2022年8月29日月曜日

方向転換で即完売  NHKバレエの饗宴2022 8月13日(土)





8月13日(土)NHKバレエの饗宴2022を観て参りました。今年は例年通り渋谷のNHKホールで開催です。
https://www.nhk-p.co.jp/ballet/index.html


Variations for four
振付:アントン・ドーリン
音楽:キーオ
厚地康雄(元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
清瀧千晴(牧阿佐美バレヱ団プリンシパル)
猿橋賢(イングリッシュ・ナショナル・バレエ ファースト・ソリスト)
中島瑞生(新国立劇場バレエ団アーティスト)※2022/2023シーズンよりファースト・アーティストに昇格

冒頭にて4人揃って黒マント舞台に佇み、一斉に取り外すと地、風、火、水を模したクラシカルな衣装姿でお目見え。 男性版『セーラームーン』といったところ、かと思えば男性版パ・ド・カトルらしい。
4人で踊る箇所はややばらけた感はあったものの、所属が異なる男性ダンサーが集結し1つの作品を踊る機会は稀に発表会ではあれど滅多にお目にかかれず
第一線で活躍中の方々ですから惑星の集いなる雰囲気を堪能。題名の通り各々ヴァリエーションも用意され、
中島さんはだいぶ緊張なさっていた感がありましたが主役級クラスに交じってただ1人コール・ドの1つ上のファースト・アーティストながら堂々たるもの。
厚地さんは腕運びやエレガントな魅力が引き出されていた気がいたします。


パ・ド・カトル
振付:アントン・ドーリン
音楽:プーニ
中村祥子(Kバレエカンパニー名誉プリンシパル)
水谷実喜(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
                         菅井円加(ハンブルク・バレエ団プリンシパル)
永久メイ(マリインスキー劇場バレエ団ファースト・ソリスト)

初演時の名花競演な色が濃く、余程のメンバーが揃わないと見栄えせず冗長な印象しか残らぬ作品ですが
吉田都さんと酒井はなさんの共演が実現した2017年の石神井バレエ以来であろう壮観な光景が渋谷に登場。
女王然とした中村さんが目配せした途端に空気が締まる優雅なリーダー格で、ポーズの1つ1つが伸びやかな余韻残す麗しさを造形。
そんな中村さんにお仕えするように菅井さんの奥ゆかしい慎ましさが意外な発見で
床に優しく挨拶するようなゆったりとした脚の出し方にも見惚れ、ピンクの花冠姿が妙に愛らしくこれまた新鮮でした。
4人で踊る場も息が合い、互いに目をしっかりと交わしては誇り高くも和を重んじる美しさを全員で紡いでいた印象です。異なる所属の名花達の集結は胸躍る並びでした。
冒頭では背景に初演時の絵が映し出されたのち、2022年夏の渋谷に登場した4人の姿に光が当てられる演出がパ・ド・カトル史の変遷を覗いている心持ちとなり、良案。


牧神の午後への前奏曲
振付:平山素子
音楽:ドビュッシー
フルート:高木綾子
小㞍健太
柴山紗帆(新国立劇場バレエ団ファースト・ソリスト)
飯野萌子(新国立劇場バレエ団ソリスト)

 大きな鏡を用いた演出がなかなか面白く、青年の小㞍さんとニンフの2人が交互に摩訶不思議に映っては消える展開に見入りました。
ニンフの白いスカートにオレンジ色であったかカラフルな色味を加えていた衣装もユニーク。
繊細な青年がニンフに静かに絡み取られても歩みを止めず何かを探し出そうと藻掻く姿を描いているのであろうと想像が広がる作品です。
ただ紅白歌合戦でも使用されているほどの規模である横長なNHKホールには馴染みにくい作品であったかもしれません。テレビ放送時にじっくりと視聴予定でおります。


ウェスタン・シンフォニー
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ケイ
スターダンサーズ・バレエ団

スタダンが上演を重ねており賑やかな愉しい作風で、これまでと違いNHKホールの大箱ではどう印象が変わるかも興味津々でございました。
横幅が長過ぎる感はあったもののスイングドア(左右両側にパカンと開く西部劇で目にするドア)が描かれた酒場の背景に現れると心浮き立ち
中でも喜入さんの脚先や手先からも繰り出される芳醇な色気がまさにショーを見ている気持ちにさせました。
形式はシンフォニー・イン・Cと似て楽章ごとに男女ペアのプリンシパルとコール・ドを配した
構成はかっちりとしていながら振付はより解放感や奔放度、自由度が増していてフィナーレは全員回転したまま閉幕。
『赤い河の谷間』等耳に残る選曲も親しみやすく、これからもスタダンの人気演目として上演を続けて欲しい作品です。


「ロメオとジュリエット」からバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:レオニード・ラヴロフスキー
音楽:プロコフィエフ
永久メイ、ビクター・カイシェタ(マリインスキー劇場バレエ団セカンドソリスト)

マリインスキーで活躍してきたお2人がラヴロフスキー版を披露。白い衣装を纏った永久さんの清麗で気品を備えた姿が夜空に輝く静かな月を彷彿。
カイシェタさんとの化学反応はそれはそれは純粋な甘美に溢れ、恋を知った若者の怖いもの知らずなときめきが発生。
決して派手な技巧が散りばめられているわけではない振付であってもお2人が丁寧に紡ぎ上げる愛情の強さが広がり、全幕を観た気分となりました。


「ドン・キホーテ」からグラン・パ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー
音楽:ミンクス
出演:菅井円加、清瀧千晴

ひょっとしたら、王道古典のパ・ド・ドゥを踊る菅井さんは初見。(ドリーブ組曲は2019年に観たが)さりげなくチラリと盛り込んだバランスや扇子使いの妙技に仰天し
脚腰が相当強靭なのか助走や踏み込みが見当たらぬ状態から跳ね上がる箇所多数。
しかし誇示は一切無く、一見淡々されど中身は職人芸の塊な踊りに天晴れでございました。
清瀧さんは菅井さんに押されてしまうかと思いきやサポート時もどんと構えて安定。珍しい組み合わせを味わえたのも饗宴ならではでしょう。


Andante
振付:金森穣
音楽:バッハ
バイオリン:小林美樹
中村祥子、厚地康雄

中村さんからの願いで実現した金森穣さんの新作で、音楽はバッハヴァイオリン協奏曲第1番イ短調第2楽章。
中村さんと厚地さんがお互いに歩み寄っての呼吸の合い方や身体の重ね方のフォルムまで美が宿り、
最後は光の道を一歩一歩ゆったりと誇らしく踏み出していく姿が崇高なオーラを放って胸にしんみりと響くものがありました。

昨年は神奈川県民ホール開催で1席置きの配席でも当日券に余裕があったりとここ最近集客にも苦戦していたこの公演、
だいぶ方向転換した企画が当たったのかこの公演でしかお目にかかれそうにない活動拠点の国や所属を超えた組み合わせや
ベテランの域に達しているダンサー同士の初ペアと新鮮味が戻ってきた気がいたします。
帰宅時は暴風雨となってしまいましたが、会場近くに停留所があるハチ公バスを利用し帰りの電車利用のために出向いた初台では
代役で王子役を任された吉留さんのプリンシパル昇格を舞台上で発表され、渋谷区内では
大型公演が3本(シティは昼夜公演で昼はパリ・オペラ座組客演、夜はスウェーデンから佐々さんとシティのキムさんの直前降板により急遽吉留さん)
重なった外は大荒れ模様の1日でございました。もう時間がかなり過ぎてはおりますが、お出かけになった皆様及び舞台制作に携わった皆様、ご無事でありますように。
尚、テレビ放送は2022年9月18日(日)とのこと。是非ご覧ください。




パ・ド・カトルが面白い珍しい顔合わせで印象に残り、優美なピンク色のロゼスパークリングワインを購入、帰宅後乾杯。

2022年8月26日金曜日

キャピュレ卿の回想で幕開け  京都バレエ団『ロミオとジュリエット』 8月11日(木祝)《京都市》







8月11日(木祝)、ロームシアター京都にて京都バレエ団『ロミオとジュリエット』を観て参りました。
http://www.kyoto-ballet-academy.com/a_ballet.php

http://www.kyoto-ballet-academy.com/upload/a_ballet/1650894260_1.pdf

※キャスト等は京都バレエ団ホームページより

構成・演出・振付・指導
国立パリ・オペラ座バレエ団メートル・ド・バレエ
ファブリス・ブルジョワ
 
指揮
国立パリ・オペラ座バレエ団
ミッシェル・ディエトラン
 
指導  国立パリ・オペラ座バレエ学校教師
エリック・カミーヨ
 
演奏
京都市交響楽団
 
ジュリエット  ロクサーヌ・ストジャノヴ
ロミオ  フロラン・メラック
ジュリエットの父 山本隆之
ジュリエットの母 瀬島五月
パリス アンドリュー・エルフィンストン
ロラン修道僧 陳秀介
ロザラン 藤川雅子
ティボルト 鷲尾佳凛
マキューシオ 金子稔
マキューシオ友人 福田圭吾
マキューシオ友人 福田紘也


ストジャノヴは初見。ジュリエットにしては随分と高い上背に驚かされましたが、飛び抜けた近寄り難さすら漂わせる美しき令嬢な雰囲気は満点。
ただこれまでにも背が高く大人びた役の印象が強いダンサーによるジュリエットは何名か鑑賞し
ふと無邪気な少女らしい無垢な一面も何処かしらでチラリと覗かせたところからの
運命の危うい恋への突っ走りに展開は把握していてもこちらまでが手に汗を握る思いに駆られていたことを考えると
もう気持ちときめきの喜びであったり戸惑いが表出されると尚のこと感情移入できたかと思います。

メラックは東京の新国立劇場で開催されたバレエ・アステラス2013にてオニール八菜さんと『眠れる森の美女』での共演は記憶しており
年月を経て脚の出し方からしてより気品も増していた印象。友人達との戯れでも1人だけ一貫して穏やかで
マキューシオらがわちゃわちゃと騒いでいても冷静に傍観している様子を示し、
だからこそあれよあれよと運命に翻弄され遂にはティボルトを刺殺してしまう激走展開がロミオの大変化を表していたと思えます。

そして最たる印象に残った方々が今回お2人、まずは山本さんによるジュリエットの父ことキャピュレ卿。
大概は3幕冒頭で流れる重たく不穏な曲が1幕プロローグで演奏され、幕が開くと上手側隅に書斎にて
掛けられたジュリエットの遺品のドレス眺めては愛娘の死を嘆くキャピュレ卿の回想から物語が始まる演出でした。
押し潰されそうに悲嘆に暮れ、自身のジュリエットに対する仕打ちを涙ながらに後悔する姿が哀れみを誘う幕開けです。
一族の色である紅色に近い赤や茶色を基調とした格式ある重厚な装いも絵になり、争いで騒然とした広場に現れ佇むだけでも空気の色が締まり変わったのは明らか。
瀬島さんのキャピュレ夫人と並ぶとこれまた大迫力でございました。

そしてもう1人がトゥールーズ・キャピトル・バレエ所属でいらっしゃるマキューシオの金子さん。
「訳あって」2016年に撮影されたとあるリハーサル動画にて何十回どころではない繰り返し視聴を筆頭に
現地の舞台写真等で目に触れておりましたので是非一度生で観てみたいと願ってきたダンサーのお1人でした。
とにかく芝居が自然で舞台を率いて、しかもマキューシオの友人役福田圭吾さん紘也さん兄弟も引っ張っては馴染んではしゃぐ身の置き方も絶妙。
その場がパッと明るくなる上に身体が雄弁に語り、決闘やティボルトをからかう、また乳母との掛け合いといった
お茶目に踊る場面も上体や脚先に至るまで美しさを維持していた点にも目を見張り、トゥールーズで古典からコンテンポラリーまで、ありとあらゆる作品を長年踊っていらっしゃる経験が窺えました。
ヌレエフ版の古典の経験を重ねるとアレグロの脚の強さ美しさが鍛えられるのであろうとも想像しつつ観察。
ちなみに金子さん、料理人な一面もあるそうで、2年ほど前のアーキタンツブログでの舞台写真(ガラと思われるヌレエフ版シンデレラパ・ド・ドゥも)の他
巨大なローストチキンの写真が下に敷かれた彩り豊かな野菜も含めて美味しそう。仲間と共同でSNSに投稿なさっているようで、どうぞご覧ください。

ティボルト軍団には京都バレエご出身で現在は新国立で活躍中の西川さんや菊岡さんの姿もあり、鋭い存在感を見せてくださいました。
京都バレエ団においてもここ数年は例年通りな公演ができず、久々に主要役、指揮者、指導者揃ってフランスからの招聘公演の実現を目にできたのは幸いでございました。





初めて貴船神社へ。駅からバスは出ているが混み合っていたため徒歩で移動。灯篭が並ぶ名所、赤が鮮やか。



川のせせらぎに耳を傾けながらいただくお素麺と鮎の塩焼き、グラスの日本酒。
初めて真夏に訪れた京都、束の間の涼を満喫です。



ロームシアターテラスからの景色。夏空です



帰り、京都駅新幹線改札近くの通路沿いで見つけふらりと入店イタリアン。赤ワインで乾杯。



前菜の盛り合わせがキャピュレ家の色で整っております。
複数人で取り分けてちょうど良さそうな量でしたが空腹であった管理人、1人で美味しく平らげました笑。



九条ネギとシラスのピザ。これまたトマトソースの赤がたっぷり凝縮、そして九条ネギの優しい苦味がよく合っています。
生地は薄め、1人でも難なくいただけました。



イタリアンのお店と同じ通路にて出店していたカヌレ店にて好物のピスタチオ入りを1個購入。
1個であってもお洒落な箱に詰めてくださり、トリコロールリボンを手にぶら下げて歩くと募る妙な優越感笑。
パリと京都が東海道新幹線のテーブルでも共演、京都バレエ団公演の余韻に暫く浸っておりました。
丈夫で綺麗で長めのトリコロールリボン、『パリの炎』でも役立ちそうです。
踊るならばフランス革命についても再度入念に学ぶ必要がありそうですが、その前に踊るわけございません。
踊ればズンドコドッスン、幼少期から芸術は鑑賞と座学が性に合っている管理人でございます。
それはそうと、さらば京都また会う日まで!!

2022年8月23日火曜日

モルダウと立ち上がる民衆 谷桃子バレエ団『レ・ミゼラブル』 8月10日(水)








8月10日(水)、谷桃子バレエ団『レ・ミゼラブル』を観て参りました。
https://www.tanimomoko-ballet.or.jp/ticket.html

高部尚子監督へのインタビュー。作品の見どころや掘り起こし作業、配役のお話等たっぷりと語ってくださっています。
https://spice.eplus.jp/articles/305799






演出振付選曲:望月則彦
ジャン・ヴァルジャン:今井智也
ジャヴェール警部:三木雄馬
コゼット:山口緋奈子
ファンティーヌ:馳麻弥
マリユス:檜山和久
エポニーヌ:竹内菜那子
テナルディエ夫妻:市橋万樹   山田沙織
ミリエル司教:小林貫太
バチスチーヌ嬢:永井裕美
マグロワール夫人:古澤可歩子
アンジョラス:吉田邑那
ガヴローシュ:松尾力滝


ジャン・ヴァルジャンの今井さんは生来のすっきりしたお顔立ちからは到底想像がつかぬ生死を彷徨う極限状況での荒んだ表情や老いた容貌も違和感なく
長い年月を経た時間経過をごく自然に体現。三木さんの冷徹なジャヴェール警部の黒い光も悍ましく、
立って帽子に手をやり顔を客席に向けるだけでも冷ややかさが背筋を伝う迫力でした。
竹内さんの男前で潔いエポニーヌも嵌まり役で、武器を手にした立ち姿に惚れ惚れ。

マリユスの檜山さんであったか、階段転げ落ち演出も仰け反り(ミュージジカルのSHOCKにて堂本光一さんが毎度行い話題になっている演出と同じ?)
怪我がないか背中を痛めないか心配にもなりましたが、何事もなかったかのようで身体の強靭ぶりを確認です。

迫り出し舞台の形も効果的で、2階で観ていてもより立体感が現れていた印象で
両脇に階段のある橋の形をした装置は終始そのままに時には彷徨うジャン・ヴァルジャンの道のりとなり、或いは革命の激闘地にも化したりと状況に応じて変貌。
照明の妙技も光り、各人物の姿形のみならずじっくりと心理部分にも焦点を当て、
舞台に2人程度の静かな場面においても沸き上がる感情をぽっかりと浮かび上がらせる効果をもたらしていたかと思います。
2幕では民衆達の見せ場としてスメタナ作曲の『モルダウ』使用の群舞に驚くも、地底から盛る民衆達の叫びが舞台を覆い尽くし
この曲を耳にするとすぐさまプラハの風景が再生されてしまうはずが今回ばかりは
熱を帯びて行く曲調と困難に屈せずに立ち上がる人々の行動が丁度良く重なり、賛否両論あるとは存じますが面白味あるセンスと感じさせました。

大変お恥ずかしい話、私自身が作品のあらすじや登場人物の知識が皆無に近く、嘗ては帝国劇場にて島田歌穂さん出演回のミュージカルも鑑賞していながら
いったい何を観てきたのか疑念を抱かざるを得ないわけですが、音楽もがらりと異なる望月さん版のバレエも興味を誘う演出でした。
予習をしっかりした上でもう1回観てみたい作品ですが、予備知識無し同然に観ても、『民衆の歌』は演奏されなくても
音楽や照明にも導かれるようにして舞台中央へ座席ごと引っ張られていくかの如くパワーに覆われた心持ちとなりました。





会場最寄駅の1つ、フランスのお肉屋さんビストロな大門駅直結のお店にて赤ワインで乾杯。
平日のみ営業でしたので行く機会がなく、やっとこさ来店です。



名称、鹿肉のラグーソースのリガトーニグラタン仕立てブルーチーズソース。
濃厚にチーズが絡み、重ための赤ワインが進みました。
平日のみ営業が惜しまれますが、味も値段も満足がいく、帰りも便利な立地ですので(改札の目の前)機会あればまた訪れたいお店です。

2022年8月18日木曜日

パルテノンの夏 エチュード・バレエ・アカデミー バレエフェスティバル 8月9日(火)《多摩市》





8月9日(火)、パルテノン多摩にてエチュード・バレエ・アカデミーバレエフェスティバルを観て参りました。初めて鑑賞する教室の舞台です。
足を運んだことのある方によれば、『海賊』全幕を上演したときもあったとのこと。
http://www.etude.gr.jp/

バレエ・コンサートと『コッペリア』全幕(2幕3幕は休憩なしで続けて上演)なかなかの盛りだくさん舞台で、ゲストも複数のバレエ団から招いての上演でした。
我が目玉はまず新国立劇場の渡邊峻郁さんが『シルヴィア』パ・ド・ドゥにご登場。スタジオ出身で今春に牧阿佐美バレヱ団に入団された
新国立劇場のイーグリング版『くるみ割り人形』初演時には子役として出演されていた門脇紅空さんと踊られました。
お2人とも白系の衣装で纏められ、小柄な門脇さんはいたく愛らしく軽やかで丁寧。
渡邊さんは間延びしがちなアダージオもたっぷりと大らかに音楽を受け止めながら滑らかにサポートされ、
ヴァリエーションも次々と繰り出される着地している時間が短い振付を晴れやかにこなされこの日の天候以上に抜けるような爽やかな青空彷彿。
そして元がギリシャ神話を題材にした作品であるためか再び思う会場名の由来、一応外観もそれらしい形状ではあるが多摩センターにパルテノン。
振付は恐らくバランシン版参考と思われ、8月4日に引き続き私の中の38年前のABT名盤ハメル&ビッセルの映像が脳裏を通過していったものの
渡邊さんで拝見したいと願ってきたパ・ド・ドゥの1本でしたから幸いなる多摩の夕刻でございました。

『パキータ』には新国立劇場の柴山紗帆さん(スタジオで講師も務めていらっしゃるとのこと)と渡邊さんがタイトルロールとリュシアン役でご登場。
かっちり規範を守る技術を持ち、ぱっと華やぐ品位あるお2人で白地に赤い花が彩られたチュチュが艶やかに決まった柴山さんと
上は黒(ボレロと呼ぶのか?)、下は白な衣装の渡邊さんはじっくりと溜めに溜めた後にコール・ドの整列に沿って歩み出てくる
対角線登場(これ大事。さまになっていなかったら管理人、心は閉店作業に突入です笑)も
周囲に赤薔薇が見えてくる凛々しい軍人ぶりで整った横顔もああ美しや。
生徒さん達は紅色に近かったか濃いめの赤い衣装で、ヴァリエーションの見せ場も増やしつつよく息のあったコール・ドでした。

『コッペリア』全幕の3幕はスタジオ出身の新国立劇場多田そのかさんが優美なスワニルダ披露。頭小さくほっそりとした身体から麗しい香りを放ち、
結婚式に臨むもコッペリウスの大事な人形コッペリアを壊してしまったことを憂える表情は1、2幕から出演していたかと思わせる表現。
全編通してフランツは木下嘉人さんで、コンサートで黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥを踊られた後に全幕フランツ
しかもヴァリエーション1個追加版を(プティ版を参考にしたのか1幕にて戦いの踊りの音楽でフランツが踊る演出)踊りも芝居も上質なレベルで見せ、恐れ入るばかり。
祈りの音楽でコッペリアとコッペリウスが踊る場を挿入したりと独自な演出も盛り込んだ全幕でした。
なかなかの長丁場でしたが、発表会での『コッペリア』は1幕のマズルカとワルツと3幕合体型なる演出でしか経験がない私からすると、全幕挑戦は羨ましい限り。
スワニルダとの大慌てなコッペリウス宅侵入を始めドタバタ騒動や、絵本に出てきそうな可愛らしい装置
コッペリウスの家の内装、美術に触れられるのは全幕ならではでしょう。最後まで楽しみ、帰途につきました。



早退し、特急橋本行きでぶらり京王線の旅へ。到着するとサンリオピューロランドなお出迎えで、多摩センター駅はキャラクター達の絵で溢れています。



パルテノン多摩外観。うう、雲ひとつない夏空が広がります。一瞬アクロポリスに身を置いた気分になりかけたが東京都多摩市です。



なかなかの長丁場でしたが楽しみました。甘酸っぱく爽やかなサングリアで乾杯。



チーズリゾット。複数種のチーズがよく馴染んでいてサングリアも進みます。
まだ8月は始まったばかりです。

2022年8月16日火曜日

【お茶の間観劇】GGGガチョーク讃歌プロジェクト  8月8日(月)

大阪国際交流センター開催されたGGGガチョーク讃歌プロジェクト8月8日(月)公演を配信アーカイブを視聴いたしました。
https://ggg-26.jimdosite.com/

ダイジェスト動画がございます。どうぞご覧ください。




ガチョーク讃歌

何処か鬱々とした重たく憂愁を帯びたピアノの音色で「プエルトリコの土産」が始まり、
薄暗さかから徐々に明るくなりつつ、静止し立ち並ぶダンサー達のシルエットが浮かびながら開幕。
リードを務める佐々木須弥奈さんがしっとりされどしなやかに歌う身体が要所要所を締め、アンサンブルの方々の腰の入れ方や身体の傾斜ポーズ、
音楽への身の委ね方にも迷いがなく、リモートではあっても現振付家からの指導の成果が窺えました。
それにしてもガチョークを観るたびに思うがこのゆったりシャツの下に女性はスカートとパンツの組み合わせにしたデザインは
どなたの提案であったか気になるところ。お洒落でユニークであると毎度感じております。

やや重たく静かな雰囲気で覆われていると、続いて「ある詩人の死」。ピアノを中心に、心地良く世の中の全てが浄化されそうな潤いに満ちたワルツです。
米沢さんが瑞々しさを全身の隅々から放ち、福岡さんと互いを愛おしむように踊る姿が美しく
時折とびきり可愛らしさも覗かせ、空間を大きく描きながら流れるように舞っていた印象。
福岡さんは前髪がしっかりとあったためか意外にも!?少年な風貌がピュアな要素を後押しし、加えて穏やかなサポートも宜しうございました。
音楽を聴くだけどうしても山本隆之さんの印象が真っ先に過ぎる役で(西日本各地で拝見した日々を思わず回想)
目を光らせて観てしまう役ながら安心感を持たせてくださったのは福岡さんの長年の積み重ねを思わせるどんと構える器の大きさがあるからこそでしょう。
衣装はブルーですがこれまで観たこの曲での衣装の中では最も渋めな濃さで水色に近い色の印象があったため
驚き新鮮に映りましたが、米沢さん福岡さんお2人にしっくりお似合いでした。

最たる速度で賑やかなトーナメントギャロップは女性3人の阿吽の呼吸が不可欠なパート。
突如脚を振り上げたりと腕をブンブン振り回したりとアップダウンの激しい振付であっても
決して乱雑に見えないのは、お三方揃って抜群の身体能力と制御力の持ち主である証でしょう。
特に佐々木夢奈さんの場を明るく導く太陽の如き存在感と細胞の節々まで笑みを湛えているかのように弾む踊り方に引き込まれました。
今月末に西側にて舞台姿を拝見予定、楽しみにしております。

サバンナは当初予定されていた菅井円加さんから下村由理恵さんに変更。(菅井さんはガラのBプログラムにはご出演)
物憂げな眼差しからやがて深い情念すら滲ませ空気を一変させる下村さんのオーラと
揺るぎない技術、軸の強さに目を再び見張り、年齢不詳な魅力を再確認。短時間で1人の女性の人生を切々と体現されていました。

そしてガラリと曲調変わってバナナツリー。従来のこのパートの印象よりだいぶ綺麗目な趣きでしたが
(嘗て観た福岡さん福田圭吾さんコンビによる吉本興業も仰天な鉄板の笑いが基盤になってしまったと思われる)
佐々木嶺さん山口浩輝さんがコミカルに品を崩さず人間ゴム毬や知らぬ間の馬跳びに至るまで披露。
最後瞬く間にフィナーレのマンチェイガーに突入し、出演者が徐々に舞台上に勢揃いし
名物ともいえる手を繋ぎ輪になったダンサーの腕に絡んで女性がしがみ付き力強い遠心力でぐるぐると回る遊園地のアトラクションの如き振付も沸かせました。
実は大阪にてある年に鑑賞したとき、しがみ付いた女性がなんと舞台の隅っこに飛んで行ってしまった事件が発生し(何事もなかったかのように本人は踊っていましたが汗)
スリル満点な振付でございます。舞台中央のみならず上手側では福岡さんが米沢さんの頭を下に、脚は垂直に上に伸ばした体勢にして持ち上げたままくるくると回転。
この振付を初めて目にしたとき、会場が大阪であった影響か、人生初の関東外でのバレエスタジオの舞台鑑賞であった興奮からか
通天閣リフトと名付けた15年前の私をお許しください笑。それだけ持ち上げる側も上げられる側もほぼ垂直で高々な状態なのです。
音楽が最高潮に達する中で対角線上を突っ切って跳躍を繰り返しながら舞台袖へと入り、幕が下り高揚感がなかなか落ち着かぬ幕切れでございます。

関西圏では度々上演されていて馴染み深いであろう作品を今になって公式上演への踏み切りは代表の春田琴栄さんにとって勇気ある決断であったと思います。
またガチョークのみならず前半にはガラも用意し、初日には著作権が厳しい矢上恵子さん作品も配信にて堪能できたのは満足度高く
2年前のKバレエスタジオ公演にて矢上恵子さんによるコンクール作品集にて鑑賞して以来、
また翌年2021年のバレエカレッジにて恵子先生の愛弟子達大集合の講座でも取り上げて詳しい解説をしてくださったFROZEN EYES〜凍りついた目〜は
もう一度観たい作品でしたので今回の上演は誠に喜ばしい限り。
目が狂おしく物語り抜け殻状態であっても壊れた心の内を巧みに表現する佐々木夢奈さんの危うさを秘めた踊りが刻まれております。
そういえばこの作品初演は田中ルリさんと、佐々木3姉弟のお父上であり、プロジェクトのバレエマスターを務められた佐々木大さんであったと思い出したのでした。

観客としてではありますが、今や地下鉄路線図を見ずにさっさか移動も出来るほど
まずまずの土地勘は身についた大阪での初バレエスタジオ舞台の鑑賞時に出会った思い出深い作品の公式上演に東京から嬉々として拍手をお送りいたします。
2014年には東京国際フォーラムで開催された一部分のピアノソロ演奏にも足を運んだ日も思い起こされます。
今回の配信ガチョークでは時々親戚面もしながら月曜日公演のみのある出演者の見守り隊員もついしてしまいましたが笑、公演の成功を心から讃えたいばかりです。


2022年8月14日日曜日

3年越しの夢も叶ったバレエ年代記を捲る構成  バレエ・アステラス2022 8月6日(土)7日(日)




8月6日(土)7日(日)、新国立劇場にて毎年恒例のバレエ・アステラス2022を観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/asteras2022/




終演後の集合写真



昨年のカーテンコール写真もあり。格調高くも逞しい質感も備えた愚直騎士、懐かしい。他投稿に池田さん渡邊さんインタビューや写真も。


『海賊』パ・ド・ドゥを控えた新国立劇場の池田さん渡邊さん。
映像に向かって何度手を振ったか数知れず笑。うう、腹筋が眩しうございます。



今年からか、出演ダンサーと所属の劇場を背景にした顔写真付き画像と共に紹介する投稿がされていました。
せっかくですので、夜景版新国立劇場がいたく綺麗な映りですので(真の理由は別にあるのでしょうがと言われるのは承知しておりますが)1つ紹介。
ああ、夜空にも美しく神秘的に映えますのう見返り美男。



※プログラム、キャスト等は新国立劇場ホールページをほぼ参照。順序は初日に沿って綴って参ります。

※作品の詳細、是非お読みください。出演者による紹介文も掲載されています。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet-dance/news/detail/77_023799.htmlああ


『トリプティーク~青春三章~』
振付:牧 阿佐美
音楽:芥川也寸志
出演:新国立劇場バレエ研修所 第18・19期生、予科生
作品ゲスト:仲村 啓 (新国立劇場バレエ団・研修所第14期修了)、石山陸(牧阿佐美バレヱ団)※渡邊拓朗さんから変更
賛助出演:服部由依(研修所第16期修了)、菅沼咲希(研修所第17期修了)、根本真菜美(研修所第17期修了)

前日に渡邊拓朗さん降板が発表され、石山さんが急遽投入。身のこなしも無駄がなく滑らかで、仲村さんの余裕のあるクリーンな優雅さも大変好印象でした。
女性は膝丈で整えたシンプルなワンピース型衣装、男性はふわりとしたシャツのクラシカル系。
芥川さんのこの和洋折衷な物哀しい調べを帯びた曲が好きで、何度も観ていながら生で音楽を聴けたことも大きな喜びでした。
森山開次さん振付NINJAの一員に抜擢され話題を呼んだ中川さんの物怖じしない堂々たる踊り方も良き発見。
牧さんの初期の頃の作品ながら整然とした並びからの変形フォーメーションを眺めていると今も古さを思わせず。
そして今回ようやく気づいたのは、牧さん版『くるみ割り人形』での葦の精の振付にあったややこしい一斉フェッテはこの頃から牧さんのお好みであったもよう。



『コッペリア』第3幕よりパ・ド・ドゥ
振付:アルチュール・サン=レオン
音楽:レオ・ドリーブ

『サタネラ』よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:チェーザレ・プーニ

出演:ムーセーニュ・クララ(パリ・オペラ座バレエ)、アクリ・瑠嘉(英国ロイヤルバレエ)

ムーセーニュさんはコッペリアではだいぶ緊張されていたご様子でしたがとても丁寧なパで初心で可愛らしいスワニルダを踊られ、紹介文にもある通りパリ・オペラ座で新調したロマンティックチュチュお披露目も嬉しい限り。
アクリさんもやや硬さが見られながらも、結婚式に臨む幸せな青年らしくムーセーニュさんとの目の交わしも微笑ましく、ソロやコーダの力強い疾走感も宜しい印象。
お2人の掛け合いがより花開いたのは『サタネラ』で派手な誇示はせずとも安定した技術から繰り出す
色づく笑みで魅了するムーセーニュさんと、みるみると虜となっていくアクリ青年のパートナーリングがとてもお茶目に映りました。



『Walk the Demon』
振付:マルコ・ゲッケ
音楽:アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ
出演:刈谷円香(ネザーランド・ダンス・シアター1)、ルカ=アンドレア・テッサリーニ(ネザーランド・ダンス・シアター1)

よくぞ取り入れてくださったと唸った作品。恥ずかしい話NDT公演は16年前に鑑賞したきりでレパートリーの知識皆無で鑑賞するも
刈谷さんの肉体の高速躍動に驚愕し、テッサリーニさんと一緒に発する息遣いですら空間や音楽を精密に包んで不思議な面白みを拡張。



『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付:ジャン・コラリ/ジュール・ペロー
音楽:アドルフ・アダン

『La Pluie (the Rain)』
振付:アナベラ・ロペス・オチョア
音楽:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ

出演:ジェシカ・マカン(ピッツバーグ・バレエシアター)、中野吉章(ピッツバーグ・バレエシアター)

マカンさんのジゼルはやや貫禄があり過ぎたか、されど脚捌きは鮮やかで目を見張り、中野さんアルブレヒトは懺悔が指先からも伝わる熱演。
La Pluie (the Rain)のほうがお2人の本領発揮な作品で、至極簡素な衣装だからこそ削ぎ落とされた状態からゆったりと紡がれる愛情がぽっかりと浮き立ち
マカンさんの斜めに傾けた身体や支える中野さんの体勢に至るまですっと透き通るような美が備わっていた印象です。音楽はバッハのゴルトベルク変奏曲。



『カルメン』よりパ・ド・ドゥ
振付:ローラン・プティ
音楽:ジョルジュ・ビゼー
同名オペラより編曲・オーケストラ編成:デヴィッド・ガルフォース
出演:石崎双葉(バレエ・アム・ライン)、ダミアン・トリオ(バレエ・アム・ライン)

欧州のバレエ団で日本のダンサーがこの役を踊っていることにまず驚き(勉強不足で失礼)、蠱惑的なパワーが前面に出過ぎている感も否めずでしたが
気づけば石崎さんの有無を言わせぬ色気に見入り、トリオさんのスラリとした体躯もなかなか宜しく絵になっていたと思います。
生ではフェリで、写真ではラカッラ、カルフーニ、ジャンメールと歴史に残るであろう名ダンサーの写真も過ってしまうため厳しい見方にはなってしまいましたが
バレエ・アム・ラインのレパートリーにあることを知り、石崎さんによる披露を目にできたのはアステラスだからこそ。



『エスカピスト』よりクラシカル・パ・ド・ドゥ
振付:アレクサンダー・エクマン
音楽:ミカエル・カールソン
出演:佐々晴香(スウェーデン王立バレエ)、アンドレア・マリーノ(バイエルン国立バレエ)
チェロ独奏:岡本侑也

マリーノさんを探す佐々さんのよく通る美声から奇抜な展開になるかと思いきや、巨大な白いカーテン中央から顔を覗かせる佐々さんが誠にチャーミング。
黒チュチュと黒く長いゆったりめパンツの組み合わせが粋で、マリーノさんと共にチェロの音色に溶け入る踊りにも釘付けでした。



『On the Nature of Daylight』
振付:デヴィッド・ドウソン
音楽:マックス・リヒター

『グラン・パ・クラシック』よりパ・ド・ドゥ
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール

出演:奥村 彩(ベルリン国立バレエ)、アレクサンダー・カニャ(ベルリン国立バレエ)

今や大人気なリヒターの曲に振り付けられたOn the Nature of Daylightは何処かで聴き覚えのある曲調でしたが
光を纏いながら組み立てられていく奥村さんとカニャさんの肉体の展開が飽きさせず。
グラン・パ・クラシックは様々なダンサーで観ているせいか、また表現云々よりも卓越した技術が不可欠で
ガラでやるなら一切の揺らぎも許されぬ作品と思い込んでいるせいか辛口評価ではございますが
奥村さんはびしっと決めるべきところは決め、群青色なグラデーションチュチュもお洒落。



『ライモンダ』より夢の場のパ・ド・ドゥ
改訂振付:牧 阿佐美
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
出演:奥野 凜(ブカレスト国立歌劇場バレエ)、ロベルト・エナケ(ブカレスト国立歌劇場バレエ)

今年4月にブカレスト国立歌劇場で牧さん版『ライモンダ』初演は喜ばしく、雑誌『クララ』2022年7月号でも特集がなされ
奥野さんや芸術監督のインタビュー、指導として西川貴子さんが現地入りしていたレポート等写真も豊富に掲載されていました。
監督によれば、ルーマニアでのライモンダ全幕上演は初と語っていたかと記憶。
抜粋ではあっても牧さん版初演地でのお披露目に最も喜んでいらしているのは空から見守っていたであろう牧さんかと思います。
衣装はだいぶ異なり、ライモンダは薄いブルーに金色の模様、ジャンの上半身は青のベルベット。
奥野さんの全身がよく伸びる踊りで、いつ観てもしっとりと叙情的な振付です。



『ロメオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:平田桃子(英国バーミンガム・ロイヤルバレエ)、平野亮一(英国ロイヤルバレエ)

バーミンガムとロイヤル、国は同じでも違う団に所属するペアはいかに表現するか楽しみでございました。
平田さんは折れそうに華奢であってもロメオへの愛が充満して突っ走る勢いが恋に恋する少女、
平野さんはロメオにしてはだいぶ濃さが目立ってしまったか、ただロメオやアルブレヒトもそうですが
自身の好みがはっきりとしている役柄ですとなかなかしっくり来るのは困難なのかもしれません。
(爽やかロメオが好みな管理人。咄嗟に浮かぶのは2人限定でございます。身勝手で失礼)
2日目はリフトで上がり切らなかった箇所があり円熟期に差し掛かり踊り込んでいるお2人でも非常に高難度な振付であると再確認です。
それよりも2日目は序盤から演奏が迷走してしまい、私ですら冷や汗でしたから演奏者の方々はどれだけ不安な心境であったかと推察。



※以下、非常に長くなります。水分補給をどうぞ。

『海賊』よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:リッカルド・ドリーゴ、レオン・ミンクス
出演:池田理沙子(新国立劇場バレエ団)、渡邊峻郁(新国立劇場バレエ団)

2019年に武蔵野市(会場最寄駅は三鷹)と浦安市の発表会で渡邊さん海賊を鑑賞以来、武蔵野市ではヒヤリ箇所がありましたが
浦安市での単なる超絶技巧お披露目大会にならずメドーラへの忠誠ぶりや視線の運び方、腕の使い方と言いソロでのギラリとした射抜く眼つきといい全幕の厚みを思わせ
これは浦安市の発表会限定では勿体無い、いつか必ず初台での披露を!と夢見ておりました。
この日平日も行列が絶えなかったであろう浦安市の会場にも近い東京夢の国にて人気を誇る某乗り物目当ての乗客を、
カリブではなくギリシャだがジャック・スパロウより素敵ですぞと、こちらの海賊へどうぞと引き連れてきたかったほどでございました。
渡邊さんは新国立では王子貴公子系の役が多かったためか『海賊』を観た、野性味や色気のバランスも絶妙であったと周囲に話しても時には信じてもらえず笑
トトロやネコバスの目撃主張では無く鑑賞した事実説明が納得に至らないのは私の信頼度が欠乏していると悟ったものですがそれはさておき
しかし翌年2020年のニューイヤー・バレエに『海賊』があったものの3日間全て同じキャストで配役されず、しかもNHKBSで放送。
オペラパレスの夢は諦めるべきかと項垂れるもいつかは必ずと願い、発表会から早3年。
世の中、日本が、世界がこんな危機的状況になっているとは当時は知る由もありませんでしたがそんな最中においても遂に叶いました。
今年のアステラス概要発表が5月で、何しろ3回連続出場も驚き嬉しいことで(紅白歌合戦か笑)
更には『海賊』の文字に、遂に3年越しの願いが叶う日が到来すると思うと体内の細胞が大暴れして発表当日の夜はサインはV状態となり、
仕事帰り都内の駅のホームに立っていても目の前が線路ではなくエーゲ海にしか見えていなかった管理人でございます。

池田さんの出演も喜んだものの、2018年の『シンフォニー・イン・C』第三楽章において共演されていましたが最も溌剌とした楽章ながら
正直パートナーシップに幸福ぶりが感じられず、2人の間には今や何処にでも目にする仕切り板があるかと見紛う舞台でしたからやや心配があったのは事実です。
しかし年月を経てキャリアも積み重ねられ、今回はそれはそれは壮大な物語を思わすペアとして出現。作品紹介記事でもよく話し合いながら作るとお2人口を揃えていらっしゃいましたから
方向性もぴたりと合致していたのでしょう。特に視線の交わし方がインC時と同じお2人とは思えずでした。
池田さんのメドーラ技術が冴え気品も湛え、幸せな表情のみならず2日目はより色っぽさも香らせ、これまでに観た池田さんの中で最も美しい瞬間に触れた気分。
涼やかなエメラルドブルーの衣装も似合い、パ・ド・ドゥのメドーラは(全幕ではトロワか)は基本クラシック・チュチュ派ですが、
今回に限っては風に乗って靡くスカートが目にも歓喜さえ与え、太陽に照らされて反射光のように輝く金色の装飾にもうっとり。
新国立劇場嘗てのニューイヤーでも使用されていながら響かなかったのは何故であろうかと自問自答の日々が続いております。

渡邊さんは今回も単なる超絶技巧大会になっていない点やひたすら深々お仕え度の深さも花丸な、品格から野性味や色気も滲ませ全幕の世界を体感させるアリ。
登場時の舞台袖からの滞空時間と飛距離長き跳躍や客席4階隅々まで見渡しながら駆けていくさまからしてスケールが大きく、
ただガンガン飛ばすのではなくきちんと纏め上げつつも時折大技も含ませそういえばこれまた3年前の夏の八王子発表会での魔王役以来であろう
当時は床スレスレで大冷や汗であった540も余裕の尺度で一安心。順番諸々前後いたしますが
ソロの低姿勢からの下克上狙っていそうなギラリと射抜く野心も覗く視線や豪胆さを秘めた色気に
ああこれが観たかった初台の観客の皆様にもご覧いただきたかったと我が興奮の制御は最早不可能でございました。
よく歴史浪漫小説でも題材とされやすいか、私が読んだ書籍に限ってか分かりかねますが
滅亡した王家の末裔が復讐心を秘めて奴隷として海賊船に乗り込んだ、或いは奴隷として売られた高貴な血が流れる海賊に見て取れ、
私の周囲の方も仰っていましたが浪漫や幻想を掻き立てるアリでした。
品位はあっても弱々しさはなく、鋼のような強さや不屈な逞しさがあっても荒っぽさは抑えた、奥行きある人物造形をなさっていたと見て取れます。

それからもう1つ、不安材料であったのが衣装。歴代新国立ニューイヤーを辿っていくと恐らくは皆胴体に網網付きで、昭和のコンクール云々不満を漏らしておりました。
ミケランジェロが生きていたら彫刻刀或いは絵筆を持たずにいられぬだろうせっかくの肉体美の持ち主に網網は不要と願ったものの
前日公開されたご来場促進映像に、ああ網網、と肩を落としかけたのも束の間。よく見ると、ただの網網ではなく
騎士の鎖帷子とまではいかずとも随分と精巧な作りで似合うではありませんか。人間とは誠に身勝手な生き物であると再確認です。
そして頭飾りの中央には水晶のように、いや、呪文を唱えたときに輝く飛行石のような物の装着も初めて知り、そうか高貴な血を引いている証であろうと
先日金曜ロードショーで放送された管理人が全台詞ほぼ暗記の映画『天空の城ラピュタ』を視聴し
塔に閉じ込められていたときに発した長い呪文も、バルスのタイミングも心得て唱えつつ再度解釈した次第でございます。



〈フィナーレ〉出演者全員
恒例のグラズノフのポロネーズ。格調高く高揚する旋律にのせて出演者達がひと踊りするこのフィナーレもアステラスの楽しみの1つです。
刈谷さんらがポロネーズにもゲッケ振付を嵌め込んで挑んできた様子に思わずニンマリ。
昨年初日のような開演直前に書類持った職員入場もなく作品何本もカット状況にはならず、無事全作品上演できたのは幸運でした。
降板された渡邊拓朗さんも、その後は無事復帰できそうでその点も安堵でございます。
帰国系ガラが増えてきた今、置いてきぼりにされる心配も募っていたアステラスですがこれまでで最も様々な時代の作品や振付家を取り入れた見応えある構成でした。




いざ、初台の海へ出航。浪漫の旅へ。



さあ、この後もスプマンテ以上に爽やかなアリを観るのだ。



気持ちだけはメドーラなカクテルで余韻に、お許しください。燕よりもふわっと助走もほぼなく飛翔するアリを、つば九郎も観たがっていたようです。

2022年8月10日水曜日

新たな世界を覗きに恵比寿へ BALLET theNewClassic 8月5日(金)




8月5日(金)、恵比寿ザ・ガーデンホールにてBALLET theNewClassicを観て参りました。
https://www.balletthenewclassic.com/


実のところ、恵比寿ガーデンプレイスは存じていながらホールの場所は今回初めて知り、随分とお洒落な立地にまず驚き、
初日とあってか加えて公演の特徴からかファッション関係者と思わしき方々が多数来場。場違いな自身は尻込みしかけておりましたが笑、開演すれば観客は全員舞台を堪能する者同士。
モード系とクラシックを融合したような衣装が物珍しさを超越して構造や細かな部分まで興味が沸いて観察したり
モノトーンを基調とした近未来風な照明の空間に身を置き、2017年11月末の伝説の東京タワー横のスタジオ事件ほどではないが
出演者を間近で鑑賞でき、予想以上に満足度の高い公演でした。舞踊監修はKバレエカンパニーの堀内將平さん、衣装は幾左田千佳さん、
ヘア/メイクはKENSHINさん鷲巣裕香さん、演出は梅田亜希子さん、宣伝美術は石井勇一さん、企画は井上ユミコさんです。

開演すると少しずつ交互に光が照らされ、下手側にて滝澤志野さんによるピアノ演奏が開始。
上演される作品それぞれの音楽の聴きどころを抜粋し繋げた編曲で、1台で管弦楽曲並に多層な調べを奏でながら優しく導いてくださいました。
幕開けは『眠れる森の美女』ローズ・アダージオ。衣装もポワントもピンク色の水谷実喜さんがそれはそれは可愛らしい笑みで登場され、闊達なステップを披露。
衣装も斬新ながらローズアダージオのオーロラ姫であるイメージはそのまま踏襲。早速衣装構造の観察に夢中となりました。
序盤、照明が白過ぎた気もしたものの角度の影響であったかもしれず、後半は気にならず。
求婚者達は全員黒スーツでゆったりめのパンツ、胸元には白い薔薇を差し、シックな装い。
薔薇が白であったのは色のバランスを考慮した結果かと思われますがシックな趣きとなって表れ、これはこれで良きデザイン。髪型はオールバック路線

続いて菅野茉里奈さんのソロ作品HOMEM。背も高く筋肉しっかりな体躯で自在にダイナミックに躍動するさまやオレンジであったか色味のアクセントも目に留まり
シェヘラザードでは横山瑠華さんと堀内さんが黒系衣装で整え濃密さはほんのり程度に、スタイリッシュでクールな味を出して披露。
横山さんの人を容易には寄せ付けぬ高嶺の花なゾベイダにうっとりです。以前バレエアステラスに出演され
軽やかさが香り立つシルフィードを踊られた横山さんは気になるダンサーの1人に加わっておりましたので再び鑑賞でき幸運でございます。

秋山瑛さん、池本祥真さん、太田倫功さんによるMoment in Timeは秋山さんが軽快で力み皆無、次々と繰り出す四肢のしなやかさに驚嘆。
加えていたく細身ながら痛々しさを全く感じさせないのは心から喜びを出して踊っている姿がそれはそれは眩しく映るからこそでしょう。
少し装飾を加えたレオタードな衣装もお似合いでした。
『ジゼル』では一見ウエディングドレスのような衣装で、繊細な素材を思わず観察。
結婚が叶わなかった娘達のせめてもの願いが込められたのであろうかと想像が巡りますが
森田愛海さんのフォルムがより綺麗に見え、ふわりと靡くチュールが優しくも寂しげな残像を描く効果もあり。
森田さんは長身なファッションモデルのような体型にも驚かされましたが、別世界に行ってしまった触れたくても触れられぬ精霊として捉えると納得。
高野陽年さんの、白いロミオ風な衣装のアルブレヒトのすっと伸びた線やひたむき懺悔(褒め言葉)、
滝澤さんの振り幅広くドラマティックに奏でるピアノ演奏も印象に刻まれております。

中村祥子さんの『瀕死の白鳥』は腕と肩甲骨が連動し流線描く筋肉の動きに目奪われ、
衣装は奇を衒う風味は抑えるも中村さんの研ぎ澄まされた身体の美しさが引き立ち眼福。
第1部最後を飾った二山治雄さんのボレロは高野譜希子さん振付。コンテンポラリーを踊るお姿を観るのは2014年5月以来久々で、
噂に聞いていた通り可動域の広さや柔軟性、バネの力にも仰天。ソロで踊るとコケやすい(失礼。苦行に近い駄作を目にしたこともあるため)
ボレロでダレず惹きつけたのは、好みは別としても評価に値すると思っております。


『ライモンダ』より抜粋

プログラム内容について後日話題となった時、目玉は出演者全員による「みんなで踊ろうライモンダ」と口走ったところ
盆踊り大会かいと知人から突っ込まれましたがそれはさておき、3幕はしばしば抜粋上演機会があるものの
1幕や2幕も取り入れている構成に、あらゆるバレエ作品や音楽の中で最も好きである者として誠に嬉しい企画です。
またガラといっても小作品やソロ、パ・ド・ドゥの羅列にとどまらず全員で1つのものを作るコンセプトも好感を持ち、今回足を運ぶ一番のきっかけとなりました。
幕開けから登場シーンとして中村さんが細かなパ・ド・ブレを紡ぎ、高貴で格高い姫っぷり。
1幕の設定ですから僅かな愛らしさも残して、ジャンの帰還をずっと待ち侘びているのであろうただ幸せだけでない哀感も微かに込められた登場ソロでした。
続いて中村さんを主軸にグラン・パ・クラシックのアントレとアダージオ、その後はあらゆる場面からの抜粋があり
特に歓喜したのは横山さんによる帰還のヴァリエーション披露。ホルン、オーボエ?、フルート、と主旋楽器が次々と変わり、これといって派手な技巧がないものの
いよいよジャンが帰還する嬉しさと久々に会うからかどこか恥じらいも含まれ、終盤は堂々格式高く終了。
あらゆるヴァリエーションで最も好きでございますが、同意見の方は東京都民に1人でいるかいないかの割合かと存じます。
横山さんが輪郭くっきりと美しい型を描き出し、格調高く堂々たる踊りで目にも心にも喜びを与えてくださいました。
締め括りはグラン・パ・クラシックコーダで、出演者全員が勢揃いですから圧巻。
物語性よりもライモンダの音楽でお洒落に団結した作風であったのも今回のコンセプトにはよく合っていると思わせました。

一風変わった、且つスタイリッシュな面白い企画公演で 購入時チケット代には仰け反りかけ迷いもいたしましたが、鑑賞でき新たな世界を旅した気分。
一度は中止となり、その事態を乗り越え開催できたこと、心より祝します。








テラス



撮影タイム



撮影タイム



帰り、恵比寿ガーデンプレイス横の静けさに包まれたくすのき通りを歩き、『ライモンダ』音楽を反芻しながら移動。
暑さが少し落ち着き、夜風を浴びながら辿り着いたこちら、
恵比寿に行ったときには訪れてみたかったお店へ。1人スパークリングワインで乾杯。



味わってみたかった、キャラメルナッツパンケーキ。ふわふわのクリームとほろ苦いキャラメルソース、ナッツもたっぷり。
テーブル上にはメープルシロップもあり、時々かけていただきました。健康診断終わったから良しとしましょう。
7月の3連休明けに受診し、結果異常なしの4文字。
鵜呑みにはしてはいかんとは思うが、(中性脂肪等本当に問題ないんか)これまで通り、アルコールや甘味も満喫だ!

2022年8月7日日曜日

大人の生徒同士で組む意義を学んだペザント 清水純子バレエアカデミー第39回発表会  8月4日(木)《東京都渋谷区》




8月4日(木)、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールにて清水純子バレエアカデミー第39回発表会を観て参りました。
ここ数年は毎回足を運び、楽しませていただいている教室の舞台です。
http://shimizu-sumiko-ballet.jp/

インスタグラム。発表会リハーサルの写真もあります。
https://instagram.com/shimizu_sumiko_ballet?igshid=YmMyMTA2M2Y=



オープニングは子供達大集合のMusical  World。ミュージカルの曲を組み合わせた可愛らしくお洒落な作品で
歌も知識もミュージカルに関して音痴な管理人でも(カラオケでの持ち歌は1970年代発売の某1曲しかございません)馴染みある曲もあり、楽しい気分。
皆はっきりとした色味のチュチュで揃え、水玉の傘を持っての『雨に唄えば』や黒いシルクハットを両手に『コーラスライン』等、
降雨が心配される天候を忘れさせてくれるほど、わくわく瞬く間に次々と披露し幕開けを飾ってくれました。

今回特に目を惹き白眉と唸らせたのは『ジゼル』よりペザント・パ・ド・ドゥで
発表会でパ・ド・ドゥと聞くと、男子生徒さんが充実している教室を除けば女性或いは女子生徒とゲスト男性が組むパターンが大半であろう中、
長年在籍されている大人の生徒さん同士の幸せに満ちたパートナーシップが秀逸で身体中からにこやかさを放出。
全幕と照らし合わせてみても収穫祭の場面の相応しく、きっと2人で葡萄園を営み味も絶品なワインを製造しているのであろうと容易に想像でき
プロアマ含めて何度も観ているパ・ド・ドゥですが、ここまで幸福度凝縮な踊りは初めて観た思いがいたします。
ヴァリエーションでもいきなりぶつ切りにならず、袖にいる相手を想うように、音楽を楽しそうに表現されていた点も好印象でした。

第2部は『眠りの森の美女』より第3幕。妖精パ・ド・シスも結婚式に到来させた、華麗なる式典がお目見えです。
嬉しかったのはオーロラ姫とデジレ王子が序盤に登場し来賓を出迎える演出が盛り込まれていた点で、
最後の最後にグラン・パ・ド・ドゥでやっとこさ登場ではなく主賓として佇み、もてなす場の取り入れは大事であると感じております。
妖精パ・ド・シスや宝石達の踊りが実に丁寧で脚を無理矢理振り上げたりといった妙な癖もない点に好感を持ち
先生方の指導や生徒さん達の意識が窺えます。パ・ド・シスはリラ以外も色が全て異なり(基本中の基本かと思いますが、聞いていますか新国立劇場笑)
ポップな模様が愛らしく映えるデザインも全員お似合い。私自身が経験した最初で最後のヴァリエーションが元気の精でしたのでついじっと観てしまうのですが
これといって起伏が無いに等しい曲調であっても生き生きと大きく踊っていた姿にああ感心。

そして芝居心が光っていたのは赤ずきんと狼。赤ずきんは3人体制で、時として単に生徒の人数や配役の都合で複数人数になったかと思ってしまうこともある中
3人いることで寧ろ赤ずきんの中に潜む好奇心や怯えがより明快に伝わり、何よりも3人の呼吸が抜群に合っていたからこそでしょう。
恐らくは小学校中学年頃の生徒さん達と思われますが、立派な舞台人です。
また狼さんが怖過ぎずされどぴりっと刺激も投入した塩梅が絶妙で、子供も大勢来ている発表会だからといっておっかな過ぎてもいけないですし
しかし緩くし過ぎると子供は飽きてしまう難しい役どころですから創意工夫を入念になさっていたと推察いたします。
赤ずきんの逸話といえば、現在ダンスマガジンに連載を寄稿されている新国立劇場バレエ団プリンシパルの米沢唯さんのお話で
米沢さんが深川秀夫さん振付の『眠れる森の美女』にて赤ずきんを踊った生徒時代、お父様と一生懸命練習された成果を
赤ずきんが面白いと思ったのは初めて、と深川さんがとても褒めてくださったと綴っていらした内容が
思い起こされます。清水アカデミーさんのチーム赤ずきんの結束に再度拍手です。

ナチュラル且つエレガントな魅力にうっとりしたのは猫ペア。変に可愛こぶると媚を売っているようにも見えてしまいがちな白い猫ですが
あくまで美しく優雅に、ほんの少し色っぽい目や仕草で見せていた点がお見事。
普段は猫脚のふかふかソファーで寛いでいそうで、キラリとした姫風のチュチュもたいそうお似合いでした。
長靴を履いた猫の石黒善大さんの造形も上手く、やり過ぎないが良き味を出す名手。背丈は大きくもどこか愛嬌もある猫さんでした。
キャラクター分野においてはいつも安心感を与えてくださり、何度か触れておりますが東京シティ・バレエ団公演でのカラボス、そして
昨年5月に札幌で開催されたご出身スタジオ久富淑子バレエ研究所創立65周年記念公演『シンデレラ』での(訳あって札幌まで飛んで観に行きました管理人でございます)
まろやかさもある嫌味のないチャーミングなお姉様も嵌り役で今も忘れられずにおります。

フロリナ王女と青い鳥はゲストの吉野壱郎さんにはだいぶ舞台が狭い!?本気で跳んだら会場飛び出し
渋谷スクランブルスクエアまで届いてしまいそうな跳躍力と飛距離の長さで、結婚式幕開けの登場でも浮遊する姿やびしっと脚を揃える仕草、全体に気品もあり
フロリナ王女を見守る視線や腕の取り方もとても優しい。だからこそ当初の予定のフロリナ王女、観たかったとの思いは尽きず。
代役務められた教師の方は勿論急ピッチで仕上げたとは思わせぬ余裕と優美さがあり心から讃えたいばかりですが
作品の時代考証や原作読む大切さに口煩い踊れぬズンドコドッスン管理人の意見にも耳をきちんと傾ける恐るべき素直で謙虚な性格で
バレエ習うために生まれてきたような容姿にも恵まれながら調子に乗った発言態度を取った姿なんぞ一切見せたことがない我が愛する後輩よ。
対して群馬県のあるビジネスホテル大浴場脱衣所でバンド遠征者と会話を交わしたとき、バレエ鑑賞遠征で来た旨を話したところ
ああ、バレエ習っていそうですねと言われるも、考えてみれば気遣いや社交辞令であったと気づかず浮かれていた
腰位置低く膝下短き身体条件である私とは外見中身ともに大違い。
それは横に置き、たくさんの練習重ねて文献も熟読してきた準備は決して無駄にはならぬはず。いつの日か披露を心から待っております!!!

それから、眠りに1点注文を許されるならば、舞台背景が地味な印象を与えた点。柱は綺麗に描かれていながら薄茶色がベースで
クラシックバレエの最高峰と称されフランス絶対王政へのオマージュの極致場面とは言い難かったかもしれません。
発表会でも眠り3幕は鑑賞機会が多く、また子供の頃から宮殿やお城の写真集を読み漁っていたオタク気質な私の意見で説得力には欠けると承知しておりますが
もう少し重厚或いはゴージャス煌びやかなデザインであれば尚のこと絢爛な雰囲気が出たかと思います。

第3部は様々な作品からの構成でトップバッターは『エスパーナ』でワルトトイフェルの曲にのせて休みなく駆け抜ける振付。
全員ピンク系の襞が段状になったスペイン衣装で、白いお扇子も粋に決まっていました。
発表会の定番で夏に観ると瞬時に涼しげな気分に浸れる『海と真珠』がそれはそれはピュアで無垢な魅力全開で
溌剌とした愛らしさ、ほんわかとした優しい空気感、それぞれの個性も引き出されていて癒しのひととき満喫です。

音楽構成も惹かれたのは女性2人と男性1人で踊られた創作の『ワ・ル・プ・ル』。グノー作曲のファウストよりバレエ音楽の中の3曲で構成され
私の中では数あるグノーの曲の中でも上位3曲に入る作品ですので、グノー産極上純米吟醸3種利き酒セットをいただいた気分。
1曲目がヌビアの踊りで社交ダンス風に、2曲目はヌビア奴隷の踊りでタッタカタカタカと速めのテンポで摩訶不思議なポーズも繰り出し
最後はフリネの踊りで仰々しく荒れ狂う波の如く迫力ある曲で締め括られました。
3人でこの3曲目を表現するのは身体の限界を試されるであろう曲調であっても力強いパフォーマンスで舞台を覆い、拍手でございます。

花とブルーの世界が品良く広がりを見せていた『シルヴィア』も印象深く、版は色々あれど、もしや私が『シルヴィア』パ・ド・ドゥの決定版と言わんばかりに
いたく気に入っている39年前に収録のABTミックス・プログラムにおけるマーティン・ヴァン・ハーメルとパトリック・ビッセルの衣装を参考かと想像、特に男性。
(他にハーヴェイとバリシニコフのレ・シルフィードやグレゴリーとブフォネス主演でソリストにジャフィーも入っているパキータ等同時上演、私が一番好きだった頃のABT公演)
生徒さんが丁寧端正で軸もぶれず、上質な踊りを見せてくださいました。

プログラムには主宰の清水先生がバランシンの『コンチェルト・バロッコ』日本初演時の主演姿写真も掲載。
シンプルな白いレオタードスカート姿でのアラベスク姿がたいそう美しく、載せてくださりありがとうございます。
先生はきっとこの作品をたいそう愛していらっしゃり、だからこそ第1部にて女性の生徒さんが2名で踊られた
『バロッコへのオマージュ』も先生が踊られたパートを思わす振付が散りばめられ、当時に思いを馳せつつ鑑賞いたしました。
来年は記念の第40回発表会。大掛かりな上演が企画されているか、今から楽しみが増しております。





帰り、マークシティ隣のダイニングにて、スペイン赤ワインと生ハムで乾杯。エスパーナのピンク色の段状襞衣装を眺めていたらこの組み合わせで味わいたくなった。



入口のショーケースが目に留まり注文、あまおうのチーズケーキ。甘さを抑えた、たいそう品ある味。ワインにも合いました。
そしてこのピンク色、今回のポスターやプログラムの色味に重なるだけでなく、我が愛する後輩をイメージする色でもあり
大輪の優しいピンク色の薔薇を外見内面双方からすぐさま想起。
清水バレエさんの舞台の余韻に浸りつつも、辿り着くのは足を頻繁に運ぶきっかけとなった彼女の存在なのです。

2022年8月5日金曜日

【おすすめ】【配信もあり】GGGガチョーク讃歌プロジェクト

もう間近に迫っていますが8月8日(月)9日(火)、大阪国際交流センターにて
GGG  GREAT GALLOPING  GOTTSCHALK ガチョーク讃歌プロジェクトが開催されます。
是非会場に足をお運びご覧ください。有料配信もされますので、会場でご覧になれない方も是非どうぞ。
(大阪まで出向きたいのは山々ですが今回は難しく、管理人も有料配信鑑賞です)
https://www.ticketpay.jp/search/?keyword=GGG


GGGインスタグラム。リハーサル映像もたくさん載せてくださっています。
https://instagram.com/ggg_project_2022?igshid=YmMyMTA2M2Y=



そもそもガチョーク讃歌って何ぞやとお思いの方も、何度か観ていて心惹かれる作品ではあっても
いざ特徴や魅力を聞かれると返答に困る方も(私もです)、こちらの動画をどうぞご覧ください。
状況設定や音楽の構造等分かりやすく紐解いて解説してくださっています。
パ・ド・ドゥ「ある詩人の死」の設定、サバンナの女性ソロ、男性2人で踊られるぶっ飛び体当たり漫才なバナナツリーの逸話始め
そうやったんかと何度も観ている私も初耳な内容でございました。




振付はリン・テイラー・コーベット。ニューオリンズ出身の作曲家ルイス・モロー・ゴットシャルクの音楽6曲から構成された、
穏やかで時としてクスッと笑いが込み上げてしまうユーモアな味も含まれた解放感のある作品で、アメリカンバレエシアターにて40年前に初演されました。
国内ではどちらかといえば西日本での上演が目立つのか、全編と抜粋共に関西や四国でも何度も鑑賞しており
関東ではNBAバレエ団がオーケストラ演奏付きで公式に上演したくらいかと思われ、その公演にも足を運んで観ております。

ただGGGのホームページにでも紹介されていますが著作権の問題に触れぬよう、これまで隠れて⁈或いは題名を変えての上演がずっとなされており、
ゴットシャルク組曲やゴットシャルクの夕べ等題名は多岐に渡ります。私自身作品は好きですし公式上演した埼玉のNBAバレエよりも
作品の色が地域の気質に合うのか関西や四国海近くの地域での舞台の方が遥かに楽しめてしまい、
またどんな題名に変えたかそのセンスも着目ポイントと化しております。(宜しくないかもしれませんが)
今回は大阪で公式上演と聞き、誠に喜ばしい限り。公演は2日間でガチョークの出演者は少しずつ、
ガラ・コンサートプログラムは全く異なる日替わり構成で両日お楽しみいただけることでしょう。
暑さも鬱憤も世の中に溢れる何かと多き不安も吹き飛んでしまいそうな心地良い作品ですのでこの機会にどうぞご覧ください。

主役級の2人が踊る「ある詩人の死」は新国立劇場バレエ団の米沢唯さんと福岡雄大さん。
リハーサル動画を見るだけでも米沢さんの瑞々しさが伝わり、福岡さんがこのパドドゥを踊るのは一度大阪で観ておりますが久々ですので楽しみでございます。
いかんせんこのパ・ド・ドゥ、私の中ではすぐさま浮かぶのは山本隆之さんで、爽やかさと包容力の理想の結晶なお姿を何度も目にしては心が浄化されたことか。
思い出しつつも新たな米沢さん福岡さんペアの満喫したいと思っております。
バナナツリーは大概登場のステップからして特に大阪では客席からジワリと笑いが起こっていましたが、福岡さん福田圭吾さんが以前大阪で踊られたときの沸騰は忘れられず。
バレエをあまり観たことがないある小さな男の子もすっかり笑いのツボに嵌ってしまっていたそうで、回顧しながらも今回フレッシュな気持ちで堪能したい次第。

さて以下は個人事情ですが。私は月曜日公演の配信視聴を申し込み、顔見知りの方がその日のみ出演されるためでございます。
勿論私より遥かにお若い世代でいらっしゃいますがバレエについてその方より学ぶことが多々あり、視聴を心待ちにしております。
(当ブログを開設まもない頃、つまりは子供の頃から読んでくださっているとか!?
飲酒写真や捻くれた管理人の性格あからさまな視点の内容で青少年の健全な人格形成には不向きな気もいたしますが、そんな心配をよそに今や素敵な大人に)
そしてリハーサル動画を目にしているとその方以外にも、私が一方的に知り合いと思い込んでいる方も含めれば
(1度しか会話を交わしていない方も含めて良いやろか。あちらからすると誰やねんと思われるか笑)何名かいらして、自然を笑みが募って参ります。

ところでここ最近、或いは今年に入って以降、管理人約800日ぶりのレッスン云々とズンドコドッスン日記やら内容も綴っておりますが
そもそも800日前はどんなレッスンであったのか。気になる方は2人もいないと思いますが
800日前ですとコロナ禍直前の頃の時期で、実はそのときレッスンでご一緒したお1人が今回のプロジェクトで通訳を担当されている岸田あずささん。
通訳業からダンサー、振付、指導者と多分野で大活躍で、今年ローザンヌで入賞された田中月乃さんが通っていらした教室の先生でもいらっしゃいます。
そんな岸田さんと、レッスン受講は年に1、2回ペースである踊れぬズンドコドッスン管理人が同じ空間でレッスンしていた事実が不思議で仕方ないのですが笑
そのとき以前にお目にかかったときと同じくレッスン後は強烈猛烈な大阪弁でお腹が捩れるほど笑わせてくださって
話す言語が周囲とはだいぶ違い、エスカレーター右立ちルールは厳守できても相変わらず標準語しか話せぬバレエド素人にも優しく接してくださり感激でございました。
目上のお方ですから対面時は岸田さんと呼んでおりましたが何処か親しみやすさを勝手に感じており笑、
映像に映る姿を発見するとつい「あずさちゃん」と呼ばせていただいております。
最後に、プロジェクト代表の春田琴栄さん。関西のとある公演にて隣席になったことがあり、オーラに圧倒されました。
先月にはバレエショップを東京にもオープンされ、1人で何役もこなされているとしか思えぬ多忙ぶりかと存じます。プロジェクト、成功を願っております。
そんなこんな長くなりました。あともう少しで本番。東京のお茶の間からの堪能を心待ちにしております。

2022年8月3日水曜日

大人も一緒に自由研究 新国立劇場バレエ団  こどものためのバレエ劇場2022『ペンギン・カフェ』 7月29日(金)〜31日(日)計5回





新国立劇場バレエ団  こどものためのバレエ劇場2022『ペンギン・カフェ』を5回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/kids-penguin-cafe/










バレエチャンネルさんのインタビュー映像。こども記者が稽古場に潜入取材。子どもたちによる純粋且つ鋭い質問の数々に大人もびっくり。
質問に答えるダンサー達が皆丁寧で優しい語り口である点がまた魅力です。




池田さんペンギンは身体での表情切り替え可愛らしく、お盆持って回転してからのぴょんと垂直ひとっ飛びジャンプもきびきび。
しかしレインの場では打って変わり、立っているだけでも悲壮感がじわりと伝わって悲しい結末へと一気に進んで行く様子を描写。
赤井さんは冒頭のお盆持っての踊りから強弱の付け方がいたく自在で、プリエがとても深いかと思えば回転からのポーズの決め方もスケール感があり、
お茶目な面も見せつつ腕を掲げるときはとってもエレガントで、身体の使い方が実に多彩。堂々たる主役デビューでした。
ここ暫くは広瀬さんがシングルキャストで張ってきただけあって、ビントレーさんが新国立芸術監督就任後最初の公演で初演した作品の主演しかも初役で
お2人ともさぞかし重圧があったでしょうが、日によっては幕開けから拍手が沸いたり、子ども達からペンギンさんの可愛らしさの虜になっている歓声も聞こえたりと
科学分野と連携した初企画にて、大勢の子ども達をも魅了するペンギンさんでした。

ヒツジは長年務める米沢さんは肩や腰使いから描き出すセクシーな色香に被り物状態であってもうっとりし
レインにおける身体をスピード感たっぷり且つ大きく使っての深い悲しみの吐露が痛烈に胸に刺さり、鋭くも寂しい余韻を残しながら疾走。
木村さんは前回よりも遥かに腰の入れ方やヒール靴でのステップも雄弁に魅せ、体幹が強まったのか片脚のみでの素早いバランスを始め
上体を斜めに倒す中途半端な体勢もパートナーとの呼吸を合わせつつ安定感ある姿を披露していた印象です。
初役とは思えぬ盤石である上にスタイリッシュでにこやかな味を全身から放ちつつ捻りの効いたパートナーリングも天晴れであった中家さんにも拍手。

カンガルーネズミも三者三様。初役の宇賀さんは初回こそ硬さがあったものの2回目は弾力感が倍増し、
終盤の連続尻餅において客席の驚く子供たちとのやり取りに思わず頬が緩んだほどです。
そしてネズミマイスター!?福田さんは音楽の細かな部分をも取りこぼさずバネの効かせかたに至るまで職人芸。
この役を最後にバレエ団を退団する髙橋さんは跳ねる度に子供達の楽しい笑い声が溢れるネズミで魅了。
髙橋さんは2010年、この作品振付者でもあるビントレーさん芸術監督就任と同時の入団で就任開幕公演で上演された作品の1本がペンギン・カフェでしたから
この役で新国立生活に区切りを付けられたのはたいそう感慨深いものであると想像。
願わくは、ピンクのフリルドレスが嫌味なく似合うシンデレラ妹をまた拝見できたら嬉しうございます。

