2023年3月29日水曜日

興奮作用注入の年度末  新国立劇場バレエ団 DANCE to the Future 2023  3月25日(土)〜26日(日)




※2023年3月29日をもって、当ブログは開設からちょうど10年を迎えました。
テレビ番組で例えるならば視聴率下降が止まらず打ち切りになってもおかしくないブログに日頃よりお越しいただき、誠にありがとうございます。
10年を振り返る華々しい計画もいたしましたが先月の二・二三事件の影響もまだございまして、来月どこかの機会に小規模にでも行いたいとは思っております。
20周年はもう気持ち大規模にできるか、それ以前に管理人の生存状況も分からずですのでそのときに考えます。
開設後の初回記事は新国立劇場バレエ団DANCE to the Future 2013で公演名で一目瞭然。奇しくも開設10年の今回と同じバレエ団、企画シリーズ公演です。
更には、(ここから大事です)最大のお目当ての出演者は10年前と今回とは異なれど、衣装の系統が全く同じではありませんか!!!
10年前につきましては、こちらの公演記録をご覧ください。
単なる偶然でしょうかこの節目なタイミングでの共通項。まあそれは良いとして、写真付の短文投稿全盛期において私自身と同様に余計な脂肪分多めの
時代錯誤なブログではございますが、今後とも皆様どうぞ宜しくお願い申し上げます。




新国立劇場バレエ団DANCE to the Future 2023を3回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/dtf/


※珍しく作品紹介映像も制作されました。




※千秋楽、福田紘也さんの退団公演。晴れやかに別れを告げる紘也さん、彼を立てる団員達に観客の喝采。とてもほっこりするカーテンコールでした。



福田圭吾さん振付Resonance





新国立劇場バレエ団 Choreographic Group 作品より

『Ray of light』
【振付】池田理沙子
【音楽】イルマ
【演奏(pf)】蛭崎あゆみ
【出演】五月女遥 池田理沙子


白い衣装の五月女さんと黒い衣装の池田さんが対比を浮かび上がらせながら描いていた作品。最初観たときは失礼ながらあまりピンと来ずでしたが
2回目に2階席から観たときに万華鏡のような優しい赤色を帯びた円形の照明の動きと同化した光景が視界に入り、
光との連動やピアノの音色との溶け合いがしっとりとした感触を覚える印象を残しました。



『echo』
【振付】福田紘也
【音楽】トム・ティクヴァ
【出演】小野寺雄 川口 藍 上中佑樹 横山柊子 渡邊拓朗 福田紘也

全員白い衣装で統一され、ゆったりしたシャツとパンツで涼やかでピュアな色彩が広がり
デュエットもあれば全員で一斉に円を描きながら放射状に散ったりと滑らかに紡がれて膨らんでいく展開から目が離せず。
横山さんと拓朗さんはダイナミックな趣きで魅せ、小野寺さんと上中さんだったか、
背中に乗せてくるっと回してからの流れもスムーズでボテッとならず、今更ながらお2人の体幹の強さもびっくりです。
川口さんのSFに登場する地球防衛団の女性隊員の如く近寄り難い美しさから繰り出す
四肢のしなやかな動きも益々魅せられ、年齢を重ねる毎に味わいが一層増していると感じます。
対角線に突き進んでくる紘也さんのソロを眺めているとまだまだ踊れる気がして退団は寂しく感じますが
新国立劇場の舞台に本番中のコーラ飲み干しや落語を取り入れたバレエを誕生させ、DTFの振付家の顔としての貢献度は非常に大きいと再確認。
また新作旧作問わず作品を上演して欲しいですし、バレエ団とのご縁は繋がったままでありますように。



『L'isle Joyeuse 喜びの島』
【振付】柴山紗帆
【音楽】クロード・ドビュッシー
【出演】赤井綾乃 徳永比奈子

赤井さんの無邪気に弾ける身体と徳永さんの冷静ぶりが嵌まり、仲良く戯れたりときには仲違いしたり、
起伏に富んだ行動と心理の描写も、ピアノの鍵盤上でビー玉の転がり落ちを彷彿させる急速な曲調とぴったり。
舞台を目一杯使い、カウントが実に取りづらそうな曲であっても次々と噴水のようにステップが刻まれていく光景に、
まずは振付者の柴山さんのセンスに天晴れでした。赤井さんは以前からコンテンポラリーでもスルリと自在に操る身体能力を披露されていましたが
徳永さんの何の前触れもなく突如ひっくり返ってはすぐさま起き上がって表情はクールなお姉様な様子のまま踊り続ける技術にも驚かされ
続編も観てみたくなった作品です。



『After the show』
【振付】福田圭吾
【音楽】ルイ・アームストロング 他
【出演】石山 蓮 福田圭吾

石山さんと圭吾さんは昨年板橋区でのDAIFUKUにおいてもデュエットを組まれましたが、瑞々しい石山さんと渋味が一層出てきた圭吾さんが更に好相性な揺らめきを披露。
黒いジャケットに黒パンツでシンプルな姿であってもクールビズ推進運動ポスター状態にはならず笑
2人揃って音楽の中を気持ち良さそうに遊泳しているかのように見せる舞踊センスがあるからこそでしょう。
途中からは平本正宏さんによるオリジナルの音楽が流れ、ゆったり快楽に身を任せるようなアームストロングの曲から一変。
不穏やひずみが生じ始め、世の中うまく行くこと思い通りになることの方が困難であるとのメッセージとも受け取れました。




『Resonance』
【振付】福田圭吾
【音楽】ミカエル・カールソン
【出演】渡邊峻郁 池田理沙子 柴山紗帆 五月女遥 宇賀大将 中島瑞生 奥田花純(25、26日) 上中佑樹


2019年と2016年であったか、圭吾さん振付の「beyond the limits of ...」と同様に音楽が脳内を延々再生。家でも度々聴いております。
良い意味で中毒症状になるほど耳に残る選曲で、ピアノの音色が網の目の如く絡み競い合っては突っ走る感のある曲調。ピアノを5台使って演奏される曲のようです。
衣装は女性が黒と一部にベージュが入ったボディに黒一色のチュチュ風スカート(ワイヤーが入っている平たい布?)、男性は黒く長いパンツに上半身は裸体(わお)。
暗がりに赤色の太陽を思わす照明が映されて1組ずつペアによる見せ場から始まり、
クラシックをベースに捻りも効かせた箇所や素早いリフトにすり抜けるようなパートナーリングも多数で
最初は池田さん宇賀さんが佇むシルエットで始まり、スパスパと駆け抜けていく2人が爽快。
その後は順番の記憶があやふやだが、奥田さん渡邊さんがダーク&アダルトな翳を纏い、そのペアから引き継いで五月女さんがパドブレで出てくると中島さんと組み、
柴山さんと上中さんが珍しい顔合わせながら抜群な呼吸の合い方で急速にポーズを切り替えながら踊り繋いでいく姿も目に残り
柴山さんのポーズやラインが崩れぬ安定性にしっかりと備わった基礎が再度見て取れました。
終盤は向かって左側に女性4人、右側に男性4人で(逆かも)一斉に機敏に踊り出し、畳み掛けの連鎖は鳥肌もの。
やがて音圧が弱まり、1ペアが残って小刻みな足運びで幕、であったかと記憶。

今回何が嬉しいかって、短き我が首を(私に会われたことがある方は頷くと思いますが本当に短い汗)麒麟並みに長くして待っていた渡邊さんの舞台姿をようやく拝見!
仰け反るほどに攻めセクシー且つ複雑な振りも吸い寄せられるように滑らかでシャープ、ただお1人にだけ当てられたソロでのご登場で
上手側から身体ごと斬り込むように出現。そして急遽の代役奥田さんとの翳りを帯びた色気の火花を交わすパ・ド・ドゥも刺激が充満し、
所謂ドラマティック・バレエでは全然ないはずがクラシックを捻り上げた緻密に盛り込まれた振付を盤石に踊りこなしつつ
危うさが香り立つ駆け引きが2人で出来てしまうとは、感激を超越し恐れ入るしかありませんでした。
復帰記念に久々に行います髪型観察。気合いの表れか耳の上部分がくっきり刈り上げで目元がよく見えるような前髪のまとめ方でただでさえ鋭い眼力が一層力強し。
更には背中や肩から腕にかけて身体つきが随分と逞しくなられ、バルコニー席から観ると
山脈と海辺の距離が近い、高低差が目に見える精巧な地形図を眺める気分でございました。

奥田さんと渡邊さんといえば、バレエ団公演ではそこまでペアを組まれたことがなく、
すぐさま浮かぶのは2021年6月に開催された井脇幸江さんリサイタルでの『サタネラ』グラン・パ・ド・ドゥ。
妖艶なお姉様と、健気に追いかける初心な青年といった趣きでこれはこれで何度緩んだか分からぬ微笑ましいパ・ド・ドゥだったわけですが
あれから約2年。急遽の組み合わせではあっても先述の通り余裕綽々と踊りこなす上にダークでアダルトな世界観を描出し、思いがけず鑑賞が叶い喜びに浸りました。
尚、当初の予定は廣田奈々さんで初日は踊られたようで、渡邊さんとの珍しい組み合わせだっただけに興味は尽きず。(写真レポートには掲載されています)
それにしても、2月の件から約1ヶ月。目も身体も、全身ギラついて燃え盛っていたとしか思えぬ渡邊さんの自信漲る、
しかも美しく逞しい方向へ肉体改造もなされたお姿も目にでき、即効性興奮作用が今も駆け巡ります。



3 in Passacaglia(招待作品)

【振付】遠藤康行
【音楽】ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
【出演】
米沢 唯 仲村 啓 渡邊拓朗(25日18:00)
小野絢子 石山 蓮 山田悠貴(25日13:00,26日)

