2020年3月19日木曜日

英国ロイヤル・バレエ団 映画『ロミオとジュリエット』




英国ロイヤル・バレエ団の映画『ロミオとジュリエットを観て参りました。
約400名収容の大スクリーン劇場で観客はおよそ20名。随分とゆったり寛ぎながら鑑賞いたしました。
https://romeo-juliet.jp/

ジュリエット:フランチェスカ・ヘイワード
ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル
ティボルト:マシュー・ボール
マキューシオ:マルセリ-ノ・サンベ
ベンヴォーリオ:ジェームズ・ヘイ
パリス:トーマス・ムック
キャピュレット卿:クリストファー・サウンダース
キャピュレット夫人:クリステン・マクナリ-
乳母:ロマニー・パイダク
ローレンス神父:ベネット・ガートサイド
ロザライン:金子扶生


STAFF
監督:マイケル・ナン
撮影監督:ウィリアム・トレヴィット
振付:ケネス・マクミラン
セルゲイ・プロコフィエフ
美術:ニコラス・ジョージアディス


※前回の記事新国立劇場バレエ団『マノン』総括よりは短いため、お急ぎの方もご安心ください。

ヘイワードはナチュラルで意志をはっきりと示す愛らしいジュリエット。
乳母に対しては笑いながらからかうようにして露わにするあどけなさや
ロミオとの出会いでは迷いなくこの人こそ運命と言わんばかりの瞳でじっと見つめる眼差しからも見て取れました。
身体をコントロールしつつとにかく全身が歌うように自在に動き
中でも木や花がそよぐバルコニーでのパ・ド・ドゥにおける指先から脚先にかけて情熱を帯びて
喜びを体現する姿に会場の温度が数度は上昇した感覚になったほどです。

ブレイスウェルまだ色に染まっていない、前半は喜怒哀楽に明確さがさほどない(褒め言葉)朴訥としたロミオで
マキューシオとベンヴォーリオのペースに合わせていそうなお人好し青年。
だからこそ、後半でのティボルトへの目の色を変えた体当たりな怒りに周囲はなす術もなく騒然するしかなかったのでしょう。
活発そうなジュリエットとおっとり気味なロミオ、たいそう宜しいバランスでした。

世間では絶賛の嵐ティボルトのボールは容姿端麗でロミオたちを見据える企みを含んだ視線すら美しい青年。
しかしこればかりは個人の好み及び我が鑑賞眼の欠如が要因でございますが、昨年のロイヤルシネマでロミオと同様
ドラマ性の強い作品の役柄であっても心を揺さぶられるに至らず。
昨夏話題沸騰であったマシュー・ボーン版『白鳥の湖』主役で観れば鷲掴みにされるであろうか気になるところです。

技術の安定性、軽やかさで目を惹いたのはサンベのマキューシオ。
昨年には友人の代理で足を運んだ来日公演『ドン・キホーテ』にてスティーブン・マックレーの代役バジルを観ており
好演ではあったのは確かだが、突如のギター演奏や叫び声が不自然さに拍車をかけた
いかんせん古典バレエ改訂史上に残るであろう大コケ演出であったため(アコスタには申し訳ないが)
ダンサー各々の特性までとても把握できず。今回落ち着いた状態で鑑賞すると
狂いなき脚捌きや感情をごく自然に乗せながらの回転で一瞬で人々を惹きつける力を備え好印象でした。

砂埃が舞い生活感息付く空間での進行に興味は尽きず。例えば幕開け最初にスクリーンに登場し目に留まるのは
人間ではなく鶏さんたちで、向かって左側にて何かを啄んでいる姿が日常生活の前面押し出し効果大です。
ただマキューシオだったか、瀕死状態の緊迫感ある場面においても傍でコッココッコとお食事に勤しんでいたのはご愛嬌。
2幕冒頭では噴水らしき建造物に止まった鳩がロミオたちに先立って観客をお出迎え。しかも色味が白く2羽でしたから
もしやアシュトン振付『二羽の鳩』へのオマージュか。いくら英国バレエ映画とはいえ
わざわざ英国が生んだ二大巨匠無理矢理融合そんなわけはない。それはさておき舞踏会の立食テーブル近くに佇む犬を始め
鶏さんや鳩さんたちも重要な演者として位置付けられています。

いわゆる舞台袖に入る行動もないため、移動しながらの舞台展開も面白さの1つ。
舞踏会の前半、騎士の踊りの音楽あたりでは夕暮れ時の野外で厳粛に踊られ一段落すると一斉に隣の階段を下りて移動。
後方には立食テーブルが置かれ、柑橘類の果物の盛り皿が良き彩りとなっていて同じ野外であっても明快な舞台転換を思わせます。
決闘での階段駆け上がりやぐるぐると路地を縫うように追い詰め合い、街の人々もなだれ込んでくる展開にも手に汗を握り
籠に詰められたじゃがいもらしき野菜も騒ぎに呑み込まれてひっくり返り大崩壊。
絶命まっしぐらなティボルトを天候も共に嘆くかのように豪雨が降り始め、泥臭い修羅場と化したのも映画ならではの演出でしょう。
身なりの汚れなんぞ目に入らぬキャピュレット夫人の打ちひしがれた悲しみが焼き付く幕切れでした。

