
8月23日(土)、新国立劇場オペラパレスにてスターダンサーズ・バレエ団「ドラゴンクエスト』を観て参りました。
白の勇者:太田倫功(ボルドー国立バレエ団)
黒の勇者:伊藤陸久(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団)
王女:塩谷綾菜
魔王:大野大輔
賢者:福原大介
戦士:中川郁
武器商人:鴻巣明史
伝説の勇者:久野直哉
聖母:角屋みづき
太田さんの白の勇者は踊りが実にエレガントで、ボーズの決めどころや勢いを付ける箇所においてもあくまで優雅さを前面に出しての美しさで魅了。
ボルドーに在籍され、主要も多々踊っていらっしゃるとのご経歴から予想はしておりましたが、何処を切り取っても上品なお姿でございました。
役柄の設定上ヘナチョコから勇ましさに目覚め冒険へと繰り出して行くわけですが、酒場でのオロオロぶりや女戦士の迫力に負けての右往左往ぶりもとてもナチュラルで大笑い。
しかし誰も抜けない剣を引き抜いて掲げると煌々とした光を全身から放ち、いよいよ王女救出へのハイライトへと向かう期待や興奮を引き起こしてくださいました。
伊藤さんの黒の勇者は力感逞しく、跳躍も豪快。しかし荒々しいのではなくポジション1つ1つがぴたりと綺麗に決まる延長線上に勢いがあり、痛快な立ち回りでした。
部下達を率いての登場も不気味な暗黒の世界観をぐっと押し出していて、シャープな動きで描き出す毒々しさの恐ろしいこと。
パワフルな魅力は勿論あれど一番響いたのは、王女に抱き止められたときに自身の中の変化の兆しを感じ取り戸惑っていたところで
ずっとひた隠し秘めていたのであろう弱さや孤独感に気づき始めてどうしたら良いか分からず混乱する様子が瞬時に伝わり
同時にただ単に白と黒の勧善懲悪な話にとどまらぬ、実は勇者同士は生き別れた兄弟で離れ離れになった過去を知って衝動が抑えられなくなったりと
深いテーマが潜んでいるのも作品の大きな魅力と捉えております。
塩谷さんの王女は凛とした誇り高さのあるヒロイン。 もうすっかり踊り込んでいる役柄なだけあって
会話するように滑らかに踊りながら白の勇者をもリードしていく溌刺とした面もチャーミングです。
先にも触れましたが、黒の勇者に攫われても助けを待つだけのか弱いお姫様ではなく、巨大なドラゴンの模型のある場所に閉じ込められて最初こそは怯えを見せるも のの
黒の勇者に語りかけたり、やがては救出に来た白の勇者が優勢になっても黒の勇者の前に立ちはだかって争いでの解決を止めるよう訴えかけたりと
持ち前の優しさと強さで仲介役に入る勇気は胸を打つものがありました。
戦士は中川さん。スタダンに移籍以降『コンサート』でのマダムや『シンデレラ』継母、『コッペリア』ジプシーといった美熟女の役柄に配される機会が多くもしやと思っていたら的中。
男前で潔く、威厳がありながらも余りにサバサバしているためかそこがユーモアにも映る戦士でございました。
鞭で床を叩いては持ちながらブンブンと踊り回るところも軸の強さを生かして揺るぎないバトルを繰り広げ、
武器が何本も入った荷物を軽々と肩に担ぎ上げる姿の勇ましさには惚れるしかありません笑。
牧時代にはリーズやオーロラ姫を務めていたはずなのですが、しかしそうでした最も印象に残っているのは
『三銃士』ミレディでしたので、攻めるタイプの女性役が元々お似合いなのかもしれません。
そして音楽の魅力も挙げずにいられず。ゲーム精通者も、私のようにバレエからドラクエを知った者も、 明快で壮大なテーマ曲を聴くと肌がざわつき興奮を覚えるのは共通項でしょう。
それぞれの場面の曲も生き生きとした行動がそのまま音楽になっていて、またちょっとした前奏部分を聴くと白系か黒系か
どちらの陣営が登場するかも分かりやすい。白と黒の勇者対決も、跳躍を繰り返しながらの立ち回りがびっくりするほどに音楽にカチッとっていて、爽快でございました
衣装や装置美術も精緻に作られていて、1幕最初や2幕の大団円の宮廷は「白鳥の湖』1幕の優雅なワルツを思わせ、
黒の勇者の居所の巨大なドラゴンの恐怖感たるや。モンスター達もリアルでしかも頭でっかちな衣装着けてポワントで踊るダンサー達の身体能力の高さと言ったら。
宮廷から酒場、黒の勇者の陣営、幻想、どれにおいても群舞の精度のよう練り上げられていて、冗長な箇所は皆無。
起承転結も音楽もくっきりで、相変わらずゲーム音痴なままでの鑑賞3回目でございますが、バレエの要素もたっぷり盛り込まれていて心から楽しめる作品です。
また衣装や美術、小道具の細部まで凝った作りを眺めていると、7月末に新国立劇場バレエ団『ジゼル』ロンドン公演へ行ったときに足を運んだロンドン塔や博物館での展示が
8月21日に鑑賞したパークサイドバレエスタジオ「白鳥の湖』に引き続き脳裏を過ぎりました。
ゲームクリエイターもバレエの美術や衣装のデザイナーも、具体的に何処の国かは定めずとも中世ヨーロッパの古城や宮廷をよく研究されているのであろうと再確認です。
ゲームファンの方々の中でもバレエ版の上演はすっかり定着した一大行事なのか、多数ご来場。何しる両日予定枚数終了で見切れ席が急遽販売になったほどです。
近くで会話を聞いていると細かな解説に溢れていて、キャラクターTシャツをお召しの方も大勢見かけ、大盛況でした。
キャスト振り返り紹介も取り入れたエンドロール映像に対しても、拍手喝采。
初めて東京都交響楽団による演奏での上演で、都響ファンの方々も集結。張りと厚みある演奏で、テーマ曲がドラマティックにうねることよ。
カーテンコールも楽団員の方々も舞台をしっかり、もしかしたらキャラクター達の観察も兼ねて?!熱心に見つめて拍手で讃えてくださっている光景も印象に刻まれました。
一時はドラクエとドラゴンボールが同じ作品と勘違いしていた時期もあったり(東京バレエ団と東京シティ・バレエ団が同じ団体と思い込むのと似ているか⁈)
スタダンドラクエ初鑑賞前にお姫様が登場と聞いて、ピーチ姫ですかと尋ね、それはスーパーマリオですとパッサリ指摘されるほどにゲーム音痴な私も、
鈴木さん振付のドラクエならば満喫できます。次の上演はいつか、早くも待ち遠しく感じております。

