2023年8月1日火曜日

新エトワールとこれからの担い手達   オペラ座ガラ ―ヌレエフに捧ぐ― Bプログラム  7月29日(土)夜







順番前後いたしますが7月29日(土)夜、オペラ座ガラ ―ヌレエフに捧ぐ― Bプログラムを観て参りました。
これからを担う今のパリ・オペラ座の状況も知っておきたいと向かった次第です。
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/opera-gala/


― 第1部 ― 「ゼンツァーノの花祭り」
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:エドヴァルド・ヘルステッド

パク・セウン、ポール・マルク

ヌレエフに捧ぐであるのにブルノンヴィル作品上演にやや疑問を持ったものの、
思えばヌレエフは西側への亡命以来キーロフの舞台に戻った1989年あたりに出演した作品が
ブルノンヴィル版らしきラ・シルフィードだったからかもしれません。(詳細覚えておらず失礼)
パクの楚々とした軽やかさから花開くような腕の使い方、マルクはどしっと受け止める安定感もあり、なかなか良きペアでした。
私がゼンツァーノを聴くときの勝手なポイントとして、コーダで男性が出てきたときの鉄琴の響きっぷり。
鐘の音のようなアクセントになって気に入っており、ここの部分が響いてこないと気持ちが上がりません笑。


「ナポリ」より第3幕のパ・ド・シス
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:エドヴァルド・ヘルステッド、ホルガー ・シモン・パウリ、ニルス・ウィルヘルム・ゲーゼ、ハンス・クリスチャン・ロンビ

ブルーエン・バティストーニ、イダ・ヴィキンコスキ、クレマンス・グロス、オーバーヌ・フィルベール、
 ダニエル・ストークス、アントニオ・コンフォルティ

構成が今一つなのかだいぶ長く感じてしまいましたが、同じような衣装で横並びで踊る箇所が多いためか踊り方の個性が見えてきたのは面白く
ヴィキンコスキの軸の強さから繰り出す回転は印象に残っております。


「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
振付:ジョージ・バランシン ©The George Balanchine Trust
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

オニール八菜、ジェルマン・ルーヴェ

オニールさんは以前スターダンサーズ・バレエ団で観たユーゴ・マルシャンとの『眠れる森の美女』グラン・パ・ド・ドゥでは大味な印象が残っておりましたが
年月を経てだいぶ変化。持ち前の華やかさの中にも緻密さや音楽と呼応ながらの広がりも覗けました。まずはエトワール昇格おめでとうございます!
ルーヴェは長い両腕を下ろす度に大きな花が咲いたような優雅さが光っていた点が好印象。


― 第2部 ―

「さすらう若者の歌」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:グスタフ・マーラー

マルク・モロー、アントワーヌ・キルシェール

題名は度々目にしておりましたが、生で観るのは初。赤と水色?な異なるレオタード衣装を着た男性の個性の掛け合いが浮き立ち、モローは重厚、キルシェールは繊細。
様々なダンサーで観てみたいと思わせる作品でした。本では何度も目にした、イレールとルグリの共演舞台も今更ながら興味を持たせます。
フランス系のガラ、これまで全く行っていない私である。(ずっとロシア系或いはバレエフェスのような全般系に走っていた)


「コム・オン・エスピール」
振付:ユージン・ポリャコフ
音楽:ジョン・フィールド

オニール八菜、マチアス・エイマン

唸るような目新しさはなかったが、白い衣装を身に纏い爽やかに走り抜けるような2人。
今回エイマンが踊る姿を観るのはこの作品のみでしたが、弾力と優雅さが溶け合ったパの美しさを再度確認でき、喜ばしい限り。


「くるみ割り人形」より
第2幕のグラン・パ・ド・ドゥ
振付:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

ブレーエン・バティストーニ、ポール・マルク

やっとこさヌレエフ振付登場、しかしくるみパ・ド・ドゥの文字が視界に入ると観る前から冷や汗をかくのはなぜでしょう笑。
生では5年前のウィーン国立バレエのガラでは観ておりますが、やじろべえのようなバランスといい
何をどうしたらこの振付になったかとヌレエフさんにインタビューに出向きたい気持ちに駆られた記憶がございます。
恐らくは本拠地公演でも使用されているであろうキンキラ豪奢な黄金衣装姿の2人を目にできたのは幸いで
バティストーニは終始表情が硬かったものの(そもそもこれをにこやかに余裕綽々と踊れる人、いるのでしょうか汗)
硬質な美が目に留まり、持ち味は舞台に活きそうな気がいたします。マルクは動じず威風堂々。


― 第3部 ―

「ライモンダ」より第3幕のグラン・パ
振付:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパに基づく)
音楽:アレクサンドル・グラズノフ

オニール八菜、ジェルマン・ルーヴェ
ブルーエン・バティストーニ、イダ・ヴィキンコスキ、クレマンス・グロス、オーバーヌ・フィルベール、
アントワーヌ・キルシェール、ダニエル・ストークス、アクセル・イボ、アントニオ・コンフォルティ

今回の一番のお目当て。ヌレエフ版のライモンダはハイライト版では先にも触れたウィーン国立バレエガラでは観ており、アブデラムのソロもあったかと記憶
パリ・オペラ座の映像はドキュメンタリーDVDでしか観ておりませんので、楽しみに参りました。
また数年前の年末年始に視聴したトゥールーズ・キャピトル・バレエの配信における出来が
職人気質な踊り方の結集といい衣装の豪華さといい頗る上質であったのも忘れられず。

今回に関しては正直申し上げると、日本野鳥の会の皆様も宝飾品の合計個数のカウントに苦労するであろう豪華に重厚に彩られた
本家の全幕版衣装や頭飾りが観たかったのですが簡略版と思わしき衣装でございました。ただ女性は全員赤を基調とした鮮やかさがあり、まずまず豪華路線。
オニールさんの強気な踊りは主役感があり、ルーヴェは騎士には見えなかったが(バッサリ失礼。どうしても重視してしまう)気品や高貴な踊り方は目を惹きました。
跳躍多しのアレグロぴょんぴょこヴァリエーションを踊ったヴィキンコスキは
もう気持ち軽快さがあれば尚良かったかと思うものの床を踏み締めつつの弾けっぷりで
三角形パ・ド・トロワは隊形が少し崩れてしまった最後が惜しく、心残りは否めず。コーダは無事締め括れて一安心。

直後に始まる先輩方の別招聘ガラに押されてしまったか、私の鑑賞眼の欠如もあって総じて華やぎには欠けた印象が刻まれてしまいましたが
来年のバレエ団としての来日全幕公演ではまた変化を遂げていることでしょう。




帰りは東京駅へ。



久々にフランス系ガラを観たので赤ワインで乾杯。



パテ・ド・カンパーニュ。だいぶ大きめサイズでしたがワインが並々注がれていましたのでちょうど良い量でした。
そしてこの後、西側へ移動です。東京文化会館を出る前に、先月半ばの札幌への出発前日の東京シティバレエ団会場でお目にかかった、
関東圏劇場遭遇率第一位の方を始めとする顔見知りの劇場常連の方々が優しく見送ってくださいました。
(亡命ではありません。既に帰京しております)

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