過去に小池ミモザさん、柳本雅寛さん、遠藤さんご自本人が出演され踊られた作品とのことですが私は初見です。
プログラムの音楽欄には坂本龍一さんのお名前もあり、どの部分を手掛けられたかは私の耳では理解に至らず失礼。
前半に我が大の苦手な無音部分が多めであるのは想定範囲で、お腹が鳴らぬ対策していったのは大正解でしたが
ただ無音であっても米沢さん、小野さんが日替わりで女王として君臨しポーズを決めるまでの床を摩る音もが尊く感じたのは
お2人のスター性及び違った味の仕上がりであったからこそ。米沢さんは弾けるように伸びやか、小野さんは秘めた中で凛と立ち上がるような強さを思わせました。
米沢さん組の仲村さん、拓朗さんはやや身体を持て余してしまったか圧倒的女王についていくのに必死な様子が目立っていた気がいたしましたが、
踊り込めば精度がぐっと増しそうな予感。小野さん組は石山さん、山田さんともに絶対的女王に食らいつくどころか同志として密に調和する2人で
運命共同体なトライアングルを描画。石山さんは身体の動かし方が深々と自由自在、山田さんは吸い込むようにパワフルで
小野さんのスターぶりにも臆せぬ大胆さも持ち合わせた2人です。『夏の夜の夢』ではダブルキャストでパックを務める山山コンビ、楽しみでございます。
衣装がなかなか不思議なもので、女性はターコイズブルーのノースリーブ肩出しゆったりめのカットソーに紺色のベロア生地らしきショートパンツ。
男性は下手したら部屋着にも見えかねない、グレーの長袖長ズボン。着用者、限られてきそうなデザインです。

今回苦手な曲の使用予定等もあり、即日完売でもありましたので全日程鑑賞見合わせ或いは鑑賞するにしても1回行ければ良いかと考えておりました。
しかし初日観ずに帰宅していると買い足し推奨の連絡が続々。本当にその通りで、結局3回鑑賞。
圭吾さん、シャープで大人なシックな作品振付をありがとうございました。何より、今回は渡邊さんが予定通りにご出演。興奮作用が止まらぬ年度末になりました。
来期のDTFは新国立劇場バレエ団 Choreographic Group 作品の披露は無いようで残念。久々のナチョ・ドゥアト振付作品『ドゥエンデ』上演は喜ばしいが。
代わりに若手パ・ド・ドゥ集を上演するそうで、主役キャストの固定化が不安視される昨今、
また年明けせっかく競合他社とも手を取り合う行動への歩み出しがありましたから
こうなったら世界バレエフェスティバル並の長さでも、王道パ・ド・ドゥ何でも取り入れてプーニ、ドリゴ、ミンクス三昧でも歓迎でございます。
オープニングはマイヤベーアの戴冠式行進曲で出演者紹介もどうぞ。(それはいかんか)




※既にお読みになった方が大多数かと存じますが、小説家の恩田陸さんと渡邊さんの対談が実現。前編後編の2部構成で大変読み応えがあります。
中でもコンテンポラリーの踊り方の深淵まで迫ったお話が面白く、恩田さんの鑑賞眼の鋭さや渡邊さんの知性も掛け合いの膨らみから
益々一気に読み進めてしまう箇所でした。それから振付家のエピソードにて、トゥールーズ時代の『美女と野獣』についてを挙げていらっしゃいます。
これまで入団してすぐの頃の新国立劇場会報誌アトレやウェブメディアのスパイスイープラス、
ダンサーズウェブマガジン等いくつかの媒体でも語ってくださっているお話ですが
厳しく大変であったリハーサルについて毎回異なる表現で語られ、プレッシャーがあった、精神的に鍛えられた、根性が付いた、
確かダンサーズウェブマガジンであったかと思いますがどうしたら良いか戸惑い叫ぶように口語的な描写を載せた記事もあり。
そして今回は振付者であり監督であったベラルビさんをドSと表現!落ち込み続けた日々の様子も詳しく綴られています。
同じリハーサルについて語るにしても表現する言葉が多彩で、それが舞踊の幅にも表れていると想像いたします。

ベラルビさんといえば、2019年秋頃にNHKフランス語会話にて登場され、キャピトル・バレエ団を訪れていた
東京バレエ団の柄本弾さんを出迎え指導する姿が放送されましたが、過去の渡邊さんのインタビューを読んだ上で視聴すると
お茶の間用とは言えベラルビさんが別人のように優しく愛想が良く笑、若手であった渡邊さんの素質に惚れ込んでの厳しい指導であったのでしょうが
ご本人からすればさぞ辛い毎日であったであろうと察するばかりです涙。よくぞ耐えて乗り越え、頭が上がりません。
舞台映像はDVD化もされていて、歪んだ心がじわりじわりと滲み出て不気味な雰囲気を醸しながらも不思議と惹きつけられてしまう野獣でございます。
衣裳は前半はスーツのようなスタイリッシュな格好ですが後半は殆んど上半身裸で、大掛かりなバレエをここまで簡素な姿で主役が踊り続ける作品は
恐らくは他にそうないと思いますが、叫び声が聞こえそうなダイナミックな表現と研ぎ澄まされた集中力を持続させながら
自在に動く身体に圧倒され、身震いいたしました。恐らくは現在も購入可能かと思いますのでご興味持たれましたら是非ご覧ください。
『海賊』『死せる女王』とのベラルビ振付3本セットもまだ販売中かもしれません。
ダンソマニDVD紹介には写真も多数掲載されています。衝撃度、強しです。








休憩が2回



渡邊さんの舞台復活に乾杯!プログラム変更に伴いチケットを手放した方から買い取った土曜日昼のみの鑑賞予定が、結局夜そして翌日も鑑賞。
赤のスパークリングワインはメニューによればジラモンドという名称と思われ、
解説によればヴェネト州やその周辺でしか栽培されていない品種マルツェミーノで作られた唯一無二のワインとのこと。
唯一無二と言えば、渡邊さんが愛する拓朗さんと中島瑞生さんに振り付けながらも
観客前での披露が中止になってしまった作品のテーマのはず。お蔵入りは厳禁です涙。御披露目の機会が訪れますように!!



2月は4回訪れたもののひたすら慰めてもらってばかりであったこのお店、
今回は外は暗雲であっても心には陽光が差し込む中での1杯。
年度末この公演で締め括れて幸せこの上なく、黒ビールが一段と美味しい千秋楽でした。

2023年3月24日金曜日

阿波の星、所沢へ! NBAバレエ団スタジオカンパニーアトリエ公演『ドン・キホーテ』3月21日(火祝)





3月21日(火祝)、NBAバレエ団スタジオカンパニーアトリエ公演『ドン・キホーテ』を観て参りました。
NBAのアトリエ公演は2017年に練馬区で開催された『ドン・キホーテ』以来約5年半ぶりの鑑賞です。
https://nbaballet.org/atelier/atelier-donquixote/


キトリ(1・2幕):寺尾はづき
キトリ(3幕):荘野千尋
バジル:北爪弘史
ドン・キホーテ:安中勝勇
サンチョ・パンサ:石井滉太
ロレンツォ:佐藤史哉
ガマーシュ:髙橋真之
エスパーダ:刑部星矢
メルセデス:三橋紗也子
キトリの友人:佐藤真瑚/松田みなみ
ドルシネア:本谷光里
夢の女王:松下清香
キューピッド:新井ひな子
ファンダンゴソリスト:久保田麻友  刑部星矢


正団員を目指すスタジオカンパニーであるとはいえレベルは高く、危なっかしさや萎縮ぶりは皆無で主役からコール・ドまで舞台度胸が据わっている姿勢にまず感心。
加えて真っ直ぐで若さいっぱい、トラブルをも勢い良く楽しく収拾して面白い方向へと持っていく切り替え力にも拍手。清々しい余韻を残す舞台でした。

中でも注目し、期待以上に魅せてくださったのが3幕キトリの荘野さん。 「3幕」の文字からすると一見結婚式のグラン・パ・ド・ドゥのみかと思いきや
NBA版は1、2幕が街の広場とジプシー野営地で3幕が酒場と結婚式構成であるため、
思わず手拍子したくなる賑やかな、溜めに溜めてお待ったさんでしたと言わんばかりの曲にのせていきなり酒場への初登場になるわけです。
このとき既にキトリは街の広場において浮気性なバジルに辟易しつつも熱々な関係を示し、そして駆け落ちしてのジプシー野営地で過ごした夜を経ていますから
一歩大人な女性に近づいた感が備わった状態での登場が求められることでしょう。
バジルは変わらず北爪さんですから、1幕・2幕で初々しく可愛らしい、(拗ねても可愛らしい笑)そしてテクニックも鮮やかであった
寺尾さんキトリを引き継いでいく役目も求められ、非常に難易度の高い、緊張強いられる途中出場なキトリであったと思います。
ところがそんな心配をよそに、荘野さんは堂々スケールのある登場で姿を見せてこのときが初登場とは信じ難く、1、2秒で酒場の座長な風格もあり。
恐らくはABTのデザインを参考にしたであろう白提灯袖に濃いブルー系の衣装もよく似合い
投げたカップがやや元気良く放物線を描いて飛んでしまったか酒場の客人が取りこぼしてしまうも
この日の昼前を思い起こさせる初球サヨナラヒットのキトリ、愛嬌はホームラン級です笑。

芝居においても細かな工夫もたっぷりで、来店したロレンツォ達に見つからぬよう仲間達の壁に隠れているとき、
ちょうど下手側の端よりであったため隠れている様子はごく一部の客にしか見えない位置であっても
視線を交わしてはロレンツォ達の姿を眺めたりと恐れを知らずにスリルを堪能する熱々カップルぶりが私の席位置からしっかり覗けて観察楽し。
舞台に近い下手側端よりの席に腰掛けた自分を褒めてあげたいと思います。
狂言自殺はバジルのマントがちょいと短いのは気になったものの(夜行バス等で貸し出されるブランケットかと思ったが汗)
バジルが倒れ込んでからキトリが状況を察知して機転を効かせていく演出で
バジルの生存を把握し意図を汲んで大泣きヒロインから一変し、ドン・キホーテも巻き込み仕切り役を担うキトリの頼もしいこと。
白系に少し赤が入った衣装で臨むグラン・パ・ド・ドゥも一歩一歩が大きくダイナミックである上に
音楽に気持ち良さそうに乗っていて、今も幸せな結婚式に臨席した心持ちでおります。

