2020年4月8日水曜日

【今更ですが】【バレエオタクが突然歌舞伎を観に行ったら】歌舞伎版『風の谷のナウシカ』12月6日(金)




珍しくバレエではない投稿且つ昨年の出来事で恐縮ございますが、
昨年の師走はくるみ三昧であったため翌年に綴ろうと考えておりましたため、
またお子さん方の春休みに合わせて(ただ今年ばかりは新学期も開始できぬ学校が多いと思われますが)
金曜ロードショー・スタジオジブリ映画2週連続放送もありましたのでこの機会に失礼。
昨年12月6日(金)、新橋演舞場にて歌舞伎版『風の谷のナウシカ』初日夜の部を観て参りました。
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/604/

歌舞伎鑑賞は12年ぶり2回目。前回は言い訳を並べますと新国立劇場バレエ団『シンデレラ』新潟公演翌日だったため、
かの坂東玉三郎さんの舞が披露されながらあろうことかリラの精の魔法にかかってしまった管理人。
以来歌舞伎からは遠ざかっておりました。歌舞伎俳優さんの知識ほぼ皆無ながら
(バレエで例えるなら草刈民代さんと熊川哲也さんしか知らぬレベル)
『風の谷のナウシカ』の映画は上位五本に入るほど魅せられているため
また三鷹の森ジブリ美術館にも度々出向いており、歌舞伎化にも自ずと興味を持ち足を運ぶ決意に至りました。

さて以下は昨年1月上野での藤原歌劇団『椿姫』鑑賞時と同様、ここ数年は年間約80回舞台鑑賞のうち9割以上をバレエが占めている
バレエオタクが突如別分野の舞台を目にした珍感想が続きます。歌舞伎精通者からはお叱りを受けるかもしれぬ
素人にもほどがある或いは分野問わずバレエにとらわれている感のある且つ大雑把な支離滅裂内容でございますが悪しからず。

一言で申せば、よくぞあの壮大な物語を歌舞伎化したと唸らせる舞台でした。
原作は大変な長編ながら登場人物は一通り出てきますし、心配していた飛行物もメーヴェはワイヤーを使って
スキー場のリフトのように再現。映画でも原作でも実際にはもっと多数の飛行物が登場しますが
(映画のみでもバカガラス、コルベット、ブリック、ガンシップ、バージ等々風の谷にしてもトルメキアやペジテにしても各々装備は様々)
とても全ての再現は困難であるのは想定の範囲でしたから、ナウシカの相棒こと
メーヴェの大掛かりな登場のみでもまことに嬉しい演出でした。

またポスターからも分かるとおり、風の谷の王女ナウシカとトルメキアの王女クシャナを同等の主役として描いている点も魅力。
映画化にて原作ファンが最も不満を募らせたのが映画でのクシャナがまるで悪女のような描き方であった点と耳にしており
確かに映画だけを観ると、小さな国を脅かす傲慢で手段を選ばぬ悪党の女としか思えなかったのは事実です。
しかし歌舞伎では2人の心の交流を細やかに描き、葛藤や不安を打ち明けあったりとナウシカとクシャナ2人きりの場面も多し。
原作ファンの方も満足できる演出と見て取れました。

そういえば、敵役と思われがちなキャラクターも原作に即して主役同等と捉えた舞台といえば時節柄すぐさま浮かんだのが
新国立劇場バレエ団が2017年よりレパートリーに加えたウエイン・イーグリング版『くるみ割り人形』。
ネズミの王様を他日王子を務めるダンサーまでもが兼任し、英題にはMouse Kingの記載もあり
全体の演出が好みであるか否かはひとまず差し引き、ネズミ王の位置付けは納得いくものでした。
更には、ナウシカの原作者で映画史に残る数々の名作ジブリ作品を生み出してきた宮崎駿さんもくるみ割り人形の物語に魅せられた1人で
ジブリ美術館にて企画展まで開催。しかも展覧会名を「クルミわり人形とネズミの王さま展」と題するほど
ネズミの王様も主役級として描いていらっしゃいました。この企画展には勿論足を運びましたが
(ジブリ美術館まで頑張れば自転車で行けます笑。駐輪場もまた木や落ち葉に包まれ素敵なのです)
当然バレエについても触れていらっしゃり、宮崎さんが描いたプティパが余りに似ていなかった点はさておき
宮崎さん監修の実際にくるみが割れるくるみ割り人形が飾られていたり
手回しで動く絵を展示して戦闘シーンを臨場感たっぷりに伝えたりと相当凝った企画展でございました。

