2024年8月26日月曜日

何でも屋のバジル  多恵クラシックバレエスクール創立20周年記念第12回発表会『ドン・キホーテ』8月10日(土)   《神奈川県平塚市》





8月10日(土)、神奈川県平塚市のひらしん平塚文化芸術ホールにて多恵クラシックバレエスクール創立20周年記念第12回発表会『ドン・キホーテ』を観て参りました。
平塚市へは初上陸、初めて鑑賞するスクールです。
https://tae-ballet.com/news/283/


第1部はバレエ・コンサートで、小さなお子さんの生徒さん達は意外にも『ドン・キホーテ』全幕に配され、この部では小学生くらいからアシスタント、講師の方々が中心。
新国立の西一義さんが8月4日の江戸川に続き『白鳥の湖』パ・ド・トロワに出演され、シンプルである分、粗も目立ちやすい振付ながら
何処を切り取っても優雅で滑らかでポーズの見せ方もさらっと綺麗にこなしていていつまでも観ていたくなる踊りでした。

『ドン・キホーテ』全幕はロレンツォもガマーシュも不在で、狂言自殺も無し。ドン・キホーテのお供をするのは可愛らしい子供達であるスクール独自版で
コンサートには出演していなかった小さな子供達も上手に配され、街の中で1曲たっぷり踊ったりと微笑ましい演出でした。
袖の中から先生方の指示声がちらりと聞こえる等ハプニングも色々あれど、幼い子達が一生懸命舞台に立っているからこそどんな事態もホクホクしてしまいます。

ドン・キホーテ役は長らく牧バレエや開場初期の新国立劇場でも活躍された、現在はアムールバレエ主宰の佐藤崇有貴さんで、恐らくは30年ほど雰囲気は不変そうな若々しさ。
元々背も高めでいらっしゃいますがすらりとした体型を維持されていて品もあり、老けメイクやモシャモシャ鬘も無しの
ナチュラルでスタイリッシュなドン・キホーテである多恵スクール版の役どころもぴったりでした。
椅子に腰掛けたときはお供の小さな男の子達の子守も兼ねていらして、優しく面倒見も良いドン・キホーテさんです。

キトリは1幕2幕3幕それぞれの幕で異なり、講師やアシスタントの方々が務めていらして技術の安定感や細やかなお芝居も万全。
1幕賑わう街ではほんわか上品で、2幕の酒場は色っぽく勝気。3幕結婚式は貫禄ある花嫁で、幕ごとに全く違う個性のキトリ達が麗しく競演です。

さてここからが肝。1,2,3幕にて演者も個性も全く異なる「3人のキトリ」(同名の深川秀夫さん作品あります。8月もあと数日で終わり、大阪での深川ガラはもう今週末!)を
相手になさっていたバジルが新国立の渡邊峻郁さん。加えてサンチョやロレンツォといった
従来の主要役が何名も不在な分、舞台仕切りの大半も任されてもはや床屋ではなく何でも屋のバジルでした。
1,2,3幕キトリは全て別の方であってもパートナーリングも安定な上にソロも表現もそれぞれの場に即した魅力たっぷり。
風車の出現も無く、しかしドン・キホーテを夢場面に移すために眠りにつくようワインを大量飲酒させるのもバジル笑。
狂言自殺は無くても酒場のフィナーレはあるため、指パッチンめでたしめでたしの音頭を取るのもバジル。必要に応じて小道具持ってくるのもバジル。
元祖は1983年にニューヨークのMETで収録され、40年以上が経過した今もなお、色褪せぬ傑作として愛されている版の大スターダンサーの映像であろう
両手にコップ持ってのソロも追加!!泥酔よりもほろ酔いに近いバジルでしたが笑、後ろ脚の伸ばし方もコンパスのように斜めに差し出しながらの回転も美しく
茶目っ気も零れ、憧れの男性ダンサーで観たいと思う振付なので嬉しうございました。
同映像版で衝撃を受けた、ロマのソロをタンバリン持ってバジルが勢いよく情熱深くうねるように踊るお姿もいつか観てみたいものです。
真ん中でも隅っこでも物語の運び役を、しかもスクール独自版にて多々担っていらして、舞台捌きの見事なこと。
賢さの塊でいらっしゃるとは思いますが、とりわけ今夏は大量の仕事を抱える中で
いかにして完璧に記憶や把握なさる上に本番舞台では確実に体現できてしまうのか知りたいほどです。

