バレエについての鑑賞記、発見、情報、考えたことなど更新中
2020年よりこちらに引越し、2019年12月末までの分はhttp://endehors.cocolog-nifty.com/blog/に掲載
2020年9月30日水曜日
久々の生演奏付き全幕 東京バレエ団『ドン・キホーテ』9月26日(土)昼公演
9月26日(土)、東京バレエ団『ドン・キホーテ』昼公演を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2020/donquixote/
振付:ウラジーミル・ワシーリエフ(マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴールスキーによる)
音楽:レオン・ミンクス
美術:ヴィクトル・ヴォリスキー
衣裳:ラファイル・ヴォリスキー
キトリ/ドゥルシネア姫:秋山瑛
バジル:秋元康臣
ドン・キホーテ:中嶋智哉
サンチョ・パンサ:海田一成
ガマーシュ:岡崎隼也
メルセデス:二瓶加奈子
エスパーダ:宮川新大
ロレンツォ:永田雄大
2人のキトリの友人:加藤くるみ-中川美雪
若いジプシーの娘:政本絵美
ドリアードの女王:三雲友里加
キューピッド:工桃子
秋山さんは力み無くナチュラルでチャーミングなキトリ。技術も申し分無く鮮やか、跳躍にしても回転にしても踏切やつなぎ目が誠に滑らかで
秋元さんとの1幕街の広場や居酒屋冒頭を始め、涼やか且つダイナミックなテクニック競演で見せ場は大いに盛り上がりました。
小柄で愛くるしい印象がありましたがツンと澄ました表情から時折覗く色っぽさもあり
浮気性なバジルも、そして妄想騎士なドン・キホーテも放っておくわけにはいかぬ魅力が花開いていた印象です。
秋元さんは爽快感十二分なバジルで、登場時からにこやかさも最高潮。
素早い箇所での脚捌きも見事で跳躍時の体勢もぶれず、フィナーレでのガマーシュとの回転対決でも減速しながら最後の最後まで
隅々まで美しく見せてしまう姿も見事なものでした。キトリとは濃密過ぎず湿度低め、されどしっかり愛し合うカップルといった趣き。
絶妙な加減で楽しませてくださったのは岡崎さんのガマーシュと永田さんのロレンツォ。
岡崎さんは大袈裟に主張せず、しかし仕草の1つ1つに可笑しみを感じさせ気づけば目を留めてしまう存在感あるガマーシュで
そうかと思えばキトリの1幕ソロでは後方で闘牛士達と並んでマントの代わりにギターを手に礼儀正しく大応援。メリハリの富んだ表現が光っていました。
永田さんのロレンツォは頑固雷親父ではなく怒りん坊であってもユーモアに満ちた愛情深いお父さんで
キトリの対して、ガマーシュとの結婚を一生懸命に説得する姿はどこか健気。
結婚式臨席時は娘の結婚を心から祝福するだけでなく、同席者ガマーシュが新婦キトリの晴れ姿に心臓の鼓動が止まらぬ様子を互いに手を取りながらじっくり確認。
まるでロミオとジュリエットのようなやりとりで、これからも仲良い関係は不変であろうと想像いたします。
今回5階席での鑑賞でしたが随分と舞台が近く見えた点も鮮烈。視力が上がったわけでもなくそれどころか年々低下している管理人ですから
舞台から発するエネルギーがこれまで以上に強かったためでしょう。1幕のセギディリアや
二瓶さんの押し出しの強いメルセデス(スカートが一瞬剣に引っかかりましたが倒れず、何かが降臨か!?)しかり
野営地のジプシー達の押し迫る勢いたるやびっくり箱を開け続けているかのようで、2階か3階あたりからの鑑賞と錯覚させたほどです。
東京バレエ団が採用しているワシーリエフ版は元々好きな演出でボリショイの振付が基盤と思いますが
より楽しくお祭り気分が高まるよう工夫され、特筆すべきは2幕フィナーレの盛り上がり。
本来ならば貴族の館で市民もファンダンゴ隊も一緒にセギディリアを踊る光景なんぞ考えられないのでしょうが
そんなことも忘れさせキトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥを終えた後、舞台全体が一気にうねる流れとなり更に高揚感を与えるフィナーレでとにかく楽しいのです。
そして先にも述べた通りロレンツォや恋に破れたガマーシュも出席し、終盤にはキトリも見守る中でバジルとガマーシュの回転対決も用意。
ただ執拗に回るのではなくあくまで音楽の中できちんと回るよう推奨されているのか規範をはみ出た感がなく、好印象な対決です。
明るく写実的な街の光景や水色を基調とした爽やかな貴族の館までじっくり眺めたくなる色彩の舞台美術も、品と情熱を上手く調和する効果をもたらしています。
ワシーリエフ版を観て思い出すのは2006年世界バレエフェスティバル全幕プログラムでの上演時にゲスト出演したタマラ・ロホのダンスマガジンでのインタビュー。
スペイン人のロホからすると時々首を傾げたくなるプロダクションもある中、東京バレエ団のワシーリエフ版はエレガントだからとても気に入っていると語り
賑やかなお祭り気分を高めつつも演出から美術装置まで、節度を保持した仕上がりはスペイン人をも頷かせるのであろうと納得いたしました。
恐らくは関東近郊での全幕バレエ公演としては久々のオーケストラ演奏付き上演であった点も喜ばしく
至る所にアクリル板を設置し、管楽器以外の演奏者はマスク着用の様子でピット内も対策が窺えました。
制約は多々あっても上階で聴く限り決してそうは感じさせず、ミンクス特有のズンチャッチャ音楽を生で堪能。
当初は7月上演予定が9月末に延期となり、今回は天候も危ぶまれましたが無事3回とも上演でき
秋山さんの本公演キトリデビューにも居合わせ、バレエと演奏共に生の醍醐味を以前にも増して味わえた日となりました。
この日も公演前にパンダの姫シャンシャンを観て参りました。客同士妙な一体感があり、少しでも長く見ようとゆっくり約5cmずつ移動しながら観察。
終演後は国立科学博物館地球館3階にて展示中の新国立劇場バレエ団『ペンギン・カフェ』共同企画を鑑賞。
昭和30年代頃の街頭テレビに群がる人々のような光景ではなかったが(密よりは良かろう)、
バレエに登場する動物を隣の展示室にある哺乳類剥製と比べながら見学すると理科とバレエ講座同時受講の如し。一層面白く感じました。
ユタのオオツノ羊のツノの立派さに驚き。
そういえば、新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』リハーサル風景と吉田都監督のインタビューがBS朝日の報道番組で取り上げられていたが
録画を見たところ表示されていた公演開催期間が違っていたもよう。(〜11/11と表示。もしや追加公演決定かと一瞬喜んだがそうではなかろう)
舞踏監督の表示されていた旨は番組内で訂正があったとのこと。舞踏の文字からは、麿赤兒さんが浮かんでしまった。
今春他の民放番組で巣ごもりシアターが紹介された際も『マノン』と『ドン・キホーテ』写真が入れ替わっていたらしい。
ただ、テレビで取り上げてくださるのは嬉しいこと。
帰りは上野駅前のスペインバルで乾杯。以前に比較するとかなり空いていたが
1人でもふらりと入店できワイン1杯からでも歓迎と明記されているため利用しやすい。
やはりドンキの気分爽快な展開及びズンチャッチャ音楽、良いものです。このご時世一層愛おしく感じます。
本当はサンチョもびっくりな食いしん坊の管理人ですが(体型ではなく耳と目が肥える日は到来するのだろうか)、今回はワイン1杯とおつまみ2品でお開き。
2020年9月25日金曜日
【くるみ割り人形も再登場】三鷹の森ジブリ美術館企画展示 『手描き、ひらめき、おもいつき』展 ~ジブリの森のスケッチブックから~
東京の井の頭公園の緑に囲まれた三鷹の森ジブリ美術館にて、くるみ割り人形展についての振り返りも含まれる企画展示
『手描き、ひらめき、おもいつき』展 ~ジブリの森のスケッチブックから~を開催中です。4連休前に行って参りました。
http://www.ghibli-museum.jp/
企画展詳細
http://www.ghibli-museum.jp/exhibition/013177/
ジブリ美術館では開館以来様々な企画展が開催されてきましたが、各々が実現するまでの裏側や下書きといった過程も余すことなく展示。
例えば『天空の城ラピュタと空想科学の機械達』ではこれ以上にないほどの精密な構想図や宮崎さん手書きの展示プランなど見どころ読みどころ満載な展示です。
中でも、バレエ好きな方々にご覧いただきたいのが『くるみ割り人形ネズミの王さま展』。
くるみの物語を宮崎さんの視点で多数の絵が描かれ、戦闘場面や初演時の舞台美術を参考に雪のワルツ(確か。花だったかもしれぬ)の立体模型も製作。
原作に忠実でくるみ割り人形とネズミの王様を同等の主役として捉えていらっしゃるのも特徴で
新国立劇場が3年前より新制作したウエイン・イーグリングさんの考えに近いかもしれません。
2014年から2015年にかけて開催されたくるみ…の展示は何部屋も使用したそれはそれは大掛かりなものでしたが、今回ダイジェスト版ではあっても
宮崎さんがくるみ割り人形に魅せられた経緯や原作とバレエの違い、独自の想像なるくるみの世界など魅力溢れる作品ばかりです。
ネズミたちの帽子の色を随分と迷われたご様子が窺える下書きや、洋から和に置き換えたお菓子の国も登場。
和に置き換えたつまりは和菓子の国の登場は私としてはここ数年において誠に嬉しく、発表会にてくるみ2幕の鑑賞時
シュガーピンクな甘美なる色彩やショートケーキを模したお城の舞台美術はメルヘンチックで麗しく
赤煉瓦建築の東京駅前を彷彿させる新国立劇場の美術よりは好みだが、王子に限っては
和菓子の国のほうがお似合いではと思ったことが2度ほどあり(開催地は板橋区と浦安市である)
すぐさま宮崎さんが構想されたお汁粉の池やお饅頭のかまくら、お団子の装飾でまとめられた和菓子の国が脳裏に浮かんだのでした。
話を戻しまして、お飾り人形ではなく本当にくるみが割れる、宮崎さん監修の立派なくるみ割り人形も展示されていますのでご注目を。
2014年に足を運んだ際にはスタッフの方が実際にくるみを割る実演もしてくださいました。(バレエの舞台上ではさすがに難しい)
また宮崎さんといえば、作品製作時には設定の舞台や機械のデザインや仕組みにしても入念過ぎる下調べをなさっていると何かで読みましたが
想像で描かれた、似ているとは言い難いプティパの絵もじっくりとご覧ください笑。
美術館全体の客層は子供達も大勢訪れていますが、企画展示は文字が占める割合も多いせいか大人の年齢層が中心であった印象です。
皆さん静かに真剣に、食い入るように鑑賞なさっていました。
現在チケットは月2回の発売で、これまで以上に人数制限を設けているため休日の購入は発売日当日でなければ困難な状況ですが
バレエ好きも存分に堪能できる展示ですのでどうぞ足をお運びください。
まずは井の頭公園を通り過ぎ吉祥寺にて、ベトナム料理で昼食。平日限定ランチでございます。
入場時間まで時間に余裕があるため井の頭公園を散策。整然と並んだスワンボートのコール・ド・バレエ。
12月初旬には、ボリショイの来日公演でニクーリナとベリャコフ組の白鳥を鑑賞予定であった。
スパルタクスでのフリーギアとクラッススも楽しみであったが残念無念。同じキャストでの来日公演実現を願います。
美術館へ。トトロが案内。
駐輪場。近くはないが、頑張れば自転車で行ける距離であるため毎回自転車で訪れております。三鷹駅からのジブリ柄シャトルバスにも乗ってみたいのだが
電車やバスで三鷹駅に行くよりも自転車のほうが短時間で到着するためつい機会を逃しております。
