2023年8月4日金曜日

観客参加型で台詞わんさか王子の美声三昧 新国立劇場バレエ団エデュケーショナル・プログラム『白鳥の湖』7月28日(金)13:00 29日(土)16:00









7月28日(金)13時公演、29日(土)16時公演の新国立劇場バレエ団エデュケーショナル・プログラム『白鳥の湖』を観て参りました。
昨年2月に予定していた『シンデレラ』が中止になってしまいましたので、初の企画公演です。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/educational-programme-swanlake/


舞台の様子。既に勝ち誇る艶かしいオディールにいよいよのめり込んでいく王子と心配そうなベンノ、怯えるイタリア王女、大使の姿も見えます。
そして直前に突然の発表があった、廣田奈々さん池田紗弥さんの退団は余りに寂しい。目に焼き付けました。






初日昼公演の様子が日テレニュースでも取り上げられました。王子の声は聞こえず涙。


オデット:米沢唯
ジークフリード王子:渡邊峻郁
王妃:楠元郁子
ロットバルト男爵:中家正博
ベンノ:木下嘉人

ナレーション:関修人
指揮:冨田実里
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団


従来の新国立子どもバレエとはだいぶ異なる演出で、観客参加型構成。ナレーターが登場し、
観客へ問いかけ子ども達から元気いっぱいな答えを導き出しつつオーケストラクイズやマイム講座を体験したのち、第3幕をほぼフルで上演する展開でした。
まず客電は明るいままにして1幕冒頭の曲が勇壮に演奏されたのち、最初に登場したのは劇団東俳Tプロジェクト所属でナレーターの関さん。
さすがは声のプロなだけあって子ども達の心の掴みも絶好調で幸先良い開演。
とにかく新国立劇場バレエ団の子どもバレエ史上、劇場内に最も声が響き渡る演出で
序盤は子ども番組の公開収録のような微笑ましい賑やかさに私も戸惑い新鮮な気分となりました。そうです、この企画の観客の主役は子どもです。
お誕生日の人いるかな??の問いかけに、ちょうど1週間前ならば私も挙手、と思ったのも束の間笑。(公演日程は獅子座の時期に入ってしまいました)
関さんが、僕の友達のジークフリード王子も誕生日だから皆でハッピーバースデーを歌って迎えようと声をかけ、観客斉唱するうちにやっとこさ王子ご登場でございます。

ところが王子は沈んだ浮かない顔をしながら登場し、関さんが大慌てで観客にも歌をやめさせます。
すると関さんが王子に話しかけ、回答はマイム或いは関さん自身が代理で声を出す流れかと思いきや、王子もたくさん喋る喋る。
好きでもない花嫁候補たちの中から結婚する人を選ばねばならぬ苦悩や、前夜に湖で出会ったオデットのことを
関さんが一時は聞き手に徹して王子が喋る喋る喋る。更にはミュージカルなどで使用される細い白いマイクが渡邊さんの口元に見え
台詞わんさかな点や、2ヶ月前に歌手や声優、宝塚系俳優と共演された『ラフマニノフの旋律』を鑑賞した経緯もあって
渡邊さんが2.5次元俳優に見えてなりませんでした汗。しかも、美声。ラフマニノフ、、、のときも喋りはありましたが
劇中の台詞ではなく最後の挨拶のみ。このときのスピーチは流暢とは言い難かったのですが
(失礼、でも周囲を立てる内容も一生懸命話していらして好感度大であったはず)
今回は渡邊さんの美声がオペラパレスに滑らかに響き、少々アニメの青年風な声色も魅力。尚且つ子供心を掴んだ関さんが作った空気を受け継ぎながらの会話のやりとりも
抑揚の付け方や、聞いて欲しいと強調したいときの視線の力強い向け方といいお手の物でした。

そして米沢さんも登場され、皆で出会いの部分のマイム講座を行い、向かって左に渡邊さん、右側に米沢さんが並び、お2人とも交互に台詞を言いながらマイム。
そこで客席を半分に分け、王子チームとオデットチームで交代でチャレンジ。
王子の場合はオデットが王女であったことを知ったときと失礼を詫びるマイムで、王冠をきっちりと表すのが意外と難しい。
加えて、失礼をいたしましたと渡邊さんが詫びるお辞儀がまことに美しく品が宿り、これは即座にはなかなかできません。
オデットは悪魔に白鳥に変えられてしまった悲しみを訴え、米沢さんの羽ばたく仕草が繊細でうっとり。そして声も優しく可愛らしい。
あっ、29日16時公演だったか、王子もちゃっかり一緒にオデットのマイムの参加していましたが笑。
そのあと、本公演式で踊りのみで出会いの場を再現。直前に見せてくださったお手本や観客自身でもやってみたマイムがバレエでいかに表現されるか
子どもたちも、大昔に子どもだった私も、一層興味を持ちながら鑑賞できました。

時間軸ずれますが、オーケストラ演奏説明や楽器紹介も子ども達の反応は上々。楽器を代表してオーボエとハープ紹介クイズでは前者はなかなか正解をもらえず笑
対して後者はクイズを出す前に当ててしまう子もいて、演奏家の方も大拍手。素直な反応が益々強まっていた気がいたします。
有名な情景の音楽を湖畔の場と、オディール登場時との聴き比べもソワソワ楽しく、
湖畔の場で流れるときのオーボエとハープの役目も実はこの日初めて知った次第。(オーボエはオデットの悲しみを、ハープは水面の揺らめきらしい)
何度も観ている作品でもまだまだ知りたい欲が増した、平均年齢を高くした客の管理人でございます。

