8月14日(日)、大和シティー・バレエ2022 想像×創造『百華繚乱』 続・怪談『牡丹燈籠』『雪女』『耳なし芳一』『死神』を観て参りました。
第2部の続・怪談では2020年の上演4作品を他の振付家によって新制作する非常に面白い角度で迫る企画です。
https://www.ycb-ballet.com/2022summer
続・怪談4作品のリハーサル映像。
雪女。このお二方の主役共演を夢見ておりました。
※先に申し上げておきます。怪談の4作につきましては原作に対する知識不足により、大変単純な感想しか挙げておりません。
教養無き人間と言われたらそれまでではございますが、作品を深く掘り下げてのレポートをお読みになりたい方は、知識教養を備えた他のブログ等をご覧くださいませ。
百華繚乱
振付:草間華奈
女性は花そのものな風情の柔らかでカラフルな長いチュチュ、男性は陸上選手が透け透け素材の競技用ウェアのまま
胸にコサージュ付けて卒業式に臨む趣きな不思議衣装でしたが、バッハの曲の組み合わせの妙も光り、集合体から次々と繰り出される踊りの数々にうっとり。
上階にて観たら、花々が咲き誇る広がりの形がよりはっきりと見えた気がいたします。(今回は至近距離重視での座席選択でしたので仕方ない笑)
幕開けがブランデンブルク協奏曲第3番ト短調で、私の中のバッハお気に入り曲2作のうちの1作であるため既に狂喜乱舞寸前で
振付はネオクラシックな風味でたっぷり詰め込まれていながらも踊りこなせる技量の持ち主ばかりであるため1人1人から快い香りが立ち込めてくるような気分。
もう1作は2つのバイオリンのための協奏曲ニ短調で、バランシンのコンチェルトバロッコが刷り込まれている曲にて男性陣が一斉に踊り出す光景が鮮烈でした。
全体を通して想像以上にスケールある作品で見どころ溢れる振付でしたが、中でも主軸を踊られた
菅井円加さんの、前日のNHKバレエの饗宴におけるパ・ド・カトルやドン・キホーテとは打って変わっての緩急自在な踊り方、
孤高に見えつつも周囲とも調和し優しくも大輪の花を咲かせるが如きオーラを内側から発していて
バランス1つにしてもふと情感を覗かせ幸福をもたらす姿に目を見張りました。ただ明朗なだけでなく時折物憂げな表情やしっとりと奏でる踊りにも魅せられた次第です。
そして先にも述べた通り着こなしが難しい妖精と陸上選手の間を右往左往する風な男性衣装を
(昨年のハワイアンセンターに引き続き、大和シティーは男性陣の難関衣装限界挑戦が恒例なのか)
悟空も仰天、限界突破を果たしていたと見受けられたのは渡邊さんご兄弟。特に峻郁さんの、長身であっても花の妖精さんにも見え
恵まれた長い手脚の体型のみならず音楽といたく楽しそうに戯れ且つ一音一音を大切に捉えて全身で振り幅を豊かに体現、躍動なさっていた印象です。
ところで違っていたら失礼、『百花繚乱』ではなく華の漢字を用いたのは草間さんのお名前に由来かもしれぬとも想像。
また随分前に遡りますが、草間さんのお名前を初めて目にしたとき草月流華道がすぐさま思い浮かび、勿論関係性は無いのでしょうが
いずれは花に関する作品を振り付けられる日の到来を予想はしていただけにこの度の作品、
しかも心から尊ぶ舞踊家がご出演。我が心も花満開となったのは言うまでもありません。
草間華奈さんのSNSより、集合写真。衣装にもご注目ください。
プロデューサー佐々木三夏さんのSNSより。舞台映像を少し公開してくださっています。
他作品の舞台、リハーサル映像も色々。
続・怪談
牡丹燈籠
振付:櫛田祥光
曲:松田幹 堤裕介
紫色の着物な衣装に身を包んだお露を木村優里さんが妖艶に怪演。木下嘉人さんの新三郎を襲う姿が恐ろしく力強くも我が物にしたい一途な心も見えかけました。
