2022年9月29日木曜日

正確無比から生み出される極上ずっこけ芸術   スターダンサーズ・バレエ団   The Concert  スコッチ・シンフォニー/牧神の午後/コンサート(国内バレエ団による初演) 9月23日(金)




9月23日(金)、スターダンサーズ・バレエ団『スコッチ・シンフォニー』、 『牧神の午後』、The Concertを観て参りました。
https://www.sdballet.com/performances/2209_theconcert/


『スコッチ・シンフォニー』

スコッチガール塩谷綾菜さんの脚技の軽快感に見入り、強弱緩急を音楽と溶け合いながら奏でているような脚先の達者ぶり。
渡辺恭子さんと池田武志さんのパ・ド・ドゥがしっとり優しい雰囲気を備えて緻密に練り上げられ、
バランシンのシンフォニーシリーズにしてはしては快活な場面が少なめな(勘違いでしたら失礼)冗長にもなりかねない作品ながら
以前の鑑賞時よりも主演陣もコール・ドも立体感が一層出てきた印象です。



『牧神の午後』

ロビンズ版は初鑑賞。書物においても意識して目にしたのは厚木三杏さんの写真ぐらいかもしれません。
髪を垂らして舞台後方を横に歩み行く姿から喜入依里さんの艶と豊潤な色香が静かに迫り、稽古場という密閉度のある空間に設定しているーためか
ほんの少し微笑む程度であってもこちらまでもが理性がふと抜けるような不思議な感覚をもたらしました。
そして林田翔平さんが見事役に嵌り、夢うつつな戸惑いを静寂の中で熱さを帯びたり、
時には女性の魅惑に抗えぬさまを規律正しくも境界線からのはみ出しぎりぎりまで追い詰められているかの如くゆったりと描画。
音楽は私の中では睡魔を誘う曲上位君臨で(ドビュッシーの曲の中で好きな曲も色々あるのだが)
舞台上には2人のみで見栄えする技術が繰り出されるわけではない作品ながら
稽古場の男女が静謐な空気に包まれつつも冷静さが徐々に剥がされていく情緒の高まりを緻密に体現。眠気に襲われぬまま音楽を聴き終えたのも初めてもしれません。



The Concert(コンサート)

こちらも初見作品。動画で一時話題になったそうですが見ておらず、振付はロビンズ
音楽はショパンの曲を使用している点以外は予備知識ほぼなしでいざ劇場へ、でございました。
ピアニストの小池ちとせさんが1人で登場すると観客と掛け合いながら埃を払ったりと早速芝居達者な面をご披露。
そしてピアノの演奏会にやってきた客人達が各自椅子を持って入場するも、席を間違えたりど突かれたり、
眺めている分には思わずクスッと笑ったり時には豪快な声が出そうになるほど面白味てんこ盛りな場が展開。
手の込んだ老舗で仕立てられたように見える帽子にレオタード着用なる不可思議な組み合わせ衣装であっても
ずっこけなオチがあっても何もかもがお洒落に映る極上芸術を堪能です。

中でも清楚な印象ある渡辺恭子さんが新境地開拓と言わんばかりのセンスを発揮され、
腰掛けピアノに寄りかかっているうちに椅子だけ引き抜かれ、空気椅子状態になっても尚ピアノにもたれている姿の可笑しいこと。
小池さんもショパンの曲の数々を弾いていらっしゃるかと思えば突如中断したり、無音の間もダンサーもピアニストも抜群のタイミングで笑いの降り注ぎが止まらずでした。
見せ場の1つであるミステイクワルツでの、思い切り間違えても、1人だけ違うフォーメーションを描いてしまっても
余りに堂々且つ基礎や強靭なテクニック、そして絶妙な間合いの呼吸が備わっているからこそ最早至高の芸域にすら感じさせたほどです。
そしてハズバンドという役名らしい、巨大な太い眼鏡をかけ咥えたばこをふかし、奇怪なオーラを放ちながら痛快な笑いで沸かせた林田さんも忘れられず。
4年前に鑑賞した『ドラゴン・クエスト』白の勇者でのやや淡白な印象はすっかり消え去り、踊る喜劇俳優ぶりに仰天でした。

尚、両日ご覧になった方によれば2公演の客席の反応がだいぶ異なっていたとのこと。私が鑑賞した初日は緊張感が限界地点で鬩ぎ合い、
振付に忠実で正確無比であったのでしょう。ずっこける箇所も何もかもが理想の地点に集結していたのか
上階端の席であっても見知らぬ観客同士一体感まで生まれ、お互い笑いの穴にとことん嵌ってはなかなか元に戻れぬ状態が続いていた気がいたします。




帰り、偶然会えた方々と星野珈琲へ。秋の味覚を堪能です。お2方はレッスンも熱心に取り組まれ、このあとスタジオへ向かわれました。
鑑賞後は飲食しか頭に浮かばぬ私とは大違いでございます。テクニックにも精通されたお2方による舞台感想やクラシック・バレエ以外にも幅を広げてのレッスン受講等勉強になることばかりです。
しかし寛大なお人柄で、私の変わり者にもほどがある、レッスンは年1、2回受講する程度で
あくまで鑑賞及び歴史等の座学中心のバレエ愛好者である習慣も優しく受け止めてくださり、救われる思いでございます。




カップを上げると、お皿に星3つ。本日はスターダンサーズ・バレエ団鑑賞でございました。



お2方を見送り、暫く池袋の地下街を散策したのち開店時間を迎えたこちらのお店、コンチェルトへ。



女性のバーテンダーさんが、好みを聞きながらカクテルを作ってくださいました。
コンサートな色彩の青が滴る一杯です。外も傘が必要な天気となり、長居はせずでしたが居心地の良いお店で、偶々でしたが客は全員女性でした。
サクラホテル池袋やチャコット池袋劇場通り店にも近いかと思います。

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