボトルを死守したまま退店して娼館へ、といった流れだったのか妄想は止まらず
散々な目に遭わされても愛する少女の兄のためなら誠心誠意尽くすデ・グリューの健気なことよ。
それから壁激突が心配にもなる、演奏の決め音とぴたりと合う寝室のパ・ド・ドゥ後に起こるマノンのベッド飛び込みや
2幕の幕切れでの絶命すれすれな状況ながら倒されたテーブルを盾にして隠れる
強気から一気に大転落のレスコーの必死ぶりもいかにも本能で出たと思わせる行動です。
加えて直後、マノンとデ・グリューが和解の確認なるパ・ド・ドゥを披露している間に
レスコーはGMや兵士たちによる拷問を受けていたはずで、気づけばボコボコ傷だらけな状態で登場するため
舞台では描かれていない過程の部分も想像が巡って止まず。舞台登場時木下さんは救いを懇願し弱り果てていた様子で
対する渡邊さんは負けず嫌いな我を貫こうとひたすらGMの目を鋭く睨んでいてド根性で這い上がってきた感が死に際でも伝わり
両者とも異なる最期の表現の見比べがまたレスコーという人物への興味を一段と持たせました。
幕開けから貴族と物乞い、成金や女優が同時に登場する身分差格差社会の露骨描写が目に付き
身体を売る娼婦や闇取引、窃盗、と品位が欠如した要素ばかりが詰まっていて
好きになれそうにない、進んで観たいとは思えない方もいらっしゃるかもしれません。しかし心配は無用で
単なる退廃した社会、人間の負の部分を描いた作品にはとどまらずむしろどっぷり物語の世界に浸った心地良い印象すら残すのです。
時には身を売ってでも犯罪に手を染めてまでも生きるためにはそうせざるを得なかった人々の懸命さが胸を打つだけでなく
音楽もまた作品のスケール感を引き立て、場面ごとの情景をより鮮やかにさせ心に響かせる効果が実に大きいからであろうと再度推察。
オペラ『マノン・レスコー』からは抜粋せずマスネの様々な曲を組み合わせた構成が実に魅力で
人間の醜い部分をも躊躇なく抉り出した、あらゆる欲に塗れた濃密な作品を彩る
時に甘美で時に毒々しく残酷な場面状況や人物の感情にぴたりと嵌り、切り貼りした感が皆無で度々聴き惚れております。
基本、ドッカンとした迫力や大地の匂い、郷愁漂う曲調が多いロシア音楽好きではありますが
バレエ『マノン』における例え幸福な場面であっても悲しみを湛え悲劇の展開を予想させる
曲の数々はどれを聴いても胸が締め付けられずにはいられません。
少数派かと思いますが私が作品中で特に好きな場面や音楽は娼館でのどんちゃん騒ぎなワルツ。
音楽自体は壮大で美しい旋律ですが、館の中から溢れ出す情欲、金銭欲、性欲といったありとあらゆる欲が混沌と渦巻き
1曲の中での主旋パート楽器のめくるめく変化は次々となだれ込んできて踊り狂うレスコーや愛人、マダムから娼婦、紳士たちまで
絡み合う大勢の人々の欲望の連鎖そのもので、GMがお金をばらまいたりと細かな演出の組み込みもあり。
高笑いまでもが聞こえてきそうな場面ながら物哀しく響き、その直後のデ・グリューのソロに殊更悲哀を持たせていると思わせます。
バレエ音楽では我が3本の指に入るワルツです。
それから短時間ながら場面と状況変化を代弁していると殊更唸らせたのがレスコーの愛人の記述と重複いたしますが
1幕序盤にて男性たちと談笑していた愛人が、嫉妬したレスコーによって通り掛かる囚人たちの前に連れ出される場面での音楽。
レスコーの怒りと愛人の腕を引っ張っての顔叩き、続けて囚人たちの前から逃げようとして許しを乞う愛人の怯えと
これ見よがしに登場する女優たちの堂々とした歩調までもが音楽で緻密に表され、ほんの数秒の枠の中ですが
作品の冒頭であたかもこのために作曲されたと信じずにいられぬ光景を開演早々から目と耳で感じるひと幕です。
細部まで凝った衣装美術はどれからも目が離せず、1点1点じっくり観察したくなり
展示会が開催された暁には何時間でも居座ってしまうでしょう。
新国立では2003年の初演では英国ロイヤルやパリ・オペラ座が採用しているニコラス・ジョージアディスのデザインを、
2012年と今回の再演ではオーストラリア・バレエが採用のピーター・ファーマーの衣装を着用。
これまではファーマーによる1幕のマノンやデ・グリュー、2幕の娼婦たちのパステルカラーからなる衣装に違和感を覚え
よりクラシカルなデザインと渋みある色彩で整えられたジョージアディスのほうが断然好みでした。
しかしよくよく見比べて観察してみると、ファーマーの衣装のほうがしっくりくるデザインも何点か発見。
2幕の豪奢な装いのマノンは重厚なカチューシャ型ティアラや黒の七分袖衣装の金の刺繍や装飾の光沢にうっとり惚れ惚れし
淹れてから長時間が経過し茶柱の判別もつかぬ濁ったお茶色なんぞ当初は申していたレスコーの深緑も(大変失礼)
日によってはいたくスタイリッシュな着こなしに映ってこれまでの考えを覆され、
人間とはかくも身勝手な生き物であると3年前から何度書いているか分からぬが今回も心底感じた次第です。
マノンで思い出すのは、この作品を知ったのはバレエ鑑賞の開始から約7年後。
1996年ダンスマガジンABT来日公演記事がきっかけでした。スーザン・ジャフィーやアマンダ・マッケロー、
ニーナ・アナニアシヴィリがヒロインについて語るインタビューを読んだものの今一つ理解に至らず
まだインターネット音痴だった為バレエ作品に疑問があれば毎度頼りにしていた
図書館の書籍『バレエ101物語』にて調べたのは良かったが、原作者アベ・プレヴォーを
日系フランス人かと思い込んでしまい恥ずかしや。当時の管理人には作者もあらすじも難解だったわけです。
そして年齢を重ねて2007年春に初めて全幕を図書館の視聴覚コーナーにて英国ロイヤルのVHS映像で鑑賞。
主演はジェニファー・ペニーとアンソニー・ダウエルで、話も把握せずに観てはいたものの
劇的な展開には手に汗を握り、観終えると放心状態となったのは今も忘れられず。
同時にいつかデ・グリューを山本隆之さんで観たいと祈願したものです。(2012年に叶い感無量)
2003年の新国立劇場での初演は新聞記事で知ってはおりましたが足を運ばず終い、
今思えば酒井はなさんのマノンを鑑賞したかったと悔やまれます。
2月29日(土)、3月1日(日)は2回とも中止になってしまい滅多に上演できぬ作品で無念極まりないものの
観客そして劇場に携わる方々の安全を最優先した上での苦渋の決断であったでしょうし
状況を考慮すれば致し方なく、早いうちの再演を心より望みます。
突如当日に千秋楽と決まった26日(水)、三大バレエや有名古典バレエでもない上に
平日夜公演、新型コロナウイルスの感染関連の報道も連日なされた状況下で決して動員も順調ではない公演でしたが
カーテンコールは満員御礼公演と変わらぬ熱量。観客の拍手は、公演中止を余儀なくされ
ほぼ半減してしまった事態にこのままでは終われず、早期再演の実現を望みが込められ
長く熱いカーテンコールへと繋がっていたのでしょう。
そして次回は、歩き読書の登場時は二宮金次郎以上に生真面目純朴そうな学徒が
マノンとの出会いによって激流の如く破滅へと呑まれて行くさまを
起伏に富んだ心情の変化や登場人物との会話を全身から手に取るように伝え、
『ロメオとジュリエット』よりも遥かに人間の闇部分を突き詰めた濃密な物語の世界に引き込むのは間違いないであろう
渡邊さんのデ・グリューにお目にかかれるよう切に願っております。