話が二転三転いたしましたので戻します。幕開けから驚かされたのは、メーヴェと並ぶナウシカの相棒のキツネリスのテトが
ぬいぐるみであった点。動物をいかにして描くか気にはなっておりましたがまさかぬいぐるみが登場するとは、
良い意味でほのぼの感が増して頬が緩んでしまうひと幕でした。しかも歌舞伎らしく、黒子さんが持つ棒の先端にテトが装着し
ナウシカの肩の動きに合わせて寄り添うように黒子が操作。何処かに行っているようナウシカに促されると
テトが舞台をサッサカ歩くように床上にて犬の散歩の如く動かして退散。
実のところ、黒子が登場した途端真っ先に脳裏を過ったのは同年1月に上演された新国立劇場バレエ団ニューイヤー・バレエでの
中村恩恵さん版『火の鳥』における黒子さん。火の鳥を裏で支える謎めいた役柄として3名登場し
役名や衣装の色彩は同じでも和風、中華風、ハリウッドアクション映画風と各々衣装が異なっていたわけですが
浮かんだのは勿論和風の黒子さん。ああ、テトを大事そうにナウシカになつかせていると思うと愛おしさも妄想も倍増せずにいられず
新橋演舞場においても、人間とはかくも身勝手な生き物であると猛省していた管理人でした。

さてバレエの話からは切り離しまして、衣装は主要な役柄は原作に近い、或いは原作の味わいに着物を合わせたデザイン。
中でもユパ様の大きな帽子に髭と着物の組み合わせは和洋折衷な装いでなかなかユニークでした。
ただ気にかかったのは、民衆の衣装が完全和物で戦国時代のドラマを彷彿。(大河ドラマ平清盛に近かった気がいたします)
ナウシカの舞台はこれといってはっきりとした設定国はないものの風の谷のモデルはパキスタンのフンザとされていて
映画や漫画で服装を見る限り少なくとも日本ではない。また和装の民衆の光景を眺めると
宮崎駿さんの名作の1本である、日本を舞台にした『もののけ姫』を脳内再生。
ナウシカの世界への入り込みにやや時間を要した一因にも繋がり、伝統芸能に漫画を当てる難しさを明示していたともいえます。
アスベルも着物に髷でしたが、工房都市ペジテの出身らしくもう気持ち飛行機乗りな装いであると尚良かったと思っております。

台詞回しや声についてはいかんせん歌舞伎ド初心者であるためバレエ鑑賞時の如く重箱の隅をつつくことは致しかねますが
セルム役の中村歌昇さんも声が映画のナウシカにてアスベルの声を務めていらした(もののけ姫のアシタカ担当)
松田洋治さんの声に似ている印象で、引っかかりながらの鑑賞となってしまいました。これは中途半端なジブリオタクな管理人の脳内設定がいかん笑。
動物系の演出にてテトと並び興味津々であった、ナウシカやユパが映画中で乗用していた鳥のトリウマは人間が組み合わさった形。
私の席から花道が見えず、夜の部にも登場したかは定かではなく尾上菊之助さんが跨る姿は目にできずでしたが
まさか本物のラクダを連れてくるわけにはいかないでしょうから人間合体型と後から知って納得でございました。
ただ人間合体型である都合上、映画で目にしたような疾走場面は無かったもよう。

終盤では歌舞伎といえば大勢の方の脳裏に浮かぶであろう頭をブンブン振り回す連獅子と思われる場面もあり
歌舞伎を観に来た気分を一層高めたと同時に記憶が正しければ主要な2人がブンブン回していて
後方で多めの人数がぐるぐると回っていたため(頭ごと振り回していたかは記憶曖昧)
上階から眺めるとバランシン振付『シンフォニー・イン・C』でのフィナーレにおける第3楽章を彷彿。
目が回るよりもビゼーの交響曲が先立って流れた観客は恐らく私1人かと思います。
干支一回りぶりの歌舞伎鑑賞でバレエからは簡単には離れられず、諸々疑問も投げかけてしまいましたが
『風の谷のナウシカ』映画公開は36年前の1984年、つまりバレエ界では吉田都さんがプロデビューされ
ボリショイバレエ団がグリゴローヴィヂ版『ライモンダ』を初演し、日本でダンスマガジン創刊号が発行された年。
監視体制に疑念を抱き始めた役人を主人公に描いたジョージ・オーウェルの代表作も『1984年』です。
(あらすじには記録の改竄作業に打ち込むと記され、現代の日本を風刺しているとも受け取れる内容だが)
私にとっても縁ある年で、ザ・ベストテンを欠かさず視聴しロサンゼルス五輪をテレビ観戦しながら
体操の森末慎二さんや陸上のカール・ルイスの偉業に拍手を送っていた日々を懐かしく思い出すと綴っているのは
当ブログには遅くに到来した4月1日の行事か否かは想像にお任せしつつ
年月を経ても色褪せぬ、現代社会にも突き付けるテーマが宿る作品であると歌舞伎においても再度感じさせました。
他にも王蟲や巨神兵など申したいキャラクターや演出は多々ありますが、長くなりましたのでこの辺りでお開き。
夜の部のみでも4時間超えの長丁場ながら、疲弊は多少あれども笑
ナウシカの世界の要素を取り入れた、初心者も堪能できる歌舞伎であった印象です。
もし再演が決定し、ご覧になろうとしている方は映画ではなく原作の知識があれば尚のこと楽しめるかと思います。
登場人物も多岐に渡り名前も独特の響きですので、原作本読破おすすめでございます。
映画の内容は今回鑑賞した夜の部ではなく昼の部つまりは前半に含まれているため、
再演の際には昼の部鑑賞を決意。腐海の底の澄み切った世界や王蟲の触手の描き方が特に気になっております。

