2022年8月3日水曜日

大人も一緒に自由研究 新国立劇場バレエ団  こどものためのバレエ劇場2022『ペンギン・カフェ』 7月29日(金)〜31日(日)計5回





新国立劇場バレエ団  こどものためのバレエ劇場2022『ペンギン・カフェ』を5回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/kids-penguin-cafe/










バレエチャンネルさんのインタビュー映像。こども記者が稽古場に潜入取材。子どもたちによる純粋且つ鋭い質問の数々に大人もびっくり。
質問に答えるダンサー達が皆丁寧で優しい語り口である点がまた魅力です。




池田さんペンギンは身体での表情切り替え可愛らしく、お盆持って回転してからのぴょんと垂直ひとっ飛びジャンプもきびきび。
しかしレインの場では打って変わり、立っているだけでも悲壮感がじわりと伝わって悲しい結末へと一気に進んで行く様子を描写。
赤井さんは冒頭のお盆持っての踊りから強弱の付け方がいたく自在で、プリエがとても深いかと思えば回転からのポーズの決め方もスケール感があり、
お茶目な面も見せつつ腕を掲げるときはとってもエレガントで、身体の使い方が実に多彩。堂々たる主役デビューでした。
ここ暫くは広瀬さんがシングルキャストで張ってきただけあって、ビントレーさんが新国立芸術監督就任後最初の公演で初演した作品の主演しかも初役で
お2人ともさぞかし重圧があったでしょうが、日によっては幕開けから拍手が沸いたり、子ども達からペンギンさんの可愛らしさの虜になっている歓声も聞こえたりと
科学分野と連携した初企画にて、大勢の子ども達をも魅了するペンギンさんでした。

ヒツジは長年務める米沢さんは肩や腰使いから描き出すセクシーな色香に被り物状態であってもうっとりし
レインにおける身体をスピード感たっぷり且つ大きく使っての深い悲しみの吐露が痛烈に胸に刺さり、鋭くも寂しい余韻を残しながら疾走。
木村さんは前回よりも遥かに腰の入れ方やヒール靴でのステップも雄弁に魅せ、体幹が強まったのか片脚のみでの素早いバランスを始め
上体を斜めに倒す中途半端な体勢もパートナーとの呼吸を合わせつつ安定感ある姿を披露していた印象です。
初役とは思えぬ盤石である上にスタイリッシュでにこやかな味を全身から放ちつつ捻りの効いたパートナーリングも天晴れであった中家さんにも拍手。

カンガルーネズミも三者三様。初役の宇賀さんは初回こそ硬さがあったものの2回目は弾力感が倍増し、
終盤の連続尻餅において客席の驚く子供たちとのやり取りに思わず頬が緩んだほどです。
そしてネズミマイスター!?福田さんは音楽の細かな部分をも取りこぼさずバネの効かせかたに至るまで職人芸。
この役を最後にバレエ団を退団する髙橋さんは跳ねる度に子供達の楽しい笑い声が溢れるネズミで魅了。
髙橋さんは2010年、この作品振付者でもあるビントレーさん芸術監督就任と同時の入団で就任開幕公演で上演された作品の1本がペンギン・カフェでしたから
この役で新国立生活に区切りを付けられたのはたいそう感慨深いものであると想像。
願わくは、ピンクのフリルドレスが嫌味なく似合うシンデレラ妹をまた拝見できたら嬉しうございます。

ノミは無重力な五月女さん、柔らかな跳ねっぷりが優雅さも醸す奥田さんお2人とも戦隊ものにしか見えぬ衣装でも愛嬌抜群。
そしてノミを応援モリスダンスチーム、特に初役が大半な若手組が実に楽しそうに軽快で出色、中でも仲村啓さんが頼もしいリード力を発揮。
舞台中央前方でノミにからかわれ追いかける様子も身体全体で困惑とおかしさを大胆に示し、存在感の大きさに驚かされた次第です。
皆長身でも時折幼稚園の通園帽子にも見える黄色い帽子がほのぼのと似合い、渡邊拓朗さんは豪快な雰囲気にもなぜだかしっくり。

木下さんのシマウマは登場での肩から腕のラインがはっとする滑らかさで端然とした佇まい。
奥村さんは孤高な存在感から繰り出す詰め寄りの部分もゾクッとさせる悲哀思わせ、銃で打たれたときの怯えるような震え方に背筋に冷たいものが走る感覚が毎度募り
一瞬たりとも笑みをこぼさず、淡々と無機質なポーズも歩き方がかえって残酷さを増長するゼブラガールも目に焼き付いております。

