2022年7月26日火曜日

燃え尽きた灼熱の3日間   東京バレエ団ベジャール・ガラ  7月22日(金)23日(土)24日(日)


22日(金)23日(土)24日(日)、東京バレエ団ベジャール・ガラを3日間観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2022/bejart-gala/


※キャスト等はNBSホームページより

ギリシャの踊り

音楽:ミキス・テオドラキス
The performance of this work is licenced by Schott Music Co.Ltd.,Tokyo on behalf of Schott Music GmbH&Co.KG.

Ⅰイントロダクション
Ⅱパ・ド・ドゥ(二人の若者):岡崎隼也-井福俊太郎(22日、24日)  岡崎隼也-鳥海  創(23日)
Ⅲ娘たちの踊り
Ⅳ若者たちの踊り
Ⅴパ・ド・ドゥ:足立真里亜-山下湧吾(22日)  足立真里亜-樋口祐輝(23日)   工桃子-山下湧吾(24日)  
Ⅵハサピコ:伝田陽美-ブラウリオ・アルバレス(22日)   上野水香-ブラウリオ・アルバレス(23日)  政本絵美-ブラウリオ・アルバレス(24日)
Ⅶテーマとヴァリエーション
ソロ:樋口祐輝(22日)  柄本  弾(23日)  池本祥真(24日)
パ・ド・セット:
金子仁美、中川美雪、涌田美紀、髙浦由美子、中沢恵理子、工 桃子、長谷川琴音(22日)
二瓶加奈子、三雲友里加、足立真里亜、加藤くるみ、安西くるみ、上田実歩、瓜生遥花(23日)
秋山 瑛、金子仁美、涌田美紀、髙浦由美子、中沢恵理子、安西くるみ、長谷川琴音(24日)
フィナーレ:全員


昨年のベジャール・ガラに続き鑑賞。静かな波音が響く中で群舞の並びが手脚をそっと上げる振付が穏和な幕開きを彩り、すぐさま海へと誘われました。
女性は全員レオタード、男性は裸体に長いパンツであるシンプルな格好が汚れなき海の景色を引き立てる爽やかさです。
恐らくはベジャール作品の中では最もクラシックの要素を押さえた振付と思われ、群舞もあればソロ、男女2人、男性2人の場もあり。
今回3日間連続で鑑賞しようやく気づいたのは男性と女性の群舞それぞれに全く異なる動き方を同時に配し、より立体感に見える構造である点。
優しくも哀愁を含んだ曲の数々にも聴き入り、緩急自在に歌うように響くギターの音色も魅力に富んで振付と音楽が溶け合う展開に度々心癒され
笛のような楽器も用いられていて、ギリシャの伝統楽器かもしれません。踊りの見せ場が淀みなく続き、
中でも足立さんの全身から放つ晴れやかな清涼感が目も心も満たされた思いです。
パ・ド・セットにおける女性ダンサー達の徐々に急速になっていく曲調と絡むように切り替え巧みなポワントワークや上体の捻りも見事で
やがて再び大勢が舞台上に集合し点在した状態で幕開けと同じ光景を描き出すエピローグが静かな余韻を残しました。
振付はしっかりとしたクラシックを基盤にしつつ自由度を与えて膨らませた清爽な気持ち良さに、
そして場面によっては裸足であるため砂浜の感触が肌を摩る感覚にも浸れる作品です。


ロミオとジュリエット

音楽:エクトル・ベルオリーズ

ジュリエット:秋山 瑛(22日、23日)   足立真里亜(24日)
ロミオ:大塚 卓(22日、23日)   樋口祐輝(24日)

