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2021年7月27日火曜日
副題に相応しい4幕の創意工夫 東京シティ・バレエ団『白鳥の湖』〜大いなる愛の讃歌〜
7月17日(土)東京シティ・バレエ団 石田種生版『白鳥の湖』〜大いなる愛の讃歌〜を観て参りました。
https://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000653.html
https://balletchannel.jp/17322
バレエチャンネルさんのインタビュー
オデット/オディール:清水愛恵
ジークフリード王子:キム・セジョン
ロートバルト:石黒善大
道化:玉浦誠
パ・ド・トロワ:平田沙織 植田穂乃香 土橋冬夢
三羽の白鳥:平田沙織 植田穂乃香 且股治奈
四羽の白鳥:新里茉利絵 竹嶋梨沙 西尾美紅 佐々木葵美
清水さんのオデットは登場時の表情や身体使いともに孤高な翳りのある神秘的な美しさを体現。
近寄り難いクールな風貌で、舞台全体を覆うように長い腕が描く羽ばたきの残像も目に響くスケールの大きさに息を呑みました。
王子からの問いかけにはなかなか心を開かず怯えが続き、されど背中からは覚悟をにじませる強さも感じさせ
オデットのリーダーとしての風格と過酷な運命を突きつけられた瀬戸際にいる危うさが入り交じって伝わるヒロインです。
オディールは優雅さから黒い魅力がチラリと覗き、あからさまな邪悪ぶりではないからこそ
王子はオデットに魅せられた際の知性や守りたい思いに駆られ恋に落ちた前夜のひとときを思わずオディールから感じ取ってしまったと納得。
オデットとオディール、共に凛として気高く感嘆いたしました。
清水さんはウヴェ・ショルツ振付「Octet」での頭一つ飛び抜けた女神の如き存在感が今も忘れられず、全幕主演も観てみたいと願っていただけに
シティが誇る大作にて鑑賞できたのは実に幸運。出産後復帰の舞台とは思えぬ心身の完成度であったと思います。
キムさんのジークフリード王子は鬱々な内面描写がいたく上手く、3幕に至っては花嫁候補が踊り出しても途中までは寝落ち笑。
王妃に起こされてやっとこさ踊り出すわけですが、品を維持しつつも上の空状態な心持ちがはっきりと伝わるひと幕でした。
清水さんが安心して身を任せられる安定感もさることながら、湖畔のアダージオでは一見して濃密とはまた違った、
心の開き具合を丁寧に織り重ねて刻一刻厚みを増して行く様子が徐々に染み入ってくるパートナーシップを構築していた印象です。
圧巻であったのは石黒さんのロートバルトで、羽に覆い尽くされた衣装にも埋没しないゴージャスな姿にこの度も驚かされ
暗めの峻崖の上に立っていても岩場と同一化しないオーラも見事。元々の上背や装飾たっぷりな衣装に加えて跳躍は高く、舞台ごと突き動かしているような重厚な存在感でした。
最後、羽根をもがれる結末が嘘のような豪胆なキャラクター造形でしたが、それだけ白鳥達の讃歌が恐ろしい勢いでのし掛かってくる設定にも頷けます。
全幕の中の個性の強い人物に石黒さんが登板されると妙な安心感と期待感を膨らませ、予想以上のものを見せてくださるダンサーであると私の中では定着しており
まだ綴っておりませんが今年の5月にご出身の教室での全幕公演『シンデレラ』義理のお姉さんを拝見し、舞台を引き締め面白味を存分に与えてくださいました。
何処かの機会で紹介して参ります。(鑑賞前に食したジンギスカンやパフェも美味しうございました)
パ・ド・トロワは高身長の平田さん、植田さんのコントロール力に目を奪われ、土橋さんのバネのある踊り方も宜しく躍動するトロワ構成。
湖畔コーダでの四羽や三羽が順々に突き進む箇所では最後さりげなく回転技が盛り込まれ他の演出より高難度。
しかし自然とさらりとしかも揃えてこなしてしまう全員の職人級な技巧に天晴れでした。
民族舞踊も非常に高水準で、中でも素早い脚の運びや上体の捻りがふんだんに用意されたスペインでの斬れ味やチャルダッシュでの緩急の対比の付け方には痺れるばかり。
これまでに観た、海外を含むバレエ団の白鳥の中でも5本の指に入るであろう見応えでした。
そして前回2018年上演時に初鑑賞し、話題を攫っていた日本初演時の藤田嗣治の美術や大野さん指揮の東京都交響楽団演奏よりも心を持っていかれた石田版白鳥の名演出な4幕終盤。
現在は『チャイコフスキー パ・ド・ドゥ』アダージオとして馴染みとなった曲にのせてオデットと王子がパ・ド・ドゥを踊りつつ白鳥達の力が結集していき
最後は白鳥達が手を繋ぎ、9の反対な配置で2人を囲む決意の場は希望の光が昇華するハイライトと言えます。
順番前後して、4幕幕開けは左右対称とは違った風変わりな配置に引き込まれ、関連記事を読んだところ
石田さんが竜安寺の石庭から着想を得たとのこと。西洋発祥の芸術に日本的な要素が調和した不思議な美しさです。
そういえば、随分前に本だったか新聞であったか、また石田さんの記事であったかも曖昧なのだが四羽の白鳥が手を繋いだまま踊る意味合いについて語っていらっしゃり
ロートバルトの呪縛の象徴であると強調なさっていたように記憶が霞んでおります。
白鳥達が一旦アダージオで力を結集したのち、臆せずにロットバルトに立ち向かい、王子による羽根もぎ取りも不都合な様相を感じさせず
オデットと王子と共に遂に勝利した印象がまさる展開。オデット達が人間の姿に戻るまでが短時間の中に整理し凝縮されて描かれ
仰々しい名に思える或いは越路吹雪を彷彿させる愛の讃歌、にも説得力あり。1幕の背景にて、城が随分と長く高い坂の上に建っており
居城であるとしたら徒歩での帰宅は相当な脚力を要すると思ったところで貴人は皆様馬に乗ってご移動であろうと想像が巡ったのはさておき
繊細且つ色味もしっかりとある美術、衣装も上品でシティが誇る大作です。
※以前福岡市にて田中千賀子バレエ団公演で拝見した中牟田百香さんが入団されたようで、東京でのプロとしての舞台姿が嬉しい限り。
ドン・キホーテのグラン・パ・ド・ドゥが印象深く、華やぐ雰囲気あるダンサーで注目して参ります。終演後福岡市民会館から徒歩で中洲へ行き屋台を巡った時間も懐かしい涙。
櫻井美咲さんに続き外部の舞台で目にした方がしばしば足を運ぶシティに在籍されていること、鑑賞の楽しみがまた増えそうです。
鑑賞前にノンアルコールビールとローストビーフで乾杯。
こちらの店舗でも、お洒落なノンアルコールカクテルを多種用意していました。
東京在住者が管理する当ブログ、暫く外ではノンアルコールシリーズが続きます。(少なくとも8月22日迄は。延長の可能性もあり)
夏限定生ハムメロンやウニのパスタも美味しい。
ティアラこうとうの換気状況紹介
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