2020年9月4日金曜日

【お茶の間観戦】アルベールビル五輪のフィギュアスケート ペアとアイスダンス

9月に入りました。まだ残暑が続き、新潟では40度を観測するなど異常気象に目眩がしそうになりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。
少しでも涼やかな話題を望んでしまう今日この頃でございます。
来夏東京五輪も開催できるのか、まだ見通しがつかぬ状況ですが調べていたところ
冬季五輪での競技の印象が強いフィギュアスケートは嘗ては冬季以外の五輪で実施していたと知り驚愕。
1908年のロンドンと1920年のアントワープ大会で、屋内外に関してはこちらの調査不足で定かでありませんが
アントワープ以降は冬季大会での実施となったもようです。
そんなわけで、冬季以外の季節しかも夏場に跨る時期の五輪で最後に実施されてから100年となる2020年、
多少は涼しい気分に繋がると願って本日はフィギュアスケートの話を。

氷上のバレエとの呼称を時々目にする機会もあり、バレエがお好きな方であればフィギュアをご覧になる方も多くいらっしゃるかと思います。
ダンスマガジンでも特集が組まれたり、今春に上野の森バレエホリデイでは上野水香さんと町田樹さんの対談も実現しました。
私はそこまで熱心に観るほうでもありませんが、五輪を始めテレビ放送されていれば視聴はいたします。
バレエ音楽が使用されていると嬉しさを覚える一方、どうしても見過ごせないのが曲のおかしな繋ぎ方。
ジャンプやステップを規定通り入れねばならぬ制約があるのは理解できますが物語展開がちぐはぐな順番であったり
ましてや生死を伴う話の場合キャラクターが生き返ってしまう流れはどうもいただけません。
以前ジゼルを滑る選手の映像を見た際、狂乱死したかと思ったら続いて1幕ヴァリエーション締め括りは収穫祭のコーダ。
ジゼル生き返ってしもうた、精霊が村に現れての復讐かと1人慌てふためく管理人でございました。

そんな私も観戦に熱中していた時期があり、遡ること28年前の1992年アルベールビル五輪。当時はソ連崩壊から日が浅く、国旗もない国もあり
一部の旧ソ連国はEUNとして出場し、旗は五輪マークであった時代です。
日本の報道では女子シングルで銀メダルを獲得した伊藤みどりさん一色な様子で、皮膚科や歯科に行った際の待ち時間に目を通す週刊誌の大多数が伊藤さん祭り。
確かに日本フィギュア界初のメダル獲得で大きな快挙でしたが管理人がテレビに噛り付いて見ていたのは、ペアとアイスダンスでございました。
開催当時は周囲に同じ話題で語り合える友人知人もおらず、2年前の平昌五輪開催中にハンブルク・バレエ団来日公演会場にて
昔からフィギュアも熱心にご覧になっている方と話していて人生初 家族以外とアルベールビルのペア、アイスダンスの話題で会話に花が咲き
何処かで綴れたらと思っておりこの場を借りて書いて参ります。

まずペア。優勝はEUNのナタリア・ミシュクテノクとアルトゥール・ドミトリエフで、フリーでのリスト『愛の夢』における
柔らかでロマンティックな香りを色濃く放出していた演技は訴えかける力が強く納得ではありましたが
私が惚れ惚れと見入っていたのは2位の同じくEUNエレーナ・べチケとデニス・ペトロフによる『くるみ割り人形』。
グラン・パ・ド・ドゥのアダージオ部分を使用しての演技で、 決して押し出しは強くはなく特別ドラマティックでも独創的でもないながら
音楽に調和して忠実、飾り気無くシンプルされど優雅な滑りで 馴染みある曲だから好みであったわけではなく
職人気質な持ち味がすっと目に心に響いたのであろうと思っております。
それから先にも述べた、バレエ音楽を不可思議に繋げたのではなくアダージオ部分のみであった点も好印象。
終盤の盛り上がりを考えればコーダの部分も取り入れる流れも想像できますが あくまでアダージオのみでプログラムを表現する姿勢にも注目せずにいられなかったのでした。




べチケとペトロフ組の『くるみ割り人形』より 再生が上手くいかなかったらすみません。
表示された「YouTubeで見る」の文字をクリックしていただきと再生が開始されるかと思います。



それからアイスダンス。地元フランスの期待を背負って出場したイザベル・デュシェネーとポール・デュシェネーの兄妹による
オリジナルダンスの『サウンド・オブ・ミュージック』より ひとりぼっちの羊飼いに乗せた、牧歌的に弾むように滑る2人に魅せられ
劇中の人形劇で演じられるダンスによく似た振付や足腰を思い切り上下させながらもスピードが落ちぬ姿に驚きそして心底明るい気分になったものです。
加えて村人風の衣装も可愛らしく、当時既に何度も観ている映画でしたが曲が益々好きになるきっかけとなりました。
高校の文化祭にて吹奏楽部でも演奏しましたが、珍しくチューバのソロがありクラリネットが引き立て役に回っている箇所も聴きどころです。




デュシェネー兄妹による『サウンド・オブ・ミュージック』よりひとりぼっちの羊飼い 再生が上手くいかなかったらすみません。
表示された「YouTubeで見る」の文字をクリックしていただきと再生が開始されるかと思います。



ただオリジナルでの躍動感が印象に残り過ぎてしまったのかフリーでの『ウエストサイド物語』があまりにシリアスで緊迫感が異常に強く感じてしまい
フリーを観た際にはG線上のアリアとトッカータとフーガの後半に乗せて滑ったEUNのマリア・クリモワとセルゲイ・ポノマレンコ組の
完成度の高い余裕ある流れるような演技が場を攫い、案の定優勝。
オリジナルではショスタコーヴィチのジャズ組曲(恐らく)のポルカで『となりのトトロ』メイちゃんのような2つ結びの髪型で登場したイメージから一転し
ただ滑っているだけでも艶めかしい色気を振りまくクリモワの変貌ぶりにも目を見張ったのでした。
マイヤ・ウーソワとアレクサンドル・ズーリン組によるヴィヴァルディ『四季』での緩急自在に音楽を体現した実に伸びやかで美しい演技も忘れられず
後年モスクワ帰りのアエロフロート機内にてウーソワそっくりの客室乗務員さんが接客してくださったときには思わず名札を確認し
ご本人ではないと分かってはいても腰を抜かしそうになった次第です。

似ていると言えば、デュシェネー兄妹の兄ポールがお若い頃のカデル・ベラルビさんに何処となく雰囲気が重なる印象。
しかもしばしば映し出される大会名及び開催地名を眺めるとAlbertvilleの前半6文字に思わずゴクリ。
まさか14年後以降この文字に途轍もない興奮を覚えるようになるとは、当時は何とも思っていなかった自身に今の状況を見せてやりたいものです笑。

ところでスケートを生でも鑑賞した経験はあり、17年前に東伏見アイスアリーナで開催されたアイスショーの招待券に新聞の応募で当選。
ソルトレイク五輪の翌年でプルシェンコや村主章枝さんら著名なスケーターも登場し
今思えば無料で鑑賞できたのはいたく幸運であったと思っております。
新聞での当選招待者は隅の一角に設けられたエリア内に着席してのんびり鑑賞に臨んだわけですが、ふと見るとリンク内にも客席が。
至近距離で出演者を鑑賞できる特等席のようで、値段もお高めであったでしょう。
プルシェンコが登場しサンバ調な音楽で滑り始めると、手が届きそうなリンク内席からは所謂黄色い歓声が沸騰。
当選者用自由席エリア内にいた管理人はお目当ての男性が間近に登場して心臓印に満ちた興奮なんぞ生涯無縁であろうと他人事のように眺めておりましたが
状況は2年後以降急展開。青山円形劇場やいわきアリオス、東京タワーの袂スタジオ、岡谷のカノラホールに新宿での着物トークショーなど
時には手が触れそうな至近距離での興奮事件は多発。人生何処で曲がり角となるか分からず、当時の自身が今の姿を観たらどう思うか問いかけてみたいものです。

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