こちらも昨年に続く再演。秋山さんの物憂げと熱情双方帯びた踊りに注目し、四肢が感情を柔らかく語って愛おしいばかり。
真っ直ぐで清らかそうな、ラインも綺麗な大塚さんロミオとはふと手を取り合う箇所までもが互いを慈しむような愛情が伝わり、深く優しい愛を描画していた印象です。
足立さんは愛らしい容姿はそのままに何処か大胆なリード力も見せ、ジュリエットの闊達ぶりを受け止める大らかな樋口さんと好相性。
抱擁やポーズ1つ1つがパワーに溢れ、強く熱く決然と愛を交わす2人でした。
再度唸らせたのは抗争場面挿入の上手さで後半部分では若者達の争いに囲まれ時として巻き込まれる状況までもが描写され、実質パ・ド・ドゥ構成ではない点。
大概ならば2人の愛の交わしの場面に相応しくないと感じ取りがちでしょうが、それどころか単に幸福を謳歌するだけでない
常に危険や犠牲と隣り合わせな、命懸けの恋に走る2人をより浮き彫りにしている描写と思える秀逸な構成で
2人の白い衣装は流血を伴う争いにも負けぬ純粋な愛を象徴しているとも捉えております。
両ペアの持ち味の違いも堪能でき、また観たい作品です。


バクチⅢ

音楽:インドの伝統音楽
シャクティ:上野水香(22日、24日)   伝田陽美(23日)
シヴァ:柄本 弾(22日、24日)   宮川新大(23日)


恐らく初鑑賞作品。シャクティとシヴァのパ・ド・ドゥを軸に展開する儀式的な振付で祈りを捧げたくなる、
お香が焚かれていそうな空間彷彿の摩訶不思議な音楽にのせて展開。響いてはすぐさま消える鈴の音色も緊張感を与え、
全員赤いタイツを始めぴたりとした衣装もユニークながら燃えるような色彩感に目を奪われます。
上野さんのラインから醸す妖艶さに惹かれ、稀にポジションの組み方でひやりとした箇所はあれど
浮世離れした雰囲気、繰り出す脚線による舞台支配は思わず背筋を伸ばしたくなる踊りです。
一方伝田さんは渋味を内包し突如鮮やかに舞う厳粛な姿から目が離せず。静寂した空間であってもふと滲む情念や
片脚立ちでもう片方の脚を絡めるポーズも凛然としていて手を合わせたくなったほどでございます。


火の鳥

音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
The performance of this work is licenced by Schott Music Co.Ltd.,Tokyo on behalf of Schott Music GmbH&Co.KG.

火の鳥:池本祥真(22日、23日)  大塚卓(24日)
フェニックス:柄本 弾
パルチザン:
伝田陽美、三雲友里加、加藤くるみ(22日、24日)
金子仁美、中川美雪、平木菜子(23日)
宮川新大、樋口祐輝、岡崎隼也、生方隆之介、鳥海  創(22日、24日)
井福俊太郎 、樋口祐輝、生方隆之介、岡﨑   司、山下湧吾(23日)


「訳あって」5年半前に作品の虜となり、念願叶ってようやく初の生鑑賞。池本さんは初日こそ緊張気味ではあったものの
翌日は瞬発力や力を押し出す跳躍の張り具合も堂々たるもの。パルチザンの隊員を率いるパワフルなリーダーとして縦横無尽に舞台を駆け抜ける活躍でした。
大塚さんは技術やコントロール力は不安定な箇所あれど、冒頭の闇深い翳りの掴みは良く、
隊員同士正面を向いて手を取り合う箇所から苦悶を溜めては静かに吐露する表現にも目を見張って再演時の主演も楽しみ。
まだリーダー成り立てほやほやな様子で伝田隊長に発破をかけられている様子も目に浮かぶ初心さもこれはこれで魅力に映り
大役経験豊富な池本さんに対して昨年の2月公演『ジゼル』ではまだウィルフリードで以降子ども眠りや
全国公演での『くるみ割り人形』主演に抜擢され始めた大塚さんは個性もキャリアも全然違っているからこそ自ずと役に表れる各々のカラーを満喫です。

