2020年9月18日金曜日

カタラビュットの語りが誘うメルヘンな世界 東京バレエ団 子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』 9月13日(日)




9月13日(日)、東京バレエ団 子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』午後の部を観て参りました。初鑑賞の作品です。
https://www.nbs.or.jp/stages/2020/meguro/


オーロラ姫:金子仁美
デジレ王子:池本祥真
リラの精:政本絵美
カラボス:二瓶加奈子
カタラビュット:岡崎隼也
王さま:中嶋智哉
王妃さま:菊池彩美
優しさの精:足立真里亜
やんちゃの精:涌田美紀
気前よさの精:髙浦由美子
のんきの精:安西くるみ
度胸の精:中沢恵理子
4人の王子:大塚卓 鳥海創 後藤健太朗 南江祐生
オーロラの友人:上田実歩 瓜生遥花 長谷川琴音 米澤一葉
フロリナ王女:足立真里亜
青い鳥:井福俊太郎
白い猫:湧田美紀
長靴をはいた猫:海田一成
赤ずきん:安西くるみ
おおかみ:山田眞央
シンデレラ:高浦由美子
フォーチュン王子:南江祐生
白雪姫:上田実歩
協力:東京バレエ学校


金子さんの主演舞台は初めてお目にかかり、登場の序盤は緊張気味ながら品性香るオーロラ姫で
これ見よがしに可愛らしさを主張せず、淑やかで慎ましくされど内側から光を発している姿で好印象。結婚式での凛然とした美しさにも魅せられました。
池本さんは若さ溢れるエネルギッシュな王子で、相反する表現ではあるが物静かであっても内に熱い心を秘めていそうな人物。
跳躍時の滞空姿勢も全く崩れず、その分1人になったときの哀愁感が引き立ち対比もよく表れていたと思わせます。
使命感を背負っているであろうと推察できる締まりのあるグラン・パ・ド・ドゥを観る限り、
相思相愛ではあっても濃密な愛を通わせるよりはひたすら真面目街道を歩んでいきそうな新郎新婦で
ゆくゆくは平和且つ不正とは無縁な王政を執り行っていくと想像いたしました。

リラの政本さんはまず抜群のスタイルに驚き、小顔で手脚が長く薄紫色のチュチュもお似合い。
威厳よりもにこやかさや明朗さで、冷ややかで鋭い視線から覗く不気味さが恐ろしい二瓶さんカラボスの力を封じ弱めていた印象で
目が眩みそうな輝きは他を圧倒。妖精のリーダーに相応しい存在感も十二分でした。
ちなみに政本さん、雑誌『クララ』2001年3月号の読者からの応募写真による第2回クララ写真コンクール入選作品にて
香川県在住当時9歳と掲載され、地元と思われるイルミネーション前にて将来を予感させる立ち姿で写っていらっしゃいます。お持ちの方、25ページをご覧ください。
巻頭カラーページには東京バレエ団の「注目の若手」として荒井祐子さんが紹介されています。(後にKバレエカンパニーに移籍)年月の流れは早し。

そして実質主役級の働きを見せていたのがカタラビュットの岡崎さん。開幕前から客席に語りかけて作品解説を行い
鑑賞マナーについても物語に溶け込ませながら呼びかけ。オーロラ姫誕生祝い開催の裏側に迫った演出も面白く、
カラボスを招待するか否か夜な夜な悩むカタラビュットの心の内もが描写され、幕開け前からただの子ども騙しバレエではないと明示していました。
何より岡崎さんの語りが上手く、速度から間の置き方、声の通り方も文句の付けようが無い出来。
オーロラ姫が16歳になるまでの成長過程を描いた幕前の場面では度々糸紡ぎを仕掛け邪魔をしてくるカラボスの罠から姫を守ったり
幕間の休憩に入る前には我々は100年の休みに入るが皆は20分程度に感じる時間と言って笑いを誘うことも。
救いであったのはナレーション及び招待漏れが発覚してカラボスの怒りを買って頭の頂上がつやつやになるだけでなく
結婚式の冒頭やオーロラ姫16歳の祝いのときもだったか、少しではあっても軽やかな踊りの見せ場もあった点で、随所で活躍でした。

リラを筆頭にパ・ド・シスの妖精達がまた全員揃って可愛らしく、パステルカラーで統一され
チュチュにもボリュームがあり、所々にラインストーンで彩った衣装もセンス良し。
短縮の関係上リラ以外ヴァリエーションのカットは惜しかったものの、登場時に独特の踊りを少し覗かせながらであったのは嬉しい工夫でした。
4人の王子はお国柄が異なる演出で、恐らくインドであるとは思うがタイツがターメリック色でびっくり。(食文化も伝えに来たんか笑)

足立さんの四肢の隅々まで行き届いた軽やかで愛らしいフロリナ王女や、出番が短時間でも清楚でちょっと厳しいお姉さんぶりがぴたりと嵌る上田さん白雪姫も心に残り
白雪姫に関しては役柄を知った際いったい何処に登場するかと開演中も疑問を抱いておりましたが演出によっては『人喰い鬼と子供達』の愉快な曲調は
七人の小人達の勤勉であっても悪戯も好み、姫からりんごを奪ってしまう振る舞いにも合っていて納得。

少人数な貴族事情を助ける効果もあったのはグラン・パ・ド・ドゥ披露時、赤ずきんちゃんや猫、フロリナ達も囲み見守るように舞台上にいたこと。
寂しくならぬよう舞台上の空間を埋め、更にはルーツはばらばらであっても皆オーロラ姫と王子結婚を祝う思いは共通で祝祭感も上昇。
特に猫達がじゃれ合いながらもずっとオーロラ姫達を眺める姿は微笑ましい光景で、フロリナの足立さんは座る姿、顔の付け方も目を惹く可愛らしさでした。

美術は濃いめのピンクメルヘン路線で、その昔森下洋子さんや大原永子さんがグラビアを飾られた
往年の少女漫画雑誌のカラーページを思わせる色彩に度肝を抜かれましたが笑
全編通して見ると2時間程度の上演時間や語りの配分、見せ場の凝縮は子ども向けバレエとして成功した作品と思えます。
衣装も一部貴族はコスプレ(失礼、ダンサーの責任ではない)に見える明度くっきりな色合いではありましたが
先に述べたようにパ・ド・シスの煌めくアクセントも含めたパステルカラーのふんわり感、
さりげなく同系色の丸みある薔薇の花が付いた1幕オーロラ姫のピンク色のチュチュを始め概ねしっかり王道なデザインである点もおとぎ話の世界観を壊さぬ理由でしょう。

何しろ、ユニークなマラーホフ版以前の東京バレエ団による眠りはいかんせん衣装装置がいつの時代かと疑念を持たざるを得ないデザインで
レトロと言えば響きが良いのでしょうがベジャールやキリアン、ノイマイヤー作品をもレパートリーに取り入れ
海外公演回数多数のバレエ団が上演しているとは思えぬものでした。東バの眠りについて最初に触れたのは
勝又まゆみさんと当時10代であった首藤康之さん(ルグリが目標と堂々宣言なさっていました)のインタビュー記事とグラン・パ・ド・ドゥ写真で
もう1枚インパクトがあったのは1990年代中頃に出版された『バレリーナのアルバム』にて現芸術監督斎藤友佳理さんによる結婚式での
可憐なオーロラ姫写真にも息を呑み、東京バレエ団による眠りならばきっと秀逸な振付演出衣装であろうと期待を胸に初鑑賞したのが随分経ってからで2005年。
小出領子さんとマニュエル・ルグリ主演で、ダンサーの技術は高いながら
繰り返しになるが謎の配色揃いの衣装に驚き、夢の場における茶色いハワイアンダンサーのような森の妖精達が横切ったぐらいで王子はオーロラに接吻。
呆気ない短さに加え、世界バレエフェスティバルの全幕プログラムでも上演を重ねていた事実に再度仰天したものです。
そんな訳で、長くなりましたが子どもバレエとしてでも多少は突っ込みどころのある衣装はあっても
2012年の所謂王道古典な眠りのバレエ団上演再始動に喜びを覚えた次第です。
一部の衣装は踏襲され、中でも結婚式のオーロラ姫の金銀が光るチュチュは懐かしい嬉しさが募りました。
フロリナ王女の重厚な衣装も再度観察したかったのですが、子ども版の上品なブルーチュチュも素敵でしたのでこれで良いでしょう。

当初は8月に祭りのタイトル通りめぐろパーシモンホールでの開催予定が9月に延期となり会場は上野に変更。
子どもバレエにはいたく大きな空間でしたが、3階席までも見せ場の面白さ、衣装の特徴もしっかりと伝わり
パ・ド・シスにおいてはリラ以外も全員異なる色彩であるだけでも合格点笑。(石の色が違うだけでは客席からは分かりません)
メルヘンチックな楽しさが詰まった東バオリジナル眠りを心から堪能いたしました。
マリインスキーでの世界初演から130年、眠り探訪今年はまだまだ続きます。



扇風機、この日も全開で頑張っていました。



上野動物園を訪れ、完成したばかりのパンダの森にも行って参りました。シンシンとリーリーが過ごしています。屋内の撮影は禁止。
シンシンは背中を向けて笹の食事に没頭、リーリーは歩き回っていました。
シャンシャンは入場門近くの以前からある場所にて生活していて、ついに初めて見ることができ感激。
オーロラ姫と同様、国家レベルの祝福を受けて誕生した姫らしくコロコロとした顔立ちが可愛らしい女の子です。写真は禁止。






壁に描かれた動物たちのパキータ。飲食における前に屈んだ体勢で1列に並ぶと、アダージオでの対角線上に並んだコール・ド・バレエを彷彿。
6年前には奈良の東大寺裏手にて、早朝に鹿達のパキータを鑑賞できました。こちらの記事、上から3枚目の写真です。


帰りは上野駅近くの喫茶店王城へ。名前の響きが素敵でございます。ちなみに以前訪問した喫茶古城は定休日。



管理人には似合いませんが笑、ブルーが鮮やかなクリームソーダ。フロリナ王女も白雪姫も上品な青い衣装を纏っていました。
クリームが溶けて炭酸の刺激が中和されていきます。
基本甘味炭酸飲料は昔から苦手でワシントンD.C.へ行く機内にて「スプライト」の味を知らずにうっかり選んでしまい、一口含んだだけでむせてしまったほど。
隣席のパキスタン系の男女2人組が優しく、随分と心配してくれたのは救いでした。

そういえば、まもなくの9月の連休と言えば11年前にモスクワへ行った時期。
GO TOトラベルが来月より東京発着も対象になるとはいうものの海外旅行が可能になるまではだいぶ時間がかかりそうです。
管理人にとって、もしや2009年のシルバーウィークが人生最後の海外渡航となってしまうのだろうかと考えが過る2020年の9月連休でございます。
モスクワ中心部行きのアエロエクスプレス乗り場が分からずシェレメチェボ空港屋外で迷子になって
敷地内で野生のシベリアンハスキーに間近で遭遇し恐怖感が強過ぎて脳の働きがおかしくなったのか
嘗ては「生類憐みの令」制定国から来た者であると硬直した身体で訴えた到着直後が懐かしい。当時は冷や汗ものでしたが今となっては楽しい笑い話です。


2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

子眠りのレポート、どうもありがとうございます!
観に行けなかったので、とても嬉しいです。
東京文化会館での子眠りは貴重な経験でしたね。もう2度とないかもしれない。
動物園にも行ったのですね。
パンダ、写真撮らせてくれればいいのにね・・・

管理人 さんのコメント...

こんばんは。コメントお寄せいただきありがとうございました。
こちらこそ、舞台の様子が伝わりましたこと嬉しく思います!
仰る通りです、東京文化会館での子どもバレエ開催は珍しく
今回は延期後の日程ではめぐろパーシモンが取れなかった止むを得ない事情による利用でしたが
3階席までも踊りも衣装の魅力もよく伝わり、とても良い舞台であったと今も感じております。

はい、せっかくですので開演前の時間に合わせて予約して動物園も行って参りました。
パンダ達は人気で密や混雑、立ち止まる行為を避けるためにはどうしても写真撮影は禁止にするしかなかったようです。
ただパンダが見える列のお客さん同士、歩調を合わせてできるだけゆっくり移動しつつ
可愛らしいだけでなく国交友好の鍵を握っているパンダ達を少しでも長く見られるよう協力体制で見学いたしました笑。