2022年7月22日金曜日

平和を祈願 キエフ・バレエ・ガラ2022 7月18日(月祝)





7月18日(月祝)、八王子にてキエフ・バレエ・ガラ2022を観て参りました。
https://www.koransha.com/ballet/kyivgala/


ゴパック

5年前のキエフ150周年ガラ以来、女性も大勢登場する大掛かり版で披露。この後のプログラムではクラシックをきちんと踊る姿勢に再度感嘆した
キエフのダンサー達ですがそうです、民族舞踊の訓練もしっかりとなされていて足腰の強さも驚愕。
しかも体操にならず、音楽と戯れながら観客を楽しませ手拍子も促し、場所柄多めであった子供の観客も大喜びでした。
男女とも赤系の衣装で、女性の頭に花が連なったカチューシャも可愛らしい。


ラ・シルフィード
アレクサンドラ・パンチェンコ   アンドリー・ガブリシキフ

パンチェンコはすらりと背が高く、指先や脚先から艶やかな香りを放つ色っぽい妖精。粗さが一切無い澄み切ったステップにも魅せられました。
ガブリシキフは好奇心旺盛そうな青年ジェームズ。みるみるとシルフィードの虜となり嬉々とした表情で追いかける様子も微笑ましく、浮き浮き軽快な足捌きもお手の物。
キエフのラ・シルフィードで思い出すのは現在はキエフ・バレエ団副芸術監督を務め、
今回ウクライナと日本の架け橋として奔走され、この方なしには来日公演実現も困難であったであろう寺田宜弘さんがキエフの現役時代インタビューにおいて
25年程前のバレエ雑誌であったか、全幕でジェームズを踊ったときフィリピエワにとても助けられたと語っていらした記事。
両手を胸の前で交差した妖精ポーズでジェームズに何かを訴えるフィリピエワのシルフィードの愛らしさと
困り果てる寺田さんジェームズ青年の並びの舞台写真が今も忘れられずおります。


ディアナとアクティオン
アンナ・ムロムツェワ   ニキータ・スハルコフ

ガラでの王道パ・ド・ドゥの1本。華麗な技巧の見せ場たっぷりな振付であっても、お2人とも派手さに走らず格式高く、品良く踊って魅了。(これ大事)
ムロムツェワは一見クールそうですが全身を美しく伸ばし長い手脚を持て余すことなく強弱を自在に付けながらコントロール。
スハルコフはテクニックお披露目大会状態に決してせず(私の中では本当に大事な要素!) 端正でありつつほのかに野性味も醸し、張りと抑制の効いた跳躍も惚れ惚れです。

凛とした硬質な女神と忠実な狩人といったペアで本来のギリシャ神話の展開とは異なるのでしょうが、実に品格のあるパ・ド・ドゥを堪能いたしました。


海賊より  花園
メドーラ:カテリーナ・ミクルーハ
ギュリナーラ:アレクサンドラ・パンチェンコ

ミクルーハは溌剌とした愛くるしさ、パンチェンコは流れるような美の連なりを体現。抜粋ではしばしば上演される場ですが
お2人ともクラシックをきちんと踊りつつぱっと華やぐオーラも兼備。あとにも述べますが
クラシック・バレエがいかに美しく至高の芸術であるか、再度今回のキエフのダンサー達から教わった思いがいたします。


ひまわり

葉加瀬太郎さんの馴染み深い曲に寺田宜弘さんが振り付けた作品。パステルカラーの衣装を着けた男女のダンサー達が爽やかに清らかに憧れや夢を思い描くように踊り
ベースはクラシックでありつつ深いプリエや全身を音楽を目一杯使って時に潔く大胆に自由度高く表現。
振付に込めた意味合いとして、「戦争はいつか必ず終わる」「新しい未来に向けて歩み出す若者達」と(確かこういったお話であったかと思います)
アフタートークショーにて静かにされど力強く言葉にして発していらした寺田さんのお話が今も頭を過ぎります。
11歳の頃にはキエフバレエ学校に留学され、当時の寺田さんレポート記事が掲載された書籍は今も持っておりますが
1980年代のソ連にいかにして日本人の男の子がキエフにバレエ留学できたのか当時はまことに不思議であったと
一生懸命ジャンプをするあどけない寺田さんの写真を目にし、バレエに関心を持ち始めてまだ間もなかった私は思ったものです。
あとになって寺田バレエスクールとキエフバレエ学校の姉妹校提携について知ることになったわけですが
短期ではなく長期の留学を経てそのままプロとしての歩みもウクライナを生活の拠点にされてきた
寺田さんからすれば、胸が引き裂かれる思いでこの数ヶ月過ごされてきたと察します。若者達に平和な未来が訪れるよう、切なる願いが込められたのであろう作品です。


サタネラ
カテリーナ・ミクルーハ   マクシム・パラマルチューク

ミクルーハは盤石の技術を光らせた上で魅惑的な可愛らしさを品良く明示。余計な装飾をせず音楽に気持ちを寄せながら
一音一音を大切にステップに込めている踊りやパートナー、そして観客とも会話を楽しんでいる様子がたいそう好印象でした。
パラマルチュークは実に優雅で登場時は両腕をふわりと掲げたポーズで暫し静止。レ・シルフィードの詩人を彷彿させました。
ガラでは大定番のこの作品、男性の登場の仕方が千差万別で今回のような優雅なポーズもあれば
颯爽と飛び込んでくる場合もあり、或いは舞台袖カーテンから顔をひょっこりと表して観客に笑みを送る
突撃!隣の晩ごはん風なときもあり。サタネラを観るときの我がポイントです。