ノミは無重力な五月女さん、柔らかな跳ねっぷりが優雅さも醸す奥田さんお2人とも戦隊ものにしか見えぬ衣装でも愛嬌抜群。
そしてノミを応援モリスダンスチーム、特に初役が大半な若手組が実に楽しそうに軽快で出色、中でも仲村啓さんが頼もしいリード力を発揮。
舞台中央前方でノミにからかわれ追いかける様子も身体全体で困惑とおかしさを大胆に示し、存在感の大きさに驚かされた次第です。
皆長身でも時折幼稚園の通園帽子にも見える黄色い帽子がほのぼのと似合い、渡邊拓朗さんは豪快な雰囲気にもなぜだかしっくり。

木下さんのシマウマは登場での肩から腕のラインがはっとする滑らかさで端然とした佇まい。
奥村さんは孤高な存在感から繰り出す詰め寄りの部分もゾクッとさせる悲哀思わせ、銃で打たれたときの怯えるような震え方に背筋に冷たいものが走る感覚が毎度募り
一瞬たりとも笑みをこぼさず、淡々と無機質なポーズも歩き方がかえって残酷さを増長するゼブラガールも目に焼き付いております。

熱帯雨林の家族ではこの公演をもって22年間の新国立ダンサー生活に区切りを打たれることとなった貝川さんの姿が心に沁み入り、
最後寂しそうに過ぎ去る様子に胸が詰まるものがありました。今後もプリンシパルキャラクターアーティストとして活躍なさると信じて疑わなかっただけに大変寂しく
公演終了後に退団を発表された細田千晶さん、アリスで退団花束贈呈セレモニーも行われた本島美和さんといい管理人、
相次ぐベテランの退団にショックが続いております。お三方とも年齢を重ねるたびに魅力を増していた気がしてならず、暫くは引き摺ってしまいそうです。
初役趙さんのお父さん役が大黒柱な存在感で子供を肩車する過程もスムーズで、
同じく初役柴山さん母(おかっぱ鬘が似合い、寂しそうな視線が心を突きます)と穏やかで慎ましい生活が垣間見える家族。

ウーリーモンキーは恐らくはこの作品において同じ公演期間中に初の3キャストが組まれながら速水さんが体調不良で降板され(どうかお大事に)2キャストに。
初役の渡邊さんは初回の序盤は慎重で礼儀正しそうなモンキーさんで、でんぐり返しからしてこれから三つ指ついて正座するかと見紛う品のある所作で
慣れない被り物に気を取られてしまったか、サンバホイッスル音にも押され気味な印象を抱いてしまいました。
誠に失礼ながら配役発表時、ラテンの舞踊ならばトゥールーズでも土の上で踊られる作品にて披露されたタンゴや
或いはフラメンコあたりもビシッとシリアスで締まりある踊りも似合うと勝手に想像。
しかしサンバはどうも想像がつかず、果たして弾けるのか、不安のほうが上回っておりました。
ところが2回目以降は木々を軽々飛び伝っていそうな妖精を彷彿とさせるウーリーモンキーさんで、でんぐり返しも丸。
高い樹木の上で両手に果物を大事に持って味わっていそうなモンキーさんです。
加えて初回と見違えるカーニバル座長な沸かせっぷりで、パワフル豪快とはまた違った、美しく伸びやか
されどド派手なジャケットやビリケンさんもびっくりであろう金ピカハットにも負けぬアクセントの効かせ方も見事でございました。
派手に弾けるだけがこの役ではないと学びまで与えてくださった気もいたします。
両手を横に水平に伸ばした状態で肩甲骨を中央に引き寄せる振付にも初めて気づき、腕立て伏せは少しヒヤヒヤしたときもあれど笑、それはご愛嬌。
サンバホイッスルは、高校生の頃に当時発売から数年後あたりの時期であった日本で作曲された
サンバ風の曲(てんとう虫のサンバではありません。念のため)の吹奏楽版演奏時、笛1つで強いを超越しけたたましいレベルで響き渡る音に仰天し
考えてみればこれ1つでサンバの雰囲気を一気に後押しするわけですから、この強い音色に屈さぬには相当なアピール力も要するであろうと悟ったものです。

対するレインは陰を背負い流星の如き横体勢跳び連発で身体が乗り、動きも巧みで抜群な疾走感。
シルエットの軌跡も目で追いたくなったほどで、ノミを頭上に掲げてからの滑り台下ろしもお手の物で、思いがけず渡邊さんモンキーを4回も鑑賞し7月締め括りでございます。
福岡さんシングルで張ってこられたモンキーにこの度、渡邊さんが新風を吹き入れてくださいました。

友人の表現を拝借すると、近年はシングルキャストで務め続けていらっしゃり、世界遺産級であろう福岡さんは安定の上を行くパワーある統率力。
被り物の装着も関係なく寝ていても踊れそうなほど体内まで染み付きが行き渡っているかのようで
またモンキーと福岡さんを安易に結びつけてしまう傾向も私自身ありながら、どう魅了してくださるか期待を積み上げてしまうのは
長年福岡さんがビントレーさんから厚い信頼を寄せられ、いかにこの役で終盤前の賑わいの場をあっと驚かせ率いてくださったかが思い知らされました。

ビントレーさんのご意向か、昨年と今年のニューイヤー、そして今回の夏休み子どもバレエと近年頻繁に上演を重ねていながら
ご自身が直接指導なさったダンサーの配役に重きが置かれ、昭和世代の占める割合の高さに首を傾げる日もありましたが
ひとまずこの夏の子どもバレエでは初役も程よく混ざり安堵。ペンギン喫茶にならず(ならないと思うが)、新鮮味あるキャストも堪能いたしました。

今回のこどもバレエの特徴として、絶滅危惧種や環境問題について考えるための企画もなされ、第1部はトークショーの時間が設けられました。
最初から双子パンダのシャオシャオとレイレイ、2頭をあやす母親のシンシンの映像が背景に登場し、思わず見入ってしまいましたが
欲を申せば作品に登場する生き物達に焦点を当てた構成のほうが、第2部でのバレエもより楽しく興味津々に鑑賞できたであろうと思っております。
お話の入口として知名度の高いシャオシャオやレイレイの内容は良しとして、ヒツジやシマウマ、モンキー等についても直接語りかける内容であれば
尚のこと『ペンギン・カフェ』鑑賞と絶滅危惧種、環境問題を同時に考える企画の意義が強まったように感じた次第です。





平仮名のほうが大きいキャスト表。こどもバレエ仕様です。



平日昼公演後のマエストロ。サラダや前菜はビュッフェ形式。(お店の方による盛り付けの提供対応も可とのこと)
森をイメージして盛り付けてみたが、相変わらず芸術センスのない管理人汗。スパークリングワインがああ爽快。



初めて味わうマエストロ特製キーマカレー。夏野菜が明るい彩り、スパイシーながら爽やかな後味残るカレーです。



休日マエストロ、白ワインで乾杯。酷暑はすっきりとまず白から。 新国メンバーズ登録画面を見せるといただけたマスクケース。
プレゼント企画の記事では表側した写っていませんでしたが、裏にも写真があると
先にご覧になったこの日食事をご一緒したお世話になっている劇場精通者の方より伺い、無事入手。



この日は前菜は最初から盛り付けられて登場。夏らしい色合いです。



鰯とセロリのアーリオオーリオ。辛い味が身体に気持ち良く効きます。鰯の身も大きめで、セロリと相性が良いとは初めて知りました。



パンナコッタ。ぷるっと上品なお味です。



フンボルトウーリーモンキーについての説明、こればかり熟読。環境問題のみならず、人間とはかくも身勝手な生き物である。



トキの剥製。バレエとトキ双方に詳しい友人がいまして(トキに関する仕事を佐渡でなさっている)、
また今回のような絶滅危惧種についての知識も深める企画時には案内係員としてお待ちしております。



ある公演日の帰り、事故発生により電車が見合わせとなりひとまず新宿へ向かい、駅近くで落ち合った
帰りの方向が同じ毎度お世話になりっぱなしな英国文化にも造詣の深いお方と食事へ。
豆腐御膳をいただき、竜宮もまた観たいとふと思う夜。お酒は奥多摩の日本酒。今月は奥までは行かずとも多摩地域にも鑑賞に何度か出向きます。






代官山チャコット。前回出向いたときは移転オープン直後且つ800日ぶりのレッスンで(習っているとは言えぬ状態でございます汗。
入門あたりから受講して慣らすこともせず、2年2ヶ月何もせずいきなりオープニング記念
有名バレエ団プリンシパルが講師の特別初級クラスに行ってしまった、無謀なことした管理人汗)
800日ぶりの受講を1日がかりで説得してくれた若人の2人には今も感謝が尽きずにおります。
カチコチに緊張しており店内を回っても落ち着かずであったため再度何処かの機会に訪問を考えておりました。
お洒落過ぎて私には不相応な気もいたしましたが、綺麗なディスプレイがあちこちに溢れる空間です。




チャコットの前を通り坂に沿ってもう少し歩き道路を渡ると出現、モンキーカフェ。
雑味なくさっぱりとした味わいの完熟バナナジェラードとコーヒー。目の前のモンキーさん、腕が長し。この日もこれから初役長身モンキーさんを堪能だ。
仮にバレエの舞台においてカフェの主人がペンギンではなくモンキー(2ndキャスト)であるとしたら
派手な見かけとは相反する、お盆持って深々一礼、老舗の喫茶室風な格式高い接客となる予感がいたします。



速水さんお大事に



千秋楽、当初は昼公演のみ鑑賞予定のはずがキャスト変更に伴い夕方公演も追加購入し鑑賞。
そして当ブログレギュラー我が後輩が練習直後スタジオから初台まで届けてくれた上に誕生日祝いとしてラッコのぬいぐるみ型ペンケース。
そうです、今回のこどもバレエは環境問題、絶滅危惧種について考えるコンセプトにぴったりでございます。ラッコもめでたく劇場鑑賞デビューいたしました。
ビントレーさんがもしペンギン・カフェⅡをお作りになるならば(可能性は無に等しいでしょうが)
ラッコは入るでしょうか。実現すれば衣装をどうデザインされるかも注目でございます。