2023年8月15日火曜日

新制作を携えて ウクライナ国立バレエ Thanks Gala 2023夕方公演 8月5日(土)




8月5日(土)、ウクライナ国立バレエ Thanks Gala 2023夕方公演を観て参りました。
https://www.koransha.com/ballet/ukraine_ballet/thanksgala/

※キャスト等は光藍社ホームページより


第1部
「パキータ」
振付:N.ドルグーシン
オリガ・ゴリッツァ、ニキータ・スハルコフ ほか

昨年冬鑑賞時の『ドン・キホーテ』と同じ組み合わせの主役ペア。ゴリッツァとスハルコフ共に
大人な風格と、これ見よがしなことをせずとも端正で香り高い美しさを奏でるとても好きなペアで、この度も再び鑑賞でき嬉しい限り。
スハルコフの隙や粗を一切見せずに駆使するダイナミックなテクニックや安心感あるサポートも一層冴え渡っていた印象です。
パ・ド・トロワのミクルーハ、パンチェンコ、パスチュークの3人が音楽と楽しそうに語らうように踊る姿にも頬が緩み、されどポーズ1つ1つや着地に至るまで盤石さも十二分。
特にトロワは発表会の大定番ですが、こうも格のある踊りになるのかと息を呑みながら眺めておりました。
コール・ドもよく整っていて、主役もトロワ陣も含め全員の基礎力が高くそしてそこからぱっと華やぐ香りが漂い、エレガントな祝祭感を堪能です。


第2部
「森の詩」よりパ・ド・ドゥ
振付:V.ボロンスキー
イローナ・クラフチェンコ、ヤロスラフ・トカチェク ほか

2017年のバレエ団創立150周年ガラで観て以来。この団ならではの作品ですから抜粋であっても再演を待ち望んでおりました。
白いクラシックチュチュの雪の精達の群舞を交えながらのパ・ド・ドゥの振付は観ているこちらも不思議な森に迷い込んだ心持ちに。
幻想的な中にも技巧の見せ場もあり、終盤対角線に並んだ雪の精達が隊列を移動させる形の中で
マフカが回転を行っていく箇所は舞台移動の変化観察が面白く、全編観てみたい作品です。
クラフチェンコが艶やかさと儚さが溶け合う神秘的なオーラを纏う森の妖精マフカ、トカチェクのルカーシュは朴訥とした青年ぶりもよく似合い、
別世界へといざなわれそうな森の木々が描かれたエメラルドグリーンを基調とした繊細な背景も見所でした。


「Ssss…」より
振付:E.クルグ
アナスタシア・マトヴィエンコ、デニス・マトヴィエンコ
【演奏(Pf)近藤 愛花】

久々に観たマトヴィエンコ夫妻、アナスタシアさんは以前よりパワーが増して力強く刻むように身体を操る踊りに釘付け。
デニスさんも年齢と共に強靭さが倍になっているのか、しなやかさはそのままに小刻みに痙攣するような動きも全力で披露。
静けさの中からお2人のパワーが咲き乱れる作品でした。新国立劇場バレエ団のシーズンゲストとして
長年あらゆる作品に客演されてきたデニスさん、まだまだ踊れそうな逞しい勢いです。


「シルヴィア」より
振付:J.ノイマイヤー
シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

お2人の『シルヴィア』パ・ド・ドゥを観るのは2015年の世界バレエフェスティバル以来!?ハンブルクバレエも世代交代が進んでいると思われ
この組み合わせではもう目にする機会はないかもしれないと心の何処かで思っておりましたので思いがけず鑑賞が叶いました。
互いに少し手を翳したり、ふと静寂に包まれている時間でさえ磁力のような糸で繋がっていると思わせ
音楽に呼応しながら伸びやかに絡む身体から何処かほっとした安らぎが滲み、手を合わせる思いで見つめてしまいました。


