2022年12月27日火曜日

スハルコフさんのバジル   ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)『ドン・キホーテ』 12月26日(月)




12月26日(月)、ウクライナ国立バレエ団(旧キエフ・バレエ団)『ドン・キホーテ』を観て参りました。
 https://www.koransha.com/ballet/ukraine_ballet/  

キトリ:オリガ・ゴリッツァ
バジル:ニキータ・スハルコフ



年末月曜日の夕方5時開演でしたがニキータ・スハルコフさんのバジル観たさに早退して行って参りました。大正解!
ゴリッツァのキトリは大人びた色気とお茶目な可愛らしさ兼備のチャーミングなキトリで
上は黒、半袖部分は網網でスカートは段々状の赤、といった明快な色合わせでもそうだ私はこのオーソドックスな色味が好みであると再確認させるほど
きびきびとした踊りや豊かな表情、1幕ソロでの空気を裂くようなシャープな姿も目に刻まれました。

そして最大のお目当てスハルコフのバジルは、四コマ漫画、時には重厚な古き良き装丁の文芸作品かと変化に富んだ青年で、「笑撃」が止まらず。
私にとっては数少ない海外の男性ダンサーの中で(国内も同様か汗)3本指に入るダンサーで(但し国内の東西のお2方と異なりときめきはしないのだが)
夏のキエフバレエガラではアフタートークまで聞いてきたわけですが、そのときの生真面目風味な語り口と表情からは到底想像がつかぬ
お茶目な雰囲気や、大柄な身体であってもアレグロであれアダージョであれコントロール力が自在である点、
キトリと一緒に小ジャンプのときも身をちょこっとすくめてすぐさま同じ距離感で跳んだりと調和し、驚倒仰天の連続でございました。
また夏のガラにおけるソロルやアクティオンでも感じましたが、超絶技巧系統の振付や役柄であっても品格は維持しつつ(これ大事!)様々な楽しい膨らましを見せてくださって大感激。
中でもキトリ友人とのトロワでは、通常とはやや異なる、序盤は左右に大ジャンプをしてから背中を反らせるランベルセに入る流れであって
音からはみ出ず切り替えも実に巧み。勢い任せに見得を切りがちな最後のポーズではやんわりと優雅に手を掲げてあっと驚かせ
実にエレガントな締め括り。あくまで品良く見せて客席をどっと沸かせる術に驚嘆でございました。
今夏の亀有における田北志のぶさん指導のオープンクラス発表会に特別出演されたときのウィンナワルツもお洒落で素敵でしたが
(加えてシルヴィアの曲にのせたフィナーレの回転の並びと言ったら盆と有休同時到来な歓喜であったのがもう4ヶ月も前か)
全幕バジルの剽軽な面から格式ある結婚式まで、品性を保ちつつあらゆる色を示して展開していく全幕でのお姿を目にできたのは大きな喜びです。

本拠地が今もなお痛ましい状況が続く事情から来日出演者人数は最小限にとどまっていたと思われ、1幕は街の人々兼セギリディリアは男女8組のみ。
売り子もおらず、ロレンツォの宿屋の食堂?も飲み物のみで東京文化会館大ホールの広さでは物寂しいかと思いきや序盤で打ち消され
とにかく1人1人の人間力の振り幅の大きさが爽快なバルセロナの活気を盛り立てていた気がいたします。
酒場の場面もひっそりとした重厚な空間ではなく、海が見渡せるオープンテラスにテーブル1台で駆け落ちには不向きとは思ったのも束の間。
キトリの色っぽさ振りまく扇子仰ぎやワイン飲み過ぎバジルを始め、闘牛士達もわいわい賑やかに盛り上げ係を担っていて
店員がいなくても、飲み物のみで生ハムもパンも果物も無くても、きっとセルフサービスの店で(人件費抑制のため最近増えておりますが汗)
皆で愉快な時間を過ごしているのであろうと想像。店主もおらず、狂言自殺の罠には待ったロレンツォを誰が慰めるのかと思ったら
エスパーダがなだめ係を担い、しかも音楽の拍子に合わせてロレンツォのグラスにワインを注いで乾杯したりと僅かな間であっても息を合わせて踊っているようにも見え
そしてロレンツォはキトリとバジルを両肩に抱き寄せ前に進み出たところで幕が下りる、それはそれはほっこりとする幕切れから結婚式へと繋ぎました。
実のところ、全幕をオーケストラ帯同で持ってきてくださるとはいえウクライナ国立バレエの『ドン・キホーテ』上演は当初はそこまで気乗りしなかったものの
祖国や故郷、本拠地の苦しい厳しい状況を思わせぬ、全身で屈託なく笑い踊るダンサー達を観ているとドンキを持ってきたのは正解だったのかもしれないと思う夜でした。

管弦楽団の演奏を聴けたことも喜ばしく、キトリの1幕ソロでは聴き慣れたものよりも更にカスタネットの台数が増加したようにも感じられ、
ピットの中で複数頭のラッコが一斉に貝を割って食事しているのかと思ったほど。
カチカチと複雑な音色を奏でていた気がしてならず、面白味が詰まった演奏を聴けた良き体験でした。

3幕はロレンツォ達が登場せずあら寂しいと思ったら、フィナーレではロレンツォやガマーシュも森の女王もキューピッドも皆でお祝いに駆けつけ、晴れやかに終了。
1階席はほぼ総立ちで、出演者と観客がずっと会話を交わしているが如くカーテンコールも鳴り止まず。困難な状況下、来日にただただ感謝ばかりが込み上げてきます。
  戦争が終結し、平和な国ウクライナに戻って欲しいと願ってやまず。全幕を持ってオーケストラ帯同で大変な最中に来日くださった喜びを胸に劇場をあとにいたしました。




美しいパネル。青や透き通る緑を基調にした夢の場の涼やかさも満喫。



CHINTAIのマスコット、チンタイガー。寅年の今年も間も無く終わり。
夢中に撮影していたら、あらゆる団の鑑賞に足を運ばれている関東各地の劇場で遭遇率1位なお方に見つかった笑。
今年もありがとうございました。



帰りに立ち寄り、ボルシチ。寒い夜に嬉しい、好物です。



何度か飲んでいる、ワイン使用ジャム入り紅茶もほっとする甘さです。
バレエ団の歴史についても詳しく書かれたプログラムで、まだ鑑賞歴の浅い管理人はタヤキナやスモルガチョワ、
ヤレメンコやクシネリョーワあたりからしか知らず。じっくり学びたいと思います。

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