池ヶ谷奏さんのお米が大変いじらしく、お露に引き寄せられ歯止めが効かない新三郎を取り戻そうと必死に縋り付く様子を大胆に斬り込むダンスで訴え、
新三郎は拒み、そこへお露が立ちはだかる息詰まる展開が繰り広げられました。
欲を申せば、下手側の畳上の1箇所で固まり団子状態な濡れ場が続いてしまったため、舞踊の割合が増えたら尚良かったかと思います。
ある瞬間には緊迫宿る立体的なポージングもあれど、結局は濡れ場として長引いていた印象が否めず。
みるみると自身のもとへと引き摺り込んでいくお露のおどろおどろしさと、追い詰められる新三郎とお米の切迫感の
双方を表していた、ずしっと接近する群舞の効果は宜しうございました。
雪女
振付:池上直子
本島美和さんによる雪女の人間離れした幽玄な妖気、美しさに感嘆。何度肌が凍りついた或いは絹の感触が伝ったか分からず
白い着物を纏った近寄り難いほどに神々しく威厳ある姿や鋭く冷徹な眼差しに、裾を持っての振り向きにも溜息が何度も零れました。
おゆきとして現れ男と再会し、ほのかな橙色を帯びた着物を身につけ束の間の一家団欒な光景が後の展開が分かるだけに幸福な場面ながらかえって胸を締め付け
子供達を守りつつ逃げ回る男と雪女の狂気の呼応が背筋が寒くなる凄まじさ。
惹かれ合うも命の危機に身を晒す男を渡邊峻郁さんが自在に体現され、手の翳し方や目の交わし方の全てが繊細に訴えかけ胸を静かに揺さぶられるばかりでした。
振付はコンテンポラリーがベースで時には突拍子もない脚の振り上げや重心を下に落としての動きもあったりと多彩に富み、
雪女に惹かれていく恋心や戸惑い、果てには凍らされ倒れ込む姿までを語り尽くす渡邊さんの心身の可動の豊かさにもたまげました。
本島さん渡邊さんともに腕や指が長く僅かな仕草でも心情を細やかに語り、加えて四肢の動きも雄弁で品ある慎ましさも兼備。物語の世界観に相応しいお2人でございます。
当ブログでは何度も取り上げておりますが着物雑誌及び『竜宮』にて着物が違和感無く絵になるのは証明済である渡邊さんによる和物作品を
今年も鑑賞できた喜びは大きく、深々腰下げて次の作品の福田紘也さんに扇子を渡す所作も自然体。
更には念願であった本島さんと渡邊さんの主演共演も実現。神秘的な美の極致なる並びに目が眩み、深みある表現者ぶりにも感激です。
今年6月の本島さん退団公演『不思議の国のアリス』での花束贈呈式におけるハートの女王様と忠実にお仕えする家臣のやりとりから早2ヶ月、
和物作品共演はそれはそれは歓喜いたしましたが、重厚な洋物での共演も夢が膨らみ
我が夢は『トリスタンとイゾルデ』。実写版を思い出しては主役2人の生い立ち含め、危うい道へと外れていき複雑に織り成す心情の絡みと言い役柄に嵌ります。
既に脳内再生回数が急上昇のため、次行きます。
耳なし芳一
振付:福田紘也
音楽:平本正宏
坊主に上は裸体でゆったりした青く長いパンツ?姿で登場した宇賀さんによる住職に仰天、しかし舞台の支配力が盤石。
宇賀さんの主役級での出演作品鑑賞はひょっとしたら2014年故郷でご出身の高知県のスタジオ記念公演『ドン・キホーテ』以来と思われますが
周りを福田圭吾さんや小野寺雄さん渡邊拓朗さんといった個性強き軍団に囲まれても一貫してどしっとした構えで臨む姿で、良き意味で裏切られた思いでおります。
朱色の衣装で身を固めた五月女さんの奇怪な役どころも目に留まり、平本さんが手掛けられた
琵琶の振動を思わす調べも摩訶不思議な世界へと一段と迷い込ませ、聴き入っておりました。
死神
振付:竹内春美
音楽:Wojciech Kilar
NHK番組の古民家カフェを巡るふるカフェのはるさんこと渡部豪太さんが今年も登場。(渡部さんではなく、はるさんの印象が今も強し)