「ファイブ・タンゴ」
振付:H.V.マーネン
オリガ・ゴリッツァ、ニキータ・スハルコフ ほか

どうしても観てみたかった作品。新国立劇場で上演予定が2回飛び(次こそは上演求む)先にウクライナ国立公演で観る運びとなり
あえて予習はしていなかったため予備知識なく、ピアソラの音楽構成だから間違いはないであろうとぶっつけ本番鑑賞で臨みました。
『パキータ』でも触れた通りとにかく全員の基礎力が高く、癖のない美しい踊りが持ち味であるダンサー達の身体はタンゴにも柔軟に対応でき
クイッと捻りある振付やキレキレな美で大人の色気や情熱をムンムンと醸していました。
特にスハルコフのソロでは行き届いた身体のコントロール力が更に発揮され、ときめきはしないのだが(失礼)
タメの効かせ方や見せ方に思わず歓声をあげそうになったほど。実際複数のエリアから黄色い歓声が響き渡り、納得でございます。
前回のドンキを観たときも、状況を考えるとバレエ団全体のレベルの高さの維持に驚かされ
余計なトレーニングをしていないためなのか真っ直ぐな脚線など身体の条件もきちんと調整されていて、基礎鍛錬の行き届きがこの度も窺えました。

さぞかし上出来な仕上がりになるであろうと期待は寄せておりましたが想像以上で
同時に新しい作品に取り組む喜びがこれでもかと伝わり、新制作の成功を心から祝します。

終演後はトークショーがあり、司会進行は桜井多佳子さん。まずは寺田宜弘監督へ、その後はリアブコとデニス・マトヴィエンコも登場してのお話が繰り広げられました。
戦争が続く辛い状況下でも団員が戻ってきてくれたり、日本からの義援金で『ファイブ・タンゴ』や『スプリングアンドフォール』といった
新作上演や衣装の制作にも漕ぎ着けた喜び、若手ダンサーの台頭等、前進し続けるバレエ団の今を誇らしく語ってくださり、
次回来日上演される『雪の女王』の解説もあって冬の来日が益々楽しみになりました。
リアブコとマトヴィエンコを交えたお話では、バレエ団への惜しまぬ協力や寺田さんの活動を讃えては
今度は寺田さんがリアブコのバレエ学校時代での練習から既に芸術家な一面が覗けたエピソードやのちに主演舞台の『椿姫』を観たときの衝撃や客席の様子
ウクライナの男性ダンサーの1つの転換期ともいえたマトヴィエンコの非常に高いテクニック特に回転技術等、お2人を讃え始めると止まらなくなり
(新国立劇場に客演されたときのノリノリバジルや空中回転で延々と移動していきそうであったソロル等強烈であった記憶あり)
3人が互いを尊敬し合いながら今は力を持ち寄ってバレエ団の活動を支えていらっしゃるお話にただただ拍手を送るしかありませんでした。
一番の望みは戦争の終結。たた終わったとしてもその後も難しい現実を突き付けられる日々は続くと思われ、
今日が終戦記念日である日本は78年が経っても、癒えぬ傷や未解決の問題もまだ多く残されています。
厳しい状況下であってもバレエ団が更に前進し芸術の灯火が消えぬよう願ってやみません。





展示のパネル。昨冬のスハルコフさんバジルを思い出します。



展示のパネル。昨夏のガラを思い出します。



今冬の来日公演の宣伝と、今回は涼を求めての効果も大であった『雪の女王』パネル。コール・ドも美しそうな作品です。



帰りは新橋にあるスマチノーゴへ。ウクライナから避難されてきた方々が勤務されています。内幸町や虎ノ門駅のほうが近いかもしれません。
カトラリーの金と水色が綺麗。スタッフの方々は日本語を丁寧にゆっくりと話してくださり、とても一生懸命です。
団扇を眺めていたら、発音の仕方を優しく教えてくださいました。まずはウクライナの赤ワインで乾杯です。渋みと深みがあって美味しい。



鰹出汁を使ったボルシチ、さっぱりされど味わい深い。お替わりしたかったくらい笑。黒パンは見た目以上に中身が香ばしくぎゅっと凝縮。食べ応えありました。
前菜の盛り合わせ等、他にも惹かれるメニュー多数。また行きたいお店です。



雪の女王の漫画案内本も配布、わかりやすい、そして観たくなる。通信教育学習資料宣伝送付物の付録本を思い出します。
そしてバレエ学校時代のお話が出ましたので80年代後半のバレエ雑誌に載る生徒時代の寺田少年。
テストのお話やバレエ学校の地方公演メンバーへの選抜の喜び等が綴られています。脚線が美しい。
ソ連時代の留学生活について一般読者が知る貴重な情報源であり、苦しいこともさぞ多かったに違いないでしょうが、
地道に練習を重ねて卒業し入団、そして現在はバレエ団の芸術監督。リアブコとマトヴィエンコがひたすら敬意を表し続けていたのも納得です。


0 件のコメント: