2023年3月10日金曜日

高質なミックスプログラム 東京シティ・バレエ団トリプル・ビル2023 3月4日(土)





3月4日(土)、東京シティ・バレエ団トリプル・ビル2023を観て参りました。
https://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000863.html

※上記リンク先の公演特設ページにて、上演3作品の特徴を紐解くお話が大変詳しく紹介されています。
シティでは初上演のバランシンであっても安達悦子監督にとってはモナコ留学中や松山バレエ団所属時代から縁ある振付家であったエピソードや
ブベニチェクさんと岡博美さん吉留諒さんが語る振り写しの様子等、作品の魅力が益々伝わるお話満載です。ブベニチェクさんの人間としての大きさも素敵。



Allegro Brillante  アレグロ・ブリランテ
振付:ジョージ・バランシン
音楽:チャイコフスキー  ピアノ協奏曲第3番  変ホ長調 Op.75 第1楽章 Allegro Brillante

主役の男女を軸に8名の男女のアンサンブルで構成された、スピーディー且つ清涼感溢れる作品。
女性ダンサーが身につけたシフォンのスカート衣装のふわりとした広がりや揺れ動きまでもが計算し尽くされたかのように音楽と溶け合い
あと2、3回続けて観てみたいと思わせるほど瞬く間に終演してしまった印象です。
清水愛恵さんが身体を自由自在に操りながら涼やかに駆け抜け、浅田良和さんの素早い身体の捌きも見事。
アンサンブルがまた高水準で、走っては揃えてポーズの繰り返しであってもせかせか慌ただしい感はないどころか整った連なりで余裕すら感じる仕上がりでした。
本当にバレエ団としてバランシン作品初演かと良い意味で疑わせ、またウヴェ・ショルツ作品の再演を重ね
安達監督が目指す音楽的なバレエ団の方向性が更に強まった舞台であったと思います。
早くも7月の創立55周年記念公演トリプル・ビルでの再演が決定しており、どうぞ足をお運びください。

ところでこの作品自体を知ったきっかけは6年前、NYCBでもなく他の米国内バレエ団でもなく、南仏のバレエ団。
作品に興味を持ったものの動画も視聴せず使用曲も聴かず、書籍等でも舞台写真を目にすることもなく
延期を経てのシティでの上演が決まり、チラシ等に掲載されたフィラデルフィアバレエの舞台写真を見るまでは
アレグロ・ブリランテの写真と言えば以下のリンク先の1枚でございました。何て清爽な趣に満ちた作品であろうと眺めたものです。
(主役男性、安達悦子監督と同じバレエ学校で学んだダンサーでございます)
http://www.forum-dansomanie.net/pagesdanso/critiques/cr0193_temps_du_desir_toulouse_30_03_2012.html


ArtifactⅡ   アーティファクトⅡ
振付:ウィリアム・フォーサイス
音楽:バッハ  無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調  BWV.1004 5.シャコンヌ

無予習予備知識無しで行ったため開演してびっくり、音楽は様々な作品で用いられ振付家の心をとらえて止まないのであろうバッハのシャコンヌ。
そしてオランダでのキャリアを経て入団まもない大久保沙耶さんのボリュームある動きで空間裂く支配力、
音楽が辿る線に沿うように身体を傾け引き伸ばしては引き戻し描き出すラインの美しいこと。
衣装も実に簡素な、レオタードとタイツのみであっても陰のある照明からぽっかりと浮き立つ神秘的な存在感といい今後の舞台が益々楽しみになりました。
ウヴェ・ショルツ作品を踊る姿も観たいダンサーです。
もう1つ驚かされたのは大人数構成であった点で、主要の4人を囲むようにして、敷き詰め壁のようになって作り上げる群舞の
静かながらぴりっと鋭さが宿るポーズ1つ1つが緊迫感を底上げ。場面転換ごとに幕が下り
その度にLIXILの文字が気になったものの笑(例えば全国公演の場合、会場によっては
市町村名や地元の自然風景を描いた幕模様を眺めつつフォーサイスの世界観を鑑賞するのでしょう)シティ全体の技量の高さが窺えた新レパートリーです。


L'heure bleue  ルール・ブルー
振付:イリ・ブベニチェク

2020年にステイホーム向け配信サービスで一部を視聴し、洒落たセンスに釘付けとなって全編を客席から観てみたいと願っていた作品。
何処かで聴いたバロック音楽中心に宮廷ダンスとコンテンポラリー、王宮と美術館を融合したような振付、空間で貴族の遊宴思わす展開から目が離せずでした。

使用曲はこちら。
https://tokyocityballet.com/triplebill2023/l_heurebreue

初演キャストであり、主軸を踊られた岡博美さんのユーモアで上品な魅力が零れる、宮廷の面々を率いる踊り方に惹かれ
しぼめたクリーム色のチュチュ姿も変わらぬ愛らしさ。丈の長い上着を羽織った男装の麗人風な2人組の颯爽と戯れる場面や
額縁を用いたユニークなダンスも面白く、動く典雅な美術館の中に迷い込んだ心持ちとなりました。
恐らくは宮廷に仕える人々の設定であろう、黒い七分袖のワンピース姿の女性の1人を踊られた平田沙織さんの腕の滑らかな使い方も目を惹き、
終盤ボッケリーニのメヌエットで踊られる、一斉静止画の如き全員の並びも優美な余韻に浸る幕切れです。

2時間に纏められた会心の3本作品、バランシンにフォーサイスにブベニチェクと
似たり寄ったり度は皆無されどどれも上質な作品を一挙上演し、配役も精鋭揃い。掛け持ちのダンサーもいらして、
例えば同日にバランシンとフォーサイス踊られた方なんていったいどれだけ踊れる身体の持ち主であろうかと仰天。非常に満足度高い公演でした。
シティの中でも我が3女神と勝手に呼ばせていただいている清水さん、大久保さん、平田さんが
3作品それぞれに出演されていた点もまた、喜びを押し上げる理由の1つでもございました。




作品自体は6年前に知ったものの動画も見ておらず、やっとこさ全編通して鑑賞が叶ったアレグロ・ブリランテの題名のように、
きらきらと光彩を放つスパークリングワインで乾杯。とにかく3本全て高水準であった。
夏のトリプル・ビルも今から楽しみでございます。その前に、5月の落語とバレエで描くくるみ割り侍も楽しみです。

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