そうこうするうちに手伝ってもらいながら関さんは儀典長の格好にお着替え。
続いて登場し、紹介されたベンノの木下さんもまたお辞儀や仕草が雄弁でとっても美しい。
そしていよいよ3幕が開幕。幕が開くと、特に28日(金)は大きな拍手が沸き、重厚な歴史絵巻な美術に圧倒された驚きに私も再び嬉しくなったものです。
本公演よりは人数は少なめであっても次々とそぞろ歩きで出てくるキャラクターの迫力は十二分。
花嫁候補が登場してちょこっとお披露目のみであったのが寂しく思えましたが、音楽の少々の省略はあっても民族舞踊はほぼ全部上演。
オディールと王子のグラン・パ・ド・ドゥはヴァリエーションは抜きで披露されました。
米沢さん渡邊さんともに互いに大胆な冒険に挑み品良くもダイナミックで、ベテランらしく完成度をぎゅっと濃縮。思えばお二人が白鳥の湖で組むのは初ながら、
力みなくされど高難度なテクニックやパートナーシップが冴え渡っていました。

その後オディールに愛を誓ってしまい、幕が下りると再び関さん登場。王子が騙されてしまったことを悔やみ嘆いていると何故だか王子が舞台を通過し、そしてUターンして舞台上へ。
突撃インタビューのように、心配そうに様子を尋ねると渡邊さん王子は走り込んできた直後もアスリートインタビュー以上に⁈綺麗な滑舌。
グラン・パ・ド・ドゥを踊りきった直後に舞台を袖から袖へ走ってからの台詞ですから、試合直後の放送席状態になったわけですが
息切れもさほどなさらずに、オデットの許しを得られた喜びを語ってくださいました。最後に結ばれた場面のポーズで締め、再び関さんの語りとカーテンコールで終演です。

もう少し踊りの場面もあればと思う節もあり。また王子の台詞が非常に多く、本来言葉を劇中では発しないからこそ従事なさる
声にコンプレックスを持つ舞踊家が配された場合どう対応するか、その辺りは気になった、
無声映画から有声映画に移り変わった頃の映画界を想像しつつ、子供の頃は映画館にて活動弁士の語りを聞きながらの映画鑑賞の疑念を抱かれたことは多々ある私でございます。

それはそうとこのエデュケーショナルは子ども達の反応が可愛らしく素直で、オーケストラのことなど大人の私も初めて知る事も多数あり。
何より渡邊さんの美声をたっぷり聞けた点も含め、予想外に楽しい企画でした。
尚、私は両回にて下手側の席であったため、(1回は王子椅子が近いからと舞台すぐそば、
もう1回は出先からギリギリ到着を想定していたためチケット切りの入口から近く、扉からすぐ着席可能なバルコニー迫り出し席を選択)
マイムは王子チーム配属。品格を維持しながら4階席の隅まで伝わるよう行うのがいかに難しいか、また男性パートを体験できたのも新鮮な収穫でした。





ホワイエにはピーター・ライト版『白鳥の湖』衣装を展示。



1幕ワルツ女性。模様のきめ細やかさ、重ね方に目を奪われます。



オデットと王子。王子の襷衣装もいつか展示を。観察したくなります。



オディール衣装、銀を基調に金も混ぜ入れた装飾の美しいこと。ゴージャスとはまた違う、手の込んだ内側から光る美でございます。



王妃様。威厳、重厚感を放っています。



オデットとオディールの頭飾り。オディールのデザインが細くも豪華な流線形でお気に入り、憧れます。装着できる日は、来ません!観るだけで楽しみましょう。



初日、マエストロへ。暑いのでスプマンテで、王子の台詞回しの如く爽快に乾杯!



平日ランチは前菜サラダはビュッフェ式。辛うじて綺麗に盛り付けたと思っております。



メインはランチでしか見ない!?特製ナポリタン。麺が太めでお肉もたっぷり。ミートソースに近かったか。
ライト版ナポリと同じく情熱的でエネルギッシュな味わいでした。



2日目は鑑賞前のお昼にオペラシティの難しい名称のお店へ。アボカドシュリンプトースト、レモンも絞って爽やかに。
こんもりニース風サラダもシャキシャキ美味しい。そしてビールをああごくごく。



レモンタルト。レモンの酸っぱさがしっかりと感じられる舌触り滑らかなタルトです。
コーヒーはカップが御茶碗型。ご飯茶碗ではない笑。友人はキャロットケーキを。
こちらの友人、米沢さん小野さんお2人ともお好きで新国立バレエの公演は大概1作品につき複数回はご来場。
昨年のジゼル10月23日公演にて、渡邊アルブレヒトの悪い男な造形にびっくりし、米沢ジゼルが余りに可哀想に思えて恨みが増したとか笑。今も話題になります。
まあ、2幕で改心したから安心したけれど、と後日ご連絡がありました笑。



情報センターのシアタールームにて過去の様々なバレエ公演上映。ちょうど立ち寄ったときは2019年シンデレラ、木村優里さん井澤駿さん主演映像上映中でした。
舞踏会パドドゥあたりから見始め、そうでしたこのときは渡邊さんが主演日以外はほぼ全て王子の友人役でご出演。夏の精カヴァリエとして大活躍でした。
プリンシパルの今はもうこういった、何処にでも出ます路線は無く、振り返ればプログラムに役名明記もない
ペトルーシュカでの途中から居眠りしてしまうお巡りさんは傑作なひょっこり役であったと記憶。またお目にかかれる日が到来しますように。
管理人、渡邊さんの美声の余韻に浸りつつ終演後はヘレナとハーミアの如く両腕を振りながらスタコラサッサとパリへ、ではなく上野へ移動でございます。


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