そして生で全編通して鑑賞しやっとこさ分かったパルチザンの見せ所。身体から静かに発される闘志の蠢きを重低音の中での膝を曲げた低姿勢と放散による体現に
冒頭から細胞が掻き乱される感覚が肌を伝いました。作品全体を見渡すと静と動のメリハリや火の鳥とパルチザンが呼応し合う展開にも唸らせ
まだ音楽が鳴り止んでいる間に集合して正面を向き手を繋ぐポーズで空気を変えてから音楽が始まる冒頭部分や
音楽が一気に変わる中間部分に入る前も無音の中でふたたび集合しては決意を新たにする場を設け、次の躍動感溢れる場面へと一気に突入する流れが痛快。
火の鳥が跳躍を繰り返し対角線上に突っ切る最中には互いに鼓舞するように曲と連動してパルチザンも畳み掛け
四方八方で時にはソロも用意。中でも伝田さんは今回私の中で最たる光なる存在で鋭く締まりある身体の使い方に目が行き、回転から急降下しての床への這いつき体勢や
そこから火の鳥を見据える眼差し、音楽がかかる前の冒頭にて両腕をさっと差し出し、決意をぐっと滲ませる牽引も痺れました。
同じパートを踊っていらした別日の中川さんの男前な勇ましさにも驚愕です。

ところで、繰り返しにはなりますが5年半前を機にどうしても生で観たいと願ってきたこの作品。
バレエは基本生で鑑賞派で劇場空間で出会う鮮烈な感性を大切にしたいとしてきた私が珍しく何度も再生し目にした『火の鳥』映像は
全体のあらゆる部分を摘まみ出した2つのリハーサルを織り交ぜた構成で音楽は
後半部分の躍動感溢れる箇所を使用しており(当記事最下部に貼り付けました)前半部分の静かな箇所は知らぬまま時が経過。
視聴しようと思えば東京バレエ団公演DVDの入手や動画にアップされているパリ・オペラ座バレエ団の映像もあったものの
いつか生で鑑賞したときまで楽しみはとっておきたいと思い、さらりと見た程度でした。
頼みの綱は東京バレエ団公演と願って早5年半。輪になって手を触れながらの誓いや火の鳥のゆったりとしたソロ
集合しての片手を掲げるポーズへの過程を始め、流れを把握できたのは大きな収穫でございました。
さらりと視聴していながらもオペラ座の映像では主演のバンジャマン・ペッシュよりもパルチザンの1人を踊ったアリス・ルナヴァンの
潔い立ち居振る舞いや俊敏な踊りが強烈に残り、そのパートの生鑑賞も楽しみでしたので伝田さん、中川さんのダブルキャストで鑑賞できたことも幸運です。

それから火の鳥と東京バレエ団は縁深き関係にあるようで、今回のプログラムに掲載されていた斎藤友佳理監督や飯田宗孝さん、
高岸直樹さんや首藤康之さんらが出演していた1990年当時の写真からふと思い出すのは『舞楽』やノイマイヤー『月に寄せる七つの俳句』初演の頃のベジャールのインタビュー記事で
世界各地のバレエ団で『火の鳥』がレパートリー入りし新鮮さが失われる事態を避けたいため10年は上演権を引き上げて上演を取り止めていたが
しかし10年経ってベジャールのバレエ団と東京バレエ団のみ(当時)上演を許可したこと。
それから本来は上品な鳥としてイメージしていたはずがどんどん荒っぽいものになってしまったが
東京バレエ団の火の鳥は本来のイメージと合っているといった内容であったかと思います。
そして2022年、池本さんと大塚さんはそれぞれ個性こそ異なれど、荒々しさは出さず、力強くも規範から大きくはみ出さずしなやかで品格ある鳥であった印象を私は抱いており
ベジャールさん本人がご覧になったらどんな感想を口になさるか、聞いてみたいと興味が沸いてきます。


ベジャールの様々な作品を一挙に鑑賞でき、目的はさておき人生初東京バレエ団公演全日程通い詰め、5年半前から願っていた『火の鳥』生での鑑賞も遂に実現。
燃え尽きた灼熱の3日間でございました。『火の鳥』再演時も足を運ぶ気満々でおります。





