2022年8月7日日曜日

大人の生徒同士で組む意義を学んだペザント 清水純子バレエアカデミー第39回発表会  8月4日(木)《東京都渋谷区》




8月4日(木)、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールにて清水純子バレエアカデミー第39回発表会を観て参りました。
ここ数年は毎回足を運び、楽しませていただいている教室の舞台です。
http://shimizu-sumiko-ballet.jp/

インスタグラム。発表会リハーサルの写真もあります。
https://instagram.com/shimizu_sumiko_ballet?igshid=YmMyMTA2M2Y=



オープニングは子供達大集合のMusical  World。ミュージカルの曲を組み合わせた可愛らしくお洒落な作品で
歌も知識もミュージカルに関して音痴な管理人でも(カラオケでの持ち歌は1970年代発売の某1曲しかございません)馴染みある曲もあり、楽しい気分。
皆はっきりとした色味のチュチュで揃え、水玉の傘を持っての『雨に唄えば』や黒いシルクハットを両手に『コーラスライン』等、
降雨が心配される天候を忘れさせてくれるほど、わくわく瞬く間に次々と披露し幕開けを飾ってくれました。

今回特に目を惹き白眉と唸らせたのは『ジゼル』よりペザント・パ・ド・ドゥで
発表会でパ・ド・ドゥと聞くと、男子生徒さんが充実している教室を除けば女性或いは女子生徒とゲスト男性が組むパターンが大半であろう中、
長年在籍されている大人の生徒さん同士の幸せに満ちたパートナーシップが秀逸で身体中からにこやかさを放出。
全幕と照らし合わせてみても収穫祭の場面の相応しく、きっと2人で葡萄園を営み味も絶品なワインを製造しているのであろうと容易に想像でき
プロアマ含めて何度も観ているパ・ド・ドゥですが、ここまで幸福度凝縮な踊りは初めて観た思いがいたします。
ヴァリエーションでもいきなりぶつ切りにならず、袖にいる相手を想うように、音楽を楽しそうに表現されていた点も好印象でした。

第2部は『眠りの森の美女』より第3幕。妖精パ・ド・シスも結婚式に到来させた、華麗なる式典がお目見えです。
嬉しかったのはオーロラ姫とデジレ王子が序盤に登場し来賓を出迎える演出が盛り込まれていた点で、
最後の最後にグラン・パ・ド・ドゥでやっとこさ登場ではなく主賓として佇み、もてなす場の取り入れは大事であると感じております。
妖精パ・ド・シスや宝石達の踊りが実に丁寧で脚を無理矢理振り上げたりといった妙な癖もない点に好感を持ち
先生方の指導や生徒さん達の意識が窺えます。パ・ド・シスはリラ以外も色が全て異なり(基本中の基本かと思いますが、聞いていますか新国立劇場笑)
ポップな模様が愛らしく映えるデザインも全員お似合い。私自身が経験した最初で最後のヴァリエーションが元気の精でしたのでついじっと観てしまうのですが
これといって起伏が無いに等しい曲調であっても生き生きと大きく踊っていた姿にああ感心。

そして芝居心が光っていたのは赤ずきんと狼。赤ずきんは3人体制で、時として単に生徒の人数や配役の都合で複数人数になったかと思ってしまうこともある中
3人いることで寧ろ赤ずきんの中に潜む好奇心や怯えがより明快に伝わり、何よりも3人の呼吸が抜群に合っていたからこそでしょう。
恐らくは小学校中学年頃の生徒さん達と思われますが、立派な舞台人です。
また狼さんが怖過ぎずされどぴりっと刺激も投入した塩梅が絶妙で、子供も大勢来ている発表会だからといっておっかな過ぎてもいけないですし
しかし緩くし過ぎると子供は飽きてしまう難しい役どころですから創意工夫を入念になさっていたと推察いたします。
赤ずきんの逸話といえば、現在ダンスマガジンに連載を寄稿されている新国立劇場バレエ団プリンシパルの米沢唯さんのお話で
米沢さんが深川秀夫さん振付の『眠れる森の美女』にて赤ずきんを踊った生徒時代、お父様と一生懸命練習された成果を
赤ずきんが面白いと思ったのは初めて、と深川さんがとても褒めてくださったと綴っていらした内容が
思い起こされます。清水アカデミーさんのチーム赤ずきんの結束に再度拍手です。

ナチュラル且つエレガントな魅力にうっとりしたのは猫ペア。変に可愛こぶると媚を売っているようにも見えてしまいがちな白い猫ですが
あくまで美しく優雅に、ほんの少し色っぽい目や仕草で見せていた点がお見事。
普段は猫脚のふかふかソファーで寛いでいそうで、キラリとした姫風のチュチュもたいそうお似合いでした。
長靴を履いた猫の石黒善大さんの造形も上手く、やり過ぎないが良き味を出す名手。背丈は大きくもどこか愛嬌もある猫さんでした。
キャラクター分野においてはいつも安心感を与えてくださり、何度か触れておりますが東京シティ・バレエ団公演でのカラボス、そして
昨年5月に札幌で開催されたご出身スタジオ久富淑子バレエ研究所創立65周年記念公演『シンデレラ』での(訳あって札幌まで飛んで観に行きました管理人でございます)
まろやかさもある嫌味のないチャーミングなお姉様も嵌り役で今も忘れられずにおります。

