2020年6月3日水曜日

【お茶の間観劇】アメリカンバレエシアター 1978年リンカーンセンターガラ

リンカーンセンターから配信されている1978年のアメリカンバレエシアター(ABT)ガラを鑑賞いたしました。情報提供いただいた方に深謝。
スターたちが大競演、タイムスリップして観に行きたい公演の1本です。指揮は遠藤明さん、長らくABTの指揮をなさっていたそうです。



リンカーンセンター制作のステイホーム映像


『レ・シルフィード』
レベッカ・ライト
マリアーナ・チェルカスキー
イワン・ナジー

ABTの『レ・シルフィード』といえば、少しあとにバリシニコフ主演で映像化された公演の空気と舞っていそうでありつつも
毅然とした妖精たちの印象が強く残っておりますがこの公演ではより柔らかでふんわり。
フォーキン時代の作品ながら、ゆかしいポーズの取り方やおっとりとした風情といい
ロマンティック・バレエ全盛期へ時空旅行した気分となりました。特にチェルカスキーの夢見心地な表情と滑らかな腕使い、
今にも宙に浮きそうなポワントワークにうっとりするばかり。見間違いでなければ、
コール・ドにエレイン・クドウさん(バリシニコフ主演ドンキでのキトリ友人、青いほう)らしき方の発見も嬉しうございます。


『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥ
ナタリア・マカロワ
フェルナンド・ブフォネス

マカロワが赤紫と黒を重ねた独特の衣装で登場。小柄な身体から放つパワー、オーラの強さに照明が何倍にもなったかと思わせるほど。
ブフォネスの奇を衒わず規範からはみ出ず、跳躍も高いが力みがなく品のある踊りが好印象。グレゴリーとの『パキータ』、また観ようと思います。
そしてマカロワの自伝、もう1度読もうと決意。



先月5月21日にマカロワ版『ラ・バヤデール』初演から40周年を迎えての映像。マカロワからのメッセージもあり。


『テーマとヴァリエーション』
ゲルシー・カークランド
ミハイル・バリシニコフ
※前記事にて書いておりますので割愛しますがゴージャス且つコール・ドの技術、呼吸の合い方も宜し。プリンシパル2人は文句の出ようがない。


『火の鳥』(フォーキン版)
火の鳥:シンシア・グレゴリー
イワン王子:ジョン・ミーハン
王女:レスリー・ブラウン

幕開けから、衣装は新国立劇場バレエ団で採用と同じデザインに懐かしさが込み上げ、
上下が赤く同色の三角帽子で小さな塔のような塀を登って登場するイワン王子のサンタクロースぶりを突っ込むのはお決まりとして笑
そうこうするうちに火の鳥登場。グレゴリーの研ぎ澄まされた肢体、鳥だからと言って過剰に手をヒラヒラバタバタさせずとも
音楽と躍動して孤高で絶対的な存在感。煌めきを抑えつつも装飾多き真っ赤なチュチュよく映え、フォルムの美しさにも身震いがいたしました。
実はグレゴリーは私の鑑賞の原点で、人生初バレエ鑑賞の主演ダンサー。1989年のABT来日公演『白鳥の湖』で
いわゆる可憐系では全くないすらりと背が高くきりっとした佇まいに今回も平伏し、グレゴリーが最初のダンサーである鑑賞歴を誇らしく思えた次第です。
ブラウンのチャーミングで吸い込まれそうに大きな瞳のある姫が愛らしく、侍女たちのりんごキャッチボールも成功と見えたもよう。

近年はベジャール版や(リハーサル場面映像中心ですが)中村恩恵さん版を目にする機会がありましたがフォーキン版は久々に鑑賞。
カスチェイの登場あたりからは舞台を人が覆い尽くし、複数のグループで交互に踊りながら徐々に熱気を帯びていく流れや
中間部からの曲調変化場面における足踏みしながら一斉両手掲げと言いロシア民話の絵本そのままの色彩感と言い、大所帯作品ならではの醍醐味も堪能いたしました。
大人数が必須であるためコール・ドの中にもソリスト投入の事態にもなったと想像。思えば新国立での初演時は
入団間もない菅野さんや米沢さん、他にもソリスト級の方々もコール・ドに入ってのご活躍であったと記憶しております。

昔は良かったとの表現は好ましくありませんし、現在のABTの状況を私が把握していないだけで魅力あるダンサーが今も揃っていることと思います。
しかしそれにしても、この時代の綺羅星なダンサー競演、しかも余所からのゲスト出演や参加ではなく生え抜きのスターが揃っていた時代は
100年が経過してもバレエ団の歴史に刻まれているに違いありません。のちにプリンシパルとして活躍するシンシア・ハーヴェイやシェリル・イエガーも
当時はコール・ドに名前があり、層の厚さにも仰天。ハーヴェイがキトリ、イエガーがキューピッドを務めた
バリシニコフ主演『ドン・キホーテ』が収録から約40年経っても色褪せぬ名映像であるわけです。

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