実は荘野さんのことはかれこれ15年前からご出身の清水洋子バレエスクールさんでの舞台を徳島県で観ており、
中学生高校生くらいの年頃となると山本隆之さんや福岡雄大さんら新国立劇場からのゲストダンサーとグラン・パ・ド・ドゥを踊られるようになって
認識していったかと思います。つまり私の中では阿波の星!ですから昨冬の『眠れる森の美女』にてコール・ドの配役欄にお名前を見つけたときには驚き喜び
山本さんのご出演舞台鑑賞全国行脚がきっかけで知った方がこうしてプロへの道を歩み始めたこと、誠に幸せで勝手に東京の親戚気分となってしまったほどです。
ちなみに同様のきっかけで知り、のちにNBAの舞台で目にするようになったのは大阪出身の岩田さん、高知出身の髙橋さんに続いて3人目。
浪速、土佐、阿波、と喜ばしうございます。

そして脇を固める団員男性陣も充実し、全員がパッション放って研究生達を支えて大活躍。
ガマーシュ髙橋さんのミリ単位な芝居は場を笑わせるだけでなく締める効果も抜群で、恋にやぶれるとすっかりキトリとバジルの味方となって
結婚式のグラン・パ・ド・ドゥ最中もテーブル席からハンカチ持って大応援。
ロレンツォ佐藤さんの心配性な父親ぶりも笑い誘い、結婚式臨席中は笑顔で落ち着いて見守るお父さんが多い中、
特にフェッテのときはずっと胸に手を当て心臓が口から出そうなほどのハラハラぶり笑。
しかし思えば、愛娘が式の最中に超絶技巧な大パフォーマンスを披露するわけですからお父さんは喜びよりも不安のほうがまさってしまうのが自然と思え
フェッテを見届けるとガマーシュと抱き合いそうな勢いで喜び合う、根は本当に優しいお父さんです。

本公演のドンキとは衣装は概ね同じで背景が海ではなく黒い線で描かれた家並みであったのは2017年のアトリエ公演と同様で
闘牛士が2人しかいない分、女子が所々に加わってはメルセデスの教習所風ジグザグ踊りの準備を行ったりと補強もスムーズ。
メルセデスの三橋さんが肩の使い方にも色気があり大人な芳醇さも十二分で、
夢の場のドルシネア本谷さんの軽やかな愛くるしさや夢の女王松下さんの長い手脚が描き出す美しい伸びやかなフォルム、
小柄で達者で、女王とであったか、プロムナードもお手の物な新井さんも印象に刻まれております。

ガマーシュがキトリと挨拶する絡みでの帽子落下や、メルセデス教習所風ジグザグ踊りの準備にて並べたカップが倒れるなど小道具トラブルも何度かあれど
フレッシュ且つ自然に紛れさせて乗り切る対処力に脱帽。舞台の中央のみならず隅々からも全員でドン・キホーテの物語を楽しみ伝える力が発揮されていた印象です。
所沢よりも以前に観たスタジオカンパニー公演会場の練馬のほうが我が家からの交通の便は良いもののホールが狭く、
当時1幕キトリを務め現在はソリストの岩田雅女さんが持ち前の高い身体能力が有り余ったか笑、会場を飛び出して駅前の西友まで跳んでいきそうなパワーでしたから
所沢のホールのほうが全幕バレエには向いており、研究生達のはち切れんばかりの魅力を満喫できました。



※3月に開催されたバレエ団公演バレエリュス・ガラにおける『ダッタン人の踊り』をダンサー達が振り返る映像。
男性が頭飾りでピン2箱使用やしんどいときの笑顔事件など、お腹が捩れる裏話が次々飛び出してきます。是非ご覧ください。






帰りは乗り換え駅の新宿近く、徳島ラーメンはるまへ。西武新宿駅を出て、西口大ガードを西方向へ直進です。
会場にて荘野さんの出身のスタジオである阿波の応援団こと徳島の清水洋子バレエスクールさんの懐かしい方々のお顔も目にでき、嬉しい再会でした。



徳島ラーメンは一度お土産にいただき、なかなかこってり濃厚なお味な印象でしたが
はるまさんのスープは不思議とれんげを持つ回数が多くなり、難なく飲み干してしまいました。
こってりではなくコクがある美味しさでございます。バレエ鑑賞を通して、ラーメンを食する機会も増えております。



徳島といえば、すだちくん。荘野さんが徳島にて眠り3幕のオーロラ姫を踊られた(デジレ王子は山本隆之さん!)2016年10月、
会場の鳴門市文化会館へ移動する前に、徳島駅クレメント前にてゆるキャライベントの光景が横断歩道越しにびざんの湯の出入口から見え、すぐさま飛んでいきました。
鳴門市文化会館は東京都港区に位置するオープンクラススタジオのアーキタンツ代表でいらした
福田友一さんのご実家の味噌蔵にもまずまず近距離と思われます。
(ローカルな話ですが、皆様ついて来てくださいませ。各々の詳細な立地はご自身でお調べください)
これまで各地で様々なご当地キャラクターに会っておりますが、一緒に撮影した唯一のキャラクターがすだちくんでした。お洋服に巨大なSの字でわかりやすい。
隣にいる私をばっさり切り取り、縦長な写真で失礼。満面の笑みのすだちくん、今は阿波の地から荘野さんの活躍を喜んでいてくれていることでしょう。

2023年3月20日月曜日

プティさんに聞きたい  新国立劇場バレエ団ローラン・プティ版『コッペリア』  2月23日(木祝)〜26日(日)




今更ですが、一応全日鑑賞いたしましたので忘備録。2月23日(木祝)から26日(日)まで新国立劇場バレエ団ローラン・プティ版『コッペリア』を計6回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/coppelia/


※全6公演客席にはおりましたが雨の中をワイパーが破損した車が走行する状態で度々視界が滲んでは曇りがけ、舞台が見えていたのは実質半分程度の時間です。
アテにならない非常に簡素淡々とした感想であり、また渡邊峻郁さんファンの方はプティ版コッペリアの文字を見るだけでも
今も寒気がすることと存じます。もうコッペリアは忘れたい方も少なからずいらっしゃると察します。無理に読もうとはなさらないでください。



2023年2月23日(木・祝)
スワニルダ:小野絢子
フランツ:福岡雄大
コッペリウス:山本隆之

2023年2月24日(金)
スワニルダ:米沢 唯
フランツ:井澤 駿
コッペリウス:山本隆之

2023年2月25日(土) 13:00
スワニルダ:柴山紗帆
フランツ:福岡雄大
コッペリウス:中島駿野

2023年2月25日(土) 18:00
スワニルダ:小野絢子
フランツ:福岡雄大
コッペリウス:山本隆之

2023年2月26日(日) 13:00
スワニルダ:池田理沙子
フランツ:奥村康祐
コッペリウス:中島駿野

2023年2月26日(日) 18:00
スワニルダ:米沢 唯
フランツ:速水渉悟
コッペリウス:山本隆之



小野さんのスワニルダは壁にもたれての登場から魔性も宿る魅力で香りを放ち、脚の色気にゾクゾクさせるステップでも魅了。
福岡さんとは2017年にこの作品でも共演経験はあり、急な変更ではあっても盤石なパートナーシップは健在でした。
福岡さんは結果として小野さんスワニルダ2回、初役且つ代役の柴山さんスワニルダとの計3回フランツ役で出演となり、25日は昼夜連投。
ベテランプリンシパルにバレエ団は頼り過ぎている(それどころか甘え過ぎている?)気すら感じてなりませんが
緊急事態においても見事に務め上げ、テクニックは若返りの兆しすらまたもや見え、2幕のシャンパンの垂直鯨吹きは後世に伝わる名芸でしょう。
柴山さんとはほっこりされどちょこっと恋模様に波のある危うさを体現され、
小野さんとは1出せば5返ってくる、みるみると膨らむやりとりで楽しませてくださいました。
柴山さんは木村優里さんの代役でスワニルダ役初挑戦。色っぽさや魔力は物足りませんでしたが、
コッペリウスの家では清楚なイメージからは想像つかぬ暴れん坊ぶりで驚かせ、持ち前の基礎しっかり備わった美しい踊りでボレロやジグも披露。
ただ見るからに艶かしい姿を求めるのは理想が高過ぎるとは思うものの、ぴたりと合う役ではなかった気がしてならず。
柴山さんのシンデレラやライモンダ、ミリオンやインCは好きなのですが。

米沢さんは2人のフランツと組んでの出演。井澤さんには恋する少女っぷりが可愛らしく、速水さんには勝気でガシガシ迫る少女。
前回配信時は健全な女の子風味が残っていましたが今回は色気、しかも魔力も踊りから弾けていらした気がいたします。
井澤さんはプレイボーイ度が増し、スターな輝き強まったフランツ。米沢さんスワニルダから猛烈に恋い焦がれるもさらっと交わす様子が
前回配信時よりもくっきり伝わってきた印象です。
フランツ役初挑戦の速水さんは髪撫で仕草ががちびまる子ちゃんのはなわくんに見えかけたときもあったものの
お調子者っぽさは全フランツの中でダントツであったかもしれません。米沢スワニルダに怒られても平然と他の女子たちと語らう姿も嵌っていました。

恋の高まりやすれ違いの描画においてより質が向上していたのは池田さんスワニルダと奥村さんフランツ。
テヘヘと笑い声が聞こえてきそうなフランツに、顔をしかめるもやはり恋心を止められないスワニルダのやりとりが
配信時は実のところそんなに惹かれなかったのが嘘のように感じられ、全日程中、最も舞台が見え辛い座席であったはずが、今もぱっと思い出すお2人です。


フランツ、もう1人いたはずなのに。


そして大救世主であったのは山本さんのコッペリウス。初日登場時は冒頭での吉田都監督による声が震え上がっている挨拶に動揺がおさまらぬ客席に対し、
助け舟を出すかのようにご登場。おかえりなさい、待っていました!と割れんばかりの拍手が起きたのは言うまでもなく
スワニルダ登場を観客に示す仕草、そして2幕におけるコッペリア人形とのワルツの華麗なる凄みに驚嘆。
だだっ広いオペラパレスにて1人と人形のみであってもいよいよコッペリアへの恋心が盛り立つ感情が熱くお洒落に伝わってきたのでした。
中島さんは段取りのカウントが聞こえそうな日もあった配信時より大進化して、人形との接し方も滑らかでコッペリアから体温が届いてきそうに思えたほど。