ロビー入口からすぐ。赤々とした花達と火の鳥の饗宴。初めて私もこの場所で記念撮影していただきました。
シャッターを押してくださった新国立常連の方に感謝でございます。



こんなお店もございましたので記念に訪問。自家製麺火の鳥。



辛口味噌ラーメン。焦がし唐辛子のトッピングもあり、香ばしい辛さとコシが強い麺も美味しく、体内から燃えて参りました。



公演前のお昼、公演初日前日に迎えた人生の節目をお祝いしてくださいました。ありがとうございます。
昨年夏のベジャール・ガラの終演後に1人で来たお店でゆったり寛げる空間が気に入っておりましたので、嬉しい再訪です。
そのときはアルコール出せぬ宣言が一時だけ解除された時期で、記録写真に写る白ワインがその証拠。
前月はベネチア料理店でワイングラスでブドウジュースをいただいたり 、翌々週あたりからはノンアルコールビールで
気分は浦島太郎な桶に山盛りなお刺身で節目祝いをした写真が残っており、まさにつかの間のアルコール外食でございました。
こちらは今回シェアしたスープ。器が立派で、顔を突き出しているのは獅子。管理人、生まれがあと2日ほど遅ければ
獅子座でございましたが百獣の王なんぞ似合わないとしばしば言われます。
パルメザンチーズで味を整えるのも変化があって面白く、そうだ昔親がスパゲッティ用に粉チーズを取り出してくると
すかさずパルチザンチーズと口走った管理人。あのときの親の怪訝な表情は今となって実に不可解な発言であったか思い知らされます。



トマトたっぷり、赤が眩しいピザ。少し辛めでスパークリングワインが進みます。偶然にも、会場の装飾生花と似通った色合いで
火の鳥ピザか或いは今年発売から55年にあたるはず、美空ひばりさんの『真っ赤な太陽』も脳内再生。耳に残る名曲です。



初めて東京文化会館のテラスへ、自分誕生日おめでとう笑。気温は高めでしたがそよ風に包まれる中で
青空や国立西洋美術館を眺めながらの赤ワイン、美味しうございました。
生で観たいと願って願って5年半、まさか日程が節目翌日から3日間となるとは、東京バレエ団さんからのお祝いと思って乾杯です。



3回公演全て鑑賞、我が鑑賞史において記念に残る東京バレエ団公演です。



バクチの音楽を聴いているとカレーを欲したため、駅構内のこちらへ。すぐ食に走る管理人、だから体型が(以下略)
しかし美味しく味わい健康でいることが一番でしょう。飲食飲酒三昧であった三連休明けの健康診断も無事終了いたしました。
(但し結果通知はまだこれからでございます。警告系の結果が出ていませんように)
さて話をカレーに。上野ですからナンにはターバン巻いたパンダちゃんの焼印です。
夏限定レモンチキンカレーが爽やかな酸味があり、すっきり。我が王道ほうれん草カレーはぎゅっと食感と旨味が詰まっていて好みでございました。
きっと10月公演『ラ・バヤデール』終演後も上野駅周辺にてカレーを味わう自身が今から目に浮かんでおります。



初台にも時々東京バレエ団のポスターが掲示されていますので、更には指導はこのときも小林十市さんが担当されましたので以下お許しください。
5年半前2017年お正月に発見し運命の分岐点の象徴となってしまったトゥールーズ・キャピトル・バレエ団のリハーサル映像。
2017年1月最初の当ブログ記事においても酉年の幕開けにちなんでさらりと紹介いたしましたが、本音はさらりどころではなかった5年半前のお正月です。
ご年齢からは想像がつかぬ渋い貫禄、内側から沸き上がる雄々しい力強さや熱さに大衝撃でごさいました。
うう、タイムスリップして観てみたい、或いはいつの日か観たいと願望が一層強まっております。

0 件のコメント: