2024年8月30日金曜日

徹底した基礎重視から生み出される癖のない美しさ 徳永由貴バレエスクール第5回発表会  8月12日(月祝)




8月12日(月祝)、板橋区にて徳永由貴バレエスクール第5回発表会を観て参りました。2017年以来、7年ぶり2度目の鑑賞で
新国の渡邊峻郁さん、森本亮介さん、元東京バレエ団梅澤紘貴さん、河島真之さんをゲストに迎えての開催です。
2019年も足を運びたかったものの愛媛県西条市での鑑賞と重なり、トラベルミステリーの主人公気分であっても愛媛と東京の掛け持ちはできず断念。
2017年もご覧になった方の他、周囲の方々に声をかけたところ興味を持って代わりに行ってくださった方もいらっしゃいました。
2019年のその節は天候が危うい中ありがとうございました。(そして2024年8月末も日本各地で暴風雨)
https://yt-balletschool.jp/







さて私にとっては7年ぶりの徳永バレエ、まず生徒数大増加に驚きました。7年前は第2回発表会でまだ小規模人数での開催であったため2時間弱の上演時間であった記憶。
徳永先生も出動され、『くるみ割り人形』2幕にてアラビアをしっとりと踊っていらっしゃいました。
ところが7年経ち、少子社会と逆行して生徒数の多さに目を見張り、それにはきっと何か理由があるはずで、一層発表会の舞台に興味を持たせたのでした。
いよいよ第1部が開演。まずは幼児さん以外と思われるほぼ全員出演プロコフィエフ交響曲で、2019年上演の規模拡大再演のようです。
出演者全員同じ白系のクラシック・チュチュにシルバーのティアラ姿で舞台上に勢揃い。そしてもう開始から数秒で人気の高いスクールである理由は一目瞭然で
とにかく皆が基礎に忠実で癖の無いきちんとした美しい踊り、立ち姿やポジションの組み方に感激でございました。
決して難しく派手なテクニックを盛り込んでおらず、シンプルなステップを組み合わせた振付でしたが、
だからこそ基礎がしっかり身体に叩き込まれた美しさが引き立っていたのでした。
一般のバレエスクールですからコンクール入賞者もいればあくまで趣味として習っている生徒さんまで様々であるはずですが
脚の出し方から腕の上げ方といった基本の動きを誰もが美しく綺麗に見せて、
角度の変え方や顔も晴れ晴れと観客に示している表現も堂々とこなしたりとゲストはまだ誰一人登場していない段階で息を呑む瞬間の連続。
それから嬉しさが込み上げたのは、比較的大きな子もバレエシューズの生徒さんが多かったこと。
もしかしたらレッスンでは挑戦しているかもしれませんが、舞台ではまだ履かず、
入念に訓練して丈夫な脚を作りつつもまずはシューズでしっかりと美しく正確に踊れるようになることに重きを置いていらっしゃるのでしょう。
実際にバレエシューズ、ポワント問わず丁寧に優雅に踊る生徒さんばかりで、堅実で良き指導が窺えました。危なっかしいポワントの生徒さん皆無です。
年齢が上がるにつれて少しずつ高難度なテクニックが見え始め、フェッテ等も過剰に見せずさらりと品良くおさめて次へ展開していきました。

第2部はコンクールで踊られたコンテンポラリー作品3本や、古典の抜粋含むバレエ・コンサート。
コンテはどれも瑞々しく伸びやかで、音楽も馴染み深く(曲名までは記憶できず失礼)すらりとした身体やピュアな魅力がそのまま活きる振付でした。
最後に『ドン・キホーテ』よりハイライトで、結婚式場面を短縮上演。キトリ役はカナダのアルバータに留学中の生徒さんで、技術しっかり、色気も香る可愛らしさもあり
キューピットや小さなキューピッド達も軽やかでキュート。襞付きの段々スカート衣装での街の人々や
チュチュでのヴァリエーションも、繰り返しにはなりますがきっちり備わった基礎から繰り出される動きの一瞬一瞬から目が離せず。
例えばつい勢いよくやりがちな大ジャンプも適度に抑えていて品が失われずでした。

最後は『眠れる森の美女』よりオーロラの結婚。徳永スクール版として、役を増やして小さな子供達もたくさん出演し、
シンデレラの部分を「シンデレラの妖精」と設定したり「お城の縫い子さん」も登場したりと徳永先生の名付けや演出センスもまた可愛らしい。
シンデレラのお祝いにやって来た幼く可憐な妖精さん達かな、お城でオーロラのドレス裁縫に勤しむ子供達かなと想像しながら楽しく微笑ましく観察いたしました。
宝石はルビー、サファイア、ゴールド、シルバー、ダイヤモンドで種類も人数も増え、
コーダは第1部のプロコフィエフ交響曲で感激したアンサンブルの整い方にカラフルな華やぎや煌めきも加わったかのように壮観で
これまた更に美しいシンフォニック作品を観た気分。派手なことに走らず、慌てずじっくりと基礎を固めていく大切さを再び学ばせていただきました。

フロリナ姫の生徒さんはバネが強く、手脚が何処までも伸びていきそうなしなやかさの持ち主で、
ただやり過ぎないよう抑えるべきところでは抑えていてコントロール力もお見事。歌うように楽しそうな表情も素敵でした。
青い鳥の森本亮介さんは堅固にサポートされ、ヴァリエーションでは豪快な跳躍をご披露。

そしてオーロラ姫の生徒さんは徳永先生のご投稿によれば初パ・ド・ドゥとのことでしたが全くそう見えず。
実に滑らかで繊細、優雅で透き通るような気品もあり、表情も終始姫。結婚式の序曲にて大勢の祝い客がそぞろ歩いて舞台に立ったあとに
王子と2人で舞台の両脇から登場する場面からして、堂々とした足取りと佇まいでした。
王子の渡邊さんは初パ・ド・ドゥのオーロラ姫を優しく優しくサポートされ、緊張解してよりきらきら輝けるよう心砕いての接し方に、
磐石に守って行きそうな気概に、余りの安心感からか何度も頬が緩みました。歩く姿、後ろ姿も肩から優雅な品を醸していらして、
舞台袖へ入るときもつい気が抜けてしまう箇所も微塵もなし。板橋のホールはまずまず広い面積もありそうであったものの
会場目の前のセブンイレブンまで跳んでいってしまいそうな勢いもあり、結婚式とは思えぬ淡々短調勇ましい音楽(チャイコフスキーには詫びるが)のヴァリエーションも
強弱も鮮やかで抑揚がくっきり。テクニックも力強くもエレガントでございました。
アポテオーズでは姫も王子もロイヤルウェディングに相応しい絵になるお2人で、金吹雪舞う最後も格式高い幕切れ。
国王と王妃不在な分、リラへの礼や手を差し出してのリード等式のさりげない取りまとめ役も頼もしく、徹頭徹尾王子様でした。

目当てはゲストであっても、オープニングの生徒さんのみの作品からしてここまで感激とは驚きでした。
2017年の第2回発表会のときも過剰演出もなく、派手な振付もない、徳永スクールの堅実そうなカラーには好感を持ちましたが
慌てずじっくりと基礎を固めていく、ポワントも早くに履かせないといった手堅い方針こそが生徒さん達の癖のない美しい踊りへ繋がっていると見受けます。
鑑賞していても楽しいだけでなく、学びも多々ある発表会でした。





鑑賞前に、会場近くのおさだへ。6月末にNBAバレエ団公演にて大山駅まで参りましたが残念なことに臨時休業日でした。



目当てはワンタンメン!生姜の効いた餡が入ったワンタンです。スープはさっぱり。



会場には衣装も展示。



1幕オーロラが着用していそうな、薔薇が輝くデザイン。



シックなブルーに、水色のきらきら装飾がポイントな衣装も。サファイアに合いそうです。



リラな紫衣装、花模様も凝っています。赤は鮮やか!



帰りはレモンかき氷とビール。徹頭徹尾な王子を、そして基礎に忠実で全員が癖なく美しい踊りを披露していた生徒さん達の姿を回顧いたしました。
プロコフィエフ交響曲からたまげた、徳永先生の徹底した基礎重視指導にも拍手です。


2024年8月26日月曜日

何でも屋のバジル  多恵クラシックバレエスクール創立20周年記念第12回発表会『ドン・キホーテ』8月10日(土)   《神奈川県平塚市》





8月10日(土)、神奈川県平塚市のひらしん平塚文化芸術ホールにて多恵クラシックバレエスクール創立20周年記念第12回発表会『ドン・キホーテ』を観て参りました。
平塚市へは初上陸、初めて鑑賞するスクールです。
https://tae-ballet.com/news/283/


第1部はバレエ・コンサートで、小さなお子さんの生徒さん達は意外にも『ドン・キホーテ』全幕に配され、この部では小学生くらいからアシスタント、講師の方々が中心。
新国立の西一義さんが8月4日の江戸川に続き『白鳥の湖』パ・ド・トロワに出演され、シンプルである分、粗も目立ちやすい振付ながら
何処を切り取っても優雅で滑らかでポーズの見せ方もさらっと綺麗にこなしていていつまでも観ていたくなる踊りでした。

『ドン・キホーテ』全幕はロレンツォもガマーシュも不在で、狂言自殺も無し。ドン・キホーテのお供をするのは可愛らしい子供達であるスクール独自版で
コンサートには出演していなかった小さな子供達も上手に配され、街の中で1曲たっぷり踊ったりと微笑ましい演出でした。
袖の中から先生方の指示声がちらりと聞こえる等ハプニングも色々あれど、幼い子達が一生懸命舞台に立っているからこそどんな事態もホクホクしてしまいます。

