2021年7月15日木曜日

小道具てんこ盛り農園での楽しい騒動  牧阿佐美バレヱ団『リーズの結婚』 6月26日(土)昼




6月26日(土)昼、牧阿佐美バレヱ団『リーズの結婚』を観て参りました。2019年に続いての嬉しい再演です。
https://www.ambt.jp/pf-lafille2021/


リーズ:阿部裕恵
コーラス:清瀧千晴
シモーヌ:保坂アントン慶
トーマス:京當侑一籠
アラン:細野生
若いおんどり:中島哲也
めんどりたち:竹村しほり  上中穂香  村川梢子  加藤瑚子
リーズの友人たち:
【木靴の踊り】日髙有梨  佐藤かんな  三宅里奈  高橋万由梨
織山万梨子  米澤真弓  光永百花  今村のぞみ




前日のゲネプロ映像(中川郁さん組)



初役阿部さんのリーズはまろやかな可愛らしさが香る少女で、きびきびとした振付も品良く柔らか。
緊張からか、序盤の素早い脚捌きや上体の雄弁な捻りはあと一歩でしたが、持ち前の確かな技術で音楽と共に歌うような達者な踊りに終始目が離せず。
マイムも丁寧に語り、1人でコーラスとの結婚と子育て計画妄想の場における夢見がちな表情と子供を懸命に躾ける現実味双方を
往来しながらの表現は蕩けそうな愛らしさでした。
清瀧さんのコーラスは豊富な経験が土台にあって安定感抜群。農業従事の活気ある堂々とした登場やソロの軽やかさ、力強さもさることながら
初役の阿部さんをさりげなくされど頼もしいリードが好印象。後にも述べますが小道具を用いた仕掛けがてんこ盛りな作品で
失敗は許されまいと顔が強張ってもおかしくないほど高難度な扱いを求められるわけですが
1幕での2人きりでの全身を使い踊りながらのリボンあやとりや、同じく長いリボンを駆使してのコーラスが馬でリーズが御者?に扮するお馬さんごっこもお手の物。
阿部さんの表情が一瞬硬くなりがちな箇所でもささっと手を差し伸べて安心させ、楽しい戯れの作り上げに貢献です。
1幕の見せ場であるパ・ド・ドゥも、阿部さんが立ちやすい位置を察知し僅かに先回りして笑みを引き出しそれはそれは微笑ましい場面に。
また妄想姿が見つかり恥ずかしがるリーズに優しく近寄り、子供は10人!と両手で訴えていた箇所や、その後シモーヌに発見されぬよう隠れ場所を探す際の
棚の引き出しに身体を入れようと(ドラえもんか笑)奮闘する姿もツボでした。

保坂さんのシモーヌはさすがのベテランな芸達者ぶりで、愛娘を裕福なアランと結婚をさせようと走り回るお母さんを嫌味なく表現。
序盤、憎きコーラスに向かってのキャベツ投げから笑いが止まらずです。芝居も仰々しくなく
至って自然でやり過ぎずしかしぱっと明るく面白くなる舞台に繋げていらした印象です。
よく見ると、シモーヌはリーズとコーラス、アランとトーマスは勿論のこと、リーズの友人や農夫たち
後半では公証人など作品の殆どの人物と何かしら関わりがあり、皆の中枢な立ち位置。更には飛び込んでくるアランのトーマスと息を合わせての受け止めや
バター捏ねの指示に鍵隠しまで、次々に到来する忙しく細かな仕掛けを順調にこなさねばならず
ただ面白おかしい母親ではない大変な難役。作品を熟知しているからこその見事なまでの盤石且つ厚みある姿でした。木靴の踊りでは実にリズミカルな職人芸を披露。