入場すると机上の消毒液がお出迎え。

今回の公演限定ケーキはマノン役の米沢さんと小野さんが各々1種ずつ監修。
ケーキの解説文、しっかりと読んだ上でいただきます。ただ甘味を堪能するわけではありません笑。
読みつつふと浮かんだのは、コインに見立てた装飾でレスコー&GMの成り上がりケーキなんぞあったら尚嬉しい気がいたします笑。
今回のお三方ならばアイディア出し合って上質なケーキが出来上がるかもしれません。

右のチョコレートケーキは米沢さん監修の「マノンのドレス〜オペラ〜」。濃厚なチョコレートクリームや
コーヒークリームが何層にも重なっており、コーヒーによく合う味でした。

小野さん監修の「デ・グリューの愛の詩〜カルヴァドス風味のサバラン」。
甘さを抑え、お酒の味もさほど強くなくマノンの魔力に徐々に惹かれていくデ・グリューの心を映していると勝手に想像。
愛の詩と聞くと、響きからして映画『ある愛の詩』を思い出します。
一昔前はよく図書館で映画音楽大全集CDを借りては好んで聴いており
他にも『ドクトル・ジバゴ』や『ひまわり』、『風と共に去りぬ』、『太陽がいっぱい』、『シェルブールの雨傘』、E.T.など
CDを通して知った名作映画はかなり多い管理人でございます。

前半無事終演を祝い、黄金色に近い白ワインで乾杯。
『マノン』ほど金銭に執着する人物達が描かれたバレエ作品は他にないであろうと想像が巡ります。

ロイヤルアイスティーのカクテル。ハッピーアワーの価格に惹かれたが、3分も経たずに完飲。
管理人にはビールやワイン、ウイスキーやウォッカといった刺激と度数強めが合うらしい笑。

ハッピーアワーの文字につられて大きめのビール。特別英国作品の贔屓ではないが、マクミランやはり好きだ。
一昨年のロイヤルシネマでも妄想したが、いつかマイヤーリングも生で観たいものです。
心が歪み孤独に狂おしく突っ走るルドルフ皇太子が似合うダンサー、初台にいらっしゃいます。
ただ複数の女性と踊るパ・ド・ドゥがどれも過酷で怪我が心配になる役どころではあるが、観てみたいと夢は膨らみます。

26日に貼り出された中止通知。ウェブによる通知もまさにこの日の夕方でした。

リハーサル映像を見て寺田さんの愛人役も楽しみにしておりましたが、
怪我で直前降板。ご本人もさぞ悔しい思いをなさっていたかと察します。
そして急遽臨まれた木村さん、危うい箇所皆無でお見事でした。

カクテルサンプル。今回は公演限定レギュラーと26日(水)限定の2種類が登場。

夜空に、正確には窓ガラスに映った灯りと夜の甲州街道に映えるカクテルで乾杯。
26日(水)のみになってしまったが渡邊さん、初台では悲願の色悪役。そもそも注目する契機が、
トゥールーズにいらした頃の怪しい或いは粗暴なキャラクターを務める映像であったため、願って早3年超。
待望の役柄ようやく新国立劇場にお目見えです。

重厚濃厚なチョコレートとクリームが何層にも重なったマノンドレスケーキがいたく気に入ってしまい
この日は何ドルか分からぬ甲州街道の夜景を眺めながらいただきます。

千秋楽、マクミランさんに敬意を表してご出身地スコットランドのウイスキーで乾杯。
瓶の色がレスコーの衣装を想起させる点もポイントでございます。
尚私は大酒豪ですが、2幕のレスコー登場の如くボトルラッパ飲みの経験はございません笑。
但し最近、何本か購入し愛飲している福島県の造り酒屋金水晶さんの初しぼり酒を
いぶりがっこのタルタルソースをつまみに呑み始めると、1本空けそうになる事態に。勿論ラッパ飲みはいたしていませんが
酔いどれになってもレスコーの如く瓶を手に踊る行為による観衆魅了はできませんので管理人、呑み過ぎ要注意でございます。