ドン・キホーテ役は長らく牧バレエや開場初期の新国立劇場でも活躍された、現在はアムールバレエ主宰の佐藤崇有貴さんで、恐らくは30年ほど雰囲気は不変そうな若々しさ。
元々背も高めでいらっしゃいますがすらりとした体型を維持されていて品もあり、老けメイクやモシャモシャ鬘も無しの
ナチュラルでスタイリッシュなドン・キホーテである多恵スクール版の役どころもぴったりでした。
椅子に腰掛けたときはお供の小さな男の子達の子守も兼ねていらして、優しく面倒見も良いドン・キホーテさんです。

キトリは1幕2幕3幕それぞれの幕で異なり、講師やアシスタントの方々が務めていらして技術の安定感や細やかなお芝居も万全。
1幕賑わう街ではほんわか上品で、2幕の酒場は色っぽく勝気。3幕結婚式は貫禄ある花嫁で、幕ごとに全く違う個性のキトリ達が麗しく競演です。

さてここからが肝。1,2,3幕にて演者も個性も全く異なる「3人のキトリ」(同名の深川秀夫さん作品あります。8月もあと数日で終わり、大阪での深川ガラはもう今週末!)を
相手になさっていたバジルが新国立の渡邊峻郁さん。加えてサンチョやロレンツォといった
従来の主要役が何名も不在な分、舞台仕切りの大半も任されてもはや床屋ではなく何でも屋のバジルでした。
1,2,3幕キトリは全て別の方であってもパートナーリングも安定な上にソロも表現もそれぞれの場に即した魅力たっぷり。
風車の出現も無く、しかしドン・キホーテを夢場面に移すために眠りにつくようワインを大量飲酒させるのもバジル笑。
狂言自殺は無くても酒場のフィナーレはあるため、指パッチンめでたしめでたしの音頭を取るのもバジル。必要に応じて小道具持ってくるのもバジル。
元祖は1983年にニューヨークのMETで収録され、40年以上が経過した今もなお、色褪せぬ傑作として愛されている版の大スターダンサーの映像であろう
両手にコップ持ってのソロも追加!!泥酔よりもほろ酔いに近いバジルでしたが笑、後ろ脚の伸ばし方もコンパスのように斜めに差し出しながらの回転も美しく
茶目っ気も零れ、憧れの男性ダンサーで観たいと思う振付なので嬉しうございました。
同映像版で衝撃を受けた、ロマのソロをタンバリン持ってバジルが勢いよく情熱深くうねるように踊るお姿もいつか観てみたいものです。
真ん中でも隅っこでも物語の運び役を、しかもスクール独自版にて多々担っていらして、舞台捌きの見事なこと。
賢さの塊でいらっしゃるとは思いますが、とりわけ今夏は大量の仕事を抱える中で
いかにして完璧に記憶や把握なさる上に本番舞台では確実に体現できてしまうのか知りたいほどです。

酒場にて、ロマのソロでよく踊られる音楽が流れ出すと仮面のようなものを付けた女性が登場され、沼田先生ご本人でした。
シュッとした艶やかな佇まいで、バジルやエスパーダ、ドン・キホーテ達男性陣にエスコートされ、20周年を祝う特別挿入場面なのでしょう。
エスパーダは新国立の元バレエマスターの菅野英男さんで、どっしり貫禄な出で立ちながらピンと伸びる爪先や着地の正確さは健在。
役柄上はライバル同士でお互いのソロのときはメラメラ競争心が燃え盛っていそうでありながら、
エスパーダと見つめ合ったときのバジルが妙に幸せそうであったのは気のせいではないはずで、
共演の拝見は2021年に札幌で上演された久富淑子バレエでの『シンデレラ』王子と継母以来でしょうか。
平塚市における懐かしい師弟関係再実現を見逃すまいとじっくり観察いたしました。

会場のひらしん平塚文化芸術ホールはまだ新しく、濃紺に近いシックな色味の緞帳の張りも生き生きとしていて客席もピカピカ。
2階席も実に観易く、これから一層様々な催し物で使用される機会がありそうな劇場でした。
前日夜に神奈川県を震源とするやや強めの地震が起き、私は地元の駅近くの店内におりましたが
利用客の大半の携帯電話から緊急地震速報がけたたましく鳴り響いていて、見知らぬ客同士で状況を確認し合ったりと不穏な夜となり、
小田急線は長時間見合わせが続いたようで平塚市の海岸も一時閉鎖との記事も目にいたしました。
翌日も心配でしたが地震とは全く違う原因で小田急線がまたもやトラブルに見舞われ、初めて行く場所でしたから不安も募ったものの
スクールの節目記念である全幕ドンキを鑑賞でき、他版より遥かに気遣いも完璧な勤勉バジルも堪能。帰りは通常運行であった小田急線で無事帰途につきました。




ひらしん平塚文化芸術ホール 外観



開演前、平塚駅南口側にあるスペイン料理店へ。ご近所の常連さん達が集う、寛げるお店でした。



サラダもこんもり華やか!オリーブたっぷり入っているのもポイントです。



細パスタ使用の魚介フィデウア。きりりと辛口な冷え冷え白ワインと共にいただきます。お出汁が沁みていて美味しい。
お米のパエリアですと時間を要しますが、細パスタのパエリアであればそこまで時間かからずです。
鑑賞のたびに食べ過ぎでは、ブログ内容と同様に益々ボッテリ体型まっしぐらであろうとの無言の忠告が
多くの方々から飛んできているようにも感じておりますが笑、出先ならでの美味しいものは欠かせません。



闘牛ポスター。お店の方が、誇らしげにどうぞ!と言ってくださり撮影。



会場へ向かう道にて迷い込んでしまうと、たなばたのまちな広場がありました。



ホワイエに事務机なものもありました。



夜、平塚駅へ行く道。



往路は小田急線遅延で快速急行が運休になり、登戸から藤沢まで各停で行きましたが、
暑いホームで長時間待たされることもなく何かしら電車は到着していましたから
前夜の神奈川県新松田辺りを震源とした地震時に比較したらなんてことありません。駅員さん達の心労はいかばかりか。
ちなみに平塚駅は七夕の歌、お隣茅ヶ崎駅はサザンオールスターズの音楽が列車到着時に流れ、地域の個性が表れていました。
サザンの曲は多々ありますが、私が特に好きなのは1996年発売の愛の言霊と、桑田佳祐さんのソロ曲では波乗りジョニーでございます。

2024年8月23日金曜日

ほどよく刈り込み見せ場を工夫  エチュードバレエアカデミー  バレエフェスティバル『眠れる森の美女』 全幕  8月7日(水)

8月7日(水)、多摩センターのパルテノン多摩にて、エチュードバレエアカデミーバレエフェスティバルを観て参りました。
http://www.etude.gr.jp/

https://www.parthenon.or.jp/event/daihall20240807



 




  ゲストに新国立の渡邊峻郁さん、柴山紗帆さん、木下嘉人さん、中島駿野さん、宇賀大将さん、
牧の濱田雄冴さん、𡈽屋文太さん、ロシア国立サラトフ・オペラバレエ劇場の廣瀬晃太朗さんを迎えての舞台です。
定時退勤後に向かいましたため第1部のバレエ・コンサートは客席からは鑑賞できずでしたが
友人がチケットを持っていたため到着後次の休憩時間まで受付前で待機していたところモニターを発見。
コンサート最後を飾る『くるみ割り人形』グラン・パ・ド・ドゥコーダがちょうど始まった様子を確認いたしました。
最初から観ている友人がプログラム受け取り後すぐコンサートの出番について予め連絡をくれていたため
モニター凝視しながら思わず興奮しつつ、休憩時間までその場で待っておりました。
王子が渡邊さんでしたので、また前日には渋谷の大和田さくらホールにて我が後輩が踊って大成功収めた演目のパ・ド・ドゥでしたので
受付前待機状態ながらちょこっとだけでもモニター越しに拝見でき、多摩センターの祭典2024夏が開幕です。

さて休憩時間になり友人から無事チケットとプログラムを受け取って入場し、客席からは『眠れる森の美女』全幕の部から鑑賞。
エチュードさんの鑑賞は2022年以来2回目で、前回は第1部バレエ・コンサートの幕開けから鑑賞いたしましたが
柴山さん渡邊さんが主演務められたお目当ての『パキータ』グラン・パ含めても大変ボリュームのあるバレエ・コンサート構成な上に
その後に刈り込み演出ほぼ無しでの全幕『コッペリア』上演に仰天した記憶がございます。
勿論発表会の主役は生徒さんですから、大きなスタジオの場合バレエフェスやお正月時代劇も驚愕な長時間上演になるのは当然の流れとは思ったものの
先生方及び出番が多い少ない問わず生徒さん達の体力に脱帽したものです。小さなお子さん達にとっては待機時間もなかなか大変かと思います。

しかし今回は第1部を観ていない身分で申すのも失礼かもしれませんが2022年に比較するとバレエ・コンサートの演目数は抑えられ
眠り『全幕』であっても、プロローグ妖精達のアダージョ部分はカット(確か)、第1幕のワルツ前座こと糸紡ぎお許しください場面や
2幕森の場の村人達の踊りもカットしたりと上手いこと少しずつ刈り込んで短縮。
しかし生徒の出番もしっかり見せる、幕ごとのポイントは華やかに見せて全幕観た気分に浸らせる等終始工夫された演出が光り
渡邊さんがデジレ王子役であった点を差し引いても観客の集中力を切らせないよう配慮が行き届いた構成であったと捉えております。

通常オーロラ姫登場直前に披露される花のワルツを別所(プロローグだったかと記憶)に持ってきて、木下さん、中島さん、濱田さん、宇賀さんも投入されての
パ・ド・ドゥペアを軸に展開する振付も華々しく、開幕に期待膨らむワクワク感を募らせて見応えがありました。
フォーメーションもよく整理され、小さなお子さんからコンクール入賞者達まで、それぞれ目立たせる場面が設けられて大人数であっても混雑した印象皆無でした。

