2022年3月31日木曜日

全身に訴えるトリプル・ビル スターダンサーズ・バレエ団   DANCE SPEAKS  2022  3月26日(土)





3月26日(土)、スターダンサーズ・バレエ団   DANCE SPEAKS 2022を観て参りました。
https://www.sdballet.com/performances/2203_dancespeaks2022/


セレナーデ
振付:ジョージ・バランシン
音楽:P.I・チャイコフスキー   弦楽セレナーデ
演出・振付指導:ベン・ヒューズ

今や国内の様々な団にレパートリー入りしている作品ですがスタダンによる上演の鑑賞は初。
勢いで活気付き、序盤から押し迫るスピードも十二分でバレエ団初演から来年で40年となる国内における長き継承の誇りが伝わる力演でした。
中でも喜入さんの芳醇な色気、軸の強さから繰り出すしなやかな踊りが目に残り全体を香り立たせる空気を纏う姿に魅せられ
渡辺さんの優美で透明感が微風のように靡くステップやパートナーと優しく交わし合う視線にもうっとり。
力みのない瞬発や抜群の軽快感で率いる塩谷さんの技術の高さからも目が離せませんでした。



Malasangre   マラサングレ
日本初演、貞松浜田バレエ団との共同制作作品
振付:カィェターノ・ソト
音楽:ラ・ルーペ
演出・振付指導:新井美紀子

ソト振付の新作上演と知って以来、胸躍らずにいられずにおりましたが期待以上。
ラ・ルーペの奔放な歌声とダンサーの可動域豊かな身体が溶け合ってノンストップで駆け抜け、瞬きも惜しい展開を見せていました。
ノリの良さの中からチラリと覗く皮肉めいた黒い魅力が刺激を誘う作品です。
ベージュと黒を基調にした衣装も粋で、男性がスカート状、女性はベージュの短い丈のパンツに長い黒ソックス。
黒みがかった照明にダンサー達がぽっかりと浮かび上がる演出も実にスタイリッシュでございました。
元々創作公演の回数が豊富で現代作品も意欲的に上演を重ねている貞松浜田バレエ団との共同制作である点も興味を惹く要素で
関西関東それぞれ昔からコンテンポラリーに強いカンパニーの共演により互いにレベルを引き上げていた印象です。
貞松浜田バレエ団の水城さんは関西や四国の公演、発表会において度々拝見しておりますがこんなにもコンテンポラリーで輝くダンサーであるとは知らず
音楽に機敏に反応して体現する身体能力の高さ、大胆に斬り込んではっと唸らせる踊りに驚くばかりでした。
そういえばラ・ルーペの音楽、カルディーコーヒーファームの店内で流れていそうな印象も抱いた次第。



緑のテーブル
台本・振付:クルト・ヨース
作曲:フリッツ・A・コーヘン
美術:ハイン・ヘックロス
マスク・照明:ハーマン・マーカード
舞台指導:ジャネット・ヴォンデルサール
舞台指導助手:クラウディオ・シェリーノ
照明再構成:ベリー・クラーセン
ピアノ:小池ちとせ、山内佑太

戦争に対する批判を描いた作品である点ぐらいしか予備知識無しで鑑賞に臨みましたが、予想を遥かに超える重たい悲しみがのし掛かる作品でした。
まず死の役にて池田さんの覆い尽くす力が突出。風変わりな模様のメイクに黒白の全身タイツ姿で度肝を抜かれたのも束の間で
舞台を重々しい空気に変えていく力演に客席から立ち上がりそうになるほど引っ張られ、死へ向かう恐怖感や胸の内を痛ましく抉られるような心持ちとなりました。
悲痛な叫びがこだまするかの如く、悲しみを全身で表すフルフォードさんの女も目に焼き付いております。
終始ピアノ2台で演奏される音楽からも衝撃を受け、幕開けの洒脱で軽やかな曲調には拍子抜けするほどでしたが
会議に出席する紳士たちの奇妙なステップが滑稽にも見え、生温い環境にて卓上会議を行うだけで
戦地に赴かぬ戦争開始指示者達への痛烈な批判を示しているとすぐさま把握できた次第。
他人事のように進行する会議の様子が続くかと思えば出征のために引き裂かれていく人々の場面へと移り変わり、そして再び会議に戻って
戦争の愚かさを劇中で訴え続け、隙が微塵もない展開に終始集中して観るほかありませんでした。
以前の上演関連記事に目を通してから作品には関心を持ち、観たいと願ってはおりましたが
まさかウクライナ侵攻の報道に連日心が痛む日々に鑑賞するとは思いもよらず。
世界中から戦争がなくなった状態でこの作品を鑑賞できる日が、現実味を感じずに鑑賞できる日がいつかは訪れるのか。ヨースは今も問いかけているに違いありません。

作風はどれも異なっていても音楽を身体で視覚化しスピード感とパワーで突っ切る美しさ、大胆で少し捻くれた魅力、そして戦争への批判と全身に強く訴えかけてくる3作品で
バレエ団の誇りと底力が存分に発揮されたトリプル・ビルでした。
尚、貞松浜田バレエ団との共同制作やこの情勢下での『緑のテーブル』上演の事情もあり、この公演は翌日出向いた関西でも大きな話題となっていました。
実現は困難であるのは承知しておりますが、『緑のテーブル』や今回のようなトリプル・ビルの全国公演実施も願っております。




お昼は劇場横のイタリアンにて食事。天井が高く開放感のある店内です。桜のペーパークラフトを背景に春キャベツのクリームパスタ、気分も春めきます。
同じ日に鑑賞した公演や私が鑑賞叶わなかった公演等お聞かせいただき、また2度に渡る我がズンドコドッスンな出来事も聞いてくださり笑、楽しき昼でございました。
そういえば、このお皿にはファルファッレのパスタが、マラサングレの舞台には黒い蝶が敷き詰められ、前者は春の息吹を思わせ、後者はルーペの最期に寄せた演出とのこと。



小サイズのデザートもあり、迷っていたところお店の方の一押しと伺いカッサータを選択。
チーズ入りの爽やかなアイスで縁にはオレンジが付いていて何とも清涼感のある味わい。気に入りました。



帰りはカウンセラー友人と芸術劇場1階のベルギービール店へ。ビールの種類多数で迷いましたが変わった色味のこちらに。
以前にも訪問し、ベルリオーズの半生を描いた松崎すみ子さん振付『幻覚のメリーゴーランド』では
解説に「幻覚」の文字が記されたアルコール度数強度な種類を、NBAバレエ団『HIBARI』では真っ赤な太陽を彷彿する赤色のビールを呑んだ記憶がございます。
友人は甘口ジンジャエールを選択です。普段は呑気にもほどがある管理人ですが諸事情で神経が張り詰め
身体にまで影響が及んでしまった今月、相談にのっていただき深謝。この日は心和むひとときでございました。
そういえば、近年「チラシ」の呼称が握り、ではなく(当たり前だ)フライヤーらしいのだが
古い人間な私の中ではポテトが入ったこの入れ物に似た揚げ物容器しか思い浮かばず笑。翌日西側で話題となりました。

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