2003年の新国立初演時のバレエ『マノン』リハーサル。マノン役は酒井さん、臨時のデ・グリューに山本さん!
新聞社名を失念してしまいましたが、2年後ぐらいに記事の旨を知り図書館に置かれている年鑑本からコピーした新聞記事です。
2020年3月6日金曜日
森下洋子さんが出演されたTBSサワコの朝
暫く更新が止まり申し訳ございません。
新型コロナウィルスの感染拡大を懸念して立て続けにバレエ公演が中止となり、
2月末から3月にかけて鑑賞のご予定が多数飛んでしまった方は大勢いらっしゃることと存じます。
私の場合は新国立劇場バレエ団『マノン』後半2日間、大和雅美さん福田圭吾さん振付演出のDAIFUKU、
スターダンサーズ・バレエ団『ウエスタン・シンフォニー』『緑のテーブル』、
牧阿佐美バレエ団『ノートルダム・ド・パリ』、Kバレエカンパニートリプル・ビルを鑑賞予定でおりましたが
中止となりました。ただ状況を考えれば致し方ないことと捉えております。
(延期と記載の団体もあり、心待ちにしております。今月末の新国立劇場Dance to the Future2020がどうなるか)
現在大型カンパニーとしてはパリ・オペラ座バレエ団が来日公演中ですが、上演に踏み切ったNBSも
出演者関係者そして何より観客の安全を守ろうと最大限に配慮しながら公演を続行していると思います。
未だ感染源も謎であり、これといった対策も見つからぬ状態で不安な日々が続きますが
とにかく1日でも早く収束するよう今は願うばかりで、できることを真摯に行って参りたいと考えております。
さて、以下はぼやきや呟きな記事でございますが悪しからず。
先週2月29日(土)、阿川佐和子さんが聞き手を務めるTBSサワコの朝を視聴いたしました。
ゲストは松山バレエ団の森下洋子さんです。
https://www.tbs.co.jp/tv/20200229_59DB.html
バレエを習い始めたきっかけやヌレエフとの共演など、既に何度もお話しになっている内容も含まれていながら
表情豊かに朗らかに語っていらっしゃるご様子が何とも生き生きとなさっていて、そしてシンプルな黒いパンツスーツを
さらりと着こなして歩くお姿も美しく、朝7時半から活力をいただいた思いです。
森下さんと言えば、言わずと知れた日本を代表する現役のバレリーナであり
誠に失礼ながら我が家に公演告知の葉書が届くたびに、いつまで踊られるのだろうか
ひょっとして生涯全幕現役として歩まれるのだろうかと手に取る度に考え耽ってしまうのですが
葉書が届くようになってから約15年。今もなお全幕の舞台で主役を踊っていらっしゃるのですから
賛辞を込めて、「怪物」としか思えません。今年は堀内充さんと共演の『白鳥の湖』全幕を控えていらっしゃいます。
http://www.matsuyama-ballet.com/newprogram/new_swanlake.html

森下さんの舞台を鑑賞した回数は少なく、2006年の『シンデレラ』と『ジゼル』の2回のみですが
松山バレエ団の独特な序列で気にかかる点はあれど(2006年鑑賞時は管理人が子供の頃と
さほど変わっていない序列に衝撃を受けたと記憶)豪華な美術装置衣装且つ人の雲海状態と化した舞台上においても
主役以外は考えられぬ人であると分かってはいても1人別格オーラな森下さんに驚愕したものです。
放送は偶々家族と一緒に視聴しておりましたが、森下さんが何か逸話を語るたびに管理人、補足事項を追加。
紹介された子供の頃の写真の作品や、通われていた学校、滝に打たれての精神統一や少女雑誌グラビアでの苦労
共演したヌレエフの口癖、ジゼルを決してか弱い少女ではないと解釈なさっていることなど
森下さんの根っからのファンではなく新書館の書籍やその他森下さんのインタビューで目を通して蓄積した程度の知識ですが
遂に家族が笑いながら放ったのは「マラソン解説の増田明美さんかい」。そして「その時代生きていたのかい笑」
ただでさえ新国立マノンの上演中止1日目の決して晴れやかではない朝、少しでもベクトルを前向きにと言わんばかりに
褒め言葉と勝手に受け止めたものの果たして良かったのか。よくよく考えれば私なんぞ
増田さんが持つ細かく豊富な知識量には到底及ばぬレベルですが
それはさておき趣味が30年以上不変であるのは時には役立つ日が訪れると胸に手を当て、
ささやかな幸福に浸った管理人でございました。
※ダンスマガジン編『バレリーナのアルバム』
新書館のホームページでは品切れ表示ですが、図書館によっては取り扱いあり。
カラーの舞台写真もあり、幼年時代からプロとしてのデビュー以降まで濃いお話満載のおすすめの書籍です。
写真のみであっても恋の喜びに溢れる少女の感情が伝わる森下さんのジゼルが表紙を飾っています。
https://www.shinshokan.co.jp/book/4-403-32006-6/
ちなみに、現在新国立劇場舞踊部門芸術監督の大原永子さんもご登場。
大原さんが落語好きであることやスコティッシュ・バレエの後輩となった下村由理恵さんに
カツ丼を振る舞っていた(カツ丼逸話は下村さんのインタビューにて紹介だったはず)と知ったのはこの書籍がきっかけでした。
残り2回公演の中止や2月26日(水)は開演直前のキャスト変更と続けさまに緊急事態に見舞われながらも
全員が心を尽くして挑んだ新国立劇場バレエ団2020年『マノン』総括は次回にて。
新型コロナウィルスの感染拡大を懸念して立て続けにバレエ公演が中止となり、
2月末から3月にかけて鑑賞のご予定が多数飛んでしまった方は大勢いらっしゃることと存じます。
私の場合は新国立劇場バレエ団『マノン』後半2日間、大和雅美さん福田圭吾さん振付演出のDAIFUKU、
スターダンサーズ・バレエ団『ウエスタン・シンフォニー』『緑のテーブル』、
牧阿佐美バレエ団『ノートルダム・ド・パリ』、Kバレエカンパニートリプル・ビルを鑑賞予定でおりましたが
中止となりました。ただ状況を考えれば致し方ないことと捉えております。
(延期と記載の団体もあり、心待ちにしております。今月末の新国立劇場Dance to the Future2020がどうなるか)
現在大型カンパニーとしてはパリ・オペラ座バレエ団が来日公演中ですが、上演に踏み切ったNBSも
出演者関係者そして何より観客の安全を守ろうと最大限に配慮しながら公演を続行していると思います。
未だ感染源も謎であり、これといった対策も見つからぬ状態で不安な日々が続きますが
とにかく1日でも早く収束するよう今は願うばかりで、できることを真摯に行って参りたいと考えております。
さて、以下はぼやきや呟きな記事でございますが悪しからず。
先週2月29日(土)、阿川佐和子さんが聞き手を務めるTBSサワコの朝を視聴いたしました。
ゲストは松山バレエ団の森下洋子さんです。
https://www.tbs.co.jp/tv/20200229_59DB.html
バレエを習い始めたきっかけやヌレエフとの共演など、既に何度もお話しになっている内容も含まれていながら
表情豊かに朗らかに語っていらっしゃるご様子が何とも生き生きとなさっていて、そしてシンプルな黒いパンツスーツを
さらりと着こなして歩くお姿も美しく、朝7時半から活力をいただいた思いです。
森下さんと言えば、言わずと知れた日本を代表する現役のバレリーナであり
誠に失礼ながら我が家に公演告知の葉書が届くたびに、いつまで踊られるのだろうか
ひょっとして生涯全幕現役として歩まれるのだろうかと手に取る度に考え耽ってしまうのですが
葉書が届くようになってから約15年。今もなお全幕の舞台で主役を踊っていらっしゃるのですから
賛辞を込めて、「怪物」としか思えません。今年は堀内充さんと共演の『白鳥の湖』全幕を控えていらっしゃいます。
http://www.matsuyama-ballet.com/newprogram/new_swanlake.html

