2021年7月30日金曜日

1年延期を経て後輩のサタネラ 清水純子バレエアカデミー第38回発表会 7月25日(日)





7月25日(日)、渋谷の大和田さくらホールにて清水純子バレエアカデミー第38回発表会を観て参りました。
昨年予定していた発表会が1年延期となりようやく開催。配信も合わせての実現となりました。
http://shimizu-sumiko-ballet.jp/

主宰の清水先生は東京シティ・バレエ団で長らく主役を張られていたほか、スターダンサーズ・バレエ団で日本初演した
バランシン振付『コンチェルト・バロッコ』にゲスト出演されるなど、国内におけるバランシン作品経験の先駆者でもいらっしゃいます。
今回は昼間に新国立劇場にて『竜宮』を鑑賞しておりましたため、終演後に渋谷駅へ駆けつけ、第2部から鑑賞でございます。

最大の目当ては登場機会多数な当ブログレギュラーである我が愛する後輩2度目のグラン・パ・ド・ドゥ挑戦、演目は『サタネラ』。(ヴェニスの謝肉祭)
音楽は晴れやかされど単調気味で特別派手な振付もなく、しかし悪魔な女性である面を明示せねばならぬ見せ方が非常に難しいパドドゥであると捉えております。
さぞ緊張しているであろうと楽しみと心配半々な心境で幕開けを待ちましたが、ぶったまげました。
登場時から溢れんばかりの笑みを湛え、舞台にぱっと華を与えるオーラ一杯。
更に驚きに拍車をかけたのは、パートナーを務めていらした東京シティ・バレエ団所属の吉野壱郎さんとの掛け合いや視線の合わせ方もしっかりとこなしていて
心浮き立つ会話が成立していたこと。振付を追うだけで精一杯にならず、問いかけに対して澄ましたかと思えば振り向いてほんのり魔性香る姿で魅せたり
ふとした箇所においても丁寧な作り込みでした。本人は謙虚の塊のような性格で、技術も体力も不安視していましたが
ほぼヴァイオリンのソロが占める曲調の中で勢い任せでは誤魔化せない振付てんこ盛りなヴァリエーションでも
1本の糸の上をそっと辿るような滑らかな踊りを披露。思えば当初は昨年に踊る予定が1年延期で
心身の調整も容易ではなかったはずであり、それでもめげず頑張りました。先輩は大満足です。

そして後輩のパートナーを務めてくださった吉野さん、シティでのウヴェ・ショルツ作品や『白鳥の湖』等公演では度々拝見しておりますが
お若いながらパ・ド・ドゥにおいて相手の緊張を解して気持ちを上向きにさせるコミュニケーション力に長けていらっしゃり信頼感絶大で好印象。
後輩を優しく明るくリードしてくださり、ありがとうございました。 配信をご覧になった方からも、視線の交わし方に至るまで
2人で楽しそうに踊る空気感が良かったとのご感想も寄せられているほどでございます。
華が無いと着こなしが困難であろう黒と白のシックな統一感のある色調でペアごと揃えた衣装もお2人にお似合いでした。
そういえばサタネラ青年の登場振付は踊り手によって様々で、吉野さんは颯爽と鮮やかに舞台中央へと飛び込んでくる登場。
対して先月新宿文化センターでのガラの青年は上手側の幕からにょきっと顔を覗かせてニンマリと笑みを客席に送ってからの登場で
思わず脳裏に浮かんだ『突撃隣の晩御飯』笑。ガラや発表会の定番パドドゥの印象先行が益々薄れ、観れば観るほど面白いと思える今日この頃でございます。

後輩の話に戻します。幼い頃から同じスタジオにブランク無しで長年レッスンに通っている継続力に
しかも習い事とは言えど頭のてっぺんから指先足先まで隈なく見られながら指導を受け、美を追求する
身体を張っての芸術ですから、ストイックの欠片もない私からすれば益々頭が下がる一方です。
そして後輩、先述の通り当ブログ登場回数が多く、つまりそれだけ鑑賞回数も多し。毎週レッスンに通いつつ鑑賞にも度々足を運び、
加えて鑑賞できなかった舞台についても私に感想を尋ねてくれたりと勉強熱心。私の偏りだらけな話を頷きながら聞いてくれたり
また私の周囲の濃い鑑賞オタク集団(該当するお心当たりある皆様すみません笑。しかし鑑賞中心のバレエ愛好者の集まりですから相当オタクでしょう汗)
話にもすっと入り込めていて観る目と踊る身体両方備え、幼少時から長年レッスンに通っていながら鑑賞も熱心。珍しいタイプかもしれません。
先月も、踊るにあたって勉強したいとリハーサルの合間を縫って新宿文化センターでの新国立劇場ペアによる『サタネラ』も鑑賞。
自身が踊る女性パート中心に念入りに観るかと思いきや男性パートもじっくり観ていたようで、そしてたっぷり褒めてくれました。私へ心遣いも申し分ありません笑。
(念のため、私が鑑賞を強要したわけではありません。誤解無きように)

