2020年4月24日金曜日

【お茶の間観劇】【飛ばし飛ばしで鑑賞】ボリショイ・バレエ団『スパルタクス』/『眠れる森の美女』

ボリショイ劇場が配信した『スパルタクス』、『眠れる森の美女』を飛ばし飛ばしで鑑賞いたしました。
※どうも私は自宅での鑑賞の場合、DVDならば大きめのテレビ画面でじっくり2時間3時間堪能できるようですが
誠に恥ずかしい限りで携帯電話画面での動画鑑賞では30分程度が限界のため
(現在故障中ですが仮にパソコンであっても同様と想像)全幕通しての堪能が困難であり
(劇場という非日常空間に身を置くからこそ集中力も研ぎ澄まされるといった内容を演劇関係の記事で読みましたが、思わず共感してしまった)
このご時世せっかく世界中の劇場が配信してくださっている映像をもっと観るべき満喫するべきであるのは重々承知しておりますが
旬の配信映像詳細鑑賞記には到底至らぬ、何時にも増して大雑把な内容である旨をどうかお許しください。


『スパルタクス』
スパルタクス:ミハイル・ロブーヒン
フリーギア:アンナ・ニクーリナ
クラッスス:ウラディスラフ・ラントラートフ
エギナ:スヴェトラーナ・ザハーロワ


まだ全編通しては生でも映像でも観たことがない作品ながら、ハチャトリアンの魂揺さぶるドッカンな音楽も含め好きでたまらぬこれぞボリショイな作品。
幕開けのローマ軍たちによる舞台を目一杯覆う一斉跳躍付き行進が視界を支配し、開演早々に興奮へ到達です。
ロブーヒンの雄々しく熱い叫びが聞こえてくるスパルタクスに、ニクーリナの美しいラインはそのままに
全身から涙が零れ落ちていそうな情感のこもった踊りが胸を打ち、ガラでも抜粋披露の機会が多いアダージオは
全幕の中で観ると抑圧された思いが画面越しにも広がりを感じさせて止まず、高いリフトもただ持ち上げているのはなく
溢れ出る感情がそのまま昇華したフォルムに思えるばかりでした。
配役で驚かされたのはラントラートフによるクラッスス。善良な役柄の印象が強く、
所謂敵役をどう造形するか興味をそそられましたが、序盤から舞台の支配力に驚嘆。
ギラリとした視線や他を圧するパワー、対角線上にひたすら跳躍を繰り返しながら移動していく身体泣かせな振付も余裕綽綽な姿でした。
ザハーロワのエギナは女王感は歴代随一であろう君臨ぶりで、会った者には有無を言わせぬ艶かしさ、
更に持ち前のプロポーションをこれでもかと生かし脚線美でも観る者を虜にさせるのも説得力あり。
ただこの役はマリーヤ・ブイローワの野心見え見えで渋き美しさも醸す姿のほうが好みでございます。
1984年収録映像にてご覧になれますので是非どうぞ。スパルタクスはムハメドフ、フリーギアはベスメルトノワです。

それから衣装にも着目。全編殆どが茶色系の衣装ばかりで下手すれば唐揚げ薩摩揚げ肉団子で埋まった彩りの宜しくないお弁当状態にもなりかねない条件ながら
そう思わせないのはボリショイで数々の作品の衣装や美術を手掛けたシモン・ヴィルサラーゼのデザインだからこそ。
ローマ軍側には渋めの銀を大胆に合わせて程よい光沢を出し、飽きのくる色彩とは感じさせないのです。

とにかく今年11月末の来日公演で予定通り鑑賞できますように。ボリショイ劇場のオーケストラも帯同ですから
長らく他国の支配に脅かされていた自身の祖国アルメニアに奴隷たちの心情を重ねながら書き上げたとされる
ハチャトリアンの音楽を汗だくな熱い演奏で聴かせてくださるに違いありません。


※守山実花先生による『スパルタクス』に特化した1日講座(主催・ダンサーズサポート)を2017年に受講。
概要や名演ダンサー、振付の特徴、音楽についても学んだ濃くそしてマニアックな講座でした。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/4-86ef.html



『眠れる森の美女』
オーロラ姫:スヴェトラーナ・ザハーロワ
デジレ王子:デヴィッド・ホールバーグ
カラボス:アレクセイ・ロパレヴィチ
リラの精:マリヤ・アラシュ
フロリナ王女:ニーナ・カプツォーワ
青い鳥:アルチョム・オフチャレンコ



