2022年9月14日水曜日

良きご縁な地域と演目で今夏の鑑賞東日本編終了   エンドウ・バレエ発表会  8月27日(土)《東京都立川市》




8月27日(土)、立川市のたましんRISURUホールにてエンドウ・バレエ発表会を観て参りました。
主宰は遠藤康行さん、須永リエさん。お二方ともスターダンサーズ・バレエ団で活躍され、
遠藤さんは新国立劇場バレエ団が関わるコンテンポラリーの公演や横浜バレエフェスティバルの監修でもお馴染みでございます。初めて鑑賞するスタジオです。

http://www.endoballet.com/






遠藤さんが指導振付に携わっているためコンテンポラリー作品も複数あり。既に多くの振付家が使用しているであろうシャコンヌでの
生徒の皆さんの伸びやかな身体の使い方や瑞々しい感性の広がりにすっと寄せられたり、
まだ成長期にある身体を考慮されてか極端に酷使するような振付は抑えていた点も好感を持ちました。
何度か遠藤さんの振付は鑑賞したことがあり、作品によっては大変独創性に富んでいたためか決して好みではない箇所もちらほらあったものですが
このシャコンヌは難しい思考力を問われず(元来の私の鑑賞眼欠乏が原因ですが)、集中して終始鑑賞です。
小さな生徒さん達はフェアリードールやディズニー音楽で皆楽しそうに踊っていて、特に暑い時期はアンダー・ザ・シーも大歓迎。
どの作品もキャラクターに無理やり似せるのではなく
作品や音楽から想起させるお洒落なバレエらしい衣装で、キラッと可愛らしい光景で満たされました。
(容姿も実力も下層階級にあった私は通っていた教室のネタ班に属し、大概は被り物系や変わった役や衣装の担当でしたから、着用経験のない系統の衣装ばかり笑)
上級生の方々のナポリの息の合い方、綺麗な立ち姿にも見入り、色違いのパステルカラーの衣装が全員お似合い。
身体をくいっと捻ってのポーズや細かいステップでの脚先も疎かにせず、意識の行き届きが窺えました。

バレエ・コンサートの最後は『白鳥の湖』よりパ・ド・トロワでここでご登場今回唯一のゲスト新国立劇場の渡邊峻郁さん。
この後の『白鳥の湖』3幕に恐らくは王子役で出演されるであろうと予想はしておりましたが他の演目への出演有無は分からず
プログラムを開く瞬間まで立川記念ならぬ(競輪ではない笑)予想大会をしておりました。
渡邊さんの白鳥トロワはプリンシパルに昇格された現在拝見できる機会は滅多になく、最後に目にできたのは昨年春の新国立山形公演。
(それ以前にはファースト・ソリスト時代の2018年白鳥の湖本拠地公演にて王子と兼任)
しっかりと目に刻もうと臨んだわけですが、蓋を開けたらそれはそれは清く麗しいトロワがお目見えし3人揃って清涼感が漂うこと!
女性は澄んだ水色に白いレース模様も気品あるデザインで男性は白と銀で、発表会の定番な演目ながら
女性お2人は上級者で優雅さと安定感も十分、踊り方もいたく丁寧でこれみよがしなテクニック誇示も一切なし。
渡邊さんのちょっとしたタイミングもさらりと清流のように見せるサポートや、何度も観ている特別個性が強いわけでもないオーソドックスなクラシックの振付であっても
こうにも華やぐ加えてトメハネハライがきちんとなされる折り目正しさにも目を奪われて止まず。
隣国の王子が近場の王女2人を連れて遊びに訪れ、暫し雅な宴の真っ盛り感すら思わす誠に美しいトロワでございました。
瞬時に無背景の舞台がお城の噴水付き庭園へと眺めが変わったのは明らかです。

先述の通り、端正で一部コーダを除けば派手な大技がこれと言ってない白鳥トロワ。
しかし繰り返しにはなりますが、私が人生初のバレエ鑑賞ABT『白鳥の湖』にて最たる印象がトロワであったと同行者に語るほど
何故だかインパクト大であった縁ある場面で、カーテンコールに登場した当時の芸術監督バリシニコフについても触れず
トロワが相当気に入っていたらしい。きっと音楽や、衣装がピンクと緑で春らしく醸す優美な雰囲気にも惹かれたのでしょう。
このとき以来印象に残るトロワにはなかなかお目にかかれず、ようやく現れたのが2018年の新国立公演の白鳥における渡邊さんトロワでした。
そして衣装も場所も変わり、今回立川にていたく涼やかで品位あるお三方に巡り会えた幸運を今も思い出しては背筋がすっと伸びる思いでおります。

最後は『白鳥の湖』3幕。オディールの遠藤ゆまさんはスターダンサーズのジュニアカンパニー所属とのことで、
コンテンポラリーでもしなやかな強さが光る踊りに見入っておりましたが、オディール役においても有無を言わせぬ迫力や堂々たるポーズの数々がたいそう魅力的。
ロットバルトとの登場時少しハプニングに見舞われ大変そうなご様子であった気もいたしましたが
渡邊さんジークフリート王子を緩急つけて翻弄するダイナミックな姫でございました。
渡邊さん仰々しい音楽に相応しい気高いお姿と心ここにあらずな内面の双方が香ってくるご登場から磁力の如く引き寄せられ
宴の最中も上の空な腰掛け姿ですら王家の絵に描かれてもおかしくない美の集い状態。
技術も冴え渡り、空間を大きく捉えた踊りで場の格に厚みを持たせ、片脚着地の柔らかさにも大注目。
そうかと思えば泣き喚くように王妃に縋る姿も憎めず笑、前半のエレガントな歩行姿からは想像つかぬ懸命な走りっぷりに
宮廷の方々も愕然とするしかなかったであろう、王子の運命はいかに、と続きが観たくなるほどこれまた全幕を観ている気分にさせてくださいました。

小さな子供達からジュニアの古典、コンテンポラリーまで、スタジオの強みも取り入れたバランスの良い構成で終始楽しく鑑賞いたしました。

RISURUホールは2017年6月のNBAバレエ団スタジオカンパニー公演『白鳥の湖』以来の訪問で、
当時も最大の目的は3幕でオディールを踊られたまだカンパニー生であった岩田さんであり、その後着々と昇格し現在はソリストとして活躍中。
立川といえば子供の頃に学校行事で訪れた昭和記念公園が(マラソン大会。校庭を走り回るよりも遥かに楽しく公園そのものも好きになったのだが
それから数十年後の2022年8月末の同地域に現れた王子のように愛しの相手を追い求めるような懸命な走りではなかった点は反省)
真っ先に浮かんでいたものの、近年では白鳥3幕。私にとっては良きご縁な地域と演目でございます。





帰りはお世話になっているお2人立川駅ビル内のお店へ。お2人はエンドウバレエさんの舞台をもって今夏の鑑賞おさめ、私は東日本編は終了。
まずは乾杯、ああビールが美味しい。
7月末まで遡ると、お猿さんからアリ、正統派の王子貴公子、道化師、和物コンテンポラリー、お花なネオクラシック等実に広範囲で
昨年の騎士から妖精王子、中世パリの哀愁青年や青色ボンバーヘアアキラまでの
よりどりみどりなラインアップにも増して、今夏も多種多様なキャラクター図鑑が出来上がりそうです。



中央線のトラブルやらその影響でタクシー乗り場大行列でバス利用を試みるもバス停の位置が分からず交番で聞くなど(バス停、死角にありました)
諸々ございましたが無事終了し、皆ほっと一息です。ハンバーグの肉汁も胃に沁みます。
この後はお2人は帰宅、対する私はこのまま西日本へ移動。いよいよ2022年夏のゴールに向けて、立川の余韻に浸ったまま600km弱の旅へ出発。
勿論、オデットへの誓いを破ってしまったジークフリート王子のように走って追いかけるのではなく、バス移動でございます。


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