熱帯雨林の家族ではこの公演をもって22年間の新国立ダンサー生活に区切りを打たれることとなった貝川さんの姿が心に沁み入り、
最後寂しそうに過ぎ去る様子に胸が詰まるものがありました。今後もプリンシパルキャラクターアーティストとして活躍なさると信じて疑わなかっただけに大変寂しく
公演終了後に退団を発表された細田千晶さん、アリスで退団花束贈呈セレモニーも行われた本島美和さんといい管理人、
相次ぐベテランの退団にショックが続いております。お三方とも年齢を重ねるたびに魅力を増していた気がしてならず、暫くは引き摺ってしまいそうです。
初役趙さんのお父さん役が大黒柱な存在感で子供を肩車する過程もスムーズで、
同じく初役柴山さん母(おかっぱ鬘が似合い、寂しそうな視線が心を突きます)と穏やかで慎ましい生活が垣間見える家族。

ウーリーモンキーは恐らくはこの作品において同じ公演期間中に初の3キャストが組まれながら速水さんが体調不良で降板され(どうかお大事に)2キャストに。
初役の渡邊さんは初回の序盤は慎重で礼儀正しそうなモンキーさんで、でんぐり返しからしてこれから三つ指ついて正座するかと見紛う品のある所作で
慣れない被り物に気を取られてしまったか、サンバホイッスル音にも押され気味な印象を抱いてしまいました。
誠に失礼ながら配役発表時、ラテンの舞踊ならばトゥールーズでも土の上で踊られる作品にて披露されたタンゴや
或いはフラメンコあたりもビシッとシリアスで締まりある踊りも似合うと勝手に想像。
しかしサンバはどうも想像がつかず、果たして弾けるのか、不安のほうが上回っておりました。
ところが2回目以降は木々を軽々飛び伝っていそうな妖精を彷彿とさせるウーリーモンキーさんで、でんぐり返しも丸。
高い樹木の上で両手に果物を大事に持って味わっていそうなモンキーさんです。
加えて初回と見違えるカーニバル座長な沸かせっぷりで、パワフル豪快とはまた違った、美しく伸びやか
されどド派手なジャケットやビリケンさんもびっくりであろう金ピカハットにも負けぬアクセントの効かせ方も見事でございました。
派手に弾けるだけがこの役ではないと学びまで与えてくださった気もいたします。
両手を横に水平に伸ばした状態で肩甲骨を中央に引き寄せる振付にも初めて気づき、腕立て伏せは少しヒヤヒヤしたときもあれど笑、それはご愛嬌。
サンバホイッスルは、高校生の頃に当時発売から数年後あたりの時期であった日本で作曲された
サンバ風の曲(てんとう虫のサンバではありません。念のため)の吹奏楽版演奏時、笛1つで強いを超越しけたたましいレベルで響き渡る音に仰天し
考えてみればこれ1つでサンバの雰囲気を一気に後押しするわけですから、この強い音色に屈さぬには相当なアピール力も要するであろうと悟ったものです。

対するレインは陰を背負い流星の如き横体勢跳び連発で身体が乗り、動きも巧みで抜群な疾走感。
シルエットの軌跡も目で追いたくなったほどで、ノミを頭上に掲げてからの滑り台下ろしもお手の物で、思いがけず渡邊さんモンキーを4回も鑑賞し7月締め括りでございます。
福岡さんシングルで張ってこられたモンキーにこの度、渡邊さんが新風を吹き入れてくださいました。

友人の表現を拝借すると、近年はシングルキャストで務め続けていらっしゃり、世界遺産級であろう福岡さんは安定の上を行くパワーある統率力。
被り物の装着も関係なく寝ていても踊れそうなほど体内まで染み付きが行き渡っているかのようで
またモンキーと福岡さんを安易に結びつけてしまう傾向も私自身ありながら、どう魅了してくださるか期待を積み上げてしまうのは
長年福岡さんがビントレーさんから厚い信頼を寄せられ、いかにこの役で終盤前の賑わいの場をあっと驚かせ率いてくださったかが思い知らされました。

ビントレーさんのご意向か、昨年と今年のニューイヤー、そして今回の夏休み子どもバレエと近年頻繁に上演を重ねていながら
ご自身が直接指導なさったダンサーの配役に重きが置かれ、昭和世代の占める割合の高さに首を傾げる日もありましたが
ひとまずこの夏の子どもバレエでは初役も程よく混ざり安堵。ペンギン喫茶にならず(ならないと思うが)、新鮮味あるキャストも堪能いたしました。