一番難解に思えてしまい、鑑賞眼の無さが原因であるのは承知で展開が把握できず混乱してしまいましたが
盆子原美奈さんの妖しい存在感、小出顕太郎さんの有無を言わせぬ分け入り方もはっとさせる刺激効果。
本にも目を通し、題材の知識を頭に入れておきたいと反省でございます。
4作異なりながらもキーパーソンが扇子をバトン代わりに次作品の人へ手渡す演出は、全体の繋がりが見えて面白味があり
怪談開演前には徐々に鈴の音が鳴り響いてくる演出も外の暑さから別世界へと誘われる効果を与え、名案でした。
バッハの調べにのせて華やかに咲き乱れる『百華繚乱』、話の土台の知識不足によりしっかりとした理解には至りづらかったものの
今回は4作とも冗長な箇所見当たらず、背筋がゾクゾクする怪談4作の日本の夏ならではの構成でした。
怪談シリーズ継続か、拡大して学校の怪談も取り入れるのか(それはないか)さておき、
オリジナル新作が誕生し披露されるバレエ界と大和市での夏の風物詩として来年以降も続けて欲しい企画です。
カーテンコールは撮影タイムあり。時間の都合上、及び私の執念も限りがありますため上手側の一角しか撮影しておりません。悪しからず。
当ブログは関西、四国地域からお読みくださっている方もいらっしゃり、私自身鑑賞を通して西日本各地で知り合った方が何人もいます。
福田圭吾さんは、木下嘉人さんは何処や、とのお声が聞こえてきそうでございますが1枚も撮れておりません汗。ご自身で検索願います。
今年も渡邊さんの和物バレエを拝見でき、ああ幸溢れる夏の夜。
百華繚乱のアレンジメント。カラフルな花々が咲き誇っていました。そして子供の頃にバスの車内放送にて暗記してしまった
(学業成績は底辺族、最下層民であったが学校生活には決して役に立たぬ事柄は好んで覚えていたらしい)
四季折々の花が咲き競う2万坪の別世界、が宣伝文句の運動練習場を懐かしく思い出した次第。
そういえば数年前のバレエ鑑賞講座の集まりにて四字熟語占いなる話題となり「百花繚乱」と回答した方がいらしたと記憶。
回答者の人生観に結び付くものらしく、美しく華やぐ心の持ち主であろうと容易に思え
対する私は咄嗟に浮かんだ「清廉潔白」となぜだか回答。我が身には全く不釣り合いなたいそうな発言をその節は失礼いたしました。
宝満直也さん振付『美女と野獣』の衣装展示。ベルの衣装の繊細な模様、色遣いに見入るばかり。
DVDも保有し携帯電話の待ち受けロック画面にも設定しているほど南仏で制作された思い入れが余りに強い演出があり
宝満さん版の公演鑑賞は行かずにおりましたが、配信で視聴したところショスタコーヴィチ作品からの選曲も振付もいたく面白く冗長な部分も皆無。再演時は参ります。
大和シリウスへ行く前に立ち寄ってみたかった駅から会場への途中に位置するおかげ庵。しかも和物メインな公演ですから、早めに行って甘味を堪能。
整理券を取り待っていると、あちこちの劇場でお世話になっている方と遭遇。一緒に期待に胸を膨らませておりました。
その方はぜんざいとわらび餅、『雪女』が楽しみで仕方ない私は梅味のかき氷。
かき氷は久々に味わいましたが(2011年酷暑の徳島バレエ鑑賞以来か。鳴門の渦潮見学帰りでございました)
なかなか溶けず、サクッと冷たい舌触りが継続。梅シロップをかけるとほのかな橙色を帯び、中間部における雪女の着物の色に似ておりました。
帰りに作品を彷彿とさせるラベル、銘柄の日本酒を近所で見つけ帰宅後乾杯。
本島さんと渡邊さん、心から好きな2名のダンサーの主役共演しかも初演の創作作品での実現の嬉しさや神秘的に美しい並びの余韻に何時間も浸っておりました。
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