2022年9月16日金曜日

瀬戸内海で2022年夏グランドフィナーレ  板東ゆう子ジュニアバレエ第5回サマーバレエコンサート  8月28日(日)《愛媛県西条市》





愛媛県西条市にて、板東ゆう子ジュニアバレエ第5回サマーバレエコンサートを観て参りました。
2017年からほぼ毎年足を運んでいる、私が愛媛に興味を持つきっかけを与えてくださったスタジオで、初鑑賞の2007年『白鳥の湖』全幕から今年で15年です。
http://www.yukobando.com/サマーバレエコンサート第5回お勉強会.html




今回は所謂勉強会形式で、生徒さん達のチャレンジが盛りだくさん。ただ無謀な挑戦ではなく
生徒さん達の技量や身体条件を考慮されているのでしょう。大人と全く同じではなく少し難度を抑えたり、1人のヴァリエーションを複数名で踊ることで
寧ろ呼吸の合わせ方が気持ち良く伝わってきたりと工夫に富んだ構成で各々の個性を引き出して楽しませてくださいました。
本来ならば全演目を中継の如く綴って参りたいところですが演目多数でございましたので特に印象に刻まれた或いは気になったプログラムに絞って参ります。

まず幕開けの『パリの炎』はアダージオとコーダの披露で晴れ晴れと歌うような思い切りの良い踊り方にとても好感を持ちましたが、加えて何が嬉しかったかって衣装。
恐らくは発表会では初めて、ジャンヌが裾長めのスカート衣装を着けているところを観た気がいたします。
私自身このパ・ド・ドゥは革命後の祝福らしい勇ましさや潔さもあって音楽も振付も好んではおりますが、
全幕も劇場で鑑賞し、特に2017年にボリショイが上演したラトマンスキー版での身分差の恋模様やバスク舞踊の大迫力演出、
革命成功に歓喜するだけでない複雑な事情も浮き彫りにした演出が我が2017年年間鑑賞来日公演部門断トツ1位になったほどたいそう気に入っておりますため
ジャンヌの全幕におけるトリコロール模様に彩られたさらっと靡く衣装とは異なるチュチュ衣装を発表会のパ・ド・ドゥで観るたび違和感を覚えておりました。
白チュチュに三色リボン程度のきりっとシンプルなデザインならまだしも、稀にレースやおリボンフリフリな衣装も見かけ、
王制貴族社会に対抗していた平民が、打倒した直後に貴族趣味な装いで結婚式に臨むであろうか、
それとも対抗と憧れは紙一重であったから服飾に取り入れたのはごく自然な流れと考えるべきか云々首を傾げていたわけです。
(踊れぬ素人が余計な思考を申し訳ございません)
序盤から長々しい記述となり恐縮、そんなわけで板東バレエさんにて全幕彷彿のジャンヌ衣装にお目にかかれてプログラムの最初から脳内はパリ祭状態でございました。

小さな子供の生徒さん作品の中ではシンコペーティッド・クロックが懐かしい幸せを思い起こし、妹が子供の頃に踊っており(目に入れても痛くない可愛らしさでした笑)
更には偶然にも大きなりボンとチュチュの組み合わせも同じで、板東バレエさんはカラフルな可愛らしさ。
皆で息を合わせて丁寧に笑顔一杯でプリエやルルヴェをこなす姿もまた好印象でした。

上級生の方々の踊りも質が高く、中でも『ファラオの娘』アスピシアの生徒さんの格式と誇り高さを思わせる踊り方に拍手。
これまた『パリの炎』以上に好きで、2006年のボリショイ来日公演にて全幕を3回鑑賞。売れ行き不調で空席目立つ寂しさはあったものの
アレクサンドロワ、ルンキナ、ザハロワの日替わり3キャスト公演通い詰めたほど、思い入れのある作品でございます。
昨年の25周年発表会結婚式場面のライモンダを始め主要な役も度々務めている生え抜きの生徒さんがこの作品を踊ってくださり大変喜ばしい限りでした。
だからこそ、衣装がいかにもアスピシアらしい群青色系の幾何学模様なデザインであったら尚嬉しかった気も。
『ラ・バヤデール』や『海賊』のオダリスク等の演目にて、全国各地で何度か見覚えある衣装でしたのでもし次回また機会あればご検討いただけますと幸いでございます。