ただお2人に全く非はありませんが、顔の白塗りメイクや踊り方や仕草のどれもが滑稽さを誇張する方向に行ってしまったのは残念で、
指導監修担当のルイジ・ボニーノさんがコッペリウスを踊られたときの喜劇俳優風なコピーを作りたかったのかとも思うくらいに違和感もあり。
映像でしか鑑賞は叶っておりませんがプティさんのコッペリウスはよりお洒落でダンディな魅力があり、お顔もナチュラルメイク。
ボニーノさんが監修指導にあたると、プティさんが大切にされてきたであろう洗練や粋の要素がみるみると薄れ、
かわりに大衆芸能な要素が色濃くなっているとしか思えず。ボニーノさん色に染まって行くご自身の作品をプティさんはどう感じていらっしゃるか、聞いてみたい。

今月上旬での記事では山本さん渡邊さんの共演の生鑑賞が叶わなかった無念ばかりを綴ってしまいましたが
小野さん渡邊さんの全幕共演を生で観るのも大きな夢でした。渡邊さんがこれまで主役同士として共演している米沢さんや木村さん、柴山さんとはまた違った
良い意味で少し健全路線からは外れる、危うさをも秘めた色気の掛け合いを観たくて仕方なかったのです。
しかもプティ版コッペリアはポーランドの村ではなくフランス、マルセイユで都会が舞台設定。
終わってしまった後ではもう何と言おうと取り返すことも不可能ではあっても、お洒落で粋な掛け合いを想像すると
このコッペリアにおいては配信にはなってしまった2021年の発表時から私の中ではファーストペアは小野さん渡邊さん、
小野さんスワニルダには渡邊さんフランツ、渡邊さんフランツには小野さんスワニルダしか考えられず。
そこへ山本さんコッペリウスが入ってくるのですから、しかも主要役は3人のみの作品でこのトリオに終始スポットが当たると思うと
そりゃ発表の夜なんぞ興奮して寝付けなかった2年前の3月半ばだったわけです。

連日幕間や終演後はまだしも客席に座り上演が始まると鬱々としてしまい、目当ての人が不在でも舞台に立つ人達に敬意を払い全編集中して観るようお叱りを受けるのは重々承知ですが
眼前が大量の降雨状態になってしまい、中身がスカスカな感想となってしまったことをお詫びいたします。
山本さんに対しても、心晴れやかにして大拍手を送りたかったのは山々ですが、5日の記事からの繰り返しにはなりますが
隣に立つファーストキャストフランツは渡邊さんで観たかった気持ちが消え失せず。
今回の件は神経図太い私もそう容易には切り替えができず、器の小ささ心の狭さに再び嫌気が差してはくるものの生涯引き摺っていくと思います。
スワニルダ友人のABそれぞれキャストの比較はする余裕もなく、1回だけサザエさん風なカーテンコールで楽しませてくださったのは
以前からサザエさんのエンディングに似ていると強調していた私からすると思いがけぬ笑みを引き起こしてくださいました。
衛兵さん達もなかなか観察できず、木下嘉人さんお目覚め隊長や福田圭吾さんのフランツソロ最中の仰け反りは印象に刻まれております。

二・二三事件の悲しみを生涯背負うと思うとここ最近は長寿願望も更に弱まり、考えてばかりおりますといよいよ寿命が縮みそうですのでこの辺りで。
23日と25日に着用しようと購入した2着のワンピース、(初日はピンク、土曜日は黒)見ると思い出してしまうので、要望があればどなたかに差し上げるか。
それは横に置き、山本さんが初台のオペラパレスに戻ってきてくださったお姿を目にできたのは誠に幸せでした。今回の大救世主です。



※ダンスマガジン2021年6月号最旬リハーサルスケッチの記事にて、配信になってしまった『コッペリア』2021年公演の
渡邊さんのインタビューとリハーサル写真が掲載されています。
聞き手に対し、コッペリアを振り向かせようとする首の振り方をお見せになっていたりと
子供の頃からお好きであったと語るこの作品のフランツ役に選ばれた喜びや
小野さんスワニルダとの恋のすれ違いを描くパ・ド・ドゥのポーズも、写真のみでもマスク装着姿でも恋模様が伝わります。
小野さんとの全幕初共演やバレエ界の"レジェンド"山本さんがコッペリウス役で共演についてもしっかり書かれていて、(執筆ご担当者様、ありがとうございます)
もしお手元や図書館等で見つけましたら是非お手にとってご覧ください。






25日夜公演を大阪から観に来た友人と。大阪フェスティバルホールでのこども白鳥の湖にて渡邊さん緊急代役出演のとき、
観たいねん!!と出先から駆けつけてくれた友人です。2021年コッペリアでもチケットは購入され、来場予定でした。今回が初台デビューです。
せっかくだからといつものテラスへ案内。山本さん渡邊さんが並んでいるのを生で観たらどんなんやったかなあとしみじみ。



最終日に大阪から来た女子大生と。彼女のお母様にもお世話になりっぱなしで後ほど会場で合流。
私のオアシスだからと店舗に案内し、着席した途端に渡邊さんの踊りの好きなところを延々スピーチ。
単なる気遣いか励ましか!?と思いきやそうではなく、大阪フェスティバルホールにて急な代役出演された
こども白鳥の湖王子や配信コッペリアフランツの魅力をずっと語ってくれました。
中継で流し大勢の方々に聞いてもらいたかったくらい涙。
米沢さんや速水さんともレッスン一緒に受講されたり、米沢さんや福岡さん、井澤さんら新国立始め著名なダンサーとも舞台共演経験があり
そのときの舞台の話題は後回しにしてとにかく渡邊さん語り。
お母様とは合流後、随分と心配してくださいました。本当に多数の方から慰めに励ましに、ありがとうございました。



連日ずっと励ましてくださったお世話になりっぱなしのお方と。泡を呑みながら、山本さんに初台復帰を祝しました。
本日も再度関西の方角に向けて祝杯を上げたいと思います。山本隆之さんは偉大だ!

2023年3月19日日曜日

【人生4度目】アーキタンツにてレッスン受講





スタンプ 3月12日(日)、アーキタンツにて酒井はなさんの初級クラスを受講して参りました。レッスン自体5ヶ月ぶり、はなさんに習うのは2016年以来2回目でございます。
管理人にとっては今年初のズンドコドッスン有酸素運動でございます。 http://a-tanz.com/ballet/2023/03/11131814


※基本日本のダンサーについては極力名字にさん付けで呼ぶ、綴るポリシーでおりますが
酒井はなさんのことは昔からはなさんと呼んでおり、ここでも同様に書いて参ります。


先述の通り、はなさんのクラスは2回目で、以前チャコット宮益坂にて受講しております。
ただ当時から7年が経過。7年も経てば我が年齢も体型も変わり、年月の流れは早いものです。
そうはいってもはなさんの指導については当ブログレギュラーな我が愛する後輩から度々聞いており、とにかく優しい、ゆっくり、穏やかと定評。
幸いにして指導法は不変で終始癒しの空気が醸され、人間空気清浄機かと思うほどで
マイナスイオンを降り注いでくださる存在関東代表と勝手に思っております。(関西代表は私の中で山本隆之さんです)
ほんの少しの配慮意識の積み重ねで変わる見せ方や立ち方、呼吸をの仕方を学び、
個人への注意や指摘のときですら優しい笑みを絶やさず、安心して心身共に伸び伸びと受講できました。
ワルツのときのつむじに軸が入るように保っていくと美しくなる助言は自身が地球儀になった気持ちとなり、確かにスムーズに動けそうと納得。
他にも書ききれないほど、たくさんの指摘や注意助言の全てにおいてお手本、言葉の双方から光り輝くような空気で満たされました。

あるセンターのとき、気分が乗ったらオーロラ姫な手つきでやってみて、と胸の前に片手ずつ交互に手を添えるお手本見せてくださったはなさん。
オーロラっぽくなんてこの先機会も無いであろう私ですから、思い切りやってみました。
結果、鏡に映ったのはオーロラには程遠い無惨な管理人の姿でしたが汗、楽しめましたので良しといたしましょう。
思い起こせば7年前には第1幕オーロラの気持ちでと、スタジオを旋回しながら披露してくださったり、白鳥の腕使い、
そして背に両手を付けてラ・シルフィードもあり。特にシルフィードは当時2016年2月に新国立劇場にて2003年以来13年ぶりの全幕上演がなされた時期でしたので
まさにはなさんが2003年に踊られたシルフィードを想像しつつ、脳内だけは羽を素早く羽ばたかせていた管理人です。
我が手脚は非常に短くずんぐりむっくり体型のため、実際に踊ってみるとバタつく鳩状態になっていた点はお許しください。

今回のピアノ伴奏は工藤祐史さん。初めて聴きましたが、ビートルズのイエローサブマリンや坂本龍一さんの戦場のメリークリスマスなど奏でて心身を乗せてくださり幸せ気分。
特に坂本さんは面識は勿論ございませんが同じ中学校(都内の公立中)の出身であり、この曲でレッスンできて身体も喜ぶばかりでした。
坂本さんは決して子供の頃から音楽一辺倒ではなく中学ではバスケットボール部で活躍され、高校も公立で都立普通科の進学校。
そこから芸大に合格された経緯が不思議ですが、今も中学が誇る卒業生のお1人です。
芸能界で活躍されている卒業生は他にも何名かいらっしゃり、
うちお1人はそういえば四半世紀前にテレビ番組の企画で期間限定のバレエ団を結成され熊川哲也さんや下村由理恵さんにも対面されていました。

話を戻します。はなさんはレッスン中、試しに工藤さんがさらっと弾いてくださると、Good!と満面の笑顔で喜びの声を発したり、素敵な伴奏!と仰ったりと工藤さんを立てる姿勢を示され
工藤さんもそして受講者にも一段と笑みの輪が広がって行ったのは明らか。プロ並みの上級者も、底辺住民な私も、レベル関係なく
はなさんの優しい癒しのオーラに浄化された、皆で幸せを共有するリラックスして楽しめるクラスでございました。
今回も大人になってからの再開レッスン全てと共通して疲れは一切無く、すくにでももう一回丸々90分受講したかったほどです。

これを書いている今からちょうど1年前のアーキタンツ初訪問初受講時とは打って変わって緊張も殆どせず、
寧ろチャコットでのはなさんの弟子歴が長い後輩のほうが少し緊張している様子で
(幼い頃からブランクなく継続しグラン・パ・ド・ドゥ経験もある誰が見ても上級者なのですが、アーキでの受講となるとドキドキであったようです)
レッスンは年数回、昨年ようやく5回に達しても増えたほうであるレベルは毎度クラス最下層民である私なんぞ田町駅での待ち合わせ中に
呑気にJRスタンプラリーに参加しており、往路の電車内では車両に映されたモニターにて、縁深い「タニシ」の漢字クイズを視聴。
緊張のあまり何度途中下車を試みたか分からぬ1年前とは大違いでございました。
どうやら私は、はなさんや山本隆之さん、篠原聖一さんや下村由理恵さんら紫綬褒章や芸術祭大賞等受章(受賞)された大御所なお方の指導ほど、緊張しないらしい。
何故だ⁈

そうでした、飛距離計算できずセンター時にバーに衝突しかけ受付まで跳んでいきそうになった上に
(アーキさんより広い一般人でも受講できるスタジオは都内にないはず。気をつけねば)、
身長は3センチ高いくらいのはずが腰位置は私より15センチは高い、麗しい姫な容姿でスタイル抜群な上級者であるだけでなく
照明器具で言うならばシャンデリアの如く華やかな存在の後輩をレッスン終了後に大衆酒場へ連れて行ったことはお許しください汗。
壊れかけた豆電球な光具合のズンドコな私ですが、またはなさんクラス、受講したいと思っています。
私は元々肥えやすく膨れやすい体質でここ1年半くらいは日課としていた1回5分もかからぬ脂肪燃焼及び肥満防止体操を
例の2月の件でつい休みがちになってしまった。今も十分丸々しているが現在より2桁重かった学生時代の体型に戻らぬよう
鑑賞中心且つ飲食制限したくないならば尚のこと、油断したら即刻ドラム缶と再度身体にも言い聞かせて過ごして参りたいと思っております。




田町駅にて日曜日も営業している酒場を発見。ビールで乾杯。後輩はサワー。実は彼女と一緒に受講するのも7年ぶり。
相変わらず美しさと可愛らしさの両方を備えていて、言動も接し方も心優しさの塊。毎度脱帽です。



お刺身盛り合わせ、厚みがある!鮮度も万全!



そして日本酒も飲みたくなった笑。白と金色のおめでたいラベルでございます。本当にレッスン帰りかと疑われそうですが。




唐揚げ。レッスン後はビール、お刺身、唐揚げを口に入れたくなるのです。



グラタンに塩辛ポテト。値段は手頃ながら味はきちんと良い質!グラタンも大きめです。



オムそばに焼き鳥。後輩は、焼き鳥は塩が好みらしい。塩顔ソース顔と勝手に話題を展開させ、結局は醤油顔が好みと行き着いた私の話にもまたまた耳を傾けてくれました。


2023年3月17日金曜日

菅井円加さんの凱旋全幕主演 ハンブルク・バレエ団『シルヴィア』3月11日(土)夜







3月11日(土)、ハンブルク・バレエ団『シルヴィア』夜公演を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/hamburg/





※出演者等NBSホームページより

シルヴィア:菅井円加
アミンタ:アレクサンドル・トルーシュ
ディアナ:アンナ・ラウデール
アムール/ティルシス/オリオン:クリストファー・エヴァンズ
エンディミオン:ヤコポ・ベルーシ

第1部 弓の技術

女狩人たち: ヴィクトリア・ボダール、 ヤイツァ・コル、
パトリシア・フリッツァ、エミリー・マゾン、ヘイリー・ペイジ、パク・ユンス、マドレーヌ・スキペン、
イダ・ シュテンペルマン、プリシラ・ツュリコヴァ

森:
オリヴィア・ベタリッジ、ジョルジャ・ジャニ、
グレタ・ヨーゲンズ、シャーロット・ラーゼラー、スー・リン、
エルミーヌ・スゥトラ・フルカド、アナ・トレケブラーダ

ボリヤ・ベルムデス、アレッサンドロ・フローラ、
マリア・フーゲット、マティアス・オベルリン、パブロ・ポロ、
エミリアノ・トーレス、ワン・リーゾン

羊飼いたち:
フランチェスコ・コルテーゼ、ニコラス・グラスマン、
ルイス・ハスラフ、アルテム・プロコプチェク、
トーベン・セギン、エリオット・ウォレル、
イリア・ザクレフスキー

第2部 感覚の世界

シルヴィア、アミンタ、アムール/オリオン、ディアナ

客人:
パトリシア・フリッツァ、スー・リン、パク・ユンス

マティアス・オベルリン、フェリックス・パケ、
フロリアン・ポール、ダヴィッド・ロドリゲス

オリヴィア・ベタリッジ、ヤイツァ・コル、ジョルジャ・ジャニ、 エミリー・マゾン

ボリヤ・ベルムデス、アレッサンドロ・フローラ、
エミリアノ・トーレス、リカルド・ウルビーナ

ヴィクトリア・ボダール、フランチェスカ・ハーヴィー、
グレタ・ヨーゲンズ、ヘイリー・ペイジ、
パトリシア・ツュリコヴァ

ラセ・カバイエロ、ニコラス・グラスマン、ルイス・ハスラフ、
パブロ・ポロ、エリオット・ウォレル


第3部 冬の太陽

アミンタ、森、シルヴィア、ディアナ、アムール、エンディミオン、女狩人たち

男性: エリオット・ウォレル  



菅井さんのシルヴィアは登場がとにかく勇猛で高潔。決して大きな身体つきでは無いながら、大勢の女狩人軍団の中にいても抜きん出たオーラや貫禄、
長い弓を手にしていても全身の張りや強さ、体幹も強靭で中でも真横に開いた2番プリエからの力まぬ跳躍や
弓を使うときの勇ましい横顔や黒いタイトなショートパンツから伸びる脚もスパスパと語り、ただただ仰天するしかありませんでした。
アミンタに出会ってからの葛藤や弱い部分を見せることへの惑い、そしてようやく心を開き、内側の鎧もが解されていく過程の表現も細やかに踊りやポーズで明示。
舞踏会?での深紅色のベルベットドレス姿はすっと艶やかさを放ち、同時に水平された状態でのリフトもあったりと
これ見よがしにせず場面変わってもこれまた体幹の強さの天晴れ。最後、ジャケットワンピースのような衣装で
アミンタと踊るパ・ド・ドゥでは、ようやく辿り着いた安堵と寄せては返す穏やかな波のような落ち着き、加えて感傷的な情感が交わされ
アミンタにくっつくときも物憂げな表情を浮かべながらも思い切りぎゅっと身を委ねたり、ヴァイオリンソロの中盤での
演奏と呼応するように心から解き放つ感情の波動を更に伸びやかな身体で見せ、すっかり温和で柔らかな姿へと変貌したシルヴィアの生き様が目に刻まれました。
ノイマイヤー版『シルヴィア』の全幕鑑賞は映像含めても初めてで(パリ・オペラ座上演のDVDも鑑賞無し)
嘗て世界バレエフェスティバルで観たアツォーニとリアブコによる終盤のパ・ド・ドゥへいかにして繋がっていくか興味津々でしたが
全編観てようやくシルヴィアの変化や葛藤の展開を概ね把握です。力漲る印象がまさっていた菅井さんの、踊りで心情や物語を事細かに紡いでいく力量にもたまげ
バレエ団としての母国主演凱旋公演に居合わせた喜びが今も溢れてきます。

トルーシュのアミンタは木陰からじっとシルヴィアを覗き見し様子を窺っている姿はだいぶ怪しいものでしたが
(アミンタはミタの文字しか浮かばずであった私をお許し願う)
しかしただ木陰に隠れているだけでは張り込み捜査或いは不審者ストーカー止まり。
強力な戦士軍団の中に分け入る勇気やシルヴィアとの出会いの場におけるシルヴィアを宙ぶらりんとした状態からの突如水平体勢へ持っていく
スムーズなパートナーリングといい、シルヴィアに首ったけで一見飄々とした風貌からは想像がつきにくい恐るべきサポート技術が高いと今更ながら発見。
(新国立劇場でのニューイヤー・バレエでドン・ジュアンを4回観たはずなのだが)
暴れ馬のようなシルヴィアを無理強いせず徐々に穏やかに落ち着かせていく心の通わせの過程の積み重ねも丁寧に描画していた印象です。
いかんせん2008年に英国ロイヤル来日公演で鑑賞したアシュトン版の記憶は程遠く、
新国立劇場ではビントレー版を5回は観ているがかれこれ11年前で記憶が彼方へと行っており
あらすじもこれといって面白みが色濃くはない作品にて、心情をも細かく描き出していくこのペアで全幕を鑑賞できたのは幸運であったと思っております。

そしてディアナのラウデールも私としては歓喜した配役で、5年前に椿姫全幕で鑑賞したダンサーであり、もう少し強めな役でも観てみたいと望んでいたのです。
マルグリットのときには長い丈の衣装中心であったため気づきませんでしたが脚がすらっと長く真っ直ぐに伸び
髪を靡かせ高身長ながら身体を持て余さず機敏に空間を支配していく姿が颯爽とし、女神っぷりに痺れました。
エンディミオンとの関係は私の知識教養不足もあって今一つ理解に至らずではあったものの、物語を終始見守り司る役目を果たしていて
シルヴィアがアミンタに心を持っていかれ色めきに目覚めていく様子を複雑に見つめる姿や
前方に向かって1人歩く幕切れはシルヴィアの生き様をディアナも背負っていく覚悟を感じさせる締め括りでした。
(エンディミオンと聞くと、セーラームーンの世界観ばかりが思い浮かぶ我が脳みそでございます)

簡素で無地ながら木や扉の装置もスタイリッシュで、内面もをぽっかりと浮きたせる照明の差し込み方も良きセンス。
日本語で記された森を守ろうの立て看板を持っての唐突の登場には目を疑ったが、都内では神宮外苑再開発の件の報道も見聞きしている今、
また神宮球場神宮第2球場ともに縁がある自身としても、それから公演後日これを書いていた頃に
著名な音楽家が都知事に対してしたためた手紙も公開され、思わず考えがぐるりと脳内を巡った次第です。
序盤の狩人達の登場では1階席と2階席にダンサーが駆け込んできては弓を構え、予習無しで来た私なんぞ紅白歌合戦のような演出に仰天でございました笑。