森下さんの舞台を鑑賞した回数は少なく、2006年の『シンデレラ』と『ジゼル』の2回のみですが
松山バレエ団の独特な序列で気にかかる点はあれど(2006年鑑賞時は管理人が子供の頃と
さほど変わっていない序列に衝撃を受けたと記憶)豪華な美術装置衣装且つ人の雲海状態と化した舞台上においても
主役以外は考えられぬ人であると分かってはいても1人別格オーラな森下さんに驚愕したものです。
放送は偶々家族と一緒に視聴しておりましたが、森下さんが何か逸話を語るたびに管理人、補足事項を追加。
紹介された子供の頃の写真の作品や、通われていた学校、滝に打たれての精神統一や少女雑誌グラビアでの苦労
共演したヌレエフの口癖、ジゼルを決してか弱い少女ではないと解釈なさっていることなど
森下さんの根っからのファンではなく新書館の書籍やその他森下さんのインタビューで目を通して蓄積した程度の知識ですが
遂に家族が笑いながら放ったのは「マラソン解説の増田明美さんかい」。そして「その時代生きていたのかい笑」
ただでさえ新国立マノンの上演中止1日目の決して晴れやかではない朝、少しでもベクトルを前向きにと言わんばかりに
褒め言葉と勝手に受け止めたものの果たして良かったのか。よくよく考えれば私なんぞ
増田さんが持つ細かく豊富な知識量には到底及ばぬレベルですが
それはさておき趣味が30年以上不変であるのは時には役立つ日が訪れると胸に手を当て、
ささやかな幸福に浸った管理人でございました。
※ダンスマガジン編『バレリーナのアルバム』
新書館のホームページでは品切れ表示ですが、図書館によっては取り扱いあり。
カラーの舞台写真もあり、幼年時代からプロとしてのデビュー以降まで濃いお話満載のおすすめの書籍です。
写真のみであっても恋の喜びに溢れる少女の感情が伝わる森下さんのジゼルが表紙を飾っています。
https://www.shinshokan.co.jp/book/4-403-32006-6/
ちなみに、現在新国立劇場舞踊部門芸術監督の大原永子さんもご登場。
大原さんが落語好きであることやスコティッシュ・バレエの後輩となった下村由理恵さんに
カツ丼を振る舞っていた(カツ丼逸話は下村さんのインタビューにて紹介だったはず)と知ったのはこの書籍がきっかけでした。
残り2回公演の中止や2月26日(水)は開演直前のキャスト変更と続けさまに緊急事態に見舞われながらも
全員が心を尽くして挑んだ新国立劇場バレエ団2020年『マノン』総括は次回にて。
2020年2月25日火曜日
【大変おすすめ】【只今折り返し地点】新国立劇場バレエ団2020年2・3月公演『マノン』
【重要】新国立劇場バレエ団『マノン』公演2月29日(土)、3月1日(日)は中止となりました。
誠に残念ですが状況を考慮した決断ですから致し方ありません。早い再演を心より祈ります。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_017116.html
新国立劇場バレエ団で先週末2月22日(土)よりケネス・マクミラン振付『マノン』が開幕。
只今折り返し地点で、明日26日(水)よりまた公演が始まります。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/manon/
メディア情報
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/detail/26_017060.html
2012年6・7月公演以来約8年ぶりの再演。18世紀フランスの退廃した身分差及び格差社会で
蠱惑的な魅力で人々を惹きつけたのち壮絶な生涯を終える少女マノンと
マノンとの出会いにより恋に溺れ道を踏み外していく生真面目な神学生デ・グリューを主軸に
懸命に、時には犯罪にも手を染めざるを得なかった人々の生き様をリアルに登場させて
数あるバレエ作品の中でも人間に潜む醜い部分を抉るように描いた
欲情や憎悪が渦巻く綺麗事だけにとどまらぬ濃密で重厚なドラマティック・バレエです。
早速米沢唯さんとムンタギロフさん主演の初日と2日目を鑑賞いたしましたが
米沢さんは初挑戦とは思えぬ踊り込みで、流木の如く右へ左へ流されてしまうマノン。
前回2012年公演で観た小野絢子さんのマノンとは大分異なるアプローチであったかと思いますが
全てを受け止めるデ・グリューのムンタギロフさんと讃え合うパートナーシップ構築にも感激し
何よりこの状況下に予定通り来日してくださったムンタさんに感謝の念が尽きません。
身分差格差社会の露骨描写は胸を突き、甘美で時に残酷な旋律を奏でるマスネの音楽にも聴き惚れ再演を万々歳した次第です。
娼館マダム本島美和さんの支配力や、黒々嫌らしいされど内側から沸々と不敵な笑みを放っているようで
目を向けずにはいられぬ中家正博さんによるムッシューG.M.がもたらす厚み、そして細部まで凝りに凝った衣装美術も必見。
犯罪や身体を売る娼婦、闇取引、と品位が欠如した要素ばかりが詰まっていて足を運びづらい
進んで観たいとは思えない方もいらっしゃるかもしれません。しかし心配はなさらずに。
単なる退廃した社会、人間の負の部分を描いた作品にはとどまらずむしろどっぷり物語の世界に浸った心地良い印象すら残すのです。
時には身を売ってでも犯罪に手を染めてまでも生きるためにはそうせざるを得なかった人々の懸命さが胸を打つだけでなく
音楽もまた作品のスケール感を引き立て、場面ごとの情景をより鮮やかにさせ心に響かせる効果が実に大きいからであろうと再度推察。
オペラ『マノン』の音楽は一切用いずどれも様々なマスネの曲からの取り入れているにも拘らず
ヒロインマノンのテーマ曲もあり、作品の核となるパ・ド・ドゥも複数用意。
切り貼りした印象は皆無で、振付、それぞれの人物の感情、劇的な展開と驚くほどに溶け合っています。
少数派かと思いますが私が作品中で特に好きな場面や音楽は娼館でのどんちゃん騒ぎなワルツで
音楽自体は壮大で美しい旋律ですが、館の中から溢れ出す情欲、金銭欲、性欲といったありとあらゆる欲が混沌と渦巻き
レスコーや恋人、マダムから娼婦、紳士たちまで大勢の人々が次々と踊り狂う場面ながら
GMがお金をばらまいたりと細かな演出の組み込みもあり。マノンがGMからブレスレットを受け取り
はめた直後あたりから始まります。是非ご注目ください。
新国立劇場バレエ団 3分でわかるマノン動画
あらゆる媒体にてリハーサル動画やインタビューが掲載されたページが開幕前にアップされていますので
完全網羅ではございませんが紹介いたします。
米沢さんと井澤さんの対談。妙にほっこりするのは良きパートナーシップの築きの証か、29日も楽しみです。
◆スパイスイープラス マノン役小野絢子さん、デ・グリュー役福岡雄大さん、レスコー役渡邊峻郁さんへのインタビュー。
各々の役の捉え方や見どころを始め、兄妹であるマノンとレスコーの関係性や
物乞いや娼婦たちを踊るダンサーが役を落とし込むまでの苦労など
全体の様子についても語ってくださっています。そして、1幕終盤での見せ場である
レスコーによるデ・グリュー締め上げ場面が益々楽しみになるお話も笑。
(管理人がとりわけ心待ちにしている場面です。いよいよ明日ご登場!)
https://spice.eplus.jp/articles/265035
指導のパトリシア・ルアンヌさんのインタビュー。
マクミラン作品の根底にある要素や決して現代とはかけ離れた話ではない作品であること、
人々を惹きつける理由や作品指導の上で大事にしていることなど、大変分かりやすく話してくださっています。
https://spice.eplus.jp/articles/265183
公演限定マノンスイーツ、監修は米沢さんと小野さんがそれぞれ1種ずつです。
管理人、勿論2種とも食べました。食いしん坊万歳!
米沢さん監修の「マノンのドレス〜オペラ〜」は濃厚なチョコレートクリームや
コーヒークリームが何層にも重なった、コーヒーによく合う味。
小野さん監修の「デ・グリューの愛の詩〜カルヴァドス風味のサバラン」は
甘さを抑え、お酒の味もさほど強くなくマノンの魔力に徐々に惹かれていくデ・グリューの心を映していると勝手に想像。
https://spice.eplus.jp/articles/265451

