2023年8月24日木曜日

水と映像の活用効果 スワン・レイク・オン・ウォーター   8月12日(土)夕方公演




東京国際フォーラムにて、ウクライナ・グランド・バレエ『スワン・レイク・ウォーター』を観て参りました。
https://www.promax.co.jp/swanlakeonwater/

https://search.yahoo.co.jp/amp/s/spice.eplus.jp/articles/315998/amp%3Fusqp%3Dmq331AQGsAEggAID


テレビでの宣伝映像や、ハリコフ・オペラ・バレエに元々所属していたダンサー達が再集結してのツアー公演と聞いて興味を持ち足を運びました。
題名にもあるように、本物の水を用いての演出が見所と事前にチラシ等を読んではおりましたが正直無理矢理感があったのは認めざるを得ない印象。
水が登場するのは2幕の湖畔、第4幕でしたが、2幕では舞台一杯に水を張った池のようなスペースにオデットや王子、バシャバシャ音を立て飛沫を上げながら白鳥達が登場。
あれ?確かあらすじでは、湖から陸にあがってきたオデットが人間の姿に変えて云々のはずで、2幕はあくまで陸の上で物語は進行するんじゃあなかったか?
そんなわけで、やたらめったらにバシャバシャと水の中を、オデットならまだしも王子までもが歩き回る行動はだいぶ違和感を覚えました。
それならば何処で水を生かすか疑問になるわけで、オデットの登場では版によっては羽から滴らせた雫を落とす仕草がありますから、そこで少し噴射するか
大きな白鳥達の踊りでの音楽が高揚したあたりで吹きかけるなり(益々センスを疑われそうか汗)
ただ何れにしても、水を張ったスペースでバシャバシャ踊るのは首を傾げる演出に思えました。
しかし浅瀬とはいえ水圧で踊り辛い条件下であっても群舞は整っていて、防水加工したシューズで器用に踊っていました。
Sの字のそぞろ登場やオデットが王子の狩をやめさせるところからのワルツ、四羽の白鳥、コーダは概ねオーソドックスな振付であったかと思います。
ロットバルトもバシャバシャしながら踊っていました。

1幕3幕は王道スタイルで、ワルツや各国の踊りはベルベットな質感のカラフルな衣装でなかなか上質で、1幕トロワは3人とも上出来。
特に男性つまりベンノ?がすっきり端正で体型もシュッと締まり、ブルーの衣装もしっくり。最初こちらが王子と私は思い込んでおりました。
王子はややずっしり系な体格でしたが、浅瀬とはいえ水の中でオデットをサポート、リフトもこなしていただけあり、盤石ぶりには拍手。
オデット/オディールは(多分同じダンサー、配役表が無しであったため正確には分からず)
すらりとした長身で艶かしくしなやかな踊り、特に腕の雄弁さが目を惹きました。

背景は基本映像で、シャンデリアが上下したり、景色の色味が変わるのはまだしもスタイリッシュと思えたものの
白鳥達が飛んで行く群れはにほんむかしばなしや往年のバレエ映画を彷彿。オデットが白鳥から人間の姿になる箇所はアニメーションを駆使していたかと記憶しており、
そこはかなり凝った仕掛けだったか(初期のセーラームーンの変身シーンに似ていたかも)そのため登場シーンが今一つよく見えなかった気がいたします。

初めて観る演出目白押しでなかなか話に入り込めなかったのは正直なところです。しかし戦禍に見舞われ凄惨な襲撃も受けたハリコフのダンサー達が
生活だけでも精一杯でまだ満足な練習もできずにいるであろう状況下で、どうにか新たな出発を大作『白鳥の湖』の大胆な演出で
しかもオーケストラ演奏付きで踊る心境を思うと、またウクライナ国内でも団によるかもしれませんがチャイコフスキーのバレエが上演できないカンパニーもあり
そう考えると大きな箱の舞台でどんな演出であれ古典の白鳥全幕を踊り、観客から拍手を貰う時間は束の間の幸運なのかもしれません。

それから冒頭に記した通り、ハリコフの地名も今回関心を持った点の1つ。(現在は多くの媒体でハルキウと表記されています)昨年4月にめぐろパーシモンホールにて鑑賞した
私が幼い頃の恩師の1人であり、エヴァ・エフドキモワ記念エデュケーショナルバレエコンペティションの事務代表でもいらっしゃる
大串千恵子さん(通園していた幼稚園の園長先生のご一族で、私が唯一の全幕経験シンデレラは千恵子先生演出振付でした)が率いる
東京インターナショナルバレエカンパニーによる Bright Ballet Performance Peace for Ukraineウクライナに平和を公演にて鑑賞した『ラ・バヤデール』舞台装置が
ウクライナ人デザイナーのナディア・シェヴェツさんが手掛け、ハリコフの劇場で製作されたものでした。
太い曲線を生かした大胆なタッチで、彫刻の立体感の再現も十二分。樹木から長く伸びる枝の絡み具合が
お国は異なりますがカンボジアのアンコールワット遺跡や天空の城ラピュタを想起させ、圧巻のスケールだったのです。
元々ウクライナとの交流が盛んな団体で、そもそも舞台装置は2015年に上演した夏休み親子芸術劇場『ラ・バヤデール』全幕のために製作されたと昨春知り、
ハリコフの劇場と日本のバレエの団体が育んできた深い所縁に驚いたのでした。ですからこの『スワン・レイク・オン・ウォーター』を上演するウクライナ・グランド・バレエの元が
ハリコフの劇場と目にしたとき、記憶が脳裏を巡ってどういう演出であれ観たいと欲が募ったのは事実です。
劇場の再開や状況については把握しておらずですが、本来ならば優秀な団員やスタッフ、
衣装や装置も質の高いものを有する劇場であったのは想像でき、今後の活動再開は可能であるのか気がかりでなりません。

その他会場の雰囲気がいわゆるバレエやオペラを上演する劇場ではないため、休憩時間の案内するにも係員が拡声器を手に行うなど、
合同企業説明会やコミケ?思わすイベントホールな空気感があり、また配役表や簡単な案内手引き配布物も一切なし。
そこまで手が回らなかったのかもしれませんが、バレエを普段ご覧になっていない層も多かったと思われ
せめて簡単な冊子があれば尚バレエに興味を持ってもらう機会になったとは思えてなりません。

つまりバレエ初鑑賞、白鳥の湖をご覧になったことがない方もいらっしゃり、そういう方からすれば特に3幕なんて
いきなり民族舞踊始まって、白い衣装着た女性達が出てきて、黒鳥が来て、王子が懺悔していて、と展開されても何のこっちゃなわけです。
実は私のお隣の方がバレエ初鑑賞者でパンフレットを貰うなり買うなりしてあらすじ理解を深めようとしたら何もなく、
バレエ観たことあるなら白鳥の湖のあらすじを教えて欲しいと聞かれ、幕間に素人の私が講義。
「招かれざる客」など何処かで聞いた表現を用いながら説明し、新国エデュケーショナルが役立った有楽町の夜でございました。





帰りは地下鉄へ行くまでの通り道にある国際フォーラム内のお店へ。ささっと有楽町で食べましょう。
フランク永井さんの『有楽町で逢いましょう』、名曲です。お若い世代の皆様、ご自身でお調べください。
まずは白ワインで乾杯です。



ふわふわと羽のようなクリームがかかった生パスタです。



デザートはキャラメルソースのかかったバニラアイス。1玉かと思いきや大きめサイズが2玉。涼やかな喉越しでございました。

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