2021年7月18日日曜日

フレディ崇拝者も満悦  ROCK BALLET WITH  QUEEN    7月8日(木)




7月8日(木)、新宿文化センターにてROCK BALLET WITH QUEENを観て参りました。
振付は新国立劇場バレエ団の福田圭吾さん、そして出演者にはバレエ団の枠を越えた実力あるダンサー達が集結です。
https://www.dancersweb.net/rock-ballet-2021

振付・出演:福田圭吾
出演:
秋元康臣
池本祥真
井澤駿
菊地研
長瀬直義
米沢唯
ピアノ:壷阪健登


とあるバーを舞台に、人生に疲弊した人々が集い衝突もしながらもクイーンの名曲に乗せて次々と踊りを繰り広げ
壷阪さんのピアノ演奏も加わって絡みエネルギーが一気に湧き上がっていきました。
紅一点の米沢さんは音楽の女神な役どころで、Killer Queenが流れる中を鋭いポワントワークで登場。カラフルなワンピースな衣装にボブのヘアが似合い色気たっぷり。
黒いトーンのバー内にて男一色の中に花がぱっと咲くように現れた印象で 三角関係における奪い合いの対象になったかと思えば
セクシーでアクロバティックなパ・ド・ドゥを披露したりとまさに女神な存在で舞台を彩っていました。
特に秋元さんとのパ・ド・ドゥはあっと驚かせるすり抜けるようなスリル感も満点。

一段と目を見張ったのは池本さんで、音楽がすっかり馴染んでいてちょっとした身体の傾け方と言い、力の掛かった曲調への反応と言い
フレディ・マーキュリーの声質、息継ぎの箇所とも調和した踊りを全身から放ち、クイーン偏愛者な身内も賛辞を送っておりました。
バーの雰囲気にひときわ自然と溶け込んでいたのは井澤さんと菊地さん。グラスを片手にやさぐれ気味な姿で感傷的に嗜む様子も違和感なく、
ジャックダニエルあたりを飲んでいたであろうと勝手に想像。少なくとも今夏8月末までは外では一杯ひっかける行為が不可能な東京都において
気分だけでも私もバーの客として、ウォッカ或いはウイスキーでも味わいつつ身を置いた心持ちで鑑賞です。飲み方は勿論「ロック」でございます。
長瀬さんの舞台姿は久々に観ましたが、どこか中性的で妖しいオーラを撒きつつ柔らかな踊りも健在。

福田さんは幕開けから暫くして、バーの主人として登場。後方のカウンター越しでシェイカーを扱ったり、注文を聞いたりと丁寧に接客。
そうこうするうちに壷阪さんも到着し、ピアノ演奏も披露しながらも時にはダンサーと絡んだり、展開から目が離せずにおりました。
終盤に差し掛かる頃の舞台転換にも工夫が光り、それまで後方にて見守って接客していたバーテンダーの独壇場と化し
Bicycle Raceが流れる中スタッフに手際良く指示して装置を袖に入れてもらい、ユーモアに富んだソロを披露。
そして袖に一旦入ったかと思ったら自転車に乗って舞台を走り、大喝采。しかも職場の業務用或いはママチャリな形の自転車で
それまで出現していたお洒落なバーとの落差も笑いを誘い、やがて大量のスモークが焚かれ晴れ間が差し込んでいよいよクライマックスへと突入したのでした。

私自身はクイーンの楽曲に詳しくは全くなくコンサートにも行っておらず映画『ボヘミアン・ラプソディー』も観ておらず
2006年にはベジャール振付の『バレエ・フォー・ライフ』を鑑賞しているにも拘らず未だに題名と中身が不一致状態な曲が多々あるものの、福田圭吾さん版は人間の燻った内面をも引き出しながらも
お洒落に格好良く刻んでいく振付演出で、クイーンの楽曲とバレエとの相性を再確認。
カーテンコールでのI Was Born To Love Youでは客電がついた客席から手拍子が鳴り止まぬ光景がいつまでも続く、肩肘張らずに楽しめた一夜で是非とも再演を願っております。

ところで、クイーン入門者な私はテレビ等で頻繁に流れる曲ぐらいか知らず。
しかし良作ばかり生み出していると思ったきっかけは、邪道かもしれませんが四半世紀ほど前に民放の歌番組で目にした
クイーンの曲の数々を直訳してメドレー仕立てで披露していた歌手?の「女王様」。繋げ方が上手いのか曲ごとの境界線が今一つ聴き取れず、思えばその数年後まで
Bicycle RaceとKiller Queenは曲調ががらりと変化するだけで同じ曲であると勘違いしていたほどの初級者以前のレベルでございました。
現在もBicycle Raceはじーてんしゃ、ボヘミアン・ラプソディー冒頭部分を聴くと母さんー、の文字が脳裏に浮かぶ管理人でございます。

またクイーンは時代を超えて愛されているとあちこちの記事や書物で目にいたしますが、確かに時代を問わないと感じ入ったのは
こちらも鑑賞者は多くないかもしれませんが映画『ロック・ユー!』。中世を舞台に騎士のトーナメントを描いた痛快作品で
要所でWe Will Rock Youが使用され、時には試合場の観客達が鼓舞のために一斉に歌い始めても中世時代の物語ながら違和感皆無で驚きを覚えた次第です。

余談ですが親族の約3名は誠にクイーン愛好家でございまして、レコードの所有や映画『ボヘミアン・ラプソディ』鑑賞は勿論のこと、
1名は2016年のアダム・ランバートを迎えた武道館公演、もう2名は1975年の武道館公演に足を運んでおります。
更に武道館公演に行ったうちの1名はロジャー・テイラー見たさで翌日羽田空港まで見送りに行ったらしく
周囲も半ば呆れる追っかけであったようです。報道カメラがいたか否かは分かりかねますが
あの昭和時代なる特集にてもしも当時の空港にて黄色い歓声を上げている熱狂者達の映像が流れましたら
その中に管理人の親族が映っていると思ってください笑。親族間でこの空港見送り話が出るたび笑いが起こってはいるものの
管理人も似た道を歩んでおり詳細は未だ内密を貫いておりますので黙るしかありません笑。

また我が家の事情ではございますが、公演当日は父の命日しかもちょうど10年。開演前ふと10年前の同時刻つまりは夜7時頃の出来事を思い起こすと
家族3人警察署に呼ばれて死因不明の父と対面し、数日後葬儀を終えてもまだ分からず、病死か事件性関連か判明まで時間をだいぶ要したものです。(結果前者でしたが)
思えばここ数年母と妹と私の3人が揃って同じ場所に出かけることなんぞ墓参りぐらいで他には滅多になく、このご時世なら尚更のこと。
しかし偶然が重なったのか、母と妹はクイーンとバレエの掛け合わせに、特に2008年のバレエ・フォー・ライフ東京公演を見逃し
急ぎでチケットを取って出向いたベジャール・バレエ団大阪フェスティバルホール公演が唯一の舞台鑑賞遠征経験であるフレディ・マーキュリー崇拝者な妹は
ロックバレエはどうしても行きたいと発売日にチケットを購入したほどで、私は振付家や出演者陣に引き寄せられて同じ公演に集い顔を合わせた日が
奇しくも父の命日10年の日であった巡り合わせに、きっと本人も喜んでいることでしょう。
いったいどなたにお礼を申せば良いのか。クイーンの音楽でバレエ公演を企画発案された主催のダンサーズサポート石渡さん、
洗練された舞台を振付演出しリハーサルから楽しさや幸せな空気を作りダンサーを配して魅力を引き出してくださった福田圭吾さんそして出演者スタッフの皆様、心より感謝申し上げます。
10年前を振り返りつつ、そしてこの舞台を天国のフレディにも見せたいと、クイーン熱烈オタクな母と妹が嬉々として口にしていた雨が降りしきる帰り道の光景を
未だ4人全員のメンバー名すら言えず使用楽曲の細かな話について行けぬクイーン入門者な管理人、忘れることは決してございません。




飄々と漕いでいらした福田さんを思い出す、Bicycle。ピリリと刺激が強い白ワインを自宅で乾杯です。作品の空気感にもぴったりな味わいでございます。
帰宅後プログラムを熟読していたところリハーサル写真、随分と良い撮り方をしているがプロを雇っているのかと家族が気になったようで
5月の配信プティ版『コッペリア』で初日と3日目にコッペリウスを踊られた中島駿野さんであると伝えたところ、多才な人であると感心しておりました。
加えて音源編集は福田さんの弟の紘也さんであると教えたところ、新国立の方々は皆本業以外にも得意分野があるのかと更に感心していたようです。

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