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2023年3月17日金曜日
菅井円加さんの凱旋全幕主演 ハンブルク・バレエ団『シルヴィア』3月11日(土)夜
3月11日(土)、ハンブルク・バレエ団『シルヴィア』夜公演を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/hamburg/
※出演者等NBSホームページより
シルヴィア:菅井円加
アミンタ:アレクサンドル・トルーシュ
ディアナ:アンナ・ラウデール
アムール/ティルシス/オリオン:クリストファー・エヴァンズ
エンディミオン:ヤコポ・ベルーシ
第1部 弓の技術
女狩人たち: ヴィクトリア・ボダール、 ヤイツァ・コル、
パトリシア・フリッツァ、エミリー・マゾン、ヘイリー・ペイジ、パク・ユンス、マドレーヌ・スキペン、
イダ・ シュテンペルマン、プリシラ・ツュリコヴァ
森:
オリヴィア・ベタリッジ、ジョルジャ・ジャニ、
グレタ・ヨーゲンズ、シャーロット・ラーゼラー、スー・リン、
エルミーヌ・スゥトラ・フルカド、アナ・トレケブラーダ
ボリヤ・ベルムデス、アレッサンドロ・フローラ、
マリア・フーゲット、マティアス・オベルリン、パブロ・ポロ、
エミリアノ・トーレス、ワン・リーゾン
羊飼いたち:
フランチェスコ・コルテーゼ、ニコラス・グラスマン、
ルイス・ハスラフ、アルテム・プロコプチェク、
トーベン・セギン、エリオット・ウォレル、
イリア・ザクレフスキー
第2部 感覚の世界
シルヴィア、アミンタ、アムール/オリオン、ディアナ
客人:
パトリシア・フリッツァ、スー・リン、パク・ユンス
マティアス・オベルリン、フェリックス・パケ、
フロリアン・ポール、ダヴィッド・ロドリゲス
オリヴィア・ベタリッジ、ヤイツァ・コル、ジョルジャ・ジャニ、 エミリー・マゾン
ボリヤ・ベルムデス、アレッサンドロ・フローラ、
エミリアノ・トーレス、リカルド・ウルビーナ
ヴィクトリア・ボダール、フランチェスカ・ハーヴィー、
グレタ・ヨーゲンズ、ヘイリー・ペイジ、
パトリシア・ツュリコヴァ
ラセ・カバイエロ、ニコラス・グラスマン、ルイス・ハスラフ、
パブロ・ポロ、エリオット・ウォレル
第3部 冬の太陽
アミンタ、森、シルヴィア、ディアナ、アムール、エンディミオン、女狩人たち
男性: エリオット・ウォレル
菅井さんのシルヴィアは登場がとにかく勇猛で高潔。決して大きな身体つきでは無いながら、大勢の女狩人軍団の中にいても抜きん出たオーラや貫禄、
長い弓を手にしていても全身の張りや強さ、体幹も強靭で中でも真横に開いた2番プリエからの力まぬ跳躍や
弓を使うときの勇ましい横顔や黒いタイトなショートパンツから伸びる脚もスパスパと語り、ただただ仰天するしかありませんでした。
アミンタに出会ってからの葛藤や弱い部分を見せることへの惑い、そしてようやく心を開き、内側の鎧もが解されていく過程の表現も細やかに踊りやポーズで明示。
舞踏会?での深紅色のベルベットドレス姿はすっと艶やかさを放ち、同時に水平された状態でのリフトもあったりと
これ見よがしにせず場面変わってもこれまた体幹の強さの天晴れ。最後、ジャケットワンピースのような衣装で
アミンタと踊るパ・ド・ドゥでは、ようやく辿り着いた安堵と寄せては返す穏やかな波のような落ち着き、加えて感傷的な情感が交わされ
アミンタにくっつくときも物憂げな表情を浮かべながらも思い切りぎゅっと身を委ねたり、ヴァイオリンソロの中盤での
演奏と呼応するように心から解き放つ感情の波動を更に伸びやかな身体で見せ、すっかり温和で柔らかな姿へと変貌したシルヴィアの生き様が目に刻まれました。
ノイマイヤー版『シルヴィア』の全幕鑑賞は映像含めても初めてで(パリ・オペラ座上演のDVDも鑑賞無し)
嘗て世界バレエフェスティバルで観たアツォーニとリアブコによる終盤のパ・ド・ドゥへいかにして繋がっていくか興味津々でしたが
全編観てようやくシルヴィアの変化や葛藤の展開を概ね把握です。力漲る印象がまさっていた菅井さんの、踊りで心情や物語を事細かに紡いでいく力量にもたまげ
バレエ団としての母国主演凱旋公演に居合わせた喜びが今も溢れてきます。
トルーシュのアミンタは木陰からじっとシルヴィアを覗き見し様子を窺っている姿はだいぶ怪しいものでしたが
(アミンタはミタの文字しか浮かばずであった私をお許し願う)
しかしただ木陰に隠れているだけでは張り込み捜査或いは不審者ストーカー止まり。
強力な戦士軍団の中に分け入る勇気やシルヴィアとの出会いの場におけるシルヴィアを宙ぶらりんとした状態からの突如水平体勢へ持っていく
スムーズなパートナーリングといい、シルヴィアに首ったけで一見飄々とした風貌からは想像がつきにくい恐るべきサポート技術が高いと今更ながら発見。
(新国立劇場でのニューイヤー・バレエでドン・ジュアンを4回観たはずなのだが)
暴れ馬のようなシルヴィアを無理強いせず徐々に穏やかに落ち着かせていく心の通わせの過程の積み重ねも丁寧に描画していた印象です。
いかんせん2008年に英国ロイヤル来日公演で鑑賞したアシュトン版の記憶は程遠く、
新国立劇場ではビントレー版を5回は観ているがかれこれ11年前で記憶が彼方へと行っており
あらすじもこれといって面白みが色濃くはない作品にて、心情をも細かく描き出していくこのペアで全幕を鑑賞できたのは幸運であったと思っております。
そしてディアナのラウデールも私としては歓喜した配役で、5年前に椿姫全幕で鑑賞したダンサーであり、もう少し強めな役でも観てみたいと望んでいたのです。
マルグリットのときには長い丈の衣装中心であったため気づきませんでしたが脚がすらっと長く真っ直ぐに伸び
髪を靡かせ高身長ながら身体を持て余さず機敏に空間を支配していく姿が颯爽とし、女神っぷりに痺れました。
エンディミオンとの関係は私の知識教養不足もあって今一つ理解に至らずではあったものの、物語を終始見守り司る役目を果たしていて
シルヴィアがアミンタに心を持っていかれ色めきに目覚めていく様子を複雑に見つめる姿や
前方に向かって1人歩く幕切れはシルヴィアの生き様をディアナも背負っていく覚悟を感じさせる締め括りでした。
(エンディミオンと聞くと、セーラームーンの世界観ばかりが思い浮かぶ我が脳みそでございます)
簡素で無地ながら木や扉の装置もスタイリッシュで、内面もをぽっかりと浮きたせる照明の差し込み方も良きセンス。
日本語で記された森を守ろうの立て看板を持っての唐突の登場には目を疑ったが、都内では神宮外苑再開発の件の報道も見聞きしている今、
また神宮球場神宮第2球場ともに縁がある自身としても、それから公演後日これを書いていた頃に
著名な音楽家が都知事に対してしたためた手紙も公開され、思わず考えがぐるりと脳内を巡った次第です。
序盤の狩人達の登場では1階席と2階席にダンサーが駆け込んできては弓を構え、予習無しで来た私なんぞ紅白歌合戦のような演出に仰天でございました笑。
基本ロシア音楽贔屓な私もシルヴィアの中の曲はいくつも好きな曲があり、舞踏会の中で流れるアクセントの強いワルツや
ラッパのマークの正露丸を彷彿させる高らかなファンファーレで始まる曲に、
今回初めて知った、最後のパドドゥ前にアミンタが1人思い耽る場面にてアルトサックスであろう
楽器のソロで奏でられる曲も染み入り、久しく観ていない他版も劇場で観たくなりました。(当分無いとは思うが)
まずは延期を経て、所属の団の全幕しかもぴたりと嵌る役にて菅井さんが主演なさる凱旋舞台
そしてノイマイヤーさんのお姿もカーテンコールにて目にでき、栄養剤が注入された思いでおります。
帰り、上野駅のつばめグリルにて、まずはピルスナーで乾杯。この日のこの時間帯はスポーツ中継でチェコに大注目が集まっていたようですが
子供の頃からモルダウの曲聴きながら聖ヴィート教会が聳えるプラハの写真書籍を眺めていた者からすると、嬉しうございます。
但し当時はチェコスロバキアでしたが。
チェコ料理店の店員さんが席に腰掛けるぬいぐるみについて、チェコのドラえもん、と説明なさっていたモグラのクルテクも好きでございます。
来月は東京バレエ団のスプリング・アンド・フォールにてドヴォルザークの音楽に触れるのも楽しみです。
ジャーマンハンブルグステーキ。良い舞台観たあとは、ビールが進みます。翌日は5ヶ月ぶりの有酸素運動であったのだが、まあ良いか。
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