2024年8月11日日曜日

レジェンド頼みか世代交代か  第17回 世界バレエフェスティバルAプログラム 8月1日(木)




8月1日(木)、世界バレエフェスティバルAプログラムを観て参りました。
ガラの日は鑑賞予定が入っており、AとB比較するとAプログラムの方が興味を惹かれる作品が多めであったためAを選んで鑑賞でございます。
演目数多いため、さっさか感想ばかりですが悪しからず。
https://www.nbs.or.jp/stages/2024/wbf/

※プログラムはNBSホームページより
― 第1部 ―

白鳥の湖より黒鳥のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

マッケンジー・ブラウン
ガブリエル・フィゲレド


クオリア
振付:ウェイン・マクレガー
音楽:スキャナー

ヤスミン・ナグディ
リース・クラーク


アウル・フォールズ
振付:セバスチャン・クロボーグ
音楽:アンナ・メレディス

マリア・コチェトコワ
ダニール・シムキン


くるみ割り人形
振付:ジャン=クリストフ・マイヨー
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

オリガ・スミルノワ
ヴィクター・カイシェタ


アン・ソル
振付:ジェローム・ロビンズ
音楽:モーリス・ラヴェル

ドロテ・ジルベール
ユーゴ・マルシャン


― 第2部 ―


ハロー
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ジョルジュ・クルポス

菅井円加
アレクサンドル・トルーシュ

マノンより第1幕の出会いのパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ

サラ・ラム
ウィリアム・ブレイスウェル

ル・パルク
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

オニール八菜
ジェルマン・ルーヴェ

チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

永久メイ
キム・キミン


― 第3部 ―

3つのグノシエンヌ
振付:ハンス・ファン・マーネン
音楽:エリック・サティ

オリガ・スミルノワ
ユーゴ・マルシャン


スペードの女王
振付:ローラン・プティ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー

マリーヤ・アレクサンドロワ
ヴラディスラフ・ラントラートフ



マーキュリアル・マヌーヴァーズ
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ

シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ


空に浮かぶクジラの影
振付:ヨースト・フルーエンレイツ
音楽:レナード・コーエン、ルー・リード、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ

ジル・ロマン
小林十市


― 第4部 ―

アフター・ザ・レイン
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:アルヴォ・ペルト

アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ


シナトラ組曲
振付:トワイラ・サープ
音楽:フランク・シナトラ

ディアナ・ヴィシニョーワ
マルセロ・ゴメス


椿姫より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン

エリサ・バデネス
フリーデマン・フォーゲル


ドン・キホーテ
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス

マリアネラ・ヌニェス
ワディム・ムンタギロフ


指揮: ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏: 東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ: 菊池洋子(「アン・ソル」、「ハロー」、「ル・パルク」、「3つのグノシエンヌ」、「マーキュリアル・マヌーヴァーズ」、「椿姫」)
チェロ: ⻑明康郎(「ハロー」)



最も印象深かったのはアレクサンドロワとラントラートフのスペードの女王。
チャイコフスキーの雷光が轟くような悲愴の音楽と歪んで溶け合い、陰鬱な膜で覆うようなアレクサンドロワの踊りが燻し銀な迫力で全幕で観たくなる作品でした。
恐らく随分と前にツィスカリーゼ主演映像で観てはいるはずが記憶の彼方にあり(失礼)、
以後三大バレエ以外のチャイコフスキーの音楽も様々なバレエ作品を通して知るようになったためか
今回のたった10分程度の抜粋ではあっても印象は強烈でした。ラントラートフの軽快な身体捌きや脚のラインの美しさも健在。
当ブログのプロフィールにも記している通り、私が海外のダンサーで特に好きなのがアレクサンドロワで
ただキャリアからして前回のフェスが出演最後であろうと思い込んでおり、またボリショイバレエ団の肩書きでのロシア人ダンサーの出演は
世界情勢を鑑みると困難であろうとも考えていたため、加えて現在はバレエ団公演の第一線には立っていないと思われ、
出演決定告知を目にしたときは喜びよりも驚き、心配のほうが上回りました。
しかしご意見はあるかもしれませんが、Aプロのパフォーマンスを観る限りでは身体のキレも表現、風格や空間の支配力も唸らせるものがあり、
来日してくださってありがとうございますと申し上げたい気持ちが今も込み上げております。

オランダ国立バレエ団に移籍後も益々目覚ましい活躍を見せているスミルノワの2演目も忘れられず。
マイヨー版くるみは清新で洒落た魅力満開で、身を委ねたりはっと起き上がったりと
生き生きとした喜びが全身から舞うパ・ド・ドゥで、カイシェタの爽快さと合わさって解き放たれた楽しさが交わるパ・ド・ドゥでした。
3つのグノシエンヌでは一音一音を研ぎ澄まされた踊りで静かに紡ぎ出し、バレエ団の枠を越えたマルシャンとのペアも新鮮。

それからヴィシニョーワとゴメスも、出演者一覧に名前を見つけた当初は名誉同窓会枠或いはゴメスは宴会部長枠かと失礼ながら脳裏を過っておりましたが
いざ観ると、惹きつけられる円熟味。品性を保ちつつ身体を寄せ合っては情熱的な匂いを漂わせ、
黒いシンプルなワンピースな衣装であっても内側から輝き放つヴィシニョーワの艶かしいこと。
ゴメスのエスコートがそれはそれは紳士的で、年齢を重ねたお2人だからこそ滲み出るゴージャスな舞いでした。

ヌニェスとムンタギロフは燦々と降り注ぐ太陽な輝きで魅了。 ムンタさん、床屋さんには見えぬお育ちがとても良さそうなバジルでしたが結婚式場面だから良いか。

何故だかチャイコ強化週間なのか、8月最初の7日間で4箇所4組で目にするチャイコフスキー・パ・ド・ドゥ第一弾であった永久さんキムさん組は
永久さんはエレガント過ぎる印象があり、キムさんは技術達者ながらアクセントが太めな気がいたし、少し好みからは外れ気味でしたが
(キムさんの海賊は野性味と品格が良いバランスで備わっていて膝を打ったのだが)この夏の見比べが色々楽しみに。

そしてボッレは怪物か。彫刻のような肉体は健在で衰えも見当たらず、今回のベテラン勢の中でも年齢不詳ダンサーでした。

風船も用いた空に浮かぶクジラの影、演奏者とやり取りもあるハローは面白みがあったのかもしれませんが
いかんせん両作品ともに1本の上演時間が長く(クジラは20分超?)、上演作品選定の基準が気になるところ。

数演目しか把握しておらず、他の演目や上演順は開演後のオープニング字幕でようやく知った熱量低め観客であったかもしれませんが
またレジェンド頼みもほどほどに、世代交代も課題でしょうが、世界各地のダンサー一斉集結の夏祭りを東京で味わえる贅沢なひとときでした。




入口



フェス名物吊るしポスター並び



スミルノワ!



上演前のプログラム紹介において、中国語も表記され、漢字の当て方が話題に。スペードが黒桃、納得!ル・パルクは公園、ハローは你好、簡潔だ。



この日は空いていたドリンク売り場。せっかくの機会、シャンパンで乾杯!

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