2024年8月30日金曜日

徹底した基礎重視から生み出される癖のない美しさ 徳永由貴バレエスクール第5回発表会  8月12日(月祝)




8月12日(月祝)、板橋区にて徳永由貴バレエスクール第5回発表会を観て参りました。2017年以来、7年ぶり2度目の鑑賞で
新国の渡邊峻郁さん、森本亮介さん、元東京バレエ団梅澤紘貴さん、河島真之さんをゲストに迎えての開催です。
2019年も足を運びたかったものの愛媛県西条市での鑑賞と重なり、トラベルミステリーの主人公気分であっても愛媛と東京の掛け持ちはできず断念。
2017年もご覧になった方の他、周囲の方々に声をかけたところ興味を持って代わりに行ってくださった方もいらっしゃいました。
2019年のその節は天候が危うい中ありがとうございました。(そして2024年8月末も日本各地で暴風雨)
https://yt-balletschool.jp/







さて私にとっては7年ぶりの徳永バレエ、まず生徒数大増加に驚きました。7年前は第2回発表会でまだ小規模人数での開催であったため2時間弱の上演時間であった記憶。
徳永先生も出動され、『くるみ割り人形』2幕にてアラビアをしっとりと踊っていらっしゃいました。
ところが7年経ち、少子社会と逆行して生徒数の多さに目を見張り、それにはきっと何か理由があるはずで、一層発表会の舞台に興味を持たせたのでした。
いよいよ第1部が開演。まずは幼児さん以外と思われるほぼ全員出演プロコフィエフ交響曲で、2019年上演の規模拡大再演のようです。
出演者全員同じ白系のクラシック・チュチュにシルバーのティアラ姿で舞台上に勢揃い。そしてもう開始から数秒で人気の高いスクールである理由は一目瞭然で
とにかく皆が基礎に忠実で癖の無いきちんとした美しい踊り、立ち姿やポジションの組み方に感激でございました。
決して難しく派手なテクニックを盛り込んでおらず、シンプルなステップを組み合わせた振付でしたが、
だからこそ基礎がしっかり身体に叩き込まれた美しさが引き立っていたのでした。
一般のバレエスクールですからコンクール入賞者もいればあくまで趣味として習っている生徒さんまで様々であるはずですが
脚の出し方から腕の上げ方といった基本の動きを誰もが美しく綺麗に見せて、
角度の変え方や顔も晴れ晴れと観客に示している表現も堂々とこなしたりとゲストはまだ誰一人登場していない段階で息を呑む瞬間の連続。
それから嬉しさが込み上げたのは、比較的大きな子もバレエシューズの生徒さんが多かったこと。
もしかしたらレッスンでは挑戦しているかもしれませんが、舞台ではまだ履かず、
入念に訓練して丈夫な脚を作りつつもまずはシューズでしっかりと美しく正確に踊れるようになることに重きを置いていらっしゃるのでしょう。
実際にバレエシューズ、ポワント問わず丁寧に優雅に踊る生徒さんばかりで、堅実で良き指導が窺えました。危なっかしいポワントの生徒さん皆無です。
年齢が上がるにつれて少しずつ高難度なテクニックが見え始め、フェッテ等も過剰に見せずさらりと品良くおさめて次へ展開していきました。

第2部はコンクールで踊られたコンテンポラリー作品3本や、古典の抜粋含むバレエ・コンサート。
コンテはどれも瑞々しく伸びやかで、音楽も馴染み深く(曲名までは記憶できず失礼)すらりとした身体やピュアな魅力がそのまま活きる振付でした。
最後に『ドン・キホーテ』よりハイライトで、結婚式場面を短縮上演。キトリ役はカナダのアルバータに留学中の生徒さんで、技術しっかり、色気も香る可愛らしさもあり
キューピットや小さなキューピッド達も軽やかでキュート。襞付きの段々スカート衣装での街の人々や
チュチュでのヴァリエーションも、繰り返しにはなりますがきっちり備わった基礎から繰り出される動きの一瞬一瞬から目が離せず。
例えばつい勢いよくやりがちな大ジャンプも適度に抑えていて品が失われずでした。

最後は『眠れる森の美女』よりオーロラの結婚。徳永スクール版として、役を増やして小さな子供達もたくさん出演し、
シンデレラの部分を「シンデレラの妖精」と設定したり「お城の縫い子さん」も登場したりと徳永先生の名付けや演出センスもまた可愛らしい。
シンデレラのお祝いにやって来た幼く可憐な妖精さん達かな、お城でオーロラのドレス裁縫に勤しむ子供達かなと想像しながら楽しく微笑ましく観察いたしました。
宝石はルビー、サファイア、ゴールド、シルバー、ダイヤモンドで種類も人数も増え、
コーダは第1部のプロコフィエフ交響曲で感激したアンサンブルの整い方にカラフルな華やぎや煌めきも加わったかのように壮観で
これまた更に美しいシンフォニック作品を観た気分。派手なことに走らず、慌てずじっくりと基礎を固めていく大切さを再び学ばせていただきました。

フロリナ姫の生徒さんはバネが強く、手脚が何処までも伸びていきそうなしなやかさの持ち主で、
ただやり過ぎないよう抑えるべきところでは抑えていてコントロール力もお見事。歌うように楽しそうな表情も素敵でした。
青い鳥の森本亮介さんは堅固にサポートされ、ヴァリエーションでは豪快な跳躍をご披露。

そしてオーロラ姫の生徒さんは徳永先生のご投稿によれば初パ・ド・ドゥとのことでしたが全くそう見えず。
実に滑らかで繊細、優雅で透き通るような気品もあり、表情も終始姫。結婚式の序曲にて大勢の祝い客がそぞろ歩いて舞台に立ったあとに
王子と2人で舞台の両脇から登場する場面からして、堂々とした足取りと佇まいでした。
王子の渡邊さんは初パ・ド・ドゥのオーロラ姫を優しく優しくサポートされ、緊張解してよりきらきら輝けるよう心砕いての接し方に、
磐石に守って行きそうな気概に、余りの安心感からか何度も頬が緩みました。歩く姿、後ろ姿も肩から優雅な品を醸していらして、
舞台袖へ入るときもつい気が抜けてしまう箇所も微塵もなし。板橋のホールはまずまず広い面積もありそうであったものの
会場目の前のセブンイレブンまで跳んでいってしまいそうな勢いもあり、結婚式とは思えぬ淡々短調勇ましい音楽(チャイコフスキーには詫びるが)のヴァリエーションも
強弱も鮮やかで抑揚がくっきり。テクニックも力強くもエレガントでございました。
アポテオーズでは姫も王子もロイヤルウェディングに相応しい絵になるお2人で、金吹雪舞う最後も格式高い幕切れ。
国王と王妃不在な分、リラへの礼や手を差し出してのリード等式のさりげない取りまとめ役も頼もしく、徹頭徹尾王子様でした。

目当てはゲストであっても、オープニングの生徒さんのみの作品からしてここまで感激とは驚きでした。
2017年の第2回発表会のときも過剰演出もなく、派手な振付もない、徳永スクールの堅実そうなカラーには好感を持ちましたが
慌てずじっくりと基礎を固めていく、ポワントも早くに履かせないといった手堅い方針こそが生徒さん達の癖のない美しい踊りへ繋がっていると見受けます。
鑑賞していても楽しいだけでなく、学びも多々ある発表会でした。





鑑賞前に、会場近くのおさだへ。6月末にNBAバレエ団公演にて大山駅まで参りましたが残念なことに臨時休業日でした。



目当てはワンタンメン!生姜の効いた餡が入ったワンタンです。スープはさっぱり。



会場には衣装も展示。



1幕オーロラが着用していそうな、薔薇が輝くデザイン。



シックなブルーに、水色のきらきら装飾がポイントな衣装も。サファイアに合いそうです。



リラな紫衣装、花模様も凝っています。赤は鮮やか!



帰りはレモンかき氷とビール。徹頭徹尾な王子を、そして基礎に忠実で全員が癖なく美しい踊りを披露していた生徒さん達の姿を回顧いたしました。
プロコフィエフ交響曲からたまげた、徳永先生の徹底した基礎重視指導にも拍手です。


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