今回のこどもバレエの特徴として、絶滅危惧種や環境問題について考えるための企画もなされ、第1部はトークショーの時間が設けられました。
最初から双子パンダのシャオシャオとレイレイ、2頭をあやす母親のシンシンの映像が背景に登場し、思わず見入ってしまいましたが
欲を申せば作品に登場する生き物達に焦点を当てた構成のほうが、第2部でのバレエもより楽しく興味津々に鑑賞できたであろうと思っております。
お話の入口として知名度の高いシャオシャオやレイレイの内容は良しとして、ヒツジやシマウマ、モンキー等についても直接語りかける内容であれば
尚のこと『ペンギン・カフェ』鑑賞と絶滅危惧種、環境問題を同時に考える企画の意義が強まったように感じた次第です。





平仮名のほうが大きいキャスト表。こどもバレエ仕様です。



平日昼公演後のマエストロ。サラダや前菜はビュッフェ形式。(お店の方による盛り付けの提供対応も可とのこと)
森をイメージして盛り付けてみたが、相変わらず芸術センスのない管理人汗。スパークリングワインがああ爽快。



初めて味わうマエストロ特製キーマカレー。夏野菜が明るい彩り、スパイシーながら爽やかな後味残るカレーです。



休日マエストロ、白ワインで乾杯。酷暑はすっきりとまず白から。 新国メンバーズ登録画面を見せるといただけたマスクケース。
プレゼント企画の記事では表側した写っていませんでしたが、裏にも写真があると
先にご覧になったこの日食事をご一緒したお世話になっている劇場精通者の方より伺い、無事入手。



この日は前菜は最初から盛り付けられて登場。夏らしい色合いです。



鰯とセロリのアーリオオーリオ。辛い味が身体に気持ち良く効きます。鰯の身も大きめで、セロリと相性が良いとは初めて知りました。



パンナコッタ。ぷるっと上品なお味です。



フンボルトウーリーモンキーについての説明、こればかり熟読。環境問題のみならず、人間とはかくも身勝手な生き物である。



トキの剥製。バレエとトキ双方に詳しい友人がいまして(トキに関する仕事を佐渡でなさっている)、
また今回のような絶滅危惧種についての知識も深める企画時には案内係員としてお待ちしております。



ある公演日の帰り、事故発生により電車が見合わせとなりひとまず新宿へ向かい、駅近くで落ち合った
帰りの方向が同じ毎度お世話になりっぱなしな英国文化にも造詣の深いお方と食事へ。
豆腐御膳をいただき、竜宮もまた観たいとふと思う夜。お酒は奥多摩の日本酒。今月は奥までは行かずとも多摩地域にも鑑賞に何度か出向きます。






代官山チャコット。前回出向いたときは移転オープン直後且つ800日ぶりのレッスンで(習っているとは言えぬ状態でございます汗。
入門あたりから受講して慣らすこともせず、2年2ヶ月何もせずいきなりオープニング記念
有名バレエ団プリンシパルが講師の特別初級クラスに行ってしまった、無謀なことした管理人汗)
800日ぶりの受講を1日がかりで説得してくれた若人の2人には今も感謝が尽きずにおります。
カチコチに緊張しており店内を回っても落ち着かずであったため再度何処かの機会に訪問を考えておりました。
お洒落過ぎて私には不相応な気もいたしましたが、綺麗なディスプレイがあちこちに溢れる空間です。




チャコットの前を通り坂に沿ってもう少し歩き道路を渡ると出現、モンキーカフェ。
雑味なくさっぱりとした味わいの完熟バナナジェラードとコーヒー。目の前のモンキーさん、腕が長し。この日もこれから初役長身モンキーさんを堪能だ。
仮にバレエの舞台においてカフェの主人がペンギンではなくモンキー(2ndキャスト)であるとしたら
派手な見かけとは相反する、お盆持って深々一礼、老舗の喫茶室風な格式高い接客となる予感がいたします。



速水さんお大事に



千秋楽、当初は昼公演のみ鑑賞予定のはずがキャスト変更に伴い夕方公演も追加購入し鑑賞。
そして当ブログレギュラー我が後輩が練習直後スタジオから初台まで届けてくれた上に誕生日祝いとしてラッコのぬいぐるみ型ペンケース。
そうです、今回のこどもバレエは環境問題、絶滅危惧種について考えるコンセプトにぴったりでございます。ラッコもめでたく劇場鑑賞デビューいたしました。
ビントレーさんがもしペンギン・カフェⅡをお作りになるならば(可能性は無に等しいでしょうが)
ラッコは入るでしょうか。実現すれば衣装をどうデザインされるかも注目でございます。

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