2024年8月23日金曜日

ほどよく刈り込み見せ場を工夫  エチュードバレエアカデミー  バレエフェスティバル『眠れる森の美女』 全幕  8月7日(水)

8月7日(水)、多摩センターのパルテノン多摩にて、エチュードバレエアカデミーバレエフェスティバルを観て参りました。
http://www.etude.gr.jp/

https://www.parthenon.or.jp/event/daihall20240807



 




  ゲストに新国立の渡邊峻郁さん、柴山紗帆さん、木下嘉人さん、中島駿野さん、宇賀大将さん、
牧の濱田雄冴さん、𡈽屋文太さん、ロシア国立サラトフ・オペラバレエ劇場の廣瀬晃太朗さんを迎えての舞台です。
定時退勤後に向かいましたため第1部のバレエ・コンサートは客席からは鑑賞できずでしたが
友人がチケットを持っていたため到着後次の休憩時間まで受付前で待機していたところモニターを発見。
コンサート最後を飾る『くるみ割り人形』グラン・パ・ド・ドゥコーダがちょうど始まった様子を確認いたしました。
最初から観ている友人がプログラム受け取り後すぐコンサートの出番について予め連絡をくれていたため
モニター凝視しながら思わず興奮しつつ、休憩時間までその場で待っておりました。
王子が渡邊さんでしたので、また前日には渋谷の大和田さくらホールにて我が後輩が踊って大成功収めた演目のパ・ド・ドゥでしたので
受付前待機状態ながらちょこっとだけでもモニター越しに拝見でき、多摩センターの祭典2024夏が開幕です。

さて休憩時間になり友人から無事チケットとプログラムを受け取って入場し、客席からは『眠れる森の美女』全幕の部から鑑賞。
エチュードさんの鑑賞は2022年以来2回目で、前回は第1部バレエ・コンサートの幕開けから鑑賞いたしましたが
柴山さん渡邊さんが主演務められたお目当ての『パキータ』グラン・パ含めても大変ボリュームのあるバレエ・コンサート構成な上に
その後に刈り込み演出ほぼ無しでの全幕『コッペリア』上演に仰天した記憶がございます。
勿論発表会の主役は生徒さんですから、大きなスタジオの場合バレエフェスやお正月時代劇も驚愕な長時間上演になるのは当然の流れとは思ったものの
先生方及び出番が多い少ない問わず生徒さん達の体力に脱帽したものです。小さなお子さん達にとっては待機時間もなかなか大変かと思います。

しかし今回は第1部を観ていない身分で申すのも失礼かもしれませんが2022年に比較するとバレエ・コンサートの演目数は抑えられ
眠り『全幕』であっても、プロローグ妖精達のアダージョ部分はカット(確か)、第1幕のワルツ前座こと糸紡ぎお許しください場面や
2幕森の場の村人達の踊りもカットしたりと上手いこと少しずつ刈り込んで短縮。
しかし生徒の出番もしっかり見せる、幕ごとのポイントは華やかに見せて全幕観た気分に浸らせる等終始工夫された演出が光り
渡邊さんがデジレ王子役であった点を差し引いても観客の集中力を切らせないよう配慮が行き届いた構成であったと捉えております。

通常オーロラ姫登場直前に披露される花のワルツを別所(プロローグだったかと記憶)に持ってきて、木下さん、中島さん、濱田さん、宇賀さんも投入されての
パ・ド・ドゥペアを軸に展開する振付も華々しく、開幕に期待膨らむワクワク感を募らせて見応えがありました。
フォーメーションもよく整理され、小さなお子さんからコンクール入賞者達まで、それぞれ目立たせる場面が設けられて大人数であっても混雑した印象皆無でした。

第1幕のオーロラ姫はスタジオご出身で牧阿佐美バレエ団で活躍中の門脇紅空さん。
直近で拝見したのが5月に上演されたバレエ団振付家発掘公演での黒い衣装に身を包み美術館の警備員を誘惑する女怪盗役でしたので
淡いピンク色チュチュがぴったりな、可憐なお姫様が妙に新鮮。小柄で軽やかで、すくすく育った感のある伸び伸びとした踊りにも惹きつけられました。
4人の求婚者の王子達が花のワルツからそのまま出世した!?男性ゲスト陣。この3日前の8月4日(日)江戸川区に現れた宮殿で勃発した
区が誇る夏の大行事である明日開催の花火大会も仰け反るであろう火花の散らし合いや濃厚に波打つ争い、奪い合いは無く笑
4人揃って白系のクラシカルな装いで、温和な協調性を重んじながら姫を優しく見守り支える王子達でした。
倒れたオーロラ姫を運ぶ格好も、1人が先導役で前を歩き、3人が等間隔で持ち上げて歩く様子も音楽と調和していて自然でエレガント。
安全第一を重視して姫を落とさずに運ぼうと真剣になるあまり建設現場での鉄鋼運搬作業にもなりかねない場面においても
あくまで優雅に運び、リラの精の魔法へとスムーズに橋渡ししていた多摩センター求婚者王子陣でした。