酒場にて、ロマのソロでよく踊られる音楽が流れ出すと仮面のようなものを付けた女性が登場され、沼田先生ご本人でした。
シュッとした艶やかな佇まいで、バジルやエスパーダ、ドン・キホーテ達男性陣にエスコートされ、20周年を祝う特別挿入場面なのでしょう。
エスパーダは新国立の元バレエマスターの菅野英男さんで、どっしり貫禄な出で立ちながらピンと伸びる爪先や着地の正確さは健在。
役柄上はライバル同士でお互いのソロのときはメラメラ競争心が燃え盛っていそうでありながら、
エスパーダと見つめ合ったときのバジルが妙に幸せそうであったのは気のせいではないはずで、
共演の拝見は2021年に札幌で上演された久富淑子バレエでの『シンデレラ』王子と継母以来でしょうか。
平塚市における懐かしい師弟関係再実現を見逃すまいとじっくり観察いたしました。

会場のひらしん平塚文化芸術ホールはまだ新しく、濃紺に近いシックな色味の緞帳の張りも生き生きとしていて客席もピカピカ。
2階席も実に観易く、これから一層様々な催し物で使用される機会がありそうな劇場でした。
前日夜に神奈川県を震源とするやや強めの地震が起き、私は地元の駅近くの店内におりましたが
利用客の大半の携帯電話から緊急地震速報がけたたましく鳴り響いていて、見知らぬ客同士で状況を確認し合ったりと不穏な夜となり、
小田急線は長時間見合わせが続いたようで平塚市の海岸も一時閉鎖との記事も目にいたしました。
翌日も心配でしたが地震とは全く違う原因で小田急線がまたもやトラブルに見舞われ、初めて行く場所でしたから不安も募ったものの
スクールの節目記念である全幕ドンキを鑑賞でき、他版より遥かに気遣いも完璧な勤勉バジルも堪能。帰りは通常運行であった小田急線で無事帰途につきました。




ひらしん平塚文化芸術ホール 外観



開演前、平塚駅南口側にあるスペイン料理店へ。ご近所の常連さん達が集う、寛げるお店でした。



サラダもこんもり華やか!オリーブたっぷり入っているのもポイントです。



細パスタ使用の魚介フィデウア。きりりと辛口な冷え冷え白ワインと共にいただきます。お出汁が沁みていて美味しい。
お米のパエリアですと時間を要しますが、細パスタのパエリアであればそこまで時間かからずです。
鑑賞のたびに食べ過ぎでは、ブログ内容と同様に益々ボッテリ体型まっしぐらであろうとの無言の忠告が
多くの方々から飛んできているようにも感じておりますが笑、出先ならでの美味しいものは欠かせません。



闘牛ポスター。お店の方が、誇らしげにどうぞ!と言ってくださり撮影。



会場へ向かう道にて迷い込んでしまうと、たなばたのまちな広場がありました。



ホワイエに事務机なものもありました。



夜、平塚駅へ行く道。



往路は小田急線遅延で快速急行が運休になり、登戸から藤沢まで各停で行きましたが、
暑いホームで長時間待たされることもなく何かしら電車は到着していましたから
前夜の神奈川県新松田辺りを震源とした地震時に比較したらなんてことありません。駅員さん達の心労はいかばかりか。
ちなみに平塚駅は七夕の歌、お隣茅ヶ崎駅はサザンオールスターズの音楽が列車到着時に流れ、地域の個性が表れていました。
サザンの曲は多々ありますが、私が特に好きなのは1996年発売の愛の言霊と、桑田佳祐さんのソロ曲では波乗りジョニーでございます。

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