屋外は撮影可能。コダマのステンドグラスが美しい。
ロボットにも挨拶。マイ飛行石を持参し忘れ、石碑の前では文字の解読に歓喜するムスカの真似ができず笑。
テラスにて風の谷ビール。平日昼下がりのアルコールほど、優越感に浸る瞬間はないかもしれぬ。
2020年9月18日金曜日
カタラビュットの語りが誘うメルヘンな世界 東京バレエ団 子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』 9月13日(日)
9月13日(日)、東京バレエ団 子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』午後の部を観て参りました。初鑑賞の作品です。
https://www.nbs.or.jp/stages/2020/meguro/
オーロラ姫:金子仁美
デジレ王子:池本祥真
リラの精:政本絵美
カラボス:二瓶加奈子
カタラビュット:岡崎隼也
王さま:中嶋智哉
王妃さま:菊池彩美
優しさの精:足立真里亜
やんちゃの精:涌田美紀
気前よさの精:髙浦由美子
のんきの精:安西くるみ
度胸の精:中沢恵理子
4人の王子:大塚卓 鳥海創 後藤健太朗 南江祐生
オーロラの友人:上田実歩 瓜生遥花 長谷川琴音 米澤一葉
フロリナ王女:足立真里亜
青い鳥:井福俊太郎
白い猫:湧田美紀
長靴をはいた猫:海田一成
赤ずきん:安西くるみ
おおかみ:山田眞央
シンデレラ:高浦由美子
フォーチュン王子:南江祐生
白雪姫:上田実歩
協力:東京バレエ学校
金子さんの主演舞台は初めてお目にかかり、登場の序盤は緊張気味ながら品性香るオーロラ姫で
これ見よがしに可愛らしさを主張せず、淑やかで慎ましくされど内側から光を発している姿で好印象。結婚式での凛然とした美しさにも魅せられました。
池本さんは若さ溢れるエネルギッシュな王子で、相反する表現ではあるが物静かであっても内に熱い心を秘めていそうな人物。
跳躍時の滞空姿勢も全く崩れず、その分1人になったときの哀愁感が引き立ち対比もよく表れていたと思わせます。
使命感を背負っているであろうと推察できる締まりのあるグラン・パ・ド・ドゥを観る限り、
相思相愛ではあっても濃密な愛を通わせるよりはひたすら真面目街道を歩んでいきそうな新郎新婦で
ゆくゆくは平和且つ不正とは無縁な王政を執り行っていくと想像いたしました。
リラの政本さんはまず抜群のスタイルに驚き、小顔で手脚が長く薄紫色のチュチュもお似合い。
威厳よりもにこやかさや明朗さで、冷ややかで鋭い視線から覗く不気味さが恐ろしい二瓶さんカラボスの力を封じ弱めていた印象で
目が眩みそうな輝きは他を圧倒。妖精のリーダーに相応しい存在感も十二分でした。
ちなみに政本さん、雑誌『クララ』2001年3月号の読者からの応募写真による第2回クララ写真コンクール入選作品にて
香川県在住当時9歳と掲載され、地元と思われるイルミネーション前にて将来を予感させる立ち姿で写っていらっしゃいます。お持ちの方、25ページをご覧ください。
巻頭カラーページには東京バレエ団の「注目の若手」として荒井祐子さんが紹介されています。(後にKバレエカンパニーに移籍)年月の流れは早し。
そして実質主役級の働きを見せていたのがカタラビュットの岡崎さん。開幕前から客席に語りかけて作品解説を行い
鑑賞マナーについても物語に溶け込ませながら呼びかけ。オーロラ姫誕生祝い開催の裏側に迫った演出も面白く、
カラボスを招待するか否か夜な夜な悩むカタラビュットの心の内もが描写され、幕開け前からただの子ども騙しバレエではないと明示していました。
何より岡崎さんの語りが上手く、速度から間の置き方、声の通り方も文句の付けようが無い出来。
オーロラ姫が16歳になるまでの成長過程を描いた幕前の場面では度々糸紡ぎを仕掛け邪魔をしてくるカラボスの罠から姫を守ったり
幕間の休憩に入る前には我々は100年の休みに入るが皆は20分程度に感じる時間と言って笑いを誘うことも。
救いであったのはナレーション及び招待漏れが発覚してカラボスの怒りを買って頭の頂上がつやつやになるだけでなく
結婚式の冒頭やオーロラ姫16歳の祝いのときもだったか、少しではあっても軽やかな踊りの見せ場もあった点で、随所で活躍でした。
リラを筆頭にパ・ド・シスの妖精達がまた全員揃って可愛らしく、パステルカラーで統一され
チュチュにもボリュームがあり、所々にラインストーンで彩った衣装もセンス良し。
短縮の関係上リラ以外ヴァリエーションのカットは惜しかったものの、登場時に独特の踊りを少し覗かせながらであったのは嬉しい工夫でした。
4人の王子はお国柄が異なる演出で、恐らくインドであるとは思うがタイツがターメリック色でびっくり。(食文化も伝えに来たんか笑)
足立さんの四肢の隅々まで行き届いた軽やかで愛らしいフロリナ王女や、出番が短時間でも清楚でちょっと厳しいお姉さんぶりがぴたりと嵌る上田さん白雪姫も心に残り
白雪姫に関しては役柄を知った際いったい何処に登場するかと開演中も疑問を抱いておりましたが演出によっては『人喰い鬼と子供達』の愉快な曲調は
七人の小人達の勤勉であっても悪戯も好み、姫からりんごを奪ってしまう振る舞いにも合っていて納得。
少人数な貴族事情を助ける効果もあったのはグラン・パ・ド・ドゥ披露時、赤ずきんちゃんや猫、フロリナ達も囲み見守るように舞台上にいたこと。
寂しくならぬよう舞台上の空間を埋め、更にはルーツはばらばらであっても皆オーロラ姫と王子結婚を祝う思いは共通で祝祭感も上昇。
特に猫達がじゃれ合いながらもずっとオーロラ姫達を眺める姿は微笑ましい光景で、フロリナの足立さんは座る姿、顔の付け方も目を惹く可愛らしさでした。
美術は濃いめのピンクメルヘン路線で、その昔森下洋子さんや大原永子さんがグラビアを飾られた
往年の少女漫画雑誌のカラーページを思わせる色彩に度肝を抜かれましたが笑
全編通して見ると2時間程度の上演時間や語りの配分、見せ場の凝縮は子ども向けバレエとして成功した作品と思えます。
衣装も一部貴族はコスプレ(失礼、ダンサーの責任ではない)に見える明度くっきりな色合いではありましたが
先に述べたようにパ・ド・シスの煌めくアクセントも含めたパステルカラーのふんわり感、
さりげなく同系色の丸みある薔薇の花が付いた1幕オーロラ姫のピンク色のチュチュを始め概ねしっかり王道なデザインである点もおとぎ話の世界観を壊さぬ理由でしょう。
何しろ、ユニークなマラーホフ版以前の東京バレエ団による眠りはいかんせん衣装装置がいつの時代かと疑念を持たざるを得ないデザインで
レトロと言えば響きが良いのでしょうがベジャールやキリアン、ノイマイヤー作品をもレパートリーに取り入れ
海外公演回数多数のバレエ団が上演しているとは思えぬものでした。東バの眠りについて最初に触れたのは
勝又まゆみさんと当時10代であった首藤康之さん(ルグリが目標と堂々宣言なさっていました)のインタビュー記事とグラン・パ・ド・ドゥ写真で
もう1枚インパクトがあったのは1990年代中頃に出版された『バレリーナのアルバム』にて現芸術監督斎藤友佳理さんによる結婚式での
可憐なオーロラ姫写真にも息を呑み、東京バレエ団による眠りならばきっと秀逸な振付演出衣装であろうと期待を胸に初鑑賞したのが随分経ってからで2005年。
小出領子さんとマニュエル・ルグリ主演で、ダンサーの技術は高いながら
繰り返しになるが謎の配色揃いの衣装に驚き、夢の場における茶色いハワイアンダンサーのような森の妖精達が横切ったぐらいで王子はオーロラに接吻。
呆気ない短さに加え、世界バレエフェスティバルの全幕プログラムでも上演を重ねていた事実に再度仰天したものです。
そんな訳で、長くなりましたが子どもバレエとしてでも多少は突っ込みどころのある衣装はあっても
2012年の所謂王道古典な眠りのバレエ団上演再始動に喜びを覚えた次第です。
一部の衣装は踏襲され、中でも結婚式のオーロラ姫の金銀が光るチュチュは懐かしい嬉しさが募りました。
フロリナ王女の重厚な衣装も再度観察したかったのですが、子ども版の上品なブルーチュチュも素敵でしたのでこれで良いでしょう。
当初は8月に祭りのタイトル通りめぐろパーシモンホールでの開催予定が9月に延期となり会場は上野に変更。
子どもバレエにはいたく大きな空間でしたが、3階席までも見せ場の面白さ、衣装の特徴もしっかりと伝わり
パ・ド・シスにおいてはリラ以外も全員異なる色彩であるだけでも合格点笑。(石の色が違うだけでは客席からは分かりません)
メルヘンチックな楽しさが詰まった東バオリジナル眠りを心から堪能いたしました。
マリインスキーでの世界初演から130年、眠り探訪今年はまだまだ続きます。
扇風機、この日も全開で頑張っていました。
上野動物園を訪れ、完成したばかりのパンダの森にも行って参りました。シンシンとリーリーが過ごしています。屋内の撮影は禁止。
シンシンは背中を向けて笹の食事に没頭、リーリーは歩き回っていました。
シャンシャンは入場門近くの以前からある場所にて生活していて、ついに初めて見ることができ感激。
オーロラ姫と同様、国家レベルの祝福を受けて誕生した姫らしくコロコロとした顔立ちが可愛らしい女の子です。写真は禁止。
壁に描かれた動物たちのパキータ。飲食における前に屈んだ体勢で1列に並ぶと、アダージオでの対角線上に並んだコール・ド・バレエを彷彿。
6年前には奈良の東大寺裏手にて、早朝に鹿達のパキータを鑑賞できました。こちらの記事、上から3枚目の写真です。
帰りは上野駅近くの喫茶店王城へ。名前の響きが素敵でございます。ちなみに以前訪問した喫茶古城は定休日。
管理人には似合いませんが笑、ブルーが鮮やかなクリームソーダ。フロリナ王女も白雪姫も上品な青い衣装を纏っていました。
クリームが溶けて炭酸の刺激が中和されていきます。
基本甘味炭酸飲料は昔から苦手でワシントンD.C.へ行く機内にて「スプライト」の味を知らずにうっかり選んでしまい、一口含んだだけでむせてしまったほど。
隣席のパキスタン系の男女2人組が優しく、随分と心配してくれたのは救いでした。
そういえば、まもなくの9月の連休と言えば11年前にモスクワへ行った時期。
GO TOトラベルが来月より東京発着も対象になるとはいうものの海外旅行が可能になるまではだいぶ時間がかかりそうです。
管理人にとって、もしや2009年のシルバーウィークが人生最後の海外渡航となってしまうのだろうかと考えが過る2020年の9月連休でございます。
モスクワ中心部行きのアエロエクスプレス乗り場が分からずシェレメチェボ空港屋外で迷子になって
敷地内で野生のシベリアンハスキーに間近で遭遇し恐怖感が強過ぎて脳の働きがおかしくなったのか
嘗ては「生類憐みの令」制定国から来た者であると硬直した身体で訴えた到着直後が懐かしい。当時は冷や汗ものでしたが今となっては楽しい笑い話です。
2020年9月17日木曜日
【注目】9月20日(日)開催オンライントークイベント/バレエダンサー《菊地研x福田圭吾x八幡顕光》
9月20日(日)20時より、牧阿佐美バレヱ団の菊地研さん、新国立劇場バレエ団の福田圭吾さん、
ロサンゼルスバレエ団の八幡顕光さんによるオンライントークイベントが開催されます。
https://peatix.com/event/1630382/view
※ホームページより抜粋
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~バレエダンサーのオンライン・トークイベント ~
《菊地研x福田圭吾x八幡顕光》
同世代のバレエダンサーによるフリートークをお楽しみください!
★菊地研(牧阿佐美バレヱ団プリンシパル)
★福田圭吾(新国立劇場バレエ団ファーストソリスト)
★八幡顕光(ロサンゼルスバレエ・ゲストプリンシパル)
20:00~21:15 フリートーク
21:15~21:30 質問コーナー
(コメントをお送りください)
皆さんからのご質問は事前にも受け付けますので、
お申し込み時にメールでお送りください。
◎オンライン会議ツール「Zoom」を使用します
・お持ちのスマートフォン/タブレット/パソコンでご参加できます
・アカウント開設や登録作業はいりません
〈ご参加費〉1,000円
〈対象〉先着90名様
〈お申し込み期限〉2020年9月19日(土)20時
〈お申し込み後〉
イベント前日の21時30分までに招待URLとパスワードを送ります
【ご注意点】
※イベント当日19時50分以降は、対応不可となりますのでご了承ください
※ご返金対応はいかなる理由でもできかねるため充分ご留意ください
〈接続確認のお願い〉
当日開始45分前から待機待ちの状態でログインできます。
開始30分前までに、必ず接続状態の確認を行ってください
〈ご返金について〉
ご参加者様の接続状態によってご参加不可となった場合でも、
ご返金はできかねるため何卒ご了承をよろしくお願いいたします。
〈お問い合わせ〉
peatixのメールからお問い合わせください
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劇場稼働が困難になって以降ウェブ上でのトークイベントは多数開催されていますが
昭和末期生まれの同世代同士、どんな話を繰り広げるのか大変楽しみです。
幸いにもお三方のバレエ団デビューの頃の舞台を鑑賞しており、菊地さんは10代でローラン・プティ振付『デューク・エリントン・バレエ』初演(2001年)で
ソロに抜擢された鮮烈な舞台は19年が経過した現在も覚えております。
八幡さんは2005年に新国立劇場バレエ団に入団してすぐ、怪我で出演不可能になったゲストの代役としてデヴィッド・ビントレー振付『カルミナ・ブラーナ』日本初演にて
神学生2を見事務められ、あたかも最初から配役されていたとしか思えぬ物怖じしない大胆さにたまげソリスト昇格まで時間を要さなかったのは納得でした。
代役抜擢のエピソードは他のインタビューでも語っていらっしゃいましたが、休日にスーパー銭湯へ行く途中にバレエ団から連絡が入って
先輩の指導を銭湯で受け練習していたとも読み、期待に応えようと無我夢中であったと窺えます。
現在ゲストプリンシパルとして活躍中のロサンゼルスバレエでのお話も聞かせていただけたら嬉しい限り。
福田さんは入団最初の舞台は2006年『ライモンダ』。チャルダシュで見つけ、山本隆之さんと同じスタジオご出身程度にしか意識しておりませんでしたが
2009年のミックス・プログラムで抜擢されたトワイラ・サープ振付『プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ』は見せ方やユーモアも入り交じった表現、
心から楽しんでいる様子が役にぴたりと嵌り、ファーストキャストでゲストのデニス・マトヴィエンコよりも遥かに見入ったと記憶しており
小野絢子さんとの初々しくも息の合ったコンビも嬉しい実現でした。
そして昨年2019年、入団13年で射止めた全幕主演『アラジン』タイトルロールでは
地元大阪の方々のみならずバレエ団の先輩達も大勢会場に駆け付けて祝福。客席はあたたかな声援に溢れ返り
先輩に可愛がられ後輩に慕われているのであろう福田さんの人柄を物語る公演でした。
大和雅美さんと共に振付と出演の両方をこなしていらっしゃるDAIFUKUシリーズも毎回心待ちにしている企画公演です。(横浜にて今月末に開催)
オンライントークではフリートークの後には質問コーナーも設けられているとのこと。視聴者が投げかける質問にも興味津々でございます。
懐かしいプログラム3冊。牧阿佐美バレヱ団2001年『デューク・エリントン・バレエ』、新国立劇場バレエ団2005年『カルミナ・ブラーナ』、2009年バレエ・ザ・シック
ロサンゼルスバレエ団の八幡顕光さんによるオンライントークイベントが開催されます。
https://peatix.com/event/1630382/view
※ホームページより抜粋
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~バレエダンサーのオンライン・トークイベント ~
《菊地研x福田圭吾x八幡顕光》
同世代のバレエダンサーによるフリートークをお楽しみください!
