2023年7月30日日曜日

滝澤志野ピアノリサイタル~バレエ音楽の輝き~




7月21日(金)銀座の王子ホールにて、ウィーン国立劇場バレエ団でバレエピアニストとして活躍中の滝澤志野さんのリサイタルを鑑賞して参りました。
https://balletchannel.jp/30394

滝澤さんが厳選されたバレエ音楽、或いは元はバレエ音楽ではなくてもバレエ作品に使用されバレエ音楽としても馴染み深くなった曲からの構成で
司会進行も全て滝澤さん自身でご担当。普段はスポットライトを浴びる機会がないため照明は極力暗くして欲しいと願い出たとのお話に思わず客席から笑いが零れたり
若手新人抜擢が多い『くるみ割り人形』での応援モードで見守っているエピソードには心に明かりが灯されるようにほっこりとしたりと
ウィーンでの日常が覗くお話もしてくださり、穏やかであたたかな口調で演奏にいざなってくださいました。

全ての演奏に共通していたのは元はオーケストラ音楽の作品であってもピアノ1台であたかも何台もの楽器を奏でているかのような多層的な音色で、様々な舞台を想起。
ショパンの三作ではワルツ14番となればロビンズのコンサートにて、舞台上の揃わないミステイクワルツのみならず客席の子供達が遠慮なく笑い声を上げていた光景や
ロミオとジュリエットでは爽やかな朝に始まり、ジュリエットの無邪気な様子からの婚期の迫りの戸惑い、夕刻舞踏会前の胸騒ぎやそしてバルコニーの夜、と
時間の経過をもピアノ1台で表現できてしまう腕前にただただ拍手でございました。勿論、あのロメオこのロメオ、と東西のお二方が浮かんでいたわけですが、
一見物静かそうでエレガントなお姿からは想像つかぬ力強いタッチにも圧倒され、休憩になっても暫く静かに座り続けていたほどです。

2部の最初はマノンの2曲。寝室は危うさを漂い浮遊しながら恋へまっしぐらな2人が浮かび、
沼地は滝澤さんの込める力に更に拍車がかかり、もう辺り一面茶色い沼地にしか見えず。(吊るし装飾も)
私が今までのバレエ鑑賞でたった4回涙したうちの1回である2012年6月30日公演と、これから観たいお方の双方が交差しながら回想と想像が巡りました。

くるみ割り人形は、私はとにかくボリショイの1989年映像が今もなお色褪せず。新鋭アルヒーポワと中堅ムハメドフが織りなす壮大な展開、時間旅行できるなら観に行きたいものです。
両手で覆った状態から顔をみせていく振付、ムハメドフに対してではないが、演出としてはときめきます。
葦笛も滝澤さんはとても躍動感のある弾き方をされ、思わず羊の滑車を用いたボリショイの葦笛が通過。
リサイタル4日前に札幌でジンギスカンを食べたばかりでしたが笑、ボリショイの羊さんの可愛らしさは反則ものです。
花のワルツでは長い燭台?を手にした箇所や、グラン・パ・ド・ドゥアダージオを聴くと花のワルツの男性陣も加わる大リフト、思い出します。
ボリショイのグリゴローヴィヂ版くるみ、子役無く壮大なスケールで描かれていて、今も好きでございます。

アンコールではジゼルのパ・ド・ドゥ2023年アレンジ版。ジゼルとアルブレヒトの心の絡みがより細やかに、涙の粒が零れ落ちるような繊細な調べを奏でてくださいました。
鳴り止まぬ拍手に何度も深々とお辞儀をして応えてくださる滝澤さんと、幸福に浸った観客の会話がいつまでも続き、花束贈呈には読売新聞の祐成さんが登場。
※祐成さんの取材記事https://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20230630-OYT8T50006/

そして終演後には新作CD購入者を対象に滝澤さんのサイン会を開催。上野にモナリザが来た頃の報道を思い出す長蛇の列で、サインや写真に気さくに満面の笑みで応じてくださいました。
机上には滝澤さんのお供、ぬいぐるみの羊さんマリアネロちゃんも佇み、注目の的でした。葦笛で羊が度々脳裏を過り、この4日前の札幌、と羊尽くしな1週間であった私です。

それから、今回リサイタルスタッフの方々や同じタイミングでチケット購入に居合わせたお客様のあたたかさにも助けられました。
鑑賞のきっかけは今年5月22日(月)の、私にとっては滅多にないCDレッスンにて使用されたのが滝澤さんのCDで、
エイフマン版アンナ・カレーニナやライモンダ2幕ソロ等思い入れの強いいたく好きな曲も含まれていたことや収録楽曲の並びに嬉々とする先生のお姿含め強い印象に刻まれたのでした。
私の中では少なくとも10年前からのレッスン再開以降(但しレッスン回数は年に3回あるかないか程度です汗)
音楽はピアノ生伴奏付きが95%を占め、踊れぬズンドコドッスンレベルな身にも拘らず贅沢な環境が当たり前と化して正直CDですと物足りなさを不安視しておりました。
しかし滝澤さんのCDは私のようなド初級者でも聴き取りやすいよう妙なアレンジはせずともメリハリや躍動感の味付けがくっきりでバレエで馴染み深い曲が勢揃い。
加えて先生が曲をかける度に鮮烈な喜びを示され、この日は急遽決まった臨時単発特別クラスながらリラックスした空気に自ずと包まれていった大きな原動力の1つであったと思います。
暫く経ってからやはり行きたい生で滝澤さんの演奏を聴いてみたいと欲が募りましたが鑑賞を思い立った時には東京公演は完売で譲渡も出ず
当日券が出ると発表されたのは当日午後。ひとまず事前に早退届を出して駄目元で夕方の指定時間に当日券案内場へ行きましたところ、4枚あるうちの最後の1枚。
思わずポロッと実は今日は、と切り出したところその場にいた購入者やスタッフの方々から大拍手で祝っていただき、鑑賞前から忘れられない人生節目日となりました。
本当にありがとうございました。次のリサイタル時は早めに購入いたします!




日中はカフェウィーンへ。東京にいながらウィーンを満喫。



ザッハートルテとメランジェ。ウィーンはカフェ文化の発祥地だったか。お冷やも出てくると本で読みました。



お祝いのメッセージもいただき感激。




銀座の銀座ライオンでシュニッツェル。ソラチビール1984で乾杯!1984年、確かダンスマガジン刊行年そして映画風の谷のナウシカ公開年。
バレエ界のメディア転換期、そして映画アニメ業界に大衝撃が走りました。
のちに金曜ロードショー等では見ましたが劇場公開時期には鑑賞できず、いつか大スクリーンで見てみたい。





ライオンさん。



余韻に浸りながら銀ブラ。夜風が吹いて気持ち良し!

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