大概発表会での眠りはプロローグ、1幕、3幕結婚式辺りを抜粋上演する教室が大半で
役が少なくコール・ドで見せるのも難しい第2幕は上演機会は珍しく、今回とりわけ楽しみにしておりましたが、進行すればするほど目が冴え渡って感激した幕でした。
まず、王子様がやってくる森の狩りとはいえ貴族達はいますが賑やかな村人達が不在の少人数な御一行のため
渡邊さんデジレ王子が登場からずっと跳躍や回転含ませながら踊りっぱなしで驚倒。
王子の見せ場が多いとされるヌレエフ版もここまでは踊らぬはずで、若さと情熱に溢れ、生気や躍動感も漲り
優雅に歩いてご登場ではなく最初から大跳躍で斬り込んでくる勇壮な王子でございました。更には衣装のセンスが良く、濃紺のベルベットな上着でカチッとした装い。
白いブラウス系ですと棘にすぐ刺されそうですし獲物からの奇襲も危ぶまれるため狩にしては危険な軽装に見え(現代で言えば、富士山軽装登山問題を想起)
そうかといって、丈夫そうな作りやシックな色味は評価できるものの某国立の胸元開き過ぎ衣装はいただけず汗。
心は開いても胸元は閉じろと初演の10年前から何度嘆いていることか、2ヶ月後も同様にぼやくのは目に見えておりますが
それはさておき、パルテノン多摩を飛び出してキティちゃんもびっくり歓迎であろう、サンリオピューロランドまで跳んでいきそうな勢いで
踊りも衣装も凛々しく気高く勇壮さ抜群な印象で舞台を席巻していらっしゃいました。
そうです、オーロラ姫は眠りについても、観客は益々意識をはっきりさせないとならぬ場面ですから(結婚式が終わるまでまだ長い)
目覚まし時計代わりに王子のインパクトが増強されてちょうど良かろうと納得でございます。

2幕からオーロラ姫は柴山さんにバトンタッチ。幻影であってもぼやけ過ぎないよう、緻密に強弱を付けた美しい踊り方で
3幕結婚式場面でも感じましたがバレエ団公演で度々組んでいる渡邊さんと、王道のクラシック演目であっても
互いに刺激を与え合うように情感が広がるやりとりに心動かされました。
お2人のペアはとても好きですがこれまで作品によっては少々ぎこちなくなってしまったときもあり
しかし当ブログでは度々申し上げているように『ライモンダ』での深窓の淑やかな貴族令嬢と愚直な騎士の並びや、
双方が身体の底から吹っ切れたと思わせた『夏の夜の夢』でのティターニアとオーベロンの、喧嘩しても睦まじく威厳と気品香る妖精女王と妖精王夫婦も忘れられず。
久々に再び組んでくださり、端正なラインや品を醸すパ・ド・ドゥが目に胸に沁み入りました。

そして16人構成の森の精達のコール・ドもよく揃っていて、オーロラ姫、デジレ王子、リラの精を柔らかく囲んで導いていました。
ジュニアから大人の生徒さんまでが一緒にグランド・バレエのコール・ドを踊る技量の高さにも拍手でございます。
2幕佳境に達しつつある、王子を乗せたリラの舟の運行中に何かに衝突したか一時つっかえる事態もあったものの事故なくそのまま運行して無事姫の元へ。(一瞬の事でしたが)
2幕序盤の登場からして、剣持って必殺技なのか回転攻撃もしながらカラボスを退散させるのも頷ける勇敢な王子でした。剣がちょいと短かった気がするが、
五輪でフェンシングの報道が頻繁になされていた影響かもしれず。それはそうと
オーロラ姫の幻影に恋い焦がれ、手に入れたいけれど儚さに阻まれ益々恋心募る王子の心理が舞台を覆って、
姫もまた幻影であっても徐々に王子に引き寄せられ吸い付いてはまたぱっと離れる、胸が騒ぎ立つような恋模様が
呼吸の合った森の妖精達のコール・ドとともに美しく豊かに描き出された2幕でした。姫に恋して助け出せ作戦なる王子の大冒険も満喫です。

結婚式での3幕では、宇賀さんの狼が被り物で顔は全く見えずでも身体の動きが実に雄弁で、怖くも楽しさいっぱいな狼さん。
青い鳥の木下さんの、正確な折り鶴の如く隅々までぴたりと隙がない職人な技巧も印象に残っております。

刈り込んで時間はほどよく短縮、されど全幕を存分に観た気分を与えてくださるエチュードバレエ版眠りでした。冴え渡る目で帰途についた私でございます。
眠り祭り2024、まだ続きます!!



行きの電車内。急行橋本行きは調布駅を過ぎるとゆったり車内に。(余談だが関西の南海線にも急行橋本行きがあり、先日初めて乗車)
多摩センター到着前に、懐かしい報道映像にて、2002年に多摩川の丸子橋付近で発見された野生アザラシのタマちゃんのニュース。
同年8月下旬だったか、草刈民代さんも、笑っていいとも!テレフォンショッキングにて客席アンケートのテーマに採用なさっていたほどでした。
ちなみに私は丸子橋まで見に行きまして、野生のアザラシを見たのはこのときのみ。
京王線沿線にも、多摩川のつく駅がございます。



京王多摩センター駅。天井にサンリオの仲間達!



パルテノン多摩外観



電光掲示板にもキティちゃん。



ロゼワインで乾杯!

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