2020年2月25日火曜日

【大変おすすめ】【只今折り返し地点】新国立劇場バレエ団2020年2・3月公演『マノン』

【重要】新国立劇場バレエ団『マノン』公演2月29日(土)、3月1日(日)は中止となりました。
誠に残念ですが状況を考慮した決断ですから致し方ありません。早い再演を心より祈ります。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_017116.html


新国立劇場バレエ団で先週末2月22日(土)よりケネス・マクミラン振付『マノン』が開幕。
只今折り返し地点で、明日26日(水)よりまた公演が始まります。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/manon/
メディア情報
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/detail/26_017060.html


2012年6・7月公演以来約8年ぶりの再演。18世紀フランスの退廃した身分差及び格差社会で
蠱惑的な魅力で人々を惹きつけたのち壮絶な生涯を終える少女マノンと
マノンとの出会いにより恋に溺れ道を踏み外していく生真面目な神学生デ・グリューを主軸に
懸命に、時には犯罪にも手を染めざるを得なかった人々の生き様をリアルに登場させて
数あるバレエ作品の中でも人間に潜む醜い部分を抉るように描いた
欲情や憎悪が渦巻く綺麗事だけにとどまらぬ濃密で重厚なドラマティック・バレエです。

早速米沢唯さんとムンタギロフさん主演の初日と2日目を鑑賞いたしましたが
米沢さんは初挑戦とは思えぬ踊り込みで、流木の如く右へ左へ流されてしまうマノン。
前回2012年公演で観た小野絢子さんのマノンとは大分異なるアプローチであったかと思いますが
全てを受け止めるデ・グリューのムンタギロフさんと讃え合うパートナーシップ構築にも感激し
何よりこの状況下に予定通り来日してくださったムンタさんに感謝の念が尽きません。
身分差格差社会の露骨描写は胸を突き、甘美で時に残酷な旋律を奏でるマスネの音楽にも聴き惚れ再演を万々歳した次第です。
娼館マダム本島美和さんの支配力や、黒々嫌らしいされど内側から沸々と不敵な笑みを放っているようで
目を向けずにはいられぬ中家正博さんによるムッシューG.M.がもたらす厚み、そして細部まで凝りに凝った衣装美術も必見。

犯罪や身体を売る娼婦、闇取引、と品位が欠如した要素ばかりが詰まっていて足を運びづらい
進んで観たいとは思えない方もいらっしゃるかもしれません。しかし心配はなさらずに。
単なる退廃した社会、人間の負の部分を描いた作品にはとどまらずむしろどっぷり物語の世界に浸った心地良い印象すら残すのです。
時には身を売ってでも犯罪に手を染めてまでも生きるためにはそうせざるを得なかった人々の懸命さが胸を打つだけでなく
音楽もまた作品のスケール感を引き立て、場面ごとの情景をより鮮やかにさせ心に響かせる効果が実に大きいからであろうと再度推察。
オペラ『マノン』の音楽は一切用いずどれも様々なマスネの曲からの取り入れているにも拘らず
ヒロインマノンのテーマ曲もあり、作品の核となるパ・ド・ドゥも複数用意。
切り貼りした印象は皆無で、振付、それぞれの人物の感情、劇的な展開と驚くほどに溶け合っています。

少数派かと思いますが私が作品中で特に好きな場面や音楽は娼館でのどんちゃん騒ぎなワルツで
音楽自体は壮大で美しい旋律ですが、館の中から溢れ出す情欲、金銭欲、性欲といったありとあらゆる欲が混沌と渦巻き
レスコーや恋人、マダムから娼婦、紳士たちまで大勢の人々が次々と踊り狂う場面ながら
GMがお金をばらまいたりと細かな演出の組み込みもあり。マノンがGMからブレスレットを受け取り
はめた直後あたりから始まります。是非ご注目ください。