それから長年立っての願いが叶ったと唸らせたのは舞台上では描かれていないときのキャラクターたちの行動。
当ブログでもしばしば妄想を綴っておりますが、そこかしこに散りばめられていたのは喜ばしい構成でした。
中でも印象に残ったのは2幕にて街のお祭り騒ぎが最高潮に達しつつある段階でのティボルトの様子。
既に家で自棄酒か、その勢いのまま割り込んで和を乱す流れに納得です。命を落としたティボルトの遺体が運ばれる場面もあり。
また時間は戻りますが、舞踏会でジュリエットが隙を見てロミオと2人きりになろうと仮病演技をする箇所での
茂みに隠れたロミオの行動も映されていた点も嬉しく、ジュリエットのわざとらしい仮病がキャピュレット家に通じ
一部始終を眺めていた張り込み中の仮面ロミオ刑事、思わず口角上がってニヤリ。
(勿論全編通してではあるが、特にこの場面は2019年10月20日昼と27日の新国立劇場に登場したロメオで観てみたいと欲が募ります笑)
手にしたのはあんパン、ではなくジュリエットの揺るぎない愛であったのですから
危険と隣り合わせな状況もなんのその、幸福も絶頂であったに違いありません。

映画であるためより無防備に、自然な描写も特徴で3幕の寝室場面はなかなかの露わな格好で布団に潜る2人が映されながらの展開。
オリビア・ハッセーとレナード・ホワイティング主演の1968年の同名映画を想起させ懐かしさが沸き上がりました。
ジュリエットが特段バレエらしいがっちり固めた髪型ではなかったため
ほつれ髪もまた激動の短期間を生き抜くヒロインを色濃くしていたのでした。

先に触れた内容と重複いたしますが、映画の『ロミオとジュリエット』と言えば、
フランコ・ゼフィレッリ監督が手がけオリビア・ハッセーが主演を務める
1968年制作同名映画に昔から魅了されており、今もなお好きな映画上位6本に入っているほど色褪せぬ名画。
※ちなみに他の5本は『サウンド・オブ・ミュージック』、『トリスタンとイゾルデ』(フランコ/マイルズ主演)、
『天空の城ラピュタ』、『風の谷のナウシカ』、『Shall we ダンス?』。
まさに人々の息遣いが飛び交い、砂や泥、石畳が敷かれた路地や重厚な建造物に囲まれたあの世界の中でバレエが踊られたらと
しばしば想像を巡らしていた為、いたく喜ばしい企画でした。

ハッセーの映画『ロミオとジュリエット』で今も忘れ難いのは、図書館で見つけた映画音楽大全集CDにて
ニノ・ロータによるテーマ曲を繰り返し聴いたり音楽やヨーロッパ全般の衣装デザインや
建築に興味があった経緯もあり、全編をきちんと見ようと会員カード更新手続き特典である
1本無料レンタルサービスを利用して近所のレンタルビデオ店から借りてきたときのこと。
ちょうど寝室場面に差し掛かり、今回のバレエ映画『ロミオとジュリエット』とは比較にならぬほど
喘ぎ声といい肌の晒し方といい大胆に描写された場面に思春期の管理人が仰天していると、
気づけば帰宅した妹がランドセルを背負ったまま、あたかも学校教材の映像でも見るかのように
真面目に見ていたものですから二重に驚愕。しかし見終えると作品そのもの、
とりわけ衣装のデザインに興味津々な様子であった妹が他の場面も見たいとせがみ
ならば早送りしつつ最初からもう一度姉妹で鑑賞。ベルベットを多用した緻密で重厚な衣装の数々を何度も凝視していた妹でごさいました。
思えば幼い頃から絵を描くことが大好きであった妹はバレエを観に行ってもダンサーや音楽よりもまず衣装や美術装置観察に集中していたため
(現在もこれといって好きなバレエ団はないそうだが、興味を示すか否かは衣装デザインが判断基準らしい)
衣装の観点から作品に入るのも頷けた次第。小さな子供向きの場面ではないからと即座に停止操作をして
見せないようにしようと考えが過った自身が恥ずかしくなり、作品との向き合い方を学んだ義務教育終了間近の管理人でした。
今も、例えば『マノン』や『アンナ・カレーニナ』のような大人向きと紹介されがちな作品上演の会場に子供がいてもさほど驚かず、
仮にあらすじがよく理解できなくても振付、音楽、衣装、美術といった様々な要素のどれか1点でも気に入り心に残ってもらえたらと
子供の頃に通っていた、鑑賞を懸命に奨励していたバレエ教室の先生の言葉を思い出します。



後日訪れた北海道イタリアンで当ブログレギュラー大学の後輩と乾杯。
英国ロイヤルバレエ版映画『ロミオとジュリエット』を観たかったようで、内容や感想を語って参りました。
可愛らしい店名もポイントです。



中札内鶏の”白雪”シーザーサラダとズッキーニと帆立、サーモンのクリームパスタ。
パスタの見かけは少なめですがしっかりクリームが絡んでおり具もふんだんに入っていてボリューム満点。
サラダの名称からは3年前に実質初めて観た子どもバレエ『しらゆき姫』を思い出し
いくら子どもバレエと言ってもナレーションや台詞が多過ぎると賛否両論ありましたが私は少数派であったがかなり気に入った。ケホ!



マルゲリータピザ。2人分であっても想像以上に大きめでしたが生地は薄く、ソースはトマトの味がしっかり効いていて難なく完食。



ふわふわ蕩けるティラミスとがっしりと固められたカタラーナ。
苦味強く濃いめに淹れたダブルエスプレッソと相性抜群です。
昨年の新国立劇場での鑑賞時にティラミス発祥はヴェローナ説とビュッフェの解説に記されていた気がいたします。
カタラーナを目にするとバレエについてもっと語らーな、と毎回心の中で呟く管理人。
今後とも皆様、どうか懲りずにご訪問お待ち申し上げます。

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