リーズたちを見守り、作品をぐっと締めていたのはリーズの友人たちで皆で行うリボンでの図形作りもメリーゴーランドな広げ方も職人気質が光り、ベテラン勢が活躍。
中でも日髙さん三宅さんがリーダー格として率いていて、何処ぞの大会とは違って安心と安全と確約する気迫と示す行動が見るからに伝わる友人たちでした。
木靴の踊りでの靴音までもがぴたりと合う整い方にも見入った次第です。
2幕での、コーラスまさかの藁束から登場には把握している演出ながら毎度驚かされ
各自短い棒を手に輪になって農夫たちが踊る前であったか、仕事で持ち帰ったまとめて1箇所に置いたところにコーラスが隠れていて
下手な置き方をすれば藁束が倒れ、しかもすぐそばで集団で踊るとなれば尚のことリスクも大。
しかし皆置き方が上手いのでしょう、全く倒れずコーラスは潜んでリーズの結婚生活妄想姿をこっそり観察です笑。

細野さんはリーズへの恋に夢中なアランをほろ苦い風味も交えたタッチで踊り、描き方が難しい役ながら魅力を振り撒き惹きつけるキャラクターとして存在。
特にリーズとコーラスの結婚式が執り行われ皆が解散し静まり返ったリーズの家に傘の忘れ物を取りに来たときの
笑みを浮かべつつも残して行くほんのり悲しい余韻は忘れられません。時代を経て表現も変化しているのか
アランに対して人々が嘲笑しているようには決して見えず配慮した描写になっていたと捉えております。
幕開けからニワトリさんたちの朝の舞いにも目が更に覚めた思いで、パタパタとした羽ばたきや歩き方もダイナミック。
最後は皆が幸せな幕切れで、相思相愛の2人の結婚を認めるようシモーヌに優しく促す公証人塚田さんの仕切り具合も味わいがあり、
大団円の中でシモーヌにも花を持たせようと再度木靴の踊り披露の場をすぐさま設ける周囲の気配りにも安堵。
また全編通して感情の起伏をコミカルに時にしんみりと心擽る音楽にも聴き入り、また観たいと思わせる作品です。
初鑑賞の2006年はゆうぽうと、2度目の2019年は文京シビックが会場でしたが、今回の新国立劇場中劇場が2階席でも舞台に近く
群舞も堪能しつつ装置や小道具も見易い、箱のサイズも程よいと思わせました。

ところで辿ればこの作品の初演は全幕バレエの中ではp古いようですが、(1789年7月1日と書かれていて、そうなるとフランス革命の頃!?)
ロシアでの呼ばれ方『無益な用心』由来や、しばしば発表会で目にするグラン・パ・ド・ドゥ(リーズが手を叩くヴァリエーションがある構成)との関係等
知らぬことが多々あり。ロシアではクラシックチュチュで踊る場面もあったか。
『無益な用心』ならば題名を目にしたのはアシュトン版よりも先で、寺田宜弘さんがキエフ・バレエ学校留中かバレエ団入団間もない頃だったか
木靴の踊りの写真で見た記憶あり。用心の文字に時代劇のような題名にも思え、いったい何の話であろうかと疑問を抱いたのはよく覚えております。
それはともかくこの度も登場『バレエ101物語』での薄井憲二さんの解説が最も詳細に感じますが
公演の無料プログラムにも記載があったかもしれず、初演からの音楽や改訂の変遷について整理をして参りたいと思っております。




鑑賞前に和食、自家農園のお野菜たっぷりです。この後はフランスの農園へ。



牧バレエの無料配布パンフレットはオールカラーで作品解説やばバレエ 団初演時の様子も詳しく案内。無料とは思えぬ充実した内容です。
帰宅後はニワトリさんのワインで乾杯。名前は勝手にコッコちゃん。ニワトリはコッコ、
アシュトン繋がりで『二羽の鳩』初鑑賞時の1993年小林紀子バレエシアター公演では
白い鳩たちを勝手に鳩ポッポと呼び、28年経っても我が名付けセンスの無さは不変でございます。

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