第1幕のオーロラ姫はスタジオご出身で牧阿佐美バレエ団で活躍中の門脇紅空さん。
直近で拝見したのが5月に上演されたバレエ団振付家発掘公演での黒い衣装に身を包み美術館の警備員を誘惑する女怪盗役でしたので
淡いピンク色チュチュがぴったりな、可憐なお姫様が妙に新鮮。小柄で軽やかで、すくすく育った感のある伸び伸びとした踊りにも惹きつけられました。
4人の求婚者の王子達が花のワルツからそのまま出世した!?男性ゲスト陣。この3日前の8月4日(日)江戸川区に現れた宮殿で勃発した
区が誇る夏の大行事である明日開催の花火大会も仰け反るであろう火花の散らし合いや濃厚に波打つ争い、奪い合いは無く笑
4人揃って白系のクラシカルな装いで、温和な協調性を重んじながら姫を優しく見守り支える王子達でした。
倒れたオーロラ姫を運ぶ格好も、1人が先導役で前を歩き、3人が等間隔で持ち上げて歩く様子も音楽と調和していて自然でエレガント。
安全第一を重視して姫を落とさずに運ぼうと真剣になるあまり建設現場での鉄鋼運搬作業にもなりかねない場面においても
あくまで優雅に運び、リラの精の魔法へとスムーズに橋渡ししていた多摩センター求婚者王子陣でした。

大概発表会での眠りはプロローグ、1幕、3幕結婚式辺りを抜粋上演する教室が大半で
役が少なくコール・ドで見せるのも難しい第2幕は上演機会は珍しく、今回とりわけ楽しみにしておりましたが、進行すればするほど目が冴え渡って感激した幕でした。
まず、王子様がやってくる森の狩りとはいえ貴族達はいますが賑やかな村人達が不在の少人数な御一行のため
渡邊さんデジレ王子が登場からずっと跳躍や回転含ませながら踊りっぱなしで驚倒。
王子の見せ場が多いとされるヌレエフ版もここまでは踊らぬはずで、若さと情熱に溢れ、生気や躍動感も漲り
優雅に歩いてご登場ではなく最初から大跳躍で斬り込んでくる勇壮な王子でございました。更には衣装のセンスが良く、濃紺のベルベットな上着でカチッとした装い。
白いブラウス系ですと棘にすぐ刺されそうですし獲物からの奇襲も危ぶまれるため狩にしては危険な軽装に見え(現代で言えば、富士山軽装登山問題を想起)
そうかといって、丈夫そうな作りやシックな色味は評価できるものの某国立の胸元開き過ぎ衣装はいただけず汗。
心は開いても胸元は閉じろと初演の10年前から何度嘆いていることか、2ヶ月後も同様にぼやくのは目に見えておりますが
それはさておき、パルテノン多摩を飛び出してキティちゃんもびっくり歓迎であろう、サンリオピューロランドまで跳んでいきそうな勢いで
踊りも衣装も凛々しく気高く勇壮さ抜群な印象で舞台を席巻していらっしゃいました。
そうです、オーロラ姫は眠りについても、観客は益々意識をはっきりさせないとならぬ場面ですから(結婚式が終わるまでまだ長い)
目覚まし時計代わりに王子のインパクトが増強されてちょうど良かろうと納得でございます。

2幕からオーロラ姫は柴山さんにバトンタッチ。幻影であってもぼやけ過ぎないよう、緻密に強弱を付けた美しい踊り方で
3幕結婚式場面でも感じましたがバレエ団公演で度々組んでいる渡邊さんと、王道のクラシック演目であっても
互いに刺激を与え合うように情感が広がるやりとりに心動かされました。
お2人のペアはとても好きですがこれまで作品によっては少々ぎこちなくなってしまったときもあり
しかし当ブログでは度々申し上げているように『ライモンダ』での深窓の淑やかな貴族令嬢と愚直な騎士の並びや、
双方が身体の底から吹っ切れたと思わせた『夏の夜の夢』でのティターニアとオーベロンの、喧嘩しても睦まじく威厳と気品香る妖精女王と妖精王夫婦も忘れられず。
久々に再び組んでくださり、端正なラインや品を醸すパ・ド・ドゥが目に胸に沁み入りました。

そして16人構成の森の精達のコール・ドもよく揃っていて、オーロラ姫、デジレ王子、リラの精を柔らかく囲んで導いていました。
ジュニアから大人の生徒さんまでが一緒にグランド・バレエのコール・ドを踊る技量の高さにも拍手でございます。
2幕佳境に達しつつある、王子を乗せたリラの舟の運行中に何かに衝突したか一時つっかえる事態もあったものの事故なくそのまま運行して無事姫の元へ。(一瞬の事でしたが)
2幕序盤の登場からして、剣持って必殺技なのか回転攻撃もしながらカラボスを退散させるのも頷ける勇敢な王子でした。剣がちょいと短かった気がするが、
五輪でフェンシングの報道が頻繁になされていた影響かもしれず。それはそうと
オーロラ姫の幻影に恋い焦がれ、手に入れたいけれど儚さに阻まれ益々恋心募る王子の心理が舞台を覆って、
姫もまた幻影であっても徐々に王子に引き寄せられ吸い付いてはまたぱっと離れる、胸が騒ぎ立つような恋模様が
呼吸の合った森の妖精達のコール・ドとともに美しく豊かに描き出された2幕でした。姫に恋して助け出せ作戦なる王子の大冒険も満喫です。

結婚式での3幕では、宇賀さんの狼が被り物で顔は全く見えずでも身体の動きが実に雄弁で、怖くも楽しさいっぱいな狼さん。
青い鳥の木下さんの、正確な折り鶴の如く隅々までぴたりと隙がない職人な技巧も印象に残っております。

刈り込んで時間はほどよく短縮、されど全幕を存分に観た気分を与えてくださるエチュードバレエ版眠りでした。冴え渡る目で帰途についた私でございます。
眠り祭り2024、まだ続きます!!



行きの電車内。急行橋本行きは調布駅を過ぎるとゆったり車内に。(余談だが関西の南海線にも急行橋本行きがあり、先日初めて乗車)
多摩センター到着前に、懐かしい報道映像にて、2002年に多摩川の丸子橋付近で発見された野生アザラシのタマちゃんのニュース。
同年8月下旬だったか、草刈民代さんも、笑っていいとも!テレフォンショッキングにて客席アンケートのテーマに採用なさっていたほどでした。
ちなみに私は丸子橋まで見に行きまして、野生のアザラシを見たのはこのときのみ。
京王線沿線にも、多摩川のつく駅がございます。



京王多摩センター駅。天井にサンリオの仲間達!



パルテノン多摩外観



電光掲示板にもキティちゃん。



ロゼワインで乾杯!

2024年8月21日水曜日

王道パ・ド・ドゥの夏 清水純子バレエアカデミー第41回発表会   8月6日(火)





8月6日(火)、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールにて清水純子バレエアカデミー第41回発表会を観て参りました。
当ブログレギュラーである、私の大学の後輩が幼い頃からブランク無く通っているスタジオで、最初に鑑賞したのは18年前。
以来暫くはご無沙汰しておりましたが2018年以降は中止となった2020年を除いては毎年足を運んでおります。
子供達の作品からグラン・パ・ド・ドゥ、10人編成の作品等、クラシックの様々な演目が披露されました。
http://shimizu-sumiko-ballet.jp/

最初は『ドン・キホーテ』の夢の場から。小さなお子さんや中学生くらいの生徒さん達中心に、やや規模をコンパクトして踊られ
グリーンを基調とした妖精達や可愛らしいキューピッドさんが涼しげに踊って開幕を彩ってくれました。

先生のご挨拶文でも触れていらっしゃいましたが、今回はグラン・パ・ド・ドゥ(パ・ド・ドゥ)が多く、計7本。
生徒さんとゲスト、講師とゲスト、或いは大人クラスの生徒さん同士で組むペアもあり、見応えたっぷりな楽しさでした。
とりわけ2018年、2021年、2023年に続きグラン・パ・ド・ドゥに挑戦している我が後輩が今回踊ったのが『くるみ割り人形』の金平糖と王子のグラン・パ・ド・ドゥで、
完成度の高さは贔屓目を差し引いても見事!女王らしい優美さ、品格、麗しさといった要素を備えていて金平糖の女王成分グラフを隈なく網羅。
また背も高めで手脚が長くスタイルに恵まれていて、私の知り合いに紹介すると、
まだ伏せている段階であってもいかにもバレエやっていそう!プロとして踊っていますかともよく聞かれるほど
華やかオーラと均整の取れた体型の持ち主であるのは一目瞭然なわけですが、ただ手脚が長い、更には柔らかいだけでなく持て余さず伸びやかに操り
メリハリ付けたコントロール力や緩急を繊細に表しながらの踊り方も唸らせました。
初回のリハーサルからずっと話は聞いておりましたがとにかく謙虚さの塊で、何を聞いてもまだ駄目だった等マイナスな感想で笑
しかしリハーサル映像見せてもらうとこれの何が駄目やねん?と先輩は毎度疑問でございました。
可能ならば私のちゃらんぽらんな性格を分けたいものの笑、常に現状に満足せず上を目指す練習の積み重ねが実を結んだのでしょう。
王道中の王道パ・ド・ドゥで、特にアダージョはゆったりとした曲の中でもやることが細かい上に多く、しかし皆が憧れる女王様ですから慌しく見せてはならず
本来ならば世界観も崩さず、甘いお菓子或いはおとぎ話の雰囲気を伝えるのは非常に難しいはず。
しかし背景にピンクがかったお菓子の王国或いは宮殿装置が見えてきて、自ずと全幕を彷彿させるパ・ド・ドゥでした。抑えたピンク色の衣装がまたよくお似合い!
パートナーの王子役は昨年に続き吉野壱郎さん。すっかり信頼し合うパートナーシップで、視線のコミュニケーションも万全。
登場するときから2人して笑みもこぼれていて、威厳と穏やかな幸福感の双方が滲み出る、安心感を持たせる金平糖の女王と王子でした。

もう1組特に注目していたのは『海賊』で、大人クラスの生徒さん同士での披露。しなやかで身体もよく伸びるメドーラと、盤石サポートにソロは情熱たっぷりなアリで、
バレエアステラス2022にてご覧になった新国立プリンシパルの奴隷であっても何処か高貴で恭しく仕える忠臣なアリが忘れられず
憧れ、理想として掲げて頑張ってこられた男性生徒さんのパッションにも拍手。
長年一緒にレッスンに取り組むお2人らしい、真摯なひたむきさが表れた清々しいパ・ド・ドゥでした。

講師で小林紀子バレエシアター所属の中村悠里さんと、東京シティのキム・セジョンさんが組まれた『ジゼル』も印象深く
どちらかといえば小柄な中村さんが、全身特に肩から腕、指先を雄弁に使ったポール・ド・ブラで
切々と悲しみを訴えかけ、ふわふわと浮く軽やかな飛翔やアルブレヒトを守ろうとそっと身体を寄せる姿も健気に映りました。
『ゼンツァーノの花祭り』は可憐な仕草でパートナーとうきうきするやりとりを描き出す生徒さんの表現力にも脱帽、
『眠れる森の美女』では脚の出し方1つでおっとり気品あるお姫様な雰囲気をしっかり伝えてくださり、『コッペリア』は朗らかな結婚式そのもので幸せ一杯。
パ・ド・ドゥとヴァリエーションを2本組み合わせた『ドン・キホーテ』はコーダ終盤にも女性2人のヴァリエーション隊が回転を見せて盛り上げ、
今月に入ってからこの時点(8月6日)で4組目として観るチャイコフスキーはシャキシャキ闊達とした生徒さんのソロが風を切るような勢いがありました。
パートナーの石黒善大さんはややふくよかになりかけていらっしゃりながら、角度や着地のポイント押さえた踊り方は健在です。

数ある子供達の作品の中では『白鳥の湖』のナポリが今も脳裏を過ぎり、小学校低学年のお年頃であろう3人の生徒さん達が
カラフルなチュチュを着てタンバリンを持ち、音楽を大事にしながら息を合わせて丁寧に踊っていた姿が目に残ります。

大トリは『ジョコンダ』より時の踊りで、ソリスト男女2人にコール・ド12人編成。コール・ド振付が身体が突っ張りそうな過酷振付てんこ盛りで
立ちから座り姿に素早いポーズの切りかえも多々あり、並の体力では踊りきれない作品です。
しかし大人から中学生くらいの生徒さんまで12人揃って見せる、よく訓練された個々の技術の高さに感激でございました。

フィナーレは再び時の踊りの音楽で出演者全員そして恒例で皆で出迎えて中央に清水先生もご登場。
40年以上スタジオ主宰、発表会を継続されていると思うと、生徒さん達を取りまとめるお力に頭が下がります。
来年もきっと楽しい会を開催してくださることと思うと、早くも来夏を心待ちにしている私でございます。




ホールへ行く道にて、サクラテラス。7月25日にオープン!



後輩の衣装に合わせて、ピンク色花束!しかし花束よりも後輩自身が華やかです。



帰り、後輩に敬意を表して、渋谷駅近くのパブでピンク色のビール。素敵な夢を見せてくれてありがとう!


2024年8月20日火曜日

求婚者レンジャー!!   パークサイドバレエスタジオ2024 創立10周年記念パフォーマンス『眠れる森の美女』他 8月4日(日)





※残暑お見舞い申し上げます。今月いったい何回鑑賞したか。先日東京が暴風雨に見舞われた金曜日に、半日で広島県福山市と大阪府堺市の公演を梯子した
西村京太郎トラベルミステリー犯人もびっくり無謀にもほどがあると言われても仕方ない、時刻表と睨めっこしながら大移動した管理人でございます。
その件につきましては9月以降の紹介となるかもしれず、気になる方はご覧になった方のご投稿なり見つけてください。
但し公演当日に東海道新幹線東京名古屋間が終日運休となったため、福山ガラは私の友人も含め関東からの来場予定者が何名も断念され、
鑑賞できた喜びと、断念された方々のお気持ちを思うと心残りも入り交じった公演でした。
私も当日朝の東京駅発の新幹線移動の予定でしたが払い戻しをして急遽交通手段を変え、
当日午前中に福山駅到着できるよう執念で行って参りましたが(渡邊さんがお出になる舞台をそう簡単には諦められず、何がなんでも行くと決意笑)
感想が諸々全く追いついておらず、ひとまず順序通り綴って参ります。今月上旬には声がなかなか出ず4文字以上の言葉の発音も困難になり、
職場ではカラオケで叫び過ぎとの疑惑も持たれ、一応話にのってクリスタルキングの大都会熱唱しましたと答えるも
呼吸器内科での呼吸検査で数値がだいぶ低いとの診断からレントゲンも撮って結果気管支炎でございましたが
肺に異常はなく1週間以内にすっかり治り、胸を撫で下ろした8月。今月は眠り三昧です。



8月4日(日)、江戸川区にてパークサイドバレエスタジオ10周年記念発表会を観て参りました。初めて伺うスタジオの舞台です。
新国立劇場バレエ団にて長らく活躍され、2013年夏を最後に退団された堀岡美香さん主宰のスタジオで、クラシックやコンテンポラリーのレッスンの他
ボディコンディショニングや解剖学にも積極的に取り組まれているようで人体骨模型を手に説明なさる堀岡さんのお姿もプログラム内の写真に収められていました。
堀岡さんの新国立団員としての最後の舞台は今もよく覚えており、2013年夏の『ドン・キホーテ』にて、
同じタイミングで退団されバーミンガムロイヤルに復帰された(現在は日本で大活躍中)厚地康雄さんと組んでの3幕ボレロでした。
舞台袖からの歓声が聞こえてくるほどの情熱的で晴れやかな踊りで、退団は寂しいが
大きな拍手で送り出したいと思わずにいられぬ、お2人揃ってやり切った清々しい表情も忘れられません。


『眠れる森の美女』より舞台稽古含む映像

ゲストは全員新国立劇場バレエ団から、渡邊峻郁さん、原健太さん、渡邊拓朗さん、西一義さんです。
第1部はバレエコンサート。パ・ド・ドゥからコンテンポラリーまで、多彩な作品が並び、演目数は多めであっても構成が練られていてずっと楽しさが続きました。
大人のオープンクラスからお2人パ・ド・ドゥに挑戦された方もいらっしゃり、お2人とも基礎がしっかり備わっていて
ポワントの立ち方も綺麗。堀岡さんがきちんと見極めて挑戦させていると窺えました。
個人教室であっても、大人の生徒さんによる危ないパ・ド・ドゥが散見される昨今
(ゲスト男性と共に本当に危険です。夢を叶えるだけの理由ではあかん)、先生のご指導、実に大切です。
そのお2人のパートナーを務められたのが渡邊拓朗さんで、『サタネラ』と『海賊』にてサポートの安心感安定感はもとより役の表情もよく捉えていて見応えがありました。

それから渡邊峻郁さんが講師の荒木彩さんとチャイコフスキー・パ・ド・ドゥをご披露。
8月4日の時点でバレエフェスの永久さんキムさん組、アステラスでの近藤さんチェンウさん組に続く今月3組目のチャイコ鑑賞だったわけですが、
アクセントの付け方が太過ぎず細過ぎず、爽やかな都会の風が吹きそよぐ踊りで惚れ惚れ。衣装がクラシカルな模様であった点だけ気にかかりましたが
荒木さんも俊敏なテクニックの持ち主で、2人で競い合うように昇華していく様子が爽快でございました。

後半は『眠れる森の美女』よりハイライトで、1幕と3幕の見せ場凝縮版。バレエコンサートの箇所でも触れましたが、
大人の方々中心のガーランドワルツが呼吸がとても合っている上に基礎に忠実で丁寧な踊り、大変感激いたしました。
大人クラスといっても今までのバレエ経験は皆さん千差万別でしょうに、花輪の持ち方も整っていて、全体に纏まりがあり好印象です。

そして私の中ではこの日最大の注目、ローズアダージョの4人の求婚者に新国立のゲスト丸々投入。皆色違いの衣装で羽根つきの大帽子を被って気品高い王子達でした。
更には個性も強すぎて、温厚グリーン(原さん)、冷静ブラウン(西さん)、貫禄ピンク(拓朗さん)、流し目ブルー(峻郁さん)といった位置づけか笑。
サポートの締め部分を担当していたのが拓朗さんでした。対角線上に登場するとき、ちょうど上手側客席にいた我々に向かって4求婚者王子達が歩み出てこられ、
失礼ながら渡邊(峻)さんの大真面目真剣真一文字な表情とドヤ顔流し目の右往左往変化に笑いが止まらず。(良い意味で、でございます)
オーロラのヴァリエーション最中は拓朗さんとマウント取り合いながらの穏やか且つ熱い争いも楽しい場面でございました。
ああ遡れば7年前の2017年春の新国立眠りにて、まだ周囲には2人にしか打ち明けていなかったものの
当時は入団1年目の若きソリストであった渡邊(峻)さんを目当てに連日足を運び、カヴァリエやゴールド、
そして何より韃靼騎馬民族風のロシアの王子が余りに男前で、最大の目当てとして虜になりっぱなしになっていた日々を懐かしく思い出し
3幕でゴールド踊られた最初の2日間以降はローズアダージョが終わると任務終了と化していた管理人でございます。

さて話を2024年に戻し、個性は強しされど求婚者レンジャー級にこんなにも魅力ある王子達に囲まれたパークサイドのオーロラ姫の幸せなことよ。
1幕オーロラ姫役は北見笑菜さんで、プログラム紹介文によればジョン・クランコバレエスクールに留学され、9月からアカデミーに進級されるとのこと。
初々しい可愛らしさ満開で、端正な踊りで頬を緩ませてくださるお姫様でした。求婚者王子達が恋い焦がれるのも納得です。
1幕はオーロラ姫が針に刺されるまでを描き、しかし国王王妃夫妻が不在のため針をよこすように
注意促していたのは拓朗さん貫禄ピンク王子でした。親代わりもこなす求婚者、初見です。
カラボスが正体表し、マントを翻す最中に王子達は剣を手に対抗するもあえなく敗北。
しかしオーロラ姫を4人全員で1列隊形になって寿司詰め状態で懸命に運ぶ姿も目に焼きつき、2幕は飛ばして結婚式へ。4求婚者達はそれぞれの進路へ旅立ったのでした。

結婚式の場面は王道路線で、宝石はジュニアのクラスごとに役を配していたと見受けますがどの生徒さんもきっちりと軽やかな踊りがとても綺麗に纏まっていた印象。
長靴を履いた猫と白い猫が拓朗さんと元新国立の朝枝尚子さんで、ゴージャス長身コンビで目の保養。
朝枝さんの色っぽい仕草がふわっと香って拓朗さんデカ猫とのやりとりも大迫力でした。
朝枝さんは先シーズンでの退団がとても淋しく、舞台姿をすぐさま拝見でき嬉しい。
シンデレラ王子の西さんの優雅な踊りも目を惹き、パとパの繋ぎ部分の滑らかさも注目して観ておりました。

3幕オーロラ姫は元新国立の盆子原美奈さん、デジレ王子は渡邊(峻)さんで、盆子原さんの格調高く全身を大きく使った空間の捉え方が
頗る凛としていて美しく完成度高い姫君。2010年にビントレーさんの就任と同時に入団され、現代作品にも多々抜擢されていた印象があり
今回渡邊(峻)さん王子の好サポート影響もあったとは思いますが、古典のお姫様の見せ方を心得た天晴れな高いテクニックに脱帽でした。
渡邊さんは2024デジレ王子祭りの夏のスタートを切り、ちょっと衣装の上着が大きめ?な部分を除けば盛大な式を締め括るに相応しい品格風格備えた王子で、
パ・ド・ドゥ後に真ん中に着陸していた落下物の処理も自然で上品な拾い方で美しや。

初めて鑑賞するスタジオで、新国立関係の方々が指導、ゲストで関わっていらっしゃる旨は把握しておりましたが
きちんと丁寧なレッスン、身体作り舞台作りをしている印象を受け、変に危なっかしい箇所は子供も大人も皆無。
堀岡さんの徹底した基礎重視の指導が伝わるスタジオです。
 


新小岩駅にモンチッチ!



会場までの道にて、果物屋さん経営のパフェ店へ。



季節限定桃パフェ!全体



瑞々しさやクリームに塩気なビスケット、細かなゼリーなど中身の凝り方驚愕。東京で食べたパフェの中では1番星です!!



上から見ると、ピンクのチュチュ。ラメもきらきら。オーロラ姫の衣装を思い浮かべてしまった。



帰り、ブルーのお酒で乾杯。青い求婚者王子、色っぽかった。ふわふわお帽子もお似合いでした!


2024年8月15日木曜日

毎度の空席対策は早急に バレエ・アステラス2024 8月3日(土)




8月3日(土)、バレエ・アステラス2024を観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/asteras2024/


※色々立て込んでおり、さっさか参ります。


韓国芸術総合学校バレエアカデミー

Une Promenade
キム・ジヨン チョン・ミンチョル

ショパンの曲にのせた、タチヤーナとオネーギンの関係性をシリアスのみならず、ピアニストも参加して花を贈ろうとしたりと
くすりと笑みも零れるユーモアな表現も散りばめられた作品。 素朴で清純そうなキム・ジヨン、長身でスレンダーなチョン・ミンチョル であったが今ひとつ心に残らず。


The Prejudice
アン・セウォン

バーを用いて黒いチュチュでしなやかに踊る瀕死の白鳥だったが、これも今一つ響かず。アン・セウォンの身体能力の高さは伝わった。
バレエ学校を呼ぶなら、卒業生や少人数作品よりも、例え粗があっても良いのだからどんな教育をしているかも興味があり、アンサンブルを観たかったと思います。


『海賊』第1幕より奴隷のパ・ド・ドゥ
升本結花 (フィンランド国立バレエ団 ファースト・ソリスト) 有水俊介 (フィンランド国立バレエ団 ファースト・ソリスト)

升本さん、有水さん共に手堅いテクニシャンで、アピール力も強し。床が滑りやすかったのか
コーダにて升本さんが回転中に大きく転倒してしまい怪我がなかったか心配に。


『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
綱木彩葉 (ドレスデン国立歌劇場バレエ プリンシパル) ジョセフ・グレイ (ドレスデン国立歌劇場バレエ セカンド・ソリスト)

ドウソン振付。思ったほど奇を衒った振付ではなく、音楽に身を委ねてうねるように踊る2人が気持ちよく映えた作品。バルコニーセット付き。
綱木さんジュリエットが、ロミオをぐっと艶めかしく摩るように包む姿やふとした瞬間に捻る身体の美も印象深く残ります。


『白鳥の湖』第3幕のパ・ド・ドゥ
ミルナ・ミチウ (クロアチア国立劇場 プリンシパル) 吉田司門 (クロアチア国立劇場 プリンシパル)

ミチウは細身で長い手脚に恵まれながら、軸が不安定なのか腕もしなやかさに欠け、不慣れな床に苦戦なさったのかヒヤヒヤしながら鑑賞。
吉田さんは晴れやかでダイナミックなジャンプで沸かせてアピール。


『ハムレット』よりパ・ド・ドゥ
鈴木里依香(クロアチア国立劇場 プリンシパル) 住友拓也(クロアチア国立劇場 プリンシパル)

今回の白眉。サン=サーンスの音楽と激しく呼応するパ・ド・ドゥで劇的にしなる身体が語る、ハムレットとオフィーリアが踊る壮絶な振付。
鈴木さん住友さんともに美しい中に鋼のような強さのあるお2人で、ただやみくもに激しく踊るのではなく
音楽の1音1音を身体で刻みながら心情を発していて全幕で観てみたい作品です。グレーと黒を組み合わせた衣装もスタイリッシュ。


『ラプソディ』よりパ・ド・ドゥ
アリーナ・コジョカル(ハンブルク・バレエ ゲストダンサー) 吉山シャール・ルイ (チューリヒ・バレエ ファースト・ソリスト)
ピアノ演奏:圓井晶子

アステラスにコジョカルがやってきた。(奇しくも上野ではバレエフェス開催中)
本来の趣旨から外れているようにも思えたものの、ときには特別豪華ゲスト枠があっても良いかとも捉えた次第。
吉山さんはほぼサポートのみ振付であってもコジョカルを最大限綺麗に晴れやかに見せてスムーズなパートナーシップ。


『眠れる森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥ
柴山紗帆(新国立劇場バレエ団プリンシパル) 井澤 駿(新国立劇場バレエ団プリンシパル) 

新国立から柴山さん井澤さん登場。シーズンオープニングに先駆けての眠りお披露目です。
ホームグラウンドにしては小さく纏まってしまっていた印象がありましたが、カチッと端正なパ・ド・ドゥに仕上げていました。


『Conrazoncorazon』より
振付:カィェターノ・ソト
アステラスにて研修所がシンフォニエッタやトリプティーク以外を上演するのは珍しいかもしれません。
よく踊り込んでいるのでしょう、身体の捻じり方やユーモアに富んだ表現もノリにのっていて観ていて益々楽しくなりました。乗馬風の衣装もキュート。
恐らくは府川さんと思わしき方の大きく立体感のある踊りが目をひきました。


韓国芸術総合学校バレエアカデミー
『ライモンダ』第3幕より
ジャン・ド・ブリエンヌのヴァリエーション
イ・カンウォン

大変テクニックに強い生徒さんとは思いましたが身体を反る表現が大袈裟にも見えてしまい、
まだ伸び代たっぷりなダンサーですから真っ直ぐ癖なく成長していきますように。


『コッペリア』よりグラン・パ・ド・ドゥ
玉井千乃 (ポズナン歌劇場バレエ団 コリフェ)
北井僚太 (ポーランド国立歌劇場バレエ団 ファースト・ソリスト)

昨年夏の札幌の小泉のり子バレエ発表会と公演にて拝見した玉井さんを再びしかも東京の新国立劇場で拝見でき嬉しい限り。
発表会『くるみ割り人形』2幕では新国立の渡邊峻郁さんとグラン・パ・ド・ドゥを安定感抜群に踊られ、
夜公演『ライモンダ』3幕では第1ヴァリエーション(カエル跳びの振付)を斬れ味鋭く達者に披露されたことを思い出します。
今回は濃いピンク色スカートの村娘役で、純朴な愛らしさと卓越した技術に裏打ちされたスワニルダ。
北井さんも昨年夏、東大阪での佐々木美智子バレエ団『ドン・キホーテ』以来お目にかかり、颯爽とした踊りが爽快なフランツでした。


『デンジャラス・リエゾンズ』第2幕より 寝室のパ・ド・ドゥ 
吉田合々香 (クイーンズランド・バレエ プリンシパル)
ジョール・ウォールナー (クイーンズランド・バレエ プリンシパル)

毎回独自の面白い作品を持ってくるクイーンズランドバレエの吉田さん組。今回は刺激多めな危うい作風で、原作は『危険な関係』。
披露されたのはヴァルモンがトゥールヴェル夫人を誘惑していく様子を描いたパ・ド・ドゥで、振付はリアム・スカーレット。
吸い付いたり離れたり音楽と一体化して流れるように伝う濃密な美しさに引き込まれました。


『チャイコフスキー パ・ド・ドゥ』 近藤亜香(オーストラリア・バレエ プリンシパル) チェンウ・グオ(オーストラリア・バレエ プリンシパル)

パワフルに駆け抜けていく2人で、近藤さんはフェッテで途中止まりかけてしまったのが惜しかったものの立て直しも素早い!
1週間でチャイコ4連発、バレエフェスAプロに続き、今月2組目でございます。