瀕死の白鳥
エレーナ・フィリピエワ

ウクライナの人々の嘆きを一身に背負い舞っているかのようで人間離れした腕使いに感嘆。胸に沁みいると同時に
関節の構造を覗き見たくなったほど雄弁で柔らかな動きに見入ってしまいました。
アフタートークでの「皆さんとウクライナの人々の痛みを分かち合いたい気持ちで踊った」とのお話も心を打ち、今も思い起こされます。
19歳でのシンデレラ役デビュー時からずっと好きなダンサーで、優美であたたかな踊りを録画映像で何度観たことか。
数年前監督に就任し来日公演を楽しみにしておりましたが世界規模の感染者増加で中止になり、今ウクライナは戦禍に。
大変な状況下、少人数であっても来日が実現し嬉しさで一杯です。


バヤデルカ第2幕より

ガムザッティ:アンナ・ムロムツェワ
ソロル:ニキータ・スハルコフ
黄金の偶像:アンドリー・ガブリシキフ
マヌー:カテリーナ・デフチャローヴァ
エリザベータ・セメネンコ   アナスタシア・トキナ
太鼓:タチアナ・ソコロワ  ヴィタリー・ネトルネンコ

全幕においては嫉妬や裏切り、欲望や憎悪が絡む作品ですが抜粋の今回はそういった負の部分を出し過ぎぬ仕上がり。
ソロルがふとニキヤを思い出し考え耽る場もガムザッティはそっと手を差し出して誘ったりと執念深い凝視は抑え目で
誇り高さや物怖じせぬ堂々たる強さを全員が前面に出していた印象です。
ムロムツェワは気高いガムザッティで、近寄り難い高嶺の花な存在感と隅々まで行き渡った美しさで大らかに魅せ
スハルコフは儀式に臨むに相応しい、戦士らしい勇猛さと端正な品もバランス良く備え、大技も誇示せずされど疾走感のある踊りで魅了。
ターバンの筋の入り方が我が席からは時々給食当番の帽子に見えた瞬間もありましたが、それはそれは崇高な姫と戦士な並びも目の保養でございます。

太鼓は太鼓無しであっても男性群舞付きで全員赤い衣装姿で歯切れ良い楽しさで沸かせ、マヌーは瑞々しい愛嬌を含ませた軽やかなトリオ。
全身を金粉で塗るわけにいかずでも(黄土色の総タイツな素材であった)ふわっと浮かび上がる跳躍で盛り上げる黄金の偶像も大活躍で
オウム隊やワルツ隊不在のためコーダはチュチュ組も太鼓、マヌー、偶像も全員集合。人数の都合とは分かっていても一体感があって良き演出でした。

八王子公演限定であったのか最後は観客が一斉にひまわり団扇を掲げ、客席を背景にダンサー達が並んで集合記念写真撮影。
最初は光藍社さん側のカメラマンによる撮影で、続いてガブリシキフだったか自前のカメラで観客にも撮影を願い出て勿論客席も快く反応し再びパシャリ。
休憩を挟んでトークショーも開催され、フィリピエワ、スハルコフ、パンチェンコ、寺田さんが登壇。
今回披露した作品について、また今冬の来日公演(オペラと管弦楽団も来日)に向けての意気込み等とても真摯な語り口でお話しくださいました。
全幕物は『ドン・キホーテ』上演予定で、私の勝手な思い込みではありますが決してバジルの想像が容易ではない!?スハルコフもバジル役で出演予定とのこと。
興味が沸き是非足を運んでみたいと思っており、その前に来月お盆過ぎに出演される東京都内での舞台も鑑賞予定でおり、心待ちにしております。

総じてダンサーは皆癖が無く派手さに走らず、美しく丁寧にクラシックを踊る姿勢が好印象。サタネラやダイアナ、バヤデールの婚約式等
王道の古典を堪能すると同時に民族舞踊の面白さも再確認。双方のきめ細かな訓練の賜物なのでしょう。
大変な情勢下よくぞ来日してくださったと思いますし、国外に避難し住まいやレッスン場は確保できているにしても
故郷の惨禍はどれ程精神に堪えていることか。家族や親族を国に残している方もいるでしょうし
また自らの意志で国に残る劇場関係者も多くいると耳にしております。戦争終結を一層願う舞台でした。






フィリピエワ



スハルコフ



ムロムツェワ



お昼は吉祥寺駅近くの間借りのウクライナ料理屋さんBABUSYA REYへ。



冷たいボルシチスヴェコルニク。美味しくいただきました!ウクライナも夏は場所によっては40度超えの日もあるそうです。
左はチキンキーウ。



チキンキーウの切れ目を拡大。バターがするすると流れ出てきます。
脂身がないお肉であるため後味にしつこさが無く、ビールともよく合います。
小さなお店で少人数での利用向けですが、スタッフの皆さんもとても親切です。次はペリメニ(餃子)メニューやデザートもいただきたいと思っております。



帰り、森の中にて出会いそうなお家の内装のお店にて。 ユニークなアルコールも豊富で、
飛騨のウォッカをソーダ水で割り、自家製ジンジャーシロップを混ぜたカクテルで乾杯。芳醇さと爽快感を行き来する味でした。

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