2022年8月29日月曜日

方向転換で即完売  NHKバレエの饗宴2022 8月13日(土)





8月13日(土)NHKバレエの饗宴2022を観て参りました。今年は例年通り渋谷のNHKホールで開催です。
https://www.nhk-p.co.jp/ballet/index.html


Variations for four
振付:アントン・ドーリン
音楽:キーオ
厚地康雄(元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
清瀧千晴(牧阿佐美バレヱ団プリンシパル)
猿橋賢(イングリッシュ・ナショナル・バレエ ファースト・ソリスト)
中島瑞生(新国立劇場バレエ団アーティスト)※2022/2023シーズンよりファースト・アーティストに昇格

冒頭にて4人揃って黒マント舞台に佇み、一斉に取り外すと地、風、火、水を模したクラシカルな衣装姿でお目見え。 男性版『セーラームーン』といったところ、かと思えば男性版パ・ド・カトルらしい。
4人で踊る箇所はややばらけた感はあったものの、所属が異なる男性ダンサーが集結し1つの作品を踊る機会は稀に発表会ではあれど滅多にお目にかかれず
第一線で活躍中の方々ですから惑星の集いなる雰囲気を堪能。題名の通り各々ヴァリエーションも用意され、
中島さんはだいぶ緊張なさっていた感がありましたが主役級クラスに交じってただ1人コール・ドの1つ上のファースト・アーティストながら堂々たるもの。
厚地さんは腕運びやエレガントな魅力が引き出されていた気がいたします。


パ・ド・カトル
振付:アントン・ドーリン
音楽:プーニ
中村祥子(Kバレエカンパニー名誉プリンシパル)
水谷実喜(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
                         菅井円加(ハンブルク・バレエ団プリンシパル)
永久メイ(マリインスキー劇場バレエ団ファースト・ソリスト)

初演時の名花競演な色が濃く、余程のメンバーが揃わないと見栄えせず冗長な印象しか残らぬ作品ですが
吉田都さんと酒井はなさんの共演が実現した2017年の石神井バレエ以来であろう壮観な光景が渋谷に登場。
女王然とした中村さんが目配せした途端に空気が締まる優雅なリーダー格で、ポーズの1つ1つが伸びやかな余韻残す麗しさを造形。
そんな中村さんにお仕えするように菅井さんの奥ゆかしい慎ましさが意外な発見で
床に優しく挨拶するようなゆったりとした脚の出し方にも見惚れ、ピンクの花冠姿が妙に愛らしくこれまた新鮮でした。
4人で踊る場も息が合い、互いに目をしっかりと交わしては誇り高くも和を重んじる美しさを全員で紡いでいた印象です。異なる所属の名花達の集結は胸躍る並びでした。
冒頭では背景に初演時の絵が映し出されたのち、2022年夏の渋谷に登場した4人の姿に光が当てられる演出がパ・ド・カトル史の変遷を覗いている心持ちとなり、良案。


牧神の午後への前奏曲
振付:平山素子
音楽:ドビュッシー
フルート:高木綾子
小㞍健太
柴山紗帆(新国立劇場バレエ団ファースト・ソリスト)
飯野萌子(新国立劇場バレエ団ソリスト)

 大きな鏡を用いた演出がなかなか面白く、青年の小㞍さんとニンフの2人が交互に摩訶不思議に映っては消える展開に見入りました。
ニンフの白いスカートにオレンジ色であったかカラフルな色味を加えていた衣装もユニーク。
繊細な青年がニンフに静かに絡み取られても歩みを止めず何かを探し出そうと藻掻く姿を描いているのであろうと想像が広がる作品です。
ただ紅白歌合戦でも使用されているほどの規模である横長なNHKホールには馴染みにくい作品であったかもしれません。テレビ放送時にじっくりと視聴予定でおります。


ウェスタン・シンフォニー
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ケイ
スターダンサーズ・バレエ団