基本ロシア音楽贔屓な私もシルヴィアの中の曲はいくつも好きな曲があり、舞踏会の中で流れるアクセントの強いワルツや
ラッパのマークの正露丸を彷彿させる高らかなファンファーレで始まる曲に、
今回初めて知った、最後のパドドゥ前にアミンタが1人思い耽る場面にてアルトサックスであろう
楽器のソロで奏でられる曲も染み入り、久しく観ていない他版も劇場で観たくなりました。(当分無いとは思うが)
まずは延期を経て、所属の団の全幕しかもぴたりと嵌る役にて菅井さんが主演なさる凱旋舞台
そしてノイマイヤーさんのお姿もカーテンコールにて目にでき、栄養剤が注入された思いでおります。




帰り、上野駅のつばめグリルにて、まずはピルスナーで乾杯。この日のこの時間帯はスポーツ中継でチェコに大注目が集まっていたようですが
子供の頃からモルダウの曲聴きながら聖ヴィート教会が聳えるプラハの写真書籍を眺めていた者からすると、嬉しうございます。
但し当時はチェコスロバキアでしたが。
チェコ料理店の店員さんが席に腰掛けるぬいぐるみについて、チェコのドラえもん、と説明なさっていたモグラのクルテクも好きでございます。
来月は東京バレエ団のスプリング・アンド・フォールにてドヴォルザークの音楽に触れるのも楽しみです。



ジャーマンハンブルグステーキ。良い舞台観たあとは、ビールが進みます。翌日は5ヶ月ぶりの有酸素運動であったのだが、まあ良いか。

2023年3月13日月曜日

ディアギレフ生誕150周年を祝す NBAバレエ団バレエ・リュス・ガラ 3月5日(日)




3月5日(日)、NBAバレエ団バレエ・リュス・ガラを観て参りました。
https://nbaballet.org/official/ballets_russes_gala/


本番前のリハーサルレポート。久保監督がインタビュアーを担当なさっています。



前日リハーサルレポート。舞台稽古の様子やインタビューもあり。




レ・シルフィード
振付:ミハイル・フォーキン/再振付:セルゲイ・ヴィハレフ/音楽:フレデリック・ショパン/美術・衣裳:アレキサンドル・ベヌア

パワフルな印象が強いNBAバレエ団にて、静かに妖精が舞う作品の鑑賞は久々。
17年前にヤンヤン・タンをゲストに迎えた『ジゼル』以来かもしれません。(会場は東京都調布市のグリーンホール)
他のバレエ団よりもダンサーの体型が個性様々であっても、コール・ドの揃い方が大変美しく、特に静止ポーズしているときの上体の傾け方や角度の統一感、
最初のワルツの最中における斜めに繋がる腕のふわりとした掲げ方に息を呑んだほどです。
詩人の刑部星矢さんが非常に柔らかい着地とすらりと長い手脚を存分に生かした優雅な踊り方でロマンティックな風情十二分。



アポロ
振付:ジョージ・バランシン/音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー/ゲストバレエマスター:ベン・ヒューズ

2013年に新国立劇場バレエ団によるストラヴィンスキー・イブニングでの初見以来。
千手観音風な一斉脚上げポーズ以外すっかり忘却の彼方状態でしたので実質初鑑賞の姿勢で臨みました。
アポロも女神達も音楽を1つ1つ丹念に脚先で奏でる4人で、出そうと思えばもっと出せそうなパワーをあえて抑えて余分なものも削ぎ落とし
あくまで音楽の中できっちりおさめるシンプルで純化された踊りが好印象でした。
高橋さんは身体の使い方が大きく、いきなり舞台中央に登場しても存在をしっかり示し、神らしい威厳もなかなかのもの。
また4人とも何の装飾もない白いレオタードや衣装であってもきっちり着こなし、見栄えもステップも折り目正しさが備わっていた点も好印象でした、


ダッタン人の踊り

振付:ミハイル・フォーキン/復元:セルゲイ・ヴィハレフ/音楽:アレキサンドル・ボロディン/美術・衣裳:ヴィチェスラフ・オクーネフ

実は客席に入るまでこの公演がオーケストラ演奏付きであることを知らず、
グラズノフ編曲のショパン曲も、ストラヴィンスキーもそしてボロディンも生演奏で聴ける喜びが思いがけず飛び込み、気分上々でございました。
中でもダッタンは心熱く躍らす曲で昔から好んでおり、熱い中にも哀愁が覗きしっとりとした調べに変わる展開や
打楽器隊のドンチャカな打ちっぷりも気に入っております。
隊長役の北爪弘史さんの斬り込んできての統率力、戦士達の中にいても埋もれぬ力強さも満点で
捕らわれの人の女性達が登場すると哀しみを帯びた空気も染み渡り、紫や白、金といったカラフルな衣装の組み合わせに負けぬ踊りっぷりにも拍手。
大地の匂い伝わる熱さや怒涛のスピードと、薄幸に舞う場面の強弱の付け方、特に男性陣の強靭足腰も驚嘆し
久保監督がプレトークで仰っていた見所の1つ、黄色隊の身体を床すれすれからの上下の激しい動きも誰も疲弊感を思わせず
それどころかランナーズハイな境地に達するのかまだ2、3回分はこなせそうな余裕すら感じさせるスタミナでございました。
終盤は全員が猛速でフィナーレへと突き進む展開は息するのも忘れかける踊り狂い現象を巻き起こし、この作品だけでもあと5回は観たいと中毒症状が出た私です。
ディアギレフ生誕150年を記念した公演にて近年はバレエ団での上演から遠ざかっていた2本と初演(アポロ)の1本で構成された
染み入る静けさと美、初台駅を出ても暫くは継続する興奮を味わえたトリプル・ビルでした。

スタダン、東京シティ、NBAと3月3日のひな祭りから3日連続で国内の団体が催す上演時間2時間におさまる2本或いは3本構成の公演を鑑賞いたしましたが
どれも構成も配役ともに満足度が非常に高し。スタダンの鈴木稔さん作品からのシティのフォーサイス作品、
ベン・ヒューズさんは江東区と所沢の往復であったのであろうか云々想像したり、諸々繋がりが見えた点もまた面白味があったと思えます。





鑑賞後、リハーサルを終えた我が後輩と合流。話に耳を傾けるつもりが、先月の初台における私への慰め励まし会になってしまった。ありがとうございます涙。



後輩の好物、生ハムです。身体を酷使し汗もたくさん出たでしょうからたっぷり食べておくれやす。
春めく苺のサングリアを注文するところがまた彼女らしい。私はシンプルに赤ワイン。



ストラヴィンスキーやボロディンを聴いていたら観光地各所の移動式屋台で販売していたモスクワの味が思い起こされ、似た料理を発見し注文。
じゃがいもにチーズソースをかけた、香ばしい塩気がワインに合いました。
赤の広場や雀ヶ丘を再び散策できる日は訪れるのか、ただ現在のこの情勢を考えると、仮に観光渡航が可能になったとしても、気が進みそうにはありません。

2023年3月10日金曜日

高質なミックスプログラム 東京シティ・バレエ団トリプル・ビル2023 3月4日(土)





3月4日(土)、東京シティ・バレエ団トリプル・ビル2023を観て参りました。
https://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000863.html

※上記リンク先の公演特設ページにて、上演3作品の特徴を紐解くお話が大変詳しく紹介されています。
シティでは初上演のバランシンであっても安達悦子監督にとってはモナコ留学中や松山バレエ団所属時代から縁ある振付家であったエピソードや
ブベニチェクさんと岡博美さん吉留諒さんが語る振り写しの様子等、作品の魅力が益々伝わるお話満載です。ブベニチェクさんの人間としての大きさも素敵。



Allegro Brillante  アレグロ・ブリランテ
振付:ジョージ・バランシン
音楽:チャイコフスキー  ピアノ協奏曲第3番  変ホ長調 Op.75 第1楽章 Allegro Brillante

主役の男女を軸に8名の男女のアンサンブルで構成された、スピーディー且つ清涼感溢れる作品。
女性ダンサーが身につけたシフォンのスカート衣装のふわりとした広がりや揺れ動きまでもが計算し尽くされたかのように音楽と溶け合い
あと2、3回続けて観てみたいと思わせるほど瞬く間に終演してしまった印象です。
清水愛恵さんが身体を自由自在に操りながら涼やかに駆け抜け、浅田良和さんの素早い身体の捌きも見事。
アンサンブルがまた高水準で、走っては揃えてポーズの繰り返しであってもせかせか慌ただしい感はないどころか整った連なりで余裕すら感じる仕上がりでした。
本当にバレエ団としてバランシン作品初演かと良い意味で疑わせ、またウヴェ・ショルツ作品の再演を重ね
安達監督が目指す音楽的なバレエ団の方向性が更に強まった舞台であったと思います。
早くも7月の創立55周年記念公演トリプル・ビルでの再演が決定しており、どうぞ足をお運びください。

ところでこの作品自体を知ったきっかけは6年前、NYCBでもなく他の米国内バレエ団でもなく、南仏のバレエ団。
作品に興味を持ったものの動画も視聴せず使用曲も聴かず、書籍等でも舞台写真を目にすることもなく
延期を経てのシティでの上演が決まり、チラシ等に掲載されたフィラデルフィアバレエの舞台写真を見るまでは
アレグロ・ブリランテの写真と言えば以下のリンク先の1枚でございました。何て清爽な趣に満ちた作品であろうと眺めたものです。
(主役男性、安達悦子監督と同じバレエ学校で学んだダンサーでございます)
http://www.forum-dansomanie.net/pagesdanso/critiques/cr0193_temps_du_desir_toulouse_30_03_2012.html


ArtifactⅡ   アーティファクトⅡ
振付:ウィリアム・フォーサイス
音楽:バッハ  無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調  BWV.1004 5.シャコンヌ

無予習予備知識無しで行ったため開演してびっくり、音楽は様々な作品で用いられ振付家の心をとらえて止まないのであろうバッハのシャコンヌ。
そしてオランダでのキャリアを経て入団まもない大久保沙耶さんのボリュームある動きで空間裂く支配力、
音楽が辿る線に沿うように身体を傾け引き伸ばしては引き戻し描き出すラインの美しいこと。
衣装も実に簡素な、レオタードとタイツのみであっても陰のある照明からぽっかりと浮き立つ神秘的な存在感といい今後の舞台が益々楽しみになりました。
ウヴェ・ショルツ作品を踊る姿も観たいダンサーです。
もう1つ驚かされたのは大人数構成であった点で、主要の4人を囲むようにして、敷き詰め壁のようになって作り上げる群舞の
静かながらぴりっと鋭さが宿るポーズ1つ1つが緊迫感を底上げ。場面転換ごとに幕が下り
その度にLIXILの文字が気になったものの笑(例えば全国公演の場合、会場によっては
市町村名や地元の自然風景を描いた幕模様を眺めつつフォーサイスの世界観を鑑賞するのでしょう)シティ全体の技量の高さが窺えた新レパートリーです。


L'heure bleue  ルール・ブルー
振付:イリ・ブベニチェク

2020年にステイホーム向け配信サービスで一部を視聴し、洒落たセンスに釘付けとなって全編を客席から観てみたいと願っていた作品。
何処かで聴いたバロック音楽中心に宮廷ダンスとコンテンポラリー、王宮と美術館を融合したような振付、空間で貴族の遊宴思わす展開から目が離せずでした。

使用曲はこちら。
https://tokyocityballet.com/triplebill2023/l_heurebreue

初演キャストであり、主軸を踊られた岡博美さんのユーモアで上品な魅力が零れる、宮廷の面々を率いる踊り方に惹かれ
しぼめたクリーム色のチュチュ姿も変わらぬ愛らしさ。丈の長い上着を羽織った男装の麗人風な2人組の颯爽と戯れる場面や
額縁を用いたユニークなダンスも面白く、動く典雅な美術館の中に迷い込んだ心持ちとなりました。
恐らくは宮廷に仕える人々の設定であろう、黒い七分袖のワンピース姿の女性の1人を踊られた平田沙織さんの腕の滑らかな使い方も目を惹き、
終盤ボッケリーニのメヌエットで踊られる、一斉静止画の如き全員の並びも優美な余韻に浸る幕切れです。

2時間に纏められた会心の3本作品、バランシンにフォーサイスにブベニチェクと
似たり寄ったり度は皆無されどどれも上質な作品を一挙上演し、配役も精鋭揃い。掛け持ちのダンサーもいらして、
例えば同日にバランシンとフォーサイス踊られた方なんていったいどれだけ踊れる身体の持ち主であろうかと仰天。非常に満足度高い公演でした。
シティの中でも我が3女神と勝手に呼ばせていただいている清水さん、大久保さん、平田さんが
3作品それぞれに出演されていた点もまた、喜びを押し上げる理由の1つでもございました。




作品自体は6年前に知ったものの動画も見ておらず、やっとこさ全編通して鑑賞が叶ったアレグロ・ブリランテの題名のように、
きらきらと光彩を放つスパークリングワインで乾杯。とにかく3本全て高水準であった。
夏のトリプル・ビルも今から楽しみでございます。その前に、5月の落語とバレエで描くくるみ割り侍も楽しみです。

2023年3月7日火曜日

突き放つ刺激と衝撃  スターダンサーズ・バレエ団  MISSING LINK 3月3日(金)





3月3日(金)、スターダンサーズ・バレエ団  MISSING LINKを観て参りました。
2本立て公演でどちらも振付は鈴木稔さん、音楽は蓜島邦明さんです。
https://www.sdballet.com/performances/2303_missinglink/

01

自然遺産巡りな曲を思わせ、ゆったり居心地良い空気感にもなれば入り乱れる大人数移動の交差も面白く鑑賞。
レトロ調のはっきりした色味を組み合わせたカラフルな衣装観察や動く壁を用いた演出を含め
緩急の変化のバランスも良く、次の展開を予想しわくわく感が高まるうちに終了。
このあとの作品と同様に何の予備知識なく足を運び詳細なコンセプトの理解には至らずではあっても
約40名もの出演者で淀みなく描き出して行く構図にびっくり。2階から観てもきっとフォーメーション展開観察により引き寄せられるであろう作品です。


Degi Meta go-go

序盤から仰天の連続。黒を帯びた背景に近未来宇宙へ誘われ、パワフルで鋭敏な刺激に果てしなく包まれる作品。
空間を急速に斬り裂くような振付も満載ながら約30名編成で大人数披露を可能とする
団員揃っての技術力の高さ、スタミナの維持力に驚嘆でございました。スタダン以外に上演できるバレエ団、国内にあるのか知りたいくらいです。
フォーサイス風味であろう傾きバランスやぎりぎりまで脚を上げて鋭さを見せるといった味付けも盛り込まれ、
されど回転やジャンプはクラシックの技法のテクニックも細かく取り入れられ
中でも対角線上に勢い良く進みながら回転やバランスを巧みに繰り出し描き出す女性ソロ(お名前が分からず失礼)に天晴れでございました。
久保田小百合さんデザインの青で揃えた衣装もスタイリッシュで、背中側のみシルバーであったり、
パンツの丈も長短様々で違いを出しつつも統一感もあり。もう1回観てみたい作品です。


スタダンのこの手のコンテンポラリー公演や2本或いは3本立て公演は毎回どれも観たくなり、予備知識無しで観に行きましたが大正解。
来日公演とも重なり集客はやや苦戦の様子でしたが、再演時も是非ご来場お勧めいたします。




帰りはまずビール。



会場にて舞台からヒリヒリと刺激をたくさん浴びて参りましたので、麻婆豆腐をいただき辛さも味変。
ご飯は小サイズを選択したがボリュームしっかりです。次は炒飯も食べてみたい。



スタダンを観てきましたから、星の字が使われた満天星辣椒をかけてみた。妙な激辛ではなく、辛くも痛快。ビールが進みます。

2023年3月5日日曜日

共演叶わず絶望真っ只中だったが山本隆之さんコッペリウスは救世主 新国立劇場バレエ団ローラン・プティ版『コッペリア』2月23日(木)〜25日(日) 




※更新が滞り申し訳ございません。2021年同演目配信時とは違った理由で長らく更新できずにおりました。
立ち直りにまだだいぶ時間がかかりそうで、以下決して明るい内容ではございません。先に他所で記した内容と重複部分も多々ありますが悪しからず。


新国立劇場バレエ団ローラン・プティ版『コッペリア』を計6回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/coppelia/

私の中で海外勢含めても心からときめく虜となっている二大男性ダンサーである山本隆之さん渡邊峻郁さんの共演生鑑賞が
遂に叶うと信じて疑わなかった矢先、初日朝10時過ぎにその夢は打ち砕かれました。
渡邊さんの降板が初日当日告知且つ怪我や体調不良の記載なく都合により降板。
前日のゲネは踊ったそうですから誠に不可解な理由としか思えません。1番悔しがっていらっしゃるのは渡邊さんご本人でしょう。
お心察するも言葉が出ず、今迄約1000回のバレエ鑑賞で涙したのはたった3回である、
誰かの引退公演でさえも感涙しない感性が繊細さに欠ける私が開演前から客席で涙止まらず悲嘆に暮れておりました。
初日開演前『コッペリア』上演の支えとなった寄附金のお礼挨拶で舞台上に現れた吉田都監督の
配役変更について触れた途端に漂わす動揺ぶりや葬儀の司会者のような沈痛な口調からも事態の深刻さが窺えます。

急遽代役フランツの福岡雄大さんは見事な務め上げで客席をあっと沸かす大力演。小野絢子さんスワニルダの魔性も宿る魅力や脚の色気にゾクゾクさせるステップ
そして2014年シンデレラ義理の姉以来⁈久々の復帰を生で鑑賞できた山本隆之さんコッペリウスの洒脱な哀愁感、
鍵落としの自然な所作や人形とのワルツも感激いたしました。広いオペラパレスで1人+コッペリア人形のみであっても山本さんが描き出す世界の何と華麗なこと。
今回の大救世主でした。

ただ山本さんと渡邊さんの共演を夢見ていただけに終演後も悲壮感を拭えず。まだ新国に通い始めてからまもない2005年1月の『白鳥の湖』で
初めて虜になった男性ダンサーの山本さんは既に別格な存在でした。ゲスト無しで5人のフランツが配役された現在では考えられませんが、
2005年当時はまだゲスト頼みな時代で山本さん以外に主役をほぼ毎回踊る自前の男性ダンサーは不在であったのです。
山本さんの当時の階級はソリストでプリンシパルの階級が設置されたのは数年後以降でしたが
それ以前から男性ではただ一人実質プリンシパル同然な別格のご活躍でした。
いかんせん最初に現れたのが山本さんでしたからもう次は現れないと確実視していたところ、
丁度干支一回りして12年後2017年1月に現れたのがフランスのトゥールーズ・キャピトル・バレエから
新国立に移籍してまだ1年未満であった若きソリスト(当時)の渡邊さんでした。

山本さんが芸術選奨文部科学大臣賞受賞の受賞対象作品でもあったエイフマン版『アンナ・カレーニナ』名演カレーニンに対抗できるヴロンスキーがようやく現れた!
何しろアンナの上演時の幕間の声はほぼ一色で、山本さんカレーニンを捨てるアンナの気持ちが理解不能、あの旦那の何が悪い、といった感想多数。
エイフマンの描くカレーニンは冷淡な性格ではなく容姿も端正で心優しい夫で、
それだけ山本さんのカレーニンは思慮深く誠実で、寛容な心でアンナを愛し案ずる人物であったのです。
ですから誰がヴロンスキーやっても説得力ないやんと長年思っていた私が、渡邊さんヴロンスキーなら対抗できるかもしれんと
戸惑い喜び抱いた衝撃は今も忘れられません。2017年1月は毎日毎日『アンナ・カレーニナ』使用曲がぐるぐると脳内再生されていたものです。
2016年おけぴシンデレラ稽古場記事にて随分男前な人がいると注目しかけ、バレエは生が一番と劇場通いを好んでいた私が動画検索なんぞ初めて行い、
ネット上のフランス語の辞書を頼りに仏語記事の解読も試みつつトゥールーズ時代の映像検索中に
新国立移籍直前の2016年6月に上演されたベジャール版『火の鳥』リハーサル映像を2017年年始に見つけ、一瞬で心を奪われました。そしてトゥールーズ時代に踊られた美女と野獣、海賊のDVDも立て続けに購入。
前者では歪んだ心が露わになったされどスタイリッシュな野獣に、後者は横暴な君主を務められたスルタン、若くして内面からの表現にもたまげたものでございます。
あろうことか、2017年の年明けすぐの大阪での山本さんの舞台鑑賞時の天王寺近くの宿泊地でも、夜な夜な渡邊さんの動画を見続けていたほどだったのです。
最初の約6ヶ月間は周囲にもなかなか打ち明けられず、同年2月のプティ版『コッペリア』での衛兵さんの一員としての出演時に
我が人生初のコール・ドからお目当ての男性ダンサー探しを体験。双眼鏡を目に押し当て発見まで時間を要しましたがその分見つけられたときの喜びは強く、
プログラムを抱きながらホワイエの隅っこで1人幸せに浸った6年前を思い出します。
衛兵さん探しについては今回木下嘉人さんファンの方にもコツを伝授し、嬉しそうに聞き入ってくださりこの度お役に立っていたら幸いです。