『マノン』第1幕より寝室のパ・ド・ドゥ
アリーナ・コジョカル (ハンブルク・バレエ ゲストダンサー)
吉山シャール ルイ (チューリヒ・バレエ ファースト・ソリスト)

コジョカルがアステラスにやってきた。2作品目でもまだ不思議だが、小悪魔な魅力や軽やかさは健在。
吉山さんはマノンにじゃれつかれても一見落ち着いていそうだが一度のめり込むとぐっと勢い良くマノンに首ったけな様子。
そういえば、コジョカルのマノンは全幕では観ておらず、何年か前のバレエフェスにてコボーと沼地を、
座長公演ながら怪我のため急遽の変更で寝室をフォーゲルと披露していました。

フィナーレは恒例のグラズノフ『バレエの情景』よりポロネーズ。格調高さの中から勇壮さと煌びやかさが弾け、数あるポロネーズの中でも一番好きな曲で
研修所組がコラソンの振付でグラズノフを踊っていても噛み合っていたのも見どころでした。
バレエ団独自の珍しい版、作品もあり、オーケストラ演奏付きでチケット代金も決して高値ではないにも拘らず
今年は横浜バレエフェスのほか世界バレエフェスと丸かぶりであった事情を差し引いても空席多数は心残り。
昨年も周囲がガランとしていてソーシャルディスタンス継続中でもないはずが、残念でございました。
開催当初は珍しかった帰国系ガラが今や乱立していて、しかも開催は同時期。
客足もなかなか伸びにくいのでしょうが、広報も工夫しながら観客動員増加を図っていってくださればと願います。




ビールとプログラム



玉井さん、東京で拝見できるとは感激でした!



中劇場で開催されていたBALLET THE NEW CLASSICを観に来ていた、ファッションや建築関連の仕事をしている徳島の友人と2022年の大阪Kスタ公演以来約2年ぶりに再会。
私は2年前に観ていたBALLET THE NEW CLASSIC感想等、タコカルパッチョなど囲みながら近況報告。喋り過ぎた!

2024年8月11日日曜日

レジェンド頼みか世代交代か  第17回 世界バレエフェスティバルAプログラム 8月1日(木)




8月1日(木)、世界バレエフェスティバルAプログラムを観て参りました。
ガラの日は鑑賞予定が入っており、AとB比較するとAプログラムの方が興味を惹かれる作品が多めであったためAを選んで鑑賞でございます。
演目数多いため、さっさか感想ばかりですが悪しからず。
https://www.nbs.or.jp/stages/2024/wbf/

※プログラムはNBSホームページより
― 第1部 ―

白鳥の湖より黒鳥のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

マッケンジー・ブラウン
ガブリエル・フィゲレド


クオリア
振付:ウェイン・マクレガー
音楽:スキャナー

ヤスミン・ナグディ
リース・クラーク


アウル・フォールズ
振付:セバスチャン・クロボーグ
音楽:アンナ・メレディス

マリア・コチェトコワ
ダニール・シムキン


くるみ割り人形
振付:ジャン=クリストフ・マイヨー
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

オリガ・スミルノワ
ヴィクター・カイシェタ


アン・ソル
振付:ジェローム・ロビンズ
音楽:モーリス・ラヴェル

ドロテ・ジルベール
ユーゴ・マルシャン


― 第2部 ―


ハロー
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ジョルジュ・クルポス

菅井円加
アレクサンドル・トルーシュ

マノンより第1幕の出会いのパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ

サラ・ラム
ウィリアム・ブレイスウェル

ル・パルク
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

オニール八菜
ジェルマン・ルーヴェ

チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

永久メイ
キム・キミン


― 第3部 ―

3つのグノシエンヌ
振付:ハンス・ファン・マーネン
音楽:エリック・サティ

オリガ・スミルノワ
ユーゴ・マルシャン


スペードの女王
振付:ローラン・プティ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

マリーヤ・アレクサンドロワ
ヴラディスラフ・ラントラートフ



マーキュリアル・マヌーヴァーズ
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ

シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ


空に浮かぶクジラの影
振付:ヨースト・フルーエンレイツ
音楽:レナード・コーエン、ルー・リード、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ

ジル・ロマン
小林十市


― 第4部 ―

アフター・ザ・レイン
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:アルヴォ・ペルト

アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ


シナトラ組曲
振付:トワイラ・サープ
音楽:フランク・シナトラ

ディアナ・ヴィシニョーワ
マルセロ・ゴメス


椿姫より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン

エリサ・バデネス
フリーデマン・フォーゲル


ドン・キホーテ
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス

マリアネラ・ヌニェス
ワディム・ムンタギロフ


指揮: ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏: 東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ: 菊池洋子(「アン・ソル」、「ハロー」、「ル・パルク」、「3つのグノシエンヌ」、「マーキュリアル・マヌーヴァーズ」、「椿姫」)
チェロ: ⻑明康郎(「ハロー」)



最も印象深かったのはアレクサンドロワとラントラートフのスペードの女王。
チャイコフスキーの雷光が轟くような悲愴の音楽と歪んで溶け合い、陰鬱な膜で覆うようなアレクサンドロワの踊りが燻し銀な迫力で全幕で観たくなる作品でした。
恐らく随分と前にツィスカリーゼ主演映像で観てはいるはずが記憶の彼方にあり(失礼)、
以後三大バレエ以外のチャイコフスキーの音楽も様々なバレエ作品を通して知るようになったためか
今回のたった10分程度の抜粋ではあっても印象は強烈でした。ラントラートフの軽快な身体捌きや脚のラインの美しさも健在。
当ブログのプロフィールにも記している通り、私が海外のダンサーで特に好きなのがアレクサンドロワで
ただキャリアからして前回のフェスが出演最後であろうと思い込んでおり、またボリショイバレエ団の肩書きでのロシア人ダンサーの出演は
世界情勢を鑑みると困難であろうとも考えていたため、加えて現在はバレエ団公演の第一線には立っていないと思われ、
出演決定告知を目にしたときは喜びよりも驚き、心配のほうが上回りました。
しかしご意見はあるかもしれませんが、Aプロのパフォーマンスを観る限りでは身体のキレも表現、風格や空間の支配力も唸らせるものがあり、
来日してくださってありがとうございますと申し上げたい気持ちが今も込み上げております。

オランダ国立バレエ団に移籍後も益々目覚ましい活躍を見せているスミルノワの2演目も忘れられず。
マイヨー版くるみは清新で洒落た魅力満開で、身を委ねたりはっと起き上がったりと
生き生きとした喜びが全身から舞うパ・ド・ドゥで、カイシェタの爽快さと合わさって解き放たれた楽しさが交わるパ・ド・ドゥでした。
3つのグノシエンヌでは一音一音を研ぎ澄まされた踊りで静かに紡ぎ出し、バレエ団の枠を越えたマルシャンとのペアも新鮮。

それからヴィシニョーワとゴメスも、出演者一覧に名前を見つけた当初は名誉同窓会枠或いはゴメスは宴会部長枠かと失礼ながら脳裏を過っておりましたが
いざ観ると、惹きつけられる円熟味。品性を保ちつつ身体を寄せ合っては情熱的な匂いを漂わせ、
黒いシンプルなワンピースな衣装であっても内側から輝き放つヴィシニョーワの艶かしいこと。
ゴメスのエスコートがそれはそれは紳士的で、年齢を重ねたお2人だからこそ滲み出るゴージャスな舞いでした。

ヌニェスとムンタギロフは燦々と降り注ぐ太陽な輝きで魅了。 ムンタさん、床屋さんには見えぬお育ちがとても良さそうなバジルでしたが結婚式場面だから良いか。

何故だかチャイコ強化週間なのか、8月最初の7日間で4箇所4組で目にするチャイコフスキー・パ・ド・ドゥ第一弾であった永久さんキムさん組は
永久さんはエレガント過ぎる印象があり、キムさんは技術達者ながらアクセントが太めな気がいたし、少し好みからは外れ気味でしたが
(キムさんの海賊は野性味と品格が良いバランスで備わっていて膝を打ったのだが)この夏の見比べが色々楽しみに。

そしてボッレは怪物か。彫刻のような肉体は健在で衰えも見当たらず、今回のベテラン勢の中でも年齢不詳ダンサーでした。

風船も用いた空に浮かぶクジラの影、演奏者とやり取りもあるハローは面白みがあったのかもしれませんが
いかんせん両作品ともに1本の上演時間が長く(クジラは20分超?)、上演作品選定の基準が気になるところ。

数演目しか把握しておらず、他の演目や上演順は開演後のオープニング字幕でようやく知った熱量低め観客であったかもしれませんが
またレジェンド頼みもほどほどに、世代交代も課題でしょうが、世界各地のダンサー一斉集結の夏祭りを東京で味わえる贅沢なひとときでした。




入口



フェス名物吊るしポスター並び



スミルノワ!



上演前のプログラム紹介において、中国語も表記され、漢字の当て方が話題に。スペードが黒桃、納得!ル・パルクは公園、ハローは你好、簡潔だ。



この日は空いていたドリンク売り場。せっかくの機会、シャンパンで乾杯!