元々華やオーラがあり、最近の出来事としては練習帰りに私の最寄駅まで届け物に来てくれたときのこと。
ワンピースを着て改札前の桜の木の下に立っていた後輩、映画のヒロインかと見紛う花がパッと咲き誇ったかの如き可愛らしさで
先月利用の団体様の鑑賞報告写真に写り込んでしまい新国立劇場玄関先の灰色の柱との同化が証明された存在感埋没な私とは大違い笑。
隣を歩いていると満開の花園と移動している心持ちとなるほどです。また背は私とさほど変わらぬはずが(彼女のほうが3cm高い程度)
実際の身長よりも高く見え、頭が小さく腰の位置が高めで手脚が長いため実に見栄えする容姿。頭でっかちな上に酒樽体型の管理人とはこれまた大違いです。
あれやこれや綴って参りましたがそんなわけで、我が愛する後輩の晴れ姿を1年延期を経て鑑賞でき、幸福な真夏の昼下がりでございました。
江戸時代に旅を重ねていた、人生の節目日が私と同日であるらしい儒学者の林春斎が日本三景として宮島、天橋立、松島を「日本国事跡考」に綴ったように
私の中ではサタネラ三景がこの度決まり、12年前のグランキューブ大阪、今年6月の新宿文化センター、そして今年7月の大和田さくらホールでの鑑賞でございます。

子供の生徒さん達の作品も楽しく、「フォークダンス」ではアメリカ、ドイツ、イタリア、ロシアと次々と披露し、デザインは少しずつ異なる赤系の衣装で揃え
最後マイムマイムを聴くと、子供の頃は当たり前のように参加していた林間学校やキャンプファイヤーを思い出し
昨年今年と中止になってしまった学校多数である現実を踏まえるとしみじみ。
今年は発表会開催が実現し生徒さん達の晴れ舞台披露の場が整って良かったと心底思えた次第です。
シティのプリンシパルキム・セジョンさんがそれぞれお二方と踊られたグラン・パ・クラシックは爽やかで深みある青い衣装がよく映え、安定感も抜群。
金と白が眩しい『ライモンダ』3幕を2人用に再構成したパ・ド・ドゥもヴァリエーションも挿入の見応え構成で
今年8月のバレエ・アステラス2021における『ライモンダ』披露組も同構成で宜しくと申したいところです。
世界バレエフェスティバルAプログラムにおける、アレクサンドロワとラントラートフも同作品3幕よりと明記のため恐らくは似た構成と想像しております。
教師の方がお1人が踊られたヴィヴァルディの曲に振り付けられたややモダンな雰囲気のソロwindは水色のタイトなスカートが靡く衣装も相乗して流れるように涼しげ。
スタジオに長く通っていらっしゃる女性と男性の大人の生徒さんによる『白鳥の湖』のスペインもキレキレで気持ち良く、長期継続の大切さに触れた思いがいたします。

最後は後輩も再び登場、『ライモンダ』より夢の場を中心に組み合わせた『ロマネスク』。
通常はソロで踊る曲も振付の基盤はそのままに複数人数版にしている点も特徴です。
曲構成は1幕で宴を終えたライモンダの友人達がしっとりと踊る曲いわゆるロマネスク、夢の場第2ヴァリエーション、第1ヴァリエーション、
ヴェールのヴァリエーション、ライモンダによる夢の場のヴァリエーション、第1幕グラン・ワルツのコーダ、であったかと記憶。
(お読みになっている関係者の方がいらっしゃいましたら、違っていればご指摘を)
プログラムや看板の絵にも描かれているロマンティックチュチュで妖精のように舞っていく優美な作品でした。

発表会開催においては昨年から現在にかけて何処のバレエ教室も共通かと思いますが、大勢の観客を迎え満席或いはそれに近い状態で行いたい気持ちは山々でも
入場者数に制限をかけての安全確保や検温消毒、楽屋の使い方、そして配信も行うなど従来では考えられぬ対応に頭を悩ませながらの開催であったと察します。
生徒さん達の嬉しそうな表情を眺めながら、日頃の成果を発表する舞台ができた幸せを共有いたしました。
来年は今年よりも心穏やかに本番を迎えられますように。




帰宅後イタリアワインで乾杯。瓶の下に敷いたレースはヴェネツィア産です。



後出し失礼、何度か借りている書籍に再度目を通したが、私の理解力欠如で今ひとつロマネスクの定義分からず。半円アーチが特徴か。
しかし建築の写真はどれも美しく、堅固な作りに曲線や丸みも細部まで観察です。

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