新国立劇場バレエ団「ジゼル』ロンドン公演ネタ小出しシリーズ。ロンドン塔編その2。
攻撃性強く凶暴そうなドラゴンです。正面から直視できなかったほど。
このドラゴンに襲われそうになったら、助けに来てくれる勇猛な騎士は果たしているでしょうか。頑張って自力脱出を試みましょう

横からドラゴン。

ドラクエな世界観あります。

堅固な塔です。

迫力ある塔。ここに幽閉されたら、助けに来てくれる勇猛な騎士は果たしているでしょうか。
頑張って自力脱出を試みましょう汗。

扉の奥に何かが潜んでいそうです。

建造物越しにタワーブリッジが見えます。

ホワイトタワーも見えます。

裏側からの全景。ダークな雰囲気あります。実はあえて曇り空の時間帯を選んで行きました。途中から晴れましたが笑。
尚、中央のホワイトタワーでの発掘作業中に人骨が多数発見との報道が私が見学した3日後にございました。
そういえば、立ち入り禁止区域で作業を行っているのは見た覚えがあり。
そんなわけで、私から霊気が漂っていましたら失礼。当方は鈍感人間のため、難なく健康的な生活を送っております。
https://artnewsjapan.com/article/40625

さて初台のドラクエへ。顔ハメパネル、記念撮影で人気。

グッズもよく売れていました。

スタダンと新国立のシンデレラ。

魔王編。精巧な作りがロンドン塔思い出させてくれます。

ドラクエファンからのお花。キャラクターも載っています。

帰り、劇場常連さんと、常連さんの妹様でドラクエ好きでバレエを観にいらした方と。 視点が違うからこそ面白い会話で学びもいっぱいございました!
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