そして『アルレキナーダ』が心がほんわか和んでしまう掛け合いの花が咲いていた印象で、コロンビーヌ役の生徒さんが伸び伸びと恋人に会えた幸せを全身から表し
アルルカンの福田圭吾さんが優しく受け止めて可愛らしく、そしてくすっと笑いを起こさずにいられない面白みのある返し方で展開。
圭吾さん、昭和末期生まれのはずですが役にも生徒さんとのバランスも絶妙な具合で天晴れ。観客への呼び掛けの仕切りも安心感まで持たせました。
今夏は東西で芝居心もばっちりな生徒さんと、役へ嵌りっぷりが年齢不詳ゲスト(褒め言葉)による
チャーミングな『アルレキナーダ』を鑑賞でき、ようやくこのパ・ド・ドゥの魅力が分かりつつある夏となりました。

主宰の板東さんと山本隆之さんが踊られた『シンデレラ』パ・ド・ドゥは益々美しく人生を歩まれているお2人だからこそ魅せる力の大きさに感嘆。
星空に包まれるが如く輝くようなときめきと穏やかさに満たされた心持ちとなり、姫らしい薄紫に銀色の装飾が散りばめられたチュチュと青襷王子の衣装姿が今も尚麗しく
甘美で摩訶不思議な音楽と一体となりながらポーズの1つ1つもしっとりと描出され、舞踏会のハイライトを眩く披露してくださいました。

ゲストの女性ダンサーの方々のヴァリエーションはどれも刻まれ、中でも強靭な軸足を駆使する回転がふんだんに盛り込まれながら力みが無く
嬉々とした感情を身体から発する佐々木美智子バレエ団の佐々木夢奈さんメドーラ(音楽はシェル男爵が作曲したシンデレラの中の1曲であったかと記憶。急速な曲調で歌えない曲です)、
腕で余韻をもすっと撫でて摩るような色気や危うい香りが立ち込め、技術も1つ1つが盤石で余裕の笑みにも恐れ入るしかないNBAバレエ団工藤雅女さんのオディール。
そして最たる印象がフリーで活動中の宮田遥夏さんの『ジゼル』第1幕で、登場した瞬間から
純粋で少し素朴で、恋する喜びを内に秘めつつも幸せを隠せぬ愛らしさに管理人、席からずり落ちそうに。無背景無装置の1人舞台であっても
ベルタへの懇願や迎えてくれる友人らとの呼応、上手側のベンチには腰掛けたアルブレヒトが見守っている様子が見え、
物語作品の抜粋上演時に私が最も重要視する「全幕を観ている気分」にさせてくださいました。
ジゼル1幕やサタネラのグラン・パ・ド・ドゥ登場時の男性も含め、下手にやるとただ右往左往しているだけにもなりかねぬ
難しい登場であっても、少女の恋心や決意が自然なやり取りから浮かび上がってきてお見事。
パとパの繋ぎの部分に至るまで神経を行き届かせた踊り方も目に福の飛び込みが止まらずでした。
8月の『ガチョーク讃歌』や昨年3月吹田市での山本隆之さん版白鳥の湖にも出演され、活躍に一層注目して参りたいと思っております。

最後はGod save the Queen。(英国国歌以外にも馴染みある曲が複数入った、水兵さん達と国旗が登場する原タイトルは異なるあの作品です)
大阪の方々の出入りが多いスタジオで瀬戸内海に近い地域性にも合うのか、2013年『シンデレラ』との同時上演時を更に上回るノリの良さと高揚感が会場中を席巻。
ゲストも生徒も、出演者も観客も垣根は無いに等しく、第1曲目の開始10秒後には客席から手拍子が沸いたほどでした。
スキップしながら板東さん達3人がまずは登場し、その後は山本船長!?に見守られたキュートな水兵さん達も大活躍。クロールや平泳ぎといった泳法やロープ引きの仕草もお茶目に映り
そして力自慢担当は福田圭吾さん。ポパイとドヤ顔を配合させた感のある姿は秋の西条まつり以上のインパクトであろう、東西でお祭り男です笑。
ボギー大佐の曲にのせて爪先立ちで行進してくる女性隊員さん達も色っぽく、フィナーレは全員で手旗信号。
この舞台から今日の間に英国では政権も王室も大きく変わり、今思えばこの曲名を記し目にできた残り少ない日々の中の一瞬であったと
エリザベス女王の逝去、国葬の報道をここ数日見聞きする度に感じております。

小品が多めであっても生徒さんを中心にして前面に出しつつゲストの出番もバランスよく取り入れ(プロの公演回数が少ない県にて毎度大変嬉しい企画です)
妙なぶつ切り感もなく終始飽きさせぬ構成にこの度も楽しませていただきました。
観客の拍手や集中の熱量が途切れぬ印象すら持たせたほどで、ご親族が出演するからと初めてバレエをご覧になる観客も多いと思われる中
舞台も客席も実質境界線が無いくらいに会場一体となって沸き立つ舞台作りをされた板東先生や出演者の皆様に拍手を今一度送りたい思いでおります。
それからプログラム冒頭の板東先生の挨拶文には世相の話題を踏まえ、今健康にバレエに取り組み、
舞台作りをしていることがいかに幸せであるかを感謝したいと記され、しかも押し付けがましさが皆無でさらっと、同時にふと考えさせられる内容。
このご時世であっても各地で鑑賞を満喫している生活がどれだけ幸せな状況であるか私も再確認です。
今月の配信1回を含む15回の鑑賞マラソンを板東バレエで締め括り、無事2022年夏のグランドフィナーレを迎えました。次回の舞台も心から楽しみにしております。



※以下写真多数ございます。もう9月も半ば、夏の記録を眺めている暇はないとのお方は恐れ入ります、次回からようやく9月分に入りますためそちらをお待ちください。



今回は2016年以来2度目の岡山県経由で愛媛入り。2016年は東洋のマチュピチュ及び私が好む映画上位の『天空の城ラピュタ』な世界が現る
別子銅山2度目の訪問で新居浜へ立ち寄る必要があったためでございます。
久々の特急しおかぜにて瀬戸内海横断中。島々がよく見え、風光明媚!早くも西条の水兵さん達に会いたくなる欲が募ってしまう景色です。



伊予西条駅から会場までの1本道の間に位置する和食店へ。日替わりランチのボリューム、料理の豊富さにもびっくり。
新鮮なお魚も、サクサクとしたチキン南蛮も美味しい。
ご一緒したのは9年前に16年ぶりのレッスン再開初日に知り合いその後もスタジオや劇場でお世話になっている方とでございます。
実は今回の愛媛入り、当初は昨年や一昨年と同じく飛行機利用を検討していたものの
目の前にある事柄が終了しないと準備ができぬ性格であるがゆえ、1週間前の福島県白河市での鑑賞後にやっとこさ交通機関を検索。
当然JALやANAの早割も終わり、高価な航空券しかなくそもそも羽田空港であろうとLCC発着の成田空港であろうと
前日の夜に立川市から帰宅後一眠りして早朝に起きて向かう自信がもはやなく笑、
ならば立川市からそのまま中央線で新宿へ向かい岡山までバスで直行すなわち立川岡山特急しおかぜ愛媛バレエルートが良かろうと結論。
(本が苦手であった私に読書の魅力をもたらした西村京太郎さんは偉大です)
結果として、鑑賞とレッスンの比率が100対1に近い変わり者な私にとって良き理解者である、しかも上級レベル者でありながら
私のようなレベル底辺素人にもいたく優しい素敵友人と岡山から一緒に移動することができたのでした。



伊予西条駅、稜線がくっきりとした山並みが青空に。山と海が隣り合わせである四国の地形の毎度驚かされます。



恒例、アンパンマン達にもご挨拶。



19時前に今治駅に到着、God save the Queenの中の曲を再生しつつ駅から徒歩15分でホテル横の港へ。沈み行く夕日が美しい。
今からでも先ほどの西条市の水兵さん達、今治港に寄港して欲しいと思ったもののもう皆様休息中でしょう。



港の横のホテルに宿泊。落ち着く和室です。渋い水色の浴衣も気に入りました。



お目当てはこちら。鯛の華御膳。静かな宴会室にて(マナーの良いお客様ばかりでした)
夏の締め括りで愛媛に行き、しかも水兵さん達のバレエを観るならば港近くの宿にて鯛を堪能しようと決めました。
1人客ですからどう頑張っても黙食宴会となるわけですが、今治の地酒で乾杯。



真上から撮影。鯛、鯛、鯛。



鯛かぶと陶板蒸焼きを拡大。このあと身をほぐしていただきました。



鯛めし 拡大。香ばしい匂いが漂います!