スタダンが上演を重ねており賑やかな愉しい作風で、これまでと違いNHKホールの大箱ではどう印象が変わるかも興味津々でございました。
横幅が長過ぎる感はあったもののスイングドア(左右両側にパカンと開く西部劇で目にするドア)が描かれた酒場の背景に現れると心浮き立ち
中でも喜入さんの脚先や手先からも繰り出される芳醇な色気がまさにショーを見ている気持ちにさせました。
形式はシンフォニー・イン・Cと似て楽章ごとに男女ペアのプリンシパルとコール・ドを配した
構成はかっちりとしていながら振付はより解放感や奔放度、自由度が増していてフィナーレは全員回転したまま閉幕。
『赤い河の谷間』等耳に残る選曲も親しみやすく、これからもスタダンの人気演目として上演を続けて欲しい作品です。


「ロメオとジュリエット」からバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:レオニード・ラヴロフスキー
音楽:プロコフィエフ
永久メイ、ビクター・カイシェタ(マリインスキー劇場バレエ団セカンドソリスト)

マリインスキーで活躍してきたお2人がラヴロフスキー版を披露。白い衣装を纏った永久さんの清麗で気品を備えた姿が夜空に輝く静かな月を彷彿。
カイシェタさんとの化学反応はそれはそれは純粋な甘美に溢れ、恋を知った若者の怖いもの知らずなときめきが発生。
決して派手な技巧が散りばめられているわけではない振付であってもお2人が丁寧に紡ぎ上げる愛情の強さが広がり、全幕を観た気分となりました。


「ドン・キホーテ」からグラン・パ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー
音楽:ミンクス
出演:菅井円加、清瀧千晴

ひょっとしたら、王道古典のパ・ド・ドゥを踊る菅井さんは初見。(ドリーブ組曲は2019年に観たが)さりげなくチラリと盛り込んだバランスや扇子使いの妙技に仰天し
脚腰が相当強靭なのか助走や踏み込みが見当たらぬ状態から跳ね上がる箇所多数。
しかし誇示は一切無く、一見淡々されど中身は職人芸の塊な踊りに天晴れでございました。
清瀧さんは菅井さんに押されてしまうかと思いきやサポート時もどんと構えて安定。珍しい組み合わせを味わえたのも饗宴ならではでしょう。


Andante
振付:金森穣
音楽:バッハ
バイオリン:小林美樹
中村祥子、厚地康雄

中村さんからの願いで実現した金森穣さんの新作で、音楽はバッハヴァイオリン協奏曲第1番イ短調第2楽章。
中村さんと厚地さんがお互いに歩み寄っての呼吸の合い方や身体の重ね方のフォルムまで美が宿り、
最後は光の道を一歩一歩ゆったりと誇らしく踏み出していく姿が崇高なオーラを放って胸にしんみりと響くものがありました。

昨年は神奈川県民ホール開催で1席置きの配席でも当日券に余裕があったりとここ最近集客にも苦戦していたこの公演、
だいぶ方向転換した企画が当たったのかこの公演でしかお目にかかれそうにない活動拠点の国や所属を超えた組み合わせや
ベテランの域に達しているダンサー同士の初ペアと新鮮味が戻ってきた気がいたします。
帰宅時は暴風雨となってしまいましたが、会場近くに停留所があるハチ公バスを利用し帰りの電車利用のために出向いた初台では
代役で王子役を任された吉留さんのプリンシパル昇格を舞台上で発表され、渋谷区内では
大型公演が3本(シティは昼夜公演で昼はパリ・オペラ座組客演、夜はスウェーデンから佐々さんとシティのキムさんの直前降板により急遽吉留さん)
重なった外は大荒れ模様の1日でございました。もう時間がかなり過ぎてはおりますが、お出かけになった皆様及び舞台制作に携わった皆様、ご無事でありますように。
尚、テレビ放送は2022年9月18日(日)とのこと。是非ご覧ください。




パ・ド・カトルが面白い珍しい顔合わせで印象に残り、優美なピンク色のロゼスパークリングワインを購入、帰宅後乾杯。

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