◆バレエチャンネル(大変充実した情報量です)
https://balletchannel.jp/6093
主に小野さん組。全体を通しての様々な場面のリハーサル映像あり、主要な役柄名とダンサー名は字幕表示。
小道具のセッティングもあれば本を奪われあたふたするデ・グリューの姿そして
1幕でのレスコーのソロはほぼ丸々収録!明日が待ち切れん。
https://balletchannel.jp/6109
小野さん組のレスコーの酔いどれパ・ド・ドゥほぼ収録。明日が待ち切れん笑。
リレーインタビューは渡邊さん(レスコー)、速水さん(物乞いのリーダー)、木村さん(レスコーの恋人)
https://balletchannel.jp/6248
リレーインタビューは木下さん(レスコー)、中家さん(ムッシューG.M.)、寺田さん(レスコーの恋人)
中家さんによる説明が誠に明解で、ただの嫌らしい親父ではない点を示しつつ
悪役と捉えられがちな『ロメオとジュリエット』ティボルトとの大きな相違点についても言及。
https://balletchannel.jp/6187
衣装大特集。接写画像もあり、細かく凝ったデザインにうっとり魅せられずにはいられません。
特に娼館マダムの玉虫色が織り成す豪華さには目を奪われました。
小野さんが沼地のオンボロ格好で毛皮のマントを羽織り翻す貴重な一幕も笑。
https://balletchannel.jp/6270
リレーインタビューは小野さん(マノン)、福岡さん(デ・グリュー)
明日26日からの後半日程もどうぞご来場ください。滅多に上演できぬ作品、大勢の方にご覧いただけたら幸甚です。
※終了分も含め主要キャスト
【2/22(土)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 木村優里
物乞いのリーダー 福田圭吾
【2/23(日)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 木村優里
物乞いのリーダー 福田圭吾
【2/26(水)19:00】
マノン 小野絢子
デ・グリュー 福岡雄大
レスコー 渡邊峻郁
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 寺田亜沙子
物乞いのリーダー 速水渉悟
【2/29(土)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー 井澤 駿
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 木村優里
物乞いのリーダー 井澤 諒
【3/1(日)14:00】
マノン 小野絢子
デ・グリュー 福岡雄大
レスコー 渡邊峻郁
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 寺田亜沙子
物乞いのリーダー 速水渉悟
明日26日は待ち侘びたレスコー登場。新国立では初披露でいらっしゃるであろう色悪な役に胸が高鳴るばかりです。
誠に残念ですが状況を考慮した決断ですから致し方ありません。早い再演を心より祈ります。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_017116.html
新国立劇場バレエ団で先週末2月22日(土)よりケネス・マクミラン振付『マノン』が開幕。
只今折り返し地点で、明日26日(水)よりまた公演が始まります。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/manon/
メディア情報
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/detail/26_017060.html
2012年6・7月公演以来約8年ぶりの再演。18世紀フランスの退廃した身分差及び格差社会で
蠱惑的な魅力で人々を惹きつけたのち壮絶な生涯を終える少女マノンと
マノンとの出会いにより恋に溺れ道を踏み外していく生真面目な神学生デ・グリューを主軸に
懸命に、時には犯罪にも手を染めざるを得なかった人々の生き様をリアルに登場させて
数あるバレエ作品の中でも人間に潜む醜い部分を抉るように描いた
欲情や憎悪が渦巻く綺麗事だけにとどまらぬ濃密で重厚なドラマティック・バレエです。
早速米沢唯さんとムンタギロフさん主演の初日と2日目を鑑賞いたしましたが
米沢さんは初挑戦とは思えぬ踊り込みで、流木の如く右へ左へ流されてしまうマノン。
前回2012年公演で観た小野絢子さんのマノンとは大分異なるアプローチであったかと思いますが
全てを受け止めるデ・グリューのムンタギロフさんと讃え合うパートナーシップ構築にも感激し
何よりこの状況下に予定通り来日してくださったムンタさんに感謝の念が尽きません。
身分差格差社会の露骨描写は胸を突き、甘美で時に残酷な旋律を奏でるマスネの音楽にも聴き惚れ再演を万々歳した次第です。
娼館マダム本島美和さんの支配力や、黒々嫌らしいされど内側から沸々と不敵な笑みを放っているようで
目を向けずにはいられぬ中家正博さんによるムッシューG.M.がもたらす厚み、そして細部まで凝りに凝った衣装美術も必見。
犯罪や身体を売る娼婦、闇取引、と品位が欠如した要素ばかりが詰まっていて足を運びづらい
進んで観たいとは思えない方もいらっしゃるかもしれません。しかし心配はなさらずに。
単なる退廃した社会、人間の負の部分を描いた作品にはとどまらずむしろどっぷり物語の世界に浸った心地良い印象すら残すのです。
時には身を売ってでも犯罪に手を染めてまでも生きるためにはそうせざるを得なかった人々の懸命さが胸を打つだけでなく
音楽もまた作品のスケール感を引き立て、場面ごとの情景をより鮮やかにさせ心に響かせる効果が実に大きいからであろうと再度推察。
オペラ『マノン』の音楽は一切用いずどれも様々なマスネの曲からの取り入れているにも拘らず
ヒロインマノンのテーマ曲もあり、作品の核となるパ・ド・ドゥも複数用意。
切り貼りした印象は皆無で、振付、それぞれの人物の感情、劇的な展開と驚くほどに溶け合っています。
少数派かと思いますが私が作品中で特に好きな場面や音楽は娼館でのどんちゃん騒ぎなワルツで
音楽自体は壮大で美しい旋律ですが、館の中から溢れ出す情欲、金銭欲、性欲といったありとあらゆる欲が混沌と渦巻き
レスコーや恋人、マダムから娼婦、紳士たちまで大勢の人々が次々と踊り狂う場面ながら
GMがお金をばらまいたりと細かな演出の組み込みもあり。マノンがGMからブレスレットを受け取り
はめた直後あたりから始まります。是非ご注目ください。
新国立劇場バレエ団 3分でわかるマノン動画
あらゆる媒体にてリハーサル動画やインタビューが掲載されたページが開幕前にアップされていますので
完全網羅ではございませんが紹介いたします。
米沢さんと井澤さんの対談。妙にほっこりするのは良きパートナーシップの築きの証か、29日も楽しみです。
◆スパイスイープラス マノン役小野絢子さん、デ・グリュー役福岡雄大さん、レスコー役渡邊峻郁さんへのインタビュー。
各々の役の捉え方や見どころを始め、兄妹であるマノンとレスコーの関係性や
物乞いや娼婦たちを踊るダンサーが役を落とし込むまでの苦労など
全体の様子についても語ってくださっています。そして、1幕終盤での見せ場である
レスコーによるデ・グリュー締め上げ場面が益々楽しみになるお話も笑。
(管理人がとりわけ心待ちにしている場面です。いよいよ明日ご登場!)
https://spice.eplus.jp/articles/265035
指導のパトリシア・ルアンヌさんのインタビュー。
マクミラン作品の根底にある要素や決して現代とはかけ離れた話ではない作品であること、
人々を惹きつける理由や作品指導の上で大事にしていることなど、大変分かりやすく話してくださっています。
https://spice.eplus.jp/articles/265183
公演限定マノンスイーツ、監修は米沢さんと小野さんがそれぞれ1種ずつです。
管理人、勿論2種とも食べました。食いしん坊万歳!
米沢さん監修の「マノンのドレス〜オペラ〜」は濃厚なチョコレートクリームや
コーヒークリームが何層にも重なった、コーヒーによく合う味。
小野さん監修の「デ・グリューの愛の詩〜カルヴァドス風味のサバラン」は
甘さを抑え、お酒の味もさほど強くなくマノンの魔力に徐々に惹かれていくデ・グリューの心を映していると勝手に想像。
https://spice.eplus.jp/articles/265451