2024年8月9日金曜日

深海も地上も爽やか涼しげな空気感   新国立劇場バレエ団『人魚姫』7月27日(土)〜7月30日(火)





7月27日(土)〜7月30日(火)、新国立劇場バレエ団  こどものためのバレエ劇場 貝川鐵夫さん振付『人魚姫』を計5回観て参りました。
色々立て込んでおりますため、また酷暑猛暑続きのため熱い暑苦しい感想は抑え、人魚姫で連日目にした海底の世界の如くさらりと参ります。(多分)
管理人にとって、新年齢を迎えて最初に臨んだ鑑賞でございます。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/littlemermaid/


2024年7月27日(土) 16:30
人魚姫:木村優里
王子:渡邊峻郁
深海の女王:井澤 駿
婚約者:木村優子

2024年7月28日(日) 13:00
人魚姫:柴山紗帆
王子:中島瑞生
深海の女王:仲村 啓
婚約者:渡辺与布

2024年7月28日(日) 16:30
人魚姫:木村優里
王子:渡邊峻郁
深海の女王:井澤 駿
婚約者:木村優子

2024年7月30日(火) 13:00
人魚姫:木村優里
王子:渡邊峻郁
深海の女王:井澤 駿
婚約者:木村優子

2024年7月30日(火) 16:30
人魚姫:廣川みくり
王子:速水渉悟
深海の女王:奥村康祐
婚約者:渡辺与布



木村さんの人魚姫は登場時の鮮やかな飛び込み跳躍がぱっと目を惹き、オレンジ色と白色で細かな装飾たっぷりな衣装以上に内側から光を放って出現。
他の人魚たちもカラフルで可愛らしい色違い衣装を着けていましたが、主役感がすぐさま伝わり、
これからどんな冒険に繰り出すのだろうかとわくわくさせる冒頭でした。
脚が生えてくる箇所はかなりコミカルに描かれていて、ニョキッと生えてきた脚に対して、また歩行練習も身体中から驚きや戸惑いを発しながら行っていて
蛸足をたくさん持っている深海の女王についていこうと奮闘する姿も可愛らしい頑張り屋さんに見て取れました。
地上で王子に出会ったときのそっと手を差し出しながらの声無き訴えが強く切なく響き、助けて守りたくなる姫。
そのため町の群衆達の壁に阻まれ、王子の事実を知ったときの嘆きが余りに可哀想でならず
しかし最後は王子との思い出を愛おしく回想するパ・ド・ドゥのあとに片方の手を掲げての幕引きから、重たい悲しみよりも
愛する人との幸せな時を大事に抱くようにして消えいく清らかさがまさる余韻を残しての結末と思えました。

渡邊さんの王子は心情を細やかにのせた踊りや揺らめく内面が視線や担がれ状態でも物語り、憂いを客席まで香らせ展開。
まず、溺れて水分を含んでいる状態の描画が抜群に上手く、王子の登場はサティのジムペディの曲の中で深海魚達にリフトされた状態で沈んでくるのですが
水の中を一瞬ふわりと浮かびかけたりとリフト体勢での調整や、海底に降り立ち、正面向いたときの生気を失いつつある状態の表情、足取りも
実際の海難事故では有り得ぬ設定ながら、漂いながら静かに無の境地へ到達しそうな様子が伝わり驚きでございました。漂着時の顔も美しや。
漂着後は婚約者がやってきて再会を喜び合うも、その前に誰かに助けられた微かな記憶を追うように海の方へ顔をゆっくりと向けていく運びにも引き寄せられました。

人魚姫(人間になった少女)との出会いの場は離れた場所から見つめ合ううちにみるみると惹かれ合う2人の間に音楽と感情の綾が広がって何もかもが美しいと思わせ
例えばソロとソロの間の静かな間も、ときめきの呼吸が沸いているように息遣いが感じられたほど。感情の線がずっと繋がっていたと見て取れました。(環状線ではない)
1幕の王子はさりげなく高度な技巧が詰め込まれた振付が散りばめられ、音楽を目一杯使ってのポーズや跳躍1つ1つが爽快且つすっと余韻が残り、
視線も人魚姫から離れず。技術発表会にならず心境を丁寧にのせながら踊りで示していらして、優しく響いた場面の1つです。

窮地に立たされる結婚式の場面はただの駄目男ではなく笑、仰々しい勲章や軍服、襷も違和感皆無で真面目一徹風格がある分、板挟み苦しさ増幅。
人魚姫と婚約者両方が目に入ったときの心の揺らぎや襞の細やかさ、追い詰められる切迫感は魂を摩る魅力がありました。
結婚式で王族としての義務と人魚姫との恋にずっと悩む様子は演者によって見せ方が様々で、
加えて紅白色の派手な襷ですので選挙活動でもなく宴会の主役でもなく高身分な王族として佇むのも本来はハードル高そうですが
儀式に臨む、国の未来を託された王族に相応しい渡邊さん王子でした。

あとにも述べますが、音楽はめくるめく展開で様々な楽曲からの構成ながら全曲がぶつ切りにならず流れるように紡がれては美しくおさまる演出に見えた、聴こえたのは
渡邊さん王子の、心情を細やかにのせた踊りやちょっとした背中の向け方や、憂えの余韻の残し方が客席まで香り、次場面へと移り変わっていったのも大きな力であったと思います。
殊に人魚姫と婚約者の間での揺らめく内面が担がれた状態(婚約者と王子は数名の男性陣に担がれて祝福される)での
人魚姫へどうにか目を向けようと残す去りぎわ等、佇まいでも物語っていらっしゃり、心が締め付けられました。
前半の王子の恋の昂りと後半の別れ双方に吸い込まれ、全編通して涼しげ爽やかな中において繊細な変化を美しい膨らみを持たせて語りかけてくださり、
単なる「ダメ王子恋物語・夏」にはならぬ、ときめきと切なさ、引き摺る後悔を帯びた物語として清らかに心に残り続けた渡邊さん王子日でございます。

井澤さんの深海の女王は優しげで美麗!派手さはあっても上品なマダムな雰囲気があり、目をくりっとさせながら喜怒哀楽を表していて、何をやっても綺麗に決まる笑。
特に3回目は子供達にもたいそう気に入られたのか可愛らしい笑い声が客席のあちこちから聞こえ、
過剰な表現はせずとも、品良く鮮やかな立ち居振る舞いが子供達の心にも響いていました。人魚姫が心配で地上までやってきて、
二股駄目王子を刺せばあなたは助かるとの命令も訴えかけの間の取り方も絶妙で、強調のため2回繰り返すときもお母さんの執念がより伝わってきた印象です。

柴山さんは儚い風情を帯びた踊りが愛らしく、今にも海に溶けてしまいそうな繊細さが零れ落ちる人魚姫。
腕や脚のラインがすっと伸びて空気を優しく抱くような腕使いにもうっとりいたしました。
深海の女王との脚のやりとりでははしゃぎ過ぎず、お茶目な面をちらりと覗かせながら淑やかな仕草で反応を見せていた気がいたします。
王子と結ばれぬ運命を悟ったときの悲しさを押し殺しながら静かに耐えている姿が痛々しく哀れで、王子を大いに呪いたくなったほど笑。

久々の男性主役デビュー者誕生となった中島さんは、悩む姿が似合う上品な王子。
緊張されている様子は見えず、水中での溺れながらの漂いからの浜辺へ運ばれる過程も水分を全身に多々含んでいそうなリアリティがあり
相当工夫されたことと想像。
ソロの部分は素早い角度の切り替えでやや縮こまってしまったように感じ取れた部分もあれど、
柴山さん人魚姫とのゆったりと愛を交わしていく恋心の募らせや、婚約者がいる身がばれてしまったときの苦しそうな姿も目に焼きつき
着こなしが難しそうな勲章ずらりの青色軍服もよく似合っていて、お伽話の王子様な雰囲気はばっちり。清々しい全幕主役デビューでした。

最たる未知数ながら期待を遥かに超える仕上がりであったのは仲村さん深海の女王。
長く伸びて上がる脚線や身体の柔らかさも生かしたゴージャスな蛸で、人魚姫との会話のマイムの細分化した描写がまた見事。
中でも、人魚姫から脚をねだられたときにおける、声との引き換えが条件と伝える箇所は非常に慌ただしいはずが
今何を伝えているのかが分かりやすく、深海魚達に囲まれいても踊りも表現もあまりに堂々とした女王様で、初大役と思えぬ出来でした。
いつもの折り目正しい、にこやかな仲村さんとは別人でございます。

廣川さんははっきりした表現や泳ぐように滑らかな踊りで物語を終始リードする人魚姫。私が観た日は3回目の登板でだいぶ慣れてきた頃とはいえ、
貝川さん初のオリジナル全幕のバレエ団初演ファーストキャストをプリンシパル米沢唯さんの代役で堂々と務められたことをまずは讃えたいばかりです。
こなすだけで手一杯どころか、(代役が廣川さんと聞いて、バヤデールやくるみ割り人形での初役を思い出すとそもそも心配無用に思えたが)
生き生きと闊達に過ごしている人魚姫の姿を全身で表情豊かに体現。時折顔に感情が実にたっぷり出ているかなと思った箇所はあれど、
王道古典作品ではありませんし、ぼんやり何もないよりは良いと捉えております。
人魚達と並んで踊る場においても身体の動かし方も大きく立体的で目線の合わせ方もきっちり。リーダーらしい牽引力もありました。
また速水さん王子が嬉しいのか、戸惑いか、悲しいのか分かりづらい表現も何点か見受けられていた中で(すみません)
状況描写をはっきりと行いながら場面を引っ張っていて、とても頼もしい主役と再度感じ入った次第です。
3キャスト中で最もオカン感が強烈であろう笑、奥村さん深海の女王との会話も迫力負けせず、互角なコミュニケーションが出来上がっていたのも見事。

速水さんは快活なソロに喜びをのせていて、難しいバランスからの回転や跳躍の浮遊感には客席からどよめきも聞こえたほど。
テクニックの鮮やかさはたいそう目を釘付けにしていた印象です。
ただ踊りが好調で抜きん出ている分、表現の幅に課題大いにあるであろうと考えさせられ、
例えば人魚姫との初めての出会いと、既に顔見知りである婚約者との対面時に同じにっこりな表情であったのは首を傾げさせました。(私の鑑賞眼が衰えていたらすみません)
また、人魚姫との別れで、婚約者とともに担がれながら去り行く場面にて、人魚姫に心を残しているように見えぬままさっさか背を向けてしまっていた点も気にかかり
廣川さん人魚姫が物語を的確に動かして行くリード力があったのが幸いでした。
結婚式にて、ぱりっとした軍服を触り戸惑いながら不安な胸中を明示していたのはとてもリアリティがあり
こういった細かな部分をより詰めていけば、本公演の全幕もより厚みや密度のある舞台に繋がるかと思います。
繰り返しますが速水さん、クラシックのテクニックはたいそうハイレベルなんでございます。