2011年ボリショイ劇場新装こけら落とし時のリハーサルやホールバーグへのインタビュー。グリゴロさん、客席から何か指示を飛ばしています


NHKでテレビ放送され、DVD化もされていながら放送を見ず録画も購入もせずなまま気づけば2020年。
主役2人は割愛しますが(無責任にもほどがありますが)、今回観る気になったのは主役以外の配役の充実に惹かれたためであり
フロリナ王女のカプツォーワ、勇気の精のアンドリエンコ、銀の精のティホミロワ、カナリア/赤ずきんのスタシケーヴィチ、
そしてブライドメイドにはスミルノワまでが配役。男性陣も層が厚く、4人の王子にはラントラートフにあの人は今なるドミトリチェンコのお名前も並び
リラの精の小姓にベリャコフにロヂキン、と現在はプリンシパルとして主役を張る方々が
コール・ドや個人名無しの役柄で大活躍で、主役そっちのけで観察に勤しんでしまいました。
ただ携帯電話画面では限界があり、配信へ感謝を込めてDVD購入を検討しております。

1点気がかりであったのはボリショイにしては、またバレエの殿堂である劇場の新たな船出の初日にしては熱量が低く淡白であった点。
綺麗であったのは紛れもない事実ですが、上品にまとまり過ぎていた気がいたします。
あくまで憶測ですが、ボリショイの改装にあたり天井の高さ不足などツィスカリーゼが不満を訴えていた記事を何かで読み
新体制への疑念は上演にも何かしら影響が及んでいたのかもしれません。

美術や衣装も一新され、衣装はフランカ・スクァルチャピーノが担当。これまでのヴィルサラーゼによる
王道路線ながらも華美な装飾は控え、やや陰りのある色彩美で整えられたデザインとは様変わりして明るいトーンへと変更。
ヴィニチオ・シェリによる降り注ぐ陽光彷彿させる照明効果もあり、とにかく全体が煌びやかな装いであった印象です。

実はボリショイの眠りはヴィルサラーゼの衣装の時代も含めて映像でも生でも目にしたことが殆んどなく、好きなバレエ団ながら不思議なもの。
振り返ると、バレエを観始めた頃にボリショイのレーザーディスクが続々発売され、『ライモンダ』や『くるみ割り人形』と同様
眠りの映像も自宅にて目にする機会はありました。しかし主演のニーナ・セミゾロワが
鑑賞歴数ヶ月のド素人が観てもオーロラ姫が似合っていなかったのが明らかで16歳にしては妖艶過ぎる姫に1幕では目を疑ってしまったほど。
(セミゾロワの名誉のために申せば、石の花での銅山の女王は威厳や恐ろしさを秘めた役どころがぴったりで絶品)
結婚式は辛うじて鑑賞できましたが、今度はオーロラ姫のヴァリエーションがボリショイ特有の楽譜なのか
終盤で回転しながら舞台を大きく回りつつ脚を高く上げる箇所にてアウフタクト(音楽用語自信無いが恐らく)が無く、ぶつ切りに響いてしまったのです。
眠り全幕を上演しアナニアシヴィリ、グラチョーワ、ルンキナが日替わりで登場した2002年の来日公演には残念ながら一度も足を運べませんでしたので
(主役の鬘は各々に任せられていたのか当時の書籍での記憶ではアナニアシヴィリは無し、グラチョーワはグレー系、ルンキナは白)
その際の音楽も気になるところですが、そんなこんなでボリショイ眠りにはほぼ触れることなく現在に至っていたのでした。
ソ連時代の映像で1幕をナデジダ・パヴロワ、2幕をリュドミラ・セメニャカ(王子はアンドリス・リエパ)、3幕をセミゾロワ(王子はユーリー・ヴァシュチェンコ)が
分担で登場した映像でもアウフタクトやはり無し。図書館で借りた、ボリショイ劇場管弦楽団による眠りCDでも無し。
理由は未だ分からず約30年来の謎です。ご存じの方がいらっしゃいましたらお知らせいただけますと幸いでございます。


※詳細キャスト
https://www.fairynet.co.jp/SHOP/4560219322660.html

※美術のエツィオ・フリジェリオと衣装のフランカ・スクァルチャピーノはご夫婦だそう。
パリオペラ座のヌレエフ版『ラ・バヤデール』もお2人が組んで手がけているとのこと。
https://www.abc.es/cultura/abci-ezio-frigerio-y-franca-squarciapino-sesenta-anos-juntos-dentro-y-fuera-escena-201805050135_noticia.html


次回のボリショイ劇場配信は『現代の英雄』。ボリショイ・バレエinシネマさんのツイッターにて詳細な鑑賞手引きをご覧いただけます。
2017年にシネマで鑑賞。幕ごとに色合いががらりと変わる展開で青年ペチョーリンの人生を描いた、レールモントフ原作の重厚な作品で
ペチョーリンは幕ごとに異なるダンサーが務め、各々に絡む女性も合わせて主役級が総登場しますので
とっつきにくいとお思いになった方も一度はご鑑賞をお勧めいたします。
当時の感想はこちらでございます。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-0842.html

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