◆バレエチャンネル(大変充実した情報量です)
https://balletchannel.jp/6093
主に小野さん組。全体を通しての様々な場面のリハーサル映像あり、主要な役柄名とダンサー名は字幕表示。
小道具のセッティングもあれば本を奪われあたふたするデ・グリューの姿そして
1幕でのレスコーのソロはほぼ丸々収録!明日が待ち切れん。
https://balletchannel.jp/6109
小野さん組のレスコーの酔いどれパ・ド・ドゥほぼ収録。明日が待ち切れん笑。
リレーインタビューは渡邊さん(レスコー)、速水さん(物乞いのリーダー)、木村さん(レスコーの恋人)
https://balletchannel.jp/6248
リレーインタビューは木下さん(レスコー)、中家さん(ムッシューG.M.)、寺田さん(レスコーの恋人)
中家さんによる説明が誠に明解で、ただの嫌らしい親父ではない点を示しつつ
悪役と捉えられがちな『ロメオとジュリエット』ティボルトとの大きな相違点についても言及。
https://balletchannel.jp/6187
衣装大特集。接写画像もあり、細かく凝ったデザインにうっとり魅せられずにはいられません。
特に娼館マダムの玉虫色が織り成す豪華さには目を奪われました。
小野さんが沼地のオンボロ格好で毛皮のマントを羽織り翻す貴重な一幕も笑。
https://balletchannel.jp/6270
リレーインタビューは小野さん(マノン)、福岡さん(デ・グリュー)
明日26日からの後半日程もどうぞご来場ください。滅多に上演できぬ作品、大勢の方にご覧いただけたら幸甚です。
※終了分も含め主要キャスト
【2/22(土)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 木村優里
物乞いのリーダー 福田圭吾
【2/23(日)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 木村優里
物乞いのリーダー 福田圭吾
【2/26(水)19:00】
マノン 小野絢子
デ・グリュー 福岡雄大
レスコー 渡邊峻郁
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 寺田亜沙子
物乞いのリーダー 速水渉悟
【2/29(土)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー 井澤 駿
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 木村優里
物乞いのリーダー 井澤 諒
【3/1(日)14:00】
マノン 小野絢子
デ・グリュー 福岡雄大
レスコー 渡邊峻郁
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 寺田亜沙子
物乞いのリーダー 速水渉悟
明日26日は待ち侘びたレスコー登場。新国立では初披露でいらっしゃるであろう色悪な役に胸が高鳴るばかりです。
2020年2月23日日曜日
行き届いたレジュニナの美意識 東京シティ・バレエ団『眠れる森の美女』2月16日(日)