シンデレラの義理の姉も経験済みで鑑賞前から安心感すら持っていた奥村さんは、登場からして強烈。
浪速(ミナミ)のマダムっぽい豪快さと、女王な美をバランスよく結合させた突き抜けて楽しい女王様でした。
毒を吐いているような恐ろしさはなく、可愛い人魚姫が心配で仕方ないオカンな懸命さで、地上まで追いかけてきたものの
町の人々に追い回されてしまうとさりげなく軟体蛸ジャンプで沸かせたりとどこまでも明るいお母さんぶりでした。

婚約者はダブルキャスト。この公演をもって惜しまれながら退団される渡辺与布さんは常時にこやかな余裕の笑みが自信に満ちていて、
戸惑う王子にきらきらとした表情で有無を言わせず。結婚へ先導していた印象です。
木村優子さんは王子の変化にちらりと気づき、笑顔の奥で寂しさや不安を引き摺る姿が哀れで胸を打つ婚約者。
異なるアプローチで楽しませてくださいました。

それから挙げておきたい魅力の1つとして選曲の妙。小学校の給食時間に流れていそうな、名曲アルバム並に馴染み深い曲の数々が作曲家はバラバラにも拘らず
切り貼り感がない且つ自然に紡がれる、場面展開の1つ1つに台詞の如くぴたりと嵌る選曲でした。
深海の女王登場のグリンカの幻想的ワルツは、5月にバランシン振付のアブストラクトバレエで観たばかりのはずが
女王様の権力の誇示や、そうはいっても従い揃う深海魚達のダンスに沸々と笑みを引き起こされ、
やがて人魚姫が女王様のご機嫌を取って脚が欲しいと相談持ちかけて条件を言い渡され、条件を飲み込むと人間の衣服に着替えて脚が生えてくる、
そして王子様には気をつけるよう女王様からの注意喚起まで、曲調の変化が一連の会話のように聞こえて唸りが止まらず。
また王子に出会ったときの人魚姫のソロはメンデルスゾーンの春の歌で、王子と出会えた喜びと、人魚の身分を置いてきた、声を失った悲しみが入り混じる切なさが
ピアノの一音一音からしっとりと毀れ、胸をきゅっと高鳴らせる場面です。
2幕にて、(曲が分からずで失礼)事情を知る由も無い町の人々による祝福群舞が、曲調の盛り上がりと同時に
不安そうに見つめ合う人魚姫と王子の間に分け入ってより壁を作っていき、音楽も群舞も悲劇を一層膨らませる効果大でした。

そして時間軸戻りまして1幕幕開けはドビュッシーの神聖な舞曲世俗的な舞曲。
新国立でも再演を重ねているナチョ・ドゥアト振付『ドゥエンデ』の終曲で馴染み深い曲で森の妖精、(座敷童?)を描いた振付ですが
しかしいざ海底を設定にした物語にも嵌るどころ光差し込む海の煌めきや揺らめき、深海魚達が案内するどこか神秘的な世界や
水の潤いを含んで伸びやかに泳ぐ人魚達の滑らかな動きと溶け合って吸い込まれそうになる美しさに感嘆。
この曲はオスカー・ワイルド原作『漁夫とその魂』を題材に篠原聖一さんが振り付けられた
The Fisherman and his Soul(主演の人魚は下村由理恵さん、人魚達の仲間に奥田花純さんも出演)においても
海底での曲として使用されていて、海の世界にいざなわれるのは共通なのであろうと納得です。
1幕終盤には人魚姫と王子が出会ってしばらくすると星空が広がる中での舞踏会がお洒落でモダンな味もあり。
音楽がサティのジュ・トゥ・ドゥで、ピアノソロでは何度も聴いていながらオーケストラ編曲で初めて聴きました。
星々の瞬きや流星群の煌めきを思わすきらきらとした装飾等、星の様々な表情を音色に取り入れていて、何度でも聴きたくなる編曲。
初日夕方公演の開演直前、近くで暗転に怯えていたお子様が1幕終わるとお星さまいっぱい、人魚姫と王子様楽しそう!とすっかり舞台に夢中になっていたほどです。
途中、少し寂しげな曲調になると行方不明に王子を探し回る婚約者が現れ、ただ綺麗な舞踏会に終わらず、のちに起こる悲劇の予測第一弾。
貴族ペアのアンサンブルも洗練されていて、とりわけ内田美聡さん渡邊拓朗さんの華麗なるペアがそれはそれは目を惹き、全体を引っ張っていた気がいたします。

群舞として面白いと思わせたのは新聞記者トリオがサクサクワキワキと踊り刻んで行く中で王子の結婚を報じる号外が町の人々に配布され、
新聞持ちながら運動会のように交互に掲げたり両手で持ちながら左右に振ったりと賑やか展開。
そこへ、正装しつつも裏事情がありそうな王子と、何も知らぬ婚約者が揃って行進してくる場は
人魚姫に悲劇が忍び寄っている気配がじわりと広がっていく転換期と思わせる演出でした。

そもそも人魚姫の原作を知っているようで知らずであったため、公演前に原作、関連本を計3冊を目を通してみました。
とりわけ大きな違いが深海の女王の描き方で、原作では怖い威厳があると捉えておりますが
貝川さん版ではお茶目な世話焼きお母さん。また人魚姫の脚が生えてからの歩行練習は、
原作は地上に出てから懸命にもがき、生々しい血液描写があった一方貝川さん版では深海の女王が応援し、
深海魚達からもサポート受けながらコミカルに海中にて練習開始。それぞれ面白さがあります。

王子が漂着した日と、そのあとすぐに婚約者や貴族達を伴っての踊りの場面は同じ日なのか異なる日であるのか、
仮に同じ日なら服の乾きが異常に速いと思うのは私くらいかもしれませんが(海に配慮した速乾性素材が流行していた?)
気になる時間軸もあったものの、まずはバレエ団出身の貝川さんが全幕を新振付され、上演の成功をお祝い申し上げます。
バレエナウ(川崎浩美さん主宰)の発表会でも貝川さんのオリジナル幕ものは拝見しており、忘れもしない2019年『長靴を履いたネコ』は
誰もが知っていそうなクラシック音楽中心の構成な中で物語がぴたっと嵌って生徒さん達(当時の生徒さんは小さなお子さん中心でした)の持ち味を生かしながら
ネコと魔王の楽しい冒険や対決を描いていらして抱腹絶倒であったのは今もよく覚えております。
今回は新国立劇場バレエ団のための作品で、夏のこどもバレエにて竜宮の再演希望の声も多い中で重圧もあったことと察しますが
バレエ団オリジナルの全幕作品誕生はまことに喜ばしく、定期的に上演して欲しい作品です。



※以下写真多数。カーテンコール撮影可のため撮りましたが上手くいった写真が少なく汗、様子だけでも伝われば幸いです。
衣装が可愛らしくお洒落なセンスで素敵。掲載写真のキャスト偏重であるのは悪しからず。



初日は夕方公演から鑑賞のため、昼公演をご覧になった方々を待ち、マエストロで合流。
劇場到着時、割れんばかりの拍手が聴こえ、期待が高まりました。



休日ランチメニューの時間帯で、前菜がブッフェ式。センス良く盛り付けられた、と思います。ドレッシングは何種類かあり、人参を選択。



せっかくですのでディナーにはない、カレーを選択。この日も暑く、ぎゅっと濃縮なスパイスで火照って気持ち良し。



管理人、新年齢になって最初の鑑賞キャスト。



ええお顔。



手を広げて〜



手を取って〜



うっとり



サーモンのマスカルポーネサンドイッチ。(アステラスにおいても販売していました)
爽やかなクリームも挟まってさっぱりといただけました。白ワインと合います。
ちなみに管理人、人生の節目が土用丑の日に近いながら鰻が苦手なため、
子供の頃はサーモン丼を買ってもらったりしておりました。安上がりと親によく言われ喜ばれたものです笑。
昨年の新国立ドン・キホーテ名古屋公演では断念した、ひつまぶしもまだハードルが高うございます。



柴山さん中島さん仲村さん組。



リカちゃん展示。



パンナコッタ、涼やか滑らかで色合いが人魚姫風。泡も一緒に。



パン屋のアンデルセンにて見つけたレモンマドレーヌ。爽やかな酸味が効いていました。
レモンとオレンジ、どちらも美味しいが、夏場に出回るお菓子の種類としてはレモン系が多めな印象。
オレンジ好きな方は、愛媛の松山市へどうぞ!!みきゃんがいっぱい、松山空港からしてオレンジまみれです。



町の人々!タイミングずれずれですみません。新聞群舞面白かった!



貴族たち。星空舞踏会、ロマンチックでした!



新聞記者トリオ。ワキワキダンスからの取材光景も忘れられず!



姫を迎えに〜。



この日もええお顔。



手を振って歓声に応えてくださいました!



廣川さん速水さん奥村さん組。



ファイルとアラジン動画配信告知。



アラジン動画告知裏。



3キャストご覧になった方と語るため、デンマークビールでまずは乾杯!カールスバーグがデンマークビールであると初めて知った、人魚姫鑑賞の夏の夜。



たこのかわりに、イカメニューをいくつか。焼きイカ。



イカパン粉焼き。お酒進みます。



ソルティードッグを注文してみた。どんなものか注文してからのお楽しみにしていたら、人魚姫な衣装の色合い。塩はきっと海の塩、と言い聞かせます。
海中から眺める、憧れる、地上の世界は人魚姫の目にはどんな風に見えたのでしょうか。



オレンジとスパークリングワインのミモザ。オレンジもレモンも美味しい柑橘類です。