ところで先述の通り宮崎駿さんはジブリ美術館でくるみ割り人形展を開催し、想像でお描きになった
似てはいないプティパの絵を公開なさっていたほどでジブリ作品のバレエ化もそれ以前から勝手に夢見て妄想しております。
ビントレー版『アラジン』を観た際には新国立の舞台機構を生かしてタイガーモスやフラップター、ゴリアテといった
飛行物の空中演出も可能であろうとラピュタが良さそうに思えましたが、日本を題材にしたもののけ姫も推しております。
本島美和さんのエボシ御前や寺田亜沙子さんのタタラ場リーダー、ぴったりかと想像。
アシタカを乗せて旅を共にするヤックルをどうするか、これは難題だ。




歌舞伎通且つバレエもご覧になっている方と木挽町広場で待ち合わせ。初めて訪れ、お土産の種類の多さにびっくり。
お土産といえば演舞場内にも充実。舞台写真も販売されていましたが、ブロマイドの呼称で親しまれているらしく
近年耳にしないためか不思議な響きに感じた次第。新国立劇場の場合は舞台写真、と記して販売されています。
ブロマイドと聞くと、フォーリーブスや更に遡って宝田明さんや岡田眞澄さんといった
往年のアイドルや映画スターが写っているものを想像してしまうのは私ぐらいか。



歌舞伎といえばお弁当。食いしん坊の管理人、木挽町広場で購入。



帰り道、大都会の銀座。石原裕次郎さんと牧村旬子さんの『銀座の恋の物語』を再生しながら闊歩。



闊歩するうちに有楽町ガード下へ。今度はフランク永井さんの『有楽町で逢いましょう』の気分。



日本酒熱燗と鰆の炙り焼きで乾杯。


ナウシカの漫画。壮大な世界観に圧倒されますが、正直申し上げると繰り返し読みたくなるような内容ではございません。
とにかく重たくそして虫の描き方が写実的でなかなかのインパクト。



CDも集めて大事にしておりました。



2003年に東京都現代美術館にて開催されたジブリ立体模造展で購入した書籍。
他にも池袋のアニメショップで見つけた映画公開当時のアニメ雑誌もございますが、表紙が強烈な絵柄であるため
バレエブログでの掲載は遠慮いたします笑。



DVD特典フィギュアセット。自宅に届いた際、家族が仰天しておりましたが無理もないか。



英語学習用のテキスト。テスト問題もあり、これなら親族の間で学業成績の話題は現在も禁物状態にある管理人も勉強が捗りそうです。

さてバレエではない分野の鑑賞記事ながら長くなり申し訳ございません。
当ブログ、先月末で開設から7年を迎えました。開設時は新国立劇場Dance to the Future2013上演の時期で
ここまで継続できているのは読者の方々の存在があってこそであり
繰り返しにはなりますが、知名度の低い且つ素人が綴っているしかもタイトルはアで始まるからと30秒程度で思い付いた
適当にもほどがある性格の管理人が運営する当ブログに1秒でもお越しくださった方は貴重な貴重な読者様です。
本当にありがとうございます。
まさか開設から7年後、舞台芸術の開催鑑賞がここまで厳しい状況になるとは思ってもおらず
感染拡大や医療崩壊等世界各地で気が滅入る状態が続く情勢に胸が痛まずにはいられません。
収束を願いつつ、他人事ではなく明日は我が身と意識を持ちできる対策は念入りに行っていきたいと思っております。
バレエは劇場で生で鑑賞する鮮烈な感激を大事にしたい一心で特例もあるものの長時間の動画検索や再生は極力控え
記事のテーマも劇場に足を運んでの鑑賞記が大半でしたが現在は困難であり
公演を中止にしても生活に潤いを届けたいと映像配信をしてくださっている劇場及び舞踊関係者の方々に感謝し
関連書籍や映像、雑感の範囲を広げる等趣向を転換させつつ継続して参りたいと考えております。
筆が遅く、更新は週1回程度のこまめとは言い難いブログではございますが今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

※次回は4月4日に東北地域にて鑑賞予定であった公演に関する内容を検討中でございます。

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