2月16日(日)、東京シティ・バレエ団『眠れる森の美女』を鑑賞して参りました。
シティでの眠り全幕は40年ぶりの上演だそうです。
https://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000532.html
特設サイト https://tokyocityballet.com/sleepingbeauty/
構成:振付[マリウス・プティパ原振付による]:安達悦子
振付指導:ラリッサ・レジュニナ
演出:中島伸欣
オーロラ姫:斎藤ジュン
デジレ王子:福田建太
リラの精:平田沙織
カラボス:石黒善大
フロレスタン国王:青田しげる
王妃:若林美和
カタビュット:浅井永希
優しさの精:春風まこ
元気の精:渡邉優
鷹揚の精:大内麻莉
カナリア:新里茉莉絵
勇気の精:且股治奈 ※3幕:山本彩未
フロリナ姫:飯塚絵莉
青い鳥:吉留諒
ダイヤ:石井日奈子
金:島田梨帆
銀:且股治奈
サファイア:三好梨生
白猫:庄田絢香
長靴をはいた猫:岡田晃明
赤ずきん:宮井茉名
狼:濱本泰然
斎藤さんの主役は初見。決して抜群のスタイルやラインを持っているわけでないながら
最も緊張するであろう1幕登場時からおっとり優しい空気を作り出し、ほんわかとしたオーロラ姫を好演。
ピンク色の小さなバラをあちこちに振り撒いているかの如き初々しさにも頬が緩まずにいられぬ魅力がありました。
2幕の消え入りそうな幻影、3幕での結婚式に臨む姿まで変化の色付けも明確で技術も安定。
福田さんの王子は登場の姿からは一見主役なオーラは控えめに思えてしまい
全てを備えたおとぎ話の究極な王子様像へやパートナーシップの盤石ぶりはもう一歩であった気もいたしますが
フレッシュ感のある踊りやオーロラの幻影を目にすると会わせて欲しいと
懸命にリラへ胸の内を全身で訴える表現も届いて好印象。経験を重ねていけば堂々たる主演を務められると感じさせる
全幕デジレ王子デビューでした。
特筆すべきは平田さんリラ。包容力と強さを備え、カラボスに対峙する凛然な立ち姿には
宮殿の人々にとってどれだけ救いになったか想像に難くなく、長い手脚と高い背丈をコントロールする力も見事。
腕を大きく広げたり例えば1つアラベスクポーズを取るだけでも空間が柔らかなリラ色に染まり
妖精たちを背中で統率するリーダーらしい格にも惚れ惚れいたしました。
圧倒する存在感で場を攫っていたのは石黒さんのカラボスで男性形マレフィセントといった趣き。
下手すればデーモン小暮さんと美川憲一さんを足して2で割った感のある妖精に至ってしまう装いやメイクでしたが
マイムや所作が雄弁且つ品も宿り、悪の精であっても惹きつけてしまう妖しさ。手振りだけでも覆い尽くす迫力で
勢い良く舞い上がるマント捌きも魔力を倍増させる立ち振る舞い。
何より、ご自身が楽しそうに演じていて敵役にも拘らず舞台が一気に締まって盛り上がったのは明らか。
これまでに観た石黒さんの役柄の中で最も見入った舞台でした。
昔でもないが、2007年には北海道厚生年金会館(のちにニトリホールに名称変更後2018年閉館)にて開催された
全道バレエフェスティバルサッポロ『ドン・キホーテ』全幕にてエスパーダ役も鑑賞しておりますが
今回のカラボスの方が遥かに強烈な印象です。
振付指導にはマリインスキーやオランダ国立バレエでも活躍されていたラリッサ・レジュニナさんが入り
基盤はセルゲイエフ版。レジュニナさんが10代の頃にファルフ・ルジマトフと組んで踊られた映像を度々鑑賞していた者としては
しかも私にとって初めて触れた、『眠れる森の美女』の基礎要素を知る契機となった映像や
手引き書として今も愛読している昭和の時代に出版された書籍の舞台写真にて主役として写っている
イリーナ・コルパコワから学ばれた経緯を綴られた挨拶文を読み、尚のこと感慨深し。
プロローグでのカヴァリエ不在やリラの精のコーダ部分、女性のみ4人の宝石や
フィッシュダイブのないオーロラ姫と王子のグラン・パ・ド・ドゥの振付からして
見て取れる、セルゲイエフ版の香り漂う演出でした。