フロリナ王女と青い鳥はゲストの吉野壱郎さんにはだいぶ舞台が狭い!?本気で跳んだら会場飛び出し
渋谷スクランブルスクエアまで届いてしまいそうな跳躍力と飛距離の長さで、結婚式幕開けの登場でも浮遊する姿やびしっと脚を揃える仕草、全体に気品もあり
フロリナ王女を見守る視線や腕の取り方もとても優しい。だからこそ当初の予定のフロリナ王女、観たかったとの思いは尽きず。
代役務められた教師の方は勿論急ピッチで仕上げたとは思わせぬ余裕と優美さがあり心から讃えたいばかりですが
作品の時代考証や原作読む大切さに口煩い踊れぬズンドコドッスン管理人の意見にも耳をきちんと傾ける恐るべき素直で謙虚な性格で
バレエ習うために生まれてきたような容姿にも恵まれながら調子に乗った発言態度を取った姿なんぞ一切見せたことがない我が愛する後輩よ。
対して群馬県のあるビジネスホテル大浴場脱衣所でバンド遠征者と会話を交わしたとき、バレエ鑑賞遠征で来た旨を話したところ
ああ、バレエ習っていそうですねと言われるも、考えてみれば気遣いや社交辞令であったと気づかず浮かれていた
腰位置低く膝下短き身体条件である私とは外見中身ともに大違い。
それは横に置き、たくさんの練習重ねて文献も熟読してきた準備は決して無駄にはならぬはず。いつの日か披露を心から待っております!!!

それから、眠りに1点注文を許されるならば、舞台背景が地味な印象を与えた点。柱は綺麗に描かれていながら薄茶色がベースで
クラシックバレエの最高峰と称されフランス絶対王政へのオマージュの極致場面とは言い難かったかもしれません。
発表会でも眠り3幕は鑑賞機会が多く、また子供の頃から宮殿やお城の写真集を読み漁っていたオタク気質な私の意見で説得力には欠けると承知しておりますが
もう少し重厚或いはゴージャス煌びやかなデザインであれば尚のこと絢爛な雰囲気が出たかと思います。

第3部は様々な作品からの構成でトップバッターは『エスパーナ』でワルトトイフェルの曲にのせて休みなく駆け抜ける振付。
全員ピンク系の襞が段状になったスペイン衣装で、白いお扇子も粋に決まっていました。
発表会の定番で夏に観ると瞬時に涼しげな気分に浸れる『海と真珠』がそれはそれはピュアで無垢な魅力全開で
溌剌とした愛らしさ、ほんわかとした優しい空気感、それぞれの個性も引き出されていて癒しのひととき満喫です。

音楽構成も惹かれたのは女性2人と男性1人で踊られた創作の『ワ・ル・プ・ル』。グノー作曲のファウストよりバレエ音楽の中の3曲で構成され
私の中では数あるグノーの曲の中でも上位3曲に入る作品ですので、グノー産極上純米吟醸3種利き酒セットをいただいた気分。
1曲目がヌビアの踊りで社交ダンス風に、2曲目はヌビア奴隷の踊りでタッタカタカタカと速めのテンポで摩訶不思議なポーズも繰り出し
最後はフリネの踊りで仰々しく荒れ狂う波の如く迫力ある曲で締め括られました。
3人でこの3曲目を表現するのは身体の限界を試されるであろう曲調であっても力強いパフォーマンスで舞台を覆い、拍手でございます。

花とブルーの世界が品良く広がりを見せていた『シルヴィア』も印象深く、版は色々あれど、もしや私が『シルヴィア』パ・ド・ドゥの決定版と言わんばかりに
いたく気に入っている39年前に収録のABTミックス・プログラムにおけるマーティン・ヴァン・ハーメルとパトリック・ビッセルの衣装を参考かと想像、特に男性。
(他にハーヴェイとバリシニコフのレ・シルフィードやグレゴリーとブフォネス主演でソリストにジャフィーも入っているパキータ等同時上演、私が一番好きだった頃のABT公演)
生徒さんが丁寧端正で軸もぶれず、上質な踊りを見せてくださいました。

プログラムには主宰の清水先生がバランシンの『コンチェルト・バロッコ』日本初演時の主演姿写真も掲載。
シンプルな白いレオタードスカート姿でのアラベスク姿がたいそう美しく、載せてくださりありがとうございます。
先生はきっとこの作品をたいそう愛していらっしゃり、だからこそ第1部にて女性の生徒さんが2名で踊られた
『バロッコへのオマージュ』も先生が踊られたパートを思わす振付が散りばめられ、当時に思いを馳せつつ鑑賞いたしました。
来年は記念の第40回発表会。大掛かりな上演が企画されているか、今から楽しみが増しております。





帰り、マークシティ隣のダイニングにて、スペイン赤ワインと生ハムで乾杯。エスパーナのピンク色の段状襞衣装を眺めていたらこの組み合わせで味わいたくなった。



入口のショーケースが目に留まり注文、あまおうのチーズケーキ。甘さを抑えた、たいそう品ある味。ワインにも合いました。
そしてこのピンク色、今回のポスターやプログラムの色味に重なるだけでなく、我が愛する後輩をイメージする色でもあり
大輪の優しいピンク色の薔薇を外見内面双方からすぐさま想起。
清水バレエさんの舞台の余韻に浸りつつも、辿り着くのは足を頻繁に運ぶきっかけとなった彼女の存在なのです。

0 件のコメント: