2020年8月10日月曜日

5ヶ月ぶり玉手箱と開いた劇場の蓋 新国立劇場バレエ団「竜宮 りゅうぐう」~亀の姫と季(とき)の庭~ 7月24日(金祝)〜7月29日(水)




7月24日(金祝)〜29日(水)、新国立劇場 こどものためのバレエ劇場 2020
森山開次さん振付の世界初演・新作バレエ公演「竜宮 りゅうぐう」~亀の姫と季(とき)の庭~を5回鑑賞いたしました。
7月31日(金)も鑑賞予定でしたが30日と共に公演中止に。2公演を残しての千秋楽となってしまいましたが
この状況下において世界初演の作品の披露実現は喜ばしく、バレエ界舞台芸術界に勇気を与える上演であったと思います。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/turtle-princess/

おけぴゲネプロレポート
https://okepi.net/kangeki/1836


スパイスイープラス 初日レポート
https://spice.eplus.jp/articles/273009



9月19日(土)に長崎県佐世保市公演、9月22日(火祝)に富山市公演も予定されています。予定通り上演されますように。




ダイジェスト動画、是非ご覧ください!池田理沙子さん、奥村康祐さんペアの公演で
竜宮城でもてなしを受ける太郎、太郎と亀の姫との微笑ましいパ・ド・ドゥ場面です。涼やかな気分になれます。



演出・振付・美術・衣裳デザイン:森山開次
作曲・音楽製作:松本淳一
照明:櫛田晃代
映像:ムーチョ村松
音響:仲田竜太
振付・補佐:湯川麻美子/貝川鐵夫


プリンセス 亀の姫:米沢唯(24日) 池田理沙子(25日昼)(26日夜) 木村優里(25日夜)(29日)

浦島太郎:井澤駿(24日) 奥村康祐(25日昼)(26日夜) 渡邊峻郁(25日夜)(29日)

時の案内人:貝川鐵夫(24日)(25日夜) 中島駿野(25日昼)(26日夜)(29日)

島の子ども:
奥田花純 五月女遥 飯野萌子 髙橋一輝 佐野和輝 渡部義紀(24日)(25日夜)
柴山紗帆 渡辺与布 益田裕子 小野寺雄 西一義 西川慶(25日昼)(26日夜)(29日)

白兎:小柴富久修(24日)(25日夜) 清水裕三郎(25日昼)(26日夜)(29日)

エイポン:
関晶帆 守屋朋子 横山柊子(24日)(25日夜)
稲村志穂里 山田歌子 横山柊子(25日昼)(26日夜)(29日)

フグ接待魚:奥田花純 五月女遥(24日)(25日夜) 柴山紗帆 渡辺与布(25日昼)(26日夜)(29日)

サメ用心棒:井澤諒 福田圭吾(24日)(25日夜) 木下嘉人 速水渉悟(25日昼)(26日夜)(29日)

タツノオトシ吾郎:浜崎恵二朗(24日)(25日夜) 宇賀大将(25日昼)(26日夜)(29日)

タイ女将:寺田亜沙子(24日) 細田千晶(25日昼)(26日夜) 本島美和(25日夜)(29日)
金魚舞妓:
飯野萌子 川口藍 玉井るい 広瀬碧 木村優子 原田舞子(24日)(25日夜)
中田実里 広瀬碧 益田裕子 朝枝尚子 今村美由起 廣田奈々(25日昼)(26日夜)(29日)

イカす3兄弟:
原健太 小柴富久修 趙載範(24日)(25日夜)
中家正博 清水裕三郎 福田紘也(25日昼)(26日夜)(29日)

アジ面子:
加藤朋子 土方萌花 廣川みくり 髙橋一輝 佐野和輝 渡部義紀(24日)(25日夜)
赤井綾乃 菊地飛和 北村香菜恵 小野寺雄 西一義 西川慶(25日昼)(26日夜)(29日)

サザエ:徳永比奈子(24日)(25日夜) 多田そのか(25日昼)(26日夜)(29日)

ウニ:中島春菜(24日)(25日夜) 関優奈(25日昼)(26日夜)(29日)

タコ八:中島瑞生 渡邊拓朗(24日)(25日夜) 太田寛仁 仲村啓(25日昼)(26日夜)(29日)

マンボウ:樋口響(24日)(25日夜) 小川尚宏(25日昼)(26日夜)(29日)

クラゲ:
広瀬碧 木村優子 原田舞子(24日)(25日夜)
広瀬碧 今村美由起 廣田奈々(25日昼)(26日夜)(29日)

天女:
奥田花純 飯野萌子 川口藍 玉井るい(24日)(25日夜)
渡辺与布 中田実里 益田裕子 朝枝尚子(25日昼)(26日夜)(29日)

織姫:五月女遥(24日)(25日夜) 柴山紗帆(25日昼)(26日夜)(29日)
彦星:福田圭吾(24日)(25日夜) 木下嘉人(25日昼)(26日夜)(29日)

祭り男:
髙橋一輝 佐野和輝 中島瑞生 樋口響 渡邊拓朗 渡部義紀(24日)(25日夜)
小野寺雄 太田寛仁 小川尚宏 仲村啓 西一義 西川慶(25日昼)(26日夜)(29日)

竜田姫:本島美和(24日) 寺田亜沙子(25日昼)(26日夜) 細田千晶(25日夜)(29日)

どんぐり:
加藤朋子 土方萌花 廣川みくり(24日)(25日夜)
赤井綾乃 菊地飛和 北村香菜恵(25日昼)(26日夜)(29日)

雪の花嫁:
関晶帆 徳永比奈子 中島春菜 守屋朋子 横山柊子(24日)(25日夜)
稲村志穂里 関優奈 多田そのか 山田歌子 横山柊子(25日昼)(26日夜)(29日)

雪の花婿:
井澤諒 原健太 小柴富久修 趙載範 浜崎恵二朗(24日)(25日夜)
中家正博 速水渉悟 宇賀大将 清水裕三郎 福田紘也(25日昼)(26日夜)(29日)

波:
川口藍 玉井るい 広瀬碧 加藤朋子 木村優子 関晶帆 徳永比奈子 中島春菜 原田舞子 土方萌花 廣川みくり 守屋朋子 横山柊子(24日)(25日夜)
原健太 髙橋一輝 趙載範 浜崎恵二朗 佐野和輝 中島瑞生 樋口響 渡邊拓朗 渡部義紀(24日)(25日夜)
中田実里 広瀬碧 赤井綾乃 朝枝尚子 稲村志穂里 今村美由起 菊地飛和 北村香菜恵 関優奈 多田そのか 廣田奈々 山田歌子 横山柊子(25日昼)(26日夜)
中家正博 宇賀大将 小野寺雄 福田紘也 太田寛仁 小川尚宏 仲村啓 西一義 西川慶(25日昼)(26日夜)(29日)



※ご訪問いただきありがとうございます。以下、大変長うございます。『マノン』の反省、生かされておりません。纏まり欠如です。
帰省できない旅行に行けない等お盆の時間が有り余って仕方ない方はどうぞお読みください。
そうでない方は恐れ入ります、次回のお茶の間観劇或いは映画の記事をお待ちください。


米沢さんは艶と統率力ある亀の姫で登場時から姫を超越して神々しい輝きを纏い、視界に入った途端に太郎が硬直するのも頷けてしまったほど。
亀の手の動きも一振りしただけで、またポーズ1つにしても全てを司るような支配力に感嘆いたしました。
池田さんはお辞儀や恥じらいも愛らしく、日本の昔話のお姫様の絵に一番嵌っていた印象で少し顔を傾けたりはにかんだりした表情にとろりとしそうに。
木村さんは得体の知れない麗しオーラ発散な亀の姫。太郎を小舟に乗せて連れて行く際、腕の動きが押し上げや下げ方といい亀らしさが宿っていました。
フィナーレにて亀の神となった姿は煌びやかなチュチュ効果もあり和製ガムザッティな輝き。
亀の姫は太郎より先に明記されていながら実際は太郎の出番のほうが遥かに多し。されど見せ場はいくつもあり、
例えば竜宮城に招いた太郎の前で披露する六角舞。思った以上に短い場面でしたが
羽織物を靡かせながらゆかしくもしっとりした祈りが込められたのであろうソロで、静謐な魅力に太郎も恍惚と魅了されたに違いありません。

井澤さんの浦島太郎は次々と身に起こる突発の事態に戸惑うおどおど感と、亀の姫や竜宮城の住人たちに心を開いた後の生き生き感のバランスが取れていて
5ヶ月ぶりのバレエ団公演再開且つ世界初演作品の初日だった事情もあって緊張なさっている様子は見受けたものの
亀の姫の小舟に乗ってもまだ状況を呑み込めてなさそうな不可思議な表情やお酌をされると
お行儀良く腰掛けていたときとは打って変わって飲み干してしまう様子も自然に映る青年でした。
先にも述べた通り、米沢さんの亀の姫が最初から神様降臨たる存在感であったため仰け反り気絶寸前な太郎であったとしても納得。
漁師にしてはお育ちが良さそうな内気で物静かそうな青年でしたが濃いお顔立ちに意外にも髷も合い、歴史物少女漫画に登場する殿下、といったところです。

奥村さんはあどけない少年な太郎でまさに昔話の絵本や唱歌の挿絵のイメージ。満面の笑みで登場し朗らかな性格が一目で伝わり涼しげな容貌に髷もぴったりでした。
イカす3兄弟の登場に大口開けて出迎える表情がツボで、本当は一緒に踊りたかったのであろうと推察。
奥村さんといえば長らく「永遠の明るい少年」な印象を勝手に抱いておりましたが、数年前から徐々に変わりつつあり
秋の部屋へ入り好奇心旺盛にどんぐりトリオと戯れていたときとは一変し
亀の姫との別れを惜しむ場面では引き裂かれそうに悲痛な心情が全身から溢れ、さらりと流れがちな箇所においても
故郷へ戻れる嬉しさを抑え込んで玉手箱を持って去る姿も重たい悲しみを引き摺りあとに繋げていた印象です。
あどけない少年(設定は青年だが)から亀の姫との出会いを経て鶴変身まで最も大きな変化を見せていた太郎でした。

※以下も長く続きます。東京は連日猛暑でございます、水分補給をどうぞ。

渡邊さんは美しいお醤油顔に間違いなく合う役柄であろうと予想はしておりましたが違和感の無さもさることながら
太秦撮影所や映画村関係者も驚倒するであろうやや切れ長の目眉もあってたいそう絵になるお侍さんなお姿。袴と刀が無い点が鳴呼惜しい笑。
西洋の宮廷で発祥の芸術に従事なさる方に対し大変失礼な物言いかもしれませんが、念願の髷姿に歓喜でございます。
2018年に着物雑誌でモデルをなさり、大正昭和の古風なる若旦那な佇まいに感激し次は髷姿をと
以降書店の時代小説売り場を歩いては或いは時代劇を視聴するたびに勝手に夢を思い描いておりました。
ただ畳が似合うお侍さんだけではなく、登場時に蝶々(舞台袖から細い棒の先端に装着させて飛び出させている何ともアナログな手法がまた良い)にも
にこやかに語りかけたりと性格は大らかな漁師さん。慎ましく質素な生活感も伝わり、
舞台では描かれていませんが桶に入れた魚を懸命に運搬する様子も自然と目に浮かびました。
脱帽したのは踊り方や表現の振り幅の広さ。登場時のソロはカウントが非常に取りにくく1回のみでは童謡浦島太郎の編曲とは聴き取れず(未だによく分からぬ笑)
次回公演『ドン・キホーテ』作曲者であり基本ズンチャッチャリズムが主流のミンクスからしたら、バレエで踊るとはとても想定できない曲でしょう。
しかし音楽への反応が恐ろしく敏感なのか強弱の付け方が的確なのかいたく立体的に見え、冒頭から恐れ入った次第です。
亀の甲を撫で愛でる姿や「接待を伴う飲食」に弾ける様子は頬を緩ませ、千鳥足もやり過ぎぬ範囲でリアリティあり。
一変し狂気を滲ます入魂の鶴変身の神々しさに叶うならトゥールーズ時代のベジャール版『火の鳥』拝見を渇望せずにいられませんでしたが
思わぬ形で鳥に変身する役でお目にかかれたのは誠に幸せな限りでした。
能の要素を取り入れたお爺さんへの変身時における所作の美しさやと目も心も奪われ尽くしでございました。

全く異なる解釈で見比べが面白かったのは時の案内人で、貝川さんは飄々とした狂言回しな役どころでとぼけた顔芸やダイナミックな立ち振る舞い
見得の切り方で観客を魅了。対する中島さんは奇怪な雰囲気を漂わせる紳士。鶴変身時の太郎のおでこに朱肉らしきものを付ける最終段階の鍵を握る箇所においても
押し当てる際の立ち姿が美しくはっとさせられました。とにかくこの時の案内人、
最初から最後まで太郎の冒険を導く大変重要な役割を担っており日本版ドロッセルマイヤー或いは男性版リラの精といったところで更には小道具盛りだくさん。
太郎と息を合わせての作業も多数用意され、釣り竿をさりげなく渡して糸を投げ入れたり亀と兎の競争では何時の間にかホイッスルで合図。
海中では頭に鯛を被って後方から見守り(衣装からして同一人物と思うが)、場面転換で扇子を掲げ
重心を低くしての舞台横切りで観客を次の世界へと誘ったりと多岐に渡る仕事量なのです。
着物、袴、山高帽の和洋折衷な組み合わせも着こなし、役作りこそ異なれどお2人とも見事な案内人でした。

亀の姫に連れられた太郎が海へ行く道中に出会う白兎さんにもびっくり。兎と亀の競争で、被り物をした男性お2人が突如白兎として登場。
小柴さんは数々の「実績」が買われたのか笑、安定のエンジン全開。衝撃であったのは清水さんで、殻を打ち割っての熱演。
ゆっくり運転な亀の姫の姿にすっかり油断してゴール前で寝そべる体勢はすっかりリゾートで寛ぐウサギさん状態でした。
波の男性2人が亀の姫側、島の子供が数名再登場して亀の姫側の応援に付き、波達は応援団の如く
一糸乱れず熱烈応援をしているかと思えば(水泳大会の非番部員状態にも見える)亀の鷹揚たるスピードに合わせて時折スローモーションで声援を送り
子供たちは素早くはしゃぐように応援しつつ亀の姫側の勝利が確実視されるとすかさずゴールドテープを用意して勝者を称賛。
いじめっ子だけにとどまらない、実は気立ての良い子達なのかもしれません。
ほっこりした気持ちになったところでいよいよ海底の竜宮城へ。心地良い流れに乗っていく演出と見受けました。

海洋生物も多種登場し、笑いがあちこちから聞こえてきたのはイカす3兄弟のタンゴ。端正な中から沸々と笑みが込み上げるAキャスト、
濃厚メンバー構成のBキャストは真剣過ぎる顔と腰の入った踊りの対比に大笑い。
もし食するならばAキャストは柚子ポン酢、Bキャストは大黒屋の串カツソースが合いそうです。
イカとタンゴの組み合わせには驚きはしたものの、思い起こせば9年前に函館の市場へ行ったときのこと。
ケースに入ったイカさん達が発砲スチロールを打ち破りそうなほどにエッジの効いた動きをしていて、キビキビと腰の入ったタンゴの振付と重なるものを感じたものです。
イカ兄弟達の踊りに合わせて金魚舞妓やタイ女将は扇で、マンボウまでもがヒレで拍子をとっていたのは
『ドン・キホーテ』の静かな宣伝であろうかとも勝手に想像するのも楽し。これ以外にも、被りケープをひらひらとさせながらエイポンが海底を彷徨ったのちに
一旦幕が下り、フグ接待魚とタツノオトシ吾郎の合図で幕が上がり宮廷が現れる展開は『眠れる森の美女』に似通っていて
古典バレエ作品と似たところを探すのもまた面白味がありました。

テクニック炸裂なサメの用心棒も場内を沸かせ、井澤さん福田さん組は息が合い調和が取れていて盤石、亀の姫そして竜宮城の見張り役として尽くしているのでしょう。
木下さん速水さんは出世争いでもしているのか笑(あくまで役柄にて)前のめりな勢い。タイ女将への接触を狙っているのか妄想を膨らませる用心棒でした。
タイ女将も三者三様。寺田さんは華やぐ香りが匂い立ち、細田さんは典雅な趣き、本島さんは幕開け中央にて正座する佇まいから優しい版大奥を想起。
お三方とも貫禄を備えつつ、鯛の目玉をスカート両脇に付け、ヒレと扇が同化した感のある装飾にも魅せられる
ピンクがかった赤の光沢ドレスと着物を掛け合わせたデザインの衣装をしっくりと着こなす艶やかな日替わり美女トリオで
六角舞を披露し終えた亀の姫の羽織り衣を受け取り丁寧に引き渡す過程にも惚れ惚れ。

はんなりひらりと扇で舞う金魚舞妓達も忘れられず、金色の扇を手にした艶めかしくもメリハリを効かせた踊りに太郎でなくてもほろ酔いしてしまう宴と化すのは明らか。
薄衣と思われる透けた生地に金魚が描かれ、これまた着物と上手く合わせた涼やかな衣装です。

一部は波の衣装のまま帽子やすっぽり被り物で兼任する役柄もあり、サザエとウニはリアルな形の帽子を被ってお酌係。
かなり勢い良く次々と注いでおり、太郎の千鳥足の原因をきちんと作ってくれています笑。
絵をそのまま被っているような平たいマンボウはいたく視界が狭そうですが至る所を遊泳したり
アジ面子もそのまま青系の透明な魚を被って活躍していましたが波の衣装がそのまま海中である設定と同化するため気にならず。

動きづらそうであったのはタコ八で、何本もの長いタコ足を引き摺らねばならず余程の体幹がなければ困難な役。
中島さん渡邊さんは器用に操り、太田さん仲村さんはやや苦戦でしたが奮闘ぶりがかえって興味を惹きつける要因にもなっていて良い方向に作用していました。

日本ならではの四季の移ろいの詩情に溜息が零れ、春は桜吹雪と共にふわりと舞う天女達が琴の調べに乗って(確か)長い紗布を手に雅やかに登場。
夏はワッショイなお祭りで、男性陣のスカートがセーラームーンと一部で話題になっていたもよう。
セーラームーンもシリーズ物でして正確さは自信無しですが付記して申し上げますと、セーラームーンのスカートは1シリーズ目は青一色でしたが セーラームーンS(スターズもだったか)では少しの青黄色と白の組み合わせ。つまり、青地に白い線が描かれた竜宮お祭り男子陣の衣装とちょうど逆版でございます。

役柄名を見て最も気にかかったどんぐりは秋の明るい要素を軽やかに見せ、太郎も一緒に足をバタつかせて笑コロコロ弾むように披露。
一転して竜田姫の登場は翳りを漂わせ、本島さんは押し迫る悲しみを露わにし、寺田さんは危うい色気、
細田さんは今にも絶命しそうな死の淵に立たされた感や触れると冷気が走りそうな儚い姿に身震いし、タイ女将と同じく贅沢な三者三様の見比べでございました。
四季の中でも最たる造形の驚きは冬での雪の花嫁、花婿。竜田姫の下りから太郎の望郷の念が一層強まり、冬では例えば楽しい雪合戦な設定は無理があり
表現手段が気になりましたが、ただ寒々しく寂しい場面に終わらぬ点に唸らされました。
しんしんと雪が降り積もる中で雪の花嫁達が両手を腰手前部分に添えて顔を俯いた状態での小刻みなパ・ド・ブレは何と繊細であろうかと感嘆。
手脚のみならず睫毛の先端に至るまで神経の行き届きを思わせました。パ・ド・ブレを生かす手法は他役にも見られ
幕開けの寄せては返す漣や2幕で神秘的に浮遊するクラゲも目を見張りそして舞台へ引き込む効果大でした。

四季と言えば、新国立劇場バレエ団でも長らく上演を重ねている『シンデレラ』における仙女からシンデレラへ四季の贈り物をする場面がありますが
日本の四季をテーマにした作品としては一昨年2018年11月に京都バレエ団『京の四季』を鑑賞。生け花も同時進行で行われたり
着物な衣装もあればチュチュもあり和洋折衷な趣きでしたが『竜宮』では季節によっては
夏の静と動、秋の陽と陰、と複数の面を描写していた点もまた魅力であったと思います。

東京オリンピック2020を踏まえての海外の方にも向けた新制作とは言っても今年ばかりは日本で生活していても四季の移ろいが意識から遠のいていたとも思え、
お花見も夏祭りも軒並み中止で秋冬の催しもまだ分からず。新国立劇場でのバレエ公演に至っては冬場の2月末『マノン』を最後に
3月末のDTFは無観客開催、ゴールデンウィークの『ドン・キホーテ』、6月の1ヶ月間に渡る『不思議の国のアリス』本拠地、愛知県、群馬県公演も中止で
冬から一気に夏へと飛んできてしまったも同然。劇場の中で日本の四季の醍醐味を堪能できたのは幸運でした。

そして繰り返し鑑賞しかも上階席を買い足したくなった理由の1つが床照明。変化に富む波模様や四季折々に桜、どんぐり、紅葉絨毯など
凝りに凝ったデザインがお目見え。床以外にも深海へと沈むときにはいくつもに泡が映し出されて上昇し、
いよいよ亀の姫の小舟に乗った太郎が海へと潜る瞬間、絶妙なタイミングで跳躍して着地した波達の導きもあって一気に潜り込んでいく心持ちになりました。
開演前、幕間、終演後毎に少し変わる装置演出にも注目し、厠の刻には思わず笑ってしまい終演後は上方に鶴と亀。
弾け飛ぶ泡を思わせる音も含まれた深海の壮大で幻想的な音楽も胸躍る要素で耳に残り、何度でも聴きたくなってしまいます。

細かな仕掛けや日本の伝統文化の要素がそこかしこに散りばめられ、5回観てもまだ発見できていない箇所は多数あると思われますが
玉手箱を開けた太郎がお爺さんに変身する場面は能のお面を用いての演出。着物を被せられ、煙のなかでお面を装着する厳かな演出でしたが
ここはできればお面は無しで、何処かに紛れて顔や髪に白い物が混ざって老いた状態を作り出したところも観てみたかったとも欲が出てしまいました。
ただ、太郎がもはや漁師ではなく鶴に変身して異世界へと旅立つ様子を格式高く描いたとも受け止められます。
余計な口出しかもしれませんが太郎が鶴に変身する着替え時、席によっては丸見えに近い状態で見えてしまったため笑
再演時はもう少し多めの人員を配置した方が良さそうです。

惜しむらくはこのご時世。海外からはもとより国内でも遠方からの観客の来場が見込めず、子供達も多くの地域で夏休みが短縮となり7月中或いは8月以降も授業あり。
観客の平均年齢は新国立劇場でこどもバレエが始まって以来の高さであったのが明らかです。
管理人の住む地域では7月31日の13時過ぎに鍵盤ハーモニカや絵の具を持って下校する小学生達の集団に遭遇し、少なくとも7月一杯は授業があった様子。
平日も15時あたりの開演でしたらもう少し子供の観客が増えたかもしれませんが
こればかりは安全第一の実施等劇場の事情もありますし止むを得なかったと思います。
また興味はあっても職業柄、家庭の事情や不安もあっていくら換気や検温など対策を万全にした劇場であるとは分かっていても
大人数が集まる空間には足を運べない方も大勢いらしたことでしょう。毎度身内の話で恐縮ですが、妹はチラシの衣装写真を一目見て行く気満々だったようですが
たくさんの子供達を預かる現場で働いている環境上、今回ばかりは断念するしかなかったようです。
それから欲を言えば、6月末にNHKニュースウォッチ9にて新国立劇場バレエ団が取り上げられレッスンやリハーサルの様子、
吉田都さんのインタビューも放送されたとき『竜宮』のチケット発売なりあらすじや魅力紹介が少しでもあればと思えてならず。
夜9時のNHKニュースならば反響もあったのではと想像いたします。

大変な状況下、チケット発売や開幕が決まっても果たして幕は上がるのか毎日毎日祈るような気持ちでいただけに
5ヶ月ぶりの観客を入れて、しかも制約がある中でリハーサルを重ね新制作世界初演に漕ぎ着けた喜びは
生涯忘れることはないでしょう。馴染みある浦島太郎の話をなかなか知られていない御伽草子の内容も盛り込み
和洋の様々な要素を織り交ぜて膨らまして振付のみならず装置美術衣装までも手がけられた森山さんのセンスが凝縮した
こどもバレエとは思えぬスケールの大きい、新国立発信のオリジナル作品誕生を心から祝したい思いでおります。早い話ですが、来年の再演を願って止みません。





対面無し、池に向けられたホワイエの椅子。


記者会見が行われそうな配置。



キャスト表。サメ、タイ、エイ、マンボウ、ウニ、サザエ、、、上半分を眺める限り、初台水族館。下半分は日本の四季博覧会。



久々に劇場内レストランのマエストロへ。スタッフさん達もお元気そうで安堵、スパークリングワインで乾杯。
次の『竜宮』では是非ともマエストロ特製公演限定デザートがホワイエで販売されますように。
亀を模ったタルト、涼やか竜宮ゼリーパフェ、太郎のお団子(作品からして和菓子もありかと思います)、
甘味ではなくても太郎漁師の鯖押し寿司(一時期巻き寿司はあったと記憶)などあっても良さそうです。



海の生き物シリーズは崩さず笑、渡り蟹のパスタを選択。蟹の身もお出汁もたっぷりでした。



帰り、うどんでつるっと一杯。揚げたてがちょうど出てきたためイカもいただきます。



図書館で借りた書籍。インターネットだけでなく書籍を手にとって調べる作業を好むため図書館の無事再開は大いに助かります。
講談社の絵本はなかなかの日本顔美青年太郎です。山田明生さん文の絵本は
四季の部屋の中での秋の紅葉景色、絨毯がバレエの美術と似ていて舞台を思い起こさせました。
『海の文学史』によれば『平家物語』では平家一族が竜宮城にいた旨を話す建礼門院の場面があるそうで、興味を沸かせます。
(平家物語は次回以降のお茶の間観劇に関わって参ります)
福永武彦さん訳によれば浦島太郎の大まかな年齢は24、5歳だそうで、絵本の印象に比較すると意外にも大人。
あらすじにも明記し「青年」として登場させた今回の森山さん版の設定と重なり、太郎の寝酒も納得。



反響が大きかったため再度掲載、事前にチラシと構想図持参で依頼し、『竜宮』開幕と我が人生節目を祝して海の日に引き取った浦島太郎ケーキ。
写真を見返す度に、パティシエさんの凄腕に驚嘆です。
接待役は流石に高き壁ですので出迎え役としてタニシとサザエ、羨望の眼差しで上り詰めようと頑張る付き人志望の蟹を配しました。
高さ制限に引っかかりこのままでは入らず、保管時は太郎さんと亀、蟹を取り外して冷蔵庫へ。
何処で予約したのかと目の細い家族も最大限丸めて驚き、亀を助ける心優しい漁師である浦島太郎にしては
随分と目がきりっとし過ぎていてお侍さんのようであるとも指摘を受けましたが
それで良いのです、『竜宮』以前から着物が絵になる姿を公の媒体で証明なさっているモデルがいるのですから。
パティシエさんが目眉の特徴を捉えて描いてくださった力作でございます。一時冷蔵庫に保管していた太郎さん、亀、蟹は26日の朝に食しました。
カードは画伯な妹作の亀とラッコ。そういえば、亀が頭に乗っかっているのは亀の姫が最後神となったときの頭飾りを彷彿。
描いてくれたのは公演初日以前ですから妹よ、演出を予測していたのだろうか!?(本人曰く、偶然らしいが)



7月31日も鑑賞予定で『竜宮』休暇取得も公演中止、劇場関係者を思うと胸が詰まり再演を切望いたします。
ところで昨年9月新国立劇場バレエ団こども『白鳥の湖』全国含む千秋楽岡谷市カノラホール公演鑑賞前に訪れた諏訪湖にて
竜宮丸とスワン丸が並ぶ光景を撮影。次のこどもバレエ宜しくと託された竜宮丸、当時は予測もしなかった事態に見舞われながらも
素敵な舞台完成をスワン丸に報告と想像しております。
江戸時代以降は竜宮伝説は広範囲に及び、海の有無関係なく全国にご当地竜宮なる場所が言い伝えられているらしく、諏訪湖もその1つとのこと。
井原西鶴の『西鶴諸国はなし』によれば、凍結した諏訪湖を渡っていた馬方の勘内が溶解により湖底に沈んでしまったが
竜宮に流れ着いたのち舟に乗って帰還したらしい。
海ではない諏訪湖に竜宮丸がいるのは、しかも白鳥と並んでいた光景は誠に大きな意味を持っていたと今更ながら感じた次第です。

4 件のコメント:

aki ogawa さんのコメント...

大作のレビュー、楽しく読ませて頂きました。
久しぶりの舞台、新しい作品、楽しかったですね。
是非、来年の夏に再演をお願いしたい!
諏訪湖の白鳥と竜宮の話も、とても興味深いです。

さくらもち さんのコメント...

舞台が目にうかぶレビューありがとうございました。
幕開けで出てきた蝶々の使いかたは「差し金」というそうですね。
誰の差し金だ!のあの差し金のもとネタなんだそうです。
作品だけでなく、森山開次さんの古典の知識と、伝統を大事にされる姿勢も素晴らしかったです。
渡邊太郎は言うことなかったです~、鳥のはばたきを見られただけでも嬉しい役でした。
諏訪湖の竜宮も探してみたいものでございます。

管理人 さんのコメント...

aki ogawa様

こんばんは。大変お待たせいたしまして申し訳ございません。
長い記事をお読みいただき誠にありがとうございました。
辛抱強さに感謝申し上げます。
まだまだ観たくなる作品で、来夏の再演を待ち侘びております!
衣装や照明も凝っていて、大勢の方にご覧いただきたい作品ですよね。

浦島太郎の話や伝説は知らぬことが大変多く、諏訪湖にもあるとは驚きました。
諏訪湖の写真は我ながら何度も見返してしまい、
ちょうど子供白鳥に合わせて諏訪湖で白鳥の船を見て、循環スワンバスに乗車してカノラホールへと
白鳥三昧な計画を立てて実践おりましたが、まさか諏訪湖に浦島伝説が残っているとは知らず
なぜ竜宮丸なのだろうか、翌年の子供バレエへの橋渡しの意味であろうと勝手な捉え方をしておりました笑。
浦島太郎に関する書籍はこれからも読み続け勉強を重ねたいと思っております。

管理人 さんのコメント...

さくらもち様

こんばんは。長いにも程がある記事をお読みいただきありがとうございました。
書いているうちに整理がつかなくなってしまい困ったものであると反省でございます。
差し金、教えていただきありがとうございます!勉強になりました。
プロジェクションマッピング満載な場面から一転、
差し金の蝶々で、登場時から太郎の純朴で大らかな人柄を伝える効果があったように感じております。

仰る通り、森山さんの伝統芸能の造詣の深さには恐れ入った次第です。あちこちに仕掛けがありましたよね。
しかもこれ見よがしではなくさりげなく取り入れ、変に肩肘張らず物語の世界に楽しく没頭できるよう
心がけた演出と見て取れました。クラシックバレエを基盤にしながらも日本の文化の博覧会な作風で
何度でも観たいと思わずにいられませんでした。

渡邊さん太郎、書き出しから念願の髷姿披露の話ばかりですみません汗。
1幕にて太郎の夢として表現された障子越しに見える鶴の羽ばたきの影、フォルムが滑らかで
お顔立ちとすらりとした体躯もそのまま鶴に繋がりましたよね。
フランスでは雄々しい火の鳥、日本では端正な鶴、と鳥に変身する演目とご縁があるのでしょうか。
美しい鶴の羽ばたき、生で鑑賞できて眼福でした。それから、畳がいたく似合っていらっしゃいました笑。

諏訪湖の竜宮伝説、興味を惹かれますよね。
関東近郊にもあるようで、引き続き書籍等で調べて参りたいと思っております。