話が少し飛びますが2009年の新国立劇場バレエ団モスクワボリショイ劇場公演にて現地で交流のあった大手新聞記者の方を
2018年の『不思議の国のアリス』新国立初演時のちょうど渡邊さんジャック日にホワイエで見かけ
遂に2人目が現れました、ジャックの渡邊さん注目してください!加えて山本さんとの共通点を伝えると、
劇場に来る楽しみが増えるでしょう、そういうダンサーが見つかると幸せですよね、よかったですね!と嬉しそうなご反応。
実はその記者の方からはモスクワ公演時、新国立入団直前であった当時は前年にヴァルナ国際バレエコンクールで入賞し大型新人として期待されていた
福岡さんについて聞かれ、山本さんと同じスタジオの後輩で大阪に観に行ったときに目にしており
きっと大物になりますからご注目を、と告げていた14年前の私であったのでした。時の流れと繋がりは恐ろしやでございます。

しかし2017年の頃は山本さんは関西に拠点を移されて何年も経ち、渡邊さんとの共演はおろか接点もないと思っておりました。
山本さんの公演等がきっかけで関西で知り合った方々からは浮気ちゃうんかこれは、
誰のおかげで私らと会えたと思うてんねん、隆之さんやろが!等と大非難に遭うかと懸念していたものの心配は無用で
それどころかどんな人か注目してくださって、関西ではなかなか踊る機会ないやろうし、
(こども白鳥大阪の渡邊さん代役出演公演やくるみ割り人形びわ湖公演ねずみ王にも温かい言葉たくさん寄せてくださいました涙)
山本さんとの共演なんて夢やなあと口にしてくださったり。私も夢物語で終わると思っておりました。
ところが2021年5月公演『コッペリア』にて共演が発表。しかし緊急事態宣言発令により無観客配信となり
今回こそはと祈るも初日開演4時間前に夢は絶たれました。25日(土)夜だけでもと望みを持ち続けましたが叶わず無念としか言いようがありません。

初回は無観客、今回は渡邊さん降板。私が描いた大きな夢が実現に近づくと直前に頓挫し不幸になる人が増えるのだろうか。
息をしてあれこれ願う夢見る資格はもう無いのだろうか。
感性が負の真っ只中に落ち、初日は舞台からお洒落な弾けが序盤伝わらず。山本さんの登場で解消の兆しが見えました。繰り返しになりますが今回の大救世主です。

山本さんとの同郷同門共演が予定外に実現し西日本よりお越しの方の大多数は福岡さん登板を喜ばれたかもしれません。
実際福岡さんの急遽の出演増加が決まりチケットを追加購入された方にも、渡邊さんの降板でチケットを手放した方の両立場の方と接し
浮いたチケットの仲介にも関わりましたので、双方の側のお気持ちは理解できます。
山本さんの虜になったきっかけで関西(他全国各地)にも足繁く通い東京以外でのバレエ鑑賞回数も増え
生まれも育ちも東京で、大阪での在住在学在勤経験がないにも拘らず今や東京より大阪の観光地に精通するくらい
コッペリア期間に開催された大阪国際マラソン中継だったか、目に入ってくる建物や折り返し地点に描かれたビリケンさんの絵等に親しみを覚えていた私ですが
関西の中において圧倒的に鑑賞回数が多い大阪の中でも最も足を運んでいる団体はお2人の出身のKバレエスタジオの舞台。
スタジオの何名もの関係者とも私自身親交があり、お世話になった頻度は数知れず。
初鑑賞の2007年以降大阪開催ながら一度だけ鑑賞を見合わせたのは福島県白河市での渡邊さんの凱旋舞台を選択した2021年のたった1回で(恐らく)
ですから同じKスタの、今も結び付きの強い先輩後輩が海外でのキャリアを経てプロとして大きく花開いた場所である
新国立劇場オペラパレスでの久々のコンビ復活を私も本当ならば祝いたかった。祝い歓喜しなければならない立場であったのは百も承知です。

2016年に大阪のリーガロイヤルホテルで開催された山本さんの紫綬褒章受賞祝賀会に出席したとき
福岡さんがリーダーシップを発揮されていた余興にどれだけお腹が捩れるほど笑わせてもらったことか。
福岡さんの笑いのセンスはとても好感を持っており、急遽の登板となった23日も25日の夜も、
細かな部分まで笑いの要素をぎゅっと詰め込んであっと驚かせる表現に観客も大笑い。
しかも25日は昼夜連続登板、テクニックも万全で怪物としか思えぬ力演であったこと、
そして新国立におけるプティ版『コッペリア』上演史の中でも最も会場が沸き立ったのは
ルシア・ラカッラやシリル・ピエールがゲスト出演した回でもなく今年の25日夜であったと思います。
しかし大喝采を心から喜べず、2幕からだけでも渡邊さんの登場を願ってしまい、
山本さんの傍にいるコミカルな楽しさ満載でシャンパン吹きは後世に伝わるであろう垂直鯨噴射な吹き方も披露された福岡さんフランツが魅力なのは分かるけれども
でも私の脳裏を過るのは配信時のすっとした色気醸すフランスの色男な渡邊さんフランツの姿ばかりで
上演中となっては嘆いても仕方ないとは分かっていても山本さんと渡邊さんの並びや掛け合いがどうしても観たかったと欲が益々募り
特にコッペリウスの家への侵入からシャンパンのあたりはもう観ているのが辛くて苦しくて。
自身の器の小ささに嫌気が差してしまい、鑑賞に限界を感じるしかありませんでしたが
それでも山本さん渡邊さん共演こそ観たかったんや!と声かけてくださった大阪の方も何人もいて、
本来なら私が初台へようこそとおもてなしや案内をすべきがそうもいかない中、励ましをありがとうございました。

山本さんと渡邊さんは世代や経歴は全く異なるも品格と知性の備わりやパドドゥ好きサポート好き発言や飽きがちなアダージオでも魅せる術、
貴公子から悪役、現代作品迄経験役の豊富さや表現の深み厚み、人物造形洞察力の鋭さや端然とした色気に高貴な美しさ、
同じ着物雑誌モデル等実は共通点多数。こう書き連ねると喜劇の印象は薄いかと思うかもしれませんが全然そうではなく、配信コッペリアを観たときに
お2人とも品ある佇まいや踊りから香るほんのり滑稽な面白さに映像越しであっても胸がキュッと上がる幸福を覚えました。
ダンサーとして、人としても、心から尊敬する大好きなお2人です。

この先プティ版コッペリア並に主役同士で張り合う作品の共演機会の訪れはあるのか、次こそは実現と鑑賞を切に願っております。
前からエイフマン版アンナ・カレーニナを切望しているがまだ夢見ても良いかしら。
思慮深い官僚カレーニンと負けん気強く情熱家な青年ヴロンスキー、しかも2人揃って美しい!これはアンナも苦悩し狂わされるに違いない。

いかにもプティさんが好みそうな洗練されたスマートな浮気者渡邊フランツ(配信の印象)と
小野スワニルダのフレンチな花開く美の掛け合いへ山本コッペリウスが入る三角関係な光景。
もし生の視界に入ったならばコッペリウスとはシャンパンパーティー、フランツからは頬ツンツンとお姫様抱っこのスワニルダに
間違いなく私は過去34年約1000回の鑑賞史上最も蕩けていたに違いありません。

ゲネも踊り本番を控えた直前の変更に渡邊さんのご心境がいかばかりか、今はきっと切り替えて次の練習に臨まれていることを願います。
能天気で神経図太い私も今回は立ち直りに半年は要しそうですが、本来なら祝福の言葉攻めであっただろう2023年2月23日と25日夜、慰めを皆様ありがとうございました。
連日意気消沈する中、のべ約50人もの方から励ましのお言葉をいただき、気を落とし過ぎないよう生活して参りたいと思っております。

暗い内容も多々ある中、お読みいただき感謝申し上げます。他のキャストの感想や
毎度恒例の付録写真等につきましては書けるか掲載できるか今は分からず、少し時間をください。


※ご参考までに2021年配信時、全キャストについての感想。映像越しではあっても、共演、舞台上で2人が並ぶ姿が視界に入り
とうとう叶った、日本史でいえば大化の改新、世界史でいえばフランス革命に並ぶ大事件であろう
私の中でそのとき歴史が動いた5月8日(土)14:40分は今も忘れられない瞬間です。
https://endehors2.blogspot.com/2021/05/5258.html



※配信時のファーストキャストでまとめられた3分でわかる『コッペリア』ダイジェスト映像。1分19秒辺りの家侵入からシャンパンの下り、何て美しいのでしょう。
フランツの手首を掴みながら秘薬を準備するコッペリウスと書物に興味津々でお調子者浮気性だけでなくどこか理知的な部分も思わすフランツ。
燭台に照らされたお2人には、まるで古いフランス文芸映画の如き耽美な魅力が濃縮です。
主役2人の描写においては、これ見よがしな派手っぷりや軽さではなく、すっと香る洗練された色気から憎めない浮気性を覗かせる渡邊さんフランツと
芳醇な色香と品もありつつ魔性も振り撒く小野さんスワニルダとの美が匂い立つ掛け合いの組み合わせに
再度胸が高鳴り、お2人の主演全幕が観たいと更に欲が深まります。
生での鑑賞は叶いませんでしたが、私の中では2021年も2023年も、フランツの第1キャストは渡邊さんに変わりありません。