★菊地研(牧阿佐美バレヱ団プリンシパル)
★福田圭吾(新国立劇場バレエ団ファーストソリスト)
★八幡顕光(ロサンゼルスバレエ・ゲストプリンシパル)
20:00~21:15 フリートーク
21:15~21:30 質問コーナー
(コメントをお送りください)
皆さんからのご質問は事前にも受け付けますので、
お申し込み時にメールでお送りください。
◎オンライン会議ツール「Zoom」を使用します
・お持ちのスマートフォン/タブレット/パソコンでご参加できます
・アカウント開設や登録作業はいりません
〈ご参加費〉1,000円
〈対象〉先着90名様
〈お申し込み期限〉2020年9月19日(土)20時
〈お申し込み後〉
イベント前日の21時30分までに招待URLとパスワードを送ります
【ご注意点】
※イベント当日19時50分以降は、対応不可となりますのでご了承ください
※ご返金対応はいかなる理由でもできかねるため充分ご留意ください
〈接続確認のお願い〉
当日開始45分前から待機待ちの状態でログインできます。
開始30分前までに、必ず接続状態の確認を行ってください
〈ご返金について〉
ご参加者様の接続状態によってご参加不可となった場合でも、
ご返金はできかねるため何卒ご了承をよろしくお願いいたします。
〈お問い合わせ〉
peatixのメールからお問い合わせください
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劇場稼働が困難になって以降ウェブ上でのトークイベントは多数開催されていますが
昭和末期生まれの同世代同士、どんな話を繰り広げるのか大変楽しみです。
幸いにもお三方のバレエ団デビューの頃の舞台を鑑賞しており、菊地さんは10代でローラン・プティ振付『デューク・エリントン・バレエ』初演(2001年)で
ソロに抜擢された鮮烈な舞台は19年が経過した現在も覚えております。
八幡さんは2005年に新国立劇場バレエ団に入団してすぐ、怪我で出演不可能になったゲストの代役としてデヴィッド・ビントレー振付『カルミナ・ブラーナ』日本初演にて
神学生2を見事務められ、あたかも最初から配役されていたとしか思えぬ物怖じしない大胆さにたまげソリスト昇格まで時間を要さなかったのは納得でした。
代役抜擢のエピソードは他のインタビューでも語っていらっしゃいましたが、休日にスーパー銭湯へ行く途中にバレエ団から連絡が入って
先輩の指導を銭湯で受け練習していたとも読み、期待に応えようと無我夢中であったと窺えます。
現在ゲストプリンシパルとして活躍中のロサンゼルスバレエでのお話も聞かせていただけたら嬉しい限り。
福田さんは入団最初の舞台は2006年『ライモンダ』。チャルダシュで見つけ、山本隆之さんと同じスタジオご出身程度にしか意識しておりませんでしたが
2009年のミックス・プログラムで抜擢されたトワイラ・サープ振付『プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ』は見せ方やユーモアも入り交じった表現、
心から楽しんでいる様子が役にぴたりと嵌り、ファーストキャストでゲストのデニス・マトヴィエンコよりも遥かに見入ったと記憶しており
小野絢子さんとの初々しくも息の合ったコンビも嬉しい実現でした。
そして昨年2019年、入団13年で射止めた全幕主演『アラジン』タイトルロールでは
地元大阪の方々のみならずバレエ団の先輩達も大勢会場に駆け付けて祝福。客席はあたたかな声援に溢れ返り
先輩に可愛がられ後輩に慕われているのであろう福田さんの人柄を物語る公演でした。
大和雅美さんと共に振付と出演の両方をこなしていらっしゃるDAIFUKUシリーズも毎回心待ちにしている企画公演です。(横浜にて今月末に開催)
オンライントークではフリートークの後には質問コーナーも設けられているとのこと。視聴者が投げかける質問にも興味津々でございます。
懐かしいプログラム3冊。牧阿佐美バレヱ団2001年『デューク・エリントン・バレエ』、新国立劇場バレエ団2005年『カルミナ・ブラーナ』、2009年バレエ・ザ・シック
2020年9月14日月曜日
アステラスの代替合同企画 新国立劇場研修所 ヤングアーティスト オペラ&バレエ ガラ 9月12日(土)
9月12日(土)、新国立劇場にて新国立劇場研修所 ヤングアーティスト オペラ&バレエ ガラを観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/opera-ballet-gala/
指揮:
第1部 井田勝大
第2部 柴田真郁
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
『トリプティーク~青春三章~』
音楽:芥川也寸志
振付:牧阿佐美
服部由依 中島瑞生(新国立劇場バレエ団アーティスト/研修所第11期修了)
菅沼咲希 渡邊拓朗(新国立劇場バレエ団アーティスト/研修所第12期修了)
加藤里佳 狩俣瑠風 吉田朱里
青山悠希 安達美苑 根本真菜美 福田天音 山本菜月
縄田花怜 久我音寧
青木恵吾 𡈽屋文太 髙橋隼世 竹花治樹
2012年のバレエアステラスでの初鑑賞以来、和洋が織り交ざったほんのり哀切さを含む歯切れ良い曲調も気に入り生演奏での鑑賞を待ち侘びておりました。
どの研修生達が折り目正しい初々しさが好印象で、バレエ団から客演の中島さん、渡邊さんも大活躍。
2人だけで舞台で並び踊ると個性の違いが引き立ち、特に渡邊さんの力強さのある頼もしい存在感は観ていて爽快でした。
以前のぴっちり斜め分けに比較すると丸みある前髪で整えた髪型も二重丸。(兄弟で髪型考察お許しを)
『海賊』第2幕より パ・ド・ドゥ
音楽:アドルフ・アダン
振付:マリウス・プティパ
石山蓮
阿部裕恵(牧阿佐美バレヱ団ソリスト/研修所第11期修了)
阿部さんの清らかなメドーラが愛らしく、正確な技術から繰り出すすっきりとした踊りが目を惹きました。
ヴァリエーションはシェル男爵作曲のアレグロな『シンデレラ』より。
研修所公演で代々着用されていると思われる、牧版ライモンダ2幕に似た濃い青と金色を基調としたチュチュは一度舞台で観てみたかったためじっくり観察。
(2016年頃の研修所のチラシにて廣田奈々さんか廣川みくりさんが着ていらした舞台写真が掲載されていたと記憶)
そして驚いたのが石山さん。まだ細く体格はこれからの段階ですが美しく上品でメリハリの効いた踊り方で魅せ、次のパに移る過程も実に丁寧で
阿部さんに心を尽くして(先輩ですから尽くし立てるしかないとは思いますが)サポートも変に危うい箇所も見当たらず。今後が楽しみです。
『眠れる森の美女』第3幕より パ・ド・ドゥ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付:ウエイン・イーグリング(マリウス・プティパ原振付による)
小野絢子(新国立劇場バレエ団プリンシパル/研修所第3期修了)
福岡雄大(新国立劇場バレエ団プリンシパル)
お帰りなさいとの気持ちが込められた拍手で迎えられ、看板ペア久々のオペラパレス登場。
本拠地復帰の喜びがそのまま祝祭感と重なり、視線の合わせ方も吸い付くような通わせで
抜粋での披露ながらこれまで以上にクリアーで輝きに満ちたパドドゥでした。
衣装はイーグリング版のままでしたが小野さんのティアラがカチューシャ型ではなく真珠のクラウン型を採用し
翌日はバレエ団公演着用のカチューシャ型に戻ったもよう。
マリインスキーのセルゲイエフ版でのグラン・パ・ド・ドゥ披露前に一端宝石の精達やお小姓達が登場し前座及びオーロラと王子のお出迎え係を務める導入部も
長めにたっぷり聴かせる幕開けであった点も喜々たるもので、(ボリショイ版にもあったかと記憶。ロシア系ではお馴染みか)今か今かと待ち焦がれる期待感の高まりと
宮廷の世界に入り込む入念な心の準備に繋がった気がいたします。但しやや長め、加えて
イーグリング振付と明記されたプログラムでの演奏は賛否両論分かれるかもしれません。
『パキータ』より グラン・パ・クラシック
音楽:レオン・ミンクス ほか
振付:マリウス・プティパ ほか
パキータ:吉田朱里
リュシアン:小柴富久修(新国立劇場バレエ団ファースト・アーティスト)
パ・ド・トロワ:加藤里佳 安達美苑 𡈽屋文太
岸谷沙七優(新国立劇場バレエ団アーティスト/研修所第15期修了) 加藤里佳 狩俣瑠風 服部由依 安達美苑 菅沼咲希
松宮里々子(新国立劇場バレエ団登録アーティスト/研修所第15期修了) 青山悠希 根本真菜美 福田天音 山本菜月
縄田花怜 神谷歩乃加 久我音寧
ガラにて、複数作品終えてから休憩挟まずの上演の『パキータ』と知ってすぐさま浮かんだのは
アントレ、アダージオとフィナーレ抜粋でヴァリエーションもカットされていた
ダイアナ妃も臨席されていた1990年代初頭のキーロフ・バレエによる英国ロイヤルオペラハウス公演の映像。
(主演はオリガ・チェンチコワと現ボリショイ・バレエ団監督のマハーク・ワジーエフ。古い話ですみません)
同路線で上演かと思いきや、パ・ド・トロワやヴァリエーション付きのボリューム有り版で
パキータ役の吉田朱里さんの大らかでパワーもある踊りが主役に相応しく、 コール・ドも品のある綺麗な研修生達が揃い、素直で一生懸命な様子に応援せずにいられませんでした。
音楽はさらさらと流れる印象でもう少しキビキビと締まりある演奏の方が好みに近かったものの、晴れ晴れとした気分になれる作品です。
プログラムには未掲載でしたがフィナーレはオペラ『エフゲニー・オネーギン』よりポロネーズ。
華麗な曲調に合わせて全員集合し、最後に登場した小野さん福岡さんへの拍手はひときわ沸いて大喝采。
第2部
出演:オペラ研修所 第21期生、第22期生、第23期生
序曲
W.A. モーツァルト交響曲第38番『プラハ』より、第3楽章
◆ G. ロッシーニ 『チェネレントラ』 よりカヴァティーナ「四月の日々に飛ぶ蜜蜂のように」
仲田尋一
◆ W.A. モーツァルト 『コジ・ファン・トゥッテ』 よりアリア「愛のそよ風は」
鳥尾匠海
◆ W.A. モーツァルト 『魔笛』 よりアリア「愛の喜びは消え」
原田奈於
間奏曲
J.オッフェンバック『ホフマン物語』より「ホフマンの舟歌」
◆ W.A. モーツァルト 『フィガロの結婚』 より二重唱「ひどいぞ!どうして今まで」
河田まりか、大久保惇史
◆ G. ドニゼッティ 『ランメルモールのルチア』 よりカヴァティーナ「激しい苦しみ」
程 音聡
◆ C. グノー 『ロメオとジュリエット』 よりアリア「私は愛に生きたい」
井口侑奏
フィナーレ
J.シュトラウス2世『こうもり』より
オペラにつきましては鑑賞機会が非常に少なく割愛。しかし知識不足でも歌や音楽をゆったりと聴くだけでも想像以上に楽しく
間奏曲とフィナーレが新国立劇場バレエ団レパートリーでも馴染み深い曲で懐かしさに歓喜いたしました。
演奏も良かったのか、ホフマンの舟歌では港の海の揺らめきがそのまま眼前に出現したかと錯覚して吸い込まれそうになり
2018年のバレエ団公演『ホフマン物語』での官能坊主客人を思い出しながらニンマリ。少数派であるとは思いますが
ダレル版『ホフマン物語』はいたく好きで、2015年のバレエ団初演時から全編通して見惚れ聴き惚れた作品であるため再演を待ち望んでおります。
フィナーレではプティ版『こうもり』も思い起こしつつ日本人名演者のヨハンを回想しそして
まだ観ぬヨハンを妄想。(勝手に設定、役所の中間管理職あたりで新聞が似合うお父さんでありましょう笑)
それから女性の衣装にも注目し、原田さんの水色とグレーが混在した上品な色彩にうっとり。
演奏会は余り足を運ぶ方ではありませんが、2年前の3月にトゥールーズキャピトル管弦楽団の演奏会へ行った際に隣席の方より
突如足を運んだバレエ好きだからこそ一層楽しめるポイントを伝授していただきその1つがヴァイオリニストの衣装観察でした。
それにしても、滅多に来場しないと言いながらこんな大雪の日に当日チケットを入手して
トゥールーズの火の鳥を聴きに来たバレエオタクを当初は不思議がり、理由を知って物珍しい目且つ親切にしてくださった隣席の方は
お元気でいらっしゃるだろうかと気にかかる今日この頃でございます。
ところで、偶然なのか歌は6曲中3曲が題名に「愛」の文字入りで占有率高し。
第2部開演前はプログラムを見開き、『愛の水中花』冒頭部分が脳裏を過っていた管理人でございます。
話が大分右往左往して失礼。当初は昨年に続き2日間バレエ・アステラス開催を予定していましたが海外で活躍中の日本のダンサー達は来日が見込めず中止。
代替として急遽企画された公演ながら、バレエとオペラ両研修生達の晴れ舞台が実現したのは喜ばしく
しかもオーケストラ演奏付きで堪能できたのは誠に心潤うひとときでした。
バレエ研修所所長の牧阿佐美さん、オペラ研修所所長の永井和子さんのお話から数ヶ月に渡って踊りを直接見てあげられない歌を聴いてあげられない
対面での指導ができぬ苦しさもどかしさが伝わり、観客の前でしかもオペラパレスにてオーケストラ付きの披露は自信や励みになったに違いありません。
事態が早期に収束し、研修生達が思い切り練習を積める日が訪れるよう切に願います。
中劇場では半沢直樹朗読劇。感動したら拍手する、喝采だ!
かの決め台詞をバレエに置換しようと試みたが我が軽脳ではこれが限界。良案求む。
因みにドラマ主演の堺雅人さんは吹奏楽部にてホルン経験者でいらっしゃいます。
記入台、今回はこちらで記入。『ドン・キホーテ』では予め用意して持参する予定でおります。(何しろ7回鑑賞予定)
2月末の『マノン』以来の訪問、ビールで乾杯。1杯にとどめましたが十分でございます。
ところでチラシやプログラム、ポスター上部のトリプティークには間違いがありましたらすみません。関晶帆さんや木村優里さん
土方萌花さんに廣川みくりさん、横山柊子さんらしき方々が写っていらっしゃり、月日の流れを感じます。
2013年10月の新国立劇場バレエ研修所 第9期生・第10期生発表公演かと思われ、皆様あどけなく初々しい。
新国立劇場バレエ団10月31日夜公演の『ドン・キホーテ』(米沢唯さん速水渉悟さん主演)はNHKのチコちゃんとの企画で有料オンライン配信されます。
大英帝国勲章受章者の吉田監督に対してチコちゃんがあの決め台詞を口走ることは無いとは思いますが笑、共演も楽しみです。
※以下のリンクより、既に10名のダンサーによるインタビュー動画公開中です。
https://chicoissyo.com/special/ballet.html
2020年9月11日金曜日
深川秀夫さん
日本から世界へと羽ばたき海外で活躍するバレエダンサーの先駆者として
振付家としても多数の作品を発表された深川秀夫さんが逝去されました。心よりお悔やみ申し上げます。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020090500479&g=soc
コンクールで青い鳥を踊られる映像が広まり初めて踊る深川さんを拝見いたしましたが、
何とも端正で張りがあり、すらりと伸びた脚も美しく、目も心も掴まれる踊りに大変驚きました。
映像といえば残っていれば見たいと興味が募ってやまぬ放送があり、藤井修治さんの記事によれば
コンクール入賞後NHKのスタジオ収録放送にも何度も出演なさっていたようで
黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥを披露された際には大きなスタジオがまだ無く、狭いスタジオではカメラが追いつかないからと
スタッフからは小さく美しい跳躍を要請するも実現は不可能でどうしても大きく跳んでしまい
カメラからはみ出てスタッフ側は困り果てていたと読みました。叶うものなら見てみたい現場です。
1967年お正月のテレビでのバレエ・コンサートでは谷桃子さんや貝谷八百子さんらと出演され、
市川せつ子さん組まれた『薔薇の精』もさぞかし浮遊感のある跳躍に視聴者は魅せられていたと想像いたします。
そういえばボリショイ・バレエ団が初来日した頃、ボリショイ特有の雄々しい跳躍に対応したのは野球のホームランボールを追うカメラであったそうで
機材の開発がまだまだ追い付かず、知恵を絞り出した先人達には敬意を表したいと心底思いますが
劇場ならまだしも、狭いテレビ収録スタジオではホームランカメラによる撮影は不可能であったのでしょう。
深川さんの作品はご出身の名古屋近郊や関西、中部地域に比較すると関東では上演機会が少ないため多くは鑑賞しておりませんが
お洒落でどこかユーモラスで、素敵なセンスが光る作品ばかりで鮮やかに記憶が呼び起こされます。
作品についてあれこれ語るのは恐縮でございますが、初鑑賞の頃はこういった記録を残しておりませんでしたので振り返りも兼ねて綴って参りたいと思います。
深川さんの作品の初鑑賞は2011年の4月。京都にて開催された、ドイツのアイゼナハ歌劇場バレエ団でも活躍され深川さんとの親交もあった
原美香さんのリサイタルでした。東日本大震災の発生から日が浅く、東京都内も余震が続き地域によっては計画停電が実施され
対象区域でなくても郊外の商店街のみならず都心部の繁華街ですら照明を落として対応にあたっていた頃で
物流もまだ回復せず、職場近くの飲食店の軒先には温かい食事がある旨が貼り出されるなど決して被害が大きくはなかった地域も普段通りの生活とは言い難い状況でした。
京都入りしたのは公演前日で肌寒い気候、出町柳の素朴な宿に泊まりましたが躊躇せずに夜通し暖房を付け
余震を感じずの就寝も久々であった快適な滞在の様子を宿帳に記入してからチェックアウトをした覚えがあります。
さてリサイタル当日、会場は旧京都会館(現ロームシアター)。幕開けは一番のお目当て山本隆之さんがリュシアンを踊られた『パキータ』で元々好きな作品ですが
当時都内は新国立劇場バレエ団の3月公演『ダイナミックダンス!』全日程中止を始め舞台公演の実施が困難な時期であったため
満席の会場に身を置き、音楽が鳴り響く中で幕が上がり、シャンデリアの装飾が視界に入っただけでも胸がじわりと熱くなったものです。
このリサイタルでは深川さんの作品は2本上演され、1本目は『新たなる道』。
先に述べた深川さん作品の特徴とは矛盾しますが華やかお洒落な作風ではなく抑えた色彩を帯び、人物の感情を追求した作品で
解説によれば東西分断中の東ベルリンで踊っていらした頃に目にした西側へ亡命する人々の不安や期待が入り交じった心境に寄り添って振り付けられたようです。
女性7名で踊られ、陰鬱さだけではなく斜め前を向いて前方に手を掲げてのポーズからは光の方向へと突き進む力強さも感じられる作品でした。
そして第3部で披露されたのが『ソワレ・ドゥ・バレエ』。星空の下で色とりどりの煌びやかな衣装を着けたダンサー達が踊る
プリンシパルに男女ペアのソリスト、女性によるコール・ドの構成で、
多数使用されているグラズノフ『四季』の曲が壮大で時には真珠が散りばめられられたかの如く繊細。
星屑のヴェールに包まれた心持ちで鑑賞に浸っていた当時を今も鮮やかに覚えており
日本人の振付家でこうも華麗で洒落た作品を手掛けた方の存在に衝撃を覚えた次第です。
※リサイタルの写真はこちらでご覧いただけます。
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/osaka/detail006590.html
2014年以降はほぼ毎年末鑑賞するようになった大阪の川上恵子バレエスクールにてプログラムの最後に上演されるのが深川さん作品で、度々観る機会に恵まれ
1幕仕立てのスピーディーな展開の『くるみ割り人形』は終盤に雪の王国場面を取り入れて
雪が舞う中でスペインやアラビアなどお馴染みのキャラクター達がクララを見守り、光り輝く銀世界の余韻を残しながら終幕。
クリスマス当日でしたので殊更気分が高揚し劇場を後にしたものです。順番前後して、
花のワルツは女性ソリストが群舞牽引の振付で一度も袖に入らぬダンサー泣かせなハードものでございました。
翌年2015年は『眠れる森の美女』よりオーロラ姫の結婚。1幕と3幕の見せ場を凝縮した版は発表会でもよく上演されますが深川さんの美意識にはまたもや感動を覚え
特に通常は1幕にてオーロラ姫登場前に村人達が踊る花のワルツをパ・ド・シスや宝石の妖精達が踊ってグラン・パ・ド・ドゥの前座を飾る演出には驚かされました。
村人達による牧歌的な雰囲気も良い一方、主軸をリラの精が務め周りを妖精たちと宮廷の人々が固めるといたく煌びやかで絢爛。
6人の妖精たちの膝丈のふんわりとした、色合いが微妙に異なる布を重ね合わせたデザインや
宝石達のシックながらもきらりと光る装飾のバランスが取れたセンスの良いチュチュ効果もあって
曲も違和感がなく、結婚式の祝福感を更に高める効果をもたらしていました。
2016年には『ガーシュイン・モナムール』。モーツァルトとガーシュインの音楽から成る作品で
ロマンティックバレエのバレリーナ達が静止しているかと思えば着替えて丈の短い衣装で華麗に踊り、最後は一斉紙テープの落下で幕。ショーを観ている気分でした。
2017年は『グラズノフ・スイート』。『ライモンダ』や『四季』の曲で構成で構成され、パ・ド・ドゥの曲で群舞が踊る光景も新鮮で順序も不自然さがなく
多色が織りなす万華鏡のような照明にもうっとり。グラズノフ好きにはたまらぬ作品でした。狂喜乱舞しないほうが難しうございます。
作品のみならず、プログラムでの挨拶文が深川さんらしくスマート。変にかしこまった文ではなく
優しく、そしてクスリと笑みが零れるような語りかける調子で毎回綴っていらっしゃり、川上恵子先生に対しては、いつも「マダム」と記されていました。
遡って同年2月には新国立劇場バレエ団2月公演「ヴァレンタイン・バレエ」にて『ソワレ・ドゥ・バレエ』よりパ・ド・ドゥがレパートリー入り。
(横浜バレエフェスティバルでの上演を当時の大原永子監督がご覧になって決意なさったと何処かで読んだ記憶あり)
評判も頗る良く、7月のバレエ・アステラスでも披露されました。因みにヴァレンタイン・バレエ公演では管理人近くの席にいらしたカップルが
背もたれに背中を付けて姿勢はきちんとされつつもソワレ…のときには手を握り合ってご鑑賞。
星空に見守られロマンティックな雰囲気に包まれるのは間違いない作品です。
深川さん作品を観続けたいと願って止まず。特に『ソワレ・ドゥ・バレエ』はもう一度全編通して鑑賞したい作品で、大勢の方にもご覧いただけますように。
心を込めて作られたお洒落で洗練された作品の数々は、これからも踊り継がれていくと信じております。
振付家としても多数の作品を発表された深川秀夫さんが逝去されました。心よりお悔やみ申し上げます。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020090500479&g=soc
コンクールで青い鳥を踊られる映像が広まり初めて踊る深川さんを拝見いたしましたが、
何とも端正で張りがあり、すらりと伸びた脚も美しく、目も心も掴まれる踊りに大変驚きました。
映像といえば残っていれば見たいと興味が募ってやまぬ放送があり、藤井修治さんの記事によれば
コンクール入賞後NHKのスタジオ収録放送にも何度も出演なさっていたようで
黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥを披露された際には大きなスタジオがまだ無く、狭いスタジオではカメラが追いつかないからと
スタッフからは小さく美しい跳躍を要請するも実現は不可能でどうしても大きく跳んでしまい
カメラからはみ出てスタッフ側は困り果てていたと読みました。叶うものなら見てみたい現場です。
1967年お正月のテレビでのバレエ・コンサートでは谷桃子さんや貝谷八百子さんらと出演され、
市川せつ子さん組まれた『薔薇の精』もさぞかし浮遊感のある跳躍に視聴者は魅せられていたと想像いたします。
そういえばボリショイ・バレエ団が初来日した頃、ボリショイ特有の雄々しい跳躍に対応したのは野球のホームランボールを追うカメラであったそうで
機材の開発がまだまだ追い付かず、知恵を絞り出した先人達には敬意を表したいと心底思いますが
劇場ならまだしも、狭いテレビ収録スタジオではホームランカメラによる撮影は不可能であったのでしょう。
深川さんの作品はご出身の名古屋近郊や関西、中部地域に比較すると関東では上演機会が少ないため多くは鑑賞しておりませんが
お洒落でどこかユーモラスで、素敵なセンスが光る作品ばかりで鮮やかに記憶が呼び起こされます。
作品についてあれこれ語るのは恐縮でございますが、初鑑賞の頃はこういった記録を残しておりませんでしたので振り返りも兼ねて綴って参りたいと思います。
深川さんの作品の初鑑賞は2011年の4月。京都にて開催された、ドイツのアイゼナハ歌劇場バレエ団でも活躍され深川さんとの親交もあった
原美香さんのリサイタルでした。東日本大震災の発生から日が浅く、東京都内も余震が続き地域によっては計画停電が実施され
対象区域でなくても郊外の商店街のみならず都心部の繁華街ですら照明を落として対応にあたっていた頃で
物流もまだ回復せず、職場近くの飲食店の軒先には温かい食事がある旨が貼り出されるなど決して被害が大きくはなかった地域も普段通りの生活とは言い難い状況でした。
京都入りしたのは公演前日で肌寒い気候、出町柳の素朴な宿に泊まりましたが躊躇せずに夜通し暖房を付け
余震を感じずの就寝も久々であった快適な滞在の様子を宿帳に記入してからチェックアウトをした覚えがあります。
さてリサイタル当日、会場は旧京都会館(現ロームシアター)。幕開けは一番のお目当て山本隆之さんがリュシアンを踊られた『パキータ』で元々好きな作品ですが
当時都内は新国立劇場バレエ団の3月公演『ダイナミックダンス!』全日程中止を始め舞台公演の実施が困難な時期であったため
満席の会場に身を置き、音楽が鳴り響く中で幕が上がり、シャンデリアの装飾が視界に入っただけでも胸がじわりと熱くなったものです。
このリサイタルでは深川さんの作品は2本上演され、1本目は『新たなる道』。
先に述べた深川さん作品の特徴とは矛盾しますが華やかお洒落な作風ではなく抑えた色彩を帯び、人物の感情を追求した作品で
解説によれば東西分断中の東ベルリンで踊っていらした頃に目にした西側へ亡命する人々の不安や期待が入り交じった心境に寄り添って振り付けられたようです。
女性7名で踊られ、陰鬱さだけではなく斜め前を向いて前方に手を掲げてのポーズからは光の方向へと突き進む力強さも感じられる作品でした。
そして第3部で披露されたのが『ソワレ・ドゥ・バレエ』。星空の下で色とりどりの煌びやかな衣装を着けたダンサー達が踊る
プリンシパルに男女ペアのソリスト、女性によるコール・ドの構成で、
多数使用されているグラズノフ『四季』の曲が壮大で時には真珠が散りばめられられたかの如く繊細。
星屑のヴェールに包まれた心持ちで鑑賞に浸っていた当時を今も鮮やかに覚えており
日本人の振付家でこうも華麗で洒落た作品を手掛けた方の存在に衝撃を覚えた次第です。
※リサイタルの写真はこちらでご覧いただけます。
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/osaka/detail006590.html
2014年以降はほぼ毎年末鑑賞するようになった大阪の川上恵子バレエスクールにてプログラムの最後に上演されるのが深川さん作品で、度々観る機会に恵まれ
1幕仕立てのスピーディーな展開の『くるみ割り人形』は終盤に雪の王国場面を取り入れて
雪が舞う中でスペインやアラビアなどお馴染みのキャラクター達がクララを見守り、光り輝く銀世界の余韻を残しながら終幕。
クリスマス当日でしたので殊更気分が高揚し劇場を後にしたものです。順番前後して、
花のワルツは女性ソリストが群舞牽引の振付で一度も袖に入らぬダンサー泣かせなハードものでございました。
翌年2015年は『眠れる森の美女』よりオーロラ姫の結婚。1幕と3幕の見せ場を凝縮した版は発表会でもよく上演されますが深川さんの美意識にはまたもや感動を覚え
特に通常は1幕にてオーロラ姫登場前に村人達が踊る花のワルツをパ・ド・シスや宝石の妖精達が踊ってグラン・パ・ド・ドゥの前座を飾る演出には驚かされました。
村人達による牧歌的な雰囲気も良い一方、主軸をリラの精が務め周りを妖精たちと宮廷の人々が固めるといたく煌びやかで絢爛。
6人の妖精たちの膝丈のふんわりとした、色合いが微妙に異なる布を重ね合わせたデザインや
宝石達のシックながらもきらりと光る装飾のバランスが取れたセンスの良いチュチュ効果もあって
曲も違和感がなく、結婚式の祝福感を更に高める効果をもたらしていました。
2016年には『ガーシュイン・モナムール』。モーツァルトとガーシュインの音楽から成る作品で
ロマンティックバレエのバレリーナ達が静止しているかと思えば着替えて丈の短い衣装で華麗に踊り、最後は一斉紙テープの落下で幕。ショーを観ている気分でした。
2017年は『グラズノフ・スイート』。『ライモンダ』や『四季』の曲で構成で構成され、パ・ド・ドゥの曲で群舞が踊る光景も新鮮で順序も不自然さがなく
多色が織りなす万華鏡のような照明にもうっとり。グラズノフ好きにはたまらぬ作品でした。狂喜乱舞しないほうが難しうございます。
作品のみならず、プログラムでの挨拶文が深川さんらしくスマート。変にかしこまった文ではなく
優しく、そしてクスリと笑みが零れるような語りかける調子で毎回綴っていらっしゃり、川上恵子先生に対しては、いつも「マダム」と記されていました。
遡って同年2月には新国立劇場バレエ団2月公演「ヴァレンタイン・バレエ」にて『ソワレ・ドゥ・バレエ』よりパ・ド・ドゥがレパートリー入り。
(横浜バレエフェスティバルでの上演を当時の大原永子監督がご覧になって決意なさったと何処かで読んだ記憶あり)
評判も頗る良く、7月のバレエ・アステラスでも披露されました。因みにヴァレンタイン・バレエ公演では管理人近くの席にいらしたカップルが
背もたれに背中を付けて姿勢はきちんとされつつもソワレ…のときには手を握り合ってご鑑賞。
星空に見守られロマンティックな雰囲気に包まれるのは間違いない作品です。
深川さん作品を観続けたいと願って止まず。特に『ソワレ・ドゥ・バレエ』はもう一度全編通して鑑賞したい作品で、大勢の方にもご覧いただけますように。
心を込めて作られたお洒落で洗練された作品の数々は、これからも踊り継がれていくと信じております。
2020年9月8日火曜日
延期1ヶ月を経てのめぐろバレエ祭り 東京バレエ団 The Tokyo Ballet Choreographic Project 2020 9月5日(土)
9月5日(土)、めぐろパーシモンホールにて東京バレエ団 The Tokyo Ballet Choreographic Project 2020を観て参りました。
8月に上演予定でしたが延期となり、3月の『ラ・シルフィード』以来約5ヶ月半ぶりの公演。無事の上演に安堵しております。
https://www.nbs.or.jp/stages/2020/cgp-08/index.html
※プログラム、キャストはNBSホームページより
"Scramble"
振付:岡崎隼也
音楽:エイチ・ゼットリオ
安西くるみ、工 桃子、相澤 圭、鳥海 創、後藤健太朗、昂師吏功、山下湧吾
若手ダンサー達が溌剌と登場し、空間を大きく使いながらとどまりを知らぬエネルギーを終始ダイナミックに表現。
岡崎さんは緊急事態宣言下の連休に救いの存在であった今年のゴールデンウィークの上野バレエホリデイ@homeにて「家で踊ろう」の振付者として大活躍され
バレエ版24時間テレビの如く連休の供として自宅で1日中再生していたため、よく覚えた次第です。
"RISE" -初演-
振付:木村和夫
音楽:ジョン・ウィリアムズ、ケルティック・ウーマン
柄本 弾
沖香菜子、足立真里亜、上田実歩、榊優美枝、中沢恵理子、菊池彩美、長谷川琴音、
木住野真菜美、花形悠月、本村明日香、栗芝みなみ、鈴木香厘、富田翔子、富田紗永
前半は『シンドラーのリスト』のテーマ曲で柄本さんが時折一輪の薔薇を手に重たい空気を引き摺りながらのソロ。
後半は柄本さんも登場しつつ曲も一変して白い長めのチュチュを纏った女性群舞の見せ場となり、差し込む希望の光を想起。
大人数の構成でチュチュの翻りやフォーメーション含め、上階からも眺めたくなる作品です。
"Calling..." -初演-
振付:岡崎隼也
音楽:カミーユ・サン=サーンス
上野水香
白いレオタード姿の上野さんによるソロで音楽は『動物の謝肉祭』より白鳥。
しなやかな肢体が暗めの照明にくっきりと浮かび上がり、シューズの先端にもきらきらとしたラメが少し散りばめられ
孤高に思わせながらも誘い込むような眼差しも強く、なかなかミステリアス。上野さんだからこそ出来た作品でしょう。
"理由"
振付:岡崎隼也
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ、ジャズトロニック
秋山 瑛、涌田美紀、足立真里亜、中沢恵理子
2018年の同プロジェクトスタジオパフォーマンスにて鑑賞した作品ですが、より磨かれ練られた印象。
前半は『ロミオとジュリエット』葬送曲で不協和音が何重にも交差する重厚な音楽と共に渦巻くように
悲嘆や苦悩を叫ぶが如く全身で表現。しかし決して過剰にはならぬよう配慮も行き届き、ただ悲しみを仰々しく迸らせるのではなく
静止して美しさを見せる部分と力強い動きにメリハリを付けて冗長さは皆無。
椅子を使う演出はしばしば観るものの身体の線の見せ方やポーズ1つ1つにも工夫が凝らされ、1階席で観ていても立体感と奥行きを感じさせる振付でした。
後半はジャズトロニックの音楽で、肩の力が抜けたような穏やかさを体現し緊迫や呪縛から解き放たれていく流れを想起。
異なる色合いの曲を不自然さ無く組み合わせています。
"Adagietto"
振付:ブラウリオ・アルバレス
音楽:グスタフ・マーラー
奈良春夏-秋元康臣、岸本夏未-樋口祐輝、
上田実歩-山田眞央、瓜生遥花-岡﨑 司、前川琴音-海田一成
こちらもスタジオパフォーマンスで鑑賞した作品。ただ、大きな赤い布を用いたり照明、ペアの配し方も舞台を目一杯使う大掛かりな演出であるため
舞台上演の方が一層堪能できました。数々の振付家の創作欲を掻き立てる音楽でこの曲でつまらぬ振付を鑑賞すると子守唄まっしぐらですが(失礼)
静けさからじわじわと曲調のスケールが大きくなる中で身体のフォルムの美しさや各ペアが並ぶポーズの連なりを眺めているとあっという間です。
"夜叉"
振付:ブラウリオ・アルバレス
音楽:アルトゥーロ・マルケス
中川美雪-宮川新大
榊優美枝-大塚 卓、長谷川琴音-南江祐生、花形悠月-生方隆之介、松永千里-昂師吏功
アルバレスさんの故郷メキシコの作曲家マルケスによる解放感のあるエキゾチックな音楽に振り付けられた作品。
主軸の中川さんが髪を下ろし、スパスパと斬り込む踊りとグレーの全身タイツで怪しげな女神然とした存在感に痺れ
今年2月のアリーナ・コジョカルドリームプロジェクトでソリストを踊られたバランシン『バレエ・インペリアル』よりもずっとお似合いでした。
全身タイツに薄い打掛のような衣装の組み合わせもユニークで、見映えも良し。
アルバレスさんの作品といえば、『パリのアメリカ人』に振り付けた、変化に富んだ曲調に個性まちまちの乗客の様子がぴたりと嵌った
満員電車が題材の『ドアが閉まります』はもう一度観たいと願います。
"運命"-抜粋版-
振付:岡崎隼也
音楽:ロディオン・シチェドリン
伝田陽美、柄本 弾
政本絵美、秋山 瑛
秋元康臣、池本祥真
沖香菜子、加藤くるみ、樋口祐輝、鳥海 創
何度も耳にしているシチェドリンのカルメンの音楽に岡崎さんが大胆に振付して踊る見せ場をたっぷり取り入れ、ダンサーを適材適所に配置。
伝田さんがホセの愛を一心に求める健気なカルメンを思わせ、向き合って立っているだけでも心の内を吐露するか否かせめぎ合う複雑な感情を匂わせました。
最も目を惹いたのは秋山さんで出演者の中でも小柄な身体にも関わらず踊り出すとダイナミックな斬れ味、しなやかさが頭一つ抜けていて
自然と視線が行ってしまう存在感。『ドン・キホーテ』主演も期待値が高まっております。
当初は8月のめぐろバレエ祭りにて開催予定でしたが急遽延期。落ち着かない中での準備であったのは容易に想像ができますが
パワフルな作品からしっとり美しい作品まで、振付もダンサーも個性花開く競演に
何よりも生で体感する気持ち良さに目一杯触れながら終始わくわくと見入った公演でした。
新作は勿論のこと、スタジオで鑑賞した作品も舞台機構を生かしての上演はまた違った印象を持たせ
再演だからこそより熟した中身の濃い仕上がりになっていたりと充実のプログラム。
ダンサー自身の振付作品披露の舞台は団体問わず足を運びたいと再確認です。
東京バレエ団の2020年夏公演は全て今月に一挙延期上演となり9月は東京バレエ団目白押し月間。引き続き満喫する予定でおります。
ホールのロビー。次回以降の公演のお知らせがずらり。
往路、自由が丘にて下車。何度も通りかかっていながら初めて入店した1933年創業の元祖モンブランのお店。
ほっくりとした食感の栗、中までクリームが詰まっています。店内には東郷青児の作品始め、絵画がたくさん。
目の前には飛翔する日本鶴の絵が飾られていました。7月末を思い出し嗚呼、鶴さん。(注・本日は東京バレエ団でございます)
なぜ自由が丘で下車したか、遠い昔(大阪万博までは遡らないが)嘗て学生時代休日にアルバイトしていた家電量販店に立ち寄るため。
当時は1階建、お店のテーマ曲が大音量で流れていましたが(歌詞が何種類かあるはず笑)現在は2階建に拡張。
同業の他店舗あちこちを回り、日によっては埼玉の狭山で勤務し翌日は横浜に出勤といった日程もございましたが
狭山帰りは狭山茶のお菓子、横浜帰りは朝からヨットハーバー脇を散歩して帰りは崎陽軒の焼売を購入しようと
小旅行気分で出向けると意気込む、コーディネータースタッフの心配も不要な変わり者でございました。
こちらの店舗は売り場によってはショパンの華麗なる大円舞曲が流れていて随分洗練された店舗に変貌。
自由が丘にお越しの際はご利用お待ち申し上げます。
都立大学駅裏にて米国のクラフトビールで乾杯。コクやまろみも十分な味わいで内装もお洒落。
タコのセビーチェとポテトサラダも合います。
2020年9月4日金曜日
【お茶の間観戦】アルベールビル五輪のフィギュアスケート ペアとアイスダンス
9月に入りました。まだ残暑が続き、新潟では40度を観測するなど異常気象に目眩がしそうになりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。
少しでも涼やかな話題を望んでしまう今日この頃でございます。
来夏東京五輪も開催できるのか、まだ見通しがつかぬ状況ですが調べていたところ
冬季五輪での競技の印象が強いフィギュアスケートは嘗ては冬季以外の五輪で実施していたと知り驚愕。
1908年のロンドンと1920年のアントワープ大会で、屋内外に関してはこちらの調査不足で定かでありませんが
アントワープ以降は冬季大会での実施となったもようです。
そんなわけで、冬季以外の季節しかも夏場に跨る時期の五輪で最後に実施されてから100年となる2020年、
多少は涼しい気分に繋がると願って本日はフィギュアスケートの話を。
氷上のバレエとの呼称を時々目にする機会もあり、バレエがお好きな方であればフィギュアをご覧になる方も多くいらっしゃるかと思います。
ダンスマガジンでも特集が組まれたり、今春に上野の森バレエホリデイでは上野水香さんと町田樹さんの対談も実現しました。
私はそこまで熱心に観るほうでもありませんが、五輪を始めテレビ放送されていれば視聴はいたします。
バレエ音楽が使用されていると嬉しさを覚える一方、どうしても見過ごせないのが曲のおかしな繋ぎ方。
ジャンプやステップを規定通り入れねばならぬ制約があるのは理解できますが物語展開がちぐはぐな順番であったり
ましてや生死を伴う話の場合キャラクターが生き返ってしまう流れはどうもいただけません。
以前ジゼルを滑る選手の映像を見た際、狂乱死したかと思ったら続いて1幕ヴァリエーション締め括りは収穫祭のコーダ。
ジゼル生き返ってしもうた、精霊が村に現れての復讐かと1人慌てふためく管理人でございました。
そんな私も観戦に熱中していた時期があり、遡ること28年前の1992年アルベールビル五輪。当時はソ連崩壊から日が浅く、国旗もない国もあり
一部の旧ソ連国はEUNとして出場し、旗は五輪マークであった時代です。
日本の報道では女子シングルで銀メダルを獲得した伊藤みどりさん一色な様子で、皮膚科や歯科に行った際の待ち時間に目を通す週刊誌の大多数が伊藤さん祭り。
確かに日本フィギュア界初のメダル獲得で大きな快挙でしたが管理人がテレビに噛り付いて見ていたのは、ペアとアイスダンスでございました。
開催当時は周囲に同じ話題で語り合える友人知人もおらず、2年前の平昌五輪開催中にハンブルク・バレエ団来日公演会場にて
昔からフィギュアも熱心にご覧になっている方と話していて人生初 家族以外とアルベールビルのペア、アイスダンスの話題で会話に花が咲き
何処かで綴れたらと思っておりこの場を借りて書いて参ります。
まずペア。優勝はEUNのナタリア・ミシュクテノクとアルトゥール・ドミトリエフで、フリーでのリスト『愛の夢』における
柔らかでロマンティックな香りを色濃く放出していた演技は訴えかける力が強く納得ではありましたが
私が惚れ惚れと見入っていたのは2位の同じくEUNエレーナ・べチケとデニス・ペトロフによる『くるみ割り人形』。
グラン・パ・ド・ドゥのアダージオ部分を使用しての演技で、 決して押し出しは強くはなく特別ドラマティックでも独創的でもないながら
音楽に調和して忠実、飾り気無くシンプルされど優雅な滑りで 馴染みある曲だから好みであったわけではなく
職人気質な持ち味がすっと目に心に響いたのであろうと思っております。
それから先にも述べた、バレエ音楽を不可思議に繋げたのではなくアダージオ部分のみであった点も好印象。
終盤の盛り上がりを考えればコーダの部分も取り入れる流れも想像できますが あくまでアダージオのみでプログラムを表現する姿勢にも注目せずにいられなかったのでした。
べチケとペトロフ組の『くるみ割り人形』より 再生が上手くいかなかったらすみません。
表示された「YouTubeで見る」の文字をクリックしていただきと再生が開始されるかと思います。
それからアイスダンス。地元フランスの期待を背負って出場したイザベル・デュシェネーとポール・デュシェネーの兄妹による
オリジナルダンスの『サウンド・オブ・ミュージック』より ひとりぼっちの羊飼いに乗せた、牧歌的に弾むように滑る2人に魅せられ
劇中の人形劇で演じられるダンスによく似た振付や足腰を思い切り上下させながらもスピードが落ちぬ姿に驚きそして心底明るい気分になったものです。
加えて村人風の衣装も可愛らしく、当時既に何度も観ている映画でしたが曲が益々好きになるきっかけとなりました。
高校の文化祭にて吹奏楽部でも演奏しましたが、珍しくチューバのソロがありクラリネットが引き立て役に回っている箇所も聴きどころです。
デュシェネー兄妹による『サウンド・オブ・ミュージック』よりひとりぼっちの羊飼い 再生が上手くいかなかったらすみません。
表示された「YouTubeで見る」の文字をクリックしていただきと再生が開始されるかと思います。
ただオリジナルでの躍動感が印象に残り過ぎてしまったのかフリーでの『ウエストサイド物語』があまりにシリアスで緊迫感が異常に強く感じてしまい
フリーを観た際にはG線上のアリアとトッカータとフーガの後半に乗せて滑ったEUNのマリア・クリモワとセルゲイ・ポノマレンコ組の
完成度の高い余裕ある流れるような演技が場を攫い、案の定優勝。
オリジナルではショスタコーヴィチのジャズ組曲(恐らく)のポルカで『となりのトトロ』メイちゃんのような2つ結びの髪型で登場したイメージから一転し
ただ滑っているだけでも艶めかしい色気を振りまくクリモワの変貌ぶりにも目を見張ったのでした。
マイヤ・ウーソワとアレクサンドル・ズーリン組によるヴィヴァルディ『四季』での緩急自在に音楽を体現した実に伸びやかで美しい演技も忘れられず
後年モスクワ帰りのアエロフロート機内にてウーソワそっくりの客室乗務員さんが接客してくださったときには思わず名札を確認し
ご本人ではないと分かってはいても腰を抜かしそうになった次第です。
似ていると言えば、デュシェネー兄妹の兄ポールがお若い頃のカデル・ベラルビさんに何処となく雰囲気が重なる印象。
しかもしばしば映し出される大会名及び開催地名を眺めるとAlbertvilleの前半6文字に思わずゴクリ。
まさか14年後以降この文字に途轍もない興奮を覚えるようになるとは、当時は何とも思っていなかった自身に今の状況を見せてやりたいものです笑。
ところでスケートを生でも鑑賞した経験はあり、17年前に東伏見アイスアリーナで開催されたアイスショーの招待券に新聞の応募で当選。
ソルトレイク五輪の翌年でプルシェンコや村主章枝さんら著名なスケーターも登場し
今思えば無料で鑑賞できたのはいたく幸運であったと思っております。
新聞での当選招待者は隅の一角に設けられたエリア内に着席してのんびり鑑賞に臨んだわけですが、ふと見るとリンク内にも客席が。
至近距離で出演者を鑑賞できる特等席のようで、値段もお高めであったでしょう。
プルシェンコが登場しサンバ調な音楽で滑り始めると、手が届きそうなリンク内席からは所謂黄色い歓声が沸騰。
当選者用自由席エリア内にいた管理人はお目当ての男性が間近に登場して心臓印に満ちた興奮なんぞ生涯無縁であろうと他人事のように眺めておりましたが
状況は2年後以降急展開。青山円形劇場やいわきアリオス、東京タワーの袂スタジオ、岡谷のカノラホールに新宿での着物トークショーなど
時には手が触れそうな至近距離での興奮事件は多発。人生何処で曲がり角となるか分からず、当時の自身が今の姿を観たらどう思うか問いかけてみたいものです。
少しでも涼やかな話題を望んでしまう今日この頃でございます。
来夏東京五輪も開催できるのか、まだ見通しがつかぬ状況ですが調べていたところ
冬季五輪での競技の印象が強いフィギュアスケートは嘗ては冬季以外の五輪で実施していたと知り驚愕。
1908年のロンドンと1920年のアントワープ大会で、屋内外に関してはこちらの調査不足で定かでありませんが
アントワープ以降は冬季大会での実施となったもようです。
そんなわけで、冬季以外の季節しかも夏場に跨る時期の五輪で最後に実施されてから100年となる2020年、
多少は涼しい気分に繋がると願って本日はフィギュアスケートの話を。
氷上のバレエとの呼称を時々目にする機会もあり、バレエがお好きな方であればフィギュアをご覧になる方も多くいらっしゃるかと思います。
ダンスマガジンでも特集が組まれたり、今春に上野の森バレエホリデイでは上野水香さんと町田樹さんの対談も実現しました。
私はそこまで熱心に観るほうでもありませんが、五輪を始めテレビ放送されていれば視聴はいたします。
バレエ音楽が使用されていると嬉しさを覚える一方、どうしても見過ごせないのが曲のおかしな繋ぎ方。
ジャンプやステップを規定通り入れねばならぬ制約があるのは理解できますが物語展開がちぐはぐな順番であったり
ましてや生死を伴う話の場合キャラクターが生き返ってしまう流れはどうもいただけません。
以前ジゼルを滑る選手の映像を見た際、狂乱死したかと思ったら続いて1幕ヴァリエーション締め括りは収穫祭のコーダ。
ジゼル生き返ってしもうた、精霊が村に現れての復讐かと1人慌てふためく管理人でございました。
そんな私も観戦に熱中していた時期があり、遡ること28年前の1992年アルベールビル五輪。当時はソ連崩壊から日が浅く、国旗もない国もあり
一部の旧ソ連国はEUNとして出場し、旗は五輪マークであった時代です。
日本の報道では女子シングルで銀メダルを獲得した伊藤みどりさん一色な様子で、皮膚科や歯科に行った際の待ち時間に目を通す週刊誌の大多数が伊藤さん祭り。
確かに日本フィギュア界初のメダル獲得で大きな快挙でしたが管理人がテレビに噛り付いて見ていたのは、ペアとアイスダンスでございました。
開催当時は周囲に同じ話題で語り合える友人知人もおらず、2年前の平昌五輪開催中にハンブルク・バレエ団来日公演会場にて
昔からフィギュアも熱心にご覧になっている方と話していて人生初 家族以外とアルベールビルのペア、アイスダンスの話題で会話に花が咲き
何処かで綴れたらと思っておりこの場を借りて書いて参ります。
まずペア。優勝はEUNのナタリア・ミシュクテノクとアルトゥール・ドミトリエフで、フリーでのリスト『愛の夢』における
柔らかでロマンティックな香りを色濃く放出していた演技は訴えかける力が強く納得ではありましたが
私が惚れ惚れと見入っていたのは2位の同じくEUNエレーナ・べチケとデニス・ペトロフによる『くるみ割り人形』。
グラン・パ・ド・ドゥのアダージオ部分を使用しての演技で、 決して押し出しは強くはなく特別ドラマティックでも独創的でもないながら
音楽に調和して忠実、飾り気無くシンプルされど優雅な滑りで 馴染みある曲だから好みであったわけではなく
職人気質な持ち味がすっと目に心に響いたのであろうと思っております。
それから先にも述べた、バレエ音楽を不可思議に繋げたのではなくアダージオ部分のみであった点も好印象。
終盤の盛り上がりを考えればコーダの部分も取り入れる流れも想像できますが あくまでアダージオのみでプログラムを表現する姿勢にも注目せずにいられなかったのでした。
べチケとペトロフ組の『くるみ割り人形』より 再生が上手くいかなかったらすみません。
表示された「YouTubeで見る」の文字をクリックしていただきと再生が開始されるかと思います。
それからアイスダンス。地元フランスの期待を背負って出場したイザベル・デュシェネーとポール・デュシェネーの兄妹による
オリジナルダンスの『サウンド・オブ・ミュージック』より ひとりぼっちの羊飼いに乗せた、牧歌的に弾むように滑る2人に魅せられ
劇中の人形劇で演じられるダンスによく似た振付や足腰を思い切り上下させながらもスピードが落ちぬ姿に驚きそして心底明るい気分になったものです。
加えて村人風の衣装も可愛らしく、当時既に何度も観ている映画でしたが曲が益々好きになるきっかけとなりました。
高校の文化祭にて吹奏楽部でも演奏しましたが、珍しくチューバのソロがありクラリネットが引き立て役に回っている箇所も聴きどころです。
デュシェネー兄妹による『サウンド・オブ・ミュージック』よりひとりぼっちの羊飼い 再生が上手くいかなかったらすみません。
表示された「YouTubeで見る」の文字をクリックしていただきと再生が開始されるかと思います。
ただオリジナルでの躍動感が印象に残り過ぎてしまったのかフリーでの『ウエストサイド物語』があまりにシリアスで緊迫感が異常に強く感じてしまい
フリーを観た際にはG線上のアリアとトッカータとフーガの後半に乗せて滑ったEUNのマリア・クリモワとセルゲイ・ポノマレンコ組の
完成度の高い余裕ある流れるような演技が場を攫い、案の定優勝。
オリジナルではショスタコーヴィチのジャズ組曲(恐らく)のポルカで『となりのトトロ』メイちゃんのような2つ結びの髪型で登場したイメージから一転し
ただ滑っているだけでも艶めかしい色気を振りまくクリモワの変貌ぶりにも目を見張ったのでした。
マイヤ・ウーソワとアレクサンドル・ズーリン組によるヴィヴァルディ『四季』での緩急自在に音楽を体現した実に伸びやかで美しい演技も忘れられず
後年モスクワ帰りのアエロフロート機内にてウーソワそっくりの客室乗務員さんが接客してくださったときには思わず名札を確認し
ご本人ではないと分かってはいても腰を抜かしそうになった次第です。
似ていると言えば、デュシェネー兄妹の兄ポールがお若い頃のカデル・ベラルビさんに何処となく雰囲気が重なる印象。
しかもしばしば映し出される大会名及び開催地名を眺めるとAlbertvilleの前半6文字に思わずゴクリ。
まさか14年後以降この文字に途轍もない興奮を覚えるようになるとは、当時は何とも思っていなかった自身に今の状況を見せてやりたいものです笑。
ところでスケートを生でも鑑賞した経験はあり、17年前に東伏見アイスアリーナで開催されたアイスショーの招待券に新聞の応募で当選。
ソルトレイク五輪の翌年でプルシェンコや村主章枝さんら著名なスケーターも登場し
今思えば無料で鑑賞できたのはいたく幸運であったと思っております。
新聞での当選招待者は隅の一角に設けられたエリア内に着席してのんびり鑑賞に臨んだわけですが、ふと見るとリンク内にも客席が。
至近距離で出演者を鑑賞できる特等席のようで、値段もお高めであったでしょう。
プルシェンコが登場しサンバ調な音楽で滑り始めると、手が届きそうなリンク内席からは所謂黄色い歓声が沸騰。
当選者用自由席エリア内にいた管理人はお目当ての男性が間近に登場して心臓印に満ちた興奮なんぞ生涯無縁であろうと他人事のように眺めておりましたが
状況は2年後以降急展開。青山円形劇場やいわきアリオス、東京タワーの袂スタジオ、岡谷のカノラホールに新宿での着物トークショーなど
時には手が触れそうな至近距離での興奮事件は多発。人生何処で曲がり角となるか分からず、当時の自身が今の姿を観たらどう思うか問いかけてみたいものです。
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