2020年5月31日日曜日

【お茶の間観劇】【バランシン周遊】ニューヨーク・シティ・バレエ団『ドニゼッティ・ヴァリエーション』他

ニューヨーク・シティ・バレエ団から配信されていたバランシン振付『ドニゼッティ・ヴァリエーション』を初めて鑑賞いたしました。
日本では20年前に小林紀子バレエシアターが上演し、もしやと思い調べたところ<ステイジド・バイ:ナネッタ・グルーシャク>の文字に胸躍り
もっと遡れば足川欽也さんがガラで踊っていらしたと記憶しております。
女性7人と男性4人程度の構成の入れ替わり立ち替わり踊る緩急に富んだ展開で、
主軸を務めたアシュリー・ボーダーの身体コントロール力、突き刺すような脚力の強さに惚れ惚れ。
ボーダーは一昨年の『世界バレエフェスティバル』Bプログラムにおける黒鳥グラン・パ・ド・ドゥでの
優雅さが無いに等しい(失礼)体育会系オディールに驚きを覚えましたが、2013年のNYCB来日公演では『タランテラ』で
急速テンポでも一瞬たりとも揺るがぬ盤石のテクニックを披露して本家本元の誇りを示し、このとき以来の好印象。濃いピンク色の村娘衣装もお似合いでした。

音楽はガエターノ・ドニゼッティの『ドン・セバスチャン』より、ニューヨークシティ・バレエ団初演は1960年でメリッサ・ヘイドンが主役を務めたとのこと。
ドニゼッティはバレエではなかなか聴く機会がないものの2006年の世界バレエフェスティバル幕開けを飾った
オーストラリア・バレエのルシンダ・ダンとマシュー・ローレンスによる『ラ・ファヴォリータ』にしても
ルグリ振付のパ・ド・ドゥにしても(曲は恐らく同じ構成)クラシカルで祝祭感があり、また観てみたい作品です。
兄ジュゼッペ・ドニゼッティの音楽は昨年八王子での発表会における魔王登場時、時代劇の大物参上を彷彿させた曲で強烈な印象に残っております。

さて、ほぼ毎週末劇場での鑑賞を当たり前のように行っていた以前では特例を除いては考えられなかった動画延々検索行為に走ってしまったところ
先に述べたNYCBよりも心を掴まれた映像を発見。ゲルシー・カークランドとミハイル・バリシニコフが踊る
1978年のアメリカンバレエシアター『テーマとヴァリエーション』です。公式ではない配信経緯不明のため大々的には紹介いたしませんが
カークランドと言えば1977年にスタジオ収録されたバリシニコフと組んだ『くるみ割り人形』での幸が薄そうな(失礼)クララと
麻薬中毒に陥り楽屋でも倒れ、のちに執筆した暴露本の印象ぐらいしかありませんでしたが、まさに完成されたプリンシパル。
ステップやポーズ1つ1つがクリアで正確、実にエレガントでクラシック・チュチュを着けた姿は初見でしたが脚がすらりと真っ直ぐ伸び
クラシック・バレエの真髄に魅せられた気がいたします。バリシニコフの無駄のない美しい跳躍や澄み切った品の良さにもこれまた見入り
コール・ドも精度高く、誠にゴージャスな舞台。総合力に圧倒された次第です。尚衣装はプリンシパルは白、他は赤系で纏められていました。
1980年前後辺りのABTのコール・ドにも憧れを抱き、シンシア・ハーヴェイとバリシニコフの『レ・シルフィード』や
シンシア・グレゴリーとフェルナンド・ブフォネスの『パキータ』は30年前から映像で目にしておりましたが
大人数のバランシン作品においても呼吸の合った舞台を堪能です。

その後は『ユニオンジャック』に到達。同じベースの振付で披露された関西や四国の舞台を思い返し再び県境を跨いでの移動が自由になる日を夢見つつ
(大阪にて井澤駿さんが踊られたこともあり、セーラー服でスキップなさっていても王室から派遣されたであろう随分上品な水兵さんでした笑)
『スターズアンドストライプス』では日本のバレエ団としては全編初上演を果たしたNBAバレエ団の公演が思い起こされました。

ところで余談ですが管理人、今春以降飲酒量が激減。劇場帰りの乾杯が習慣化していたにも拘らずお茶の間観劇においては酒瓶に手を触れる行為にはなかなか至らず
この日は焙じ茶を飲みながらのバランシンでした。肝臓は弱まったか、それとも肝臓の働き方改革遂行によりむしろ丈夫になったか
新国立の巣篭もりではイタリアワインを用意して臨み確認したいと思っております。

2 件のコメント:

さくらもち さんのコメント...

ドニゼッティって兄弟だったのか、知らなかったー
それはともかく、ドニゼッティ・ヴァリエーション面白かったです。
これ、2回見て思ったのですが、バランシンによる「ナポリ」のパスティーシュなんじゃないでしょうか。
踊りの構成や衣装の感じ、ブルノンヴィルをさらに難しくしたような振付など、ワタシ的には間違いないと断言しますっ。
そしてアシュリー・ボーダー、この2年ほどで急にたくましくなってしまったのですが、この頃はまだかわいいのですよねー。
今回の配信は完全に記録用映像のようですが、見せてもらってよかったです。
バリシニコフとカークランドの「テーマとヴァリエーション」、明日朝から配信があるみたいですよ。
Lincoln CenterのYoutbeチャンネルで、正式な映像ですわよ。今日はNYCBの真夏の夜の夢。

管理人 さんのコメント...

さくらもち様

こんばんは!大変嬉しいご感想と情報をありがとうございます!
ドニゼッティ・ヴァリエーション、面白い作品ですよね。
技巧が散りばめられていてもあくまでも爽やかで、後味が良いと思いました。
ああナポリ!衣装のイメージも振付構成も重なりますし
細かいステップをたくさん用意しながらもサクサクと駆け抜けるように展開する流れも似た印象を受けますね!
そうなんです、この頃のボーダーは愛らしさと強さ、職人ぶりがバランスよく備わっているのですよね。
いつのまにかガッシリとしてしまって2018年のバレエフェスでは驚きました。

>バリシニコフとカークランドの「テーマとヴァリエーション」、明日朝から配信…

わあ、ありがとうございます!しかも正式配信ならば堂々と笑、喜んで視聴させていただきます!
バランシン版真夏の夜の夢、実は未見なんです。煌びやかでカラフルな印象はありますが
本家の映像、楽しみたいと思います〜。

ドニゼッティが兄弟で作曲家であることは私も最近まで知りませんでした!
あの夏以来大岡越前のテーマに流れそうな魔王の登場曲が気になってしまい笑、調べたところ
兄はオスマントルコに駐在していたようです。