この日ほど、この曲が響き自身に重なった日はございません。宴の後部屋に戻り、ホテルにて一緒にサライを歌いました。
ちなみに谷村新司さんと山本さんは同年度の芸術選奨文部科学大臣賞受賞者でいらっしゃいます。

8月の配信1回を含む計15回鑑賞、つまりは2日に1回は何かしら観ていたらしいのだが、渋谷に始まり関東各地に加えて京都、福島にも行きゴールは愛媛の鑑賞マラソン。
24時間テレビ内のマラソンの経緯を眺めつつ、私にとっての各所のハイライト映像が脳裏に浮かびます。
思えば波乱のスタートで8月入ってすぐ、グラン・パ・ド・ドゥも半年以上練習してきた当ブログレギュラーの大学の後輩が
本番数日前になって発表会出演不可能となってしまった悲しい知らせに本人の辛さを思うと私ですら崩れ落ちそうになり、
続く初の恵比寿でのモード系なバレエガラでは間近で中村祥子さんに皆で踊ろうライモンダも感激、
これまた直前に出演者一部変更告知がされたバレエアステラスにも2日間他の変更が無いよう願いながら通い
親族気分で主役陣よりもアンサンブルに注目してしまったガチョーク配信。
全幕とバレエコンサートの配分の大切さを考えたり、有名な文芸作品及びミュージカルでもお馴染みながら人間関係に混乱するも
エネルギーが伝わる空間に居合わせたり、主役よりもジュリエット父さんとマキューシオばかりが印象に刻まれた京都に
中村さんや菅井さんの共演が実現した暴風雨の中を帰宅したNHKバレエの饗宴、
懇願していた組み合わせが遂に叶った大和シティー、田北さんのプロデュース力に唸り
代役アリにもびっくりしキーウのスターダンサーとの横並び共演に盆と有給休暇同時到来であった葛飾区亀有。
年齢大不詳道化師な八王子に里帰り白河アルブレヒトからの立川市でのトロワ付き白鳥抜粋で東を締め括り
そして西条市の水兵さん達の賑わいに包まれ、全国における8月グランドフィナーレを迎えました。
自身が踊るのではなく観に行っただけですから疲弊は全くしておりませんがそうはいっても我ながらよく乗り切った密度濃縮な2022年8月でございました。



おはようございます。朝日に照らされた今治港。



錨が描かれたプログラムを掲げて撮影。



朝食、洋風プレートを選択。ヨーグルトにはしまなみ産の柑橘ソースがかかっていて爽やか。オムレツを焼いている様子が見え、食べる前からうきうき。



きらめいてかがやいて、良い標語。



タオルの今治、名産です。



特急で松山へ。海景色を眺めるのもあと少しです。定刻に松山駅に到着しましたが松山駅発の空港行きバスの場合飛行機のチェックイン締切時間ややぎりぎりであり
余裕を持って臨むため(ウェブからのチェックインも可能なのですが、航空券は紙であるほうが安心する昔型人間でございます)
松山駅から松山市駅まで約15分早歩きして移動、松山駅発よりも早くに到着するバスに乗車できました。



無事余裕を持って到着、チェックインも済みましたのでならば買ってみたかった蛇口からみかんジュース。
みきゃんが見守ってくれています。フレッシュで酸っぱ過ぎず、爽快な味でした。


いざ搭乗口へ。晴天の空の旅へ出発です。さらば愛媛、また会う日まで!
長々と途中話が逸れがちな内容をお読みいただき、ありがとうございました。
ああ大阪行きの支度、早うせねば!!

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