ただ丸ごと踏襲ではない点は嬉しく、1つは衣装。東洋人のダンサーに合うよう配慮が行き届いた色彩で
特に息を呑むセンスの良さに驚嘆したのはリラの精、リラのお付きの妖精たち、プロローグ妖精ソリストで
パステルカラーを用いつつぼやけて見えぬよう同系色の渋めの色を胴部分に組み合わせ
体型がより綺麗に締まって見えるデザインでした。模様や装飾も、頭飾りの形も役柄毎に異なる凝りようで
双眼鏡を通しての観察も楽しく、遠目で眺めても全体が淡さと濃さがバランス良く共存している光景が広がっていたく眼福。
宝石もシックな色と淡い色、そして派手になりすぎずされど各々の宝石で彩られて華やぎも十二分にありました。
またセルゲイエフ版では4人の求婚者が同デザインの色違いの衣装である点に対し、シティではお国柄が分かる衣装を導入。
太陽が描かれて分かりやす過ぎるフランス、タータン模様のイギリス(スコットランドかと思うが)、ロシア、インドの構成でした。
濃いめのメイクに髭面であったロシアの濱本さんが誠に立ち姿が美しく長身も映えていた上に
お顔が新国立劇場バレエ団の井澤駿さんにそっくり笑。メイク効果か定かではありませんが
瓜二つに近く何度も双眼鏡で観察してしまったほどです。アポテオーズではリラや宝石のみならず、プロローグの妖精たちも総登場。
貴族の人数は少なめであったものの舞台面積を考えれば程よい数で、
中でもつい先日スタジオカンパニー生からアーティストに昇格された櫻井美咲さんのデコルテの見せ方や隙のない歩き方は目を惹く姿でした。
面白みのあった場面の1つが、2幕終盤カラボスとは直接交わっての対決が殆どない王子に代わって
率先して前に出ていたのはリラの精とリラの妖精たち。妖精たちが囲い込みしながらカラボスや手下たちを追い詰めていく展開で
つまりはリラの方が王子よりも格段と勇ましや。俄然平田さんの威厳やダイナミックな強さが生かされたリラに繋がっていたわけです。
舞台背景は恐らくは全編通してグリーンの同じベルベット地のカーテンが掲げられていて
後方にカーテンといえば現在NBAバレエ団芸術監督の久保紘一さんやキエフの至宝エレーナ・フィリピエワが入賞した頃の
80年代のモスクワ国際バレエコンクールが脳裏を過ぎり、チャイコフスキー三大バレエ全幕では如何なものかと
当初は首を傾げておりましたが心配は無用。照明によって自在に色が変化し、予算云々な勘ぐりをさせぬ立派な舞台背景でした。
マリインスキーのセルゲイエフ版を踏襲しつつもシティの持ち味であろう階級問わず高い技術レベルや
カラッとした明るさを生かした、そして型やラインをしっかりと魅せるよう心を砕くレジュニナさんの美意識が行き届き
熟慮を重ねてデザインされたと窺える凝った衣装効果もあって上質なおとぎ話の全幕バレエを鑑賞。
カーテンコールではレジュニナさんも登場されて歓喜したシティの新制作全幕眠りでした。

昭和に出版された、我が眠り手引き書。求婚者たちにリフトされているのはコルパコワさん。
この本に目を通し、青い鳥や赤ずきんといったバレエにおける眠れる森の美女の特殊な展開、キャラクターの知識を蓄積。
セルゲイエフ版の全容を辿れる書籍です。後半ページにはソビエト(当時)の新鋭からスターダンサーまでが紹介され
コルパコワ、アナニアシヴィリ、アンドリス・リエパ、ベスメルトノワ、ムハメドフ、ルジマトフ、
タランダ、アスイルムラトワといったバレエ史に刻まれる方々を掲載。
うっとり眺めてソビエトバレエを憧憬しておりましたが瞬く間にソ連崩壊。
報道番組が連日赤の広場とゴルバチョフ一色になっていたと記憶しております。

もう少し余韻に浸りたいと思い、こちらのバーその名もライラックへ。

注文したのはFourRoses、シティ眠りでは求婚者たちが持つ薔薇は赤色である
ローズアダージオを彷彿させるバーボンのロックで平田さんリラ
そしてシティでは40年ぶりとなる眠り全幕に乾杯。
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