新国立劇場バレエ団 3分でわかるマノン動画


あらゆる媒体にてリハーサル動画やインタビューが掲載されたページが開幕前にアップされていますので
完全網羅ではございませんが紹介いたします。



米沢さんと井澤さんの対談。妙にほっこりするのは良きパートナーシップの築きの証か、29日も楽しみです。


◆スパイスイープラス マノン役小野絢子さん、デ・グリュー役福岡雄大さん、レスコー役渡邊峻郁さんへのインタビュー。
各々の役の捉え方や見どころを始め、兄妹であるマノンとレスコーの関係性や
物乞いや娼婦たちを踊るダンサーが役を落とし込むまでの苦労など
全体の様子についても語ってくださっています。そして、1幕終盤での見せ場である
レスコーによるデ・グリュー締め上げ場面が益々楽しみになるお話も笑。
(管理人がとりわけ心待ちにしている場面です。いよいよ明日ご登場!)
https://spice.eplus.jp/articles/265035


指導のパトリシア・ルアンヌさんのインタビュー。
マクミラン作品の根底にある要素や決して現代とはかけ離れた話ではない作品であること、
人々を惹きつける理由や作品指導の上で大事にしていることなど、大変分かりやすく話してくださっています。
https://spice.eplus.jp/articles/265183


公演限定マノンスイーツ、監修は米沢さんと小野さんがそれぞれ1種ずつです。
管理人、勿論2種とも食べました。食いしん坊万歳!
米沢さん監修の「マノンのドレス〜オペラ〜」は濃厚なチョコレートクリームや
コーヒークリームが何層にも重なった、コーヒーによく合う味。
小野さん監修の「デ・グリューの愛の詩〜カルヴァドス風味のサバラン」は
甘さを抑え、お酒の味もさほど強くなくマノンの魔力に徐々に惹かれていくデ・グリューの心を映していると勝手に想像。
https://spice.eplus.jp/articles/265451





◆バレエチャンネル(大変充実した情報量です)

https://balletchannel.jp/6093
主に小野さん組。全体を通しての様々な場面のリハーサル映像あり、主要な役柄名とダンサー名は字幕表示。
小道具のセッティングもあれば本を奪われあたふたするデ・グリューの姿そして
1幕でのレスコーのソロはほぼ丸々収録!明日が待ち切れん。


https://balletchannel.jp/6109
小野さん組のレスコーの酔いどれパ・ド・ドゥほぼ収録。明日が待ち切れん笑。
リレーインタビューは渡邊さん(レスコー)、速水さん(物乞いのリーダー)、木村さん(レスコーの恋人)


https://balletchannel.jp/6248
リレーインタビューは木下さん(レスコー)、中家さん(ムッシューG.M.)、寺田さん(レスコーの恋人)
中家さんによる説明が誠に明解で、ただの嫌らしい親父ではない点を示しつつ
悪役と捉えられがちな『ロメオとジュリエット』ティボルトとの大きな相違点についても言及。


https://balletchannel.jp/6187
衣装大特集。接写画像もあり、細かく凝ったデザインにうっとり魅せられずにはいられません。
特に娼館マダムの玉虫色が織り成す豪華さには目を奪われました。
小野さんが沼地のオンボロ格好で毛皮のマントを羽織り翻す貴重な一幕も笑。


https://balletchannel.jp/6270
リレーインタビューは小野さん(マノン)、福岡さん(デ・グリュー)


明日26日からの後半日程もどうぞご来場ください。滅多に上演できぬ作品、大勢の方にご覧いただけたら幸甚です。



※終了分も含め主要キャスト
【2/22(土)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 木村優里
物乞いのリーダー 福田圭吾

【2/23(日)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 木村優里
物乞いのリーダー 福田圭吾

【2/26(水)19:00】
マノン 小野絢子
デ・グリュー  福岡雄大
レスコー 渡邊峻郁
ムッシューG.M.  中家正博
レスコーの恋人 寺田亜沙子
物乞いのリーダー 速水渉悟

【2/29(土)14:00】
マノン 米沢 唯
デ・グリュー 井澤 駿
レスコー 木下嘉人
ムッシューG.M. 中家正博
レスコーの恋人 木村優里
物乞いのリーダー 井澤 諒

【3/1(日)14:00】
マノン 小野絢子
デ・グリュー  福岡雄大
レスコー 渡邊峻郁
ムッシューG.M.  中家正博
レスコーの恋人 寺田亜沙子
物乞いのリーダー 速水渉悟


明日26日は待ち侘びたレスコー登場。新国立では初披露でいらっしゃるであろう色悪な役に胸が高鳴るばかりです。

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