2020年8月26日水曜日

翔んで所沢! NBAバレエ団 Grace & Speed ― ブルッフヴァイオリン協奏曲第一番 / ケルツ 8月23日(日)《埼玉県所沢市》




8月23日(日)、所沢ミューズマーキーホールにて、NBAバレエ団 Grace & Speed― ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第一番 / ケルツ ―を観て参りました。
https://www.nbaballet.org/performance/2020/grace_and_speed/


スパイスイープラス記事、久保紘一監督へのインタビュー。作品の見どころ、初のオンラインリハーサルレポートや
来年2月の新制作上演ヨハン・コボー版『シンデレラ』についても話してくださっています。
https://spice.eplus.jp/articles/274016

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第一番
振付:クラーク・ティベット 音楽:マックス・ブルッフ

ブルー:三船 元維 峰岸 千晶
アクア:新井 悠汰 竹内 碧
レッド:刑部 星矢 佐藤 圭
ピンク:飛永 嘉尉 野久保 奈央
コール・ド
猪嶋沙織 岩田雅女 北村桜桃 児玉彩香 須谷まきこ 武井由香理 向山未悠 横野優
大森康正 小林治晃 高橋開 竹内俊貴 多田遥 玉村総一郎 長谷怜旺 古道貴大

初鑑賞は2014年、以降2018年のショートストーリーズでも鑑賞し、曲調が変わるごとに異なる色合いのプリンシパルペアが登場。
峰岸さんのしっとりとした優雅さと貫禄を備え舞台の支配力に目を奪われたブルー、
外見は儚げながら燃え盛る炎のような鋭さとパワーで引き込む佐藤さんのレッドが特に印象深く残っております。
野久保さんの音楽にステップがこれでもかと詰め込まれた急速な振付を難なく楽しそうにこなす技術の高さにも驚きを覚えた次第。
チュチュが翻るグラデーションに至るまでの色鮮やかさにも目が行き思わず観察いたしました。
そして忘れてはなりません、コールドの出来栄え。4組のプリンシパルペアが用意された作品として例えばバランシン振付『シンフォニー・イン・C』では
楽章ごとにプリンシパル、コリフェ、コール・ドも入れ替わりますがこの作品ではコール・ドは終始固定且つ全て男女のペアによる構成。
また拍手から一呼吸置いて登場となるのは最後のピンクペアのみで、それまでのブルー、アクア、レッドは曲の中でさりげなく登場する流れ。
つまりは、コール・ドはそれぞれの色のペアが登場すると各々の場面に相応しく調和するよう身体ごと表情を変えて臨まねばならず
更には瞬時のリフトで女性を横体勢にして袖に捌ける振付まで用意され、殊に男性は過酷でしょう。
しかし4色のペアを時には静かにゆったりと、時には明朗快活に迎え入れ、サポート切替も含め鉄壁で見事でした。
いつの日か生演奏による上演を願い、ヴァイオリニストとの競演を観てみたいと興味が募ります。


ケルツ
振付:ライラ・ヨーク  音楽:アイルランド民謡

グリーン:新井 悠汰
ブラウン:三船 元維 関口 祐美
レッド:大森 康正 竹田 仁美
コール・ド
石川真梨子 猪嶋沙織 岩田雅女 北村桜桃 児玉彩香 白井希和子 須谷まきこ 武井由香理 勅使河原綾乃 福田真帆 松岡陽香 向山未悠 横野優
刑部星矢 小林治晃 高橋開 竹内俊貴 多田遥 玉村総一郎 飛永嘉尉 長谷怜旺 平井健太 古道貴大

2年前のショートストーリーズで初鑑賞し、斬れ味抜群な総力にぶったまげた作品。ブルッフと並び、NBAの十八番と呼びたいほどです。
序盤から息つく暇もない一斉高速脚捌きにはこの度も鳥肌が立ち、強靭過ぎる軸の持ち主でありスーパーケルツマンと勝手に名付けた
新井さんの上体ぶれぬまま余裕綽々に座り姿勢からの跳躍や舞台を大きく使っての回転移動もお手の物。
そしていたく刻まれたのは中間部にて味わい深く魅せた関口さんの踊りで、恐らくはアイルランドのバグパイプのイリアン・パイプスと思われる
素朴で伸びやかな音楽を情感豊かに表現され、何もかもが浄化されていく心持ちとなりました。
今回再度音楽に耳を傾けていると何処か懐かしさすら込み上げ、遡ること20年以上前。
映画本編は1回観たきりでしたが劇中の音楽が誠に気に入りサウンドトラックまで購入して繰り返し聴いていた『タイタニック』
(脚本と主演をタイタニック号事故生存者の女優ドロシー・ギブソンが務めた1912年製作版ではなくもう少し現代寄り1997年のジェームズ・キャメロン監督版)にて
序盤の回想場面や終盤においても度々流れていた曲、音色共に似通っていたと記憶しております。

大森さん竹田さんが遠方から駆け寄ってきて向かい合い先がピンと伸びた状態を維持した跳躍も目に焼き付き、それからコールドも持ち味大全開。
全身を真っ直ぐにして垂直に跳んだかと思えば予期せぬ方向に身体を転換させてそのまま回転しながらフォーメーションを作り出したりと
男性も女性も身体能力が恐ろしく高く、何度でも観たい作品です。衣装に描かれた渦巻模様は平和を意味しているとのこと。

この日は当初阿波の国へ出向く予定でしたが舞台は中止となり、それならば
新国立劇場のバレエ、オペラ、演劇部門初の合同企画アンドロイド・オペラ『スーパーエンジェル』を
土曜日のみならず日曜日も合わせて鑑賞を検討いたしましたがこちらも中止。
そんなところへ、NBAさんが急遽今回の公演を企画。しかもNBAのレパートリーの中でも特に好きな作品2本立てと知り、鑑賞をすぐさま決意した次第です。
2月のホラーナイトを最後に5月の『白鳥の湖』、7月の『ジゼル』、8月の『ドラキュラ』公演が中止となり、稽古も不可となって
ダンサーは心身共に苦しく不安な時期が続いていたに違いありません。
約半年ぶりとは思えぬ両作品ともむしろ前回上演時よりも更に高精度な舞台を披露し、鍛錬の賜物に天晴れでした。

開演前には久保監督から、カーテンコールでは関口さん、竹田さん、新井さんが挨拶。
久保監督はいくつもの公演が中止に追い込まれたバレエ団の厳しい現状やどうにかして公演を持続させたい心境を熱く語られ、
関口さんらダンサーからは観客の前で披露する喜び、感謝の気持ちを前面に出したスピーチ。
再開第一弾公演を共有できたのは実に幸運であったと思っております。

12月には同じく所沢ミューズマーキーホールで『白鳥の湖』上演、そして次回は来年2月東京文化会館にて上演の新制作ヨハン・コボー版『シンデレラ』を鑑賞予定。
力が沸いてくる舞台になるであろうと想像しており、今から期待を寄せております。



以下、日帰り翔んで埼玉な写真多めでございます。『翔んで埼玉』は昨年公開され日本アカデミー賞を12部門で受賞するなど大変な話題作となりましたが
ここ5年間で劇場にて鑑賞した唯一バレエやクラシック音楽、美術が主題として絡んでいない娯楽作品で、また令和元年5月1日に鑑賞した作品でもあり思い入れも強く、
(正確に申し上げれば原作者魔夜峰央さんのご子息で東京バレエ団の山田眞央さんや埼玉代表として冒頭場面に少しNBAのダンサーも出演されていますが)
作品と同様の勢いで埼玉を満喫して参りました。



新宿駅から西武新宿駅へは徒歩で移動、早足であったためウェブ検索の時間よりも1本前の電車に間に合ったが、地下道を通っても汗ばむ気候でございます。
改札を通っていくと、貝をスマートフォンに持ち替えたラッコ出現!西武線アプリのキャラクターのラッコロらしい。名付けまでの経緯はこちらから。
西武線利用は滅多にないが、ラッコならばアプリをダウンロードしようか。



西武新宿駅から会場最寄の航空公園駅までは暫し時間を要するため行き掛けに地元の図書館に立ち寄り見つけた
ボリショイ・バレエで長らく活躍されてきた岩田守弘さんの本を車内で黙読。ふと顔を上げると車内で流れていた報道写真記事によれば
この日はボリショイが初来日した日であるとのこと。1957年であるのは前回2017年の来日公演にて
初来日から半世紀と大々的に発表されていたため知ってはいたが、夏の盛りであったのか。今年の来日中止はああ残念無念。
岩田さんの本には刺激を受けたダンサーとしてNBAバレエ団芸術監督の久保紘一さんも度々登場。諸々タイムリーであった本の感想についてはまた次回。



はるばる来たぜ埼玉。旅に北島三郎さんの『函館の女』替え歌は欠かせません。
(少し前までは大阪が近場と口走っていた管理人ですが、首都圏から出ぬ夏を14年ぶりに過ごし、今となっては翔んで埼玉も立派な旅行)
狭山や所沢周辺が舞台となっているトトロがお出迎えです。場所柄か、左上に描かれた白いレジ袋が小トトロに見えます。



駅前に飛行機



駅から徒歩約10分の所沢飛行場の跡地に作られた所沢航空発祥記念館へ。
飛行機と高所好きで、駄目元で航空写真会社に履歴書を送ったこともある。(訪問し、説明だけでも聞いてみたかった)



展示された飛行機の数々、写真撮影も自由です。ジブリ作品を好む管理人、脳内は延々と『紅の豚』冒頭曲が旋回。
エンジンや部品に関する知識は皆無ですが間近での観察だけでも楽しい。
空中体感アトラクション等は感染拡大防止のため休止中で残念でしたが、高所好意症ですのでまたの機会に体験したいと決意。
ジブリ美術館も徐々に再開らしく、また自転車で行って参ります。



記念館前にも飛行機。模型飛行機での遊び可の広場もあり、お盆に放送されていたこの地域が舞台の『となりのトトロ』を思い出し
傘を返却に来たサツキに実は興奮し部屋で飛行機と戯れつつお婆ちゃんの前で照れ隠しをするカンタ少年のようにやってみようかとも一瞬過ったが、
初心者向きの工作も大の苦手である身、子供達が遊ぶ姿を眺めるにとどめた。バレエ、演奏、図画工作、何事も幼児の頃から鑑賞向きであるとしみじみ。



呑んで埼玉、盛って埼玉、香ばしい所沢ビールとお茶が濃厚凝縮カップからはみ出そうな(客としては嬉しいがこんなに盛って良いのか?)狭山茶ソフト。



駅前でコーヒー、カップには日本で初めて作られた航空発祥の地である所沢飛行場にて明治44年初飛行に成功したアンリ・ファルマン機のイラスト入り。
所沢名菓ファルマンの袋記載の解説によれば、初飛行を一目見たいと夜明け前から提灯を下げた見物人が押しかけ、露店まで出るお祭り騒ぎであったらしい。
『魔女の宅急便』エンディングでトンボが漕いでいる自転車飛行機はこんなデザインだった気がいたします。



締め括りは呑んで日高屋、但し帰りがけ都内の店舗です。ご当地アルコールも勿論好きですが、ビールも舞台も生は良いものです。
埼玉精神、半日間は貫けたかと思っております。


2 件のコメント:

ひふみ さんのコメント...

ようこそ西武線へ。
西武沿線の住人としましては、路線は違っても嬉しく存じます。
NBAバレエ団の公演鑑賞は初めてでしたが、素敵な演目でとても楽しめました。
これからも機会があれば応援して行きたいと感じ入りました。
そして、短い時間でしたが、管理人さまともご一緒でき、お話もでき愉しかったです。
ありがとうございました。
またお会いできる日を楽しみにしております。

管理人 さんのコメント...

ひふみ様

こんばんは。
こちらこそ、この度は西武線にお邪魔いたしました。
楽しい埼玉滞在となりありがとうございました!
NBAの舞台をお楽しみいただき、大変嬉しく存じます。
コンサートでもよく演奏されるブルッフのヴァイオリン協奏曲がバレエとなるとカラフルで華やかな作品となって現れ、
ケルツの躍動感も迫力がありましたよね。
是非他の公演もご覧になってみてくださいませ。
きらりとした美しさとスピード感、ユーモアが合わさったウィールドン版の真夏の夜の夢もおすすめです!

ありがとうございます。また会場でお目にかかれます日を心持ちにしております。